JP2018001625A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐マーカー性に優れているとともに、光学濃度の高い画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】記録媒体に反応液を付与した後、記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に付与し、画像を記録するインクジェット記録方法である。インクが、顔料及び水溶性樹脂を含有する水性インクであり、水溶性樹脂が、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体であり、反応液が、色材を含有せず、会合性増粘剤、及び反応剤を含有する水性の反応液であり、会合性増粘剤が、一般式(1)(R1−X1−R2−X2−[(EO)l−X3−R3−X4]m−R4)などで表される化合物であり、反応液中の会合性増粘剤の含有量(質量%)が、インク中の顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.06倍以上0.50倍以下である。【選択図】なし
Description
本発明は、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
従来、記録インクの色材として、耐水性などの堅牢性に優れた顔料が広く用いられている。インクジェット用のインクにおいても、画像の堅牢性をより一層向上させるべく、色材として顔料が採用されつつある。また、色材として顔料を用いたインクに樹脂を配合することで、記録された画像をマーカーペンで引いても汚れが目立たなくなる、いわゆる「耐マーカー性」などの堅牢性が向上することが知られている。近年、画像の堅牢性に対する要求が高まりつつある。例えば、より短時間で画像の堅牢性が発現したり、画像をマーカーペンで複数回引くといった過酷な条件下でも汚れが目立たない優れた堅牢性が発現したりするなどの要求がある。
ところで、顔料を含有するインクとは別に、画像の状態を良好にするための液体(反応液)を用意し、反応液とインクを記録媒体に付与して画像を記録する方法が種々提案されている。この方法によれば、反応液を用いることで記録媒体上における顔料の凝集を促進させるため、インクのみで記録する方法に比べて得られる画像の光学濃度を高めることができる。
例えば、自己分散顔料及び(メタ)アクリル酸ユニットを有する水溶性樹脂を含有するインクと、酸性領域に緩衝能を有する反応液とのセットが提案されている(特許文献1)。また、1種以上の同一モノマー成分から構成される樹脂をそれぞれ含む、インクと反応液とのセットが提案されている(特許文献2)。特許文献1及び2で提案されたセットを使用し、記録媒体上でインクと反応液を接触させると顔料の凝集物が形成されるため、画像の光学濃度が高まるとされている。
また、予め記録媒体に酸処理を行い、pH低下によって増粘する水性インクを付与して画像の光学濃度を高める記録方法が提案されている(特許文献3)。
反応液とインクを記録媒体に付与して画像を記録する場合、記録媒体上に顔料が効率良く残存するため、画像の光学濃度を高めることができる。しかし、記録媒体の表面に多くの顔料が残存して形成された画像については、耐マーカー性が低下する場合がある。高い光学濃度と優れた耐マーカー性とが両立した画像を記録するには、水性マーカーによる水や筆圧に対する強度を備えた顔料層を形成することを重視したインク設計とする必要がある。すなわち、画像の光学濃度を高めるためのインク設計と、画像の耐マーカー性を高めるためのインク設計とは、相反する関係にあるといえる。
したがって、本発明の目的は、耐マーカー性に優れているとともに、光学濃度の高い画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記インクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、記録媒体に反応液を付与した後、記録ヘッドからインクを吐出して前記記録媒体に付与し、画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、顔料及び水溶性樹脂を含有する水性インクであり、前記水溶性樹脂が、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体であり、前記反応液が、色材を含有せず、会合性増粘剤、及び反応剤を含有する水性の反応液であり、前記会合性増粘剤が、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物であり、前記反応液中の前記会合性増粘剤の含有量(質量%)が、前記インク中の前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.06倍以上0.50倍以下であることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
R1−X1−R2−X2−[(EO)l−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(1)
R1−X1−(EO)l−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(2)
R1−(EO)l−X1−R2−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−(EO)o−R4 ・・・(3)
(前記一般式(1)〜(3)中、R1及びR4は、それぞれ独立に炭素数6以上20以下のアルキル基又は炭素数6以上20以下の芳香環を有する炭化水素基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数6以上36以下の2価の炭化水素基を表し、X1〜X4は、それぞれ独立にウレタン結合又はエステル結合を表し、EOは、エチレンオキサイドを表し、l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、oは、0以上の整数を表す)
R1−X1−R2−X2−[(EO)l−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(1)
R1−X1−(EO)l−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(2)
R1−(EO)l−X1−R2−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−(EO)o−R4 ・・・(3)
(前記一般式(1)〜(3)中、R1及びR4は、それぞれ独立に炭素数6以上20以下のアルキル基又は炭素数6以上20以下の芳香環を有する炭化水素基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数6以上36以下の2価の炭化水素基を表し、X1〜X4は、それぞれ独立にウレタン結合又はエステル結合を表し、EOは、エチレンオキサイドを表し、l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、oは、0以上の整数を表す)
本発明によれば、耐マーカー性に優れているとともに、光学濃度の高い画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記インクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インク、水性の反応液のことを、単に「インク」、「反応液」と記載することがある。また、物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値とする。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体に反応液を付与した後、記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に付与し、画像を記録するインクジェット記録方法である。インクは、顔料及び水溶性樹脂を含有する水性インクであり、この水溶性樹脂は、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体である。また、反応液は、色材を含有せず、会合性増粘剤、及び反応剤を含有し、この会合性増粘剤は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物である。そして、反応液中の会合性増粘剤の含有量(質量%)が、インク中の顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.06倍以上0.50倍以下であることを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体に反応液を付与した後、記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に付与し、画像を記録するインクジェット記録方法である。インクは、顔料及び水溶性樹脂を含有する水性インクであり、この水溶性樹脂は、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体である。また、反応液は、色材を含有せず、会合性増粘剤、及び反応剤を含有し、この会合性増粘剤は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物である。そして、反応液中の会合性増粘剤の含有量(質量%)が、インク中の顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.06倍以上0.50倍以下であることを特徴とする。
R1−X1−R2−X2−[(EO)l−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(1)
R1−X1−(EO)l−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(2)
R1−(EO)l−X1−R2−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−(EO)o−R4 ・・・(3)
(前記一般式(1)〜(3)中、R1及びR4は、それぞれ独立に炭素数6以上20以下のアルキル基又は炭素数6以上20以下の芳香環を有する炭化水素基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数6以上36以下の2価の炭化水素基を表す。X1〜X4は、それぞれ独立にウレタン結合又はエステル結合を表し、EOは、エチレンオキサイドを表す。l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、oは、0以上の整数を表す)
R1−X1−(EO)l−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(2)
R1−(EO)l−X1−R2−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−(EO)o−R4 ・・・(3)
(前記一般式(1)〜(3)中、R1及びR4は、それぞれ独立に炭素数6以上20以下のアルキル基又は炭素数6以上20以下の芳香環を有する炭化水素基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数6以上36以下の2価の炭化水素基を表す。X1〜X4は、それぞれ独立にウレタン結合又はエステル結合を表し、EOは、エチレンオキサイドを表す。l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、oは、0以上の整数を表す)
普通紙などの記録媒体に光学濃度の高い画像を記録するには、反応液とインクの反応性を高めることが有用である。一方、マーカーペンで複数回引いても汚れが目立たず、耐マーカー性に優れた画像を記録するには、記録媒体上に形成される顔料の凝集物の強度及び耐水性を高める必要がある。顔料の凝集物の強度を高めるには、顔料の粒子間の結着力を高めることが有効である。また、顔料の凝集物の耐水性を高めるには、顔料の凝集物の親水性を低下させることが有効である。顔料の粒子間の結着性及び耐水性を高める方法として、インクに樹脂を添加する方法が知られている。
