JP2017224236A - 磁気マーカ及びマーカシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】コストを抑えた磁気マーカ及びマーカシステムを提供すること。
【解決手段】車両5の底面側に取り付けられた磁気センサ2で検出できるように道路に敷設され、運転を支援するための車両側の運転支援制御に供する磁気マーカ1は、磁性材料の粉末である磁粉を含めて柱状に成形された磁石であり、この磁気マーカ1を含むマーカシステム1Sでは、路面53に穿設された孔530に収容された磁気マーカ1が車線の中心に沿って配置されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、道路に敷設される磁気マーカ、及び磁気マーカを含むマーカシステムに関する。
従来、車両側で検出可能なように道路に磁気マーカを敷設したマーカシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなマーカシステムは、例えば車線に沿って敷設された磁気マーカを利用する自動操舵制御や車線逸脱警報や自動運転など各種の運転支援の実現を目的としている。
車両側では、路面から100〜250mm程度の比較的高い位置に磁気センサが取り付けられる。磁気マーカの検出確実性を高くするためには、磁気マーカが発生する磁界を強くすれば良く、例えばネオジウムなど強力な磁力を発生する磁石を採用する磁気マーカが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2005−202478号公報 特開2003−027432号公報
しかしながら、前記従来の磁気マーカ及びマーカシステムでは、次のような問題がある。すなわち、ネオジウム等の磁石は酸化が起こり易いため、例えば気密性が高く高耐久の金属製ケースに収容する必要があって磁気マーカ自体のコスト上昇や大型化が生じ易く、さらに、磁気マーカの大型化が施工コストの上昇を誘発するという問題がある。
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、コストを抑えた磁気マーカ及びマーカシステムを提供しようとするものである。
本発明の第1の態様は、車両が備える磁気センサで検出できるように道路に敷設され、運転を支援するための車両側の運転支援制御に供する磁気マーカであって、
磁性材料の粉末である磁粉を含めて柱状に成形された磁石である磁気マーカにある(請求項1)。
本発明の第2の態様は、車両が備える磁気センサで検出できるように道路に敷設された磁気マーカを含み、運転を支援するための車両側の運転支援制御に供するマーカシステムであって、
前記第1の態様の柱状の磁気マーカを含むマーカシステムにある(請求項9)。
本発明に係る磁気マーカは、磁性材料の粉末である磁粉を含めて柱状に成形された磁石である。例えば金属製ケース等に磁石を収容したものではなく磁石そのものである磁気マーカであれば、部品点数も少なくコスト低減が容易である。また、磁石そのものである磁気マーカは比較的小型に構成でき、敷設時の施工コストを抑制できる。
以上のように本発明に係る磁気マーカ及びマーカシステムは、いずれも低コストである。
実施例1における、マーカシステムの説明図。 実施例1における、磁気マーカを示す図。 実施例1における、磁気センサの電気的構成を示すブロック図。 実施例1における、磁気マーカの鉛直方向の磁界分布を示すグラフ。 実施例2における、敷設作業の手順の説明図。 実施例2における、他の敷設作業の手順の説明図。 実施例2における、磁気マーカの敷設状態を示す図。 実施例2における、他の敷設作業の手順の説明図。 実施例2における、他の磁気マーカを示す図。 実施例2における、他の磁気マーカを示す図。 実施例2における、他の磁気マーカを示す図。 実施例2における、他の磁気マーカを示す図。 実施例2における、他の磁気マーカを示す図。 実施例4における、情報提供手段を備える磁気マーカの端面の正面図。 実施例4における、RFIDタグ及びタグリーダの電気的構成を示すブロック図。 実施例5における、磁気マーカの鉛直方向の磁界分布を示すグラフ。 実施例5における、シート状の磁気マーカを示す図。 実施例5における、シート状の磁気マーカの適用例を示す図。
本発明の好適な態様を説明する。
磁気マーカをなす磁石は、磁粉を焼結により成形した焼結磁石であっても良い。磁粉としては、酸化鉄の磁粉であっても良い。酸化による磁気的特性の劣化が起こり難い酸化鉄を利用した磁石であれば、酸化を防止するための密閉構造等の必要性が少なく、例えば路面に設けた孔にそのまま収容可能である。
前記磁石は、基材をなす高分子材料中に前記磁粉を分散させた成形品であっても良い(請求項2)。
高分子材料を利用した磁石としては、例えば、プラスチックマグネットやラバーマグネット等がある。例えば焼結磁石等のマグネットに比べて割れが生じにくいプラスチックマグネットやラバーマグネットを採用すれば、耐久性が良好な磁気マーカを実現できる。また、比較的低コストで高精度に成形可能なこれらのマグネットを採用すれば、生産コストを抑制しながら高品質の磁気マーカを提供できる。また、柔軟性を備えるラバーマグネット等であれば、敷設施工時の路面の凹凸や、運用中の路面の凹凸変形等に対応でき、トラブルを未然に抑制できる。
磁気マーカは、直径50mm以下の柱状の磁石であると良い(請求項3)。
断面形状が直径50mm以下の円に包含されるような柱状であれば、例えば直径50mm程度の比較的小さな孔を路面に設けて敷設できるので、施工コストを抑制できる。さらに、例えば、直径50mm程度の柱状の小さなプラスチックマグネットやラバーマグネット等であれば、路面の再舗装等の際、古い舗装材料と一緒にそのまま廃棄処分できる可能性がある。この場合には、再舗装等の作業を効率良く実施でき、磁気マーカを敷設した路面であっても作業コストが上昇するおそれが少ない。なお、直径30mm以下の柱状の磁気マーカであっても良い。直径30mm以下の細い磁気マーカであれば、上記の効果が一層向上する。
