JP6980485B2 - インクジェット記録方法、インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
本発明のインクジェット記録装置は、単位領域への水性インクの付与を、記録ヘッドと記録媒体との1回の相対走査で行う手段を備える。記録ヘッドがシリアルヘッドの場合、この手段は、記録ヘッドの移動により、記録媒体に対して記録ヘッドが相対的に走査してインクを付与する手段、又は記録媒体の搬送により、記録ヘッドに対して記録媒体が相対的に走査してインクを付与する手段である。記録ヘッドがラインヘッドの場合、ラインヘッドが移動しないため、この手段は、記録媒体の搬送により、記録ヘッドに対して記録媒体が相対的に走査してインクを付与する手段である。相対走査は、記録媒体が搬送されることによって、記録ヘッドに対して記録媒体が相対的に走査する動作であることが好ましい。1パス記録が可能な記録ヘッドとしては、シリアルヘッド、ラインヘッドが挙げられる。なかでも、記録ヘッドは、より高速に画像を記録することが可能なラインヘッドであることが好ましい。1パス記録が可能なインクジェット記録装置としては、シリアル型のインクジェット記録装置、ライン型のインクジェット記録装置が挙げられる。本発明のインクジェット記録装置は、エネルギー線の照射手段を備える必要はない。
本発明のインクジェット記録方法は、自己分散顔料、ウレタン樹脂、及びポリエチレングリコールを含有する水性インクを用いる。以下、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を表すものとする。本発明においては、樹脂についての「ユニット」とは、1の単量体に由来する繰り返し単位のことを指すものとする。
自己分散顔料の顔料種は、カーボンブラックである。自己分散顔料は、アニオン性基を直接又は他の原子団を介して顔料の粒子表面に結合させたものを用いることが好ましい。
水性インクに一般的に用いられるウレタン樹脂は、少なくとも、ポリイソシアネートと、それと反応する成分(ポリオールやポリアミン)を用いて合成され、必要に応じて架橋剤や鎖延長剤も用いられる。以下、ウレタン樹脂の構成ユニットとなる各単量体について説明する。
本発明における「ポリイソシアネート」とは、ポリオールやポリアミンなどと反応するために、分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。樹脂に占めるポリイソシアネートに由来するユニットの割合(質量%)は、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。ポリイソシアネートとしては、脂肪族や芳香族のポリイソシアネートなどが挙げられる。
上記のポリイソシアネートとの反応によってウレタン樹脂を構成するユニットとなる成分としては、ポリオールを用いることができる。本発明における「ポリオール」とは、分子中に2以上のヒドロキシ基を有する化合物を意味し、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの酸基を有しないポリオール;酸基を有するポリオール;などが挙げられる。ポリオールは、1種、又は必要に応じて2種以上を用いることができる。樹脂に占めるポリオールに由来するユニットの割合(質量%)は、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイド及びポリオール類の付加重合物;(ポリ)アルキレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイドなどが挙げられる。また、アルキレンオキサイドと付加重合するポリオール類としては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4−ジヒドロキシフェニルメタン、水素添加ビスフェノールA、ジメチロール尿素及びその誘導体などのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールメラミン及びその誘導体、ポリオキシプロピレントリオールなどのトリオール;などが挙げられる。グリコール類としては、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの(ポリ)アルキレングリコール;エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体;などが挙げられる。
酸基を有するポリオールとしては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などの酸基を有するポリオールが挙げられる。酸基はカルボン酸基であることが好ましい。カルボン酸基を有するポリオールとしては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。酸基を有するポリオールの酸基は塩型であってもよく、塩を形成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のイオン、アンモニウムイオン、ジメチルアミンなどの有機アミンのカチオンなどが挙げられる。なお、汎用の酸基を有するポリオールの数平均分子量は高くても400程度であるので、酸基を有するポリオールに由来するユニットは、基本的にはウレタン樹脂のハードセグメントとなる。
