JP2018109130A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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孝広 田嶋
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康介 山▲崎▼
勇輝 西野
Isateru Nishino
勇輝 西野
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Abstract

【課題】耐マーカー性に優れた画像を記録することができるとともに、吐出安定性に優れており、かつ、長期間保存した後でも耐マーカー性に優れた画像を記録可能な、保存安定性に優れた水性インクを提供する。
【解決手段】顔料及びウレタン樹脂を含有する、熱エネルギーの作用により記録ヘッドから吐出されるインクジェット記録方式に用いられる水性インクである。ウレタン樹脂が、脂肪族ポリイソシアネートに由来するユニット、下記一般式(1)(R1は、主鎖及び前記主鎖から分岐した炭素数2以上の側鎖を有する、合計炭素数3以上のアルキレン基を表す)で表されるユニット、及び酸基を有するポリオールに由来するユニットを有する。
Figure 2018109130

【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、インクジェット記録装置及びそれに用いるインクジェット用のインクには、幅広いユーザーニーズに対応すべく、様々な性能を同時に満たすことが要求されている。インクには、例えば、吐出安定性及び保存安定性などの信頼性に優れていることが要求されている。さらには、耐マーカー性に優れた画像を普通紙などの記録媒体に記録可能であることが要求されている。
例えば、分岐構造を有するポリカーボネート系のウレタン樹脂を含有する顔料インクが提案されている(特許文献1)。
特表2013−545837号公報
本発明者らは、特許文献1で提案された分岐構造を有するポリカーボネート系のウレタン樹脂を含有するインクの吐出安定性及び保存安定性、並びに記録される画像の耐マーカー性について評価した。その結果、特許文献1で提案されたインクは、近年要求されるレベルの吐出安定性を有するまでには至らないことがわかった。
したがって、本発明の目的は、耐マーカー性に優れた画像を記録することができるとともに、吐出安定性に優れており、かつ、長期間保存した後でも耐マーカー性に優れた画像を記録可能な、保存安定性に優れた水性インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、顔料及びウレタン樹脂を含有する、熱エネルギーの作用により記録ヘッドから吐出されるインクジェット記録方式に用いられる水性インクであって、前記ウレタン樹脂が、脂肪族ポリイソシアネートに由来するユニット、下記一般式(1)で表されるユニット、及び酸基を有するポリオールに由来するユニットを有することを特徴とする水性インクが提供される。
Figure 2018109130
(前記一般式(1)中、R1は、主鎖及び前記主鎖から分岐した炭素数2以上の側鎖を有する、合計炭素数3以上のアルキレン基を表す。nは、繰り返し数を表す)
本発明によれば、耐マーカー性に優れた画像を記録することができるとともに、吐出安定性に優れており、かつ、長期間保存した後でも耐マーカー性に優れた画像を記録可能な、保存安定性に優れた水性インクを提供することができる。また、本発明によれば、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。また、物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値とする。
ウレタン樹脂とは、広義には、(ポリ)イソシアネートを用いて合成される樹脂をいう。インクジェット用の水性インクに一般的に用いられるウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、それと反応する成分(ポリオールやポリアミン)を用いて合成され、必要に応じて架橋剤や鎖延長剤も用いられる。このような成分を用いて合成されたウレタン樹脂は、ハードセグメントとソフトセグメントという主に2つのセグメントで構成される。
ハードセグメントは、ポリイソシアネート、ポリアミンや酸基を有するポリオール、及び架橋剤や鎖延長剤などの、分子量が相対的に小さい化合物に由来するユニットで構成される。ハードセグメントにはウレタン結合が多く存在し、ウレタン結合間の水素結合によりハードセグメント部分が密集して存在しやすいため、ハードセグメントは主にウレタン樹脂の強度に寄与する。一方、ソフトセグメントは、酸基を有しないポリオールなどの、分子量が相対的に大きい化合物に由来するユニットで構成される。ソフトセグメントは、ハードセグメントと比較すると密集して存在しづらいため、ソフトセグメントは主にウレタン樹脂の柔軟性に寄与する。
ウレタン樹脂で形成される膜(以下、「ウレタン樹脂膜」とも記す)は、ハードセグメント及びソフトセグメントによってミクロ相分離構造を形成しているため、強度と柔軟性を兼ね備え、高い弾性を発現する。このようなウレタン樹脂膜の特性が、画像の耐マーカー性の発現に密接に関連している。
特許文献1で提案されたインクの吐出安定性が必ずしも十分でない理由を、本発明者らは以下のように推測している。特許文献1で提案されたインクに含まれるポリカーボネート系のウレタン樹脂は、芳香族ポリイソシアネートに由来するユニットを有するため、芳香環同士でπ−π相互作用が生じている。熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出する記録方式の場合、インクに熱エネルギーが付与されると、ウレタン樹脂の親水性基から水和水が外れて不安定化する際にπ−π相互作用が働くため、ウレタン樹脂は凝集して不溶化しやすい。さらに、ポリカーボネート系のウレタン樹脂が不溶化して相分離する際に吸熱反応が生ずるため、発泡に必要な熱エネルギーが不足しやすく、十分に発泡しなくなることによってインクの吐出安定性が低下すると考えられる。
