JP2012224741A - インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】その表面張力が低い場合においても、定着性が確保されるとともに、発色性と保存安定性を満足するインク、該インクを用いたインクカートリッジ及びインクジェット記録方法の提供。
【解決手段】顔料、前記顔料を分散するための樹脂、塩、及び必要に応じて界面活性剤を含有するインクであって、前記樹脂の酸価が、70mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であり、前記塩が、所定のカチオンと、所定のアニオンが結合して構成されたものであり、前記界面活性剤の含有量が、インク全質量を基準として0.2質量%以下であり、前記インクの25℃における表面張力が、33mN/m以上40mN/m以下であることを特徴とするインク。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用としても好適なインク、前記インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、インクジェット記録方法では、オフィス用途で多用される記録媒体、特には普通紙に対して、高い堅牢性を有する画像を記録することと、高速記録とを高いレベルで両立することが求められている。画像の堅牢性向上には、インクの色材として顔料を用い、さらに、顔料の分散のために樹脂分散剤を使用することで、記録媒体における顔料の露出を抑制することが有効である。
しかし、樹脂により分散された顔料を含有するインクでは、顔料粒子の表面に樹脂が吸着しているため、該インクが記録媒体に付与され、インク中の水性媒体が蒸発した際に、いわゆる自己分散顔料を用いた場合よりも顔料の凝集が生じにくい。このため、顔料が記録媒体に浸透し、画像濃度が低くなってしまうことが知られている。それに対し、顔料と樹脂分散剤を含有するインクにさらに塩を添加することで、高い画像濃度を達成するという試みがある(特許文献1参照)。
また、高速記録に対して要求されるレベルも年々高くなってきている。高速記録では給紙間隔が短く、先に記録された画像のインクが、次に給紙される記録媒体の裏に転写するという現象が起り易いため、画像の定着性を向上することが求められている。それに対し、インクの表面張力を下げることで記録媒体へのインクの浸透性を上げ、定着性を高めるといった取り組みがなされている(特許文献2参照)。
特開2001−81380号公報 特開昭63−299970号公報
本発明者らは、樹脂分散顔料を含有するインクによって高い画像濃度を得るために、特許文献1に示される塩をインクに添加するという手法を試みた。その結果、特許文献1の実施例に挙げられたような表面張力が高いインクではその作用が発揮されたが、高速記録対応のために記録媒体への浸透性を高めたインクにおいては塩を多量に含有させても発色性が向上しない場合があった。そこで本発明者らは表面張力が低くても高い画像濃度となる条件について検討した。その結果、塩による顔料の凝集は、顔料を分散させるための樹脂の酸価に大きく影響されることがわかった。
したがって、本発明の目的は、その表面張力が低い場合においても、定着性が確保されるとともに、発色性と保存安定性を満足するインク、該インクを用いたインクカートリッジ及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、顔料、前記顔料を分散するための樹脂、塩、及び必要に応じて界面活性剤を含有するインクであって、前記樹脂の酸価が、70mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であり、前記塩が、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2 -、ClO3 -、ClO4 -、NO2 -、NO3 -、SO4 2-、CO3 2-、HCO3 -、HCOO-、(COO-2、COOH(COO-)、CH3COO-、C24(COO-2、C65COO-、C64(COO-2、PO4 3-、HPO4 2-、及びH2PO4 -からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンとが結合して構成されたものであり、前記界面活性剤の含有量が、インク全質量を基準として0.2質量%以下であり、前記インクの25℃における表面張力が、33mN/m以上40mN/m以下であることを特徴とするインクを提供する。
本発明によれば、インクの表面張力が低い場合においても、定着性が確保されるとともに、発色性と保存安定性を満足することができるインク、該インクを用いたインクカートリッジ及びインクジェット記録方法を提供することができる。
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。なお、本発明における静的表面張力、動的表面張力などの各種の物性は25℃における値である。本発明において、単に「表面張力」と記載しているものは、ウィルヘルミー法(プレート法)により測定される静的表面張力のことであり、また、動的表面張力は、最大泡圧法により測定される値のことである。
高い定着性を得るためにはインクの表面張力を40mN/m以下、より好ましくは36mN/m以下にする必要がある。まず、本発明者らは表面張力が低いインクでも、塩を添加することで発色性が向上する条件を探索した。そうしたところ、顔料を分散させるために使用する樹脂の酸価が140mgKOH/g以下であると、塩による凝集作用が強く、記録媒体へのインクの浸透が起こる前に凝集が起こって発色性が向上することを見出した。また、樹脂の酸価が140mgKOH/gを超えるインク、例えば、150mgKOH/gの酸価を示す樹脂を用いたインクにおいて、塩の添加量を多くすることで凝集作用を強める試みをしたが、発色性向上の効果は薄かった。
