JP6052436B2 - 脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法 - Google Patents

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Description

本発明は、脱硫処理を施した溶銑に対して次工程の脱炭精錬などを行って溶銑から溶鋼を溶製する工程において、溶銑の脱硫処理時に生成し、脱硫処理後に溶銑中に懸濁(suspension)するなどして処理容器内に残留する脱硫スラグに起因する復硫(re-sulfurization)を防止する方法に関する。
近年、鋼材の高純度化や高機能化のニーズ増大により、極低硫及び/または極低燐の鋼種の比率が高まっている。このような環境下、製鋼工程では、コスト上昇やスラグ発生量の増加を招くことなく、極低硫及び/または極低燐の鋼種を溶製する技術が必要となっている。
低硫鋼や極低硫鋼を溶製する場合、溶銑段階で脱硫処理が行われている。この脱硫処理後には、脱硫処理によって生成した硫黄含有量の高い脱硫スラグが処理容器から排出され、その後、処理容器内の溶銑は、次工程の脱燐処理や脱炭精錬に供される。この場合、脱硫スラグは処理容器から排出されるが、溶銑中に懸濁している微細な脱硫スラグは次工程に持ち越される。また、処理容器の側壁に付着した脱硫スラグも次工程に持ち越される場合がある。脱硫処理が還元精錬であるのに対して次工程の脱燐処理及び脱炭精錬は酸化精錬であることから、次工程に持ち越された脱硫スラグに含有される硫黄は、酸化されて溶銑或いは溶鋼に戻る。これによって、溶銑或いは溶鋼の硫黄濃度が上昇する。この現象を、「復硫」と呼んでいる。
復硫によって溶銑或いは溶鋼の硫黄濃度が高くなり、硫黄の成分規格値を満足できない場合には、転炉での脱炭精錬後の二次精錬で溶鋼中の硫黄を除去することが必要となる。二次精錬として行う溶鋼脱硫精錬は溶銑の脱硫処理に比較して高コストであるのみならず、予定していなかった溶鋼脱硫精錬を行う必要が生じることから生産性が低下する。また、本来、溶鋼脱硫精錬を行う前提の場合も、溶鋼中硫黄濃度が高くなると、増加した分の硫黄を除去するために相当する分の精錬時間を延長する必要が生じ、生産性が低下する。
即ち、低硫鋼や極低硫鋼を安定して溶製しようとする場合には、脱硫処理後の溶銑の復硫を防止し、溶銑の硫黄濃度を溶銑脱硫処理終了時の値に維持することが極めて重要となる。
従来、溶銑の脱硫処理は、CaO系脱硫剤(lime based desulfurization flux)を溶銑中にインジェクションする方法や、機械攪拌式脱硫装置を用いてCaO系脱硫剤と溶銑とを攪拌して混合する方法、或いは、金属Mg系脱硫剤を溶銑中にインジェクションする方法などが一般的である。
これらの脱硫処理においては、脱硫剤の反応効率を向上させるために、インジェクション或いは機械攪拌によって脱硫剤を溶銑中に分散させている。脱硫剤の分散状態が良好な場合には、脱硫反応は効率的に行われる。しかし、脱硫剤の分散状態が良好な場合ほど、微細な脱硫剤が溶銑中に懸濁することになり、分散した脱硫剤の粒径が小さい場合には、溶銑から浮上し難い状態になる。脱硫処理後に溶銑を長時間に亘って静置すれば、溶銑中に懸濁した微細な脱硫剤を溶銑浴面に浮上させて処理容器から除去することができる。しかし、長時間の静置は生産性の低下及び溶銑温度の低下を招くことから、このような処置は工程的には行われない。
ところで、溶鋼中に懸濁する非金属介在物の浮上及び分離を促進させることを目的として、溶鋼中に攪拌用ガスを吹き込む手法が知られている。溶銑の脱硫処理においても、攪拌用ガスを利用する技術が提案されている。しかしながら、溶銑の脱硫処理において提案される技術は、溶鋼中に懸濁する非金属介在物の浮上及び分離を促進させることを目的とするものではなく、攪拌用ガスを別の目的で利用する技術である。
例えば特許文献1には、Mg−CaO−CaF2混合物80〜90質量%にAl23を10〜20質量%添加した脱硫剤を用い、この脱硫剤を搬送用ガスとともに溶銑中にインジェクションするか、若しくは上置き添加(top addition on the bath surface)後、或いは上置き添加するとともに、溶銑中への気体吹き込みによるバブリング撹拌を行って溶銑を脱硫処理することが提案されている。また、特許文献2には、溶銑中にインジェクションランスを介して脱硫剤を吹き込むとともに、溶銑浴面から1m以内の深さに浸漬したランスから攪拌用ガスを吹き込んでスラグと溶銑との界面近傍を強攪拌して溶銑を脱硫することが提案されている。