本発明者らは、特許文献1の記載を参考にして、自己分散顔料及びアクリル酸に由来するユニットを有する水溶性のランダム共重合体(樹脂A)を含有するインクと、酸性領域に緩衝能を有する反応液とを調製した。そして、このインクと反応液とのセットを用いて普通紙に記録した画像の光学濃度と耐マーカー性を評価した。その結果、光学濃度は高かったが、耐マーカー性のレベルは不十分であることがわかった。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
反応液とインクが接触すると、インク中の樹脂Aは、その溶解度が急激に低下して析出し、凝集して記録媒体上に堆積する。また、顔料も樹脂Aの凝集物に取り込まれるような状態で記録媒体上に堆積する。そして、顔料の粒子間に取り込まれた樹脂Aの疎水性ユニット(アニオン性基を有しないユニット)は、顔料と相互作用する。しかし、樹脂Aの疎水性ユニットはランダムに存在するため、顔料との相互作用が弱い。このため、顔料の粒子間に取り込まれた樹脂Aは、記録媒体に浸透する。その結果、顔料の粒子間に取り込まれる樹脂の量が減少し、顔料の粒子同士の結着力を十分に高めることができなくなって、耐マーカー性がさほど向上しなかったものと考えられる。
次に、本発明者らは、系内の樹脂の総量を増加させれば、顔料の粒子間に樹脂が多く取り込まれて画像の耐マーカー性が向上するのではないかとの推測の下、インク及び反応液の両方に樹脂を添加することについて検討した。ここで、反応剤である多価金属塩や酸性物質を含有する反応液には、当該反応液中での反応を抑止する観点から、添加しうる樹脂は、イオン性基を多く有しない樹脂に実質的に限定される。そこで、本発明者らは特許文献2の記載を参考にして、イオン性基を有しないポリビニルアルコール(PVA)及び樹脂分散顔料(樹脂A)を含有するインクと、硝酸マグネシウム及びPVAを含有する反応液とを調製した。そして、このインクと反応液とのセットを用いて普通紙に記録した画像の光学濃度と耐マーカー性を評価した。その結果、特許文献1で提案されたセットを用いた場合と比較して画像の耐マーカー性は若干向上したものの、近年要求される高いレベルの耐マーカー性が得られないことが判明した。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
記録媒体に反応液を付与した直後、記録媒体への液体の浸透が始まる。記録媒体に液体が浸透するとともに、反応液中のPVAの一部が記録媒体に堆積し、一部は浸透する。次に、記録媒体上の反応液に重なるようにインクを付与することで、反応液中のマグネシウムイオンによって樹脂Aの電荷が消失し、樹脂Aの水溶性が急激に低下して顔料の分散状態が不安定化する。そして、分散状態が不安定化した顔料が記録媒体上に堆積し、記録媒体上に顔料の凝集物が形成される。一方、PVAはノニオン性基の作用によって水に溶解しているため、反応液中の反応剤と接触しても凝集せず、その水溶性が保持される。このため、顔料の粒子間に樹脂Aは取り込まれるが、PVAはほとんど取り込まれない。顔料の粒子間に取り込まれた樹脂Aの疎水性ユニット(アニオン性基を有しないユニット)はランダムに存在するため、顔料や、樹脂A同士の疎水性ユニットと相互作用する効率が低い。このため、顔料の粒子間に取り込まれた樹脂Aは、顔料と十分に相互作用できず、記録媒体に浸透する。
また、記録媒体に堆積したPVAと浸透したPVAは、記録媒体に含まれるセルロースを構成する酸素原子と水素結合する。顔料の凝集物の表面に堆積したPVAと、記録媒体に浸透したPVAとが相互作用することで、顔料の凝集物と記録媒体との親和性が向上する。その結果、特許文献1で提案されたセットを用いた場合と比較して、顔料の凝集物と記録媒体との親和性は向上するものの、顔料の凝集物同士の間の結着力を高める効果はほとんどない。以上のような理由により、高いレベルの耐マーカー性が得られなかったと考えられる。
以上の結果から、インク及び反応液の両方に樹脂を添加しただけでは、画像の耐マーカー性を顕著に向上させるのは困難であることが判明した。そして、本発明者らは、より高いレベルの耐マーカー性を得るには、顔料の粒子間で効率的に相互作用しうる物質を用いて顔料の粒子間の結着力を高めることが有効であると推測した。以上の検討で用いた樹脂Aは、疎水性ユニットがランダムに存在するため、顔料や、樹脂同士の疎水性ユニットと相互作用する効率が低い。このため、顔料や樹脂の疎水性ユニットとの相互作用の効率を高めるには、疎水性ユニットと親水性ユニットが分離されたブロック構造を有し、かつ、立体反発の影響が少ない分子末端に疎水性基が存在する物質が有効であると推測した。
そこで、本発明者らは、図1に示すような、アニオン性基を有しないため疎水性を示すセグメント1を両末端に有するとともに、ノニオン性の親水性セグメント2を分子鎖の中間部分に有する会合性増粘剤7(ABA型高分子)を添加したインクについて検討した。具体的には、特許文献3の記載を参考にして、顔料の粒子表面にアニオン性基が結合した自己分散顔料及び会合性増粘剤を含有するインクと、酸性領域に緩衝能を有する反応液とを調製した。そして、調製したインクと反応液を用いて普通紙に画像を記録し、画像の光学濃度及び耐マーカー性を評価した。しかし、近年要求される高いレベルの耐マーカー性が得られないことが判明した。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
顔料と、会合性増粘剤の疎水性セグメントとは、インク中で相互作用している。このため、顔料の粒子表面には、会合性増粘剤に由来するノニオン性基が付与された状態となっている。そこで、記録媒体に付与した反応液に重ねるようにインクを付与すると、反応液中のプロトンによって自己分散顔料の電荷が消失し、顔料の分散安定性が低下する。しかし、顔料に吸着した会合性増粘剤に由来するノニオン性基によって、顔料の凝集が緩和される。そして、不安定化した顔料が記録媒体上に緩やかに堆積することで、顔料の粒子間に会合性増粘剤が取り込まれた状態で顔料の凝集物が形成される。しかし、顔料の凝集が緩和されているため、顔料の粒子間の距離が長く、顔料の粒子間を会合性増粘剤で十分に繋ぐことはできない。このため、顔料の粒子間の結着力が十分に向上せず、高いレベルの耐マーカー性が得られなかったと考えられる。
顔料の粒子間の結着力を高めるには、顔料の凝集性を高め、顔料の粒子間の距離を短くする必要があると考えられる。次に、本発明者らは、顔料の凝集性を補うべく、反応剤によって凝集する水溶性樹脂を用いることについて検討した。具体的には、自己分散顔料、会合性増粘剤、及び樹脂Aを含有するインクを調製し、調製したインクと反応液を用いて記録した画像を評価した。その結果、耐マーカー性は若干向上したものの、近年要求される高いレベルの耐マーカー性が得られないことがわかった。反応液とインクが接触した際に樹脂Aが凝集し、樹脂Aの凝集物の間に取り込まれるような状態で顔料の粒子も記録媒体に堆積し、顔料が凝集すると考えられる。しかし、顔料の粒子表面に吸着した会合性増粘剤に由来するノニオン性基によって顔料の凝集が緩和されたため、顔料の凝集性が不十分になり、高いレベルの耐マーカー性が得られなかったと考えられる。
上述のように、顔料と会合性増粘剤をインク中に共存させると顔料の凝集が抑制されやすく、顔料の粒子同士の結着性を十分に高めることが困難であることがわかった。そこで、本発明者らは、顔料を含有しない反応液に会合性増粘剤を添加することについて検討した。その結果、高い光学濃度を維持したまま、飛躍的に耐マーカー性が向上した画像を記録可能となることを見出した。会合性増粘剤を添加した反応液を用いることで、光学濃度が高く、耐マーカー性が飛躍的に向上した画像を記録可能となった理由について、本発明者らは以下のように推測している。
図2は、本発明のインクジェット記録方法によって画像が記録される際に生ずる現象を説明する模式図である。図2中、(a)に示すように、先に記録媒体9に付与された反応液4には、会合性増粘剤7及び反応剤8が含有されている。また、反応液4の付与後に付与されるインク3中には、水溶性樹脂6、顔料5が含有されている。反応液4中の会合性増粘剤7は、アニオン性基を有しないため疎水性を示す基が両末端に存在し、それらの疎水性基同士が分子間で相互作用して網目構造を形成している。以下、アニオン性基を有しないため疎水性を示す基を「疎水性基」と記載することがある。
図2中、(b)に示すように、記録媒体9上で反応液とインクが接触した直後、反応剤によって、インク中の水溶性樹脂16の表面の電荷が消失する。そして、インク中で溶解していた水溶性樹脂16の溶解性が急激に低下し、水溶性樹脂16は凝集する。水溶性樹脂16の凝集とともに系内の粘度が急激に高まり、記録媒体9への会合性増粘剤7の浸透が抑制される。会合性増粘剤7は分子間相互作用により網目構造を形成しており、この網目構造に顔料15が接触する。そして、水溶性樹脂16が凝集するとともに、会合性増粘剤7と水溶性樹脂16が絡み合う。
その後、図2中の(c)に示すように、水溶性樹脂16と会合性増粘剤7が絡み合うことで形成された複合体が顔料15の粒子間に取り込まれた状態で凝集する。このとき、反応剤によって水溶性樹脂の電荷が消失し、親水性が低下した状態となっている。このため、顔料15の粒子間に取り込まれた会合性増粘剤7の両末端の疎水性基と、水溶性樹脂16の疎水性基が効率的に相互作用し、顔料15の粒子間の結着力が向上する。さらに、記録媒体9中への液体成分の浸透とともに、形成された凝集物の表面に存在する会合性増粘剤7の疎水性基が凝集物の外側に配向し、凝集物の表面は疎水性基で覆われた状態となる。以上のように、会合性増粘剤によって顔料の粒子同士の結着力が向上するとともに、形成される顔料の凝集物の表面が疎水性となることから、光学濃度が高く、耐マーカー性が飛躍的に向上した画像を記録することができると考えられる。
記録される画像の耐マーカー性を向上させるには、顔料の粒子同士の結着力を高める必要がある。このため、顔料の粒子同士を効率的に繋ぐ役割を担う、一般式(1)〜(3)のいずれかで表される会合性増粘剤を反応液に含有させることを要する。一般式(1)〜(3)のいずれかで表される会合性増粘剤は、その末端に、炭素数6以上20以下のアルキル基又は炭素数6以上20以下の芳香環を有する炭化水素基を有する。さらに、上記の会合性増粘剤は、水性媒体に安定に存在させるためのユニットであるエチレンオキサイド基を有する。また、会合性増粘剤を顔料や樹脂の疎水性基と効率的に相互作用させるには、炭化水素基などの疎水性基が分子の両末端に配置された会合性増粘剤を用いることを要する。一般式(1)〜(3)のいずれかで表される会合性増粘剤を顔料や樹脂と共存させると、会合性増粘剤の両末端の疎水性基と、顔料や樹脂の疎水性基とが相互作用する。その結果、顔料の粒子同士の結着力を高めることができる。また、会合性増粘剤の疎水性基によって、形成される顔料の凝集物の耐水性が向上するので、画像の耐マーカー性が向上する。
記録媒体に付与された顔料の粒子同士の結着力を十分に高めるには、反応液中の会合性増粘剤の含有量(質量%)が、インク中の顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.06倍以上0.50倍以下であることを要する。上記の質量比率が0.06倍未満であると、画像の耐マーカー性が不足する。一方、反応液中の会合性増粘剤の含有量が、インク中の顔料の含有量に対して多すぎると、記録される画像の光学濃度が低下する場合がある。これは、過剰の会合性増粘剤が顔料の凝集物の表面と相互作用し、会合性増粘剤中のノニオン性基の働きによって顔料の凝集物が記録媒体に浸透しやすくなるためであると考えられる。このため、反応液中の会合性増粘剤の含有量(質量%)を、インク中の顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.50倍以下とすることを要する。
反応液には反応剤を含有させることを要する。反応剤によってインク中の成分、主には水溶性樹脂を凝集させることにより、顔料の凝集が促進される。さらに、会合性増粘剤と絡み合いながら水溶性樹脂が凝集することで、会合性増粘剤が顔料の粒子間に取り込まれる。そして、反応剤によって電荷が消失した水溶性樹脂の親水性が低下するため、水溶性樹脂と会合性増粘剤の疎水性基との親和性が高まり、会合性増粘剤の両末端の疎水性基と水溶性樹脂の疎水性基とが効率的に相互作用する。また、顔料の凝集を促進することで顔料の粒子間の距離を縮めることができ、会合性増粘剤と水溶性樹脂の複合体によって顔料の粒子間が繋がりやすくなる。