このように特定の酸価の樹脂と塩を用いることで、樹脂分散顔料を含有し、表面張力が低いインクであっても、高い発色性を得ることができた。しかし、従来のインクでは顔料の分散状態の不安定化が生じない程度の量の塩を添加したにもかかわらず、このインクを高温保存すると顔料の粒子径増大が起こってしまった。
本発明者らは、顔料の分散剤として使用する樹脂の酸価によって、発色性が向上するか否かが異なる理由を以下のように推測している。水に不溶である顔料を分散させる方法の一つに樹脂分散剤を用いる方法がある。この方法では、負(マイナス)に帯電している酸性基を有する水溶性樹脂を顔料粒子の表面に物理的に吸着させ、樹脂の立体反発力と顔料粒子の表面に形成される電気二重層による静電反発力により分散状態を安定化する。ここにカチオン性の物質を添加すると電気二重層の圧縮が生じ、顔料粒子間の静電反発力が消失することにより、顔料粒子同士が衝突し凝集が起こるが、この電気二重層の圧縮はカチオンの価数が高いほど強く生じる。酸価が高い樹脂分散剤を用いたインクは酸性基が多いため電気二重層が厚く、1価のカチオンでは顔料の凝集は起こりづらい。しかし、酸価が低い樹脂は酸性基が少ないため、1価のカチオンでも、記録媒体において水性媒体の浸透や蒸発が生じた際には顔料の凝集が起こる。すると、インク中の顔料や樹脂分散剤と、水性媒体との固液分離が起こり、記録媒体の表面により多くの顔料が残るので発色性が高くなる。本発明者らの検討の結果、1価のカチオンでも上述の顔料の凝集を生じさせ、発色性を高めるには、顔料の分散剤として用いる樹脂の酸価を140mgKOH/g以上とする必要があることがわかった。
ただし、インクの表面張力があまりにも低すぎると、顔料の凝集よりも先に記録媒体へのインクの浸透が起こってしまう。このため、インクの表面張力は33mN/m以上である必要がある。つまり、本発明においては、インクの表面張力が33mN/m以上40mN/m以下であることを要し、33mN/m以上36mN/m以下であることがより好ましい。
なお、顔料を分散させるために使用する樹脂はその酸価が低いほど顔料の凝集性は高くなるが、70mgKOH/gより低い場合は酸性基が少なすぎるため、発色性を満足させるだけの塩を添加するとインクの保存安定性が低下する。これは後述する界面活性剤の量によらず起きた。したがって、樹脂の酸価の範囲は70mgKOH/g以上140mgKOH/g以下である必要がある。より好ましい樹脂の酸価の範囲は85mgKOH/g以上125mgKOH/g以下であり、本発明の効果をさらに高めることができる。
次に、良好な定着性と保存安定性を得るための要件について説明する。本発明者らはインクの表面張力を下げるために、インクに界面活性剤を添加した。常温(25℃)付近では界面活性剤は水との水素結合により水性媒体中に溶解しているが、高温になり界面活性剤の曇点を超えると水和水が減り疎水性が高くなる。また、塩も界面活性剤の水和水を奪い界面活性剤の疎水性がさらに高くなる。ここで、本発明にいう界面活性剤とは、親水基と疎水基を有する、両親媒性物質のことをいい、液体中の界面活性剤の量を増やしていくとある濃度でミセルを形成する性質を示す。このような条件を満たす物質を、本発明においては界面活性剤として記載する。この温度及び塩の2つの条件により疎水性が高くなった界面活性剤は、顔料粒子の表面に吸着しようとして元々そこに吸着していた樹脂分散剤を剥がし、その結果、顔料の分散状態が不安定となり凝集してしまうことが本発明者らの検討により判明した。そこで本発明者らは塩と樹脂分散顔料を含有するインクにおいて、保存安定性を損なうことなく記録媒体へのインクの浸透性を高める手法を探した。その結果、以下に挙げる3つの手法が有効であり、特に1つ目の手法は使用上問題ないレベルの保存安定性とするためには実質的に必須であると言えることがわかった。
1つ目はインク中の界面活性剤の含有量を低下させるという手法である。前述したように、界面活性剤が顔料粒子の表面から樹脂分散剤を剥がし、顔料の分散状態を不安定化させる。界面活性剤の含有量が0.2質量%以下であると、界面活性剤が顔料粒子の表面に吸着しても、顔料の分散状態を安定に保つのに必要なだけの樹脂が顔料粒子の表面に吸着していることがわかった。
2つ目は樹脂の顔料粒子の表面への吸着性を高める手法である。樹脂の顔料粒子の表面への吸着力が高いほど界面活性剤により剥がされにくく保存安定性が良化する。以下に吸着力が強い樹脂の条件の例を挙げる。まず、樹脂の酸価は低いことが好ましい。樹脂はその酸価が低いほど酸性基が少ないため疎水性が強く、顔料粒子の表面に吸着し易いと考える。次に、樹脂分散剤は親水性ユニットと疎水性ユニットとの共重合体であるが、共重合体がブロック構造やグラフト構造を有するものであることが好ましい。ブロック構造やグラフト構造は、疎水性ユニットが集まって存在する構造であるため、疎水性ユニットが点在するランダム構造の共重合体に比べて顔料粒子の表面に吸着し易いと考えている。