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、前記脱硫剤の利用により除滓が容易な脱硫スラグを形成することで復硫を防止する技術であり、攪拌用ガスの吹き込みは、添加した脱硫剤と溶銑との反応を攪拌によって促進させることを目的としている。また、特許文献2における攪拌用ガスの吹き込みは、溶銑上に浮上した脱硫剤と溶銑とを攪拌することを目的としている。つまり、特許文献1、2ともに、溶銑中に懸濁している微細な脱硫スラグの浮上及び分離の促進を目的としたものではない。また、特許文献1、2では、攪拌用ガスのインジェクションランスが必要であり、攪拌用ガスを使用しないで行う、一般的な機械攪拌式脱硫装置を用いて脱硫処理を行っている場合には、新たに攪拌用ガスのインジェクションランスが必要になるという問題もある。
一方、機械攪拌式脱硫装置で溶銑を脱硫処理する際に、攪拌用ガスのインジェクションランスを設置しないで、攪拌用ガスによって溶銑を攪拌する方法も提案されている。例えば、特許文献3には、インジェクションランスを設置せずに、機械攪拌式脱硫装置のインペラーの、羽根の回転方向の逆向き位置に設けた噴出口から、搬送用ガスとともに脱硫剤を溶銑中に吹き込んで脱硫する方法が提案されている。また、特許文献4には、インジェクションランスを設置せず、インペラーの回転軸底面から搬送用ガスとともに炭材を吹き込みながら脱硫処理する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献3における脱硫剤の吹き込みは、攪拌乱流エネルギー密度の高い領域に脱硫剤を吹き込むことで、脱硫反応を促進させることを目的としている。また、特許文献4における炭材の吹き込みは、炭材の溶銑への溶解を促進させることを目的としている。つまり、特許文献3、4ともに、脱硫処理中に攪拌用ガスを吹き込んで、脱硫反応を促進させる、または、炭材の溶銑への溶解を促進させるという技術であり、脱硫処理後には攪拌用ガスの吹き込みを停止している。従って、特許文献3及び特許文献4に開示される技術では、溶銑中に懸濁している微細な脱硫剤の浮上及び分離が促進されることは起こらない。このように、特許文献3、4ともに、脱硫処理後に溶銑中に懸濁している微細な脱硫剤の浮上及び分離の促進を目的としたものではない。
即ち、従来、脱硫処理後に溶銑中に懸濁している微細な脱硫剤の浮上及び分離を促進させ、脱硫処理後の溶銑の復硫を防止するという技術は提案されていない。
特開平8−269519号公報 特開平4−235210号公報 特開昭52−85013号公報 特開2005−200762号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、脱硫処理を施した溶銑に対して次工程の脱炭精錬などを行って溶銑から溶鋼を溶製する工程において、溶銑の脱硫処理時に生成し、溶銑中に懸濁している微細な脱硫スラグ及び/または処理容器の側壁に付着した脱硫スラグに起因する復硫を防止する方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]機械攪拌式脱硫装置を用いて処理容器内の溶銑に脱硫処理を実施し、次いで、前記機械攪拌式脱硫装置のインペラーに設置したガス噴出孔から前記溶銑中に不活性ガスを吹き込んで溶銑を攪拌し、この攪拌によって溶銑中に懸濁する脱硫スラグ及び/または処理容器内壁に付着する脱硫スラグを溶銑浴面に浮上させ、浮上させた脱硫スラグを処理容器から排出し、その後、処理容器内の溶銑を次工程に搬送する、脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法。
[2]前記ガス噴出孔の部位が溶銑に浸漬された状態で前記インペラーを回転させ、前記処理容器内の溶銑の静止湯面から該溶銑に浸漬させた前記インペラーの回転によって形成される渦中心の凹みまでの距離が、前記静止湯面からインペラー上端までの距離よりも小さくなるように、インペラーの設定位置及び/またはインペラーの回転数を調整する、上記[1]に記載の脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法。
[3]前記静止湯面から渦中心の凹みまでの距離を下記の(1)式〜(4)式によって算出する、上記[2]に記載の脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法。