画像の耐マーカー性を向上させるには、水溶性樹脂として、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体をインクに含有させることを要する。水溶性樹脂は、解離型(アニオン性)となったアニオン性基が水分子と水素結合を形成することにより、インク中で溶解している。インクと反応液が接触すると、水溶性樹脂のアニオン性基は反応剤によって電荷が消失するので、水溶性樹脂は凝集する。水溶性樹脂と会合性増粘剤が共存すると、両者が絡み合いながら水溶性樹脂が凝集し、前述のように顔料の粒子同士の間に会合性増粘剤が取り込まれながら顔料の凝集物が形成される。アニオン性基を有しない水溶性樹脂は反応液中の反応剤によって凝集しないため、顔料の凝集が抑制されやすくなり、光学濃度を高めることができなくなる。さらに、水溶性樹脂と会合性増粘剤の複合体が顔料の粒子同士の間に取り込まれなくなるため、顔料の粒子同士の結着力を高めることができず、耐マーカー性を向上させることができない。
また、水溶性樹脂は、脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基などの基を有するとともに、アニオン性基を有しないユニット。水溶性樹脂の上記炭化水素基と、会合性増粘剤の疎水性基とが相互作用することで、顔料の粒子同士の結着力を高めることができる。これに対して、アニオン性基を有しないユニットを含まない水溶性樹脂を用いると、会合性増粘剤と相互作用する部分が存在しないため、顔料の粒子同士の結着力が高めることができず、耐マーカー性を向上させることができない。
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体に反応液を付与した後、インクをさらに付与する順序とすることを要する。反応液及びインクをこの順序で記録媒体に付与することで、光学濃度の高い画像を記録することができる。これに対して、インクを付与した後に反応液を付与する順序とすると、反応液がインクと接触するまでの間に、先に付与したインク中の顔料が記録媒体に浸透してしまい、記録される画像の光学濃度が低下しやすくなる。
(インク)
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクは、顔料及び水溶性樹脂を含有する水性インクであり、この水溶性樹脂は、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体である。以下、インクを構成する各成分について説明する。
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクは、顔料及び水溶性樹脂を含有する水性インクであり、この水溶性樹脂は、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体である。以下、インクを構成する各成分について説明する。
[顔料]
顔料としては、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクドリンなどの有機顔料を用いることができる。インクの調色や顔料の分散性向上などのために、染料を併用してもよい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料としては、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクドリンなどの有機顔料を用いることができる。インクの調色や顔料の分散性向上などのために、染料を併用してもよい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料としては、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散顔料、及び顔料の粒子表面に親水性基を導入した自己分散顔料などを用いることができる。樹脂分散顔料としては、高分子分散剤を使用した樹脂分散顔料、顔料の粒子表面を樹脂で被覆したマイクロカプセル顔料、及び顔料の粒子表面に高分子を含む有機基が化学的に結合した樹脂結合型顔料などがある。分散方法の異なる顔料を併用することもできる。なかでも、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性基が結合した自己分散顔料や、分散剤である樹脂を顔料の粒子表面に物理的に吸着させ、この樹脂の作用により顔料を分散させた樹脂分散顔料を用いることが好ましい。
自己分散顔料としては、例えば、−COO(M1)、−SO3(M1)、−PO3H(M1)、−PO3(M1)2などのアニオン性基が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(−R−)を介して結合しているものを挙げることができる。M1としては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;アンモニウム(NH4);メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アンモニウムを挙げることができる。アニオン性基が塩を形成している場合、インク中の塩は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。他の原子団(−R−)としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;アミド基;スルホニル基;アミノ基;カルボニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基などを挙げることができる。
樹脂分散顔料としては、例えば、親水性ユニット及び疎水性ユニットを有する共重合体(水溶性樹脂)を樹脂分散剤として用い、この樹脂分散剤を顔料の粒子表面に物理的に吸着させることによって水性媒体中に顔料を分散させたものを挙げることができる。樹脂分散剤としては、インクジェット記録用のインクに使用可能な公知の共重合体をいずれも用いることができる。後述する水溶性樹脂を用いることもできる。なかでも、アクリル樹脂が好ましい。本発明では、画像の耐マーカー性をより向上させることができるため、樹脂分散顔料を用いることが特に好ましい。これは以下の理由による。樹脂分散顔料を含有するインクと反応液とが接触すると、図2(b)から(c)の過程で顔料の凝集物に会合性増粘剤が特に効率よく取り込まれ、顔料の粒子同士の結着力をより高めることができるからである。
[水溶性樹脂]
インクに含有させる水溶性樹脂は、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体である。アニオン性基を有するユニットは、樹脂が水に溶解するためのユニットである。また、アニオン性基を有しないユニットは、会合性増粘剤の疎水性部分や顔料と相互作用するユニットである。本明細書における「樹脂が水溶性である」とは、酸価と当量のアルカリで樹脂を中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を水性媒体中で形成しないことを意味する。
インクに含有させる水溶性樹脂は、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体である。アニオン性基を有するユニットは、樹脂が水に溶解するためのユニットである。また、アニオン性基を有しないユニットは、会合性増粘剤の疎水性部分や顔料と相互作用するユニットである。本明細書における「樹脂が水溶性である」とは、酸価と当量のアルカリで樹脂を中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を水性媒体中で形成しないことを意味する。
インク中の水溶性樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。インクには、2種以上の水溶性樹脂を含有させてもよいし、水溶性樹脂以外に樹脂粒子をさらに含有させてもよい。インク中の樹脂の合計含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性樹脂としては、水に溶解するための親水性部分(アニオン性基を有するユニット)と、会合性増粘剤の疎水性部分と会合する疎水性部分(アニオン性基を有しないユニット)とを有する樹脂を用いることが好ましい。このような水溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリペプチド、セルロース、セルロース変性体、ポリオレフィンなどを挙げることができる。アニオン性基を有する水溶性樹脂の溶解性を向上させるために、塩基をインクに添加してもよい。塩基としては、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミンなどの有機アミン;水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などを用いることができる。水溶性樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
親水性部分、すなわち、アニオン性基を有するユニットは、アニオン性基を有する単量体を重合することにより構成することができる。アニオン性基を有する単量体としては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有する単量体;(メタ)アクリル酸−2−ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有する単量体;これらの単量体の無水物や塩などを挙げることができる。アニオン性基を有する単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。
疎水性部分、すなわち、アニオン性基を有しないユニットは、アニオン性基を有しない単量体を重合することにより構成することができる。このようなユニットは、炭素数2以上の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基などを有することが好ましい。アニオン性基を有さず、炭素数2以上の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基などを有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する単量体;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有する単量体を挙げることができる。
アニオン性基を有しないユニットは、炭素数4以上12以下の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有することが好ましい。これらの基の炭素数が4以上であると、会合性増粘剤の両末端の疎水性基と、より相互作用しやすくなる。このため、顔料の粒子同士の結着力を高めることができ、画像の耐マーカー性をさらに向上させることができる。また、これらの基の炭素数が12以下であると、立体反発が生じにくくなるため、反応剤による水溶性樹脂の凝集が抑制されにくくなり、画像の光学濃度をより高いレベルに維持することができる。
水溶性樹脂と反応液が接触して形成される凝集物の親水性は、高すぎないことが好ましい。このため、水溶性樹脂の酸価は、50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以上170mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。特に、水溶性樹脂の酸価が50mgKOH/g以上であると、水溶性樹脂の分子がインク中で広がった状態となりやすく、反応液と接触した水溶性樹脂は会合性増粘剤と絡まりやすくなる。このため、顔料の粒子同士の間に会合性増粘剤が取り込まれやすくなり、画像の耐マーカー性をさらに向上させることができる。一方、水溶性樹脂の酸価が170mgKOH/g以下であると、反応液と接触して形成される凝集物の親水性が高くなりすぎないため、画像の耐マーカー性をより高いレベルに維持することができる。