3つ目は界面活性剤を添加する方法以外の方法で、インクの表面張力を下げるという手法である。インクの表面張力を下げる界面活性剤以外の材料として、1,2−ヘキサンジオールなどのアルコール類や、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類などの浸透性が高い水溶性有機溶剤が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤はインクの表面張力を下げる働きがあるものの、大きな疎水基を持たないためにミセルを形成せず、界面活性剤とは明確に区別される。また、界面活性剤と比較すると、これらの水溶性有機溶剤は疎水基が小さいために、顔料粒子の表面に吸着せず保存安定性を低下させない。しかし、これらの水溶性有機溶剤は界面活性剤と比べると低分子であるがゆえに界面への配向が早く、界面活性剤で表面張力を下げた場合と比較して寿命時間10〜200m秒におけるインクの動的表面張力が低くなりすぎてしまう。その結果、インクが記録媒体に付与された後、塩の作用によって顔料の凝集が十分に起こる前にインクが浸透してしまい、発色性が若干低下してしまった。よって、これらの水溶性有機溶剤を使用する場合は、インク中の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として5.0質量%以下程度にし、下げきることができない表面張力は界面活性剤を併用し調節することが好ましい。勿論、本発明においては、インクの表面張力を所定の範囲内に調整することができれば、これらの水溶性有機溶剤や界面活性剤の一方又は両方を使用してもよく、又は、いずれも使用しなくてもよい。
このように、記録媒体へのインクの浸透性を制御することができれば塩の作用を十分に発揮させることが可能となり、さらに発色性が向上することがわかった。本発明者らはさらに、寿命時間10〜200m秒における動的表面張力は高く、静的表面張力は40mN/m以下となるような特性をインクに持たせるための材料を探索した。その結果、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有するウレタン樹脂を添加すると、界面活性剤を併用しなくても上記のような動的表面張力の高いインクとなることがわかった。ウレタン樹脂はポリオールに由来するユニットから構成されるソフトセグメント(親水性部)と、ウレタン結合やウレア結合から構成されるハードセグメント(疎水性部)を有する。そのため、ウレタン樹脂は、界面活性剤のようにインクの表面張力を下げる働きを示し、高分子であるために界面への配向が遅く寿命時間10〜200m秒の動的表面張力は下がりにくい。また、上記ウレタン樹脂は高分子のため顔料粒子の表面に吸着し、インクの保存安定性を向上する作用もある。以上のように、上記ウレタン樹脂を用いることで、界面活性剤を用いることなく、又は少ない量でインクの表面張力を制御することができ、良好な定着性と保存安定性を両立することができる。
[インク]
本発明のインクは、顔料を含有し、該顔料が樹脂(樹脂分散剤)により分散されてなるものである。以下、インクを構成する各成分について説明する。
<樹脂>
本発明のインクは、顔料を分散するための樹脂として、酸価が70mgKOH/g以上140mgKOH/g以下である樹脂を含有する。本発明において、顔料を分散させている樹脂とは、インク中に存在する樹脂のうち、顔料粒子の表面に相対的に多く吸着している樹脂のことをさすものとする。例えば、顔料を分散するために使用した樹脂Aが、インクを調製する際に添加した他の樹脂Bと置き換わったとする。この場合、インク中において顔料粒子の表面に吸着している樹脂の多くが樹脂Bとなった場合には、本発明における顔料を分散するための樹脂は、樹脂Bであることになる。
本発明においては、インク中の樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.01質量%以上10.0質量%以下、さらには0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の樹脂の含有量が、顔料の含有量に対する質量比率(樹脂/顔料)で、0.10倍以上0.90倍以下であることが好ましい。なお、この質量比率を算出する場合の樹脂及び顔料の含有量は、いずれもインク全質量を基準とした値であり、また、インク中に複数種の顔料や樹脂が存在する場合には、それぞれの合計量として算出するものとする。
インクに含有させる、顔料を分散させるための樹脂としては、以下に挙げるような単量体からなる、親水性ユニット及び疎水性ユニットの両方を構成ユニットとして少なくとも有するものが用いられる。なお、以下の記載における(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルを示すものとする。
重合により親水性ユニットとなる、親水性基を有する単量体としては、以下のものが挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有する酸性単量体、(メタ)アクリル酸−2−ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有する酸性単量体が挙げられる。さらに、これらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有する単量体が挙げられる。なお、アニオン性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。
また、重合により疎水性ユニットとなる、疎水性基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する単量体が挙げられる。さらに、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有する単量体が挙げられる。