磁気マーカは、孔に収容されたときの引き抜き方向の脱落を防止するための抜止め構造を備えていると良い(請求項4)。
抜止め構造としては、例えば、外周側面に設けた段差や、先端側に延設されて根のように作用する形状等を備える構造がある。
前記磁石の外周面の全部又は一部には、少なくとも繊維を含む保護層が形成されていると良い(請求項5)。
繊維を含む保護層を形成すれば、前記磁石の耐久性を一層向上できる。例えば、樹脂材料中にガラス繊維等を分散させた複合材料よりなる保護層であっても良い。また、例えば舗装材料であるアスファルト等の高分子材料に磁粉を分散させた磁石の場合、路面を形成する舗装材料中に磁粉が流出するおそれがある一方、繊維を含む保護層を形成すれば磁粉の流出を未然に抑制できる。
無線通信により車両側に情報を提供する情報提供手段を備えていると良い(請求項6)。
磁気マーカがより多くの情報を提供できるようになり、磁気マーカの有用性が高くなる。無線通信によればより多くの情報を車両側に提供できる。例えば無線タグを利用することも良い。無線タグであれば、記録された情報の書き換えも比較的容易である。なお、磁粉を分散させた磁石である磁気マーカは電気的な内部抵抗が高く無線電波による通信を阻害するおそれが少ないため、車両側から見て磁気マーカの反対側の端面側に情報提供手段を配置することも可能である。このような配置構造を採用すれば、例えば車両タイヤ等による踏み付け等による無線通信機能のトラブルを未然に抑制できる。
前記情報提供手段は、暗号鍵を用いて読み出しできる暗号化された情報を提供する手段であると良い(請求項7)。
この場合には、暗号鍵を所持する特定の車両に対して選択的に情報を提供できるようになる。例えば、トレーラなどの大型車と普通乗用車とで異なる暗号鍵を設定する一方、暗号鍵が異なる2種類の情報を時分割で提供するように情報提供手段を構成しても良い。この場合には、大型車であるか普通乗用車であるかに応じて異なる情報を提供できる。また、例えば、車速や連続運転時間等の車両側のデータが閾値を超えたか否かを表すビット値を含む暗号鍵を構成することも良い。この場合には、例えば、制限速度を超過して走行中の車両に対して選択的に注意情報を提供できる。
磁気マーカは、敷設状態で脱磁及び着磁が可能であると良い(請求項8)。
敷設状態で脱磁や着磁が可能であれば、着磁が必要なときに磁気マーカをその都度、道路から取り外す必要がなく作業コストを抑制できる。また、磁極性に応じて情報を提供する等の運用においては、磁極性の切替により提供する情報の変更等が容易になる。
本発明に係るマーカシステムとしては、前記柱状の磁気マーカが路面に穿設された孔に収容された状態で敷設されているシステムであると良い(請求項10)。
ここで、磁気マーカが孔に収容された状態とは、磁気マーカの少なくとも一部が孔に収容されている状態を示している。このように磁気マーカが孔に収容された状態であれば、例えば路面の表面に設置した場合等と比べて、積雪時のタイヤチェーンや除雪車の除雪ブレード等によりダメージを受けるおそれを抑制できる。また、路面に穿孔した孔に前記柱状の磁気マーカを収容する敷設方法であれば、シンプルな方法により磁気マーカを敷設でき、施工コストを抑制できる。
前記柱状の磁気マーカは、路面に対して面一、あるいは路面よりも奥まった状態で孔に収容されていると良い(請求項11)。
孔に対して磁気マーカの全体を収容すれば、路面から突出する部分がなくなるので、積雪時のチェーンや除雪車の除雪ブレード等によりダメージを受けるおそれを一層抑制できる。
前記柱状の磁気マーカは、路面よりも奥まった状態で孔に収容され、当該孔には蓋が設けられていると良い(請求項12)。
蓋により磁気マーカを保護でき、運用中にトラブルが発生するおそれを抑制できる。蓋としては、金属製やプラスチック製の蓋のほか、アスファルトなどの舗装材料による蓋等であっても良い。
磁気マーカとしては、断面の大きさに対する高さの比率が相違する複数種類の磁気マーカが含まれていても良い(請求項13)。
道路に応じて孔を設けるためのコストや、除雪作業や大型トレーラが通過する頻度等が異なる。これらのコストや頻度等に応じて断面の大きさに対する高さの比率を変更すると良い。断面の大きさに対して高さの比率が大きい比較的長細い柱状の磁気マーカの方が、穿孔する孔径を小さくできる。
磁性材料の粉末である磁粉を含めてシート状に形成された磁石であるシート状の磁気マーカを含み、当該シート状の磁気マーカが路面の表面に設置されているマーカシステムであっても良い(請求項14)。
例えばショッピングセンタの屋内の駐車場等であれば、除雪車による除雪作業が行われることがなく、大型トレーラーも通行しないので、磁気マーカを路面の表面に設置するような敷設方法を採用できる。表面に設置する場合であれば、断面の大きさに対して高さの比率が小さいシート状に近い磁気マーカの方が適している。シート状の磁気マーカであれば、敷設箇所に孔を設ける必要がなく貼り付けるだけで敷設でき施工コストを抑制できる。ショッピングセンタの屋内駐車場のほか、地下駐車場や、私道、私有地の通路、車庫誘導路等であれば、シート状の磁気マーカが好適である。また、道路の構造上、磁気マーカを収容する孔の穿設が難しい場所への敷設には、シート状の磁気マーカが好適である。
一時的に進入が規制された領域への車両の進入を回避するために一時的に設定された迂回路、あるいは車両を誘導するように一時的に設定された誘導経路には、前記シート状の磁気マーカが敷設すると良い(請求項15)。
設置場所を変更したり移動する可能性がある運用の際には、貼り替え等が比較的容易なシート状の磁気マーカが好適である。
