以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態によるフラックスゲートセンサを示している。図1において、本発明の第1の実施形態によるフラックスゲートセンサ1は、例えば導線101を流れる被検出電流の大きさ(振幅または変化量)および向きを検出する電流センサとして用いることができる。フラックスゲートセンサ1は、コア11と、コア11に巻回された第1のコイルとしての励磁コイル12と、コア11に巻回された第2のコイルとしての検出コイル13と、励磁コイル12に励磁信号を印加する励磁手段としての励磁回路14と、検出コイル13を流れる電流を検出信号として出力する検出信号出力手段としての検出回路15と、検出回路15から出力された検出信号に対して所定の信号処理を行い、導線101を流れる被検出電流の大きさおよび向きを示す出力パルス信号を出力する信号処理回路16とを備えている。なお、検出回路15および信号処理回路16は検出手段の具体例である。
図2はコア11の磁気特性を示すB−H曲線を示している。図2に示すように、コア11の磁気特性はヒステリシスを有する。また、コア11において、磁界の強さが正方向において増加して一定値Haに達したときに磁束密度が飽和磁束密度Baとなり、コア11が図2中の点P1で飽和する。また、コア11が点P1で飽和した後、磁界の強さが正方向において減少し、ゼロに達した後、負方向において増加し、これによりコア11がいったん点P2で非飽和となってから点P3で飽和するまでの間、磁界の強さと磁束密度との関係が線形であり、磁界の強さの変化に比例して磁束密度が変化する。それゆえ、図2中のB−H曲線において点P2から点P3までの間は傾きを有する直線である。また、コア11において、磁界の強さが一定値−Haに達したときに磁束密度が飽和磁束密度−Baとなり、コア11が図2中の点P3で飽和する。また、コア11が点P3で飽和した後、磁界の強さが負方向において減少し、ゼロに達した後、正方向において増加し、これによりコア11がいったん点P4で非飽和となってから点P1で飽和するまでの間においても、磁界の強さと磁束密度との関係が線形であり、それゆえ、図2中のB−H曲線において点P4から点P1までの間は傾きを有する直線である。
なお、磁界の強さが一定値に達したときに、磁束密度が正側(負側)の飽和磁束密度から負側(正側)の飽和磁束密度へ瞬時に変化する磁気特性を有するコアを、コア11として利用することも可能であるが、図2に示すように、磁界の強さが一定の区間P2−P3(P4−P1)で変化する間において、磁束密度が正側(負側)の飽和磁束密度Ba(−Ba)から負側(正側)の飽和磁束密度Ba(Ba)へ磁界の強さに比例して漸次変化する磁気特性を有するコアを、コア11として利用することもできる。
コア11は、図2に示すような磁気特性を有する磁性材料、例えばアモルファス金属により形成されている。また、コア11は、図1に示すように、真円の円形であり環状であることが望ましいが、楕円形の環状、あるいは陸上競技が行われるトラックのように互いに平行な2本の直線とそれらをつなぐ2本の曲線とを有する形状でもよい。また、製造の容易性を考慮してコア11を四角形の環状とすることもできる。また、被検出電流が流れる導線101がコア11の中心を貫くように、コア11と導線101との位置関係が設定されている。
一方、図1に示すように、励磁コイル12は、コア11に電線を巻回することにより形成されている。また、励磁コイル12は励磁回路14に接続されている。図1では、説明の便宜上、励磁コイル12がコア11の周方向の一部にのみ巻回されている。このような巻回の仕方も採用することができるが、励磁コイル12はコア11の全周にわたって巻回することが望ましい。
また、検出コイル13も、コア11に電線を巻回することにより形成されている。また、検出コイル13は検出回路15に接続されている。検出コイル13も、コア11の周方向の一部にのみ巻回してもよいが、コア11の全周にわたって巻回することが望ましい。
励磁回路14は、励磁信号を励磁コイル12に印加する回路であり、例えば、励磁信号を生成する発振回路と、発振回路により生成された励磁信号を電流増幅する電流増幅回路とを備えている。励磁信号は、交流信号であり、各ピーク時における電流の大きさがコア11を飽和する電流の大きさを超える信号である。また、励磁信号は、連続する2つのピーク間における電流の変化が1次変化(リニア)であることが望ましく、具体的には三角波であることが望ましい。
検出回路15は、励磁信号の印加により検出コイル13に生じる誘導起電力を示す信号を検出信号として出力する回路である。検出回路15のもっとも単純な構成は、例えば、検出コイル13の端部に抵抗を接続することにより実現することができる。当該抵抗の両端の電圧を取り出すことで、励磁信号の印加により検出コイル13を流れる電流に比例して電圧が変化する検出信号を得ることができる。
