JP2017210670A - 溶鋼の脱硫方法 - Google Patents

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【課題】真空脱ガス装置において脱硫剤吹き付けノズル5から真空容器内の溶鋼表面11に脱硫剤を吹き付けて脱硫する方法において、実質的にFを含まない脱硫剤を効率よく利用する方法を提供する。【解決手段】真空脱ガス装置として、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置6を使用するとともに、脱硫剤吹き付けノズル5と真空容器内の溶鋼表面11との距離(ランス高さH)を2.6m以上とする。ランス高さHを2.6m以上とすることにより、脱硫剤の粒子同士の衝突が生じにくくなる。また、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置6を使用することにより、実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を用いた場合でも、反応効率を確保できる。【選択図】図1

Description

本発明は、真空脱ガス装置を用いて行う溶鋼の脱硫方法に関するものである。
硫黄(以下、Sと記載する場合あり)含有量が数十ppmである低硫鋼を溶製する場合、溶銑予備処理で脱硫処理した後に転炉等で脱炭処理するのみでは、十分な低硫レベルに到達しないため、溶鋼脱硫処理が必要となる。
溶鋼脱硫処理として、溶鋼を加熱しつつスラグ精錬によりSを除去する方法(いわゆるLF法)が実用化されているが、二次精錬工程としてのLF工程が必須となり、製造時間の延長や製造コストの増加を招いている。
そこで二次精錬工程として汎用されている真空脱ガス装置での脱硫処理の確立が求められている。真空脱ガス装置での脱硫処理としては、真空容器内で溶鋼表面に上方から粉体状の脱硫剤を吹き付ける方法が一般的である。脱硫剤としては、CaO系フラックスが一般的に用いられる。溶鋼表面に吹き付けられた脱硫剤は溶鋼内に侵入し、溶鋼との間で脱硫反応が生じる。CaO系フラックスは溶鋼より比重が小さく、浮力によっていずれは溶鋼表面に浮上分離するため、浮上分離するまでの間にいかに脱硫反応を進行させるかが重要である。
従来、CaO系フラックスを使用する際にはCaF2(蛍石)が媒溶剤として用いられてきた。CaO系フラックスにCaF2を添加すると、脱硫能の高い液相を形成しうる。脱硫剤に液相を形成することで、脱硫剤内部でのSの移動が容易となり、脱硫反応を迅速に進めさせる効果がある。よって脱硫剤が溶鋼表面に浮上分離するまでの時間が短くても、脱硫反応を十分に進行させることができた。
しかし、フッ素を含有するフラックスで脱硫処理を行うと、処理後のスラグにもフッ素が残留する。そのため、スラグ中のフッ素が環境に及ぼす影響を考慮し、昨今ではフッ素源を使用しない溶鋼脱硫法が望まれている。
実質的にFを含まないCaO系フラックスによる溶鋼脱硫を行う場合、脱硫剤は溶鋼処理温度で固相が主体となり、脱硫剤内部では固相内拡散によってSが移動することになる。固相内拡散によるSの移動は、液相状態での移動にくらべて極めて遅く、溶鋼との脱硫反応に時間を要する。
したがって、実質的にFを含まないCaO系フラックスによる溶鋼脱硫では、脱硫剤がSを十分に吸収する前に溶鋼表面に浮上分離してしまうため、脱硫剤の利用効率が低下する課題があった。
特許文献1は、真空脱ガス装置において実施的にFを含まないCaO系脱硫剤を用いる場合に、脱硫剤の凝集を防ぐためのAl濃度と粉体供給速度の関係を規定している。脱硫剤の溶鋼中での凝集を防ぐことで、脱硫剤と溶鋼の反応界面積を確保することができ、脱硫反応を進行させることができる。しかし、Al濃度は脱硫処理中に経時変化するため、適正範囲内への制御が困難であり、結果として脱硫速度が低下する場合があった。
特許文献2は、ランス高さを下げてハードブロー化することで脱硫剤の溶鋼内侵入率は向上するとしている。このとき、脱硫剤には1重量%以上のフッ化物が含まれる。
特開2007−270178号公報 特開平6−322431号公報
発明者らは、実質的にFを含まないCaO系脱硫剤において、特許文献2の方法での脱硫処理を試みた。しかし特許文献2の方法では、溶鋼内に侵入するものの、溶鋼表面から溶鋼内に侵入しようとする粉体が互いに衝突しやすくなり、衝突した粉体を主体とした積層物を形成して、脱硫に寄与しない脱硫剤(粉体)が発生してしまい、脱硫速度が低下することを知見した。