本発明においては、インク中で顔料を分散させるための樹脂が、水溶性樹脂であることが好ましい。なお、本発明において「樹脂が水溶性である」とは、該樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に粒子径を有さないものであることを意味する。このような条件を満たす樹脂を、本発明においては水溶性樹脂として記載する。樹脂としては、ランダム、ブロック、グラフトなどの各種の共重合体が挙げられる。重量平均分子量が大きい樹脂は静電反発だけでなく、立体反発によっても顔料の分散状態を安定にするので、界面活性剤の作用による顔料粒子の表面からの脱離が生じにくい。ただし、重量平均分子量があまりに大きすぎると、樹脂そのものが立体障害によりかえって顔料粒子の表面に吸着しにくくなってしまうため、高いレベルの分散安定性が十分に得られない場合がある。したがって、顔料の分散状態を安定に保つために、樹脂は、その重量平均分子量が3,000以上100,000以下、さらには3,000以上10,000以下であるものが好ましい。
また、上記したような、インク中で顔料を分散させるための樹脂分散剤以外にも、例えば、記録された画像になんらかの機能を付加するなどのために、さらに水溶性樹脂を添加することができる。このような水溶性樹脂としては、上記したような、インク中で顔料を分散させるために用いる樹脂以外にも、例えばポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂又はこれらの塩などが例示される。なお、単量体として、エチレンオキシドなどのノニオン性基を有するものを使用した樹脂は、記録媒体において形成された膜の強度が弱くなってしまう場合もあるので、あまり好ましくない。
<塩>
本発明のインクは、特定のカチオンと特定のアニオンとが結合して構成される塩を含有する。前記カチオンは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。さらに、前記アニオンは、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2 -、ClO3 -、ClO4 -、NO2 -、NO3 -、SO4 2-、CO3 2-、HCO3 -、HCOO-、(COO-)2、COOH(COO-)、CH3COO-、C24(COO-)2、C65COO-、C64(COO-)2、PO4 3-、HPO4 2-及びH2PO4 -からなる群から選ばれる少なくとも1種である。上記カチオンのうち、アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、Kなどが挙げられる。インク中における塩の状態は、その一部が解離した状態、又は全てが解離した状態のいずれの状態であってもよい。
本発明のインクに用いることができるカチオンとアニオンとが結合して構成される塩としては、以下のものが挙げられる。例えば、MCl、MBr、MI、MClO、MClO2、MClO3、MClO4、MNO2、MNO3、M2SO4、M2CO3、MHCO3、HCOOM、(COOM)2、COOH(COOM)、CH3COOM、C24(COOM)2、C65COOM、C64(COOM)2、(M)3PO4、(M)2HPO4、(M)H2PO4が挙げられる。なお、上記Mは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。上記の塩の中でも、M2SO4(例えば、硫酸カリウム)、C65COOM(例えば、安息香酸アンモニウム)、C64(COOM)2(例えば、フタル酸アンモニウム)、顔料及び樹脂との相性が良く、発色性がより向上するために好ましい。
塩の分子量によっても異なるが、インク中の塩の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上5.0質量%以下、さらには0.5質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
<顔料>
本発明のインクを構成する色材は顔料である。本発明で用いることができる顔料の種類は特に限定されず、公知の無機顔料や有機顔料をいずれも用いることができる。具体的には、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料、フタロシアニン、キナクドリンなどの有機顔料が挙げられる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには0.2質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
<界面活性剤>
本発明にいう界面活性剤とは、親水基と疎水基を有する、両親媒性物質のことをいい、液体中の界面活性剤の量を増やしていくとある濃度でミセルを形成する性質を示す。具体的には、以下に示すような、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性などの各種の界面活性剤である。上述の通り、保存安定性の観点から、界面活性剤を使用する場合には、インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.2質量%以下である必要がある。本発明においては、インクの表面張力を所定の範囲内に調整することを要し、このために界面活性剤を使用する場合の含有量の上限は0.2質量%以下とする必要があるが、他の手段により調整可能であれば界面活性剤をインクに含有させなくてもよい。
