JP2020075436A - 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット - Google Patents

前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット Download PDF

Info

Publication number
JP2020075436A
JP2020075436A JP2018211064A JP2018211064A JP2020075436A JP 2020075436 A JP2020075436 A JP 2020075436A JP 2018211064 A JP2018211064 A JP 2018211064A JP 2018211064 A JP2018211064 A JP 2018211064A JP 2020075436 A JP2020075436 A JP 2020075436A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pretreatment liquid
water
resin
pigment
ink
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018211064A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6541088B1 (ja
Inventor
真広 杉原
Masahiro Sugihara
真広 杉原
佑樹 佐々木
Yuki Sasaki
佑樹 佐々木
和志 砂押
Kazushi Sunaoshi
和志 砂押
和昌 服部
Kazumasa Hattori
和昌 服部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyo Ink Co Ltd
Artience Co Ltd
Original Assignee
Toyo Ink SC Holdings Co Ltd
Toyo Ink Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyo Ink SC Holdings Co Ltd, Toyo Ink Co Ltd filed Critical Toyo Ink SC Holdings Co Ltd
Priority to JP2018211064A priority Critical patent/JP6541088B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6541088B1 publication Critical patent/JP6541088B1/ja
Publication of JP2020075436A publication Critical patent/JP2020075436A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】本発明の目的は、フィルム基材などの非浸透性基材に対して、塗工ムラやはじきといった塗工欠陥がなく、混色滲みや色ムラのない画像品質に優れた印刷物を得ることができ、また前記非浸透性基材に対する密着性や、長期の保存安定性にも優れた前処理液を提供すること、および印刷時の乾燥性や印刷物の耐ブロッキング性にも優れた前処理液を提供することである。【解決手段】顔料と水とを含む水性インクジェットインキとともに用いられる前処理液であって、前記前処理液が、樹脂粒子(A)と、凝集剤(B)と、増粘剤(C)と界面活性剤(D)と、水とを含む前処理液。【選択図】なし

Description

本発明は、前処理液、前記前処理液を含むインキセット、及び前記インキセットを用い
て製造された印刷物に関する。
デジタル印刷は、オフセット印刷などの従来の有版印刷とは違い、製版フィルムや製版
を必要としないため、コスト削減や高速化が実現可能であり、将来的に広く普及すると期
待されている。
デジタル印刷の一種であるインクジェット印刷方式では、非常に微細なノズルからイン
キ液滴を印刷基材に直接吐出し、付着させることで文字や画像を得る。インクジェット印
刷方式には、使用する装置の騒音が小さい、操作性がよい、カラー化が容易であるなどの
利点があり、オフィスや家庭において、出力機として広く用いられている。またインクジ
ェット技術の向上により、産業用途においても、デジタル印刷出力機として利用され始め
ている。
従来、産業用途におけるインクジェット印刷方式で用いられるインキは、溶剤インキや
UVインキであった。しかし近年、環境面への対応といった点から、水性インキの需要が
高まっている。
インクジェット印刷方式で用いる(以下、単に「インクジェット用」ともいう)水性イ
ンキは、従来、普通紙や専用紙(例えば、写真光沢紙)を対象としたものであった。すな
わち、水を主成分とするとともに、基材に対する濡れ性や乾燥性を制御するため、グリセ
リンやグリコールなどの水溶性有機溶剤が添加される。これらの液体成分からなるインク
ジェット用水性インキ(以下、「水性インクジェットインキ」、「水性インキ」、あるい
は単に「インキ」ともいう)を用いて、文字や画像のパターンを上記基材上に印刷すると
、液体成分が前記基材中に浸透して乾燥し、定着する。
一方、インクジェット用の基材には、上記した普通紙や専用紙、または上質紙や再生紙
のような浸透性の高いものだけでなく、コート紙やアート紙、微塗工紙のような低浸透性
のものや、フィルム基材のような非浸透性のものも存在する。これまで、浸透性の高い基
材や、低浸透性の基材に対しては、上記のように水性インクジェットインキを用いて実用
可能な画像品質が実現できている。それに対し、フィルム基材のような非浸透性の基材に
対しては、着弾した後のインキ液滴が、基材中に全く浸透しないため、前記浸透による乾
燥がほぼ起こらず、その結果液滴同士が合一して滲みやムラとなり、画像品質が損なわれ
ていた。
また、非浸透性の基材ではインキが全く浸透しないため、十分な密着性を得ることが難
しい。前記非浸透性基材に対する密着性が不足すると、印刷層(インキ膜)が擦れにより
容易に剥がれてしまい、実用上の問題となる。
上記の課題に対する方策として、非浸透性基材に対する前処理液の付与処理が知られて
いる。一般に、水性インクジェットインキ用の前処理液として、前記水性インクジェット
インキ中の液体成分を吸収し乾燥性を向上させる層(インキ受容層)を形成するもの(特
許文献1〜2参照)と、固体成分の凝集やインキの増粘を意図的に引き起こすことで水性
インクジェットインキ液滴間の滲みや色ムラを防止し画像品質を向上させる層(インキ凝
集層)を形成するもの(特許文献3〜4参照)の2種類が知られている。
しかしながら、インキ受容層の場合、例えば一度に大量のインキを受容する際には、イ
ンキ受容層の膨潤に起因する画像のワレ、受容可能量超過による滲みや色ムラ、受容層へ
のインキ成分の吸収による濃度低下が発生する可能性がある。また受容層を形成する場合
、後述するインキ凝集層の場合よりも、前処理液の塗工膜厚を厚くする必要がある。塗工
量が多くなると、前処理液自身の乾燥性が低下し、乾燥不良などの不具合が生じることが
懸念される。上記の通り、フィルム基材のような非浸透性の基材に使用する場合、前処理
液も全く浸透しないことから、上記不具合が起こりやすいと考えられる。
一方、インキ凝集層を形成する前処理液の例として、特許文献3には、有機酸などの色
材凝集剤、ポリオレフィン粒子、及び水性有機溶媒を含有した前処理液が記載されており
、前記前処理液を使用することで、細線再現性の優れた印刷物が得られるとされている。
しかしながら、上記特許文献3において着目されているのは浸透性の高い基材であり、フ
ィルムのような非浸透性の基材に関する具体的な記載はない。実際に本発明者らが、特許
文献3記載の前処理液を、ポリオレフィンフィルムやナイロンフィルムに使用してみたも
のの、前記フィルムに対する密着性が不十分であり、印刷層が容易に剥がれ落ちてしまっ
た。
また特許文献4には、凝集剤とベタイン化合物とを含む処理液を用いることで、カール
が抑制されるとともに優れた画像品質を有する印刷物が得られるとの記載がある。しかし
ながら、前記特許文献4の実施例において画像品質(ベタ均一性)の評価に使用されてい
るのは普通紙であり、フィルムのような非浸透性の基材に関する具体的な記載はない。実
際に本発明者らが、上記フィルムを用いて前記特許文献4記載の前処理液を評価したとこ
ろ、前記フィルム上で塗工ムラが発生してしまったうえ、前記前処理液の塗工後に、水性
インクジェットインキを印刷した際に、画像品質に劣った印刷物となってしまった。
更に特許文献5には、ウレタン結合またはエステル結合を有する会合性増粘剤と、反応
剤(凝集剤)とを含む反応液(処理液)が開示されており、耐マーカー性や光学濃度に優
れた印刷物が得られるとされている。また特許文献6には、水系ラテックス樹脂と、凝集
剤と、増粘剤とを含む塗工層を有するインクジェット用フィルム基材が開示されており、
印刷物のひび割れを防止し、画像品質に優れる印刷物が得られるとの記載がある。
しかしながら、詳細は実施例にて説明するが、本発明者らが、上記フィルムを用いて前
記特許文献5〜6記載の前処理液を評価したところ、前記フィルム上で、塗工ムラ(膜厚
の不均一による塗工面の凸凹)やはじき(塗工面の一部にみられる基材表面の露出)とい
った塗工欠陥が発生してしまったうえ、画像品質や密着性に劣った印刷物となってしまっ
た。
なお、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂のような樹脂を使用
した前処理液により、密着機能を付与するという方策も知られている。しかしながら、密
着性と画像品質との両立を図るべく、前記樹脂と凝集剤とを単純に併用した場合、長期の
保存安定性に劣る前処理液となってしまううえ、両者の相溶性の悪さに起因すると考えら
れる、塗工時や乾燥時のムラの発生、及び画像品質の悪化が発生してしまう恐れがある。
特開平6−297830号公報 特開2000−335084号公報 特開2016−168782号公報 特開2016−68306号公報 特開2018−1625号公報 特開2017−109411号公報
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、フィルム基材など
の非浸透性基材に対して、塗工ムラやはじきといった塗工欠陥がなく、混色滲みや色ムラ
のない画像品質に優れた印刷物を得ることができ、また前記非浸透性基材に対する密着性
や、長期の保存安定性にも優れた前処理液を提供することにある。また本発明の更なる目
的は、上記に加えて、印刷時の乾燥性や印刷物の耐ブロッキング性にも優れた前処理液を
提供することにある。また本発明の更なる目的は、上記特性を好適に発現できる、前記前
処理液と水性インクジェットインキとを含むインキセット、及び、前記インキセットを用
いて製造された印刷物を提供することにある。
すなわち本発明は、顔料と水とを含む水性インクジェットインキとともに用いられる前
処理液であって、
前記前処理液が、樹脂粒子(A)と、凝集剤(B)と、増粘剤(C)と界面活性剤(D
)と、水とを含み、
前記樹脂粒子(A)の50%粒子径(D50)が、30〜350nmであり、
前記凝集剤(B)が、多価金属塩及びカチオン性高分子化合物からなる群から選ばれる
少なくとも1種を含み、
前記凝集剤(B)の相対湿度80%における水分吸湿率が、75質量%以下であり、
前記増粘剤(C)が、疎水変性の水溶性ウレタン樹脂を含み、
前記界面活性剤(D)のHLB値が、13.5以下である前処理液に関する。
また本発明は、前記樹脂粒子(A)が、ポリオレフィン樹脂粒子である、上記前処理液に関す
る。
また本発明は、前記界面活性剤(D)のHLB値が、1.0〜8.5である、上記前処
理液に関する。
また本発明は、前記凝集剤(B)が、前記多価金属塩として2価金属塩を含む、上記前
処理液に関する。
また本発明は、前記増粘剤(C)の配合量が、前記樹脂粒子(A)の配合量に対して1
〜100質量%である、上記前処理液に関する。
また本発明は、更に、25℃における静的表面張力が20〜40mN/mの水溶性有機
溶剤を含む、上記前処理液に関する。
また本発明は、上記前処理液と、
顔料、水溶性有機溶剤、及び水を含む水性インクジェットインキと
を含む、インキセットに関する。
また本発明は、上記前処理液を付与した基材に、前記水性インクジェットインキが印刷
されてなる印刷物に関する。
本発明により、フィルム基材などの非浸透性基材に対して、塗工ムラやはじきといった
塗工欠陥がなく、混色滲みや色ムラのない画像品質に優れた印刷物を得ることができ、ま
た前記非浸透性基材に対する密着性や、長期の保存安定性にも優れた前処理液を提供する
ことが可能となる。また上記に加えて、印刷時の乾燥性や印刷物の耐ブロッキング性にも
優れた前処理液を提供することが可能となる。更に上記特性を好適に発現できる、前記前
処理液と水性インクジェットインキとを含むインキセット、及び、前記インキセットを用
いて製造された印刷物を提供することが可能となる。
以下に、好ましい形態を上げて、本発明の実施形態(以下、単に「本実施形態」ともい
う)である前処理液について説明する。
上記でも説明した通り、非浸透性基材に対する密着性付与のために使用される樹脂(バ
インダー樹脂)と、画像品質の向上のために使用される凝集剤とを併用した前処理液は、
それぞれを単独で使用した時と比べて、保存安定性や密着性が悪化する。更に、フィルム
への塗工時や乾燥時に、塗工面にムラやはじきが発生してしまい、その上に水性インクジ
ェットインキを印刷すると、画像品質もまた悪化してしまう恐れがある。
バインダー樹脂による密着性は、非浸透性基材表面における水素結合や分子間相互作用
の形成によって発現する。一方で、凝集剤による画像品質の向上は、前記凝集剤の電離に
よって発生するカチオン成分が、水性インクジェットインキ中の固体成分(顔料や樹脂成
分)に作用することで、前記固体成分の凝集や増粘を引き起こし、非浸透性基材上での混
色滲みや色ムラを抑制することによる。
ところがバインダー樹脂と凝集剤とを併用した場合、両者の間に相互作用が起こり、前
記バインダー樹脂の溶解性や分散安定性が低下してしまうことが考えられ、その結果、長
期に渡って安定性を維持することが難しくなる。また、前記相互作用の影響で、前処理液
中での、バインダー樹脂と凝集剤との相溶状態が不均一化しやすいと考えられる。特に、
前処理液の乾燥時、すなわち前記前処理液中の液体成分が揮発し濃縮される際には、凝集
剤の電離状態が変化するため、非浸透性基材上でバインダー樹脂と凝集剤とが不均一に分
布し、結果として、非浸透性基材上で塗工ムラが発生しやすくなると考えられる。またこ
の不均一の発生により、バインダー樹脂と非浸透性基材との間に形成される、水素結合や
分子間相互作用もまた不均一化することで密着性が劣化する。更には、凝集剤の不均一な
分布や、塗工ムラのために、後から水性インクジェットインキを印刷した際に、前記水性
インクジェットインキ液滴の凝集や増粘のムラや、塗工面での流れが生じ、混色滲みや色
ムラが発生すると考えられる。
そこで上記の課題を解決すべく、本発明者らが鋭意検討を続けた結果、バインダー樹脂
として特定の範囲の粒径を有する樹脂粒子(A)、特定の水分吸湿率を有する凝集剤(B
)、疎水変性の水溶性ウレタン樹脂を含む増粘剤(C)、特定の範囲のHLB値を有する
界面活性剤(D)を全て併用することにより、非浸透性基材に対して、塗工ムラやはじき
といった塗工欠陥がなく、混色滲みや色ムラのない画像品質に優れた印刷物を得ることが
でき、また前記非浸透性基材に対する密着性や、長期の保存安定性にも優れた前処理液と
なることを見出した。前記構成の前処理液によって、上記の課題が好適に解決できるメカ
ニズムの詳細は不明であるものの、本発明者らは以下のように推測している。
まず、本実施形態の前処理液は、樹脂粒子(A)を含む。一般に、樹脂の形態には水溶
性樹脂と樹脂粒子の2種類が存在し、前処理液や印刷物に要求される特性に応じて、適宜
使い分けられる。本実施形態の前処理液の場合、後述する疎水変性の水溶性ウレタン樹脂
と会合状態を形成させる必要があることから、バインダー樹脂として樹脂粒子を使用する
。また樹脂粒子は、水溶性樹脂の場合に比べて、より多量の樹脂を配合できることから、
印刷物の密着性、耐擦性や耐水性が高められる点でも好適な材料である。
また、本実施形態の前処理液に含まれる凝集剤(B)は、多価金属塩及びカチオン性高
分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、温度40℃、相対湿度80%
における水分吸湿率が、75質量%以下である。凝集剤(B)として機能する、多価金属
塩やカチオン性高分子化合物は、前処理液中でイオンとして存在している。一般に、液体
中でイオン化しやすい化合物ほど、解離定数(凝集剤(B)が多価金属塩である場合は、
「イオン化定数」とも呼ばれる)が高い。そして、解離定数やイオン化定数が大きい化合
物ほど、水への溶解度が高く、また水分吸湿率も高くなる傾向にある。しかしながら、凝
集剤(B)の水分吸湿率が高すぎる場合、空気中の水分を吸湿することで、密着性や乾燥
性が劣化する。そこで本実施形態では、上記の通り、凝集剤(B)の水分吸湿率を定義す
ることにより、上記品質の劣化を抑制している。また、水分の吸湿を抑えることで、乾燥
時に前処理液が不均一に乾燥することがなくなり、塗工ムラの更なる抑制も実現できると
考えられる。
更に本実施形態の前処理液は、増粘剤(C)として、疎水変性の水溶性ウレタン樹脂を
含む。水溶性ウレタン樹脂分子中に存在する疎水基が、樹脂粒子と相互作用を起こし、会
合状態を形成する。その結果、好適な粘弾性特性を有する前処理液が得られるとともに、
乾燥時には速やかに増粘し、樹脂粒子(A)と凝集剤(B)との不均一化や分離を抑制す
ることで、密着性に優れ、塗工ムラのない、均一な塗膜が形成できると考えられる。また
、上記会合状態の形成に加え、増粘剤(C)が樹脂粒子(A)を保護するように存在する
ことで、前記樹脂粒子(A)の化学的安定性が向上すると考えられる。その結果、凝集剤
(B)との相互作用が抑制され、前処理液としての保存安定性の向上が実現できる。
加えて、本発明者が鋭意検討を続けた結果、樹脂粒子(A)の50%粒子径が30〜3
50nmであるときに、上記効果が特に向上することを見出した。詳細は不明ながら、上
記粒子径を有する樹脂粒子(A)と会合する増粘剤(C)の量が好適化することで、前処
理液の粘弾性特性や凝集剤(B)の安定化効果が良化するばかりでなく、前記増粘剤(C
)による密着性への影響も抑えられるためと考えられる。
なお、凝集剤(B)や増粘剤(C)を含むが、樹脂粒子(A)を含まない前処理液の場
合、上記の通り、前記増粘剤(C)による会合状態が形成されない。増粘剤(C)を大量
に添加することで、前処理液の粘度を高めることはできるものの、そのような前処理液を
用いて、本発明者らが検討を行ったところ、塗工ムラを防止することはできなかった。前
記会合状態が、粘性だけでなく、塗工時の状態に影響を与える弾性に対しても、影響を及
しているためと考えられる。
また、本実施形態の前処理液は、HLB値が13.5以下である界面活性剤(D)を含
む。一般にフィルムなどの非浸透性基材は基材自体の表面自由エネルギーが低く、前処理
液を均一に塗工させるためには、界面活性剤を使用して、前記前処理液に濡れ性を付与さ
せる必要がある。しかしながら界面活性剤の種類によっては、泡や界面配向性の高さに起
因するはじきが発生する可能性があるうえ、上記会合状態の破壊や、凝集剤(B)の安定
化効果の悪化を招く恐れがある。
そこで本発明者らが鋭意検討を続けた結果、上記HLB値を有する界面活性剤(D)を
、樹脂粒子(A)、凝集剤(B)や増粘剤(C)と併用することで、上記の効果を悪化さ
せることなく、非浸透性基材上への均一塗工、そして画像品質の一層の向上が実現できる
ことを見出した。こちらも詳細は不明であるものの、好適なHLB値を有する界面活性剤
(D)が、増粘剤(C)が形成する会合状態の中に取り込まれ相溶しているものと考えら
れる。
以上のように、非浸透性基材に対して、塗工ムラやはじきといった塗工欠陥がなく、混
色滲みや色ムラのない画像品質に優れた印刷物を得ることができ、また前記非浸透性基材
に対する密着性や、長期の保存安定性にも優れた前処理液を得るためには、上記の構成を
採用することは必須不可欠である。
続いて以下に、本実施形態の前処理液を構成する各成分について、詳細に説明する。
<樹脂粒子(A)>
本実施形態の前処理液は、バインダー樹脂として樹脂粒子(A)を含む。本明細書にお
ける「樹脂粒子」とは、後述する方法によって測定される粒子径が5〜1000nmであ
るものを指す。
上記の通り、樹脂粒子(A)の50%粒子径(D50)は、30〜350nmである。
また、非浸透性基材に対する密着性や、増粘剤(C)と形成する会合体によって、長期の
保存安定性を確保し、塗工時や乾燥時における塗工ムラを抑え、画像品質に優れた印刷物
が得られるという観点から、より好ましくは50〜350nmであり、特に好ましくは5
0〜280nmである。なお、樹脂粒子(A)の50%粒子径(D50)は、粒度分布測
定機(例えばマイクロトラック・ベル社製マイクロトラックUPAEX−150)を用い
、動的光散乱法によって測定された、体積基準での累積50%径値(メジアン径)である
本実施形態の前処理液に使用できる樹脂粒子(A)の種類は、特に限定されるものでは
なく、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、(メタ)アクリル
樹脂、アクリル変性ポリウレタン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(
無水)マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル
樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが例示できる。上記の中でも、非浸
透性基材に対する密着性の観点から、より好ましくは、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン
ポリウレア樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリル変性ポリウレタン樹脂、ポリオレフィ
ン樹脂から選択される1種以上であり。更に、増粘剤(C)と形成する会合体によって、
長期の保存安定性を確保し、塗工時や乾燥時における塗工ムラを抑制できるという観点か
ら、樹脂粒子(A)としてポリオレフィン樹脂を使用することが特に好ましい。なお本明
細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及び/またはメタクリルを意味し、「(
無水)マレイン酸」はマレイン酸及び/または無水マレイン酸を意味する。
なお、前記ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィンとして、エチレン、プロピレン、
ブテンから選択される1種以上が好適に使用でき、少なくともプロピレンを含むことが特
に好適である。
また前記ポリオレフィン樹脂として、無変性ポリオレフィン樹脂、ハロゲン化ポリオレ
フィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、変性ハロゲン化ポリオレフィン樹脂などが例示で
き、本実施形態の前処理液ではいずれを使用してもよい。中でも、脱ハロゲン化水素反応
を起こすことがなく、凝集剤(B)との相互作用を抑えるとともに、増粘剤(C)と安定
な会合体を形成することで、塗工時のムラ、画像品質や保存安定性に優れる前処理液が得
られるという観点から、無変性ポリオレフィン樹脂、及び/または、変性ポリオレフィン
樹脂を選択することが好ましく、密着性に優れた印刷物が得られる観点から、変性ポリオ
レフィン樹脂を選択することが特に好ましい。なお前記変性として、酸変性、アクリル変
性、ウレタン変性、エポキシ変性などが例示でき、いずれも好適に使用できる。
本実施形態の前処理液は、上記に例示された樹脂粒子(A)を1種のみ含んでもよいし
、2種以上併用してもよいが、一実施形態において、前記前処理液は、ポリウレタン樹脂
、ポリウレタンポリウレア樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリル変性ポリウレタン樹脂
、及びポリオレフィン樹脂からなる群より選択される樹脂粒子を2種以上含むことが好適
である。特性や種類の異なる樹脂粒子を組み合わせて使用することで、増粘剤(C)と特
に安定な会合体が形成でき、塗工時のムラ、画像品質、密着性が好適に両立できるばかり
でなく、耐ブロッキング性や乾燥性にも優れた前記前処理液となるためである。中でも、
上記特性の両立の観点から、樹脂粒子(A)として、ポリオレフィン樹脂粒子を2種類以
上含むことが特に好適である。
上記樹脂粒子(A)は、公知の合成方法により合成したものを用いてもよいし、市販品
を用いてもよい。市販品から選択する場合、例えば、アデカボンタイターHUXシリーズ
(ADEKA社製);ユリアーノシリーズ(荒川化学工業社製);パラゾールシリーズ(
大原パラヂウム化学社製);ユーコートシリーズ、パーマリンシリーズ(以上、三洋化成
工業社製);スーパーフレックスシリーズ、スーパーフレックスEシリーズ(以上、第一
工業製薬社製);WBRシリーズ(大成ファインケミカル社製);ハイドランシリーズ(
DIC社製);ハイテックシリーズ(東邦化学工業社製);スーパークロンシリーズ、ア
ウローレンシリーズ(日本製紙社製);ニチゴーポリエスターシリーズ(日本合成化学社
製);AQUACERシリーズ、Hordamerシリーズ(以上、ビックケミー社製)
、タケラックシリーズ(三井化学社製);パスコールシリーズ(明成化学工業社製);ア
ローベースシリーズ(ユニチカ社製)などが好適に使用できる。
本実施形態の前処理液に含まれる樹脂粒子(A)の量は、前記前処理液全量に対し、固
形分換算で1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ま
しく、3〜20質量%であることが特に好ましい。樹脂粒子(A)の配合量を上記範囲内
とすることで、増粘剤(C)との会合状態が好適に形成され、非浸透性基材に対する密着
性、塗工ムラの抑制や、画像品質に優れた印刷物を得ることが可能となる。更に乾燥性や
耐ブロッキング性にも優れた印刷物が得られる点からも、好適である。
樹脂粒子(A)の融点は、0〜130℃であることが好ましい。より好ましくは15〜
105℃であり、特に好ましくは30〜90℃である。融点が0℃以上であれば、乾燥時
における樹脂粒子の分散安定性が向上し塗工適性に優れ、130℃以下であれば、非浸透
性基材に対する密着性に優れる。なお上記融点は、示差操作熱量測定(DSC)を用いて
測定される値であり、例えば以下のように測定できる。樹脂を乾固したサンプル約2mg
をアルミニウム製試料容器上で秤量したのち、前記アルミニウム製試料容器を、DSC測
定装置(例えば、島津製作所社製「DSC−60Plus」)内のホルダーにセットする
。そして10℃/分の昇温条件にて測定を行い、得られたDSCチャートから読み取った
吸熱ピークの温度を、本明細書における融点とする。なお、温度校正にはインジウムを使
用する。
また、融点が130℃よりも大きい樹脂粒子(A)に関しては、非浸透性基材に対する
密着性に優れる印刷物が得られる観点から、前記樹脂粒子(A)のガラス転移温度(Tg
)が−50〜130℃であることが好ましく、0〜130℃であることがより好ましい。
更に、前処理液の乾燥時の分散安定性を向上し塗工ムラを抑えるという観点から、50〜
130℃であることが特に好ましい。なお融点と同様に、ガラス転移温度も示差操作熱量
測定(DSC)によって測定できる。具体的には、上記方法によって得られたDSCチャ
ートから、低温側のベースラインと、前記ベースラインの変曲点における接線との交点を
求め、前記交点の温度をガラス転移温度とする。
本実施形態における樹脂粒子(A)は、アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性の
いずれであっても好適に用いることができるが、非浸透性基材上で優れた密着性を発現さ
せるという観点から、ノニオン性またはアニオン性の樹脂粒子を用いることが好ましく、
アニオン性の樹脂粒子を用いることが特に好ましい。なお本明細書において「アニオン性
」とは、水中で負に帯電している物質、具体的には、酸価が1mgKOH/g以上である
物質を指すものとする。
樹脂粒子(A)の酸価は、0〜40mgKOH/gであることが好ましい。また長期の
保存安定性を確保するという観点から、アニオン性の樹脂粒子、中でも酸価が1〜35m
gKOH/gを選択することがより好ましく、1〜30mgKOH/gであるアニオン性
の樹脂粒子を選択することが特に好ましい。なお樹脂粒子の酸価とは、前記樹脂粒子1g
中に含まれる酸を中和するために必要となる水酸化カリウム(KOH)のmg数であり、
公知の装置を用いて電位差滴定法により測定することができる。具体的には、例えば京都
電子工業社製「電位差自動滴定装置AT−610」を用い、エタノール/トルエン混合溶
媒中で、KOH溶液にて滴定できる値である。
<凝集剤(B)>
本実施形態の前処理液は、特定の水分吸湿率を有する凝集剤(B)を含む。なお本明細
書において「凝集剤」とは、水性インクジェットインキに含まれる、顔料や樹脂粒子の分
散状態を破壊し凝集させる、及び/または、水溶性樹脂を不溶化し前記水性インクジェッ
トインキを増粘させることができる成分を意味する。
本実施形態の前処理液に使用する凝集剤(B)としては、画像品質を著しく向上できる
観点から、多価金属塩及び/またはカチオン性高分子化合物を含む。多価金属塩やカチオ
ン性高分子化合物は、凝集剤としての機能が強く、少量であっても顔料の凝集・析出に有
効であるため、混色滲みや色ムラをなくし画像品質を特段に向上させることが可能である
。また、これら材料が速やかに凝集剤として機能し、樹脂粒子(A)の機能発現を阻害す
ることがないため、非浸透性基材に対する密着性もまた向上すると考えられる。なお、本
実施形態の前処理液では、多価金属塩またはカチオン性高分子化合物のどちらかを選択し
て用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
また上記の通り、本実施形態の前処理液に用いる凝集剤(B)は、温度40℃、相対湿
度80%における水分吸湿率が75質量%以下である。なお、本明細書における「水分吸
湿率」とは、具体的には、下記方法によって測定される値である。
まず、凝集剤を温度100℃、相対湿度75%以下の環境下で24時間保管する。その
際、市販品など、凝集剤が水溶液の状態でしか入手できない場合は、あらかじめ水を揮発
除去したのち、温度100℃、相対湿度75%以下の環境下に保管する。温度100℃、
相対湿度75%以下の環境下に保管したのち、凝集剤の質量を測定し(W1(g)とする
)、続いて温度40℃、相対湿度80%の環境下で24時間保管する。そして、温度40
℃、相対湿度80%の環境下に保管した後、再度質量を測定し(W2(g)とする)、下
記式(1)により水分吸湿率を算出する。
式(1):