水溶性樹脂の重量平均分子量は、1,000以上60,000以下であることが好ましく、5,000以上60,000以下であることがさらに好ましく、5,000以上30,000以下であることが特に好ましい。なかでも、水溶性樹脂の重量平均分子量が5,000以上であると、インクと反応液が接触して水溶性樹脂が凝集する際に系内の粘度が一時的に高まり、会合性増粘剤の記録媒体への浸透が抑制される。このため、より多くの会合性増粘剤が顔料の粒子同士の間に取り込まれことになり、画像の耐マーカー性をさらに向上させることができる。一方、水溶性樹脂の重量平均分子量が60,000以下であると、立体反発が小さいため、顔料の粒子同士の衝突頻度を高めることができる。このため、顔料がより効率的に凝集し、画像の光学濃度をさらに高めることができる。
[水性媒体]
本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。水性媒体は、さらに水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。水性媒体は、さらに水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、インクジェット用のインクに一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。水溶性有機溶剤としては、1価アルコール類、多価アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素極性化合物類、含硫黄極性化合物類などを用いることができる。これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。25℃における水溶性有機溶剤の蒸気圧は、水よりも低いことが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
[その他の添加剤]
インクには、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、インクには、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
インクには、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、インクには、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
[インクの物性]
インクの粘度は、1mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上6mPa・s以下であることがさらに好ましい。インクの粘度を上記の範囲とすることで、インクジェット方式の記録ヘッドからの吐出性を良好にすることができる。
インクの粘度は、1mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上6mPa・s以下であることがさらに好ましい。インクの粘度を上記の範囲とすることで、インクジェット方式の記録ヘッドからの吐出性を良好にすることができる。
(反応液)
本発明のインクジェット記録方法に用いる反応液は、会合性増粘剤、及び反応剤を含有する水性反応液である。会合性増粘剤は、顔料の粒子同士の結着力を高める作用を示す化合物である。反応液は、画像を記録する際にインクと併用するので、色材を含有しないことを要する。記録される画像への影響を考慮すると、反応液は可視域に吸収を有しない無色のものであることが好ましい。ただし、実際に記録される画像に影響を与えない程度であれば、可視域に吸収を有する淡色のものであってもよい。以下、反応液を構成する各成分について説明する。
本発明のインクジェット記録方法に用いる反応液は、会合性増粘剤、及び反応剤を含有する水性反応液である。会合性増粘剤は、顔料の粒子同士の結着力を高める作用を示す化合物である。反応液は、画像を記録する際にインクと併用するので、色材を含有しないことを要する。記録される画像への影響を考慮すると、反応液は可視域に吸収を有しない無色のものであることが好ましい。ただし、実際に記録される画像に影響を与えない程度であれば、可視域に吸収を有する淡色のものであってもよい。以下、反応液を構成する各成分について説明する。
[会合性増粘剤]
会合性増粘剤は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物である。「疎水性」とは、通常、水に対する親和性が低い性質を意味する。二成分系溶液の溶解度の目安として、溶解性パラメーター(SP値)がある。二成分のSP値の差が小さいほど溶解度が高く、親和性が高いことを示す。Fedors法により算出される水のSP値は、23.4(cal/cm3)1/2と高い。このため、SP値が低いほど水への親和性が低く、疎水性であるといえる。炭化水素基は、通常、SP値が小さい。例えば、エタンのSP値は6.0(cal/cm3)1/2、n−ヘキサンのSP値は7.3(cal/cm3)1/2であり、水のSP値に比して、炭化水素のSP値は非常に低い。本発明における「疎水性基」とは、基本的には、2以上の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族の炭化水素基を示す。
会合性増粘剤は、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物である。「疎水性」とは、通常、水に対する親和性が低い性質を意味する。二成分系溶液の溶解度の目安として、溶解性パラメーター(SP値)がある。二成分のSP値の差が小さいほど溶解度が高く、親和性が高いことを示す。Fedors法により算出される水のSP値は、23.4(cal/cm3)1/2と高い。このため、SP値が低いほど水への親和性が低く、疎水性であるといえる。炭化水素基は、通常、SP値が小さい。例えば、エタンのSP値は6.0(cal/cm3)1/2、n−ヘキサンのSP値は7.3(cal/cm3)1/2であり、水のSP値に比して、炭化水素のSP値は非常に低い。本発明における「疎水性基」とは、基本的には、2以上の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族の炭化水素基を示す。
R1−X1−R2−X2−[(EO)l−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(1)
R1−X1−(EO)l−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(2)
R1−(EO)l−X1−R2−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−(EO)o−R4 ・・・(3)
(前記一般式(1)〜(3)中、R1及びR4は、それぞれ独立に炭素数6以上20以下のアルキル基又は炭素数6以上20以下の芳香環を有する炭化水素基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数6以上36以下の2価の炭化水素基を表す。X1〜X4は、それぞれ独立にウレタン結合又はエステル結合を表し、EOは、エチレンオキサイドを表す。l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、oは、0以上の整数を表す)
R1−X1−(EO)l−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(2)
R1−(EO)l−X1−R2−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−(EO)o−R4 ・・・(3)
(前記一般式(1)〜(3)中、R1及びR4は、それぞれ独立に炭素数6以上20以下のアルキル基又は炭素数6以上20以下の芳香環を有する炭化水素基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数6以上36以下の2価の炭化水素基を表す。X1〜X4は、それぞれ独立にウレタン結合又はエステル結合を表し、EOは、エチレンオキサイドを表す。l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、oは、0以上の整数を表す)
一般式(1)〜(3)中の末端に存在するR1及びR4で表される基は多くの炭素原子を有するため、疎水性が高い。これらの基は、顔料や樹脂の疎水性部分と会合する部位である。R1及びR4で表される基の炭素数が6未満であると、顔料や樹脂と相互作用しにくくなり、顔料の粒子同士の結着力を高めることができず、画像の耐マーカー性を向上させることが困難になる。一方、R1及びR4で表される基の炭素数が20超であると、顔料や樹脂と強く会合してしまい、反応剤による顔料や樹脂の凝集が抑制されて画像の光学濃度が低下する場合がある。R2及びR3で表される基も、顔料や樹脂の疎水性部分との会合する部位である。
一般式(1)〜(3)中には、会合性増粘剤を水性媒体に安定に存在させるためのユニットであるエチレンオキサイド基が存在する。エチレンオキサイド基の重合度(一般式(1)〜(3)中のl及びn)は1以上であり、好ましくは10以上、さらに好ましくは50以上である。また、一般式(1)〜(3)中のX1〜X4は、R1〜R4で表される基と、エチレンオキサイド基とを結合する部位であり、ウレタン結合又はエステル結合である。l、m、n、及びoは150以下であることが好ましい。会合性増粘剤の重量平均分子量は、5,000以上100,000以下であることが好ましい。
反応液中の会合性増粘剤の含有量(質量%)は、インク中の顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.06倍以上0.50倍以下である。反応液中の会合性増粘剤の含有量(質量%)は、インク中の顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.12倍以上0.40倍以下であることが好ましい。上記の質量比率を0.12倍以上とすることで、画像の耐マーカー性をさらに向上させることができる。また、上記の質量比率を0.40倍以下とすることで、画像の光学濃度の低下を抑えることができる。
反応液中の前記会合性増粘剤の含有量(質量%)は、反応液中の反応剤の含有量(質量%)に対する比率で、0.025倍以上0.25倍以下であることが好ましい。上記の質量比率を0.025倍以上とすることで、反応剤による水溶性樹脂の凝集が急激に進行せず、水溶性樹脂の凝集とともに、会合性増粘剤と水溶性樹脂が良好な状態で絡み合うことになる。このため、顔料の粒子同士の結着性がより高まり、画像の耐マーカー性をさらに向上させることができる。また、上記の質量比率を0.25倍以下とすると、会合性増粘剤の量が反応剤の量に対して多くなりすぎず、水溶性樹脂が反応剤と優先して反応することになる。このため、会合性増粘剤による顔料の凝集が抑制されにくくなり、画像の光学濃度をさらに高めることができる。
[反応剤]
反応液は、インクと接触することによりインク中の成分(顔料、水溶性樹脂など)を凝集させるものであり、反応剤を含有する。反応剤としては、例えば、有機酸、多価金属イオンなど挙げることができる。
反応液は、インクと接触することによりインク中の成分(顔料、水溶性樹脂など)を凝集させるものであり、反応剤を含有する。反応剤としては、例えば、有機酸、多価金属イオンなど挙げることができる。
《有機酸》
酸性領域におけるpH緩衝能を有する反応液を使用し、アニオン性基を有するインク中の水溶性樹脂の酸による析出を利用して凝集させることが好ましい。pH7.0未満の酸性領域にpH緩衝能を有する反応液は、例えば、緩衝剤を用いて調製することができる。緩衝剤としては、弱酸である有機酸を用いることが好ましい。有機酸としては、カルボキシ基を有する有機酸が好ましい。カルボキシ基を有する有機酸は一般に弱酸であるため、酸の強さを示す尺度として、酸解離定数(pKa)を適用することができる。カルボキシ基を有する有機酸の25℃の水中におけるpKaは、反応性を効果的に向上させる観点から、2.5以上6.5以下であることが好ましい。pKaが2.5未満であると、酸性度が強すぎるため、インクジェット記録装置を構成する部材が腐食しやすくなる場合がある。一方、pKaが6.5超であると、酸性度が弱すぎるために水溶性樹脂を十分に凝集させることができず、画像の光学濃度が不十分になる場合がある。なお、有機酸が2価以上の多価カルボン酸である場合には、多価カルボン酸の全ての段階のpKaが上記範囲に含まれることが好ましい。