信号処理回路16は、検出回路15から出力された検出信号に対して所定の信号処理を施すことにより、励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点とコア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差に対応するパルス幅を有する出力パルス信号を生成する回路である。後述するように、励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点とコア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差は、導線101を流れる被検出電流の大きさおよび向きに応じて変化する。この結果、出力パルス信号のパルス幅は、導線101を流れる被検出電流の大きさおよび向きを示す。信号処理回路16の具体的な構成および具体的な動作については、後に図3を参照しながら説明する。
図3は、フラックスゲートセンサ1において、導線101に被検出電流が流れておらず外部磁界が生じていない場合のコア11の磁界の強さ、検出信号の電圧および出力パルス信号のレベルを示すタイミングチャートである。
図3において、コア11に励磁信号を印加すると、励磁信号に応じてコア11における磁界の強さが特性線S1のように変化する。このとき、コア11における磁界の強さは励磁信号の電流の大きさに比例する。励磁信号は三角波なので、コア11における磁界の強さも三角波を描くように変化する。また、励磁信号において各ピーク時における電流の大きさがコア11を飽和する電流の大きさを超える。このため、励磁信号の印加によりコア11は次に述べるように飽和、非飽和を繰り返す。
すなわち、図3において、時点t0から時点t1に達する直前までの間、励磁信号においてその三角波の波形に沿って電流が正方向において増加すると、これに応じて磁界の強さが正方向において増加する。そして、時点t1において磁界の強さが一定値Haに達すると、コア11が飽和する。
続いて、時点t1から時点t2に達する直前までの間、励磁信号において電流が正方向においてさらに増加し、ピークに達した後、正方向において減少すると、これに応じ、磁界の強さも正方向において増加し、ピークに達した後、正方向において減少する。そして、時点t2において磁界の強さが一定値Haに達したとき、コア11が非飽和の状態となる。
続いて、時点t2から時点t3に達する直前までの間、励磁信号において電流が正方向においてさらに減少し、ゼロに達した後、負方向において増加すると、これに応じ、磁界の強さも正方向において減少し、ゼロに達した後、負方向において増加する。そして、時点t3において磁界の強さが一定値−Haに達したとき、コア11が飽和する。
続いて、時点t3から時点t4に達する直前までの間、励磁信号において電流が負方向においてさらに増加し、ピークに達した後、負方向において減少すると、これに応じ、磁界の強さも負方向において増加し、ピークに達した後、負方向において減少する。そして、時点t4において磁界の強さが一定値−Haに達したとき、コア11が非飽和の状態となる。
続いて、時点t4から時点t5に達する直前までの間、励磁信号において電流が負方向においてさらに減少し、ゼロに達した後、正方向において増加すると、これに応じ、磁界の強さも負方向において減少し、ゼロに達した後、正方向において増加する。続いて、時点t5から時点t8までの間およびそれ以降においても、時点t1から時点t4までの間と同様に、コア11の飽和、非飽和が繰り返される。
図3において、コア11における磁界の強さが特性線S1のように変化すると、これに応じて、検出コイル13に流れる電流の大きさが変化し、この結果、検出回路15から検出信号S2の電圧が変化する。
すなわち、時点t0から時点t1に達する直前までの間、磁界の強さの増加に伴って検出信号S2の電圧が増加する。そして、時点t1においてコア11が飽和したとき、コア11の飽和により検出コイル13に電流が流れなくなるので、検出信号S2の電圧がゼロになる。しかも、コア11は磁界の強さが一定値Haに達した時点で直ちに飽和するので、時点t1で磁界の強さが一定値Haに達すると、検出コイル13に直ちに電流が流れなくなり、検出信号S2の電圧が直ちにゼロになる。この結果、時点t1における検出信号S2の波形は、時間軸に対して垂直となる。
続いて、時点t1から時点t2に達する直前までの間は、コア11が飽和しているので、検出信号S2の電圧はゼロを維持する。続いて、時点t2から時点t3に達する直前までの間は、コア11が非飽和の状態であるので、磁界の強さが正方向において減少し、ゼロに達した後、負方向において増加するのに伴って、検出信号S2の電圧は負方向に増加する。そして、時点t3においてコア11が飽和したとき、コア11の飽和により検出コイル13に電流が流れなくなるので、検出信号S2の電圧がゼロになる。しかも、コア11は磁界の強さが一定値−Haに達した時点で直ちに飽和するので、時点t3で磁界の強さが一定値−Haに達すると、検出コイル13に直ちに電流が流れなくなり、検出信号S2の電圧が直ちにゼロになる。この結果、時点t3における検出信号S2の波形は、時間軸に対して垂直となる。