水分吸湿率(質量%)=100×{(W2−W1)/W1}
上記の通り、本実施形態の前処理液で用いられる凝集剤(B)の水分吸湿率を75質量
%以下にすることで、前処理液を非浸透性基材に塗工し、乾燥させる際に水分が揮発しや
すく塗工ムラが抑制できるとともに、密着性や画像品質が損なわれることもない。更に前
記特性を長期間保持できる印刷物が得られるため、好適である。また、上記効果がより好
適に発現する観点から、前記水分吸湿率は40質量%以下であることがより好ましい。
<多価金属塩>
本明細書において「多価金属塩」とは、2価以上の金属イオンと、対アニオンから構成
される金属塩を意味する。凝集剤(B)として多価金属塩を選択する場合、上記凝集剤と
しての機能を発現し、また、好適な溶解性・拡散性を有するものであれば、任意の材料を
用いることができる。なお、多価金属塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わ
せて用いてもよい。
中でも、前記多価金属塩が2価金属塩であることが好ましい。2価金属塩は、水に対す
る溶解性・拡散性に優れ、水性インクジェットインキの液滴と接触した際、素早く混合し
、前記液滴の増粘・凝集を起こすことができる。また3価以上の金属塩と比較して、急激
に前記増粘・凝集を起こすことがないため、非浸透性基材上での濡れ広がりを適度に抑制
することができ、結果として、画像品質、密着性や乾燥性に優れた印刷物が得られる。
本実施形態の前処理液では、凝集剤としての機能が高い点から、前記2価金属塩を構成
する2価金属イオンが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、及び鉄イ
オンからなる群から選択される1種であることが好ましい。特にカルシウムイオンは、イ
オン化傾向が大きく電離しやすいため、凝集剤としての効果が大きいという利点を有する
うえ、イオン半径が小さく、前処理液内、及びインキ液滴中で移動しやすいことから、優
れた画像品質を得るという観点から好ましく選択される。また詳細は不明ながら、カルシ
ウムイオンを含む凝集剤(B)を、樹脂粒子(A)や増粘剤(C)と組み合わせた前処理
液では、密着性、乾燥性や、耐ブロッキング性にも優れた印刷物となり、この点からも、
前記カルシウムイオンが好適に選択される。
また、上記多価金属イオンの対アニオンとして、塩化物イオン、臭化物イオン、硝酸イ
オン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオンなどの無機酸のイオンや、パントテン酸イ
オン、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、アスコルビン酸イオン、グリコー
ル酸イオン、乳酸イオンなどの有機酸のイオンが好ましく選択される。
更に、樹脂粒子(A)や増粘剤(C)との相溶性が高く、画像品質と保存安定性とが両
立した前処理液が得られる観点から、上記の中でも有機酸のイオンを選択することが好ま
しい。その中でも、水への溶解度、及び、水性インクジェットインキ中の成分との相互作
用の観点から、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、グリコール酸イオン、乳
酸イオンから選択される1種以上を選択することがより好ましく、酢酸イオン及び/また
は乳酸イオンを選択することが特に好ましい。
本実施形態の前処理液における多価金属塩の含有量は、前記前処理液全量に対し、多価
金属イオンとして0.5〜8質量%であることが好ましく、1.0〜6.5質量%である
ことがより好ましく、1.0〜5.0質量%であることが特に好ましい。多価金属イオン
の含有量を上記範囲内とすることで、長期の保存安定性を確保できる。また、混色滲みや
色ムラを抑制しながらも、基材に対する前処理液の濡れ性を確保することができ、画像品
質に特段に優れた印刷物となる。なお、前処理液全量に対する多価金属イオンの含有量は
、下記式(2)によって求められる。
式(2):