酸性領域におけるpH緩衝能を有する反応液を使用し、アニオン性基を有するインク中の水溶性樹脂の酸による析出を利用して凝集させることが好ましい。pH7.0未満の酸性領域にpH緩衝能を有する反応液は、例えば、緩衝剤を用いて調製することができる。緩衝剤としては、弱酸である有機酸を用いることが好ましい。有機酸としては、カルボキシ基を有する有機酸が好ましい。カルボキシ基を有する有機酸は一般に弱酸であるため、酸の強さを示す尺度として、酸解離定数(pKa)を適用することができる。カルボキシ基を有する有機酸の25℃の水中におけるpKaは、反応性を効果的に向上させる観点から、2.5以上6.5以下であることが好ましい。pKaが2.5未満であると、酸性度が強すぎるため、インクジェット記録装置を構成する部材が腐食しやすくなる場合がある。一方、pKaが6.5超であると、酸性度が弱すぎるために水溶性樹脂を十分に凝集させることができず、画像の光学濃度が不十分になる場合がある。なお、有機酸が2価以上の多価カルボン酸である場合には、多価カルボン酸の全ての段階のpKaが上記範囲に含まれることが好ましい。
カルボキシ基を有する有機酸は、H型、又は塩の状態で用いることができる。カルボキシ基を有する有機酸の塩としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのモノカルボン酸の塩;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などの、ジカルボン酸やその塩;クエン酸などの、トリカルボン酸やその塩;オキシコハク酸、DL−リンゴ酸、酒石酸などのヒドロキシカルボン酸の塩を挙げることができる。塩を形成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオンを挙げることができる。
緩衝剤としては、水への溶解度が高いものを用いることが好ましい。このような緩衝剤としては、酢酸塩やプロピオン酸塩などのモノカルボン酸の塩;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸などの多価カルボン酸やその塩;リンゴ酸や酒石酸などのヒドロキシカルボン酸やその塩などを挙げることができる。
反応液は、カルボキシ基を有する有機酸を緩衝剤として含有するとともに、pHが3.5以上5.5以下であることが好ましい。反応液のpHが3.5未満であると、インクジェット記録装置を構成する部材が腐食しやすくなる場合がある。一方、反応液のpHが5.5超であると、水溶性樹脂を急激に凝集させることが困難になることがあり、画像の光学濃度を高めることが困難になる場合がある。反応液のpHを3.5以上5.5以下に調整するには、例えば、酢酸、メタンスルホン酸などの有機酸;硫酸、硝酸などの無機酸;アルカリ金属の水酸化物などの塩基のようなpH調整剤を適宜添加すればよい。
《多価金属塩》
反応液には、多価金属塩を反応剤として含有させることが好ましい。アニオン性基を有するユニットを含む共重合体である水溶性樹脂が多価金属塩と接触すると、水溶性樹脂が塩析して凝集する。多価金属塩は反応液中で少なくとも一部が多価金属イオンとアニオンに解離した状態で存在しているが、本発明においては便宜上、「多価金属塩を含有する」と表現する。
反応液には、多価金属塩を反応剤として含有させることが好ましい。アニオン性基を有するユニットを含む共重合体である水溶性樹脂が多価金属塩と接触すると、水溶性樹脂が塩析して凝集する。多価金属塩は反応液中で少なくとも一部が多価金属イオンとアニオンに解離した状態で存在しているが、本発明においては便宜上、「多価金属塩を含有する」と表現する。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+及びBa2+などの2価の金属イオン;Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+などの3価の金属イオンを挙げることができる。多価金属イオンとしては、インク中の水溶性樹脂のアニオン性基と強く相互作用しうる、凝集特性の強い多価金属イオンを用いることが好ましい。そのような多価金属イオンとしては、Ca2+、Al3+及びY3+からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、Ca2+が特に好ましい。多価金属イオンとともに多価金属塩を形成するアニオンとしては、例えば、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2 -、ClO3 -、ClO4 -、NO2 -、NO3 -、SO4 2-、CO3 2-、PO4 3-、HPO4 2-、及びH2PO4 -などの無機アニオン;HCO3 -、HCOO-、(COO-)2、COOH(COO-)、CH3COO-、C2H4(COO-)2、C6H5COO-、C6H4(COO-)2及びCH3SO4 -などの有機アニオンを挙げることができる。なかでも、水性媒体に対する溶解性が高いため、NO3 -が好ましい。以上より、多価金属塩としてはCa(NO3)2(硝酸カルシウム)が好ましい。
反応液中の多価金属塩の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、3.0質量%以上25.0質量%以下であることが好ましい。多価金属塩の含有量が3.0質量%未満であると、インク中の顔料の分散状態を不安定化するのに要する時間が長くなることがあり、画像の光学濃度を十分に高めることが困難になる場合がある。一方、多価金属塩の含有量が25.0質量%超であると、反応液から水性媒体などの液体成分が蒸発した際に多価金属塩が析出しやすくなる場合がある。
反応剤としては、多価金属塩を用いることが好ましい。前述の有機酸と会合性増粘剤が反応液中で共存すると、会合性増粘剤が分子構造中にウレタン結合を有する場合、このウレタン結合中の酸素原子が有機酸のプロトンを捕捉する場合がある。このため、インク中の水溶性樹脂を析出させるためのプロトンが不足することがあり、画像の光学濃度を高める効果が不足する場合がある。これに対して、反応剤として多価金属塩を用いた場合には、上記のような、有機酸を用いた場合の画像の光学濃度を高める効果の低下が生じないために好ましい。
[水性媒体]
本発明のインクジェット記録方法で用いる反応液は、水性媒体として少なくとも水を含有する水性の反応液である。水性媒体は、さらに水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。反応液中の水の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、25.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法で用いる反応液は、水性媒体として少なくとも水を含有する水性の反応液である。水性媒体は、さらに水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。反応液中の水の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、25.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、インクジェット用の反応液に一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。水溶性有機溶剤としては、1価アルコール類、多価アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素極性化合物類、含硫黄極性化合物類などを用いることができる。これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。25℃における水溶性有機溶剤の蒸気圧は、水よりも低いことが好ましい。反応液中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
[その他の添加剤]
反応液には、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、反応液には、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
反応液には、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、反応液には、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
[反応液の物性]
反応液の粘度は、1mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上6mPa・s以下であることがさらに好ましい。反応液の粘度を上記の範囲とすることで、インクジェット方式の記録ヘッドからの吐出性を良好にすることができる。
反応液の粘度は、1mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上6mPa・s以下であることがさらに好ましい。反応液の粘度を上記の範囲とすることで、インクジェット方式の記録ヘッドからの吐出性を良好にすることができる。
反応液の表面張力の値は、記録ヘッドから吐出可能な範囲内で、かつ、インクの表面張力の値よりも大きいことが好ましい。表面張力の値を上記のように設定した反応液を用いると、記録ヘッドから良好な状態で吐出することができるとともに、記録領域と異なる箇所への反応液の滲みを抑制することができる。このため、記録媒体上の所望とする記録領域においてインクと反応液を効率的に接触させ、滲みのない良好な画像を記録することができる。
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体に反応液を付与した後、記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に付与する。これにより、記録媒体においてインク及び反応液を互いに接触させて、画像を記録することができる。
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体に反応液を付与した後、記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に付与する。これにより、記録媒体においてインク及び反応液を互いに接触させて、画像を記録することができる。
記録媒体への反応液の付与量は、接触及び反応させるインクの組成などに応じて適宜調整すればよい。記録される画像の均一性などの観点から、記録媒体への反応液の付与量は、0.5g/m2以上10.0g/m2以下とすることが好ましく、2.0g/m2以上5.0g/m2以下とすることがさらに好ましい。なお、反応液を付与する領域が記録媒体表面の一部分のみである場合には、記録媒体の全面(面積:m2)に反応液を付与したと仮定して、上記の反応液の付与量の値(g/m2)を算出する。
(インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、反応液と、インクと、その内部にインクが充填された記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置である。そして、インクが、顔料及び水溶性樹脂を含有する上述の水性インクであり、反応液が、色材を含有せず、会合性増粘剤、及び反応剤を含有する前述の水性反応液である。
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、反応液と、インクと、その内部にインクが充填された記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置である。そして、インクが、顔料及び水溶性樹脂を含有する上述の水性インクであり、反応液が、色材を含有せず、会合性増粘剤、及び反応剤を含有する前述の水性反応液である。