なお、本発明に係る磁気マーカ及びマーカシステムを利用して車両側で実現される運転支援制御としては、走行制御や、警報制御や、情報の報知制御などの様々な制御がある。走行制御としては、例えば、車線に沿って敷設された磁気マーカに沿って車両を走行させる自動操舵制御や、合流路・分岐路に敷設された磁気マーカを利用した合流・分岐制御や、交差点等の停止線の手前に敷設された磁気マーカを検出したときに車両を停止させる停止制御等がある。警報制御としては、例えば、車線に沿って敷設された磁気マーカを基準として車線逸脱を警報する制御や、交差点等の手前に敷設された磁気マーカを通過したときのスピードの出し過ぎを警報する制御等がある。情報の報知制御としては、交差点や分岐路や料金所への接近を報知する制御や、経路を誘導するナビゲーション中に右折する交差点の位置を精度高く報知する制御等がある。さらに、例えば磁気マーカのN極及びS極の配列を利用して車両側に提供された情報を報知する制御等も良い。
前記磁気センサは、マグネトインピーダンスセンサ、フラックスゲートセンサ、TMR型センサのうちの少なくともいずれかであると良い(請求項16)。
これらの高感度の磁気センサを含むマーカシステムでは、前記磁気マーカに必要な磁気強度を相対的に抑制できる。
マグネトインピーダンス(MI:Magneto Impedance)センサは、外部磁界に応じてインピーダンスが変化する感磁体を含むマグネトインピーダンス素子を利用した磁気センサである。マグネトインピーダンス素子(MI素子)は、パルス電流あるいは高周波電流等が感磁体を流れるときに表皮層の電流密度が高くなる表皮効果に起因し、外部磁界によって表皮層の深さ(厚さ)が変動して感磁体のインピーダンスが敏感に変化するというマグネトインピーダンス効果(MI効果)を利用し、磁気を検出する素子である。このMI効果を利用するMI素子によれば、高感度な磁気計測が可能となる。なお、MI素子を利用したMIセンサについては多数の出願がなされており、例えば、WO2005/19851号公報、WO2009/119081号公報、特許4655247号公報などに詳細な記載がある。
MI素子の感磁体は、高透磁率合金磁性体が好ましい。例えばCoFeSiB系合金等の軟磁性材からなるワイヤや薄膜などの磁性体が好ましく、特に感度やコスト等の点で零磁歪のアモルファスワイヤが好ましい。
高周波電流等が流れるときの感磁体のインピーダンス変化は、例えば、感磁体の両端電圧から直接的に検出しても良いし、感磁体の周囲に巻回された検出コイル(ピックアップコイル)を介して起電力の変化として間接的に検出しても良い。検出コイルを含むMI素子であれば、磁気の作用方向の検出が可能となって有用である。
フラックスゲートセンサは、軟磁性コアに周期電流を流したときのコア磁束の飽和タイミングが外部磁界に応じて変化することを利用し、飽和のタイミングから磁気強度を計測する高感度な磁気センサである。なお、フラックスゲートセンサについては多数の出願がなされており、例えば、WO2011/155527号公報、特開2012−154786号公報などに詳細な記載がある。
TMR(Tunneling Magneto Resistive)型センサは、強磁性層の間に膜厚1nm程度の絶縁体層を挟み込む構造をもち、膜面に対して垂直に電圧を印加するとトンネル効果によって絶縁体層に電流が流れ、その際の電気抵抗が外部磁界に応じて大きく変化するトンネル磁気抵抗(TMR)効果を利用した高感度な磁気センサである。なお、TMR型センサについては多数の出願がなされており、例えば、WO2009/078296号公報、特開2013−242299号公報などに詳細な記載がある。
(実施例1)
本例は、車両用の道路に磁気マーカ1を敷設したマーカシステム1Sに関する例である。このマーカシステム1Sは、底面側に磁気センサ2を取り付けた車両5に対応している。この内容について、図1〜図4を参照して説明する。
図1に例示するマーカシステム1Sでは、路面53に敷設される磁気マーカ1が車線の中央に沿って配置されている。このマーカシステム1Sに対応する車両5側では、車両5の底面に当たる車体フロア50に磁気センサ2が取り付けられる。磁気センサ2の取付け高さとしては、乗用車のほかバスやトラック等の各種の車両の最低地上高に基づき、100〜250mmまでの範囲を想定できる。車両5側では、磁気センサ2の出力信号が図示しない車載ECU等に入力され、車線維持のための自動操舵制御や車線逸脱警報など各種の制御に利用される。
図2に例示の磁気マーカ1は、直径(D)20mm、高さ(H)28mmの円柱状の磁石である。磁気マーカ1をなす磁石は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させた等方性フェライトラバーマグネットであり、最大エネルギー積(BHmax)=6.4kJ/mという特性を備えている。この磁気マーカ1は、路面53に穿設された孔530(図1)に収容された状態で敷設される。なお、磁気マーカ1の外周面に、樹脂モールドによる保護層を設けることも良い。また、ガラス繊維により強化した樹脂モールドを形成することも良い。
本例の磁気マーカ1の仕様の一部を表1に示す。
Figure 2017224236
この磁気マーカ1の表面の磁束密度Gsは45mTとなっている。45mTの磁束密度は、例えばオフィス等のホワイトボードや家庭の冷蔵庫の扉等に貼り付けて使用されるマグネットシート等の表面の磁束密度と同等あるいはそれ以下である。これらのマグネットシートを基準とすれば、本例の磁気マーカ1が発生する磁力について、金属物を引き寄せて吸着する一般的な磁石としては機能できない程度の微弱な磁力であることを把握できる。なお、この磁気マーカ1の鉛直方向の磁界分布については図4を参照して後で説明する。