続いて、時点t3から時点t4に達する直前までの間は、コア11が飽和しているので、検出信号S2の電圧はゼロを維持する。続いて、時点t4から時点t5に達する直前までの間は、コア11が非飽和の状態であるので、磁界の強さが負方向において減少し、ゼロに達した後、正方向において増加するのに伴って、検出信号S2の電圧は正方向に増加する。続いて、時点t5から時点t8までの間およびそれ以降においても、時点t1から時点t4までの間と同様に検出信号の電圧が変化する。
信号処理回路16は、上述したように、検出信号S2に対して所定の信号処理を施すことにより、励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点とコア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差に対応したパルス幅を有する出力パルス信号S3を生成する。これについて図3を参照しながら具体的に説明すると、図3において、励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点は、例えば時点t1であり、この場合、コア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点は時点t3である。時点t1において、検出信号S2は正側においてピークに達し、直ちにピークからゼロレベル(振幅の中間)に向かって変化する。また、時点t3において、検出信号S2は負側においてピークに達し、ピークからゼロレベル(振幅の中間)に向かって変化する。
そこで、信号処理回路16は、検出信号S2が正側においてピークに達し、直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する間に、検出信号S2の電圧が基準電圧Vrに達する点(検出点)Dpを検出する。検出点Dpの検出は、例えば、信号処理回路16中に比較回路を設け、検出信号S2の電圧と基準電圧Vrとを当該比較回路により比較することにより実現することができる。
また、信号処理回路16は、検出信号S2が負側においてピークに達し、直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する間に、検出信号S2の電圧が基準電圧−Vrに達する点(検出点)Dnを検出する。検出点Dnの検出は、例えば、信号処理回路16中にもう1つ比較回路を設け、検出信号S2の電圧と基準電圧−Vrとを当該比較回路により比較することにより実現することができる。
さらに、信号処理回路16は、上記検出点Dpの時点において立ち上がり、検出点Dnの時点において立ち下がる出力パルス信号S3を生成する。出力パルス信号S3において、立ち上がりから立ち下がりまでの時間、すなわち出力パルス信号S3におけるパルス幅Wが、励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点とコア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差に対応する。出力パルス信号S3の生成は、例えば、信号処理回路16中にフリップフロップ回路を設け、上記2つの比較回路の出力を当該フリップフロップ回路に入力して処理することにより生成することができる。
そして、信号処理回路16により生成された出力パルス信号S3が、フラックスゲートセンサ1の最終的な出力信号として出力される。なお、信号処理回路16に直流変換回路を設け、出力パルス信号S3のパルス幅Wまたはパルスデューティ比に対応する電圧を有する直流信号を生成し、この直流信号をフラックスゲートセンサ1の最終的な出力信号として出力してもよい。
図4は、フラックスゲートセンサ1において、導線101に被検出電流が流れ、これにより外部磁界が生じている場合のコア11の磁界の強さ、検出信号の電圧および出力パルス信号のレベルを示すタイミングチャートである。
図4において、励磁信号の印加によりコア11における磁界の強さが三角波を描くように変化している間に、導線101に被検出電流が流れ、これにより外部磁界が生じると、コア11において、励磁信号の印加による磁界の強さに外部磁界の強さが加わる。この結果、コア11における磁界の強さを示す特性線S1が、導線101を流れる被検出電流の大きさおよび向きに応じて正方向(上方向)または負方向(下方向)にシフトする。図4は、導線101に被検出電流が流れて外部磁界が生じたことにより、コア11における磁界の強さを示す特性線S1が負方向にシフトした状態を示している。
コア11における磁界の強さを示す特性線S1が負方向にシフトすると、コア11が飽和するタイミングが変化する。コア11が飽和するタイミングが変化すると、例えば、検出信号S2の正側においてピークに達して直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する時点が、図3中の時点t1から図4中の時点t11に変化する。また、検出信号S2の負側においてピークに達してピークからゼロレベルに向かって変化する時点が、図3中の時点t3から図4中の時点t13に変化する。この結果、検出点DpおよびDnのタイミングがそれぞれ変化するので、出力パルス信号S3のパルス幅Wが変化する。出力パルス信号S3のパルス幅Wの変化量および変化の方向は、コア11における磁界の強さを示す特性線S1のシフト量およびシフト方向に対応し、特性線S1のシフト量およびシフト方向は、導線101に流れた被検出電流の大きさおよび向きに対応するので、出力パルス信号S3のパルス幅Wまたはパルスデューティ比から、導線101に流れた被検出電流の大きさおよび向きを認識することができる。