本発明者らは、以下に示す構成を採用することで、保存安定性の向上や、耐マーカー性に優れた画像を記録可能であるといった効果だけでなく、インクの吐出安定性を向上させることが可能となることを見出した。すなわち、本発明のインクは、顔料及びウレタン樹脂を含有し、ウレタン樹脂が、脂肪族ポリイソシアネートに由来するユニット、下記一般式(1)で表されるユニット、及び酸基を有するポリオールに由来するユニットを有する。
Figure 2018109130
(前記一般式(1)中、R1は、主鎖及び前記主鎖から分岐した炭素数2以上の側鎖を有する、合計炭素数3以上のアルキレン基を表す。nは、繰り返し数を表す)
上記の構成を採用することで、耐マーカー性に優れた画像を記録することができるとともに、吐出安定性に優れており、かつ、保存安定性に優れたインクとすることが可能となる理由について、本発明者らは次のように推測している。熱エネルギーの作用により記録ヘッド吐出する記録方式に用いられるインクに、ポリカーボネート系のウレタン樹脂を添加すると、インクの吐出安定性が低下する傾向にある。これは、ポリカーボネート系のウレタン樹脂に特有の強い分子間力に起因すると考えられる。すなわち、前述のように、インクに熱エネルギーが付与されると、ウレタン樹脂は凝集して不溶化しやすい。そして、不溶化により相分離する際に吸熱反応が生ずるため、発泡のためにインクに付与される熱エネルギーがウレタン樹脂に奪われてしまうため、インクの吐出安定性が低下すると考えられる。
ポリカーボネート系のウレタン樹脂は、その分子内にカーボネート結合、及びウレタン結合を有する。カーボネート結合中の酸素原子は、ウレタン結合を構成する水素原子と強く水素結合する。このため、ポリカーボネート系のウレタン樹脂は、他の酸基を有しないポリオールを用いたウレタン樹脂よりも凝集しやすく、不溶化しやすいので、吐出安定性が低下しやすいと考えられる。
本発明のインクは、一般式(1)で表されるユニットを有するウレタン樹脂、すなわち、分岐構造を有するポリカーボネート系のウレタン樹脂を含有する。インクに熱エネルギーが付与されてウレタン樹脂が不安定化する際、分岐構造が立体障害となってポリカーボネート系のウレタン樹脂に特有の強い分子間力を弱め、凝集を抑制して不溶化しにくくなる。このため、ウレタン樹脂の不溶化の際に生ずる吸熱反応が生じにくくなり、インクの吐出安定性が向上すると考えられる。さらに、本発明のインクの用いるウレタン樹脂は、芳香族ポリイソシアネートに由来するユニットではなく、脂肪族ポリイソシアネートに由来するユニットを有する。脂肪族ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートと異なり、芳香環同士のπ−π相互作用が生じない。このため、インクに熱エネルギーが付与されてウレタン樹脂が不安定化しても、凝集による不溶化が生じにくい。したがって、ウレタン樹脂の不溶化の際に生ずる吸熱反応が生じにくくなり、インクの吐出安定性が向上すると考えられる。
また、ポリカーボネート系のウレタン樹脂は耐加水分解性が良好であり、長期間インクを保存したとしても分解しにくい。ウレタン樹脂の分子量と、記録される画像の耐マーカー性との間位には相関性がある。すなわち、ポリカーボネート系のウレタン樹脂は、インクを長期間保存した後も分解しにくく、調製時の分子量が維持されやすいため、長期間保存した後でも耐マーカー性に優れた画像を記録することができると考えられる。
<インク>
本発明のインクは、顔料及びウレタン樹脂を含有する、熱エネルギーの作用により記録ヘッドから吐出されるインクジェット記録方式に用いられる水性インクである。そして、ウレタン樹脂が、脂肪族ポリイソシアネートに由来するユニット、一般式(1)で表されるユニット、及び酸基を有するポリオールに由来するユニットを有する。以下、本発明のインクを構成する各成分などについて詳細に説明する。
(ウレタン樹脂)
上述の通り、インクジェット用の水性インクに一般的に用いられるウレタン樹脂は、少なくとも、ポリイソシアネートと、それと反応する成分(ポリオールやポリアミン)を用いて合成され、必要に応じて架橋剤や鎖延長剤も用いられる。本発明のインクに用いるウレタン樹脂は、脂肪族ポリイソシアネートに由来するユニット、一般式(1)で表されるユニット、及び酸基を有するポリオールに由来するユニットを有する。本発明におけるウレタン樹脂の「ユニット」とは、1の単量体に由来する繰り返し単位を意味する。以下、ウレタン樹脂を構成するユニットとなる各単量体について説明する。
[脂肪族ポリイソシアネート]
ポリイソシアネートは、その分子構造中に2以上のイソシアネート基を有する化合物である。脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの環状構造を有するポリイソシアネートなどを挙げることができる。これらのポリイソシアネートのなかでも、環状構造を有する脂肪族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、イソホロンジイソシアネートを用いることがさらに好ましい。
ウレタン樹脂が有する、ポリイソシアネートに由来するユニットの割合(モル%)は、10.0モル%以上80.0モル%以下であることが好ましく、20.0モル%以上60.0モル%以下であることがさらに好ましい。また、ウレタン樹脂が有する、ポリイソシアネートに由来するユニットの合計量に占める、脂肪族ポリイソシアネートに由来するユニットの割合(モル%)は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、5.0%以上100.0モル%以下であることが好ましく、80.0モル%以上100.0モル%以下であることがさらに好ましく、90.0モル%以上100.0モル%以下であることが特に好ましい。
[一般式(1)で表されるユニット]
本発明のインクに用いるウレタン樹脂は、下記一般式(1)で表されるユニットを有する。このユニットは、ポリカーボネートポリオールに由来するユニットである。
Figure 2018109130
(前記一般式(1)中、R1は、主鎖及び前記主鎖から分岐した炭素数2以上の側鎖を有する、合計炭素数3以上のアルキレン基を表す。nは、繰り返し数を表す)