車両5側の磁気センサ2は、図3に例示のブロック図の通り、MI素子21と駆動回路とが一体化された1チップのMIセンサである。MI素子21は、CoFeSiB系合金製のほぼ零磁歪であるアモルファスワイヤ(感磁体の一例)211と、このアモルファスワイヤ211の周囲に巻回されたピックアップコイル213と、を含む素子である。磁気センサ2は、アモルファスワイヤ211にパルス電流を印加したときにピックアップコイル213に発生する電圧を計測することで、感磁体であるアモルファスワイヤ211に作用する磁気を検出する。
駆動回路は、アモルファスワイヤ211にパルス電流を供給するパルス回路23と、ピックアップコイル213で生じた電圧を所定タイミングでサンプリングして出力する信号処理回路25と、を含む電子回路である。
パルス回路23は、パルス電流の元となるパルス信号を生成するパルス発生器231を含む回路である。信号処理回路25は、パルス信号に連動して開閉される同期検波251を介してピックアップコイル213の誘起電圧を取り出し、増幅器253により所定の増幅率で増幅する回路である。この信号処理回路25で増幅された信号がセンサ信号として外部に出力される。
磁気センサ2の仕様の一部を表2に示す。
Figure 2017224236
この磁気センサ2は、磁束密度の測定レンジが±0.6mTであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02μTという高感度のセンサである。このような高感度は、アモルファスワイヤ211のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するというMI効果を利用するMI素子21により実現されている。さらに、この磁気センサ2は、3kHz周期での高速サンプリングが可能であり車両の高速走行にも対応している。
次に、本例の磁気マーカ1の鉛直方向の磁界分布について図4を参照して説明する。同図は、有限要素法を用いた軸対称3次元静磁場解析によるシミュレーション結果を示す片対数グラフである。同図では、鉛直方向に作用する磁気の磁束密度の対数目盛を縦軸に設定し、磁気マーカ1の表面を基準とした鉛直方向の高さ(マーカ表面からの高さ)を横軸に設定している。同図中、マーカ表面からの高さ=0mmのときの磁束密度が「表面の磁束密度Gs」となり、マーカ表面からの高さ=250mmのときの磁束密度が「高さ250mmの位置の磁束密度Gh」となる。
図4から知られるように磁気マーカ1は、磁気センサ2の取付け高さとして想定する範囲100〜250mmにおいて8μT(8×10−6T)以上の磁束密度の磁気を作用できる。磁束密度8μTの磁気が作用する場合には、磁束分解能が0.02μT(表2参照。)の磁気センサ2を用いて確実性高く磁気マーカ1を検出可能である。
本例の磁気マーカ1では、磁気センサ2で検出可能な磁気特性を確保しながら、表面の磁束密度Gsを45mTに抑えている。上記のように、この45mTの磁束密度は、例えばホワイトボードや冷蔵庫の扉等に貼り付けるマグネットシート表面の磁束密度と同等以下であるため、道路上の釘やボルト等の金属物を引き寄せて吸着するおそれが極めて少なくなっている。
なお、磁気マーカ1の表面を基準とした高さ250mmの位置における磁束密度Ghは、0.5μT以上であれば良い。高さ250mmの位置で0.5μT以上の磁束密度Ghの磁気を作用する磁気マーカ1であれば、例えば0.01〜0.02μT程度の磁束分解能を有するマグネトインピーダンス素子を利用した磁気センサであるMIセンサや、フラックスゲートセンサや、TMR型センサなどの高感度なセンサを利用して確実性高く検出できる。なお、磁束密度Ghは、鉛直方向の磁気の磁束密度であっても良いし、他の方向であっても良い。
磁気マーカ1について、高さ250mmmの位置における磁束密度Ghを0.5μT程度に設定すれば、表面の磁束密度Gsは数mT程度に抑制できる。数mTの磁束密度は、事務用のラバーマグネットの磁力よりも弱い微弱な磁力であり、道路上の金属製のゴミ等を吸着するおそれがほとんどない。
なお、指向性の高いMI素子を利用する磁気センサを採用する際、磁気の検出方向毎に1つずつMI素子を設けると良い。鉛直方向の磁気成分のみを検出するのであればMI素子を1つ設ければ足りるが、3次元方向に対応してそれぞれMI素子を設けることも良い。3次元方向にそれぞれMI素子を設ければ磁気マーカから生じる磁気成分を3次元的に検出できる。例えば路面53の鉛直方向の磁気を検出するMI素子と、車両5の進行方向の磁気を検出するMI素子と、車両の左右方向の磁気を検出するMI素子と、を設けることも良い。車両の進行方向の磁気を検出すれば、例えば磁気方向の正負逆転を検知することで、車両の進行方向における磁気マーカの位置を精度高く計測できる。
MI素子を複数設ける場合、パルス回路や信号処理回路を各MI素子毎に個別に設けずに例えば時分割で共用することも良い。回路を共用できれば、磁気センサの小型化、低コスト化を実現し易くなる。
車両の左右方向に沿って複数の磁気センサを配設することも良い。各磁気センサが検出した磁気分布のピークを検出することで、磁気マーカの左右方向の相対位置を判断することも良い。
磁気センサとしてMI素子を用いたMIセンサを例示したが、これに代えて、フラックスゲートセンサ、TMR型センサを磁気センサとして採用することもできる。2個以上の磁気センサを利用する場合には、MIセンサ、フラックスゲートセンサ、TMR型センサのうちの2種類以上を組み合わせて採用することもできる。マグネトインピーダンスセンサ、フラックスゲートセンサ、TMR型センサは、いずれも高感度で磁気を検出可能な磁気センサとして知られている。これらのうちの少なくとも1種類の磁気センサを用いるマーカシステムであれば、表面の磁束密度Gsを低く抑えた磁気マーカとの組み合わせにおいて、その磁気マーカが発生する磁気を確実性高く検出可能である。