(多価金属イオンの含有量)(質量%)=WC×MM÷MC
式(2)中、WCは、多価金属塩の、前処理液全量に対する含有量(質量%)を表し、
MMは、多価金属塩を構成する多価金属イオンの分子量を表し、MCは、多価金属塩の分
子量を表す。
<カチオン性高分子化合物>
凝集剤(B)としてカチオン性高分子化合物を選択する場合も、多価金属塩の場合と同
様に、上記凝集剤としての機能を発現し、また好適な溶解性、拡散性を有するものであれ
ば、任意の材料を用いることができる。また、1種を単独で用いても、2種以上を組み合
わせて用いてもよい。本明細書において「カチオン性高分子化合物」とは、分子内にカチ
オン基を有し、1種類以上の単量体同士が共有結合によって連結した化合物である。
カチオン性高分子化合物に含まれるカチオン基の例として、アミノ基、アンモニウム基
、アミド基、−NHCONH 2 基などが挙げられるが、これらに限定されるものではな
い。またカチオン性高分子化合物中に上記カチオン基を導入するために使用される材料と
して、例えばビニルアミン、アリルアミン、メチルジアリルアミン、エチレンイミンなど
のアミン化合物;アクリルアミド、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミドなどのアミ
ド化合物;ジシアンジアミドなどのシアナミド化合物;エピフルオロヒドリン、エピクロ
ロヒドリン、メチルエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなど
のエピハロヒドリン化合物;ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾ
ールなどの環状ビニル化合物;アミジン化合物;ピリジニウム塩化合物;イミダゾリウム
塩化合物などを挙げることができる。
本実施形態の前処理液において、凝集剤(B)として、水分吸湿率が75質量%以下の
カチオン性高分子化合物を用い、かつ、増粘剤(C)として疎水変性の水溶性ウレタン樹
脂を用いる場合、前記カチオン性高分子化合物が、ジアリルアミン構造単位、ジアリルア
ンモニウム構造単位、及びエピハロヒドリン構造単位からなる群から選択される1種類以
上の構造単位を含む化合物を用いることが好ましく、少なくともジアリルアンモニウム構
造単位を含んでいることがより好ましい。上記の樹脂はいずれも強電解質であり、前処理
液中における溶解安定性が良好であるとともに、凝集剤としての機能も高い。更に、詳細
は不明ながら、増粘剤(C)によって凝集作用が抑制されにくい。
中でもジアリルアンモニウム構造単位を含む樹脂は、特に優れた凝集性を発揮し、非浸
透性基材上で、混色滲みや色ムラが少なく、かつ発色性に優れた印刷物を得ることが可能
であるため好ましい。なお入手容易性などの点から、ジアリルアンモニウム構造単位とし
て、ジアリルジメチルアンモニウム及び/またはジアリルメチルエチルアンモニウムの、
塩酸塩または硫酸エチル塩が好適に選択される。
一方、理由は定かではないものの、エピハロヒドリン構造単位を含む樹脂を使用した印
刷物は耐水性に優れており、この点からも好適に選択される。なおエピハロヒドリン構造
単位を含む樹脂として、エピハロヒドリン変性ポリアミン樹脂、エピハロヒドリン変性ポ
リアミド樹脂、エピハロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂、エピハロヒドリン−ア
ミン共重合体などを挙げることができる。また入手容易性などの点から、エピハロヒドリ
ンとして、エピクロロヒドリンまたはメチルエピクロロヒドリンが好適に選択される。
上記カチオン性高分子化合物は、既知の合成方法により合成品したものを用いてもよい
し、市販品を用いてもよい。なお、ジアリルアミン構造単位を含む市販品の具体例として
、PAS−21CL、PAS−21、PAS−M−1L、PAS−M−1、PAS−M−
1A(ニットーボーメディカル社製);ユニセンスKCA100L、KCA101L(セ
ンカ社製)を挙げることができる。またジアリルアンモニウム構造単位を含む樹脂の市販
品として、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−24、PAS−J−81L、
PAS−J−81、PAS−J−41(ニットーボーメディカル社製);ユニセンスFP
A1000L、FPA1001L、FPA1002L、FCA1000L、FCA100
1L、FCA5000L(センカ社製)を挙げることができる。更に、ジアリルアミン構
造単位、及びジアリルアンモニウム構造単位を共に含む樹脂の市販品として、PAS−8
80(ニットーボーメディカル社製)を挙げることができる。一方、エピハロヒドリン構
造単位を含む市販品の具体例としては、カチオマスターPD−1、7、30、A、PDT
−2、PE−10、PE−30、DT−EH、EPA−SK01、TMHMDA−E(四
日市合成社製)がある。
本実施形態の前処理液において好適に使用できる、カチオン性高分子化合物の重量平均
分子量は、5,000〜50,000であり、より好適には10,000〜30,000
である。なお、カチオン性高分子化合物の重量平均分子量は常法によって測定できる。具
体的には、TSKgelカラム(東ソー社製)と、RI検出器とを装備したGPC測定装
置(東ソー社製HLC−8120GPC)を用い、展開溶媒にTHFを用いて測定したポ
リスチレン換算値を、本明細書における重量平均分子量とする。
本実施形態の前処理液におけるカチオン性高分子化合物の含有量は、前記前処理液全量
に対し、固形分換算で1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であること
がより好ましい。カチオン性高分子化合物の配合量を上記範囲内とすることで、前処理液
の粘度を好適な範囲内に収めることができ、また保存安定性に優れた前処理液を得ること
ができる。
<増粘剤(C)>
本実施形態の前処理液は、増粘剤(C)として、疎水変性の水溶性ウレタン樹脂を含む
。なお本発明において「疎水変性のウレタン樹脂」とは、分子内炭素数6以上のアルキレン基を有するウレタン樹脂を表す。また「水溶性の樹脂」とは、上記に記載した樹脂
粒子(A)の粒子径と同様の方法で測定を行った際、前記粒子径が5nm未満であるか、
測定不能であるもの(例えば、試料を調製しても測定可能な濃度レベルに達しない場合)
を指す。
中でも、長期の保存安定性が確保できるとともに、塗工時や乾燥時には非浸透性基材上
で速やかに粘度上昇するという観点から、疎水変性の水溶性ウレタン樹脂として、下記一
般式(3)または一般式(4)の構造を示すウレタン樹脂を使用することが好ましい。下
記一般式(3)または(4)の構造を示すウレタン樹脂は、親水性の高いエチレンオキサ
イド基周辺に凝集剤(B)が存在すると考えられ、会合体構造中に前記凝集剤(B)を取
り込むことで更なる安定化に寄与していると考えられる。
一般式(3):

1−A1―R2―A2−[(EO)l−A3−R3−A4]m−R4
一般式(3)中、R1、R4は、それぞれ独立に、炭素数2〜25の芳香環を有してもよ
い1価の炭化水素基を表し、R2、R3は、それぞれ独立に、炭素数2〜25の芳香環を有
してもよい2価の炭化水素基を表す。
また、A1〜A4は、それぞれ独立に、ウレタン結合またはエステル結合を表し、EOは
エチレンオキサイド基を表し、l、mは1以上の整数を表す。
一般式(4):

5−(EO)n−A5―R6―A6−[(EO)O−A7−R7−A8]p−(EO)q−R8
一般式(4)中、R5、R8は、それぞれ独立に、炭素数2〜25の芳香環を有してもよ
い1価の炭化水素基を表し、R6、R7は、それぞれ独立に、炭素数2〜25の芳香環を有
してもよい2価の炭化水素基を表す。
また、A5〜A8は、それぞれ独立にウレタン結合またはエステル結合を表し、EOはエ
チレンオキサイドを表し、n、o、p、qは1以上の整数を表す。
一般式(3)〜(4)中のR1〜R8で表される炭化水素基には、疎水性の高い、一定以
上の長さを有するアルキル基やアルキレン基等の炭化水素鎖が存在する。そのため、樹脂
粒子(A)と相互作用を起こし会合状態を形成することが可能となる。凝集剤(B)の存
在下であっても、長期の保存安定性を確保し、非浸透性基材上で塗工ムラが少ない塗工物
を得ることで、優れた画像品質を有する印刷物を得るという観点から、上記一般式(3)
中のR1〜R4のうち2つ以上、および、一般式(4)中のR5〜R8のうち2つ以上は、炭
素数が6以上25以下であることが好ましく、炭素数が8以上25以下であることがより
好ましく、10以上25以下であることが特に好ましい。
また、樹脂粒子(A)との間に形成される会合状態が好適なものとなる観点から、一般
式(3)の場合は、少なくともR1とR4が炭素数6〜25のアルキル基であることが好ま
しく、一般式(4)の場合は、少なくともR5とR8が炭素数6〜25のアルキル基である
ことが好ましい。なお、炭素数6〜25のアルキル基は、炭素数6〜25のアルキレン基の一形態である。
上記疎水変性の水溶性ウレタン樹脂は、既知の合成方法により合成したものを用いても
よいし、市販品を用いてもよい。市販品の具体例として例えば、アデカノールUHシリー
ズ(ADEKA社製)、SNシックナーシリーズ(サンノプコ社製)、ノパールシリーズ
(サンノプコ社製)などが挙げられるがこれらに限定されない。
増粘剤(C)として用いられる疎水変性の水溶性ウレタン樹脂は、重量平均分子量が5
,000〜100,000であることが好ましい。また長期の保存安定性を確保するとと
もに、前処理液の塗工後に非浸透性基材上で速やかに増粘し、塗工ムラのない均一な塗膜
が得られ、結果として優れた画像品質を有する印刷物となるという観点から、好適な重量
平均分子量は10,000〜90,000であり、特に好ましくは10,000〜80,
000である。なお、増粘剤(C)の重量平均分子量は、上記カチオン性高分子化合物の
場合と同様にして測定できる。
本実施形態の前処理液では、増粘剤(C)の配合量が、樹脂粒子(A)の配合量に対し
て、0.5〜200質量%であることが好ましい。また、凝集剤(B)の存在下でも長期
に渡って保存安定性を確保し、非浸透性基材上で塗工ムラの少ない優れた画像品質を有す
る印刷物が得られるという観点から、増粘剤(C)の配合量が前記樹脂粒子(A)の配合
量に対して、1〜100質量%であることがより好ましい。特に好ましくは5〜100質
量%である。
<界面活性剤(D)>
本実施形態の前処理液は、フィルムなどの非浸透性基材上に塗工ムラを抑え、均一に塗
布するため、界面活性剤(D)を使用する。また、非浸透性基材上で均一に塗工でき優れ
た画像品質を有する印刷物が得られるという観点からHLB値が13.5以下(0であっ
てもよい)であることが好ましい。更に、泡やはじきを抑制するという観点から、HLB
値が10.5以下、1.0以上であることがより好ましく、1.2〜8.5であることが特に好ましく、極めて好ましくは1.5〜8.5である。
なお、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値とは
、材料の親水・疎水性を表すパラメータの一つであり、小さいほど材料の疎水性が高く、
大きいほど材料の親水性が高いことを表す。HLB値の算出方法にはグリフィン法、デイ
ビス法、川上法など種々の方法があり、また実測する方法も様々知られているが、本明細
書では、アセチレンジオール系界面活性剤やポリオキシアルキルエーテル系界面活性剤の
ように、化合物の構造が明確に分かる場合は、グリフィン法を用いてHLB値の算出を行
う。グリフィン法とは、対象の材料の分子構造と分子量を用いて、下記式(5)のように
してHLB値を求める方法である。
式(5):

HLB値=20×(親水性部分の分子量の総和)÷(材料の分子量)
一方、後述のシロキサン系界面活性剤のように、構造不明の化合物が含まれる場合は、
例えば「界面活性剤便覧」(西一郎ら編、産業図書株式会社、1960年)のp.324
に記載されている以下方法によって、界面活性剤のHLB値を実験的に求めることができ
る。具体的には、界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させたのち、前記溶解液
を25℃下で攪拌しながら、2質量%フェノール水溶液で滴定し、液が混濁したところを
終点とする。終点までに要した前記フェノール水溶液の量をA(mL)としたとき、下記
式(6)によってHLB値が算出できる。
式(6):