本発明のインクジェット記録装置は、前述の特定の反応液及びインクを備えること以外、従来公知のインクジェット記録装置と同様の構成を採用することができる。反応液は、反応液を付与する手段によって記録媒体に付与される。反応液を記録媒体に付与する手段としては、塗布方式によって反応液を記録媒体に塗布する手段や、吐出方式で反応液を記録媒体に付与する手段などを挙げることができる。塗布方式によって反応液を記録媒体に塗布する手段では、例えば、従来公知のローラなどの塗布部材を用いて反応液を記録媒体に塗布する。また、吐出方式で反応液を記録媒体に付与する手段では、例えば、記録ヘッドなどの吐出デバイスを用いて反応液を記録媒体に付与する。
記録ヘッドには、力学的エネルギーや熱エネルギーの作用により液体を吐出させる方式があるが、本発明においては特に熱エネルギーの作用により液体を吐出させる方式の記録ヘッドを用いることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。反応液11、18、26、及び27のpHは、pHメータ(商品名「F−21」、堀場製作所製)を使用して測定した。
<水溶性樹脂の調製>
(水溶性樹脂1〜15)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに100.00部のエチレングリコールモノブチルエーテルを添加した後、反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で110℃に昇温させた。このフラスコ内に、表1に示す種類及び量(単位:部)のモノマーの混合物と、表1に示す量(単位:部)の重合開始剤(t−ブチルパーオキサイド)のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。2時間エージングした後、エチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して固形の水溶性樹脂を得た。得られた水溶性樹脂に、酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加え、80℃で中和溶解して、樹脂の含有量が20.0%である水溶性樹脂1〜15の水溶液を得た。水溶性樹脂の酸価及び重量平均分子量を表1に示す。
(水溶性樹脂1〜15)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに100.00部のエチレングリコールモノブチルエーテルを添加した後、反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で110℃に昇温させた。このフラスコ内に、表1に示す種類及び量(単位:部)のモノマーの混合物と、表1に示す量(単位:部)の重合開始剤(t−ブチルパーオキサイド)のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。2時間エージングした後、エチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して固形の水溶性樹脂を得た。得られた水溶性樹脂に、酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加え、80℃で中和溶解して、樹脂の含有量が20.0%である水溶性樹脂1〜15の水溶液を得た。水溶性樹脂の酸価及び重量平均分子量を表1に示す。
(水溶性樹脂16)
温度計、撹拌機、窒素ガス導入管、及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート44.50部、ポリエチレングリコール(数平均分子量1,000)39.30部、及びジブチル錫ジラウレート0.007部を入れた。次いで、窒素ガス雰囲気下、100℃で5時間重合反応させた。65℃以下に冷却した後、ジメチロールプロピオン酸13.20部、及びネオペンチルグリコール3.00部を溶解させたメチルエチルケトン150.00部を添加した後、80℃で重合反応させた。反応後に40℃まで冷却し、メタノール20.00部を加えて反応を停止させた。イオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら水酸化カリウム溶液を添加して樹脂水溶液を得た。加熱減圧下でメチルエチルケトンと未反応のメタノールを留去した後、適量のイオン交換水を添加して、樹脂の含有量が10.0%である水溶性樹脂16の水溶液を得た。水溶性樹脂16の酸価は55mgKOH/g、重量平均分子量は8,000であった。
温度計、撹拌機、窒素ガス導入管、及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート44.50部、ポリエチレングリコール(数平均分子量1,000)39.30部、及びジブチル錫ジラウレート0.007部を入れた。次いで、窒素ガス雰囲気下、100℃で5時間重合反応させた。65℃以下に冷却した後、ジメチロールプロピオン酸13.20部、及びネオペンチルグリコール3.00部を溶解させたメチルエチルケトン150.00部を添加した後、80℃で重合反応させた。反応後に40℃まで冷却し、メタノール20.00部を加えて反応を停止させた。イオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら水酸化カリウム溶液を添加して樹脂水溶液を得た。加熱減圧下でメチルエチルケトンと未反応のメタノールを留去した後、適量のイオン交換水を添加して、樹脂の含有量が10.0%である水溶性樹脂16の水溶液を得た。水溶性樹脂16の酸価は55mgKOH/g、重量平均分子量は8,000であった。
(水溶性樹脂17)
ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールPVA102」、クラレ製、分子量8,800)を水溶性樹脂17とした。この水溶性樹脂17に適量のイオン交換水を添加して、樹脂の含有量が10.0%である水溶性樹脂17の水溶液を得た。
ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールPVA102」、クラレ製、分子量8,800)を水溶性樹脂17とした。この水溶性樹脂17に適量のイオン交換水を添加して、樹脂の含有量が10.0%である水溶性樹脂17の水溶液を得た。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1〜8及び10〜14)
表2の上段に示す種類及び量(単位:%)の各成分を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた後、遠心分離して粗大粒子を除去し、分散液を得た。カーボンブラックとしては、比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100gのものを用いた。得られた分散液をポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した後、イオン交換水を加えて、顔料分散液1〜8及び10〜14を得た。得られた顔料分散液の特性を表2の下段に示す。
(顔料分散液1〜8及び10〜14)
表2の上段に示す種類及び量(単位:%)の各成分を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた後、遠心分離して粗大粒子を除去し、分散液を得た。カーボンブラックとしては、比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100gのものを用いた。得られた分散液をポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した後、イオン交換水を加えて、顔料分散液1〜8及び10〜14を得た。得られた顔料分散液の特性を表2の下段に示す。
(顔料分散液9)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液を5℃に冷却し、4−アミノフタル酸1.5gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて溶液を撹拌し、液温を10℃以下に保った状態で、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た亜硝酸ナトリウム溶液を加えた。さらに15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)6.0gを撹拌下で加えた。さらに15分間撹拌して得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過して粒子を得た。得られた粒子を十分に水洗した後、110℃のオーブンで乾燥させて、顔料の粒子表面に−C6H3−(COONa)2基が結合した自己分散顔料を得た。得られた自己分散顔料に適量の水を加えて顔料分散液9を得た。得られた顔料分散液9中の顔料の含有量は10.0%であった。
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液を5℃に冷却し、4−アミノフタル酸1.5gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて溶液を撹拌し、液温を10℃以下に保った状態で、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た亜硝酸ナトリウム溶液を加えた。さらに15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)6.0gを撹拌下で加えた。さらに15分間撹拌して得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過して粒子を得た。得られた粒子を十分に水洗した後、110℃のオーブンで乾燥させて、顔料の粒子表面に−C6H3−(COONa)2基が結合した自己分散顔料を得た。得られた自己分散顔料に適量の水を加えて顔料分散液9を得た。得られた顔料分散液9中の顔料の含有量は10.0%であった。
<会合性増粘剤の合成>
合成した会合性増粘剤の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。合成した会合性増粘剤の特性(構造及び重量平均分子量)を表3に示す。
合成した会合性増粘剤の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。合成した会合性増粘剤の特性(構造及び重量平均分子量)を表3に示す。
(会合性増粘剤A)
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。オクタデシルアルコール18.5部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Aを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Aの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。オクタデシルアルコール18.5部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Aを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Aの含有量が10.0%である液体を得た。
(会合性増粘剤B)
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。ベンジルアルコール2.2部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Bを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Bの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。ベンジルアルコール2.2部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Bを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Bの含有量が10.0%である液体を得た。
(会合性増粘剤C)