ウレタン樹脂には、架橋剤や鎖延長剤が用いられていてもよい。通常、架橋剤はプレポリマーの合成の際に用いられ、鎖延長剤は予め合成されたプレポリマーに対して鎖延長反応を行う際に用いられる。基本的には、架橋剤や鎖延長剤としては、架橋や鎖延長など目的に応じて、水や、上記で挙げたポリイソシアネート、ポリオールの他に、ポリアミンなどからも適宜に選択して用いることができる。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミンなどが挙げられる。なお、汎用の酸基を有するポリオールと同様に汎用のポリアミンの分子量は高くても400程度であるので、ポリアミンに由来するユニットは、基本的にはウレタン樹脂のハードセグメントとなる。鎖延長剤として、ウレタン樹脂を架橋させることができるものを用いることもできる。
ウレタン樹脂の合成方法としては、従来、ウレタン樹脂の合成方法として一般的に利用されているもののいずれも利用することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。ポリイソシアネート、及び、それと反応する化合物(ポリオールやポリアミン)を用いて、プレポリマーを合成する。この際、必要に応じて沸点100℃以下の有機溶剤を使用してもよく、また、中和剤を用いてプレポリマーの酸基を中和する。その後、鎖延長剤や架橋剤を含む液体中にプレポリマーを添加し、鎖延長反応や架橋反応を行う。次いで、有機溶剤を使用した場合には除去して、ウレタン樹脂を得る。
ウレタン樹脂の組成は、以下の方法によって分析することができる。先ず、ウレタン樹脂を含有するインクから、ウレタン樹脂を抽出する方法について説明する。具体的には、インクを80,000rpmで遠心分離して分取した上澄み液に、過剰の酸(塩酸など)を添加して析出したウレタン樹脂を抽出することができる。また、前記上澄み液を乾固させることによってウレタン樹脂を分取することもできる。また、顔料を溶解しないが、ウレタン樹脂は溶解するような有機溶剤(ヘキサンなど)を用いて、インクからウレタン樹脂を抽出することもできる。なお、インクからも分析を行うことはできるが、上述の方法によって抽出したウレタン樹脂(固形分)を用いることで、より精度が高い分析を行うことができる。
ポリエチレングリコールの数平均分子量は、600以上であり、4,000以下であることが好ましい。数平均分子量が、4,000を超えると、会合体が多くの水を抱え込みやすいため、会合体から水が離れにくく、顔料が凝集しにくくなり、画像の光学濃度が十分に得られない場合がある。インク中のポリエチレングリコールの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上30.00質量%以下であることが好ましく、6.00質量%以上20.00質量%以下であることがさらに好ましい。インク中のポリエチレングリコールの含有量(質量%)は、自己分散顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上5.00倍以下であることが好ましく、1.10倍以上3.30倍以下であることがさらに好ましい。前記質量比率が、1.10倍未満であると、顔料に対してポリエチレングリコールが少ないため、ウレタン樹脂とポリエチレングリコールの間に抱え込める水も少なくなる。そのため、記録媒体にインク中の水が浸透しやすくなり、インク中の水とともに顔料が沈み込んでしまう。さらに、インクのドットが広がりにくいため、画像の光学濃度が十分に得られない場合がある。さらに、会合体がより水を抱え込みにくいことで、記録ヘッドの吐出口付近に付着したインク中の顔料が凝集しやすいため、インクの固着回復性が十分に得られない場合がある。前記質量比率が、3.30倍を超えると、顔料に対してポリエチレングリコールが多いため、ウレタン樹脂とポリエチレングリコールの間に抱え込める水も多くなる。そのため、会合体から水が離れにくく、顔料が凝集しにくくなり、画像の光学濃度が十分に得られない場合がある。
本発明におけるポリエチレングリコール類の数平均分子量は、下記のようにして測定した値である。測定対象のポリエチレングリコール試料1g(0.1mgの桁まで秤量)を、共栓付きフラスコで正確に秤量した無水フタルピリジン溶液25mL中に入れ、共栓をして沸騰水浴中で2時間加熱した後、室温になるまで放置する。その後、このフラスコに0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mL(正確に秤量する)及び滴定用フェノールフタレイン溶液10滴を入れる。このフラスコ中の液体を、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて滴定を行い、液体が15秒間紅色を保つ点を終点とする。このようにして得られた本試験の滴定量M(mL)と、ポリエチレングリコール試料を用いない以外は上記と同様にして行った空試験により得られた滴定量R(mL)から、数平均分子量={(ポリエチレングリコール試料の採取量(g))×4000}/{(M−R)×0.5(mol/L)}より算出する。