前記界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(炭素数12乃至22程度の高級アルコールの、エチレンオキサイド付加物)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレングリコール系化合物、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物などのノニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルテトラリンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリドなどのカチオン性界面活性剤;アルキルカルボキシベタインなどの両性界面活性剤;フッ素系化合物、シリコーン系化合物などのその他の界面活性剤が挙げられる。
<水性媒体>
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒を水性媒体として含有させることが好ましい。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤としては、従来、例えば、インクジェット用のインクに一般的に使用される公知のものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上の水溶性有機溶剤を用いることができる。具体的には、1価又は多価のアルコール類、アルキレン基の炭素数が1〜4程度のアルキレングリコール類、平均分子量200〜2,000程度のポリエチレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などが挙げられる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。なお、この含有量は、後述する浸透性が高い水溶性有機溶剤を使用する場合には、その含有量を含む値である。
本発明においては、水溶性有機溶剤の中でも、表面張力を下げる特性を有するものを用いることが好ましい。例えば、浸透性が高い水溶性有機溶剤である、エタノール、イソプロピルアルコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどのアルコール類;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類(炭素数1乃至5程度の低級アルコールの、エチレンオキサイド付加物)を用いることが特に好ましい。勿論、本発明においては、他の手段によりインクの表面張力を所定の範囲内に調整することができれば、これらの水溶性有機溶剤は使用しなくてもよい。これらの水溶性有機溶剤を使用する場合には、その含有量(質量%)を、インク全質量を基準として5.0質量%以下とすることが好ましい。
<ウレタン樹脂>
本発明のインクには、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有するウレタン樹脂をさらに添加することが好ましい。インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、目標とするインクの表面張力に合わせて決定すればよく、例えば、インク全質量を基準として、5.0質量%以下とすることが好ましい。ウレタン樹脂の含有量が5.0質量%を超えると、インクの組成にもよるが、インクジェット用のインクとして用いた場合に吐出安定性が不十分になる場合がある。
ポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族、芳香族、又は芳香脂肪族などのポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、酸基を有するポリオールなどが挙げられる。本発明においては、ポリエーテルポリオールや酸基を有するジオールを用いて合成されたウレタン樹脂を使用することが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−ブチレングリコール)、ポリ(1,3−ブチレングリコール)、ポリプロピレングリコールなどが挙げられ、その数平均分子量が400〜4,000程度のものが特に好ましい。また、酸基を有するジオールとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などが挙げられる。酸基を有するジオールは塩の形態であってもよく、その場合、塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩や、ジメチルアミンなどの有機アミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
本発明においては、ウレタン樹脂が、酸基を有するジオールに由来するユニットがジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸の少なくとも一方に由来するユニットであることが好ましい。さらに、該ウレタン樹脂の分子末端に存在する前記ジオールに由来するユニットが占める割合が、該ウレタン樹脂中の全ての前記ジオールに由来するユニットを基準として10.0モル%以上であることが好ましい。なお、前記割合の上限は、60.0モル%以下であることが好ましい。