但し、これらの式において、Hは、溶銑の静止湯面から渦中心の凹みまでの距離(m)、Nは、インペラーの回転数(回/min)、Dは、処理容器の内径(m)、θは、インペラーの羽根の傾斜角(rad)、bは、インペラーの高さ(m)、dは、インペラーの回転直径(m)、nPは、インペラーの羽根枚数、gは、重力加速度(=9.8m/s2)、Reは、レイノズル数(無次元)、ρは、溶融金属の密度(kg/m3)、μは溶融金属の粘度(Pa・s)である。
[4]前記ガス噴出孔は、1つのインペラーあたり2個以上設置され、インペラーの羽根の回転円周側側面に、鉛直方向の高さ位置を変えて設置されている、上記[1]ないし上記[3]のいずれか1項に記載の脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法。
本発明によれば、処理容器内に残留する脱硫スラグを、インペラーに設置したガス噴出孔から噴出する不活性ガスによる攪拌によって強制的に浮上させ、浮上させた脱硫スラグを処理容器から排出し、その後、溶銑を次工程の脱燐処理や脱炭精錬に供する。これにより、次工程の脱燐処理や脱炭精錬を実施する際には復硫の原因となる脱硫スラグの大半が除去されており、脱燐処理や脱炭精錬における復硫を低減することが実現される。その結果、溶鋼段階で二次精錬としての脱硫精錬を施さなくても極低硫鋼の溶製が可能となり、従来に比較して大幅に製造コストの削減並びに生産性の向上が達成される。
図1は、脱硫スラグ浮上・分離工程を実施している一例を示す概略図である。 図2は、機械攪拌式脱硫装置においてインペラーで攪拌して渦を形成させたときの概要図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
CaO系脱硫剤を用いた溶銑の脱硫処理では、反応界面積を高めるために、処理容器内でCaO系脱硫剤と溶銑とを攪拌し、CaO系脱硫剤を溶銑中に分散させる。CaO系脱硫剤としては、公知のものがいずれも問題なく使用でき、例えば生石灰(CaO)、石灰石(CaCO3)、消石灰(Ca(OH)2)、ドロマイト(CaO−MgO)や、これらに蛍石(CaF2)やアルミナ(Al23)などのCaO滓化促進剤(fluxing agent for CaO)を5〜30質量%程度混合させたものなどが使用される。
溶銑中の硫黄は、溶銑中に分散したCaO系脱硫剤と、「CaO+S→CaS+O」の反応式にそって反応し、CaSを含有する、硫黄濃度の高い脱硫スラグが生成する。この脱硫スラグは、脱硫処理終了時には溶銑浴面上に浮上し、溶銑浴面は脱硫スラグで覆われる。この脱硫スラグは、脱硫処理後にスラグ掻き出し機(slag dragger)などによって処理容器から排出される(「脱硫スラグ排滓工程」と呼ぶ)。この脱硫スラグ排滓工程後に、処理容器内の溶銑は次工程の脱燐処理工程や脱炭精錬工程に搬送される。
但し、脱硫スラグの溶銑中における浮上速度は、ストークスの法則に則って脱硫スラグの粒径に比例する。従って、溶銑中に懸濁する微細な脱硫スラグの浮上速度は遅く、微細な脱硫スラグは溶銑中に懸濁した状態のまま脱硫処理が終了する。また、処理容器内壁に付着した脱硫スラグも浮上しにくく、処理容器内壁に付着した脱硫スラグの大半も脱硫処理終了時にはそのまま残留する。溶銑中に懸濁した微細な脱硫スラグ及び処理容器内壁に付着した脱硫スラグの大半は、上記の脱硫スラグ排滓工程には、処理容器から排出されず処理容器内に残留する。
次工程の脱燐工程や脱炭精錬は酸化精錬である。従って、脱硫スラグ排滓工程で排出されずに処理容器内に残留した脱硫スラグが、次工程の脱燐処理工程や脱炭精錬工程に持ち越されると、脱硫スラグ中のCaSが酸化されてCaOが生成する。CaSの酸化によってCaSから解離した硫黄(S)が溶銑或いは溶鋼に移行し、溶銑或いは溶鋼の硫黄濃度が上昇する復硫が発生する。
本発明は、この復硫を防止するためになされたもので、本発明では、機械攪拌式脱硫装置でCaO系脱硫剤を用いて溶銑に対して脱硫処理を行った後、脱硫処理を行った機械攪拌式脱硫装置を用い、脱硫処理が施された処理容器内の溶銑に、機械攪拌式脱硫装置のインペラーに設置したガス噴出孔から不活性ガスを吹き込んで溶銑を攪拌し、溶銑中に懸濁する脱硫スラグ及び/または処理容器内壁に付着する脱硫スラグを溶銑浴面に強制的に浮上させ、浮上させた脱硫スラグを処理容器から排出し、その後、処理容器内の溶銑を次工程の脱燐処理工程及び脱炭精錬工程に搬送する。
ここで、本発明では、インペラーに設置したガス噴出孔から溶銑に不活性ガスを吹き込んで溶銑を攪拌し、溶銑中に懸濁する脱硫スラグ及び/または処理容器内壁に付着する脱硫スラグを溶銑浴面に強制的に浮上させる処理を、「脱硫スラグ浮上・分離工程」と呼ぶ。尚、上記説明は、脱硫処理を実施した機械攪拌式脱硫装置で、脱硫処理に引き続いて、脱硫スラグ浮上・分離工程を実施しているが、脱硫処理を実施した機械攪拌式脱硫装置とは別の機械攪拌式脱硫装置で脱硫スラグ浮上・分離工程を実施しても構わない。当然ではあるが、同一の機械攪拌式脱硫装置で行う方が、生産性が高く好ましい。