インクは、さらにアクリル樹脂を含有することが好ましい。顔料の粒子表面の一部は、ウレタン樹脂と疎水性相互作用せずに露出している場合がある。インクがアクリル樹脂を含有しない場合、インクをインクジェット記録装置に搭載した状態で長期間放置すると、記録ヘッドの吐出口付近に付着したインク中の顔料の露出部分が疎水性相互作用しやすくなる。これにより、顔料が凝集すると、吐出口付近に会合体が固着しやすくなる。これにより、インクの固着回復性が十分に得られない場合がある。インクがさらにアクリル樹脂を含有することで、アクリル樹脂の疎水性部分が、顔料の粒子表面の露出部分と疎水性相互作用するため、顔料が凝集しにくくなる。これにより、会合体が固着しにくくなるため、インクの固着回復性がさらに向上する。なお、アクリル樹脂と顔料の疎水性相互作用は、ウレタン樹脂と顔料の疎水性相互作用と比較して弱いため、アクリル樹脂が、自己分散顔料、ウレタン樹脂、及びポリエチレングリコールの会合体の形成を抑制することはあまりない。
インクは、さらに界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。アニオン性界面活性剤を用いると、記録媒体のカチオン性成分(填料、アルミナ、アルミナ水和物、及びカチオン性樹脂など)と反応してしまうため、界面活性剤の働きを失い、インクに含有させることによる効果が損なわれやすいからである。ノニオン性界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド付加物、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
インクは、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有している。水としては脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、ポリエチレングリコール以外の水溶性有機溶剤(その他の水溶性有機溶剤)を併用することができる。その他の水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、及び含窒素化合物類などを用いることができる。また、これらの水溶性有機溶剤の1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
インクには、上記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの温度25℃で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。また、インクには、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
インクの粘度は、5mPa・s以上であり、11mPa・s以下であることが好ましい。インクの粘度は、インク中の顔料、界面活性剤、水溶性有機溶剤の種類や量を変更することで、適宜調整できる。また、インクの表面張力は、35mN/m以下であることが好ましい。表面張力が、35mN/mを超えると、記録媒体にインクが付着した後、インクのドットが広がりにくくなり、画像の光学濃度が十分に得られない場合がある。インクの表面張力は、インク中の界面活性剤や水溶性有機溶剤の種類や量を変更することで、適宜調整できる。前記表面張力は、30mN/m以上であることが好ましい。さらに、インクのpHは、7.0以上9.0以下であることが好ましい。
表1に記載の酸基を有しないポリオールをメチルエチルケトンに溶解させた後、表1に記載のポリイソシアネート、及び酸基を有するポリオールを加え、温度75℃で1時間反応させて、プレポリマー溶液を得た。得られたプレポリマー溶液を温度60℃まで冷却して、水酸化カリウム水溶液を加え、酸基を中和した。その後、温度40℃まで冷却してイオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌することで乳化した。乳化後、鎖延長剤を加え、鎖延長反応を温度30℃にて12時間行った。フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)によりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで、この溶液を加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去し、ウレタン樹脂の含有量が20.00%であるウレタン樹脂を含む液体を得た。表1に酸価(mgKOH/g)、及び重量平均分子量を記載する。
装置:Waters2695 Separations Module、Waters製
RI検出器:2414detector、Waters製
カラム:KF−806Mの4連、昭和電工製
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:温度40℃
試料注入量:100μL