HLB値=0.89×A+1.11
本実施形態の前処理液で用いられる界面活性剤(D)は、非浸透性基材上に均一に塗工
できる前処理液を得るという観点から、シロキサン系、アセチレンジオール系、アクリル
系、ポリオキシアルキルエーテル系の界面活性剤を好適に使用することができる。特に、
樹脂粒子(A)と増粘剤(C)の間で形成された会合状態と相互作用し、界面活性剤(D
)の相溶性もまた向上できるという観点から、アセチレンジオール系界面活性剤、及び/
またはシロキサン系界面活性剤を使用することが好ましく、少なくともアセチレンジオー
ル系界面活性剤を使用することがより好ましい。
なお上記アセチレンジオール系界面活性剤としては、例えば2,4,7,9−テトラメ
チル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン
−5,8−ジオール、ヘキサデカ−8−イン−7,10−ジオール、6,9−ジメチル−
テトラデカ−7−イン−6,9−ジオール、7,10−ジメチルヘキサデカ−8−イン−
7,10−ジオール、及びそのエチレンオキサイド、及び/または、プロピレンオキサイ
ド付加物が挙げられる。
また上記アセチレンジオール系界面活性剤の市販品を例示すると、サーフィノール61
、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG
−50、420、440、465、485、SE、SE−F、ダイノール604、607
(エアープロダクツ社製)、オルフィンE1004、E1010、E1020、PD−0
01、PD−002W、PD−004、PD−005、EXP.4001、EXP.42
00、EXP.4123、EXP.4300(日信化学工業社製)などが挙げられる。
上記の界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の前処理液における界面活性剤(D)の含有量は、前処理液全量に対して0
.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜8質量%、更に好ま
しくは0.5〜6質量%である。
<水>
本実施形態の前処理液に含まれる水の含有量は、前処理液全量に対して30〜95質量
%であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましく、50〜85質量
%であることが更に好ましい。水は、樹脂粒子(A)、凝集剤(B)、増粘剤(C)、界
面活性剤(D)などの、本実施形態の前処理液に必須である材料の相互溶解性を高め、前
処理液の保存安定性を向上させるためには欠かせない材料である。
<有機溶剤>
本実施形態の前処理液は、更に有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤を併用すること
で、凝集剤(B)や増粘剤(C),界面活性剤(D)の溶解性や、前処理液の濡れ性・乾
燥性を好適なものに調整できる。なお本実施形態の前処理液では、有機溶剤は1種のみ用
いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の前処理液に使用できる有機溶剤に特に制限はないが、水溶性の有機溶剤を
含むことが好ましい。なお、本明細書において「水溶性(の)有機溶剤」とは、25℃で
液体であり、かつ、25℃の水に対する溶解度が1質量%以上であるものを指す。
本実施形態の前処理液で用いられる水溶性有機溶剤は、非浸透性基材上で優れた濡れ性
及び乾燥性を得るという観点から、25℃における静的表面張力が20〜40mN/mで
あるものであることが好ましい。特に好ましくは20〜36mN/mである。
本明細書の静的表面張力は、25℃の環境下におけるWilhelmy法(プレート法
、垂直板法)により測定された表面張力を指す。
本実施形態の前処理液が有機溶剤を含む場合、凝集剤(B)や増粘剤(C)、界面活性
剤(D)との親和性が高く、前記前処理液の保存安定性が向上する観点から、分子構造中
にヒドロキシル基を1個以上含む水溶性有機溶剤を使用することがより好ましく、下記に
例示した1価アルコール類、及び/または、2価アルコール(グリコール)類を使用する
ことが特に好ましい。
またある実施形態において、前記分子構造中にヒドロキシル基を1個以上含む水溶性有
機溶剤として、1気圧下における沸点が75〜210℃である水溶性有機溶剤を含む前処
理液は、非浸透性基材に対して均一な付与が実現でき、密着性や画像品質が特に向上する
ため、特に好ましい。更に上記効果をより好適に発現させる観点から、前記分子構造中に
ヒドロキシル基を1個以上含む水溶性有機溶剤の、1気圧下における沸点は、75〜20
0℃であることがより好ましく、75〜190℃であることが更に好ましく、80〜18
0℃であることが極めて好ましい。なお本明細書における、1気圧下における沸点は、公
知の方法、例えば示差熱分析(DTA)法や、DSC法などによって測定される値である
本実施形態の前処理液に好適に用いられる、分子構造中にヒドロキシル基を1個以上含
む水溶性有機溶剤を例示すると、
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2
−ブタノール、などの1価アルコール類;
1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1
,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペ
ンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキ
サンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオー
ル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパ
ンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオ
ール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチルペンタン−2
,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチ
レングリコール#200、ポリエチレングリコール#400、ジプロピレングリコール、
トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、などの2価アルコール(グリコール
)類;
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジ
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジ
エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、
ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテ
ル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエ
ーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブ
チルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコー
ルモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレング
リコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプ
ロピレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノメチルエーテ
ル、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールなどのグリコールモ
ノアルキルエーテル類;
グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−
ヘキサントリオール、ジグリセリン、ポリグリセリン、などの鎖状ポリオール化合物;
を挙げることができる。
上記でも説明した通り、上記に例示した水溶性有機溶剤の中でも、25℃における静的
表面張力が20mN/m〜40mN/mであるものが好適に選択される。また、1気圧下
における沸点が75〜210℃であるものが好適に選択され、75〜200℃であるもの
がより好適に選択され、75〜190℃であるものが更に好適に選択され、80〜180
℃であるものが極めて好適に選択される。
また、本実施形態の前処理液には、上記に例示したもの以外にも、
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル
、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエー
テル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチル
エーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチ
ルエチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレング
リコールジエチルエーテルなどのグリコールジアルキルエーテル類;
2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ε−カプロラクタム
、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、N,N−ジ
メチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンア
ミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペン
トキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N
−ジメチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−2−エチルヘキ
ソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N
−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピ
オンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−
β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミド
などの含窒素系溶剤;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン
などの複素環化合物;
などを使用することができる。
本実施形態の前処理液に含まれる有機溶剤の配合量の総量は、前処理液全量に対して0
.5〜50質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、3
〜30質量%であることが特に好ましい。有機溶剤の配合量を上記範囲内とすることで、
凝集剤(B)、増粘剤(C)や界面活性剤(D)の溶解性と、非浸透性基材に対する濡れ
性とが両立した前処理液を得ることができるとともに、前処理液の塗工方法によらず、長
期に渡って、非浸透性基材に対して印刷欠陥を起こすことなく安定した塗工が可能となる
また、有機溶剤として、ヒドロキシル基を1個以上含む水溶性有機溶剤を使用する場合
、その配合量は、前記有機溶剤全量に対して35〜100質量%であることが好ましく、
50〜100質量%であることがより好ましく、65〜100質量%であることが特に好
ましい。配合量を上記範囲内に収めることで、ヒドロキシル基を1個以上含む水溶性有機
溶剤による効果が好適に発現されるためである。
また、本実施形態の前処理液では、1気圧下における沸点が240℃以上である有機溶
剤の含有量が、前記前処理液全量に対して10質量%未満であることが好ましい(0質量
%でも良い)。沸点が240℃以上である有機溶剤を含まないか、含むとしてもその配合
量を上記範囲内とすることで、画像品質に優れた印刷物が得られるとともに、前処理液の
乾燥性が十分なものとなる。
更に、上記と同様の理由により、1気圧下における沸点が240℃以上である有機溶剤
の含有量が、前記前処理液全量に対して10質量%未満であることに加えて、1気圧下に
おける沸点が220℃以上である有機溶剤の含有量が、前記前処理液全量に対して15質
量%未満であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましく、5質量%未
満であることが特に好ましい。
<pH調整剤>
本実施形態の前処理液は、pH調整剤を含むことができる。pH調整剤を使用すること
で、塗工装置に使用される部材へのダメージを抑制するとともに、経時でのpH変動を抑
えて前処理液の性能を長期的に維持し、保存安定性を維持・向上させることができる。p
H調整剤として使用できる材料に制限はなく、また1種のみを用いてもよいし、2種以上
を併用してもよい。
具体的に、前処理液を塩基性化させる場合には、ジメチルエタノールアミン、ジエタノ
ールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、などのアルカノー
ルアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのア
ルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリ
ウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを使用することができる。また、酸性化させる場合
には、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、酒石酸、
リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、フマル酸、マロン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸などを
使用することができる。
上記のpH調整剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤の配合量は、前処理液全量に対して0.01〜5質量%であることが好まし
く、0.05〜4.5質量%であることがより好ましい。pH調整剤の配合量を上記範囲
内に収めることで、大気中の二酸化炭素の溶解など外部刺激によるpH変化や、樹脂粒子
(A)、凝集剤(B),増粘剤(C),界面活性剤(D)の効果の発現を阻害することが
ない。
<着色剤>
本発明の好ましい実施形態において、本実施形態の前処理液は、顔料や染料などの着色
剤を実質的に含まない。着色剤を含まず、実質的に透明な前処理液を用いることで、基材
特有の色味や透明感を活かした印刷物を得ることができる。なお本明細書において「実質
的に含まない」とは、本発明の効果の発現を妨げる程度まで、当該材料を意図的に添加す
ることを認めないことを表すものであり、例えば、不純物や副生成物としての意図せぬ混
入まで排除するものではない。具体的には、前処理液全量に対し、当該材料を2.0質量
%以上含まないことであり、好ましくは1.0質量%以上含まないことであり、より好ま
しくは0.5質量%以上含まないことであり、特に好ましくは0.1質量%以上含まない
ことである。
一方、別の好ましい実施形態では、本実施形態の前処理液は、着色剤として、白色顔料
を含む。白色の前処理液を、有色及び/または透明な基材に対して用いることで、鮮明性
や視認性に優れた印刷物を得ることができる。本実施形態の前処理液が白色顔料を含む場
合、前記白色顔料として、従来より既知の材料を任意に用いることができる。具体的には
、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなどの無機酸化物;チタン酸ストロンチウム
、硫酸バリウムなどの水不溶性無機塩;中空樹脂粒子、非中空樹脂粒子などの樹脂粒子;
などが使用可能である。
<その他の材料>
また本実施形態の前処理液は、所望の物性値とするために、必要に応じて防腐剤などの
添加剤を適宜使用できる。これらの添加剤を使用する場合、その配合量は、前処理液全量
に対して0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.01〜3質量%とすることが更
に好ましい。過剰に配合してしまうと、前処理液中の樹脂粒子(A)、凝集剤(B)、増
粘剤(C),界面活性剤(D)の機能を阻害してしまう可能性があることから、添加量は
上記範囲にすることが好ましい。
また、本実施形態の前処理液は、重合性単量体を実質的に含まないことが好ましい。
<前処理液の物性>
本実施形態の前処理液は、25℃における粘度が5〜200mPa・sであることが好
ましく、5〜180mPa・sであることがより好ましく、8〜160mPa・sである
ことが更に好ましく、10〜150mPa・sであることが特に好ましい。上記粘度範囲
を満たす前処理液は、非浸透性基材に対してムラなく塗工できるため、画像品質や密着性
に優れた印刷物となる。なお前処理液の粘度は、処理液の粘度に応じて、例えばE型粘度
計(東機産業社製TVE25L型粘度計)やB型粘度計(東機産業社製TVB10形粘度
計)を用いて測定できる。
また、本実施形態の前処理液の静的表面張力は、非浸透性基材上における好適な濡れ性
を付与し、均一でムラのない前処理液層を形成することで、画像品質に優れた印刷物を得
るという観点から、20〜40mN/mであることが好ましく、21〜37mN/mであ
ることがより好ましく、22〜35mN/mであることが特に好ましい。なお、本明細書
における静的表面張力は、25℃環境下における、Wilhelmy法(プレート法、垂
直板法)に基づく値であり、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)
と白金プレートとを用いて測定することができる。
<前処理液の製造方法>
上記の成分からなる本実施形態の前処理液は、例えば、樹脂粒子(A)、凝集剤(B)
、増粘剤(C)、界面活性剤(D)及び、必要に応じて、有機溶剤、pH調整剤や、上記
で挙げたような適宜に選択される添加剤成分を加え、攪拌・混合したのち、必要に応じて
濾過することで製造される。ただし、前処理液の製造方法は上記に限定されるものではな
い。例えば着色剤として白色顔料を使用する場合、あらかじめ、前記白色顔料と水とを含
む白色顔料分散液を作製したのち、樹脂粒子(A)、凝集剤(B),増粘剤(C),界面
活性剤(D)と混合してもよい。
なお、攪拌・混合の際は、必要に応じて前記混合物を40〜100℃の範囲で加熱して
もよい。ただし、樹脂粒子(A)の最低造膜温度(MFT)以下の温度で加熱することが
好ましい。
<インキセット>
本実施形態の前処理液は、1種類以上の水性インクジェットインキと組み合わせ、イン
キセットの形態で使用できる。以下に、本実施形態のインキセットを構成する水性インク
ジェットインキ(以下、単に「本実施形態の水性インクジェットインキ(水性インキ、イ
ンキ)」ともいう)の構成要素について説明する。
<顔料>
本実施形態の水性インクジェットインキは、耐ブロッキング性、耐水性、耐光性、耐候
性、耐ガス性などを有する観点から、色材として顔料を含む。前記顔料として、既知の有
機顔料、無機顔料のいずれも使用することができる。
これらの顔料は、水性インキ全量に対して2〜20質量%の範囲で含まれることが好ま
しく、2.5〜15質量%の範囲で含まれることがより好ましく、3〜10質量%の範囲
で含まれることが特に好ましい。
なおホワイトインキの場合、顔料の含有量は、前記ホワイトインキ全量に対して3〜4
0質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、7〜30質
量%であることが特に好ましい。
顔料の含有量を2質量%以上(ホワイトインキの場合は3質量%以上)にすることで、
十分な発色性や鮮明性を有する印刷物が得られる。また顔料の含有量を20質量%以下(
ホワイトインキの場合は40質量%以下)とすることで、水性インキの粘度を、インクジ
ェット印刷に適した範囲に収められるとともに、前記水性インキの保存安定性も良好とな
り、結果として長期に渡って吐出安定性を確保できる。
本実施形態の水性インキで使用することができるシアン有機顔料として、例えば、C.
I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:6、16、22、60、
64、66などが挙げられる。中でも発色性や耐光性に優れる点から、C.I.ピグメン
トブルー15:3、及び15:4からなる群から選択される1種以上が好ましく使用でき
る。
また、マゼンタ有機顔料として、例えば、C.I.ピグメントレッド5、7、12、2
2、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57
:1、112、122、146、147、150、185、202、209、238、2
42、254、255、266、269、282、C.I.ピグメントバイオレット19
、23、29、30、37、40、43、50などが使用できる。中でも発色性や耐光性
に優れる点から、C.I.ピグメントレッド122、150、166、185、202、
209、266、269、282、及びC.I.ピグメントバイオレット19からなる群
から選択される1種以上が好ましく使用できる。
なお発色性を更に高める観点で、マゼンタ有機顔料として、キナクリドン顔料を含む固
溶体顔料を用いることも好ましい。具体的には、C.I.ピグメントレッド122とC.
I.ピグメントバイオレット19とを含む固溶体顔料、C.I.ピグメントレッド202
とC.I.ピグメントバイオレット19とを含む固溶体顔料、C.I.ピグメントレッド
209とC.I.ピグメントバイオレット19とを含む固溶体顔料、C.I.ピグメント
レッド282とC.I.ピグメントバイオレット19とを含む固溶体顔料、C.I.ピグ
メントレッド122とC.I.ピグメントレッド150とを含む固溶体顔料、C.I.ピ
グメントレッド122とC.I.ピグメントレッド185とを含む固溶体顔料、C.I.
ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド269とを含む固溶体顔料などを挙
げることができる。
また、イエロー有機顔料として、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、1
4、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117
、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151
、154、155、166、168、180、185、213などが使用できる。中でも
発色性に優れる点からC.I.ピグメントイエロー12、13、14、74、120、1
80、185、及び213からなる群から選択される1種以上が好ましく使用できる。
また、ブラック有機顔料として、例えば、アニリンブラック、ルモゲンブラック、アゾ
メチンアゾブラックなどが使用できる。なお、上記のシアン顔料、マゼンタ顔料、イエロ
ー顔料や、下記のオレンジ顔料、グリーン顔料、ブラウン顔料などの有彩色顔料を複数混
合使用し、ブラック顔料とすることもできる。
本実施形態の水性インクジェットインキには、オレンジ顔料、グリーン顔料、ブラウン
顔料などの特色顔料を使用することもできる。具体的には、C.I.ピグメントオレンジ
16、36、43、51、55、59、61、64、 71、C.I.ピグメントグリー
ン7、36、43、58、ピグメントブラウン23、25、26などが挙げられる。
本実施形態の水性インクジェットインキで使用できる無機顔料には特に限定がなく、例
えばブラック顔料としてカーボンブラックや酸化鉄、ホワイト顔料として酸化チタンを用
いることができる。
本実施形態の水性インキで使用できるカーボンブラックとして、ファーネスブラック、
チャンネルブラック、アセチレンブラックが挙げられる。中でも、これらのカーボンブラ
ックのうち、一次粒子径が11〜50nm、BET法による比表面積が50〜400m 2
/g、揮発分が0.5〜10質量%、pHが2〜10であるものが好適である。このよ
うな特性を有する市販品として、例えばNo.25、30、33、40、44、45、5
2、850、900、950、960、970、980、1000、2200B、230
0、2350、2600;MA7、MA8、MA77、MA100、MA230(以上、
三菱化学社製);RAVEN760UP、780UP、860UP、900P、1000
P、1060UP、1080UP、1255(以上、ビルラカーボン社製);REGAL
330R、400R、660R、MOGUL L(以上、キャボット社製);Nipex
160IQ、170IQ、35、75;PrinteX30、35、40、45、55、
75、80、85、90、95、300;SpecialBlack350、550;N
erox305、500、505、600、605(以上、オリオンエンジニアドカーボ
ンズ社製)などが挙げられ、いずれも好ましく使用できる。
また酸化チタンとして、アナターゼ型、ルチル型のいずれも使用することができるが、
印刷物の隠蔽性を上げるためにもルチル型を用いるのが好ましい。また酸化チタンの製造
方法は、塩素法、硫酸法のいずれであってもよいが、白色度が高いことから、塩素法にて
製造された酸化チタンが好ましく使用される。
また、本実施形態の水性インクジェットインキで使用される酸化チタンは、無機化合物
及び/または有機化合物によって表面処理されたものであることが好ましい。無機化合物
の例として、シリコン(Si)、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、チタ
ンの化合物、及びこれらの水和酸化物を挙げることができる。また有機化合物の例として
、多価アルコール、アルカノールアミンまたはその誘導体、高級脂肪酸またはその金属塩
、ポリシロキサン化合物、有機金属化合物を挙げることができる。これらの中でも、多価
アルコールまたはその誘導体は、酸化チタン表面を高度に疎水化し、インキの保存安定性
を向上できるため、好ましく用いられる。
なお本実施形態の水性インクジェットインキでは、印刷物の色相や発色性を好適な範囲
に収めるため、上記の顔料を複数混合して用いることができる。例えば、カーボンブラッ
ク顔料を使用したブラックインキに対し、低印字率における色味を改善するため、シアン
有機顔料、マゼンタ有機顔料、オレンジ有機顔料、ブラウン有機顔料から選択される1種
以上の顔料を少量添加してもよい。
<顔料分散用樹脂>
顔料を水性インキ中で安定的に分散保持する方法として、(1)水溶性顔料分散樹脂を
顔料表面に吸着させ分散する方法、(2)水溶性及び/または水分散性の界面活性剤を顔
料表面に吸着させ分散する方法、(3)顔料表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入
し、分散樹脂や界面活性剤なしでインキ中に分散する方法(自己分散型顔料)、(4)水
不溶性樹脂で顔料を被覆し、必要に応じて更に別の水溶性顔料分散樹脂や界面活性剤を用
いてインキ中に分散させる方法などを挙げることができる。
本実施形態で用いられる水性インキでは、上記のうち(1)または(4)の方法、すな
わち、顔料分散用樹脂を用いる方法が選択され、かつ、前記顔料分散用樹脂が、芳香環構
造を有する単量体を、前記顔料分散用樹脂を構成する単量体全量に対し20〜90質量%
含むことが好適である。これは、顔料分散用樹脂中に含まれる芳香環と、前処理液に含ま
れる凝集剤(B)とが形成するπ−カチオン相互作用による密着性・画像品質の向上や、
水溶性有機溶剤を含む水性インクジェットインキにおける保存安定性の確保・向上を目的
としたものである。なお本明細書において「顔料分散用樹脂」とは、上記(1)や(4)
の方法において用いられる水溶性顔料分散樹脂や、上記(4)の方法において用いられる
水不溶性樹脂を総称する用語として定義される。また「水不溶性樹脂」とは、対象となる
樹脂の、25℃・1質量%水溶液が、肉眼で見て透明でないものを指す。
本実施形態の水性インキでは、上記の中でも、(1)の水溶性顔料分散樹脂を用いる方
法を選択することが特に好ましい。これは、樹脂を構成する単量体組成や分子量を選定・
検討することにより、顔料に対する樹脂吸着能や顔料分散樹脂の電荷を容易に調整でき、
結果としてインキの保存安定性の向上や、本実施形態の前処理液による顔料凝集能力の制
御が可能となるためである。
上記顔料分散用樹脂の種類は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレ
ン−(メタ)アクリル樹脂、(無水)マレイン酸樹脂、スチレン−(無水)マレイン酸樹
脂、オレフィン−(無水)マレイン酸樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウ
レタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂などを使用することができる。中でも、芳香環構造
を有する単量体を含む材料選択性の大きさや合成の容易さの点で、(メタ)アクリル樹脂
、スチレン−(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂を使用するこ
とが特に好ましい。また上記の顔料分散用樹脂は、既知の方法により合成することも、市
販品を使用することもできる。
本実施形態の水性インクジェットインキで用いられる顔料分散用樹脂は、芳香環構造を
有する単量体を20〜90質量%含むことが好ましいが、その量は、顔料分散用樹脂全量
に対し、20〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることが特に好
ましい。芳香環構造の量を上記範囲に収めることで、π−カチオン相互作用を利用した密
着性・画像品質向上の効果や、沸点の低い水溶性有機溶剤を含む水性インキにおける保存
安定性の確保・向上の効果が好適なものとなる。
一実施形態において、顔料分散用樹脂は、芳香環構造に加えて炭素数8〜36のアルキ
ル基を含むことが好ましい。アルキル基の炭素数を8〜36とすることにより、顔料分散
性が向上し、前処理液上で均一に顔料が定着しやすく乾燥性や密着性の向上が実現できる
ためである。なおアルキル基の炭素数として、水性インクジェットインキ中の水溶性有機
溶剤との相溶性が好適化し、印刷物の乾燥性が良化する観点から、好ましくは炭素数10
〜30であり、更に好ましくは炭素数12〜24である。またアルキル基は炭素数10〜
36の範囲であれば、直鎖であっても分岐していてもよいが、直鎖状のものが好ましい。
直鎖のアルキル基としてはラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、セチル基(C1