一般式(1)中、R1は、主鎖及び主鎖から分岐した側鎖を有するアルキレン基である。側鎖の炭素数は2以上であり、アルキレン基の合計炭素数(主鎖の炭素数+側鎖の炭素数)は3以上である。R1が上記の構造を有する、一般式(1)で表されるユニットを有するウレタン樹脂は、インクに熱エネルギーが付与されて不安定化しても、凝集による不溶化が生じにくい。このため、ウレタン樹脂の不溶化の際に生ずる吸熱反応が生じにくくなり、インクの吐出安定性を向上させることができる。
側鎖の炭素数が1、又はR1で表されるアルキレン基が側鎖を有しないと、R1の立体障害が小さいため、インクの吐出安定性を向上させることができない。主鎖の炭素数は2以上9以下であることが好ましい。主鎖の炭素数が上記の範囲内であると、記録する画像の耐マーカー性及びインクの吐出安定性をより向上させることができる。
主鎖の炭素数が1であると、ウレタン樹脂の親水性が高くなるため、記録される画像の耐マーカー性がやや低下する場合がある。一方、主鎖の炭素数が10以上であると、ウレタン樹脂の親水性が低くなるため、熱エネルギーが付与された際に不溶化しやすくなる場合がある。このため、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。
側鎖のうち、最も炭素数の多い側鎖の炭素数が12以下であることが好ましい。側鎖のうちで最も炭素数の多いものの炭素数が12以下であると、インクの吐出安定性をより向上させることができる。側鎖のうちで最も炭素数の多いものの炭素数が13以上であると、ウレタン樹脂の親水性が低くなるため、熱エネルギーが付与された際に不溶化しやすくなる場合がある。このため、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。
側鎖のうち最も炭素数の多い側鎖の炭素数CBと、主鎖の炭素数CMとが、CM≦CBの関係を満たすことが好ましい。上記の関係を満たすことで、インクの吐出安定性をより向上させることができる。上記の関係を満たさない、すなわち、CM>CBの関係を満たすと、一般式(1)中のR1で表されるアルキレン基の分岐構造による立体障害が小さいため、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。
一般式(1)中、R1で表されるアルキレン基は、側鎖を2以上有すること、すなわち、2以上の側鎖が主鎖に結合していることが好ましい。2以上の側鎖が主鎖に結合していることで、インクの吐出安定性をさらに向上させることができる。主鎖に結合する側鎖の数が1であると、インクに熱エネルギーが付与された際にウレタン樹脂が不溶化しやすくなる場合がある。これは、分岐構造による立体障害が小さく、ウレタン樹脂の強い分子間力を十分に低下させることができない場合があるためである。このため、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。
一般式(1)で表されるユニットは、ポリカーボネートポリオールに由来するユニットである。ポリカーボネートポリオールとしては、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネートなどのカーボネートと、ホスゲンと、脂肪族ジオールと、を反応させて得られるポリカーボネートポリオールを挙げることができる。脂肪族ジオールとしては、2−ブチル−2−エチルプロパンジオールなどを挙げることができる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリカーボネートポリオールのポリスチレン換算の重量平均分子量は、500以上2,500以下であることが好ましい。ポリカーボネートポリオールの重量平均分子量が500未満であると、ウレタン樹脂膜の柔軟性が低下し、画像の耐マーカー性の向上効果が低下する場合がある。一方、ポリカーボネートポリオールの重量平均分子量が2,500超であると、ウレタン樹脂膜の柔軟性が高くなりすぎてしまい、画像の耐マーカー性の向上効果が低下する場合がある。
ウレタン樹脂中の一般式(1)で表されるユニットの含有量(質量%)は、30.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。一般式(1)で表されるユニットの含有量が30.0質量%未満であると、ウレタン樹脂膜の柔軟性が低下し、画像の耐マーカー性の向上効果が低下する場合がある。一方、一般式(1)で表されるユニットの含有量が40.0質量%超であると、ウレタン樹脂の親水性が低下して不溶化しやすくなり、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。
ウレタン樹脂が有する、一般式(1)で表されるユニットの割合(モル%)は、10.0モル%以上80.0モル%以下であることが好ましく、20.0モル%以上60.0モル%以下であることがさらに好ましい。また、ウレタン樹脂が有する、ポリオールに由来するユニットの合計量に占める、一般式(1)で表されるユニットの割合(モル%)は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、1.0モル%以上100.0モル%以下であることが好ましく、5.0モル%以上50.0モル%以下であることがさらに好ましく、10.0モル%以上30.0モル%以下であることが特に好ましい。
[酸基を有するポリオール]
酸基を有するポリオールは、その分子構造中にカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基などの酸基を有するポリオールである。酸基はカルボン酸基であることが好ましい。酸基を有するポリオールの炭素数は、1以上7以下であることが好ましい。炭素数が8以上である酸基を有するポリオールを用いると、ソフトセグメント中に酸基を有するウレタン樹脂となりやすい。このようなウレタン樹脂を用いると、形成されるウレタン樹脂膜の強度と柔軟性とのバランスが崩れやすく、耐マーカー性の向上効果が低下する場合がある。酸基を有するポリオールとしては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などを挙げることができる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸の少なくともいずれかを用いることが好ましい。