磁気マーカを構成する磁石シートの磁性材料や磁石の種類は、本例には限定されない。磁性材料や磁石の種類としては、様々な材料や種類を採用できる。磁気マーカに要求される磁気的仕様や環境仕様等に応じて、適切な磁性材料や種類を選択的に決定するのが良い。磁性材料としては、フェライト等酸化しても磁気特性の劣化が起こり難い材料を採用すると良い。磁石としては、焼結磁石、プラスチック磁石、ゴム磁石、ラバー磁石等を採用できる。
磁気マーカ1の断面形状について、本例では円形を例示したが、これに代えて、四角形、三角形、五角形等の多角形の断面形状を採用しても良い。
本例のフェライトラバーマグネットなど高分子材料中に磁粉を分散させた磁石である磁気マーカ1であれば、道路の熱膨張や熱収縮等による孔530の変形を吸収でき耐久性が高くなっている。また、再舗装などの路面53の修復作業時には、舗装材料などの廃棄物と一緒に廃棄処分が可能である。磁気マーカ1の基材をなす高分子材料としては、本例のラバーに代えて樹脂材料等を採用することも良い。
なお、本例のコンピュータシミュレーションは、一部のシミュレーション条件下の実証実験によりシミュレーション精度を予め確認している。また、磁気マーカ1については、コンピュータシミュレーションの結果に近い磁気特性が得られることを実証実験により確認している。
(実施例2)
本例は、磁気マーカ1の施工作業の例である。この内容について、図5〜図13を参照して説明する。以下、磁気マーカ1の施工作業として、(1)敷設、(2)脱磁・着磁、について説明する。
(1)敷設
磁気マーカ1を敷設する作業として、例えば、図5、図6、図8の3種類の敷設作業を例示する。図5の敷設作業では、まず、ドリル等を利用して路面53に直径20mm、深さ30mmの孔530を設ける。一般的に、路面の表面側は、約60mm厚のアスファルト層で形成されているため、30mm深さの孔であれば比較的容易に穿孔可能である。この孔530に対して、予め外周面に接着材料を塗布した磁気マーカ1を圧入すれば、その後の接着材料の硬化により磁気マーカ1を孔530内に確実性高く固定できる。
図6の敷設作業では、孔530の周囲をバーナ等で加熱して路面53をなすアスファルト等の舗装材料を軟化させた後、直径20mmの磁気マーカ1を孔530に圧入する。軟化した半溶融状態の舗装材料が磁気マーカ1の周囲に付着して硬化し、これにより磁気マーカ1が孔530内に確実性高く固定される。この場合には、舗装材料であるアスファルトが接着材料として機能する。
なお、図6の敷設作業では、高さ30mmの磁気マーカ1に対して孔530の深さを40mmとしている。磁気マーカ1を孔530の底に到達するまで圧入すれば、磁気マーカ1が路面53から僅かに奥まった状態となる。この凹みに対して蓋531を嵌めこむことも良い(図7)。蓋531は、樹脂製や金属製やアスファルト製等の蓋を採用できる。樹脂製や金属製の蓋であれば、磁気マーカ1の敷設箇所の目印としても有用である。舗装材料を円板状に成型した蓋を採用し、周囲の温度が高い状態で蓋を嵌めことで周囲と一体化させることも良いし、凹みに溶融状態の舗装材料を充填して蓋を形成することも良い。蓋を設ける構成は、孔530の穿孔深さを深くすれば図5の敷設作業にも適用できる。
図8の敷設作業では、直径30mmの孔530に対して、硬化前の接着材料を充填した後、磁気マーカ1を押し込むように孔530に収容している。磁気マーカ1を押し込むと、磁気マーカ1により押し出された接着材料が外周側を経由して上面側に回り込んで蓋を形成する。接着材料は、エポキシ系接着剤、シリコンゴム系接着剤等の接着材料でも良いが、舗装材料であるアスファルト等を接着材料として利用しても良い。アスファルトを利用する場合には、周囲の路面53との一体化を図ることができる。
また、図9〜図13のごとく、磁気マーカ1の外周に抜け止め構造を設けることも良い。抜け止め構造を設ければ、孔530からの引き抜きによる磁気マーカ1の脱落を少なくできる。抜け止め構造としては、例えば図9のように外周側に凸形状をなす環状部等がある。この凸形状の断面形状は、孔530からの引き抜き方向に向かって外周側への張り出し量が次第に大きくなり棚面状の段差を形成している。このような凸形状は、磁気マーカ1に引き抜き方向の力が作用したとき、脱落を防止するために有効に作用する。一方、引き抜き方向とは逆向きの挿入方向では、凸形状の外周側への張り出し量が次第に小さくなっているので、磁気マーカ1を孔530に圧入等する際の挿入抵抗が過大となるおそれが少ない。
磁気マーカ1の高さ方向の中間的な位置に図10のようなくびれを設けることも良い。磁気マーカ1を埋設した場合、このくびれに舗装材料や接着材料が入り込んだ状態で硬化するため、磁気マーカ1が脱落し難くなる。
さらに、磁気マーカ1の挿入方向の先端側に、図11〜図13のように突出形状のアンカーを設けることも良い。アンカーは、木の根のように作用し、磁気マーカ1の脱落を防止する。アンカーの先端を矢印形状に形成することも良い(図12参照。)。アンカーを末広がりの二股、三股形状に形成することも良い(図13参照。)。
(2)脱磁・着磁
フェライトラバーマグネットである磁気マーカ1は、路面53の表面側から外部磁界を作用することで、磁力を発生しないようにする脱磁(消磁)や、特定の磁極性を呈するように磁化する着磁等の作業を容易に実施可能である。
例えば、多車線の道路において、特定の車線に車両が誘導されないようにその車線の磁気マーカ1を脱磁することが可能である。また、例えば、路面53の再舗装の作業を行う際、脱磁を施してから古い舗装の剥ぎ取り等を行うことも良い。磁気マーカ1の磁力は微弱であるため、脱磁することなく古い舗装材料等と共にそのまま廃棄することも可能であるが、予め磁気マーカ1を脱磁すれば処分の際の磁気的な問題を完全に近く防止できる。