表2に記載の単量体(部)を用いて、常法により、アクリル樹脂1〜4を合成した。10.0%の水酸化カリウム水溶液を用いてカルボキシ基を中和し、さらに適量のイオン交換水を加えて、アクリル樹脂の含有量が20.00%であるアクリル樹脂1〜4を含む液体を得た。さらに、表2に記載の単量体(部)を用いて、常法により、アクリル樹脂5を合成した。10.0%の水酸化カリウム水溶液を用いてカルボキシ基を中和し、さらに適量のイオン交換水を加えて、アクリル樹脂の含有量が15.00%であるアクリル樹脂5を含む液体を得た。表2の下段にアクリル樹脂の酸価、及び重量平均分子量を記載する。アクリル樹脂の酸価、及び重量平均分子量の測定方法は、ウレタン樹脂の測定方法と同様である。
(顔料の表面電荷量)
顔料の表面電荷量の測定方法は、以下の通りである。流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した電位差自動滴定装置(AT−510、京都電子工業製)を用い、電位差を利用したコロイド滴定により、表面電荷量を測定した。この際、滴定試薬としては、5mmol/Lのメチルグリコールキトサンを用いた。カーボンブラックとしては、比表面積が220m2/gであり、DBP吸油量が105mL/100gであるものを用いた。
水5.50gに濃塩酸5.00gを溶かした溶液に、温度5℃で、4−アミノ−1−ベンゼンカルボン酸1.60gを加えた。温度10℃以下を維持するために、アイスバスで撹拌しながら、上記で得られた溶液に、水9.00gに亜硝酸ナトリウム1.80gを溶かした溶液を加えた。15分撹拌後、カーボンブラック6.00gを加え、混合した。さらに、15分撹拌後、得られたスラリーをろ紙(標準用ろ紙No.2、アドバンテック製)でろ過し、カーボンブラックを十分に水洗し、温度110℃のオーブンで乾燥させた。得られたカーボンブラックに水を添加し、さらにイオン交換法により、カウンターイオンをナトリウムイオンに変更することで、顔料分散液1(顔料の含有量が15.00%)を得た。顔料分散液1には、粒子表面に−C6H3−(COONa)2基が結合している自己分散カーボンブラックが含まれていた。自己分散カーボンブラックの表面電荷量は、0.40mmol/gだった。
顔料分散液1の調製において、4−アミノ−1−ベンゼンカルボン酸の量を1.00gに変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料分散液2(顔料の含有量が15.00%)を得た。自己分散カーボンブラックの表面電荷量は、0.25mmol/gだった。
顔料分散液1の調製において、4−アミノ−1−ベンゼンカルボン酸の量を2.80gに変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料分散液3(顔料の含有量が15.00%)を得た。自己分散カーボンブラックの表面電荷量は、0.70mmol/gだった。
顔料分散液1の調製において、4−アミノ−1−ベンゼンカルボン酸の量を0.80gに変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料分散液4(顔料の含有量が15.00%)を得た。自己分散カーボンブラックの表面電荷量は、0.20mmol/gだった。
顔料分散液1の調製において、4−アミノ−1−ベンゼンカルボン酸の量を3.00gに変更した。それ以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料分散液5(顔料の含有量が15.00%)を得た。自己分散カーボンブラックの表面電荷量は、0.75mmol/gだった。
カーボンブラック20.00g、処理剤11.60mmol、硝酸20.00mmol、及び水100.00mLを混合した。処理剤としては((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸ナトリウム塩を用いた。シルヴァーソン混合機を用い、温度25℃、6,000rpm、30分の条件で混合した。得られた混合物に、少量の水に亜硝酸ナトリウム20.00mmolを溶解させた水溶液をゆっくり添加した。水溶液の添加により、混合物の温度は60℃に達した。温度60℃で、混合物を1時間反応させた。その後、1.0mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて、混合物のpHを10に調整した。そして30分後、混合物に水20.00mLを加え、スペクトラムメンブランを用いて低分子物の除去、及び脱塩を行った。さらに、混合物を水で希釈し、自己分散カーボンブラックが含まれる顔料分散液6(顔料の含有量が15.00%)を得た。顔料分散液6には、粒子表面に−C6H4−CONH−CH(PO3K2)2基が結合している自己分散カーボンブラックが含まれていた。自己分散カーボンブラックの表面電荷量は、0.40mmol/gだった。
特表2003−535949号公報の実施例3の記載を参考にして、オゾンガスを用いて、カーボンブラックを酸化した。カーボンブラックをイオン交換水で予備分散させた後、オゾン処理を8時間行った。次に、水酸化カリウムを添加して、混合物をpH7に調整しながら、液−液衝突型の分散機で混合物を3時間分散させた後、限外ろ過により精製した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、pHを10に調製した。適量のイオン交換水を添加して、顔料分散液7(顔料の含有量が15.00%)を得た。自己分散カーボンブラックの表面電荷量は、0.40mmol/gだった。