6)、ステアリル基(C18)、アラキル基(C20)、ベヘニル基(C22)、リグノセリル
基(C24)、セロトイル基(C26)、モンタニル基(C28)、メリッシル基(C30)、ド
トリアコンタニル基(C32)、テトラトリアコンタニル基(C34)、ヘキサトリアコンタ
ニル基(C36)などが挙げられる。
炭素数10〜36のアルキル鎖を含有する単量体の、顔料分散用樹脂中に含まれる含有
量は、顔料分散液の低粘度化と印刷物の耐擦性、乾燥性、耐ブロッキング性や光沢性とを
両立させる観点から5〜60質量%であることが好ましく、15〜55質量%であること
がより好ましく、25〜50質量%であることが特に好ましい。
また一実施形態において、顔料分散用樹脂が、芳香環構造に加えて、アルキレンオキサ
イド基を含むことも好適である。アルキレンオキサイド基を導入することで、前記顔料分
散用樹脂の親水・疎水性を任意に調整し、水性インキの保存安定性を向上できる。上記機
能を好適に発現させるため、顔料分散用樹脂として水溶性顔料分散樹脂を用いる場合、前
記アルキレンオキサイド基としてエチレンオキサイド基を選択することが好ましい。同様
に、上記顔料分散用樹脂として水不溶性樹脂を用いる場合、前記アルキレンオキサイド基
としてプロピレンオキサイド基を選択することが好ましい。
アルキレンオキサイド基を有する単量体の、顔料分散用樹脂中に含まれる含有量は、顔
料分散液の低粘度化、水性インキの保存安定性、印刷物の密着性を両立させる観点から、
5〜40質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましく、1
5〜30質量%であることが特に好ましい。
なお、顔料を水性インキ中で安定的に分散保持する方法として、上記(1)の方法を選
択する、すなわち、上記顔料分散用樹脂として水溶性顔料分散樹脂を用いる場合、インキ
への溶解度を上げるため、前記顔料分散用樹脂中の酸基を塩基で中和することが好ましい
。前処理液中の凝集剤(B)の効果を阻害することなく、顔料分散用樹脂をインキ中に溶
解できる観点から、前記顔料分散用樹脂の10質量%水溶液のpHが7〜11.5となる
ように塩基を添加することが好ましく、7.5〜11となるように添加することがより好
ましい。
上記の、顔料分散用樹脂を中和するための塩基としては、ジエタノールアミン、トリエ
タノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア
水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物
;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金
属の炭酸塩などを挙げることができる。
また、顔料をインキ中で安定的に分散保持する方法として、上記(1)の方法を選択す
る、すなわち、上記顔料分散用樹脂として水溶性顔料分散樹脂を用いる場合、その酸価が
30〜375mgKOH/gであることが好ましい。酸価を上記の範囲内に収めることで
、顔料分散樹脂の水に対する溶解性が確保できるうえ、顔料分散樹脂間での相互作用が好
適なものとなることで、顔料分散液の粘度を抑えることができるためである。酸価が30
mgKOH/g以上であれば、水に対する溶解性が良好となり、顔料分散液の粘度を抑え
ることができ、375mgKOH/g以下であれば、水性インクジェットインキの保存安
定性が優れる。顔料分散樹脂の酸価は、65〜340mgKOH/gであることがより好
ましく、更に好ましくは100〜300mgKOH/gであり、特に好ましくは135〜
270mgKOH/gである。
一方、上記(4)の方法を選択する、すなわち、上記顔料分散用樹脂として水不溶性樹
脂を用いる場合、その酸価は0〜100mgKOH/gであることが好ましく、5〜90
mgKOH/gであることがより好ましく、更に好ましくは、10〜80mgKOH/g
である。酸価を上記の範囲内に収めることで、耐ブロッキング性や耐擦性に優れた印刷物
が得られるためである。
なお、顔料分散用樹脂の酸価は、前記顔料分散用樹脂1g中に含まれる酸を中和するた
めに必要となる水酸化カリウム(KOH)のmg数であり、エタノール/トルエン混合溶
媒中で、KOH溶液にて滴定した値である。前記測定は、例えば京都電子工業社製「電位
差自動滴定装置AT−610」を用いて行うことができる。
また顔料分散用樹脂の分子量は、重量平均分子量が1,000以上300,000以下
の範囲内であることが好ましく、5,000以上200,000以下の範囲であることが
より好ましい。重量平均分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散
することで水性インキの保存安定性が向上し、また、前記水性インキに使用した際の粘度
調整が行いやすい。重量平均分子量が1,000以上であると、水性インキ中に添加され
ている水溶性有機溶剤に対して顔料分散樹脂が溶解しにくいために、顔料に対しての分散
樹脂の吸着が強くなり、インキの保存安定性が向上する。重量平均分子量が300,00
0以下であると、分散時の粘度が低く抑えられるだけでなく、インクジェットヘッドから
の吐出安定性が良好となり、長期に渡って安定な印刷が可能になる。なお、顔料分散用樹
脂の重量平均分子量は、上記のカチオン性高分子化合物の重量平均分子量と同様の方法に
より測定できる。
本実施形態の水性インクジェットインキでは、顔料分散用樹脂の配合量が、顔料に対し
て2〜60質量%であることが好ましい。顔料分散用樹脂の配合量を、顔料に対して2〜
60質量%とすることで、顔料分散液の粘度を抑え、前記顔料分散液や水性インクジェッ
トインキの保存安定性が良化するとともに、本実施形態の前処理液と混合した際に、速や
かに凝集が起こる。顔料と顔料分散用樹脂の比率としてより好ましくは4〜55質量%、
更に好ましくは5〜50質量%である。
後述する通り、本実施形態の水性インクジェットインキはバインダー樹脂を含むことが
好ましい。顔料分散用樹脂として水溶性顔料分散樹脂を用い、かつ、バインダー樹脂とし
て水溶性樹脂を用いる場合、前記水溶性顔料分散樹脂と前記バインダー樹脂とを判別する
方法として、例えば、JIS K 5101−1−4記載の方法を準用した、下記に示す
方法が挙げられる。
一次粒子径15〜25nm、窒素吸着比表面積120〜260m 2 /g、DBP吸収
量(粒状)40〜80cm3/100gであるカーボンブラック20部と、樹脂10部と
、水70部とをよく混合(プレミキシング)したのち、摩砕用ビーズである直径0.5m
mのジルコニアビーズ1800部が充填された容積0.6Lのビーズミル(例えば、シン
マルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」)を用い、2時間分散を行う。分散後、得
られたカーボンブラック分散液の25℃における粘度を、E型粘度計(例えば、東機産業
社製のELD型粘度計)を用いて測定したのち、前記カーボンブラック分散液を70℃の
恒温機に1週間保存し、再度粘度を測定する。このとき、分散直後の分散液の粘度が10
0mPa・s以下であり、かつ、保存前後でのカーボンブラック分散液の粘度変化率の絶
対値が10%以下であれば、当該樹脂は水溶性顔料分散樹脂であると判断する。
<水溶性有機溶剤>
本実施形態の水性インクジェットインキは、好ましくは水溶性有機溶剤を含む。また、
1気圧下における沸点が250℃以上である水溶性有機溶剤の量が、水性インクジェット
インキ全量に対し5質量%以下(0質量%でもよい)であることが好ましい。高沸点の水
溶性有機溶剤量を5質量%以下にすることで、水性インクジェットインキの乾燥性、吐出
安定性が良好になるうえに、前処理液と組み合わせた際、滲みなど画像品質の欠陥がなく
、耐ブロッキング性も良好な水性インキが得られる。また画像品質や耐ブロッキング性を
更に向上させる観点から、1気圧下における沸点が250℃以上である水溶性有機溶剤の
量は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい(い
ずれも、0質量%であってもよい)。
また同様の理由により、1気圧下における沸点が220℃以上である水溶性有機溶媒の
量が、水性インキ全量に対し5質量%以下(0質量%でもよい)であることが好ましく、
2質量%以下(0質量%でもよい)であることが特に好ましい。なお上記1気圧下におけ
る沸点が220℃以上である水溶性有機溶剤の量は、1気圧下で沸点が250℃以上であ
る水溶性有機溶剤も含めて算出するものとする。
一実施形態において、水性インクジェットインキに含まれる水溶性有機溶剤の、1気圧
下における加重沸点平均値は、145〜215℃であることが好ましく、150〜200
℃であることがより好ましく、155〜190℃であることが特に好ましい。水溶性有機
溶剤の加重沸点平均値を上記範囲に収めることで、本実施形態の前処理液と組み合わせた
ときに、高速印刷であっても画像品質に優れた印刷物を得ることができるとともに、吐出
安定性も優れたものとなる。なお、上記加重沸点平均の算出には、上記の1気圧下で沸点
が250℃以上である水溶性有機溶剤や沸点が220℃以上である水溶性有機溶剤も含め
るものとする。また、上記1気圧下における加重沸点平均値は、それぞれの水溶性有機溶
剤について算出した、1気圧下での沸点と、全水溶性有機溶剤に対する質量割合との乗算
値を、足し合わせることで得られる値である。
本実施形態の水性インクジェットインキで用いられる、水溶性有機溶剤の総量は、水性
インクジェットインキ全量に対し3〜40質量%であることが好ましい。更に、ノズルか
らの吐出安定性と、前処理液と組み合わせたときに十分な濡れ性と乾燥性を確保し、密着
性や画像品質に優れた印刷物を得るという観点から、5〜35質量%であることがより好
ましく、8〜30質量%以下であることが特に好ましい。水溶性有機溶剤の総量を3質量
%以上にすることでインキの保湿性が良好となり、吐出安定性に優れたインキとなる。ま
た水溶性有機溶剤の含有量を40質量%以下にすることで、乾燥性が良好なインキが得ら
れ、画像品質に優れた印刷物となる。なお、顔料分散用樹脂、後述するバインダー樹脂、
界面活性剤などの水性インクジェットインキに含まれる材料成分や、前処理液との相溶性
、親和性の観点から、グリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤
を含有することが好ましい。
好適に用いられる、1気圧下の沸点が250℃未満であるグリコールエーテル系溶剤を
例示すると、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピル
エーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエ
ーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピル
エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチ
ルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチ
ルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ
メチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール
モノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレング
リコールモノメチルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノメチルエーテル、3−メ
トキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、などのグリコールモノアルキ
ルエーテル類;
ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエ
ーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチル
エーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、などのグリコールジアルキル
エーテル類が挙げられる。
特に、優れた保湿性と乾燥性を両立することができる点で、上記グリコールエーテル系
溶剤の中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチ
ルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブ
チルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエ
チルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモ
ノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコー
ルモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ブチレ
ングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールブチ
ルメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテルを選択することが好ま
しい。
また、1気圧下の沸点が250℃未満であるアルキルポリオール系溶剤としては、例え
ば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1
,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペ
ンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,2−ジメ
チル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル
−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−
メチルペンタン−2,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレ
ングリコール、ジプロピレングリコール、などを挙げることができる。
中でも、優れた保湿性と乾燥性を両立することができる点で、上記アルキルポリオール
系溶剤の中でも1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジ
オール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールを選択することが好まし
い。より好ましくは1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタ
ンジオールである。
<バインダー樹脂>
本実施形態の水性インクジェットインキはバインダー樹脂を含むことが好ましい。バイ
ンダー樹脂の形態は、水溶性樹脂及び樹脂粒子のどちらであってもよく、水性インクジェ
ットインキや印刷物に要求される特性に応じて、2種類以上を組み合わせて使用してもよ
い。例えば樹脂粒子は、水性インクジェットインキの粘度を低くすることができ、より多
量の樹脂を配合することができることから、印刷物の耐性を高めるのに適している。また
、バインダー樹脂として水溶性樹脂を使用した水性インクジェットインキは、吐出安定性
や、本実施形態の前処理液と組み合わせた際の印刷物の画像品質に優れる。
また、バインダー樹脂として好適に使用できる樹脂の種類は、前処理液に含まれる樹脂
粒子(A)の場合と同様である。中でも、水性インクジェットインキの保存安定性や、本
実施形態の前処理液と組み合わせた際の、印刷物の密着性や耐擦性の観点から、(メタ)
アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、
ポリウレタンウレア樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましく使用される。
バインダー樹脂として水溶性樹脂を使用する場合、水性インクジェットインキの吐出安
定性と印刷物の耐擦性とを両立する観点から、その重量平均分子量を5,000〜80,
000の範囲とすることが好ましく、8,000〜60,000の範囲とすることがより
好ましく、10,000〜50,000の範囲とすることが特に好ましい。また同様の理
由により、水溶性樹脂の酸価が5〜80mgKOH/gであることが好ましく、酸価が1
0〜50mgKOH/gであることがより好ましい。
前記バインダー樹脂の、水性インクジェットインキ全量中における含有量は、固形分換
算で水性インクジェットインキ全量の1〜20質量%であることが好ましく、より好まし
くは2〜15質量%であり、特に好ましくは3〜10質量%である。
<界面活性剤>
本実施形態の水性インキは、表面張力を調整し画像品質を向上させる目的で、界面活性
剤を使用することが好ましい。一方で、表面張力が低すぎるとインクジェットヘッドのノ
ズル面が水性インキで濡れてしまい、吐出安定性を損なうことから、界面活性剤の種類と
量の選択は非常に重要である。基材に対する濡れ性の確保と、ノズルからの吐出安定性の
最適化という観点から、シロキサン系、アセチレンジオール系、フッ素系の界面活性剤を
使用することが好ましい。中でも、シロキサン系、アセチレンジオール系の界面活性剤を
使用することが特に好ましい。界面活性剤の添加量としては、水性インキ全量に対して、
0.01〜5.0質量%が好ましく、0.05〜3.0質量%が更に好ましい。
本実施形態の水性インキで使用される界面活性剤は、既知の方法により合成することも
、市販品を使用することもできる。界面活性剤を市販品から選択する場合、例えばシロキ
サン系界面活性剤としては、BY16−201、FZ−77、FZ−2104、FZ−2
110、FZ−2162、F−2123、L−7001、L−7002、SF8427、
SF8428、SH3749、SH8400、8032ADDITIVE、SH3773
M(東レ・ダウコーニング社製)、Tegoglide410、Tegoglide43
2、Tegoglide435、Tegoglide440、Tegoglide450
、Tegotwin4000、Tegotwin4100、Tegowet250、Te
gowet260、Tegowet270、Tegowet280(エボニックデグサ社
製)、SAG−002、SAG−503A(日信化学工業社製)、BYK−331、BY
K−333、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BY
K−349、BYK−UV3500、BYK−UV3510(ビックケミー社製)、KF
−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−
6004、KF−6011、KF−6012、KF−6013、KF−6015、KF−
6016、KF−6017、KF−6043、KF−615A、KF−640、KF−6
42、KF−643(信越化学工業社製)などが、
フッ素系界面活性剤としては、ZonylTBS、FSP、FSA、FSN−100、
FSN、FSO−100、FSO、FS−300、Capstone FS−30、FS
−31(DuPont社)、PF−151N、PF−154N(オムノバ社製)などが使
用できる。
なお、アセチレンジオール系界面活性剤の場合、上記前処理液に使用できる市販品と同
様のものが使用できる。また、上記の界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用
してもよい。
水性インキに使用する界面活性剤と前処理液に使用する界面活性剤は、同じでも異なっ
ていてもよい。各々異なる界面活性剤を使用する際は、両者の表面張力に注意したうえで
配合量を決定することが好ましい。
<水>
本実施形態の水性インキに含まれる水は、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、
イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
本実施形態の水性インキに使用することができる水の含有量は、インキの全質量の20
〜90質量%の範囲であることが好ましい。
<その他の成分>
本実施形態の水性インキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つイン
キとするためにpH調整剤を添加することができ、pH調整能を有する材料を任意に選択
することができる。塩基性化させる場合は、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールア
ミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン
;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金
属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなど
のアルカリ金属の炭酸塩などを使用することができる。また酸性化させる場合は塩酸、硫
酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リン
酸、ホウ酸、フマル酸、マロン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸などを使用することが
できる。上記のpH調整剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤の配合量は、水性インクジェットインキ全量に対し0.01〜5質量%であ
ることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましく、0.2〜1.5質量%
であることが最も好ましい。上記範囲内に収めることで、空気中の二酸化炭素の溶解など
によるpH変化を起こすことなく、また、前処理液と水性インクジェットインキとが接触
した際に、凝集剤(B)による凝集効果を阻害することなく、本発明の効果を好適に発現
させることができる。
また本実施形態の水性インクジェットインキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望
の物性値を持つインキとするために、消泡剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤など
の添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量としては、インキの全
質量に対して、0.01〜5質量%が好適である。
なお、本実施形態の水性インクジェットインキは、前処理液と同様、重合性単量体を実
質的に含有しないことが好ましい。
<水性インクジェットインキのセット>
本実施形態の水性インクジェットインキは単色で使用してもよいが、用途に合わせて複
数の色を組み合わせた水性インクジェットインキのセットとして使用することもできる。
組み合わせは特に限定されないが、シアン、イエロー、マゼンタの3色を使用することで
フルカラーの画像を得ることができる。また、ブラックインキを追加することで黒色感を
向上させ、文字などの視認性を上げることができる。更にオレンジ、グリーンなどの色を
追加することで色再現性を向上させることも可能である。
非浸透性基材の一例である透明フィルム基材の場合、ホワイトインキの印刷を行うこと
で、鮮明な画像を得ることができ、特にブラックインキで印刷された文字などの鮮明性や
視認性を上げることができる。従って、透明フィルム基材を使用する場合、少なくともホ
ワイトインキとブラックインキとが好ましく組み合わされる。
<水性インクジェットインキの製造方法>
上記した成分を含む、本実施形態の水性インクジェットインキは、例えば、以下のプロ
セスを経て製造される。ただし本実施形態の水性インクジェットインキの製造方法は以下
に限定されるものではない。
(1)顔料分散液の製造
顔料分散用樹脂として、水溶性顔料分散樹脂を用いる場合、前記水溶性顔料分散樹脂と
水と、必要に応じて水溶性有機溶剤とを混合・攪拌し、水溶性顔料分散樹脂混合液を作製
する。前記水溶性顔料分散樹脂混合液に、顔料を添加し、混合・攪拌(プレミキシング)
した後、分散機を用いて分散処理を行う。その後、必要に応じて遠心分離、濾過や、固形
分濃度の調整を行い、顔料分散液を得る。
また、水不溶性樹脂により被覆された顔料の分散液を製造する場合、あらかじめ、メチ
ルエチルケトンなどの有機溶媒に水不溶性樹脂を溶解させ、必要に応じて前記水不溶性樹
脂を中和した、水不溶性樹脂溶液を作製する。前記水不溶性樹脂溶液に、顔料と、水とを
添加し、混合・攪拌(プレミキシング)した後、分散機を用いて分散処理を行う。その後
、減圧蒸留により前記有機溶媒を留去し、必要に応じて、遠心分離、濾過や、固形分濃度
の調整を行い、顔料分散液を得る。
顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機ならいかなるもの
でもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザ
ーなどが挙げられる。上記の中でもビーズミルが好ましく使用され、具体的にはスーパー
ミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及
びコボルミルなどの商品名で市販されている。
顔料分散液の粒度分布を制御する方法として、上記に挙げた分散機の粉砕メディアのサ
イズを小さくすること、粉砕メディアの材質を変更すること、粉砕メディアの充填率を大
きくすること、攪拌部材(アジテータ)の形状を変更すること、分散処理時間を長くする
こと、分散処理後フィルターや遠心分離機などで分級すること、及びこれらの手法の組み
合わせが挙げられる。顔料を好適な粒度範囲に収めるためには、上記分散機の粉砕メディ
アの直径を0.1〜3mmとすることが好ましい。また粉砕メディアの材質として、ガラ
ス、ジルコン、ジルコニア、チタニアが好ましく用いられる。
(2)水性インクジェットインキの調製
次いで、上記顔料分散液に、水溶性有機溶剤、水、及び必要に応じて上記で挙げたバイ
ンダー樹脂、界面活性剤やその他の添加剤を加え、攪拌・混合する。なお、必要に応じて
前記混合物を40〜100℃の範囲で加熱しながら攪拌・混合してもよい。
(3)粗大粒子の除去
上記混合物に含まれる粗大粒子を、濾過分離、遠心分離などの手法により除去し、水性
インクジェットインキとする。濾過分離の方法としては、既知の方法を適宜用いることが
できる。またフィルター開孔径は、粗大粒子、ダストが除去できるものであれば、特に制
限されないが、好ましくは0.3〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmである。また
濾過を行う際は、フィルターは単独種を用いても、複数種を併用してもよい。
<水性インクジェットインキの特性>
本実施形態の水性インクジェットインキは、25℃における粘度を3〜20mPa・s
に調整することが好ましい。この粘度領域であれば、特に通常の4〜10KHzの周波数
を有するインクジェットヘッドから10〜70KHzの高周波数のインクジェットヘッド
においても安定した吐出特性を示す。特に、25℃における粘度を4〜10mPa・sと
することで、600dpi以上の設計解像度を有するインクジェットヘッドに対して用い
ても、安定的に吐出させることができる。
なお、上記粘度は常法により測定することができる。具体的にはE型粘度計(東機産業
社製TVE25L型粘度計)を用い、インキ1mLを使用して測定することができる。
また、安定的に吐出できる水性インクジェットインキにするとともに、本実施形態の前
処理液と組み合わせた際、密着性や画像品質に優れた印刷物が得られる点から、本実施形
態の水性インクジェットインキは、25℃における静的表面張力が18〜35mN/mで
あることが好ましく、19〜32mN/mであることがより好ましく、20〜30mN/
mであることが特に好ましい。また印刷物の混色滲みや色ムラを防ぎ、画像品質に特段に
優れた印刷物が得られる観点から、水溶性有機溶剤や界面活性剤の種類・量を調整するこ
とで、本実施形態の水性インキの表面張力を、前処理液の表面張力以下とすることが好ま
しい。なお、本実施形態における静的表面張力は、前処理液の場合と同様にして測定でき
る。
また上記と同様の理由から、本実施形態の水性インクジェットインキは、25℃・10
msecにおける動的表面張力が25〜40mN/mであることが好ましく、28〜38
mN/mであることがより好ましく、30〜36mN/mであることが特に好ましい。な
お、本実施形態における動的表面張力は、Kruss社製バブルプレッシャー動的表面張
力計BP100を用いて、25℃環境下で最大泡圧法によって測定することができる。
本実施形態の水性インクジェットインキは、優れた発色性を有する印刷物を得るために
、顔料の平均二次粒子径(D50)を40nm〜500nmとすることが好ましく、より
好ましくは50nm〜400nmであり、特に好ましくは60nm〜300nmである。
平均二次粒子径を上記好適な範囲内に収めるためには、上記のように顔料分散処理工程
を制御すればよい。
なお顔料の平均二次粒子径は、上記樹脂粒子(A)の粒子径と同様の方法によって測定
できる。なお、前記水性インクジェットインキがバインダー樹脂として樹脂粒子を含む場
合、前記樹脂粒子の配合量に相当する量を水に置換したインキを作製し、粒子径を測定す
ることが好ましい。
<印刷物の製造方法>
本実施形態の前処理液と、上記水性インクジェットインキとを組み合わせた、インキセ
ットの実施形態で印刷物を製造する方法として、非浸透性基材に前記前処理液を付与する
工程と、前記非浸透性基材上の、前記前処理液を付与した部分に、前記水性インクジェッ
トインキを、1パスインクジェット印刷により付与する工程と、前記水性インクジェット
インキが付与された、前記非浸透性基材を乾燥する工程とを含む方法が好ましく用いられ
る。なお上記の工程は、この順番に実施することが好ましい。
本明細書において「1パスインクジェット印刷」とは、停止している基材に対しインク
ジェットヘッドを一度だけ走査させる、または、固定されたインクジェットヘッドの下部
に基材を一度だけ通過させて印刷する方法であり、印字されたインキの上に再度インキが
印字されることがない。ただし、インクジェットヘッドを走査させる場合、前記インクジ
ェットヘッドの動きを加味して吐出タイミングを調整する必要があり、着弾位置のずれが
生じやすい。そのため、本実施形態の水性インキを印刷する際は、固定されたインクジェ
ットヘッドの下部に基材を通過させる方法が好ましく用いられる。
以下に、本実施形態のインキセットを用いた印刷物の製造方法について説明する。
<前処理液の付与方法>
本実施形態のインキセットを用いて印刷物を製造する際、好適には、水性インクジェッ