車線に応じて磁気マーカ1の磁極性を異ならせたり、特定箇所であるか否かにより磁気マーカ1の磁極性を異ならせる運用を行うような場合、車線の変更や特定箇所の位置的な変更に応じて磁気マーカ1の磁極性を切り替えるための着磁作業を実施すると良い。
本例では、直径20mmの柱状の磁気マーカについて敷設等の施工作業を例示している。直径50mm以下の柱状の磁気マーカであれば、比較的小さな孔を路面に設ければ良いので、本例と同様、簡単で低コストな施工作業を採用できる。より好ましくは、直径300mm以下の柱状であると良い。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
(実施例3)
本例は、実施例1、2の磁気マーカ1に基づいて、磁石の基材を変更すると共に、外周に保護層を設けた例である。
本例の磁気マーカは、高分子材料であるアスファルト(舗装材料)を基材として酸化鉄の磁粉を分散させた磁石である。また、外周面には、アスファルトを含浸させたガラス繊維よりなる複合材料による保護層が形成されている。
アスファルトを基材とした磁石である本例の磁気マーカは、孔に収容したときに周囲のアスファルトになじみ易い。一方、磁気マーカの外周をなす保護層は、ガラス繊維を含んで構成されているため、磁粉が周囲に流出するおそれを抑制する。
なお、実施例1と同様の基材を採用する一方、樹脂材料をガラス繊維等に含浸させた保護層を採用することも良い。
その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
(実施例4)
本例は、実施例1〜3の磁気マーカに、情報提供手段としてのRFIDタグ15を設けた例である。この内容について、図14及び図15を参照して説明する。
本例の磁気マーカ1は、実施例1と同様の組成の磁石を直径30mm、高さ11mmの円柱状に成形したマーカである。この磁気マーカ1では、シート状のRFIDタグ(Radio Frequency IDentification、無線タグ)15が一方の端面に積層されている(図14)。RFIDタグ15を備える本例の磁気マーカ1は、車両側で磁気的に検出可能であるのに加え、磁気的な方法に依らずに各種の情報を車両側に提供可能である。
情報提供手段の一例をなすRFIDタグ15は、図14のごとく、22mm×10mmの矩形シート状部材であるタグシート150の表面にICチップ157を実装した厚さ0.5mm程度の電子部品である。RFIDタグ15は、外部から無線伝送により供給された電力により動作し、ICチップ157が記憶する情報を無線で送信する。
タグシート150は、PETフィルムから切り出したシート状部材である。タグシート150の表面には、銀ペーストよりなる導電性インクの印刷パターンであるループコイルパターン151及びアンテナパターン153が形成されている。ループコイルパターン151及びアンテナパターン153は、それぞれ1箇所において切り欠きを有する略環状を呈し、ICチップ157を配設するためのチップ配設領域(図示略)が切り欠き部分に形成されている。タグシート150にICチップ157を接合すると、各パターン151、153がICチップ157と電気的に接続される。
ループコイルパターン151は、図14及び図15のごとく、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する受電コイル152をなすパターンである。アンテナパターン153は、情報を無線送信する送信アンテナ154をなすパターンである。ループコイルパターン151がなす受電コイル152及びアンテナパターン153がなす送信アンテナ154は、いずれも、その形成面の鉛直方向に感度を有しており、車両の底面である車体フロアに取り付けたタグリーダ3との通信等に適している。なお、各パターン151、153を印刷するための導電性インクとしては、銀ペーストのほか、黒鉛ペースト、塩化銀ペースト、銅ペースト、ニッケルペースト等を利用することができる。さらに、銅エッチング等により各パターン151、153を形成することも可能である。
ICチップ157(図14)は、メモリ手段であるROM及びRAM等を含む半導体素子158をシート状の基材159の表面に実装した電子部品である。RFIDタグ15は、このICチップ157を上記のタグシート150の表面に貼り付けて作製される。図示しない電極を設けたインターポーザ型のICチップ157の貼り付けには、導電性の接着剤のほか、超音波接合やカシメ接合など様々な接合方法を採用できる。なお、RFIDタグ15の電気的な構成については、図15のブロック図を参照して後で説明する。
RFIDタグ15のタグシート150やICチップ157の基材159としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂フィルムや、紙などを採用できる。さらにまた、上記ICチップ157としては、半導体素子そのものであっても良く、半導体素子をプラスチック樹脂等によりパッケージングしたチップであっても良い。
本例の磁気マーカ1は、例えば、RFIDタグ15を積層した端面が車両側とは反対側、すなわち孔の底側に位置するように敷設される。フェライトラバーマグネットである磁気マーカ1は、RFIDタグ15の受電、通信に影響を与える度合いが少なく、裏面側にRFIDタグ15を配置することが可能である。これに代えて、RFIDタグ15を積層した端面が車両フロアに対面するように磁気マーカ1を敷設しても良く、インサート成形等により磁気マーカ1の内部にRFIDタグ15を設けることも良い。
本例の磁気マーカ1に対応する車両は、磁気マーカ1を磁気的に検出する磁気センサ(図1中の符号2)に加えて、磁気マーカ1のRFIDタグ15から情報を取得するタグリーダ3(図15)を備えている。