インク中のウレタン樹脂の含有量が多いと、ウレタン樹脂が顔料粒子の表面に吸着し、立体反発作用により顔料の分散状態をより安定化させ得る。しかし、塩による顔料の凝集促進作用が若干阻害されるため、ウレタン樹脂の含有量の多いインクを用いて記録した画像は、塩の効果が十分に発揮されず、発色性が若干低下する場合がある。そこで、本発明者らは、インク中の含有量が少ない場合であっても、インクの表面張力を下げる作用を有するウレタン樹脂の条件についての検討を行った。その結果、ウレタン樹脂の分子末端に存在する前記ジオールに由来するユニットが占める割合が関係していることが分かった。すなわち、ウレタン樹脂中の全ての前記ジオールに由来するユニットを基準として10.0モル%以上である場合に、前記割合が10.0モル%未満であるウレタン樹脂と比べてインクの表面張力を下げる能力が高いことがわかった。そして、このようなウレタン樹脂を用いることでさらに画像の発色性が向上することがわかった。
このようなウレタン樹脂がインクの表面張力を下げる能力が高い理由を、本発明者らは以下のように推測している。通常、ウレタン樹脂は分子鎖が長くなるにつれて、疎水性相互作用、静電的相互作用、水素結合、分子間力などの作用によって、その立体構造が3次元的により複雑になる。ここで、ウレタン樹脂の末端の親水性が高くなると、水と親和し易くなり、ウレタン樹脂の分子鎖がほぐれて立体構造の複雑さが緩和された状態となる。その結果、ウレタン樹脂が界面に配向しやすくなるため表面張力が下がると考えられる。
ウレタン樹脂の分子末端に存在する酸基を有するジオールに由来するユニットの割合は、例えば、酸基を有するジオールを多段階に分けて反応系内に投入し、ウレタン樹脂を合成するなどの方法によって調整することができる。具体的には、先ず、ポリイソシアネート及びポリオールと、酸基を有するジオールの一部を用いて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成する。さらに、残りの酸基を有するジオールと、必要に応じて鎖延長剤を用いて合成を行うことで、分子末端に存在する前記ジオールに由来するユニットの割合を調整することができる。もちろん、本発明において使用可能なウレタン樹脂は、このような合成方法によって得られるものに限られるわけではない。
また、ウレタン樹脂の分子末端に存在する前記ジオールに由来するユニットの割合は、以下のようにして知ることができる。ウレタン樹脂を熱分解ガスクロマトグラフィーで分析することで、ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールの種類を特定する。なお、ウレタン樹脂を含有するインクについての分析は、該インクを80,000rpmで遠心分離して、その上澄み液を塩酸などで酸析し、沈降分を乾燥させ、この沈降分について上記と同様の操作を行えばよい。次に、種類を特定したポリイソシアネートと酸基を有するジオールの反応物を合成する。これを重DMSOに溶解したものを13C−NMRで分析し、分子末端に存在する前記ジオールに由来するユニットのカルボニル炭素(低磁場側)、分子の末端以外に存在する前記ジオールに由来するユニットのカルボニル炭素(高磁場側)の化学シフトを確認する。これらから、前記ジオールに由来するユニットのピーク積算値合計に占める、分子末端に存在する酸基を有するジオール由来のピーク積算値の割合を算出する。なお、測定条件により多少のずれは生じるが、前記ジオールに由来するユニットの化学シフトは、ジメチロールプロピオン酸に由来するユニットが分子末端に存在する場合176ppm付近に存在する。さらに、分子の末端以外に存在する場合175ppm付近であり、ジメチロールブタン酸に由来するユニットが分子末端に存在する場合175ppm付近、分子の末端以外に存在する場合174ppm付近である。
(その他の成分)
本発明のインクには、上記成分以外にも必要に応じて、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの常温で固体の有機化合物や、尿素、エチレン尿素などの含窒素化合物を含有させてもよい。また、上記の成分の他に、さらに必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などの種々の添加剤をインクに含有させてもよい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えてなり、前記インク収容部に、上記で説明した本発明のインクが収容されてなるものである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものが挙げられる。または、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量の全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部であるインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドにより上記で説明した本発明のインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式やインクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられ、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
本発明のインクは、別のインクと組み合わせて、インクセットとしても用いることができる。別インクの色相は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、レッド、グリーン、及びブルーなどのインクから1種又は2種以上を選択することができる。また、インクセットを構成するインクとして、上記のインクと互いに同じ色相を有し、顔料の含有量がそれぞれ異なる複数のインクを用いてもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。なお、文中、成分量に関し「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