トインキを印刷する前に、非浸透性基材上に前処理液が付与される。その付与方法として
、インクジェット印刷のように基材に対して非接触で印刷する方式と、基材に対し前処理
液を当接させて印刷する方式のどちらを採用してもよい。また、前処理液の付与方法とし
て、前処理液を当接させる印刷方式を選択する場合、オフセットグラビアコーター、グラ
ビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター
、ロールコーターなどのローラ形式が好適に使用できる。
<前処理液付与後の乾燥方法>
本実施形態のインキセットでは、前処理液を非浸透性基材に付与したのち、前記非浸透
性基材を乾燥させ、前記基材上の前処理液を乾燥させたのち、水性インクジェットインキ
を付与してもよいし、前記基材上の前処理液が完全に乾燥する前に、水性インクジェット
インキを付与してもよい。一実施形態において、水性インクジェットインキを付与する前
に前処理液を完全に乾燥させる、すなわち、前記前処理液の液体成分が実質的に除去され
た状態とすることが好ましい。前処理液が完全に乾燥した後で水性インクジェットインキ
を付与することで、後から着弾する水性インクジェットインキが乾燥不良を起こすことな
く、耐擦性に優れた印刷物が得られるためである。
本実施形態の前処理液の印刷で用いられる乾燥方法に特に制限はなく、例えば加熱乾燥
法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法など、従来既知の方法
を挙げることができる。上記の乾燥法は単独で用いても、複数を併用してもよいが、非浸
透性基材へのダメージを軽減し効率よく乾燥させるため、熱風乾燥法を用いることが好ま
しい。また、基材へのダメージや前処理液中の液体成分の突沸を防止する観点から、加熱
乾燥法を採用する場合は乾燥温度を35〜100℃とすることが、また熱風乾燥法を採用
する場合は熱風温度を50〜150℃とすることが好ましい。
<水性インクジェットインキの付与方法>
水性インクジェットインキは、非浸透性基材上の前処理液を付与した部分に、1パスイ
ンクジェット印刷により付与される方式が好ましい。なお、前記1パスインクジェット印
刷で用いるインクジェットヘッドの設計解像度は、画像品質に優れた画像が得られる点か
ら、600dpi(DotsPerInch)以上であることが好ましく、720dpi
以上であることがより好ましい。
<水性インクジェットインキ印刷後の乾燥方法>
水性インクジェットインキを印刷したあと、前記水性インキ、及び未乾燥の前処理液を
乾燥させるため、前記水性インクジェットインキが付与された非浸透性基材を乾燥する工
程を含むことが好ましい。なお好適に用いられる乾燥方法は、上記前処理液の場合と同様
である。
<前処理液、及び水性インクジェットインキの付与量>
本実施形態のインキセットを印刷する際は、前処理液の付与量に対する水性インクジェ
ットインキの付与量の比を0.1以上10以下とすることが好ましい。なお付与量の比と
してより好ましくは0.5以上9以下であり、特に好ましくは1以上8以下である。付与
量の比を上記範囲に収めることにより、基材の風合いの変化を起こすことなく、画像品質
に優れた印刷物が得られる。
<非浸透性基材>
本実施形態のインキセットを用いる非浸透性基材は、従来から既知のものを任意に用い
ることができる。例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET
)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリ
スチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルムの様な熱可塑性樹脂基材や、アルミニ
ウム箔の様な金属基材などが使用できる。上記の基材は表面が滑らかであっても、凹凸の
ついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。また、こ
れらの基材の2種以上を互いに張り合わせたものでも良い。更に印字面の反対側に剥離粘
着層などを設けても良く、また印字後、印字面に粘着層などを設けても良い。また本実施
形態のインキセットの印刷で用いられる基材の形状は、ロール状でも枚葉状でもよい。
中でも、本実施形態の前処理液の機能を十分に発現させるために、非浸透性基材が熱可
塑性樹脂基材であることが好ましく、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエ
チレンフィルム、ナイロンフィルムであることが特に好ましい。
また、本実施形態の前処理液をムラなく均一に塗布するとともに、密着性を特段に向上
させる観点から、上記に例示した非浸透性基材に対し、コロナ処理やプラズマ処理といっ
た表面改質方法を施すことも好ましい。
<コーティング処理>
本実施形態のインキセットを用いて作製した印刷物は、必要に応じて、印刷面をコーテ
ィング処理することができる。前記コーティング処理の具体例として、コーティング用組
成物の塗工・印刷や、ドライラミネート法、無溶剤ラミネート法、押出しラミネート法な
どによるラミネート加工などが挙げられ、いずれを選択してもよいし、複数を組み合わせ
ても良い。
なお、コーティング用組成物を塗工・印刷することによって印刷物にコーティング処理
を施す場合、その塗工・印刷方法として、インクジェット印刷のように基材に対して非接
触で印刷する方式と、基材に対し前記コーティング用組成物を当接させて印刷する方式の
どちらを採用してもよい。また、コーティング用組成物を基材に対して非接触で印刷する
方式を選択する場合、前記コーティング用組成物として、本実施形態の水性インクジェッ
トインキから顔料を除外した、実質的に着色剤成分を含まないインキ(クリアインキ)を
使用することが好適である。
また印刷物にラミネート加工を施す場合、シーラント基材をラミネートするために使用
する接着剤は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の混合物により構成されること
が好ましい。
前記ポリオール成分とは、水酸基を有する樹脂成分であり、塗工性や印刷物界面への濡
れ性及び浸透性、エージング後に発現するラミネート強度を鑑み、ポリウレタン樹脂やポ
リエステル樹脂が好ましく用いられる。中でも、本実施形態のインキセットによって得ら
れる印刷物の界面、例えば印刷層(印字部)や前処理液層(非印字部)に対する濡れ性が
良好であり、更にラミネート加工された印刷物(積層体)のラミネート強度にも優れる点
から、ポリオール成分がポリエステルポリオールを含有することが好ましい。なお、前記
ポリオール成分は単一成分でも構わないし、複数成分を併用してもよい。
またポリイソシアネート成分は、前記ポリオール成分と反応しウレタン結合を形成する
ことで、接着剤層を高分子量化させ、ラミネート強度を向上させる。中でも、ポリオール
成分との相溶性、本実施形態のインキセットによって得られる印刷物の界面に対する濡れ
性、及び、ラミネート加工された印刷物(積層体)のラミネート強度の観点から、前記ポ
リイソシアネート成分が、イソシアネート基末端のポリエーテル系ウレタン樹脂を含有す
ることが好ましい。また上記と同様の観点から、前記ポリイソシアネート成分の配合量は
、ポリオール成分に対して50〜80質量%であることが好ましい。なお、前記ポリイソ
シアネート成分は単一成分でも構わないし、複数成分を併用してもよい。
なお、上記ラミネート加工に使用するシーラント基材として、無軸延伸ポリプロピレン
(CPP)フィルムや直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)フィルムなどの、ポリ
プロピレンフィルムやポリエチレンフィルムが例示できる。また酸化アルミニウムなどの
金属(酸化物)蒸着層を形成したフィルムを使用してもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態である前処理液、及び前記前処理液
と水性インクジェットインキとを含むインキセットを更に具体的に説明する。なお、以下
の記載において「部」及び「%」とあるものは、特に断らない限り、それぞれ「質量部」
、「質量%」を表す。
<増粘剤1の製造例>
数平均分子量4000のポリエチレングリコール300部を、減圧下、80〜90℃で
3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート14部を加え、80〜90℃で5時
間反応させた。更に1−エイコサノール2.8部を加え、80〜90℃で3時間反応させ
たのち、イオン交換水を添加して、増粘剤1の30%水溶液を得た。なお増粘剤1は、上
記一般式(3)において、R1及びR4がエイコシル基(炭素数20)、R2及びR3がヘキ
サメチレン基(炭素数6)、A1〜A4が全てウレタン結合、l=90、m=25である疎
水変性の水溶性ウレタン樹脂であった。
<増粘剤2の製造例>
数平均分子量4000のポリエチレングリコール280部を、減圧下、80〜90℃で
3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート13部を加え、80〜90℃で30
分反応させた。更に1−オクタデカノール19部を加え、80〜90℃で3時間反応させ
たのち、イオン交換水を添加して、増粘剤2の30%水溶液を得た。なお増粘剤2は、上
記一般式(3)において、R1及びR4がオクタデシル基(炭素数18)、R2及びR3がヘ
キサメチレン基(炭素数6)、A1〜A4が全てウレタン結合、l=90、m=2である疎
水変性の水溶性ウレタン樹脂であった。
<増粘剤3の製造例>
数平均分子量4000のポリエチレングリコール280部を、減圧下、80〜90℃で
3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18部を加え、80〜90℃で4時
間反応させた。更に1−エイコサノール2.8部を加え、80〜90℃で3時間反応させ
たのち、イオン交換水を添加して、増粘剤3の30%水溶液を得た。なお増粘剤3は、上
記一般式(3)において、R1及びR4がエイコキシル基、R2及びR3がヘキサメチレン基
(炭素数6)、A1〜A4が全てウレタン結合、l=90、m=21である疎水変性の水溶
性ウレタン樹脂であった。
<増粘剤4の製造例>
数平均分子量4000のポリエチレングリコール280部を、減圧下、80〜90℃で
3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート16部を加え、80〜90℃で3時
間反応させた。更に1−エイコサノール2.8部を加え、80〜90℃で3時間反応させ
たのち、イオン交換水を添加して、増粘剤4の30%水溶液を得た。なお増粘剤4は、上
記一般式(3)において、R1及びR4がエイコキシル基、R2及びR3がヘキサメチレン基
(炭素数6)、A1〜A4が全てウレタン結合、l=90、m=18である疎水変性の水溶
性ウレタン樹脂であった。
<増粘剤5の製造例>
数平均分子量4000のポリエチレングリコール390部を、減圧下、80〜90℃で
3時間脱水した後、ヘキサメチレンジイソシアネート18部を加え、80〜90℃で4時
間反応させた。更に、ステアレス−40(エチレンオキサイド基を40モル有するポリオ
キシエチレンステアリルエーテル)40部を加え、80〜90℃で3時間反応させたのち
、イオン交換水を添加して、増粘剤5の30%水溶液を得た。なお増粘剤5は、上記一般
式(4)において、R5及びR8がオクタデシル基(炭素数18)、R6及びR7がヘキサメ
チレン基(炭素数6)、A5〜A8が全てウレタン結合、n=40、o=90、p=10、
q=40である疎水変性の水溶性ウレタン樹脂であった。
<前処理液1の製造例>
下記材料を、攪拌機を備えた混合容器内に投入し、室温(25℃)にて1時間混合した
のち、50℃に加温し、更に1時間混合した。その後、混合物を室温まで冷却したのち、
孔径1μmのメンブランフィルターにて濾過を行うことで、前処理液1を得た。なお、下
記で使用した材料の詳細については、後述する表2〜3に記載した。
・ジョンクリル7100(固形分48%) 10.4部
・硫酸アルミニウム 5.0部
・アデカノールUH−540 3.3部
・サーフィノール465 0.5部
・プロキセルGXL 0.1部
・2−プロパノール(2PrOH) 5.0部
・イオン交換水 75.7部
<前処理液2〜114の製造例>
表1に記載の材料を使用した以外は、前処理液1と同様の方法により、前処理液2〜1
14を製造した。
なお、表1に記載された材料の詳細は、下記表2〜3に示した通りである。表2〜3中
、融点は島津製作所社製「DSC−60Plus」を用いた示差操作熱量測定で、50%
粒子径はマイクロトラック・ベル社製マイクロトラックUPAEX−150を用いた動的
光散乱法によって測定した値である。
<凝集剤(B)の吸湿質量増加率の測定>
なお表2には、凝集剤(B)として使用した材料の吸湿質量増加率を、以下基準に基づ
いて示した。ここで吸湿質量増加率は、上記に記載した方法で測定した、40℃・80%
RH環境下に24時間保管した凝集剤(B)の質量増加率である。
A:吸湿質量増加率が40質量%以下であった
B:吸湿質量増加率が40質量%より大きく75質量%以下であった
C:吸湿質量増加率が75質量%より大きかった
[実施例1〜94、比較例1〜20]
上記で製造した前処理液1〜114について、以下の評価を実施した。また評価結果は
、表4に示した通りであった。
<前処理液の保存安定性の評価>
上記で製造した前処理液について、E型粘度計(東機産業社製TVE−20L)を用い
て、25℃環境下で粘度を測定したのち、密閉容器に入れ、50℃に設定した恒温機内に
静置保存した。1週間ごとに前記密閉容器を取り出し、上記と同様にして経時後の粘度を
測定し、経時前後での粘度変化率を算出することで、前処理液の保存安定性の評価を行っ
た。評価基準は以下の通りとし、AA、A、Bを実使用上可能とした。
AA:4週間保存後の粘度変化率が±5%未満であった
A:3週間保存後の粘度変化率が±5%未満であったが、4週間保存後の粘度変化率
が±5%以上であった
B:2週間保存後の粘度変化率が±5%未満であったが、3週間保存後の粘度変化率
が±5%以上であった
C:1週間保存後の粘度変化率が±5%未満であったが、2週間保存後の粘度変化率
が±5%以上であった
D:1週間保存後の粘度変化率が±5%以上であった
<前処理液を付与したフィルム基材の作製例>
上記で製造した前処理液について、松尾産業社製KコントロールコーターK202、ワ
イヤーバーNo.0を用い、下記フィルム基材に、上記で作成した前処理液をウェット膜
厚4.0±0.2μmで塗布したのち、前記前処理液を塗布したフィルム基材を、70℃
のエアオーブンに投入し3分間乾燥させることで、前処理液を付与したフィルム基材を作
製した。
<評価に使用したフィルム基材>
・OPP:三井化学東セロ社製2軸延伸ポリプロピレンフィルム「OPU−1」(厚
さ20μm)
・PET:フタムラ社製ポリエチレンテレフタレートフィルム「FE2001」(厚
さ12μm)
<前処理液の塗工ムラの評価>
上記方法に基づき、OPPフィルム基材に塗工した前処理液の外観を目視、及びルーペ
で観察した。評価基準は下記の通りとし、AA、A、Bを実使用上可能とした。
AA:目視及びルーペでハジキや塗工ムラが見られなかった
A:ルーペで塗工ムラがごく僅かに見られたが、目視でハジキや塗工ムラが見られな
かった
B:ルーペでハジキや塗工ムラが僅かに見られたが、目視でハジキや塗工ムラが見ら
れなかった
C:目視でハジキまたは塗工ムラが僅かに見られた
D:目視でハジキまたは塗工ムラが明らかに見られた
<水性インクジェットインキの製造>
<顔料分散用樹脂1の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール95部を
仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合性単量体としてスチ
レン45部、アクリル酸30部、ラウリルメタクリレート25部、及び重合開始剤である
V−601(和光純薬製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下
終了後、110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、
更に110℃で1時間反応を続けて、顔料分散用樹脂1の溶液を得た。更に、室温まで冷
却した後、ジメチルアミノエタノールを添加して完全に中和したのち、水を100部添加
し水性化した。その後、100℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノール
を留去し、固形分が30%になるように調整することで、顔料分散用樹脂1の水性化溶液
(固形分30%)を得た。なお、上記に示した方法で測定した顔料分散用樹脂1の酸価は
230mgKOH/g、重量平均分子量は25,000であった。
<顔料分散用樹脂2〜7の水性化溶液の製造例>
下記表5に示したように、重合性単量体の種類や量を変更した以外は、顔料分散用樹脂
1の場合と同様にして、顔料分散用樹脂2〜7の水性化溶液(固形分30%)を得た。
<顔料分散液1C、1M、1Y、1Kの製造例>
トーヨーカラー社製LIONOL BLUE 7358G(C.I.ピグメントブルー1
5:3)を20部、顔料分散用樹脂1の水性化溶液(固形分30%)を20部、水60部
を混合し、攪拌機でプレミキシングした後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800
gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行い、顔料分散液1Cを得た
。また上記C.I.ピグメントブルー15:3を、以下に示す顔料にそれぞれ置き換えた
以外は顔料分散液1Cと同様にして、顔料分散液1M、1Y、1Kを得た。
・Magenta:DIC社製FASTGEN SUPER MAGENTA RG
(C.I.ピグメントレッド122)
・Yellow:トーヨーカラー社製LIONOL YELLOW TT1405G
(C.I.ピグメントイエロー14)
・Black:オリオンエンジニアドカーボンズ社製PrinteX85
(カーボンブラック)
<顔料分散液2〜7(C、M、Y、K)の製造例>
顔料分散用樹脂として顔料分散用樹脂2〜7の水性化溶液(固形分30%)を使用する
以外は、顔料分散液1C、1M、1Y、1Kと同様の方法を用いることで、顔料分散液2
〜7(それぞれC、M、Y、K)を得た。
<顔料分散液1Wの製造例>
石原産業社製タイペークCR−90−2(酸化チタン)を40部、顔料分散用樹脂1の
水性化溶液(固形分30%)を20部、水40部を混合し、攪拌機でプレミキシングした
後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミ
ルを用いて本分散を行い、顔料分散液1W(顔料濃度40%)を得た。
<水性インクジェットインキのセット1(CMYK)の製造例>
下記材料を、攪拌機を備えた混合容器内に順次投入し、十分に均一になるまで攪拌した
。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、インクジェットヘッド詰ま
りの原因となる粗大粒子を除去することで、水性インクジェットシアンインキ1を得た。
また顔料分散液1Cの代わりに、顔料分散液1M、1Y、1Kをそれぞれ使用することに
より、シアン(C)、マゼンタ(M)イエロー(Y)、ブラック(K)の4色からなる水
性インクジェットインキのセット1を得た。
・顔料分散液1C 25部
・ジョンクリル8211(固形分44%) 15部
・1,2−プロパンジオール 20部
・KF−6015 1部
・プロキセルGXL 0.1部
・イオン交換水 38.9部
なお上記製造例において、ジョンクリル8211は、BASF製アクリル樹脂エマルジ
ョン(固形分44%)である。
<インクジェットインキのセット2〜26(CMYK)の製造例>
表6に記載の材料を使用する以外はインクジェットインキのセット1と同様の方法によ
り、シアン(C)、マゼンタ(M)イエロー(Y)、ブラック(K)の4色からなるイン
クジェットインキのセット2〜26を得た。
なお表6において、インクジェットインキのセット8における、下記に示すCaboj
etの配合量は、C、M、Yは50質量%、Kは25質量%であり、イオン交換水の配合
量は、C、M、Yは13.9質量%、Kは38.9質量%である。また、表6に記載され
た材料のうち、表2〜3に記載のない材料の略称及び詳細は、以下の通りである。
・CaboJet:
Cyan:Cabojet250C(キャボット社製自己分散型シアン顔料水溶
液、顔料濃度10%)
Magenta:Cabojet265M(キャボット社製自己分散型マゼンタ
顔料水溶液、顔料濃度10%)
Yellow:Cabojet270(キャボット社製自己分散型イエロー顔料
水溶液、顔料濃度10%)
Black:Cabojet200(キャボット社製自己分散型カーボンブラッ
ク水溶液、顔料濃度20%)
・PGmME:プロピレングリコールモノメチルエーテル(1気圧下における沸点1
20℃)
・1,2−BD:1,2−ブタンジオール(1気圧下における沸点192℃)
・1,2−HD:1,2−ヘキサンジオール(1気圧下における沸点224℃)
・TEGmEE:トリエチレングリコールモノエチルエーテル(1気圧下における沸
点256℃)
・KF−6015:日信化学工業社製シロキサン系界面活性剤
なお、表6には、各インキに含まれる水溶性有機溶剤の、1気圧下における加重沸点平
均値(℃)や、1気圧下における沸点が250℃(または220℃)以上である水溶性有
機溶剤の量(質量%)についても、併せて記載した。
<水性インクジェットホワイトインキ1〜11の製造例>
下記表7に記載の材料を使用する以外はインクジェットシアンインキ1と同様の方法に
より、水性インクジェットホワイトインキ1〜11を得た。
<印刷物の作製例>
基材を搬送できるコンベヤの上部にインクジェットヘッドKJ4B−QA(京セラ社製
、設計解像度600dpi)を設置し、上記で製造した水性インクジェットインキのセッ
トを、上流側からK、C、M、Yの順番に充填した。次いで、前記コンベヤ上に、上記で
作製した、前処理液を付与したフィルム基材を固定したのち、前記コンベヤを一定速度で
駆動させ、前記インクジェットヘッドの設置部を通過する際に、インクジェットインキを
それぞれドロップボリューム10pLで吐出し、下記画像を印刷した。印刷後速やかに、
前記印刷物を70℃エアオーブンに投入し3分間乾燥させることで、印刷物を作成した。
なおコンベヤ駆動速度は、25m/分または50m/分、75m/分の3条件とし、そ
れぞれで印刷を行った。また印刷画像として、5cm×5cmの印字率100%ベタパッ
チが、CMYKの順番で隣接した画像(以下、「ベタパッチ画像」と呼ぶ)、総印字率(
各色の印字率の合計)を40〜320%まで連続的に変化させた4色(CMYK)画像(
以下、「グラデーション画像」と呼ぶ。なお、各総印字率における、各色の印字率は同一
である)、及び、CMYKを使用した総印字率320%のベタ画像(以下、「4Cベタ画
像」と呼ぶ。なお、各色の印字率はいずれも80%である)の3種類を準備し、それぞれ
の印刷物を作製した。
[実施例95〜213、比較例21〜40]
下記表8に示した、前処理液と水性インクジェットインキのセットとの組み合わせで、
上記印刷物を作製した。この印刷物、または、前処理液そのものを使用し、下記の評価を
行った。また評価結果は、表8に示した通りであった。
<画像品質の評価>
上記方法に基づき、25m/分または50m/分、75m/分のコンベヤ駆動速度条件
で作成した、OPPフィルム基材に対するグラデーション画像印刷物を使用した。前記画
像印刷物のドット形状を、光学顕微鏡を用いて200倍で観察することで、画像品質(混
色滲みや色ムラ)の評価を行った。評価基準は下記の通りとし、AA、A、Bを実使用上
可能とした。
AA:75m/分で混色滲みや色ムラが見られなかった
A:75m/分で混色滲みや色ムラがやや見られたが、50m/分で混色滲みや色ム
ラが見られなかった
B:50m/分で混色滲みや色ムラがやや見られたが、25m/分で混色滲みや色ム
ラが見られなかった
C:25m/分で混色滲みや色ムラが見られた
<密着性の評価>
上記方法に基づき、50m/分のコンベヤ駆動速度条件で作成した、ベタパッチ画像印
刷物を使用した。前記画像印刷物の表面にニチバン社製セロハンテープ(幅18mm)を
しっかり貼りつけたのち、前記セロハンテープの先端を持ち、90度の角度を保ちながら
剥がした。そして剥がした後の印刷物の表面やセロハンテープ面を目視で確認することで
、密着性を評価した。評価基準は以下の通りであり、AA、A、Bを実使用上可能とした
。なお、OPPフィルム基材への印刷物、及び、PETフィルム基材への印刷物の両方に
ついて、密着性を評価した。また表8には、評価を行った4色のうち、最も評価結果が悪
かった色について記載した。
AA:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が5%未満であった
A:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が5〜10%未満であった
B:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が10%以上20%未満であった
C:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が20%以上30%未満であった
D:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が30%以上であった
<乾燥性の評価>
上記の印刷物の作製例と同様にして、50m/分のコンベヤ駆動速度条件で、前処理液
を付与したOPPフィルム基材にベタパッチ画像を印刷した。印刷後速やかに、印刷物を
70℃エアオーブンに投入したのち、1分ごとに前記印刷物をエアオーブンより取り出し
、表面を指で擦り状態を目視観察することで、乾燥性の評価を行った。評価基準は以下の
通りとし、AA、A、Bを実使用上可能とした。
AA:エアオーブン投入から1分後の時点で印刷物が乾燥し、指で擦ってもインキが
付着しなかった
A:エアオーブン投入から1分後には指にインキが付着したが、2分後は付着しなか
った
B:エアオーブン投入から2分後には指にインキが付着したが、3分後は付着しなか
った
C:エアオーブン投入から3分後の印刷物でも、指にインキが付着した
<耐ブロッキング性の評価>
上記方法に基づき、50m/分のコンベヤ駆動速度条件で作成した、OPPフィルム基
材に対する4Cベタ画像印刷物を使用した。前記画像印刷物を、4cm×4cm角にカッ
トし、印刷に使用したものと同じOPPフィルムの裏面と重ね合わせ、永久歪試験機を用
いてブロッキング試験を実施した。ブロッキング試験の環境条件は、荷重10kg/cm
2、温度40℃、湿度80%、試験期間24時間とした。24時間経過後、90度の角度
を保ちながら、重ねたOPPフィルムを瞬間的に引張り剥がし、剥がした後の印刷面を目
視で確認することで、耐ブロッキング性を評価した。評価基準は以下の通りとし、AA、
A、Bを実使用上可能とした。
AA:印刷面の剥離面積が5%未満であった
A:印刷面の剥離面積が5%以上10%未満であった
B:印刷面の剥離面積が10%以上15%未満であった
C:印刷面の剥離面積が15%以上であった
[実施例214〜227]
また、下記表9に示した、前処理液、水性インクジェットブラックインキ(水性インク
ジェットインキのセットのうちブラック色のもの)、水性インクジェットホワイトインキ
の組み合わせについては、以下に示す方法により、鮮明・視認性の評価も実施した。評価
結果は、表9に示した通りであった。
<鮮明・視認性の評価>
基材を搬送できるコンベヤの上部にインクジェットヘッドKJ4B−QAを設置し、表
9に示した水性インクジェットブラックインキ(Kインキ)及び水性インクジェットホワ
イトインキ(Wインキ)を、前記表9に記載した色が上流側になるようにして充填した。
ただし実施例227では、Wインキは使用せずに、Kインキのみを用いた。次いで、前記
コンベヤ上に、表9に示した、前処理液を付与したフィルム基材を固定したのち、前記コ
ンベヤを50m/分の速度で駆動させ、前記インクジェットヘッドの設置部を通過する際
に、上記水性インクジェットインキをそれぞれ吐出した。その際、Kインキについては、
平仮名と漢字の混ざった4ポイント及び6ポイントのMS明朝体からなる文字画像を、ま
たWインキについては、印字率100%の白ベタ画像を印刷した。また、下流側に充填し
たインキによる画像が、上流側に充填したインキによる画像の上に重なるように印刷した
。そして、印刷後速やかに、前記印刷物を70℃エアオーブンに投入し3分間乾燥させる
ことで、文字・白ベタ印刷物を作成した。
得られた文字・白ベタ印刷物を、表9に記載した観察面から目視で観察し、鮮明・視認
性を評価した。評価基準は以下の通りであり、AA,A,Bを実使用上可能とした。
AA:4ポイント及び6ポイントの文字がいずれも鮮明で、明瞭に判読できた。
A:4ポイントの文字がやや鮮明性に劣るものの十分に判読でき、また6ポイントの
文字は鮮明で、明瞭に判読できた。
B:4ポイントの文字は鮮明性に劣り判読できなかった。一方6ポイントの文字はや
や鮮明性に劣るものの、十分に判読できた。
C:4ポイント、6ポイントの文字がいずれも鮮明性に劣り、判読できなかった。
表1記載の前処理液95〜97は、樹脂粒子(A)ではない樹脂粒子を使用した系、前
処理液98〜99、109は、凝集剤(B)ではない凝集剤を使用した系、前処理液10
0〜104は、増粘剤(C)ではない増粘剤を使用した系、前処理液114は、増粘剤(
C)を含まない系であるが、評価を行った全ての項目で、実用可能レベルに至っていなか
った。また前処理液105〜108は、HLB値が13.5よりも大きい界面活性剤を使
用した系、前処理液110は、樹脂粒子を含まない系、前処理液113は、界面活性剤を
使用しなかった系である。評価の結果、前処理液の保存安定性は良好であるものの、塗工
時にムラが発生し、結果として画像品質や密着性、更には乾燥性や耐ブロッキング性の悪
化も見られた。
なお、表1記載の前処理液111は、特許文献5(特開2018−1625号公報)記
載の反応液8を再現したものであり、前処理液112は、特許文献6(特開2017−1
09411号公報)記載の実施例5を再現したものである。評価の結果、塗工時にムラが
発生し、結果として画像品質や密着性の悪化が見られた。更に凝集剤の吸湿によると考え
られるブロッキングの悪化も見られ、実用品質には至らなかった。
上記に対して、樹脂粒子(A)、凝集剤(B)、増粘剤(C)、界面活性剤(D)を同
時に含有する前処理液1〜94では、評価を行った全ての項目で実用可能以上の品質を有
していることが確認された。この結果は、上記構成成分のうち1つでも欠けてしまうと、
本発明の効果、特に塗工時のムラを抑制することができず、結果として画像品質や密着性
の悪化が発生してしまうことを示すものである。