カーボンブラック15.00部、樹脂を含む液体50.00部、及びイオン交換水35.00部を混合した。樹脂は、酸価が160mgKOH/gで、重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を用いた。樹脂を含む液体としては、共重合体の酸価に対して等モル量の10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、樹脂の含有量が15.00%である液体を用いた。この混合物を、粒径0.3mmのジルコニアビーズ85.0部を充填したバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)を用いて、水で冷やしながら3時間分散した。その後、この分散液を遠心分離処理して粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行った。前記の方法により、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液8(顔料の含有量が15.00%、樹脂の含有量が7.50%)を得た。
カーボンブラックの粒子表面にベンゼンカルボン酸基が結合している自己分散顔料(Cab−O−Jet300、キャボット製)を水で希釈し、十分撹拌して、顔料の含有量が15.00%である顔料分散液9を得た。
表4〜6に記載の各成分を混合し、インクを調製した。インクの粘度は、回転粘度計(RE80型粘度計、東機産業製)を用いて、温度25℃の条件で測定した。さらに、インクの静的表面張力は、表面張力計(CBVP−Z型、協和界面科学製)を用いて、温度25℃の条件で測定した。顔料の含有量P、数平均分子量600以上のポリエチレングリコールの含有量(表中、PEG(数平均分子量600以上)の含有量Eと記載)、ウレタン樹脂の含有量U、及びアクリル樹脂の含有量Aを表4〜6の下段に記載する。また、顔料に対するポリエチレングリコールの質量比率(表中、E/Pと記載)、及び顔料に対するウレタン樹脂の質量比率(表中、U/Pと記載)を表4〜6の下段に記載する。さらに、ウレタン樹脂に対するアクリル樹脂の質量比率(表中、A/Uと記載)、インクの粘度、及びインクの表面張力の値を、表4〜6の下段に記載する。ポリエチレングリコールに付した数値は、数平均分子量である。界面活性剤の種類、及びグリフィン法により算出したHLB値は、表3に記載する。
本発明においては、下記の評価の評価基準で、AA、A、又はBを許容できるレベルとし、Cを許容できないレベルとした。
前記インクジェット記録装置1〜3を用いて、3種類の記録媒体((1)PPC用紙・PB PAPER、キヤノン製、(2)PPC用紙・ブライトホワイト、ヒューレッド・パッカード製、(3)PPC用紙・Canon EXTRA、キヤノン製)に、3cm×2cmのベタ画像を記録した。装置1、2及び3を用いて、記録デューティが100%であるベタ画像を記録した。得られたベタ画像を温度25℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置し、乾燥させた後、光学濃度計(マクベスRD−918、マクベス製)を用いて、得られた画像の光学濃度を測定した。
A:3種類の記録媒体の画像の光学濃度の平均が、1.50以上1.55未満だった。
B:3種類の記録媒体の画像の光学濃度の平均が、1.45以上1.50未満だった。
C:3種類の記録媒体の画像の光学濃度の平均が、1.45未満だった。
各インクにつき、インクカートリッジを2つ用意した。インクジェット記録装置1に2つのインクカートリッジを搭載し、回復動作を行った後、全ての吐出口から1滴ずつインクを吐出させて、幅1ドット分の縦罫線を記録した。その後、インクジェット記録装置1から、インクカートリッジを搭載した記録ヘッド(ヘッドカートリッジ)を取り外し、温度25℃、相対湿度50%の環境で30日間放置した。そして、このヘッドカートリッジを再びインクジェット記録装置1に装着し、ノズルチェックパターンを記録した。ノズルチェックパターンが正常に記録されず、目詰まりが発生した場合、プリンタドライバから回復動作を行った後に、再び全ての吐出口から1滴ずつインクを吐出させて、同様の縦罫線を記録した。この時点でも目詰まりが発生した場合には、プリンタドライバから回復動作を行った後に、再び全ての吐出口から1滴ずつインクを吐出させて、同様の縦罫線を記録した。それでも目詰まりが発生し場合には、プリンタドライバから回復動作を行った後に、再び全ての吐出口から1滴ずつインクを吐出させて、同様の縦罫線を記録した。このようにして、縦罫線を正常に記録することができるようになるまでに要した回復動作の回数により、固着回復性を評価した。
A:一方のインクカートリッジは、1回の回復動作で全ての吐出口から正常にインクが吐出された。他方のインクカートリッジは、回復動作を1回行っても一部の吐出口からインクが吐出されなかったが、さらにもう1回の回復動作を行うことで全ての吐出口から正常にインクが吐出された。
B:2個のインクカートリッジのいずれについても、回復動作を1回行っても一部の吐出口からインクが吐出されなかったが、さらにもう1回の回復動作を行うことで全ての吐出口からインクが吐出された。