図1に、脱硫スラグ浮上・分離工程を実施している一例を概略図で示す。図1において、符号1は台車、2は処理容器(溶銑鍋)、3は溶銑、4はインペラー、5はインペラーの回転軸、6はインペラーの羽根に設置したガス噴出孔である。
機械攪拌式脱硫装置は、台車1に積載される処理容器2に収容された溶銑3に浸漬・埋没し、回転して溶銑3を攪拌するための耐火物製のインペラー4を備えている。このインペラー4は、昇降装置(図示せず)によってほぼ鉛直方向に昇降し、且つ、回転装置(図示せず)によって回転軸5を中心として回転するように構成されている。インペラー4は、回転軸5から放射状に突出する複数の羽根で構成されており、この羽根の回転円周側側面にガス噴出孔6が設置されている。つまり、放射状に突出する羽根の先端面にガス噴出孔6が開口しており、不活性ガスはガス噴出孔6を介して回転軸5に対して垂直の方向に噴射するように構成されている。
ガス噴出孔6は、インペラーの任意の羽根に少なくとも1個設置されている。つまり、ガス噴出孔6は、1つのインペラーあたり1個以上設置されている。回転軸5の内部には、ガス噴出孔6に連通するガス供給管(図示せず)が設けられており、回転軸5の上部から供給される不活性ガスが回転軸5の内部のガス供給管を通って羽根に設置されたガス噴出孔6に至り、ガス噴出孔6の先端部から溶銑3に吹き込まれ、溶銑3を攪拌するように構成されている。
脱硫剤の浮上及び分離を促進させる観点から、1つのインペラーあたりに、2個以上のガス噴出孔6を設置することが好ましい。また、1つのインペラーあたりにガス噴出孔6を2個以上設置する場合に、ガス噴出孔の鉛直方向の高さ位置を変えることが好ましい。具体的には、任意の2個のガス噴出孔の鉛直方向の高さ距離を100mm以上とすることが好ましい。
脱硫スラグ浮上・分離工程では、インペラーを回転させても、また、回転させなくともどちらでも構わない。但し、インペラーを回転させることで、インペラーの羽根からの不活性ガス噴出位置が処理容器内で分散され、脱硫スラグの浮上が促進されるので、インペラーを回転させることが好ましい。
インペラーを回転させる場合には、インペラーの回転によって形成される渦の形状を制御することが好ましい。つまり、処理容器内の溶銑の静止湯面からインペラーの回転によって形成される渦中心の凹みまでの距離が、前記静止湯面からインペラー上端までの距離よりも小さくなるように、インペラーの設定位置及び/またはインペラーの回転数を調整することが好ましい。
これは、処理容器内の溶銑の静止湯面からインペラーの回転によって形成される渦中心の凹みまでの距離が、前記静止湯面からインペラー上端までの距離よりも大きくなると、不活性ガスによって溶銑浴面まで浮上した脱硫スラグが再度溶銑に巻き込まれ、溶銑中に懸濁する微細な脱硫スラグを却って増加させる可能性があるからである。
脱硫処理は、インペラーの攪拌力によってCaO系脱硫剤を溶銑中に巻き込ませるために、通常、前記静止湯面から渦中心の凹みまでの距離が、前記静止湯面からインペラー上端までの距離よりも大きくなるように、インペラーの設定位置及び/またはインペラーの回転数を調整して実施する(例えば、特許文献4の図1及び図2を参照)。しかし、脱硫スラグ浮上・分離工程では、脱硫スラグの浮上を促進させるために、上記のように、脱硫処理とは逆の位置関係にすることが好ましい。
この場合、脱硫スラグ浮上・分離工程において、渦中心の凹み深さがインペラー上端位置の浸漬深さよりも小さいことを目視で確認してもよい。一方、本発明者らは、渦中心の凹み深さは、インペラーの形状、処理容器の形状及びインペラーの回転数などの攪拌条件から算出できることを提案している(日本国特許第4998676号を参照)。この計算手法を用いて、渦中心の凹み深さがインペラー上端位置の浸漬深さよりも小さいことを確認してもよい。
図2に、機械攪拌式脱硫装置においてインペラーで溶銑を攪拌して渦を形成させたときの概要を示す。図2において、2は処理容器(溶銑鍋)、3は溶銑、4は複数の羽根を有するインペラー、5はインペラーの回転軸、7は溶銑の静止湯面、Hは渦中心の凹み深さ、hはインペラー上端位置(羽根の上面位置)の浸漬深さである。図2は、内径がDである処理容器2に収容された溶銑3に、回転直径がd、高さがb、羽根の傾斜角がθであるインペラー4を浸漬させて溶銑3を攪拌する様子を示している。但し、溶銑3の静止湯面7は、インペラー4を溶銑3に浸漬させた時の湯面レベルである。溶銑3にはインペラー4の回転軸5を中心とする渦が形成され、この渦中心の凹み深さ(H)は静止湯面7からの距離として解析し、また、インペラー上端位置の浸漬深さ(h)は静止湯面7からの距離として解析する。