図5は、フラックスゲートセンサ1において、導線101に被検出電流が流れていない状態で、コア11の磁気特性にばらつきが生じた場合のコア11の磁界の強さ、検出信号の電圧および出力パルス信号のレベルを示すタイミングチャートである。
例えば、コア11の寸法誤差や周囲の温度の変化等によって、図2中の二点鎖線で示すようにコア11の磁気特性にばらつきが生じ、このため、コア11が飽和する磁界の強さが正側においてHaからHbにずれ、負側において−Haから−Hbにずれたとする。コア11が飽和する磁界の強さがこのようにずれると、図5に示すように、三角波の励磁信号の励磁によってコア11が飽和する時点がずれる。例えば、正側でコア11が飽和する時点が、図3中の時点t1から図5中の時点t21にずれ、負側でコアが飽和する時点が、図3中の時点t3から図5中の時点t23にずれる。
しかしながら、励磁信号が三角波であるため、HaからHbへのずれ量と−Haから−Hbへのずれ量とが同等である場合には、正側でコア11が飽和する時点のずれ方向およびずれ量と、負側でコア11が飽和する時点のずれ方向およびずれ量とは等しくなる。この結果、検出点Dpと検出点Dnとの間の時間差は、コア11の磁気特性に上記ばらつきが生じていない場合(図3)と生じている場合(図5)とで変わらず、それゆえ、出力パルス信号S3におけるパルス幅Wは、コア11の磁気特性に上記ばらつきが生じていない場合と生じている場合とで変わらない。すなわち、コア11の磁気特性に上述したようなばらつきが発生しても、励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点とコア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差は変化しない。
したがって、コア11の磁気特性のばらつきによってコア11が飽和する磁界の強さが正側で正方向に増加し、かつ負側で負方向に同等量増加した場合でも、または、コア11の磁気特性のばらつきによってコア11が飽和する磁界の強さが正側で正方向に減少し、かつ負側で負方向に同等量減少した場合でも、導線101を流れる被検出電流の検出に誤差は生じない。つまり、このようなコア11の磁気特性のばらつきは、導線101を流れる被検出電流の検出に影響しない。
以上説明した通り、本発明の第1の実施形態によるフラックスゲートセンサ1によれば、上述したようなコア11の磁気特性のばらつきのために、導線101を流れる被検出電流の検出精度が低下することを防止することができる。
また、このような電流の高精度な検出を、図2に示すように、磁界の強さが一定の区間P2−P3(P4−P1)で変化する間において磁束密度が正側(負側)の飽和磁束密度Ba(−Ba)から負側(正側)の飽和磁束密度Ba(Ba)へ磁界の強さに比例して漸次変化する磁気特性を有するコアを利用して実現することができる。したがって、コアの材料として用いる磁性材料の選択の幅を広げることができ、フラックスゲートセンサ1の高精度化、低コスト化または量産性等を高めることができる。
(第2の実施形態)
図6は本発明の第2の実施形態によるフラックスゲートセンサを示している。上述した第1の実施形態によるフラックスゲートセンサ1は、コア11に励磁コイル12と検出コイル13とを巻回し、励磁コイル12により励磁を行い、検出コイル13により検出を行う構成であった。これに対し、第2の実施形態によるフラックスゲートセンサ2は、図6に示すように、コア21に巻回するコイルを単一の励磁検出コイル22のみとし、単一の励磁検出コイル22で励磁と検出とを行う。すなわち、第2の実施形態によるフラックスゲートセンサ2は、コア21と、コア21に巻回された第1のコイルとしての励磁検出コイル22と、励磁検出コイル22に励磁信号を印加すると共に、励磁検出コイル22に生じる誘導起電力を示す検出信号を出力する励磁検出回路23と、励磁検出回路23から出力された検出信号に対して所定の信号処理を行い、導線101を流れる被検出電流の大きさおよび向きを示す出力パルス信号を出力する信号処理回路24とを備えている。なお、励磁検出回路23は励磁手段および検出信号出力手段の具体例であり、励磁検出回路23のうち検出信号を出力する部分と信号処理回路24は検出手段の具体例である。
コア21は、第1の実施形態によるフラックスゲートセンサ1におけるコア11と同様の磁気特性を有している(図2参照)。また、被検出電流が流れる導線101がコア21の中心を貫くように、コア21と導線101との位置関係が設定されている。
励磁検出コイル22は、コア21に電線を巻回することにより形成され、励磁検出回路23に接続されている。励磁検出コイル22のコア21への巻回の仕方については、第1の実施形態によるフラックスゲートセンサ1における励磁コイル12と同様である。