ウレタン樹脂が有する、ポリオールに由来するユニットの合計量に占める、酸基を有するポリオールに由来するユニットの割合(モル%)は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、0.0モル%を超えて100.0モル%以下であることが好ましく、30.0モル%以上90.0モル%以下であることがさらに好ましく、50.0モル%以上90.0モル%以下であることが特に好ましい。
酸基を有するポリオールに由来するウレタン樹脂の酸価は、40mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が40mgKOH/g以上のウレタン樹脂は親水性が高いため、インクに熱エネルギーが付与された場合であっても不溶化しにくい。このため、インクの吐出安定性をより向上させることができる。ウレタン樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であると、親水性が低いため、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。ウレタン樹脂の酸価は100mgKOH/g以下であることが好ましい。
[架橋剤、鎖延長剤]
ウレタン樹脂を合成する際には、架橋剤や鎖延長剤を用いることができる。通常、架橋剤はプレポリマーの合成の際に用いられ、鎖延長剤は予め合成されたプレポリマーに対して鎖延長反応を行う際に用いられる。基本的には、架橋剤や鎖延長剤としては、架橋や鎖延長など目的に応じて、水や、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンなどから適宜に選択して用いることができる。鎖延長剤として、ウレタン樹脂を架橋させることができるものを用いることもできる。
[ウレタン結合の割合]
ウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合は、95モル%以上であることが好ましい。ウレア結合に由来する分子間水素結合は、ウレタン結合に由来する分子間水素結合よりも強い。このため、ウレア結合の割合が低いウレタン樹脂は、凝集が抑制され、不溶化しにくくなると考えられる。したがって、ウレタン樹脂中のウレタン結合の割合を上記の範囲内とすることで、ウレタン樹脂が不溶化する際の吸熱反応が生じにくくなり、インクの吐出安定性をさらに向上させることができる。ウレタン結合とウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合が95モル%未満であると、ウレア結合に由来する分子間水素結合が強くなる。このため、インクの吐出安定性の向上効果がやや低下する場合がある。
ウレタン樹脂中のウレタン結合の割合を調整する方法としては、例えば、以下に示す第1の方法及び第2の方法を挙げることができる。第1の方法は、ウレタン樹脂の製造時にポリイソシアネートと反応させるアミン化合物の量を調整する方法である。この方法では、アミン化合物とイソシアネート基との反応により形成されるウレア結合の量を制御する。具体的には、まず、アミン化合物の使用量を変えて複数種のウレタン樹脂を合成する。そして、後述する方法によって、合成した各ウレタン樹脂のウレタン結合の割合(モル%)を算出する。算出したウレタン結合の割合(モル%)と、アミン化合物の使用量との関係から検量線を作成する。作成した検量線を利用して、ウレタン結合の割合が所望とするモル%となるウレタン樹脂を製造するために必要なアミン化合物の使用量を決定することができる。なお、同種のアミン化合物を使用したとしても、その他の成分の種類が異なると反応率などが変化する場合があるため、得られるウレタン樹脂中のウレタン結合の割合は必ずしも同一にはならない。このため、予め検量線を作成することで、ウレタン結合の割合が所望とするモル%となるウレタン樹脂を製造することができる。
第2の方法は、ウレタン樹脂を水に転相する際に、未反応のイソシアネート基の残存率を調整する方法である。この方法では、水とイソシアネート基との反応により形成されるウレア結合の量を制御する。具体的には、まず、ウレタン樹脂を製造する過程(合成途中)で、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)を使用して分析することにより、ポリイソシアネートの使用量に対するイソシアネート基の残存率を確認する。イソシアネート基の残存率は、反応時間やポリイソシアネートの使用量などを変えることで調整することができる。そして、イソシアネート基の残存率が、所望とするウレタン結合の割合となった時点で、イオン交換水を反応系に添加する。例えば、ウレタン結合の割合が95モル%であるウレタン樹脂を製造する場合には、使用したポリイソシアネートに由来するイソシアネート基の残存率が5モル%になった時点で、イオン交換水を反応系に添加すればよい。後述する実施例では、この第2の方法によって、ウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合(モル%)を調整した。
ウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合は、以下のようにして測定することができる。すなわち、重水素化ジメチルスルホキシドにウレタン樹脂を溶解させて測定用試料を調製する。そして、カーボン核磁気共鳴法(13C−NMR)により調製した試料を分析し、得られたウレタン結合とウレア結合のそれぞれのピークの積算値から、ウレタン樹脂中のウレタン結合の割合を算出することができる。ただし、ウレタン結合とウレア結合のそれぞれのピークの位置は、ウレタン樹脂の製造に用いた化合物の種類によって異なる。このため、ウレタン樹脂の合成に使用した化合物毎に、ウレタン結合とウレア結合のピークの位置を調べる必要がある。以下、その方法について説明する。