機械攪拌式脱硫装置の水モデル実験装置を用いて、種々の攪拌条件における渦中心の凹み深さ(H)を測定し、インペラーの回転数、処理容器の内径(D)、インペラーの回転直径(d)、インペラーの高さ(b)、インペラーの羽根の傾斜角(θ)などを用いて、渦中心の凹み深さ(H)を計算式により求めた。その結果、渦中心の凹み深さ(H)は、下記の(1)式〜(4)式を用いることで算出できることを見出した。但し、(1)式〜(4)式において、Hは渦中心の凹み深さ(m)、Nはインペラーの回転数(回/min)、Dは処理容器の内径(m)、θはインペラーの羽根の傾斜角(rad)、bはインペラーの高さ(m)、dはインペラーの回転直径(m)、nPはインペラーの羽根枚数、gは重力加速度(=9.8m/s2)、Reはレイノズル数(無次元)、ρは溶融金属の密度(kg/m3)、μは溶融金属の粘度(Pa・s)である。
この水モデル実験において得られた、(1)式〜(4)式を用いて計算される静止湯面7からの渦中心の凹み深さ(H)と、実機での溶銑3における静止湯面7からの渦中心の凹み深さ(H)の実測値とを比較した。その結果、両者は良く一致しており、インペラー4を用いた溶銑3の攪拌において、実測しなくても上記の式を用いて渦中心の凹み深さ(H)が推定可能であることを確認した。また、処理容器やインペラーのサイズ、溶銑の処理量、インペラー上端位置の浸漬深さ(h)を変化させた場合にも同様の結果が得られることを確認した。
尚、処理容器には、横断面が楕円形の処理容器もあり、また、横断面は円形であるが、側面が上方に向かって拡大する処理容器もある。このような場合、処理容器の内径(D)は、横断面が楕円形の場合には長径と短径との平均値とし、側面が上方に向かって拡大する場合には溶銑と接触する範囲の内径の平均値とすればよい。また、インペラーには、上端径と下端径とが異なるインペラーがある。この場合は、インペラーの回転直径(d)は、上端径と下端径との平均値とすればよい。
つまり、本発明者らは、静止湯面7を基準とする渦中心の凹み深さ(H)は、上記(1)式〜(4)式に示すように、処理容器のサイズ、溶銑の処理量、インペラーの形状及び回転数、溶銑の物性値などによって一義的に決定されることを確認した。尚、インペラー上端位置の浸漬深さ(h)は、インペラー4の基準位置からの下降距離及びインペラー4が埋没したときの溶銑湯面位置から算出する。
従って、本発明において、脱硫処理後の脱硫スラグ浮上・分離工程では、(1)式〜(4)式で算出される渦中心の凹み深さ(H)がインペラー上端位置の浸漬深さ(h)よりも小さくなる条件で溶銑3を攪拌することが好ましい。この場合、渦中心の凹み深さ(H)がインペラー上端位置の浸漬深さ(h)よりも100mm以上小さくなる条件とすることが好ましい。尚、脱硫処理では、(1)式〜(4)式で算出される渦中心の凹み深さ(H)がインペラー上端位置の浸漬深さ(h)よりも大きくなる条件で溶銑3を攪拌することが好ましい。
渦中心の凹み深さ(H)がインペラー上端位置の浸漬深さ(h)よりも小さくなる条件を満たすためには、(1)式〜(4)式からも明らかなように、インペラーの回転数(N)を低下させればよいことがわかる。(1)式〜(4)式において、処理容器及びインペラーを変更しない限り、その他の条件は変えることができない。また、渦中心の凹み深さ(H)が脱硫処理時と同一であっても、インペラーを下降させてインペラー上端位置の浸漬深さ(h)を渦中心の凹み深さ(H)よりも大きくすれば、目的とする脱硫スラグ浮上・分離工程を行うことができる。
従って、本発明では、インペラー上端位置の浸漬深さ(h)を大きくする、及び/またはインペラーの回転数(N)を低下させて、脱硫スラグ浮上・分離工程を実施する。この脱硫スラグ浮上・分離工程を行う際に、脱硫処理中の撹拌状態から、一旦インペラーの回転を停止させ、その後、インペラーの浸漬位置を深くする、及び/または、インペラーを再び低速で回転させてもよい。また、脱硫処理中の撹拌状態から、インペラーの回転数を低減する、または、インペラーの回転数を低減していき、所定の回転数になった以降、インペラーの浸漬位置を深くしてもよい。