本発明は、真空脱ガス装置において脱硫剤吹き付けノズルから真空容器内の溶鋼表面に脱硫剤を吹き付けて脱硫する方法において、実質的にFを含まない脱硫剤を効率よく利用する溶鋼の脱硫方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)真空脱ガス装置において溶鋼の脱硫処理を行う際に、脱硫剤吹き付けノズルから真空容器内の溶鋼表面に脱硫剤を吹き付け、前記脱硫剤として実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を使用する方法において、真空脱ガス装置として、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置を使用するとともに、前記脱硫剤吹き付けノズルと真空容器内溶鋼表面との距離(以下「ランス高さ」という。)を2.6m以上とすることを特徴とする、溶鋼の脱硫方法。
(2)脱硫前の溶鋼鍋内溶鋼面に存在しているスラグのFeO成分とMnO成分の合計が10質量%以下であることを特徴とする、上記(1)に記載の溶鋼の脱硫方法。
本発明に従えば、従来技術に比べて溶鋼内に実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を均一に供給でき、積層合体による反応効率低下を防ぐことができる。
溶鋼内での循環流を利用することにより、溶鋼内での反応時間を確保し、固相率の高いFレスフラックスでも十分に反応させることができる。
真空脱ガス装置を用いて行う溶鋼の脱硫方法を示す図であり、(A)は大径浸漬管方式を用いた例、(B)はRH方式を用いた例である。 脱硫剤吹き付けノズルからのガス噴流を示す図であり、(A)はランス高さHが低い場合、(B)はランス高さHが高い場合である。
本発明の溶鋼の脱硫方法において、溶鋼の脱硫は真空脱ガス装置を用いて行う。溶鋼の真空脱ガス装置には種々の方式が存在する。溶鋼を真空脱ガスするに際し、溶鋼鍋全体を真空容器内に収容して真空容器内を真空とする方法(例えばVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)法、VAD(Vacuum Arc Degassing)法など)、あるいは真空容器の下方開口部を溶鋼鍋内の溶鋼中に浸漬して真空容器内を真空とする方法(例えば大径浸漬管方式、RH真空脱ガス装置など)がある。大径浸漬管方式真空脱ガス装置21とは、図1(A)に示すように、真空容器2の下部に一つの大径浸漬管3が設けられ、この大径浸漬管3を溶鋼鍋1に収容した溶鋼10中に浸漬し、真空容器2内を減圧して溶鋼を真空容器内に吸い上げ、溶鋼鍋底部の撹拌用ガスを吹きこむ装置6からガスを吹き込み、吹き込んだガスによって溶鋼鍋中の溶鋼と真空容器内の溶鋼との間に攪拌流を形成することにより、溶鋼を攪拌・混合する方法である。RH方式真空脱ガス装置22の場合、図1(B)に示すように、真空容器2の底部に2つの浸漬管が設けられ、一方が上昇管7、他方が下降管8となる。上昇管7の中間位置側壁のガス吹き込み口9から溶鋼中にガスを吹き込み、ガスの浮力によって上昇管7中を溶鋼が上昇し、溶鋼は真空容器2内を経由して下降管8から下降し、溶鋼鍋1中に放出される。
真空脱ガス装置を用いた溶鋼の脱硫において、真空容器2内に脱硫剤吹き込みランス4を下方に向けて挿入する。脱硫剤吹き込みランス4の先端には脱硫剤吹き付けノズル5が配置されている。脱硫剤吹き付けノズル5から、ガス噴流14とともに真空容器内の溶鋼表面11に脱硫剤を吹き付ける。
ここでは、溶鋼を攪拌・混合するための不活性ガスの吹き込み位置の違いによって真空脱ガス装置を分類する。真空脱ガス装置には、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを供給する方式(VOD方式や大型浸漬管方式など)と、溶鋼上方から浸漬する浸漬管の途中から撹拌・混合用ガスを供給するRH真空脱ガス装置がある。
RH方式の場合、真空容器の底部に2つの浸漬管が設けられ、一方が上昇管、他方が下降管となる。上昇管の中間位置側壁から溶鋼中にガスを吹き込み、ガスの浮力によって上昇管中を溶鋼が上昇し、溶鋼は真空容器内を経由して下降管から下降し、溶鋼鍋中に放出される。下降管から溶鋼鍋に向かう溶鋼の流れが強く、その流れは溶鋼鍋の底部に衝突し、その後は流れが分散されて弱まる。真空容器内で溶鋼内に侵入した粉体については、下降管からの溶鋼の流れに乗って溶鋼鍋の底部で分散され、その後、主に溶鋼鍋の側壁に沿ってゆっくりと上昇し、溶鋼鍋内の溶鋼表面付近に至るとともに、溶鋼流れの弱い部分に到達する。溶鋼流れの弱い部分で粉体に働く力は、溶鋼から受ける粘性力よりも浮力の影響が大きくなり、浮上分離しやすい。