まず、ウレタン樹脂の組成、具体的には、ポリイソシアネートと、ポリイソシアネートと反応させる成分(酸基を有しないポリオールや酸基を有するポリオールなど)を分析する。なお、ウレタン樹脂の組成については、後述する方法にしたがって分析することができる。次いで、ポリイソシアネートに対応するウレタン結合及びウレア結合の化学シフトを確認するため、以下に示す操作を行う。ポリイソシアネートと、ポリイソシアネートと反応させる成分(酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオール、ポリアミン、水)とを1種ずつ用いて、反応物を調製する。例えば、酸基を有しないポリオールと酸基を有するポリオールが併用されていれば、(i)ポリイソシアネートと酸基を有しないポリオールの反応物、(ii)ポリイソシアネートと酸基を有するポリオールの反応物、(iii)ポリイソシアネートと水の反応物、をそれぞれ調製する。このようにして調製した反応物を重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、カーボン核磁気共鳴法(13C−NMR)により分析して、各反応物についてのウレタン結合及びウレア結合の化学シフトを確認する。
上記の例の場合、(i)の反応物と(ii)の反応物からウレタン結合の化学シフトを確認し、(iii)の反応物からウレア結合の化学シフトを確認する。確認したそれぞれの化学シフトから、ウレタン結合のピークとウレア結合のピークを特定し、これらのピークの積算値の比から、ウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合を算出する。例えば、イソホロンジイソシアネートを用いて得たウレタン樹脂の場合、測定条件やウレタン樹脂の組成により多少のずれは生ずるが、ウレタン結合のピークは155ppm付近に検出され、ウレア結合のピークは158ppm付近に検出される。
後述する実施例では、以下のようにしてウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合を求めた。製造したウレタン樹脂を含む液体に過剰の酸(塩酸)を添加し、析出したウレタン樹脂を分取して乾燥させた。乾燥させたウレタン樹脂を重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させた試料をカーボン核磁気共鳴法(13C−NMR)により分析し、ウレタン結合及びウレア結合の化学シフトのピーク積算値を求めた。13C−NMRは、核磁気共鳴装置(商品名「Avance500」、BRUKER Bio Spin製)を使用して分析した。そして、これらのピーク積算値から、ウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合を求めた。
インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。ウレタン樹脂の含有量が0.1質量%未満であると、画像の耐マーカー性の向上効果が低下する場合がある。一方、ウレタン樹脂の含有量が10.0質量%超であると、インクの粘度が上昇しやすく、インクの信頼性がやや低下する場合がある。インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.05倍以上2.00倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が0.05倍未満であると、画像の耐マーカー性の向上効果が低下する場合がある。一方、上記の質量比率が2.00倍超であると、インクの吐出安定性の向上効果がやや低下する場合がある。
[ウレタン樹脂の合成方法及び分析方法]
ウレタン樹脂は、従来の一般的なウレタン樹脂の合成方法にしたがって合成することができる。例えば、以下に示す方法にしたがってウレタン樹脂を合成することができる。ポリイソシアネート、ポリカーボネートポリオール、及び酸基を有するポリオールを、イソシアネート基が過剰になるような当量比で、沸点が100℃以下の有機溶剤の存在下又は非存在下で反応させる。これにより、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成する。次いで、中和剤を用いて、合成したプレポリマー中のカルボン酸基やスルホン酸基などの酸性基を中和する。その後、酸性基を中和したプレポリマーを、鎖延長剤を含有する液体中に投入して反応させた後、系内に残存する有機溶剤を必要に応じて除去すれば、ウレタン樹脂を得ることができる。
中和剤としては、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの有機塩基を用いることができる。なかでも、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属を含む中和剤を用いることが好ましい。アルカリ金属を含む中和剤でプレポリマー中の酸性基を中和すると、アミン類などの中和剤で中和した場合と比較して、インクの吐出安定性を向上させることができる。中和剤は、プレポリマー中の酸基1モル当たり、0.5〜1.0モル用いることが好ましく、0.8〜1.0モル用いることがさらに好ましい。中和剤の使用量が上記の範囲外であると、ウレタン樹脂を含む液体が不安定化したり、粘度が上昇したりすることで、作業性が低下する場合がある。
ウレタン樹脂の組成、分子量、及び酸価などの物性値については、従来公知の方法にしたがって測定することができる。具体的には、インクを遠心分離して得られる沈降物及び上澄み液を解析することで、ウレタン樹脂の物性値を測定することができる。顔料は有機溶剤に不溶であるため、ウレタン樹脂を溶剤抽出することで顔料と分離することもできる。インクの状態でもウレタン樹脂を解析することはできるが、インクから抽出したウレタン樹脂を解析すると、測定精度を高めることができるために好ましい。具体的には、インクを80,000rpmで遠心分離して得た上澄み液を塩酸などで酸析した後、乾燥して得た酸析物を解析することが好ましい。以下、ウレタン樹脂の各種物性値の測定方法の例について説明する。
(1)ウレタン樹脂の組成