この場合、ガス噴出孔6からの不活性ガスによる脱硫スラグの浮上を妨げないようにするためには、水平方向の溶銑の流速は小さい方が望ましいので、インペラーの回転数を低減する方が好ましい。但し、インペラーの回転を停止してしまうと、不活性ガスの噴出位置が処理容器内の一定位置となってしまうので、インペラーの回転を停止することは好ましくない。
溶銑中に懸濁する脱硫スラグ或いは処理容器内壁に付着する脱硫スラグが処理容器から除去されることで、次工程の脱燐処理工程及び脱炭精錬工程に持ち越される脱硫スラグが減少し、脱燐処理工程や脱炭精錬工程における復硫が抑制される。
インペラーのガス噴出孔から吹き込む不活性ガスとしては、アルゴンガスなどの希ガスや窒素ガスを用いることができる。この場合、不活性ガスの吹き込み流量は、0.010Nm3/(min・溶銑-ton)以上とすることが好ましい。不活性ガスの吹き込み流量が0.010Nm3/(min・溶銑-ton)未満の場合は、攪拌力が弱く、溶銑中に懸濁する脱硫スラグや処理容器内壁に付着する脱硫スラグを十分に浮上させることができず、復硫を十分に抑制することができないからである。不活性ガス吹き込み流量の上限値は特に規定する必要はないが、大量に吹き込んでも復硫防止の効果は飽和して、それ以上に復硫を防止する効果はなく、逆に、過度の吹き込み流量はスプラッシュの発生や溶銑温度の低下により操業を妨げる。従って、上限値は0.10Nm3/(min・溶銑-ton)程度で十分である。
また、不活性ガスの吹き込み時間は、長いほど有効であるが、長時間の吹き込みは、処理時間の延長を招くので、30秒間以上3分間以下とすることが好ましい。30秒間以上3分間以下で十分な効果が得られる。
溶銑の脱硫処理は、図1に示す構成の機械攪拌式脱硫装置を用い、取鍋型の処理容器に収容された溶銑にインペラーを浸漬し、このインペラーを回転させて溶銑とCaO系脱硫剤とを攪拌して実施する。
不活性ガスによる攪拌によって強制的に浮上させた脱硫スラグの処理容器からの除去方法としては、以下の方法を用いることができる。例えば、溶銑が流出しない程度に処理容器を傾動させ、スラグ掻き出し機などを用いて機械的に描き出す方法、或いは、真空式スラグ除去装置を用い、吸引して除去する方法などを用いることができる。脱硫スラグを排出した後は、溶銑温度の低下を防止するために、処理容器内に保温剤を添加することが好ましい。
尚、使用する溶銑は、高炉やシャフト炉で溶製された溶銑であり、脱硫処理を施す前に、脱珪処理や脱燐処理が施されていても構わない。脱燐処理が予め施された溶銑の場合には、次工程は転炉での脱炭精錬工程であるので、不活性ガスによる攪拌によって強制的に浮上させた脱硫スラグの処理容器からの除去処理後の溶銑を、脱炭精錬を行う転炉に搬送する。一方、脱硫処理後に予備処理として溶銑の脱燐処理を実施する場合には、次工程は脱燐処理工程であるので、不活性ガスによる攪拌によって強制的に浮上させた脱硫スラグの処理容器からの除去処理後の溶銑を、脱燐処理を実施する設備に搬送する。
以上説明したように、本発明によれば、処理容器内に残留する脱硫スラグを不活性ガスによる攪拌によって強制的に浮上させ、浮上させた脱硫スラグを処理容器から排出し、その後、溶銑を次工程の脱燐処理や脱炭精錬に供する。その結果、脱燐処理や脱炭精錬を実施する際には復硫の原因となる脱硫スラグの大半が除去されており、脱燐処理や脱炭精錬における復硫を低減することが実現される。
鋼製品の硫黄濃度規格が0.0024質量%以下である低硫鋼を脱硫処理、脱燐処理の順で溶製するにあたり、従来溶製法と本発明溶製法とを、それぞれ150チャージづつ実施し、次工程の脱燐処理終了時の溶銑中硫黄濃度を比較する試験を行った。脱燐処理終了時の溶銑中硫黄濃度に差が生じれば、それは復硫量が異なることに起因する。
ここで、従来溶製法は、機械攪拌式脱硫装置でのCaO系脱硫剤による脱硫処理後、脱硫スラグ浮上・分離工程を行わずに、溶銑浴面を覆う脱硫スラグを除去し、脱硫スラグを除去した後、直ちに、次工程の脱燐処理工程及び脱炭精錬工程を経て低硫鋼を溶製するという溶製方法である。一方、本発明溶製法は、機械攪拌式脱硫装置でのCaO系脱硫剤による脱硫処理後、インペラーに設置したガス噴出孔からの不活性ガス吹き込みによる脱硫スラグ浮上・分離工程を行い、この脱硫スラグ浮上・分離工程後に溶銑浴面を覆う脱硫スラグを除去し、その後、次工程の脱燐処理工程及び脱炭精錬工程を経て低硫鋼を溶製するという溶製方法である。
具体的な試験方法は、CaO系脱硫剤としてCaO−CaF2脱硫剤を使用し、機械攪拌式脱硫装置で溶銑鍋内の溶銑の脱硫処理を行い、溶銑の硫黄濃度を0.0010質量%以下まで低下させた。脱硫処理後の溶銑の硫黄濃度は0.0006質量%であった。使用した4種類のインペラーA、B、C、Dは、全て、回転直径(d)が1.4m、インペラーの高さ(b)が0.8mで、4枚の羽根を有し、羽根に傾斜角度のないもの(θ=π/2)である。