<樹脂の準備>
表1に示した特性を有する水溶性の樹脂A〜Hを準備した。これらの樹脂は、中和当量1となる水酸化ナトリウムにより中和した固形の状態で使用した。
Figure 2012224741
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液A〜Hの調製)
表2の上段に示した成分(単位:部)の混合物をバッチ式縦型サンドミルに仕込み、3時間分散させた。カーボンブラックとしては、比表面積が220m2/g、DBP吸油量105mL/100gのものを用いた。得られた各顔料分散液を遠心分離することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した。さらに、適量のイオン交換水を加えて、顔料分散液A〜Hをそれぞれ調製した。得られた各顔料分散液中の顔料及び樹脂の含有量を表2の下段に示した。
Figure 2012224741
(顔料分散液Iの調製)
超音波発生装置の槽内に、機械的撹拌装置を備えた100mLのフラスコを入れた。酸価が100mgKOH/gで重量平均分子量が3,000のスチレン−アクリル酸ブロック共重合体10.0部、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gのカーボンブラック10.0部、テトラヒドロフラン(溶媒)を添加した。そして、顔料粒子の表面が溶媒で十分に濡れるまでよく混合した。ブロック共重合体の中和当量が1となる水酸化ナトリウムを含む水溶液を滴下することで、転相させて、マイクロカプセル型の顔料を含む分散液を得た。その後、ロータリーエバポレータを用いて、この分散液から溶媒を留去し、適量のイオン交換水を加えて、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液Iを調製した。
<ウレタン樹脂の合成>
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流管を備えた4つ口フラスコに、ポリイソシアネート(A部)、ポリオール(B部)、酸基を有するジオールの一部(C部)、メチルエチルケトン200.0部を仕込み、窒素ガス雰囲気下、温度80℃の条件で6時間反応させた。その後、残りの酸基を有するジオール(E部)、鎖延長剤(D部)、メチルエチルケトン100.0部をフラスコに添加し、FT−IRによりイソシアネート基の残存率を確認しながら、イソシアネート基の残存率が所望の値になるまで、温度80℃で反応させた。40℃まで冷却した後、フラスコにイオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら、水酸化カリウム水溶液を添加した。加熱減圧下でこの溶液からメチルエチルケトンを留去し、ウレタン樹脂(固形分)の含有量が20.0%である水溶液を得た。
上記で得られた各ウレタン樹脂について、分子末端に存在する酸基を有するジオールに由来するユニットの割合を求めた。まず、ウレタン樹脂を含む水溶液に塩酸を添加し、酸析によりウレタン樹脂を析出させ、沈降分を乾燥させた。各ユニットは既知であるので、その分析は省略した。次に、沈降分を重DMSOに溶解したものを13C−NMR(商品名:Avance500;BRUKER Bio Spin製)で分析した。次いで、酸基を有するジオールに由来するユニットのピーク積算値合計に占める、分子末端に存在する前記ジオールに由来するユニットのピーク積算値の割合を算出した。なお、前記ジオールに由来するユニットの化学シフトは、ジメチロールプロピオン酸に由来するユニットが分子末端に存在する場合176ppm付近、分子の末端以外に存在する場合175ppm付近で検出された。また、ジメチロールブタン酸に由来するユニットが分子末端に存在する場合175ppm付近、分子の末端以外に存在する場合174ppm付近に検出された。
ウレタン樹脂の合成条件及び特性を表3−1、及び3−2に示す。
Figure 2012224741
Figure 2012224741
<インクの調製>
表4−1〜4−3の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズが1.0μmであるミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。なお、アセチレノールE100は川研ファインケミカル製の界面活性剤である。表4−1〜4−3の下段には、各インクの表面張力[mN/m]の値もあわせて示した。インクの表面張力は、10mm×24mmの白金プレートを搭載した表面張力計CBVP−A3(協和界面科学製)を用い、温度25.0±0.5℃で測定した。
Figure 2012224741
Figure 2012224741
Figure 2012224741
実施例5のインクには2種の樹脂(樹脂D及び樹脂F)が含まれているが、顔料の分散に寄与している樹脂を分析するために、以下の操作を行った。インクを遠心分離(20,000rpm、2時間)して、顔料を含む沈降分を回収した。この沈降分について、テトラヒドロフラン(THF)でソックスレー抽出を行い、その後THFを留去し、樹脂成分を得た。得られた樹脂成分についてNMR測定を行った。その結果、樹脂Dに比して、樹脂Fが多く検出された。このことから、実施例5のインク中の顔料は、主に樹脂Fによって分散されていると言える。