励磁検出回路23は、励磁信号を励磁検出コイル22に印加する励磁回路部と、励磁信号の印加により励磁検出コイル22に生じる誘導起電力を示す信号を検出信号として出力する検出回路部とを備えている。励磁回路部は、励磁信号を生成する発振回路と、発振回路により生成された励磁信号を電流増幅する電流増幅回路とを備えている。励磁信号は、第1の実施形態によるフラックスゲートセンサ1における励磁信号と同様に、各ピーク時における電流の大きさがコア21を飽和する電流の大きさを超える三角波の信号である。検出回路部は、例えば、励磁検出コイル22の両端電圧を検出信号として取り出す回路である。
信号処理回路24は、励磁検出回路23から出力された検出信号に対して所定の信号処理を施すことにより、励磁信号の印加によってコア21が飽和した時点とコア21がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差に対応するパルス幅を有する出力パルス信号を生成する回路である。信号処理回路24は、第1の実施形態によるフラックスゲートセンサ1における信号処理回路16と同様の構成を有している。
図7は、フラックスゲートセンサ2において、導線101に被検出電流が流れておらず外部磁界が生じていない場合のコア21の磁界の強さ、検出信号の電圧および出力パルス信号のレベルを示すタイミングチャートである。
図7中の特性線S11に示すように、コア21に励磁信号を印加すると、三角波の励磁信号に応じ、コア21における磁界の強さが三角波を描くように変化する。また、励磁信号において各ピーク時における電流の大きさがコア21を飽和する電流の大きさを超えるので、励磁信号の印加によりコア21は飽和、非飽和を繰り返す。このように励磁信号の印加による磁界の強さの変化は、第1の実施形態における場合(図3参照)と同様である。
コア21における磁界の強さが特性線S11のように変化すると、これに応じて、励磁検出コイル22に生じる誘導起電力が変化し、この結果、励磁検出回路23からの検出信号S12の電圧が変化する。
すなわち、時点t30から時点t31に達する直前までの間、磁界の強さの増加に伴って検出信号12の電圧が増加する。そして、時点t31においてコア21が飽和したとき、コア21の飽和により励磁検出コイル22に誘導起電力が生じなくなるので、検出信号S12の電圧がゼロになる。しかも、コア21は磁界の強さが一定値Haに達した時点で直ちに飽和するので、時点t31で磁界の強さが一定値Haに達すると、励磁検出コイル22に直ちに誘導起電力が生じなくなり、検出信号S12の電圧が直ちにゼロになる。この結果、時点t31における検出信号S12の波形は、時間軸に対して垂直となる。
続いて、時点t31から時点t32に達する直前までの間は、コア21が飽和しているので、検出信号S12の電圧はゼロを維持する。続いて、時点t32から時点t33に達する直前までの間は、コア21が非飽和の状態であるので、磁界の強さが正方向において減少し、ゼロに達した後、負方向において増加するのに伴って、検出信号S12の電圧は負方向に増加する。そして、時点t33においてコア21が飽和したとき、コア21の飽和により励磁検出コイル22に誘導起電力が生じなくなるので、検出信号S12の電圧がゼロになる。しかも、コア21は磁界の強さが一定値−Haに達した時点で直ちに飽和するので、時点t33で磁界の強さが一定値−Haに達すると、励磁検出コイル22に直ちに誘導起電力が生じなくなり、検出信号S12の電圧が直ちにゼロになる。この結果、時点t33における検出信号S12の波形は、時間軸に対して垂直となる。
続いて、時点t33から時点t34に達する直前までの間は、コア21が飽和しているので、検出信号S12の電圧はゼロを維持する。続いて、時点t34から時点t35に達する直前までの間は、コア21が非飽和の状態であるので、磁界の強さが負方向において減少し、ゼロに達した後、正方向において増加するのに伴って、検出信号S12の電圧は正方向に増加する。続いて、時点t5以降においても、時点t1から時点t4までの間と同様に検出信号の電圧が変化する。
信号処理回路24は、第1の実施形態によるフラットゲートセンサ1における信号処理回路16と同様に、検出信号S12に対して所定の信号処理を施すことにより、励磁信号の印加によってコア21が飽和した時点とコア21がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差に対応したパルス幅Wを有する出力パルス信号S13を生成する。具体的には、信号処理回路24は、検出信号S12が正側においてピークに達し、直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する間に検出信号S12の電圧が基準電圧Vrに達する点(検出点)Dpを例えば比較回路を用いて検出する。また、信号処理回路24は、検出信号S12が負側においてピークに達し、直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する間に検出信号S12の電圧が基準電圧−Vrに達する点(検出点)Dnを例えば比較回路を用いて検出する。そして、信号処理回路24は、上記検出点Dpの時点において立ち上がり、検出点Dnの時点において立ち下がる出力パルス信号S13を例えばフリップフロップ回路を用いて生成する。