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。2−トリデシルアルコール18.5部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Cを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Cの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。2−トリデシルアルコール18.5部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Cを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Cの含有量が10.0%である液体を得た。
(会合性増粘剤D)
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。1−エイコサノール4.0部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Dを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Dの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。1−エイコサノール4.0部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Dを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Dの含有量が10.0%である液体を得た。
(会合性増粘剤E)
数平均分子量6,000のポリエチレングリコール600.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。オクタデシルアルコール5.5部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Eを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Eの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量6,000のポリエチレングリコール600.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。オクタデシルアルコール5.5部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Eを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Eの含有量が10.0%である液体を得た。
(会合性増粘剤F)
数平均分子量1,000のポリエチレングリコール100.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。ベンジルアルコール0.50部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Fを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Fの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量1,000のポリエチレングリコール100.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。ベンジルアルコール0.50部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Fを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Fの含有量が10.0%である液体を得た。
(会合性増粘剤G)
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、トリレンジイソシアネート19.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。オクタデシルアルコール2.4部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Gを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Gの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、トリレンジイソシアネート19.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。オクタデシルアルコール2.4部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Gを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Gの含有量が10.0%である液体を得た。
(会合性増粘剤H)
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で30分反応させた。オクタデシルアルコール27.0部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Hを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Hの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で30分反応させた。オクタデシルアルコール27.0部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Hを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Hの含有量が10.0%である液体を得た。
(会合性増粘剤I)
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート16.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。数平均分子量4,000のポリエチレングリコール40.0部を添加し、3時間反応させた。さらに、オクタデシルイソシアネート6.0部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Iを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Iの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート16.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。数平均分子量4,000のポリエチレングリコール40.0部を添加し、3時間反応させた。さらに、オクタデシルイソシアネート6.0部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Iを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Iの含有量が10.0%である液体を得た。
(会合性増粘剤J)
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。オクタデシルアルコール/EO40モル付加物41.0部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Jを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Jの含有量が10.0%である液体を得た。
数平均分子量4,000のポリエチレングリコール400.0部を、減圧下、80〜90℃で3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18.5部を加え、80〜90℃で4時間反応させた。オクタデシルアルコール/EO40モル付加物41.0部を加え、80〜90℃で3時間反応させて会合性増粘剤Jを得た。適量のイオン交換水を添加して、会合性増粘剤Jの含有量が10.0%である液体を得た。
表3中の略号の意味を以下に示す。
C18:オクタデシル基(炭素数18)
C7:ベンジル基(炭素数7)
C13:1−メチルドデシル基(炭素数13)
C20:エイコシル基(炭素数20)
C6:ヘキサメチレン基(炭素数6)
C8:トリレン基(炭素数7)
U:ウレタン結合
C18:オクタデシル基(炭素数18)
C7:ベンジル基(炭素数7)
C13:1−メチルドデシル基(炭素数13)
C20:エイコシル基(炭素数20)
C6:ヘキサメチレン基(炭素数6)
C8:トリレン基(炭素数7)
U:ウレタン結合
<インクの調製>
表4−1及び4−2の上段に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)を用いて加圧ろ過して、各インクを調製した。表4−1及び4−2中の「アセチレノールE100」は、界面活性剤(川研ファインケミカル製)の商品名である。表4−1及び4−2の下段にインクの特性を示す。
表4−1及び4−2の上段に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)を用いて加圧ろ過して、各インクを調製した。表4−1及び4−2中の「アセチレノールE100」は、界面活性剤(川研ファインケミカル製)の商品名である。表4−1及び4−2の下段にインクの特性を示す。
<反応液の調製>
表5−1〜5−3の上段に示す各成分(単位:%)を混合した。但し、反応液11、18、26、及び27については、8mol/L(33.8%)の水酸化カリウム水溶液を添加してpHを4に調製した。十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)を用いて加圧ろ過して、各反応液を調製した。表5−1〜5−3の下段に反応液中の会合性増粘剤の含有量を示す。
表5−1〜5−3の上段に示す各成分(単位:%)を混合した。但し、反応液11、18、26、及び27については、8mol/L(33.8%)の水酸化カリウム水溶液を添加してpHを4に調製した。十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)を用いて加圧ろ過して、各反応液を調製した。表5−1〜5−3の下段に反応液中の会合性増粘剤の含有量を示す。
<評価>
熱エネルギーの作用により液体を吐出する記録ヘッドを搭載した記録装置(商品名「PIXUS Pro9500」、キヤノン製)を改造したインクジェット記録装置を用意した。調製したインク及び反応液を表6−1及び6−2の左側に示す組み合わせでそれぞれカートリッジに充填した。反応液のカートリッジをフォトマゼンタのポジションにセットした。インクのカートリッジは2つ分用意し、シアン及びレッドのポジションにそれぞれセットした。表6−1及び6−2には、「反応液中の会合性増粘剤の含有量(%)/インク中の顔料の含有量(%)」の値を「質量比率(倍)」として示した。
熱エネルギーの作用により液体を吐出する記録ヘッドを搭載した記録装置(商品名「PIXUS Pro9500」、キヤノン製)を改造したインクジェット記録装置を用意した。調製したインク及び反応液を表6−1及び6−2の左側に示す組み合わせでそれぞれカートリッジに充填した。反応液のカートリッジをフォトマゼンタのポジションにセットした。インクのカートリッジは2つ分用意し、シアン及びレッドのポジションにそれぞれセットした。表6−1及び6−2には、「反応液中の会合性増粘剤の含有量(%)/インク中の顔料の含有量(%)」の値を「質量比率(倍)」として示した。
記録ヘッドの吐出口の配置幅分の画像を、記録ヘッドのホームポジションから開始する走査でのみ記録する1パス片方向記録とし、記録ヘッドの同一の主走査で反応液を記録媒体に付与した後、重ねるようにインクを付与した。本実施例においては、1/600inch×1/600inchを1ピクセルと定義する。そして、1ピクセルを格子状に4分割して、以下のように反応液及びインクを付与した。反応液については、4分割された格子に千鳥状に1.5滴を付与した。インクについては、レッドのポジションに対応する吐出口から4分割された格子のそれぞれに4滴付与するとともに、シアンのポジションに対応する吐出口から4分割された格子に千鳥状に2滴(合計6滴)付与した。本発明においては、以下に示す評価基準で、「AAA」、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表6−1及び6−2の右側に示す。