Claims (8)

  1. 顔料と水とを含む水性インクジェットインキとともに用いられる前処理液であって、
    前記前処理液が、樹脂粒子(A)と、凝集剤(B)と、増粘剤(C)と界面活性剤(D
    )と、水とを含み、
    前記樹脂粒子(A)の50%粒子径(D50)が、30〜350nmであり、
    前記凝集剤(B)が、多価金属塩及びカチオン性高分子化合物からなる群から選ばれる
    少なくとも1種を含み、
    前記凝集剤(B)の相対湿度80%における水分吸湿率が、75質量%以下であり、
    前記増粘剤(C)が、疎水変性の水溶性ウレタン樹脂を含み、
    前記界面活性剤(D)のHLB値が、13.5以下である前処理液。
  2. 前記樹脂粒子(A)が、ポリオレフィン樹脂粒子である、請求項1に記載の前処理液。
  3. 前記界面活性剤(D)のHLB値が、1.0〜8.5である、請求項1または2に記載
    の前処理液。
  4. 前記凝集剤(B)が、前記多価金属塩として2価金属塩を含む、請求項1〜3いずれか
    に記載の前処理液。
  5. 前記増粘剤(C)の配合量が、前記樹脂粒子(A)の配合量に対して1〜100質量%
    である、請求項1〜4いずれかに記載の前処理液。
  6. 更に、25℃における静的表面張力が20〜40mN/mの水溶性有機溶剤を含む、請
    求項1〜5いずれかに記載の前処理液。
  7. 請求項1〜6いずれかに記載の前処理液と、
    顔料、水溶性有機溶剤、及び水を含む水性インクジェットインキと
    を含む、インキセット。
  8. 請求項1〜6いずれかに記載の前処理液を付与した基材に、前記水性インクジェットイ
    ンキが印刷されてなる印刷物。
JP2018211064A 2018-11-09 2018-11-09 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット Active JP6541088B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018211064A JP6541088B1 (ja) 2018-11-09 2018-11-09 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018211064A JP6541088B1 (ja) 2018-11-09 2018-11-09 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6541088B1 JP6541088B1 (ja) 2019-07-10
JP2020075436A true JP2020075436A (ja) 2020-05-21