溶鋼鍋の溶鋼表面付近で浮上分離した粉体は、溶鋼鍋内の表面に存在しているスラグに取り込まれ、その後は脱硫への寄与が大幅に低下する。CaF2を含むCaO系フラックスであれば、反応速度が大きく短時間でも十分に脱硫が進行するため、問題にはならない。一方、実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を用いた場合は、脱硫剤中のSの移動は固相内拡散によるため、脱硫反応に時間を要するので、粉体が浮上分離するまでの時間では反応が十分に進行し難い。そのため、RH方式では、実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を用いた際には反応効率の低下が顕著であった。
本発明では、真空脱ガス装置として、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置を使用する。大径浸漬管方式、VOD法、VAD法などがこの分類に入る真空脱ガス装置である。VOD方式や大型浸漬管方式のように、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置6を用いることで、RH方式で問題となる上記課題を解決できることを知見した。溶鋼鍋底部の撹拌用ガスを吹きこむ装置6は、当該撹拌用ガスを吹きこむ装置6から溶鋼中に吹き込まれた気泡が上昇し、真空容器内の溶鋼表面11に到達するように配置される(図1参照)。
上記のような、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置6を用いる場合、撹拌用ガスを吹きこむ装置6から真空容器内の溶鋼表面11に向けた気泡上昇流に沿って、溶鋼の上昇流15が形成される。真空容器内の溶鋼表面11に到達した溶鋼の上昇流15は、真空容器内の溶鋼表面における上昇流の到達点から放射状に流れ、真空容器の側壁に至り、その位置から下降に転じる。下降流16は溶鋼鍋中において溶鋼鍋の底部に至るまで持続する下降流を形成する。すなわち、これらの装置では、溶鋼内に大きな循環流が生じる。脱硫剤吹き付けノズル5から真空容器内の溶鋼表面11に吹き付けられ、溶鋼内に侵入した粉体は、下降流16に付随して溶鋼鍋内を下降し、溶鋼鍋底部においてガス気泡による上昇流15に取り込まれ、真空容器内の溶鋼表面11まで循環する。真空容器内の溶鋼表面11では気泡の膨張によって溶鋼が激しく混合し、浮上した粉体は溶鋼表面に留まらずに溶鋼に取り込まれ、溶鋼の下降流16とともに溶鋼鍋中を下降する。このように、粉体は溶鋼の循環流の中に留まることで反応時間を確保することができる。よって、実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を用いた場合でも、脱硫剤中のSの移動が固相内拡散であって脱硫反応に時間を要するものの、脱硫反応に必要な十分な時間を溶鋼中に滞在しているので、反応効率を確保できる。
なお、実質的にFを含まないこととは、脱硫精錬後のスラグからフッ素(F)の溶出が顕著には認められないことを指すもので、本発明者らの知見では精錬後のスラグ組成においてFが1質量%以下となる場合を指す。Fが0.5質量%以下であれば更に好ましい。
本発明においてCaO系脱硫剤とは、CaOを50質量%以上含んでいる脱硫剤を指す。CaO源としてはCaOの他にCaCO3やCa(OH)2でもよく、完全にCaOに熱分解した際の質量でCaO含有量を計算できる。脱硫剤中のCaO以外の成分については特に限定しない。Mgなどのそれ自体で脱硫能力を有する成分を含むとより好ましい。
真空脱ガス装置を用いた溶鋼の脱硫において、真空容器内に脱硫剤吹き込みランスを下方に向けて挿入する。図2に示すように、脱硫剤吹き込みランス4の先端には脱硫剤吹き付けノズル5が配置されている。脱硫剤吹き付けノズル5から真空容器内の溶鋼表面11に脱硫剤を吹き付ける。本発明は、前記脱硫剤吹き付けノズル5と真空容器内溶鋼表面11との距離(ランス高さH)を2.6m以上とすることを特徴とする。以下、詳細に説明する。
脱硫剤粉体はキャリアガスによって脱硫剤吹き込みランス4中を搬送され、脱硫剤吹き込みランス4先端の脱硫剤吹き付けノズル5から真空容器内の溶鋼表面11に向けて噴出される。ここで、真空容器内の溶鋼表面11から脱硫剤吹き付けノズル5先端までの鉛直方向距離をランス高さHと称する。詳細には、脱硫剤を吹き付ける時の圧力に真空容器内を設定し、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹き込まない条件での真空容器内の溶鋼表面とノズル先端までの鉛直方向距離をランス高さHと称するものである。