C:2個のインクカートリッジのいずれについても、回復動作を2回行っても一部の吐出口からインクが吐出されなかったが、さらにもう1回の回復動作を行うことで全ての吐出口からインクが吐出された。
Claims (15)
- 単位領域への水性インクの付与を、記録ヘッドと記録媒体との1回の相対走査で行って、画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、
前記水性インクが、自己分散顔料、ウレタン樹脂、ポリエチレングリコール、及びアクリル樹脂を含有し、
前記自己分散顔料の顔料種が、カーボンブラックであり、
前記ポリエチレングリコールの数平均分子量が、600以上4,000以下であり、
前記水性インクの粘度が、5mPa・s以上11mPa・s以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。 - 前記自己分散顔料が、前記カーボンブラックの粒子表面に直接又は他の原子団を介して−COOM(Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す)が結合したものである請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インク中の前記自己分散顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、インク全質量を基準として、1.00質量%以上10.00質量%以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インク中の前記ウレタン樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.30質量%以上5.00質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インク中の前記ポリエチレングリコールの含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、6.00質量%以上20.00質量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記アクリル樹脂の酸価が、100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インク中の前記アクリル樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.50質量%以上2.00質量%以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インク中の前記ポリエチレングリコールの含有量(質量%)が、前記自己分散顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.10倍以上3.30倍以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インク中の前記アクリル樹脂の含有量(質量%)が、前記ウレタン樹脂の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.20倍以上である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インク中の前記アクリル樹脂の含有量(質量%)が、前記ウレタン樹脂の含有量(質量%)に対する質量比率で、3.85倍以下である請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インク中の前記ウレタン樹脂の含有量(質量%)が、前記自己分散顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.05倍以上1.00倍以下である請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インクの表面張力が、35mN/m以下である請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インクの表面張力が、30mN/m以上である請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録ヘッドが、ラインヘッドである請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 単位領域への水性インクの付与を、記録ヘッドと記録媒体との1回の相対走査で行う手段を備えたインクジェット記録装置であって、
前記水性インクが、自己分散顔料、ウレタン樹脂、ポリエチレングリコール、及びアクリル樹脂を含有し、
前記自己分散顔料の顔料種が、カーボンブラックであり、
前記ポリエチレングリコールの数平均分子量が、600以上4,000以下であり、
前記水性インクの粘度が、5mPa・s以上11mPa・s以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
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