Family

ID=67212187

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018211064A Active JP6541088B1 (ja) 2018-11-09 2018-11-09 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6541088B1 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020164571A (ja) * 2019-03-28 2020-10-08 大日本塗料株式会社 水系白色インク、インクセット及び印刷方法
JP2022136071A (ja) * 2021-03-03 2022-09-15 株式会社Dnpファインケミカル インクセット
JP7169481B1 (ja) 2021-06-30 2022-11-10 株式会社Dnpファインケミカル 水性インク及びこれを含むインクセット
WO2023047706A1 (ja) 2021-09-27 2023-03-30 東洋インキScホールディングス株式会社 水性記録液セット、及び、印刷物の製造方法
WO2023047707A1 (ja) 2021-09-27 2023-03-30 東洋インキScホールディングス株式会社 前処理液、インキセット、及び、印刷物
JP7272496B1 (ja) 2022-06-01 2023-05-12 東洋インキScホールディングス株式会社 水性前処理液、インキセット、印刷物、及び、分離方法

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7388059B2 (ja) * 2018-12-27 2023-11-29 セイコーエプソン株式会社 インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
US20230118001A1 (en) * 2020-03-12 2023-04-20 Cryovac, Llc Printing compositions and methods therefor
JP2022014927A (ja) * 2020-07-08 2022-01-21 コニカミノルタ株式会社 インクジェット捺染用インクセット及びインクジェット捺染方法

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010156089A (ja) * 2008-03-06 2010-07-15 Seiko Epson Corp 顔料定着液、インクセット、印捺物の製造方法および印捺物
JP2010155442A (ja) * 2009-01-05 2010-07-15 Ricoh Co Ltd 前処理液を用いた画像形成方法、前処理液、インクジェット記録用インクとのセット、カートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成物
US20130257988A1 (en) * 2012-03-29 2013-10-03 Yang Xiang Pre-treatment composition for inkjet printing
JP2017190430A (ja) * 2016-04-15 2017-10-19 ローランドディー.ジー.株式会社 インクジェットインク、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置
JP2018001625A (ja) * 2016-07-04 2018-01-11 キヤノン株式会社 インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP2018122588A (ja) * 2017-10-05 2018-08-09 東洋インキScホールディングス株式会社 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット
JP6388243B1 (ja) * 2017-12-25 2018-09-12 東洋インキScホールディングス株式会社 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010156089A (ja) * 2008-03-06 2010-07-15 Seiko Epson Corp 顔料定着液、インクセット、印捺物の製造方法および印捺物
JP2010155442A (ja) * 2009-01-05 2010-07-15 Ricoh Co Ltd 前処理液を用いた画像形成方法、前処理液、インクジェット記録用インクとのセット、カートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成物
US20130257988A1 (en) * 2012-03-29 2013-10-03 Yang Xiang Pre-treatment composition for inkjet printing
JP2017190430A (ja) * 2016-04-15 2017-10-19 ローランドディー.ジー.株式会社 インクジェットインク、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置
JP2018001625A (ja) * 2016-07-04 2018-01-11 キヤノン株式会社 インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP2018122588A (ja) * 2017-10-05 2018-08-09 東洋インキScホールディングス株式会社 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット
JP6388243B1 (ja) * 2017-12-25 2018-09-12 東洋インキScホールディングス株式会社 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020164571A (ja) * 2019-03-28 2020-10-08 大日本塗料株式会社 水系白色インク、インクセット及び印刷方法
JP7274908B2 (ja) 2019-03-28 2023-05-17 大日本塗料株式会社 水系白色インク、インクセット及び印刷方法
JP2022136071A (ja) * 2021-03-03 2022-09-15 株式会社Dnpファインケミカル インクセット
JP2022136015A (ja) * 2021-03-03 2022-09-15 株式会社Dnpファインケミカル インクセット
JP7169481B1 (ja) 2021-06-30 2022-11-10 株式会社Dnpファインケミカル 水性インク及びこれを含むインクセット
WO2023276979A1 (ja) * 2021-06-30 2023-01-05 株式会社Dnpファインケミカル 水性インク及びこれを含むインクセット
JP2023007500A (ja) * 2021-06-30 2023-01-18 株式会社Dnpファインケミカル 水性インク及びこれを含むインクセット
WO2023047706A1 (ja) 2021-09-27 2023-03-30 東洋インキScホールディングス株式会社 水性記録液セット、及び、印刷物の製造方法
WO2023047707A1 (ja) 2021-09-27 2023-03-30 東洋インキScホールディングス株式会社 前処理液、インキセット、及び、印刷物
JP7272496B1 (ja) 2022-06-01 2023-05-12 東洋インキScホールディングス株式会社 水性前処理液、インキセット、印刷物、及び、分離方法
JP2023177002A (ja) * 2022-06-01 2023-12-13 東洋インキScホールディングス株式会社 水性前処理液、インキセット、印刷物、及び、分離方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6541088B1 (ja) 2019-07-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6388243B1 (ja) 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット
JP6541088B1 (ja) 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット
US11613665B2 (en) Water-based ink for inkjet and method for producing printed matter
JP7030262B2 (ja) 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット
JP6977500B2 (ja) 水性記録液セット、およびそれらを用いた印刷物の製造方法
US11453797B2 (en) Ink set and method for producing printed matter
JP2020070334A (ja) インキセット、及び印刷物の記録方法
US20230030249A1 (en) Pretreatment liquid, ink set and printed matter
JP6372674B2 (ja) 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット
JP2019111770A (ja) 水性前処理液、水性記録液セット、及び印刷物の製造方法
JP2018204012A (ja) インクジェット用水性インキ、及び印刷物の製造方法
JP7277678B1 (ja) 記録液セット、印刷物の製造方法、及び、印刷物
JP7463608B1 (ja) 水性インクジェットインキ及び印刷物
JP7431399B1 (ja) インキセット及び印刷物の製造方法
JP2017165982A (ja) 水性インクジェットインキ
WO2022118549A1 (ja) 有彩色プロセスカラーインクジェットインキ
JP2022099352A (ja) 前処理液、およびそれを用いた水性インクジェットインキセット、印刷物、印刷物の製造方法
JP2023089421A (ja) 前処理液、水性インクジェットインキセット、および印刷物の製造方法
EP4286484A1 (en) Aqueous pretreatment liquid, ink set, printed item, and separation method
JP2022033132A (ja) 水性インクジェットインキ及びインクジェット印刷物の製造方法
JP2023055183A (ja) 前処理液、それを用いた水性インクジェットインキセット、印刷物、および印刷物の製造方法
JP2023047409A (ja) 水性記録液セット、及び、印刷物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190408

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20190408

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20190416

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190528

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20190531

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190531

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20190531

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6541088

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350