インペラーAは、1枚の羽根の回転円周側側面に1個のガス噴出孔を有するものである。インペラーB、Cは、対角線上の2枚の羽根の回転円周側側面にそれぞれ1個のガス噴出孔を有するものである。インペラーBは、2つのガス噴出孔が鉛直方向の同じ高さ位置に設置され、インペラーCは、2つのガス噴出孔が鉛直方向の異なる高さ位置に設置されたものである。インペラーCの2つのガス噴出孔は、鉛直方向に100mm離れた位置に設置されている。インペラーDは、従来溶製法で用いた、ガス噴出孔を備えていないインペラーである。
用いた溶銑の脱硫処理前の化学成分は、C:3.5〜5.0質量%、Si:0.1〜0.3質量%、S:0.025〜0.035質量%、P:0.10〜0.15質量%で、溶銑温度は1250〜1350℃の範囲であった。脱硫処理は、処理容器として250〜350トンの溶銑が収納可能な溶銑鍋(内径D=3.9m)を用い、処理対象の溶銑量は約300トンとした。用いた脱硫剤の原単位は5.0〜7.5kg/溶銑-tonとした。
従来溶製法では、インペラーDを使用して脱硫処理を行い、溶銑浴面を覆う脱硫スラグを溶銑鍋から除去する脱硫スラグ排滓工程、溶銑鍋から装入鍋への溶銑の装入、装入鍋から転炉への溶銑の装入、転炉での溶銑の脱燐処理、脱燐処理後の装入鍋への出湯、出湯後の脱燐スラグの装入鍋からの除去、装入鍋から転炉への溶銑の装入、転炉での溶銑の脱炭精錬を、この順に行った。
一方、本発明溶製法では、インペラーA、B、Cを使用して脱硫処理を行い、脱硫処理後、インペラーA、B、Cに設置されたそれぞれのガス噴出孔からの不活性ガス吹き込みによる脱硫スラグ浮上・分離工程、浮上した脱硫スラグを溶銑鍋から除去する脱硫スラグ排滓工程、溶銑鍋から装入鍋への溶銑の装入、装入鍋から転炉への溶銑の装入、転炉での溶銑の脱燐処理、脱燐処理後の装入鍋への出湯、出湯後の脱燐スラグの装入鍋からの除去、装入鍋から転炉への溶銑の装入、転炉での溶銑の脱炭精錬を、この順に行った。
従来溶製法及び本発明溶製法とも、脱燐処理中に溶銑の硫黄含有量が増加する原因となる副原料は添加しないで脱燐処理を行った。脱硫スラグを溶銑鍋から除去する脱硫スラグ排滓工程後、及び、脱燐処理後に溶銑から分析用試料を採取し、分析用試料の硫黄濃度を分析した。
表1に、従来溶製法及び本発明溶製法における復硫量の平均値を示す。復硫量は、脱燐処理終了時の溶銑中硫黄濃度と脱硫スラグ排滓工程後の溶銑中硫黄濃度との差とした。その後の脱炭精錬以降は、復硫量がゼロであることを確認している。尚、表1に示す本発明溶製法は、インペラーAを使用し、脱硫スラグ浮上・分離工程では、0.10Nm3/(min・溶銑-ton)のアルゴンガスを30秒間吹き込んだときのデータである。
従来溶製法では、復硫によって溶鋼中硫黄濃度が上昇し、復硫量は、試験した150チャージの平均で0.0052質量%であった。これに対し、本発明溶製法では、復硫量は0.0007質量%〜0.0015質量%であり、平均で0.0011質量%であり、著しく低減していた。
従来溶製法では、後工程の転炉出鋼時の硫黄濃度が規格値を上回ったチャージがあり、転炉からの出鋼後、取鍋精錬設備(LF設備)において取鍋内の溶鋼に対して脱硫精錬を実施する必要が生じた。しかし、本発明溶製法では、全チャージで脱炭精錬後の溶鋼中硫黄濃度を、低硫鋼種の規格値の0.0024質量%以下に制御できることが確認できた。従って、本発明溶製法では、出鋼後の取鍋精錬設備(LF設備)における脱硫精錬を完全に省略することが可能であった。
更に、本発明溶製法における脱硫スラグ浮上・分離工程において、処理容器内の溶銑の静止湯面からこの溶銑に浸漬させたインペラーの回転によって形成される渦中心の凹みまでの距離(H)と、前記静止湯面からインペラー上端までの距離(h)との関係が復硫量に及ぼす影響を調査する試験を行った。
具体的には、[1]脱硫処理後にインペラーの鉛直方向の設定位置を変化させずに(距離(h)は一定)、インペラーの回転数を低下させて距離(H)を変化させた場合と、[2]脱硫処理後にインペラーの鉛直方向の設定位置を下方に変化させる(距離(h)は大きくなる)とともに、インペラーの回転数を低下させて距離(H)も変化させた場合との2つの方法で行った。この場合、距離(H)は、(1)式〜(4)式を用いて算出した。使用したインペラーはインペラーA、B、Cであり、比較のためにインペラーDも使用した。