ウレタン樹脂を重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、核磁気共鳴法(NMR)により測定して得た化学シフトから、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリオール、酸基を有するポリオールの種類を確認することができる。また、各ピークの積算値の比率から、組成比を算出することができる。さらに、カーボン核磁気共鳴分光法(13C−NMR)の分析結果から酸基を有しないポリオールの繰り返し数を算出し、数平均分子量を算出することができる。
(2)ウレタン樹脂のイソシアネート構造
ウレタン樹脂を赤外分光(IR)法により測定して得た赤外吸収スペクトルから、イソシアネートの構造を確認することができる。
(3)ウレタン樹脂の酸価
ウレタン樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、電位差自動滴定装置(商品名「AT510」、京都電子工業製)を使用して、水酸化カリウムエタノール滴定液を用いて電位差滴定することにより、ウレタン樹脂の酸価を測定することができる。
(4)ウレタン樹脂の重量平均分子量
ウレタン樹脂をテトラヒドロフランに溶解して得た試料を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析する。これにより、ウレタン樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量を求めることができる。GPCにより測定されるウレタン樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、5,000以上30,000以下であることが好ましい。ウレタン樹脂の重量平均分子量5,000未満であると、ウレタン樹脂膜の弾性が不足し、画像の耐マーカー性がやや低下する場合がある。一方、ウレタン樹脂の重量平均分子量が30,000超であると、インク中における顔料の分散状態がやや不安定化したり、粘度上昇によってインクの信頼性全般がやや低下したりする場合がある
(顔料)
本発明のインクは、無機顔料や有機顔料などの顔料を色材として含有する。無機顔料としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどを挙げることができる。有機顔料としては、アゾ、フタロシアニン、キナクドリンなどを挙げることができる。また、調色などの目的のために、色材として染料を併用してもよい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料を分散方式で分類すると、樹脂分散剤を用いる樹脂分散顔料や、樹脂分散剤を必要としない自己分散顔料などを挙げることができる。本発明のインクには、いずれの分散方式の顔料であっても用いることができる。特に、顔料を分散するための樹脂分散剤としてアクリル樹脂を用いることが好ましい。なかでも、顔料を分散するための樹脂分散剤として、芳香族基を持ったユニットを有するアクリル樹脂を用いると、記録した画像の耐マーカー性をより高めることができるために好ましい。芳香族基を持ったユニットを有するアクリル樹脂は、その分子中に疎水性の高い構造部分を有するので、疎水性の高い顔料と疎水性相互作用し、顔料の粒子表面に吸着しやすい。このため、顔料を分散するための樹脂分散剤として、芳香族基を持ったユニットを有するアクリル樹脂を用いると、記録した画像の耐マーカー性をより高めることができると考えられる。
また、樹脂分散顔料、樹脂結合型の自己分散顔料、及びマイクロカプセル顔料などの樹脂を用いて顔料を分散させる方式を採用することが好ましい。樹脂により分散させる顔料を用いると、自己分散顔料を用いる場合に比べて、顔料に対するアクリル樹脂及びウレタン樹脂の吸着量を高く保つことができる。
(水性媒体)
本発明のインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクであることが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
水性媒体には、さらに水溶性有機溶剤を含有させることができる。水溶性有機溶剤としては、1価アルコール、多価アルコール、(ポリ)アルキレングリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
(その他の添加剤)
本発明のインクには、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、本発明のインクには、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂などの種々の添加剤を含有させてもよい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクを熱エネルギーの作用によりインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
水5.5gに濃塩酸5gを溶かして得た溶液を5℃に冷却し、4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸1.5gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて10℃以下に冷却し、5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、得られた粒子を十分に水洗した。水洗した粒子を110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。得られた自己分散顔料に顔料の含有量が10.0%となるように水を添加し、自己分散顔料を分散させて分散液を得た。次いで、イオン交換法によりナトリウムイオンをカリウムイオンに置換して、カーボンブラックの粒子表面に−C63−(COOK)2基が結合した自己分散顔料を含有する顔料分散液1を得た。顔料分散液1の顔料の含有量は10.0%であった。
(顔料分散液2)