導線101に被検出電流が流れ、これにより外部磁界が生じた場合には、コア21における磁界の強さを示す特性線S11が、導線101を流れる被検出電流の大きさおよび向きに応じて正方向(図7中の上方向)または負方向(図7中の下方向)にシフトする。コア21における磁界の強さを示す特性線S11が正方向または負方向にシフトすると、コア21が飽和するタイミングが変化するので、検出信号S12の正側においてピークに達して直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する時点、および検出信号S12の負側においてピークに達してピークからゼロレベルに向かって変化する時点が変化する。これにより、検出点DpおよびDnが変化するので、出力パルス信号S13のパルス幅Wが変化する。出力パルス信号S13のパルス幅Wの変化量および変化の方向は、コア21における磁界の強さを示す特性線S11のシフト量およびシフト方向に対応し、特性線S11のシフト量およびシフト方向は、導線101に流れた被検出電流の大きさおよび向きに対応するので、出力パルス信号S13のパルス幅Wまたはパルスデューティ比から、導線101に流れた被検出電流の大きさおよび向きを認識することができる。
また、コア21の磁気特性にばらつきが生じ、このため、コア21が飽和する磁界の強さが正側で正方向に増加し、かつ負側で負方向に同等量増加した場合、あるいは、コア21の磁気特性のばらつきによってコア21が飽和する磁界の強さが正側で正方向に減少し、かつ負側で負方向に同等量減少した場合には、コア21が飽和する時点がずれる。しかしながら、励磁信号が三角波であるため、正側でコア21が飽和する時点のずれ方向およびずれ量と、負側でコア21が飽和する時点のずれ方向およびずれ量とは等しくなる。この結果、検出点Dpと検出点Dnとの間の時間差は、コア21の磁気特性に上記ばらつきが生じていない場合と生じている場合とで変わらず、それゆえ、出力パルス信号S13におけるパルス幅Wは、コア21の磁気特性に上記ばらつきが生じていない場合と生じている場合とで変わらない。よって、このようなコア21の磁気特性のばらつきが生じても、導線101を流れる被検出電流の検出に誤差は生じない。
以上説明した通り、本発明の第2の実施形態によるフラックスゲートセンサ2によっても、本発明の第1の実施形態によるフラックスゲートセンサ1と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の第2の実施形態によるフラックスゲートセンサ2によれば、コア21に巻回するコイルを単一の励磁検出コイル22のみとし、単一の励磁検出コイル22で励磁と検出とを行うといったシンプルな構成であるため、フラックスゲートセンサ2の小型化を推し進めることができる。
なお、上述した第1の実施形態では、三角波の励磁信号を励磁コイル12に印加する場合を例に挙げた。連続する2つのピーク間における電流の変化が1次変化(リニア)である励磁信号を採用した場合に、磁気特性のばらつきにより生じる被検出電流(外部磁界)の検出誤差をもっとも効果的に排除することができるので、励磁信号は三角波であることが望ましい。しかしながら、疑似三角波または正弦波の励磁信号を採用することも可能であり、この場合でも、磁気特性のばらつきにより生じる被検出電流(外部磁界)の検出誤差を良好に抑制することができる。
具体的には、図8に示すように、疑似三角波の励磁信号をコア11に印加すると、コア11における磁界の強さの変化は、特性線S21に示すように疑似三角波を描く。これにより、コア11が飽和した時点で直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する検出信号S22を得ることができる。そして、この検出信号S22における検出点Dpの時点において立ち上がり、検出点Dnの時点において立ち下がる出力パルス信号を生成することにより、当該出力パルス信号のパルス幅またはパルスデューティ比に基づいて、被検出電流の大きさおよび向きを認識することができる。
また、図9に示すように、正弦波の励磁信号をコア11に印加すると、コア11における磁界の強さの変化は、特性線S31に示すように正弦波を描く。これにより、コア11が飽和した時点で直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する検出信号S32を得ることができる。そして、この検出信号S32における検出点Dpの時点において立ち上がり、検出点Dnの時点において立ち下がる出力パルス信号を生成することにより、当該出力パルス信号のパルス幅またはパルスデューティ比に基づいて、被検出電流の大きさおよび向きを認識することができる。
また、上述した第2の実施形態においても、三角波の励磁信号に代えて、疑似三角波または正弦波の励磁信号を採用することができる。