情報取得手段の一例をなすタグリーダ3は、磁気マーカ1が備えるRFIDタグ15に対して電力を供給する電力供給部31と、RFIDタグ15が無線送信する情報を取得する情報取得部33と、を含んで構成されている。電力供給部31は、ループコイル310に電流を供給して磁界を発生させ、電磁誘導により電力を伝送する電子回路である。情報取得部33は、ループアンテナ330を利用してRFIDタグ15が送信する電波を受信し、復調により情報を取り出す電子回路である。
タグリーダ3は、ループコイル310が発生する磁界による電磁誘導によりRFIDタグ15側の受電コイル152に励磁電流を生じさせることで電力を伝送し、RFIDタグ15側の受電部155に電力を蓄えさせる。RFIDタグ15側では、受電部155から電力の供給を受けて無線送信部156が動作し、送信アンテナ154を介して各種の情報を車両側に送信する。また、データ書込み機能を備えたリーダライタを車載する専用の作業車両であれば、新たな情報のRAMへの書き込みやデータの書き換え等を実行可能である。
RFIDタグ15を備える本例の磁気マーカ1であれば、車両側に様々な情報を提供可能である。車両側に提供する情報としては、例えば以下の(1)位置情報、(2)高さ情報、(3)交通情報等を例示できる。なお、磁気マーカ1の磁気的な検出によれば、磁気マーカ1の有無、磁気マーカ1を通過する際の車両の車幅方向のオフセット量(ずれ量)等の情報を取得でき、これらの情報は、車線逸脱警報や自動操舵や車線逸脱回避制御や自動運転などの各種の運転支援に適用可能である。
(1)2次元的な位置情報
位置情報を車両側に提供すれば、例えばGPS(Global Positioning System)などの測位手段によらずに正確な位置情報を車両側で取得でき、ナビゲーションシステムを実現できる。車両の進行方向において隣合う磁気マーカ1の間隙に車両が位置するときには、車速やヨーレートなどの計測値を利用した自律航法により車両位置を推定し、磁気マーカ1を通過する毎に正確な位置を取得すると良い。
GPSなどの測位手段を有するナビゲーションシステムとの組み合わせも有効である。トンネルやビルの谷間などGPS電波が受信不可能であったり不安定に陥り易い箇所に、位置情報を提供可能な磁気マーカ1を敷設しておけば、GPS電波の不良な受信状態をバックアップできナビゲーションシステムによる位置捕捉精度を向上できる。
(2)高さ情報(3次元的な位置情報)
例えば、ショッピングセンタなどの自走式立体駐車場などの通路に磁気マーカ1を敷設しておき、階数などの高さ情報を車両側に提供することも良い。例えばGPS等の測位手段によっては建物内の階数の特定が容易ではなく、仮にインフラ側から階数の指定付きの空き枠情報の提供があっても、その空き枠への経路案内を精度高く行うことは難しい。磁気マーカ1から階数情報を提供すれば、自走式立体駐車場内での空き枠への精度の高い路案内を実現できる。
(3)交通情報
交差点の情報や、分岐路の情報や、合流路の情報などの交通情報を車両側に提供することも良い。例えば、交差点や分岐路や合流路など道路(走行路)上の特徴あるポイントに磁気マーカ1を設置し、対応する道路形状の種別の情報を磁気マーカ1側から提供すると良い。交通情報を利用する運転支援としては、運転者に注意を促す表示や警報音等による交通情報の提示や、ブレーキ制御やステアリング制御等の各種の運転支援制御がある。例えば交差点の停止線と磁気マーカ1との距離が規定されていれば、停止線に停止させるためのブレーキ制御を精度高く実行できる。また、例えば分岐路の開始位置と磁気マーカ1との距離が規定されていれば、分岐路で分岐させるための運転支援制御を精度高く実行できる。なお、交差点や分岐路と磁気マーカ1との距離の情報を、RFIDタグ15からの送信情報に含めることも良い。
RFIDタグとして、暗号鍵を用いて読み出しできる暗号化された情報を提供する無線タグを採用することも良い。暗号鍵を所持する特定の車両に対して選択的に情報を提供できる。
なお、その他の構成及び作用効果については、他の実施例と同様である。
(実施例5)
本例は、断面の大きさに対する高さの比率が異なる様々な磁気マーカの例である。この内容について、図16を参照して説明する。
例示する磁気マーカは、直径20mmを含めて20〜100mmまでの4種類の直径の磁石である一方、組成は共通している。各磁気マーカは、直径の違いに関わらず250mm高さの磁束密度Ghが8μTとなるように高さが設定されている。これらの磁気マーカについての鉛直方向の磁界分布は、図16に例示するシミュレーションの通りである。
図16のグラフにおける凡例中の例えばφ20H28の表記は、直径20mm高さ28mmの磁気マーカであることを示している。このグラフは、図4と同様の片対数グラフである。同図によれば、大径の磁気マーカほど、表面の磁束密度Gsを抑制できることがわかる。例えば、表面の磁束密度Gsの比較では、直径20mm高さ28mmの磁石のGs=45mTに対して、直径100mm厚さ1mmの磁石ではGs=1mTとなっている。
直径100mmの磁気マーカは、その高さ(厚さ)が1mmである。このようなシート状の磁気マーカであれば、路面53に貼り付けて敷設することも可能である。貼り付け等により表面に設置すれば取り外し作業も極めて容易である。路面53の表面への設置の場合には、図17のごとく、磁気マーカ1の外周に樹脂モールドによる保護層12を設けることも良い。樹脂モールドによる保護層12は、ガラス繊維等により強化された複合材料によるモールド層であっても良い。さらに、磁気マーカ1の表面あるいは裏面にRFIDタグを積層することも良い。