(光学濃度)
3種類の記録媒体(商品名「PB PAPER」(キヤノン製)、商品名「Cano Office」(キヤノン製)、商品名「Xerox4200」(富士ゼロックス製))に1cm×2cmのベタ画像をそれぞれ記録した。1時間後、分光光度計(商品名「Macbeth RD918」、Macbeth製)を使用し、光源:D50、視野:2°の条件でベタ画像の光学濃度を測定し、以下に示す基準にしたがって画像の光学濃度を評価した
[ブラックのベタ画像の場合の評価基準]
AA:3紙の平均値が、1.50以上であった。
A:3紙の平均値が、1.45以上1.50未満であった。
B:3紙の平均値が、1.40以上1.45未満であった。
C:3紙の平均値が、1.40未満であった。
[シアンのベタ画像の場合の評価基準]
AA:3紙の平均値が、1.45以上であった。
A:3紙の平均値が、1.40以上1.45未満であった。
B:3紙の平均値が、1.35以上1.40未満であった。
C:3紙の平均値が、1.35未満であった。
[マゼンタのベタ画像の場合の評価基準]
AA:3紙の平均値が、1.35以上であった。
A:3紙の平均値が、1.30以上1.35未満であった。
B:3紙の平均値が、1.25以上1.30未満であった。
C:3紙の平均値が、1.25未満であった。
3種類の記録媒体(商品名「PB PAPER」(キヤノン製)、商品名「Cano Office」(キヤノン製)、商品名「Xerox4200」(富士ゼロックス製))に1cm×2cmのベタ画像をそれぞれ記録した。1時間後、分光光度計(商品名「Macbeth RD918」、Macbeth製)を使用し、光源:D50、視野:2°の条件でベタ画像の光学濃度を測定し、以下に示す基準にしたがって画像の光学濃度を評価した
[ブラックのベタ画像の場合の評価基準]
AA:3紙の平均値が、1.50以上であった。
A:3紙の平均値が、1.45以上1.50未満であった。
B:3紙の平均値が、1.40以上1.45未満であった。
C:3紙の平均値が、1.40未満であった。
[シアンのベタ画像の場合の評価基準]
AA:3紙の平均値が、1.45以上であった。
A:3紙の平均値が、1.40以上1.45未満であった。
B:3紙の平均値が、1.35以上1.40未満であった。
C:3紙の平均値が、1.35未満であった。
[マゼンタのベタ画像の場合の評価基準]
AA:3紙の平均値が、1.35以上であった。
A:3紙の平均値が、1.30以上1.35未満であった。
B:3紙の平均値が、1.25以上1.30未満であった。
C:3紙の平均値が、1.25未満であった。
(耐マーカー性)
上記3種の記録媒体に12ポイントのゴシック体の文字画像を記録した。1日後にマーカーペン(商品名「蛍光オプテックス2黄」、ゼブラ製)で文字部をマークし、文字部の状態を目視で確認した。さらに、マーカーペンでマークした部分に重なるように、再度、マーカーペンでマークし、文字部の状態を目視で確認した。さらに、同様の操作をもう1回実施し、以下に示す基準にしたがって画像の耐マーカー性を評価した。
AAA:3種の記録媒体の全てが、3回マークしても汚れが目立たない。
AA:3種のうち2種の記録媒体が、3回マークしても汚れが目立たない。
A:3紙のうち1種の記録媒体が、3回マークしても汚れが目立たない。
B:3種の記録媒体の全てが、2回マークしても汚れが目立たないが、3回マークすると汚れが生じた。
C:3種のうち1種以上の記録媒体が、2回マークすると汚れが生じた。
上記3種の記録媒体に12ポイントのゴシック体の文字画像を記録した。1日後にマーカーペン(商品名「蛍光オプテックス2黄」、ゼブラ製)で文字部をマークし、文字部の状態を目視で確認した。さらに、マーカーペンでマークした部分に重なるように、再度、マーカーペンでマークし、文字部の状態を目視で確認した。さらに、同様の操作をもう1回実施し、以下に示す基準にしたがって画像の耐マーカー性を評価した。
AAA:3種の記録媒体の全てが、3回マークしても汚れが目立たない。
AA:3種のうち2種の記録媒体が、3回マークしても汚れが目立たない。
A:3紙のうち1種の記録媒体が、3回マークしても汚れが目立たない。
B:3種の記録媒体の全てが、2回マークしても汚れが目立たないが、3回マークすると汚れが生じた。
C:3種のうち1種以上の記録媒体が、2回マークすると汚れが生じた。
比較例13は、付与順序が逆のパターン(インクを付与した後、反応液を重ねるように付与したパターン)である。その結果、光学濃度の高い画像を記録することはできなかった。
Claims (9)
- 記録媒体に反応液を付与した後、記録ヘッドからインクを吐出して前記記録媒体に付与し、画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、顔料及び水溶性樹脂を含有する水性インクであり、
前記水溶性樹脂が、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体であり、
前記反応液が、色材を含有せず、会合性増粘剤、及び反応剤を含有する水性の反応液であり、
前記会合性増粘剤が、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物であり、
前記反応液中の前記会合性増粘剤の含有量(質量%)が、前記インク中の前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.06倍以上0.50倍以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
R1−X1−R2−X2−[(EO)l−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(1)
R1−X1−(EO)l−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(2)
R1−(EO)l−X1−R2−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−(EO)o−R4 ・・・(3)
(前記一般式(1)〜(3)中、R1及びR4は、それぞれ独立に炭素数6以上20以下のアルキル基又は炭素数6以上20以下の芳香環を有する炭化水素基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数6以上36以下の2価の炭化水素基を表し、X1〜X4は、それぞれ独立にウレタン結合又はエステル結合を表し、EOは、エチレンオキサイドを表し、l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、oは、0以上の整数を表す) - 前記反応液中の前記会合性増粘剤の含有量(質量%)が、前記インク中の前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.12倍以上0.40倍以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記アニオン性基を有しないユニットが、炭素数4以上12以下の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有する請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記顔料が、樹脂分散顔料である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水溶性樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上170mgKOH/g以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記反応剤が、多価金属塩である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水溶性樹脂の重量平均分子量が、5,000以上60,000以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記反応液中の前記会合性増粘剤の含有量(質量%)が、前記反応液中の前記反応剤の含有量(質量%)に対する比率で、0.025倍以上0.25倍以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 反応液と、インクと、その内部に前記インクが充填された記録ヘッドと、を備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクが、顔料及び水溶性樹脂を含有する水性インクであり、
前記水溶性樹脂が、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを含む共重合体であり、
前記反応液が、色材を含有せず、会合性増粘剤、及び反応剤を含有する水性の反応液であり、
前記会合性増粘剤が、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物であり、
前記反応液中の前記会合性増粘剤の含有量(質量%)が、前記インク中の前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.06倍以上0.50倍以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
R1−X1−R2−X2−[(EO)l−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(1)
R1−X1−(EO)l−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−R4 ・・・(2)
R1−(EO)l−X1−R2−X2[(EO)n−X3−R3−X4]m−(EO)o−R4 ・・・(3)
(前記一般式(1)〜(3)中、R1及びR4は、それぞれ独立に炭素数6以上20以下のアルキル基又は炭素数6以上20以下の芳香環を有する炭化水素基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数6以上36以下の2価の炭化水素基を表し、X1〜X4は、それぞれ独立にウレタン結合又はエステル結合を表し、EOは、エチレンオキサイドを表し、l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、oは、0以上の整数を表す)
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JP2016132711A JP2018001625A (ja) | 2016-07-04 | 2016-07-04 | インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 |
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---|---|---|---|---|
JP2019156995A (ja) * | 2018-03-14 | 2019-09-19 | セイコーエプソン株式会社 | インクセット、及び該インクセットを用いた記録方法 |
JP2020075436A (ja) * | 2018-11-09 | 2020-05-21 | 東洋インキScホールディングス株式会社 | 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット |
US11292931B2 (en) | 2018-03-19 | 2022-04-05 | Ricoh Company, Ltd. | Inkjet ink, inkjet ink set, ink stored container, and inkjet recording method |
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2016
- 2016-07-04 JP JP2016132711A patent/JP2018001625A/ja active Pending
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