カーボンブラック500.0g、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン(APSES)45.0g、及び蒸留水900.0gを反応器に入れ、温度55℃、回転数300rpmで20分間撹拌した。25.0%の亜硝酸ナトリウム水溶液40.0gを15分間かけて滴下した後、さらに蒸留水50.0gを加え、温度60℃で2時間反応させて反応物を得た。得られた反応物を蒸留水で希釈しながら取り出し、適量の水を添加して、顔料の含有量が15.0%である分散液を得た。遠心分離して不純物を除去し、分散液Aを得た。得られた分散液Aには、顔料の粒子表面にAPSESに由来する官能基が結合した顔料が含まれていた。
ナトリウムイオン電極(商品名「1512A−10C」、堀場製作所製)を使用して分散液A中のナトリウムイオン濃度を測定し、顔料の固形分あたりのモル数(モル/g)に換算した。室温条件下、強力に撹拌しながらペンタエチレンヘキサミン(PEHA)溶液に分散液Aを1時間かけて滴下して混合物を得た。PEHA溶液中のPEHAの濃度は、上記で測定した顔料の固形分あたりのモル数(モル/g)の1〜10倍とし、溶液量は分散液Aと同量とした。得られた混合物を18〜48時間撹拌した後、不純物を除去して分散液Bを得た。分散液B中には、その粒子表面にAPSESに由来する官能基を介してPEHAが結合した顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
水溶性樹脂であるスチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量8,000、酸価140mgKOH/g、分散度Mw/Mn1.5(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量))を用意した。この水溶性樹脂190.0gを蒸留水1,800g中に添加し、樹脂を中和するのに必要な量の水酸化カリウムを加え、撹拌して樹脂水溶液を得た。得られた樹脂水溶液に、顔料の含有量が10.0%である分散液B 500.0gを撹拌しながら滴下して混合物を得た。得られた混合物を蒸発皿に移し、温度150℃で15時間加熱して液体成分を蒸発させ、得られた乾燥物を室温まで冷却した。水酸化カリウムでpHを9.0に調整した水に得られた乾燥物を添加し、分散機を用いて分散させた。撹拌下、1.0mol/L水酸化カリウム水溶液を添加してpHを10〜11に調整した後、脱塩及び精製して不純物と粗大粒子を除去し、顔料分散液2を得た。顔料分散液2には、高分子(水溶性樹脂であるスチレン−アクリル酸共重合体)を含む有機基が顔料の粒子表面に結合した樹脂結合型自己分散顔料が含まれていた。顔料分の含有量は10.0%、樹脂の含有量は5.0%であった。
(顔料分散液3)
イオン交換水500.0g、及びカーボンブラック15.0gを混合し、15,000rpmで30分間撹拌して顔料(カーボンブラック)を予備湿潤させた。イオン交換水4,485gを加え、高圧ホモジナイザーで分散させて分散液Cを得た。得られた分散液C中の顔料の平均粒子径は110nmであった。分散液Cを高圧容器に入れて圧力3.0MPaで加圧した後、オゾン濃度100ppmのオゾン水を導入し、顔料をオゾン酸化処理して分散液Dを得た。水酸化カリウムを添加して分散液DのpHを10.0に調整した後、適量の水を添加して顔料分散液3を得た。顔料分散液3にはカーボンブラックの粒子表面に−COOK基が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
(顔料分散液4)
カーボンブラック10.0g、水溶性樹脂20.0g、及び水270.0gを混合して混合物を得た。水溶性樹脂としては、酸価200mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものを用いた。サンドグラインダーを用いて混合物を1時間分散した後、遠心分離して不純物を除去し、さらにポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した。次いで、適量の水を添加して、pH10.0の顔料分散液4を得た。顔料分散液4には、水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%、水溶性樹脂の含有量は5.0%であった。
<ウレタン樹脂の合成>
メチルエチルケトンに表1に示す種類及び量の酸基を有しないポリオールを加え、十分撹拌して酸基を有しないポリオールを溶解させた後、表1に示す種類及び量のポリイソシアネートをさらに加え、100℃で3時間反応させてプレポリマー溶液を得た。得られたプレポリマー溶液を60℃まで冷却した後、表1に示す種類及び量の酸基を有するポリオールと鎖延長剤を加えた。FT−IRによりイソシアネート基の残存率を確認しながら、所望とするウレタン結合の割合となるまで80℃で鎖延長反応を行った。65℃まで冷却し、メタノールを加えて反応を停止させた後、イオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら水酸化カリウム水溶液を添加した。加熱減圧してメチルエチルケトンを留去し、ウレタン樹脂1〜31の含有量が20.0%であるウレタン樹脂を含む液体1〜31を得た。ウレタン樹脂の合成条件、特性を表1に示す。また、表1中の各成分の詳細を以下に示す。
IPDI:イソホロンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
PC1000:ポリカーボネートジオール(数平均分子量:1,000)
PEG1000:ポリエチレングリコール(数平均分子量:1,000)
PPG1000:ポリプロピレングリコール(数平均分子量:1,000)
PTMG1000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,000)
PCL1000:ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量:1,000)
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
NPG:ネオペンチルグリコール
Figure 2018109130
<インクの調製>