本発明溶製法では、脱硫処理後の脱硫スラグ浮上・分離工程を、0.10Nm3/(min・溶銑-ton)のアルゴンガスを30秒間吹き込んで実施した。インペラーDを使用した従来溶製法では、脱硫処理後、アルゴンガスを吹き込まずに、インペラーの回転数を変化させて距離(H)を変化させ、その状態で30秒間保持した。
表2に、各処理条件と復硫量とを示す。
従来溶製法の比較例1、2では、距離(H)と距離(h)との関係に拘わらず、復硫によって溶銑中硫黄濃度が上昇し、復硫量はそれぞれ0.0052質量%、0.0050質量%であった。
これに対して、本発明例1〜6では、復硫量は、0.0005〜0.0015質量%であり、比較例1、2の復硫量の半分以下にまで低下していた。
特に、距離(H)が距離(h)よりも小さい本発明例2、4、6では、復硫量は0.0005〜0.0010質量%であり、0.0010質量%以下の復硫量が達成され、距離(H)が距離(h)よりも大きい本発明例1、3、5の復硫量(0.0010〜0.0015質量%)に比較して大幅に復硫量を低減することができた。つまり、距離(H)を距離(h)よりも小さくすることで、復硫量が低減することが確認できた。
また、インペラーA、B、Cを比較すると、距離(H)が距離(h)よりも小さい条件である本発明例2、4、6において、インペラーA(本発明例2)及びインペラーB(本発明例4)では復硫量は同等であるのに対し、インペラーC(本発明例6)では復硫量が大幅に低減していた。
即ち、対角線上の2枚の羽根の回転円周側側面に、それぞれ1個のガス噴出孔を鉛直方向の異なる高さ位置に設置することで、復硫量を特に低減できることが確認できた。
1 台車
2 処理容器
3 溶銑
4 インペラー
5 回転軸
6 ガス噴出孔
7 静止湯面

Claims (4)

  1. 機械攪拌式脱硫装置を用いて処理容器内の溶銑に脱硫処理を実施し、次いで、前記機械攪拌式脱硫装置のインペラーに設置したガス噴出孔から前記溶銑中に不活性ガスを吹き込んで溶銑を攪拌する際に、前記ガス噴出孔の部位が溶銑に浸漬された状態で前記処理容器内の溶銑の静止湯面から該溶銑に浸漬させた前記インペラーの回転によって形成される渦中心の凹みまでの距離が、前記静止湯面からインペラー上端までの距離よりも小さくなるように、インペラーの設定位置及び/またはインペラーの回転数を調整しながら、前記インペラーを回転させて前記溶銑を撹拌し、この攪拌によって溶銑中に懸濁する脱硫スラグ及び/または処理容器内壁に付着する脱硫スラグを溶銑浴面に浮上させ、浮上させた脱硫スラグを処理容器から排出し、その後、処理容器内の溶銑を次工程に搬送する、脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法。
  2. 前記静止湯面から渦中心の凹みまでの距離を下記の(1)式〜(4)式によって算出す
    る、請求項1に記載の脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法。

    但し、これらの式において、Hは、溶銑の静止湯面から渦中心の凹みまでの距離(m)、Nは、インペラーの回転数(回/min)、Dは、処理容器の内径(m)、θは、インペラーの羽根の傾斜角(rad)、bは、インペラーの高さ(m)、dは、インペラーの回転直径(m)、nは、インペラーの羽根枚数、gは、重力加速度(=9.8m/s)、Reは、レイノズル数(無次元)、ρは、溶融金属の密度(kg/m)、μは溶融金属の粘度(Pa・s)である。
  3. 前記ガス噴出孔は、1つのインペラーあたり2個以上設置され、インペラーの羽根の回転円周側側面に、鉛直方向の高さ位置を変えて設置されている、請求項1または請求項に記載の脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法。
  4. 機械攪拌式脱硫装置を用いて処理容器内の溶銑に脱硫処理を実施し、次いで、前記機械攪拌式脱硫装置のインペラーに設置したガス噴出孔から前記溶銑中に不活性ガスを吹き込んで溶銑を攪拌し、この攪拌によって溶銑中に懸濁する脱硫スラグ及び/または処理容器内壁に付着する脱硫スラグを溶銑浴面に浮上させ、浮上させた脱硫スラグを処理容器から排出し、その後、処理容器内の溶銑を次工程に搬送する脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法であって、前記ガス噴出孔は、1つのインペラーあたり2個以上設置され、インペラーの羽根の回転円周側側面に、鉛直方向の高さ位置を変えて設置されている、脱硫処理後の溶銑の復硫防止方法。
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