また、上述した第1の実施形態では、図2に示すように、磁界の強さが一定値Ha(−Ha)に達すると直ちに飽和すると共に、磁界の強さが一定の区間P2−P3(P4−P1)で変化する間において、磁束密度が正側(負側)の飽和磁束密度Ba(−Ba)から負側(正側)の飽和磁束密度Ba(Ba)へ磁界の強さに比例して漸次変化する磁気特性を有するコアをコア11として利用する場合を例に挙げた。しかしながら、図10に示すように、磁束密度がゼロ付近であるときは、磁界の強さの変化に対して磁束密度が鋭く変化するものの、磁束密度が飽和磁束密度Bc(−Bc)に接近すると、磁界の強さの変化に対して磁束密度の変化が緩やかになる磁気特性を有すると共に、B−H曲線において、非飽和状態となってから飽和するまでの間が曲線を描く磁気特性を有するコアを、コア11として利用することも可能である。
この場合には、三角波の励磁信号の印加によりコア11における磁界の強さは図11中の特性線S41に示すように変化し、これにより、検出信号S42は、図11に示すように、コア11が飽和した時点で、ピークからゼロレベルに向けて傾斜をもって変化する。このような検出信号S42であっても、検出点Dpの時点を立ち上がりとし、検出点Dnの時点を立ち下がりとする出力パル信号S43を生成することができ、出力パルス信号S43のパルス幅Wまたはパルスデューティ比に基づいて、被検出電流の大きさおよび向きを検出することができる。もっとも、図2に示す磁気特性を有するコア11を採用した方が、図10に示す磁気特性を有するコアを採用するよりも、被検出電流(外部磁界)の検出精度が高まる。第2の実施形態においても図10に示すような磁気特性を有するコアを利用することができる。
また、上述した第1の実施形態では、信号処理回路16により、励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点とコア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差に対応したパルス幅Wを有する出力パルス信号S3を生成するに当たり、検出信号S2が正側においてピークに達して直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する間の検出点Dpを検出し、検出信号S2が負側においてピークに達して直ちにピークからゼロレベルに向かって変化する間の検出点Dnを検出し、検出点Dpの時点において立ち上がり、検出点Dnの時点において立ち下がる出力パルス信号S3を生成する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限らない。出力パルス信号S3を生成するに当たり、検出信号S2における正側のピークと負側のピークとを検出し、正側のピークの時点において立ち上がり、負側のピークの時点において立ち下がる出力パルス信号を生成してもよい。第2の実施形態についても同様である。
また、上述した第1の実施形態では、励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点とコア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差に対応するパルス幅Wを有する出力パルス信号S3を生成し、この出力パルス信号S3のパルス幅Wまたはパルスデューティ比に基づいて上記時間差を認識する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限らない。励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点とコア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差を、上述したような出力パルス信号を生成する以外の方法により認識してもよい。例えば、周知の方法により検出信号S2について波形成形および直流変換を行うことで、励磁信号の印加によってコア11が飽和した時点とコア11がその後いったん非飽和となり再び飽和した時点との時間差に対応する電圧を有する直流信号を生成することができ、この直流信号の電圧に基づいて上記時間差を認識してもよい。第2の実施形態についても同様である。
また、上述した第1の実施形態では、検出コイル13から検出信号S2を得る場合を例に挙げたが、励磁コイル12から検出信号を得ることも可能である。この場合、図3に示す検出信号S2の波形が、図7に示す検出信号S12の波形のようになる。
また、上述した各実施形態では、コア11(21)を環状に形成し、被検出電流の流れる導線101がコア11(21)の中心を貫くように、コア11(21)と導線101との位置関係を設定する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限らない。例えば、コアを棒状に形成してもよいし、棒状のコアと導線101とを互いに接近させて配置してもよい。