以下に示す各成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物)の商品名である。
・顔料分散液(表2に示す種類):10.0%
・ウレタン樹脂を含む液体(表2に示す種類):10.0%
・グリセリン:9.0%
・ジエチレングリコール:5.0%
・トリエチレングリコール:5.0%
・アセチレノールE100:0.1%
・イオン交換水:60.9%
<評価>
調製した各インクを用いて以下に示す各評価を行った。評価には、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP3100」、キヤノン製)を用いた。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が28ng±10%であるインク滴を1滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。記録条件は、温度23℃、相対湿度55%とした。本発明においては、以下に示す各評価項目の評価基準において、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表2に示す。
(吐出安定性)
上記のインクジェット記録装置を使用し、1ドット幅の縦罫線を普通紙(商品名「Canon Extra」、キヤノン製)10枚に記録して記録物を得た。得られた記録物の縦罫線の歪みを目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって吐出安定性を評価した。
A:縦罫線の歪みがある記録物が1枚以下であった。
B:縦罫線の歪みがある記録物が2枚以上4枚以下であった。
C:縦罫線の歪みがある記録物が5枚以上であった。
(耐マーカー性)
上記のインクジェット記録装置を使用し、太さ1/10インチの縦罫線を普通紙(商品名「Canon Extra」、キヤノン製)に記録して記録物を得た。記録してから5分後及び1日後にそれぞれ、縦罫線に黄色ラインマーカー(商品名「OPTEX2」、ゼブラ製)を用いてマーキングし、その直後に記録物の非記録部にマーキングした。マーカーのペン先及び非記録部の汚れの状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって耐マーカー性を評価した。
A:5分後及び1日後に、ペン先に汚れが少しあったが、非記録部には汚れがほとんどなかった。
B:5分後にペン先及び非記録部に汚れがあり、1日後にペン先に汚れがあったが、1日後に非記録部には汚れがほとんどなかった。
C:5分後及び1日後において、ペン先の汚れが顕著であり、マーキングすると汚れが転写した。
(保存安定性)
上記のインクジェット記録装置を用いて、太さ1/10インチの縦罫線を普通紙(商品名「Canon Extra、キヤノン製)に記録して記録物を得た。記録してから5分後に、縦罫線に黄色ラインマーカー(商品名「OPTEX2」、ゼブラ製)を用いてマーキングした直後に、非記録部にさらにマーキングして、非記録部の汚れの状態を目視で確認した(「保存前」とする)。また、60℃で90日間保存後のインクを用いたこと以外は上記と同様にして、非記録部の汚れの状態を目視で確認した(「保存後」とする)。保存前及び保存後の非記録部の汚れの状態を比較し、以下に示す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。保存による汚れの程度の上昇は、ウレタン樹脂の分解による分子量低下の度合いと相関がある。
A:保存後にも非記録部が汚れていなかった。
B:保存前と比較して、保存後は非記録部がより汚れており、その差が目視で認識できた。
C:保存前と比較して、保存後は非記録部がより汚れており、その差が目視で明確に認識できた。
Figure 2018109130

Claims (10)

  1. 顔料及びウレタン樹脂を含有する、熱エネルギーの作用により記録ヘッドから吐出されるインクジェット記録方式に用いられる水性インクであって、
    前記ウレタン樹脂が、脂肪族ポリイソシアネートに由来するユニット、下記一般式(1)で表されるユニット、及び酸基を有するポリオールに由来するユニットを有することを特徴とする水性インク。
    Figure 2018109130
    (前記一般式(1)中、R1は、主鎖及び前記主鎖から分岐した炭素数2以上の側鎖を有する、合計炭素数3以上のアルキレン基を表す。nは、繰り返し数を表す)
  2. 前記主鎖の炭素数が、2以上9以下である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記側鎖のうち最も炭素数の多い側鎖の炭素数が、12以下である請求項1又は2に記載の水性インク。
  4. 前記側鎖のうち最も炭素数の多い側鎖の炭素数CBと、前記主鎖の炭素数CMとが、CM≦CBの関係を満たす請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
  5. 前記一般式(1)中、R1で表されるアルキレン基が、前記側鎖を2以上有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
  6. 前記ウレタン樹脂の酸価が、40mgKOH/g以上である請求項1乃至5いずれか1項に記載の水性インク。
  7. 前記ウレタン樹脂の重量平均分子量が、5,000以上30,000以下である請求項1乃至6いずれか1項に記載の水性インク。
  8. 前記ウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合の合計に占める、ウレタン結合の割合が、95モル%以上である請求項1乃至7いずれか1項に記載の水性インク。
  9. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  10. インクを熱エネルギーの作用によりインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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