<評価>
(定着性)
上記で得られた各インクを充填したインクカートリッジを、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(PIXUS iP3100;キヤノン製)にセットした。そして、PB PAPER GF−500;キヤノン製、Premium Multipurpose 4024 Paper;ゼロックス製、Bright White Inkjet Paper;ヒューレッドパッカード製、Hammermill Inkjet;インターナショナルペーパー製の4種の記録媒体(PPC用紙)に、それぞれ2cm×2cmのベタ画像を記録した。この際、インクの付与量は、1/600インチ×1/600インチあたりに約28ngとした。記録10秒後に、40g/cm2のおもりを乗せたシルボン紙でベタ画像を擦り、非記録部分の状態を目視で確認した。4種の記録媒体における非記録部分の平均的な状態から、定着性の評価を行った。評価結果を表5に示す。本発明においては、下記の定着性の評価基準でB以上を許容できるレベル、Cを許容できないレベルとした。
A:非記録部分に汚れがほとんど付着していなかった。
B:非記録部分に汚れの付着があった。
C:非記録部分に汚れが顕著に付着していた。
(発色性)
上記の定着性の評価と同様の条件で、4種の記録媒体に、それぞれ2cm×2cmのベタ画像を記録した。記録1日後に、反射濃度計(商品名:マクベスRD−918;マクベス製)を用いてベタ画像の画像濃度を測定し、その平均値から発色性の評価を行った。評価結果を表5に示す。本発明においては、下記の発色性の評価基準でC以上を許容できるレベル、Dを許容できないレベルとした。
A:画像濃度の平均値が1.4以上であった。
B:画像濃度の平均値が1.3以上1.4未満であった。
C:画像濃度の平均値が1.2以上1.3未満であった。
D:画像濃度の平均値が1.2未満であった。
(保存安定性)
上記で得られた各インクについて、保存前のインク中の顔料の粒子径を測定した。そして、インクをそれぞれ、ポリテトラフルオロエチレン製の容器に入れて密閉した。この容器を、温度60℃のオーブン中で1ヶ月間保存した後、インクを常温に戻した。その後、保存後のインク中の顔料の粒子径を測定した。なお、顔料の粒子径は、粒径測定装置(商品名:ELS8000;大塚電子製)を用いて測定した。そして、保存前後のインク中の顔料の粒子径を比較することで、インクの保存安定性の評価を行った。評価結果を表5に示す。本発明においては、下記の保存安定性の評価基準でB以上を許容できるレベル、Cを許容できないレベルとした。
A:保存後の顔料の粒子径が、保存前と比べて1.1倍未満であった。
B:保存後の顔料の粒子径が、保存前と比べて1.1倍以上1.3倍未満であった。
C:保存後の顔料の粒子径が、保存前と比べて1.3倍以上であった。
Figure 2012224741
上記実施例において使用したもの以外で、本発明で規定する各種の塩を使用したインクについても、実施例12と同様にして評価を行った。具体的には、実施例12における塩のアニオンを異なるものとした以外は上記と同様の評価を行った。その結果、いずれのアニオンの塩の場合も、実施例12とほぼ同等の結果が得られた。

Claims (5)

  1. 顔料、前記顔料を分散するための樹脂、塩、及び必要に応じて界面活性剤を含有するインクであって、
    前記樹脂の酸価が、70mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であり、
    前記塩が、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2 -、ClO3 -、ClO4 -、NO2 -、NO3 -、SO4 2-、CO3 2-、HCO3 -、HCOO-、(COO-2、COOH(COO-)、CH3COO-、C24(COO-2、C65COO-、C64(COO-2、PO4 3-、HPO4 2-、及びH2PO4 -からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンとが結合して構成されたものであり、
    前記界面活性剤の含有量が、インク全質量を基準として0.2質量%以下であり、
    前記インクの25℃における表面張力が、33mN/m以上40mN/m以下であることを特徴とするインク。
  2. ポリイソシアネート、ポリオール、及び酸基を有するジオールのそれぞれに由来するユニットを有するウレタン樹脂を含有する請求項1に記載のインク。
  3. 前記ジオールが、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸の少なくとも一方であり、
    前記ウレタン樹脂の分子末端に存在する、前記ジオールに由来するユニットの割合が、前記ウレタン樹脂中の全ての前記ジオールに由来するユニットを基準として10.0モル%以上である請求項2に記載のインク。
  4. インクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジであって、前記インク収容部に収容されたインクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  5. インクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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