ノズルからキャリアガスとともに脱硫剤を吹き込む際、ガスはノズル内外の圧力差によって急激に膨張する。また、ノズルから鉛直下向きに吹き出されたガス噴流14(脱硫剤を含む)は、ランス近傍ではジェットコア17(ノズル開口面積と同程度の広がり面積)を持ち、汎用されているランスの開口面積ではランス高さ1m程度以降では、溶鋼湯面に向かって進行するとともに水平方向に広がる末広がり部18を形成する。この際、粉体も水平方向に分散する。
ランス高さHが低い場合、図2(A)に示すように、粉体の広がりが小さく、溶鋼表面の一部に局所的に粉体が供給されることになる。局所的に供給された粉体は、粒子同士が衝突する確率が高まる。実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を用いた場合は、粒子同士が衝突すると溶鋼表面で積層し、合体してしまう。積層合体が生じると、粉体の比表面積(体積に対する表面積の比率)が小さくなる。その結果、粒子が単独で存在する場合よりも反応速度が低下してしまう。
これに対して、ランス高さHを高くすることで、上記課題を解決できることを知見した。すなわち、ランス高さHが高ければ、図2(B)に示すように、粉体が分散した状態で真空容器内の溶鋼表面11に到達するため、粒子同士の衝突が生じにくくなる。よって、実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を用いた場合でも、反応効率を確保できる。
上記効果を得るためには、本発明者らの知見ではランス高さを2.6m以上とするとよい。2.6m未満だと、脱硫反応効率が低下する。一方、ランス高さが2.6m以上となると、キャリアガス吹付け面の面積はノズル下端開口径の6倍以上となり、溶鋼表面の脱硫剤の積層は十分に防止できるものと推定できた。ランス高さが高くなるほど脱硫剤粒子間の衝突確率は減少するので、その上限を規定する必要はないが、ランス高さが6mを超えるとその効果は飽和する。
以上のとおり、真空脱ガス装置において溶鋼の脱硫処理を行う際に、脱硫剤吹き付けノズル5から真空容器内の溶鋼表面11に脱硫剤を吹き付け、前記脱硫剤として実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を使用する方法において、脱硫剤吹き付けノズル5と真空容器内の溶鋼表面11との距離(ランス高さH)を2.6m以上とすることにより、脱硫剤の粒子同士の衝突が生じにくくなる。また、真空脱ガス装置として、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置6を使用することにより、実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を用いた場合でも、反応効率を確保できる。
本発明において、脱硫前における溶鋼鍋内の溶鋼表面12に存在しているスラグ13のFeO成分とMnO成分の合計が10質量%以下であると好ましい。以下詳述する。
上記の通り、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置6を使用する本発明においては、循環溶鋼流中の脱硫剤粒子は、溶鋼中を循環し、脱硫への寄与を継続するが、一定の確率で循環溶鋼流から逸脱し、溶鋼鍋浴面へ浮上し、溶鋼鍋浴面に存在するスラグ13に取り込まれる。溶鋼鍋浴面のスラグ13は、転炉からの出鋼時に転炉から流出した酸化精錬スラグを主体とするものであり、FeO成分やMnO成分含有量が高く、いわゆる酸化性の高いスラグである。そのため、溶鋼鍋浴面へ浮上した脱硫剤粒子を構成する脱硫生成物は、浴面のスラグ13により酸化されて溶鋼中に復硫する場合がある。
そこで本発明では、脱硫前の溶鋼面に存在しているスラグは、FeO成分とMnO成分の合計が10質量%以下であることを好適(スラグの酸化度が低いと好適)とする。スラグ中のFeO成分やMnO成分の濃度を低減する方法としては、例えば、Al等の強脱酸元素を添加して還元する方法や、スラグにCaO源を添加して希釈する方法などを用いることができる。なお実操業においては、FeO成分量(質量%)は、T−Fe量(質量%)分析値に基づき、T.FeのすべてがFeOであるとしてFeO含有量を算出しても良い。
本発明の効果を検証するために実施した検証試験について説明する。
検証試験には、300〜350ton/チャージ、低炭素アルミキルド鋼(脱硫前のS濃度が30ppm〜40ppm)の溶鋼を用いた。溶鋼鍋の内径は5mである。真空脱ガス装置は大径浸漬管方式(図1参照)(大径浸漬管3の内径:2m)及びRH方式とし、真空容器内の圧力を400Pa〜1200Paとして脱硫処理を実施した。なお本発明では、溶鋼鍋の内径3〜6m、大径浸漬管の内径1.5〜2.5m、のものを想定している。