シート状の磁気マーカを路面53に固定する方法としては、例えば、接着機能を備える材料等による接着接合や、ピン等を路面53に打ち込んで固定する方法等がある。磁気マーカ1の形状については、円形状に代えて、三角形や四角形や六角形などの多角形状であっても良く、長方形状であっても良く、2つの長方形状を交差させたような十字形状等であっても良い。また、着磁前の磁性材料を路面53の表面側に積層あるいは塗布しておき、所定範囲を着磁することで本例と同等の磁気マーカを形成することも良い。例えば磁性材料を含む塗料を塗布したラインを車線の中央に沿ってプリントした後、ラインの所定位置を着磁することも良い。
例えば耐久性が要求される高速道路や、除雪車による除雪作業が行われる道路等については、耐久性を確保できるように埋設型の磁気マーカの敷設方法を採用すると良い。一方、構造上、穿孔が難しい場所や、路面にダメージを与える作業が実施される可能性が低い立体駐車場など建物内の通路や、設置場所を変更、移動させる必要がある場所や運用等では、表面設置(載置)型の磁気マーカの敷設方法を採用すると良い。埋設型の敷設方法には柱状の磁気マーカが好適であり、表面設置型の敷設方法にはシート状の磁気マーカが適している。設置場所の変更や移動の必要がある運用等としては、工事等による通行止め時の迂回路や、図18のような車線551の封鎖箇所550を回避するための誘導経路55などがある。シート状の磁気マーカ1を表面に設置する敷設方法であれば、一時的に設定された迂回路等への敷設や取り外しが極めて容易である。なお、一時的に設定された迂回路や誘導経路に敷設する磁気マーカについては、常設の磁気マーカとは極性を異ならせることも良い。この場合には、車両側で、常設の磁気マーカとの区別が容易となり、一時的な誘導経路等の検出が容易となる。
アスファルト層に孔を設けることは比較的容易である一方、アスファルト層の下層をなす砂利等の層に到達する孔を設けることは高コストである。さらに、舗装面の修復作業により舗装を剥がす深さよりも磁気マーカが深く埋設されていると、修復作業時に磁気マーカの破片が残ってしまうおそれがある。そこで、高速道路や市道など道路の種類に応じて差があるアスファルト層の厚さ等に応じて、磁気マーカの断面の大きさに対する高さの比率を変更することも良い。また、交通量など、磁気マーカに要求される耐久性に応じた上記の比率を変更することも良い。
なお、その他の構成及び作用効果については、他の実施例と同様である。
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
1 磁気マーカ
1S マーカシステム
15 RFIDタグ(情報提供手段)
2 磁気センサ
21 MI素子
211 アモルファスワイヤ(感磁体)
213 ピックアップコイル
3 タグリーダ
5 車両
50 車体フロア(底面)
53 路面
530 孔

Claims (16)

  1. 車両が備える磁気センサで検出できるように道路に敷設され、運転を支援するための車両側の運転支援制御に供する磁気マーカであって、
    磁性材料の粉末である磁粉を含めて柱状に成形された磁石である磁気マーカ。
  2. 請求項1において、前記磁石は、基材をなす高分子材料中に前記磁粉を分散させた成形品である磁気マーカ。
  3. 請求項1又は2において、直径50mm以下の柱状の磁石である磁気マーカ。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、孔に収容されたときの引き抜き方向の脱落を防止するための抜止め構造を備えている磁気マーカ。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、前記磁石の外周面の全部又は一部には、少なくとも繊維を含む保護層が形成されている磁気マーカ。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において、無線通信により車両側に情報を提供する情報提供手段を備えている磁気マーカ。
  7. 請求項6において、前記情報提供手段は、暗号鍵を用いて読み出しできる暗号化された情報を提供する手段である磁気マーカ。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項において、敷設状態で脱磁及び着磁が可能である磁気マーカ。
  9. 車両が備える磁気センサで検出できるように道路に敷設された磁気マーカを含み、運転を支援するための車両側の運転支援制御に供するマーカシステムであって、
    請求項1〜8のいずれか1項に記載された柱状の磁気マーカを含むマーカシステム。
  10. 請求項9において、前記柱状の磁気マーカが路面に穿設された孔に収容された状態で敷設されているマーカシステム。
  11. 請求項10において、前記柱状の磁気マーカは、路面に対して面一、あるいは路面よりも奥まった状態で孔に収容されているマーカシステム。
  12. 請求項10において、前記柱状の磁気マーカは、路面よりも奥まった状態で孔に収容され、当該孔には蓋が設けられているマーカシステム。
  13. 請求項9〜12のいずれか1項において、磁気マーカとしては、断面の大きさに対する高さの比率が相違する複数種類の磁気マーカが含まれているマーカシステム。
  14. 請求項9〜13のいずれか1項において、磁性材料の粉末である磁粉を含めてシート状に形成された磁石であるシート状の磁気マーカを含み、当該シート状の磁気マーカが路面の表面に設置されているマーカシステム。
  15. 請求項14において、一時的に進入が規制された領域への車両の進入を回避するために一時的に設定された迂回路、あるいは車両を誘導するように一時的に設定された誘導経路には、前記シート状の磁気マーカが敷設されるマーカシステム。
  16. 請求項9〜15のいずれか1項において、前記磁気センサは、マグネトインピーダンスセンサ、フラックスゲートセンサ、TMR型センサのうちの少なくともいずれかであるマーカシステム。
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