また、上述した各実施形態では、フラックスゲートセンサ1(2)を、導線101を流れる被検出電流の大きさおよび向きを検出する電流センサとして用いる場合を例に挙げたが、本発明はこれに限らない。本発明のフラックスゲートセンサ1(2)は、種々の磁気センサ等として広く利用することができ、例えば角度センサ、方位センサ、検査装置、計測装置、探知装置等に適用することができる。
図12は本発明の第1の実施形態によるフラックスゲートセンサ1をより具体化した例を示している。図12において、フラックスゲートセンサ3は、コア31、励磁コイル32、検出コイル33、励磁回路34、バイアス回路35、検出回路36および信号処理回路37を備えている。
コア31はアモルファス金属により円形の環状に形成され、図2に示すような磁気特性を有している。また、コア31の中心には、被検出電流が流れる導線101がコア31を貫くように配置されている。
励磁コイル32はコア31の全周にわたって電線を巻回することにより形成され、励磁コイル32の一端側は励磁回路34内に設けられた電流増幅回路52に接続され、励磁コイル32の他端側は抵抗50を介して接地されている。
検出コイル33はコア31の全周にわたって電線を巻回することにより形成され、検出コイル33の一端側はバイアス回路35に接続され、励磁コイル32の他端側は検出回路36内に設けられた抵抗54を介して接地されている。
励磁回路34は、発振回路51および電流増幅回路52を備えている。発振回路51は、各ピーク時における電流の大きさがコア31を飽和する電流の大きさを超える三角波の励磁信号を生成する。電流増幅回路52は例えばエミッタフォロワ回路により構成され、発振回路51により生成された励磁信号を電流増幅し、電流増幅した励磁信号を励磁コイル32に印加する。
バイアス回路35は、検出コイル33から得られる検出信号に直流成分(バイアス電圧)を加える回路であり、例えばエミッタフォロワ回路により構成されている。
検出回路36は、検出コイル33から検出信号を取り出し、信号処理回路37に供給する回路であり、抵抗54を備えている。
信号処理回路37は、検出点Dp(図3参照)の検出を行うための正側比較回路55と、検出点Dn(図3参照)の検出を行うための負側比較回路56と、検出点Dpの時点において立ち上がり、検出点Dnの時点において立ち下がる出力パルス信号(図3参照)を生成するためのフリップフロップ回路57を備えている。
このような構成を有するフラックスゲートセンサ3によれば、上述した本発明の第1の実施形態における作用効果を効果的に得ることができる。
図13は本発明の第2の実施形態によるフラックスゲートセンサ2をより具体化した例を示している。図13において、フラックスゲートセンサ4は、コア41、励磁検出コイル42、励磁検出回路43、バイアス回路44および信号処理回路45を備えている。
コア41はアモルファス金属により円形の環状に形成され、図2に示すような磁気特性を有している。また、コア41の中心には、被検出電流が流れる導線101がコア41を貫くように配置されている。
励磁検出コイル42はコア41の全周にわたって電線を巻回することにより形成され、励磁検出コイル42の一端側は抵抗61を介し、励磁検出回路43内に設けられた電流増幅回路63に接続され、励磁検出コイル42の他端側はバイアス回路44に接続されている。
励磁検出回路43は、各ピーク時における電流の大きさがコア41を飽和する電流の大きさを超える三角波の励磁信号を生成する発振回路62、および発振回路62により生成された励磁信号を電流増幅する電流増幅回路63を備えている。電流増幅回路63は例えばエミッタフォロワ回路により構成されている。
バイアス回路44は、励磁検出コイル42から得られる検出信号に直流成分(バイアス電圧)を加える回路であり、例えばエミッタフォロワ回路により構成されている。バイアス回路44は、発振回路62により生成された励磁信号を電流増幅回路63によって電流増幅する際に励磁信号に付加されるバイアス電圧と等しいバイアス電圧を検出信号に付加する。なお、バイアス回路44は直流電圧付加回路の具体例である。
信号処理回路45は、検出点Dp(図7参照)の検出を行うための正側比較回路65と、検出点Dn(図7参照)の検出を行うための負側比較回路66と、検出点Dpの時点において立ち上がり、検出点Dnの時点において立ち下がる出力パルス信号(図7参照)を生成するためのフリップフロップ回路67を備えている。
このような構成を有するフラックスゲートセンサ4によれば、上述した本発明の第2の実施形態における作用効果を効果的に得ることができる。また、フラックスゲートセンサ4によれば、励磁検出コイル42の両端の直流電圧(バイアス電圧)を互いに等しくすることで、励磁信号の印加により励磁検出コイル42に生じる誘導起電力を示す検出信号からバイアス電圧を除去するためのカップリングコンデンサを用いる必要がない。したがって、他の電気部品と比較して大型なカップリングコンデンサを排除することができるので、フラックスゲートセンサ4の小型化を図ることができる。
なお、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うフラックスゲートセンサもまた本発明の技術思想に含まれる。