大径浸漬管方式を用いた水準では、鍋底に備えた撹拌ガス吹込みプラグ(撹拌用ガスを吹きこむ装置6)から撹拌用ガスを供給した。RH方式を用いた水準では、真空容器2に備えた2本の浸漬管のうち1本の浸漬管(上昇管7)のガス吹き込み口9から撹拌用ガスを供給した。いずれの水準でも、撹拌用ガスにはArガスを用いた。
脱硫剤は、キャリアガスとともに、脱硫剤吹き込みランス4先端の脱硫剤吹き付けノズル5から真空容器内の溶鋼表面11に向けて噴出される。CaO系脱硫剤を吹き付けるためのキャリアガスにはArガスを用い、175(kg/min)の量を溶鋼に吹き付けた。脱硫剤吹き付けノズル5は、ノズル下端開口径(直径)が120mmのラバールノズルを用いた。本発明では75〜150mmのものを想定している。
CaO系脱硫剤の成分としては、実施例1、2、比較例1、2については80質量%CaO+20質量%Al23を使用した。従来技術を用いた水準では、80質量%CaO+20質量%CaF2を使用した。なお本発明では、CaO系脱硫剤の単位時間あたりの供給量は、50〜300(kg/min)を想定している。
試験結果の評価は以下のように行った。
脱硫前のS濃度30ppm〜40ppmを、脱硫処理によって到達S濃度5ppm〜13ppmとし、脱硫処理開始から脱硫処理終了までの時間を測定した。次いで、S濃度変化を時間の一次関数と仮定し、当該関数を用いて30ppmから15ppmに低下するのに必要な時間に換算して「脱硫処理時間」とした。そして、比較例1における脱硫処理時間を基準とし、10%超改善したものを◎、5%以上10%以下改善したものを○、悪化または5%未満の改善であったものを×として評価した。
検証試験の結果を表1に示す。
Fを含まないCaO系脱硫剤を用いた場合で対比すると、大径浸漬管方式(実施例1、比較例1)では、RH方式(比較例2)に比べて脱硫処理時間が短くなる。大径浸漬管方式は溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置6を使用しているため、吹き込んだ脱硫剤が溶鋼循環流に乗って長い時間溶鋼中に滞在しているため、Fを含まないので脱硫所要時間が長い脱硫剤であるにもかかわらず、十分な脱硫が行われたためと推定される。
また、同じ大径浸漬管方式で比較すると、ランス高さHが高くなるにつれて脱硫処理時間が短くなり、ランス高さHが2.6mにおいて十分な脱硫性能を実現している(実施例1、比較例1)。ランス高さHを高くすることで、吹き込んだ粉体が分散した状態で溶鋼表面に到達するため、粒子同士の衝突が生じにくくなるので、実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を用いた場合でも、反応効率を確保できているものと推定される。なお、表1の「従来技術」は脱硫剤中にCaF2を使用しており、ランス高さHは1.5mと低かったものの、評価結果は良好であった。
スラグのFeO成分+MnO成分の割合が減少するにつれて脱硫処理時間が短くなる(実施例1、実施例2)。
Figure 2017210670
1 溶鋼鍋
2 真空容器
3 大径浸漬管
4 脱硫剤吹き込みランス
5 脱硫剤吹き付けノズル
6 撹拌用ガスを吹きこむ装置
7 上昇管
8 下降管
9 ガス吹き込み口
10 溶鋼
11 真空容器内の溶鋼表面
12 溶鋼鍋内の溶鋼表面
13 スラグ
14 ガス噴流
15 上昇流
16 下降流
17 ジェットコア
18 末広がり部
21 大径浸漬管方式真空脱ガス装置
22 RH方式真空脱ガス装置

Claims (2)

  1. 真空脱ガス装置において溶鋼の脱硫処理を行う際に、脱硫剤吹き付けノズルから真空容器内の溶鋼表面に脱硫剤を吹き付け、前記脱硫剤として実質的にFを含まないCaO系脱硫剤を使用する方法において、
    真空脱ガス装置として、溶鋼鍋底部から撹拌用ガスを吹きこむ装置を使用するとともに、
    前記脱硫剤吹き付けノズルと真空容器内溶鋼表面との距離(以下「ランス高さ」という。)を2.6m以上とすることを特徴とする、溶鋼の脱硫方法。
  2. 脱硫前の溶鋼鍋内溶鋼面に存在しているスラグのFeO成分とMnO成分の合計が10質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の溶鋼の脱硫方法。
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