JP2017195158A - 蓄電素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】高レートでの放電による出力の低下を十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制できる蓄電素子の提供。
【解決手段】正極活物質層を有する正極を備え、正極活物質層が、粒子状の正極活物質を含み、且つ粒子状の黒鉛及び黒鉛以外の導電助剤を導電助剤として含み、黒鉛の形状が薄片状であり、正極活物質の平均粒子径をD1、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径をD2、黒鉛の平均粒子径をD3としたときに、D2<D1<D3の関係式を満たす、蓄電素子。黒鉛以外の導電助剤が非晶質炭素であることが好しい蓄電素子。黒鉛の平均粒子径D3が7〜20μmであり、正極活物質層の密度が1.80〜250g/cm3であるが、更に好ましい蓄電素子。
【選択図】なし
【解決手段】正極活物質層を有する正極を備え、正極活物質層が、粒子状の正極活物質を含み、且つ粒子状の黒鉛及び黒鉛以外の導電助剤を導電助剤として含み、黒鉛の形状が薄片状であり、正極活物質の平均粒子径をD1、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径をD2、黒鉛の平均粒子径をD3としたときに、D2<D1<D3の関係式を満たす、蓄電素子。黒鉛以外の導電助剤が非晶質炭素であることが好しい蓄電素子。黒鉛の平均粒子径D3が7〜20μmであり、正極活物質層の密度が1.80〜250g/cm3であるが、更に好ましい蓄電素子。
【選択図】なし
Description
本発明は、非水電解質二次電池などの蓄電素子に関する。
従来、蓄電素子としては、正極活物質と導電助剤を含む正極合剤と、該正極合剤が塗工される正極集電体とを有する正極を備えた非水電解質二次電池が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載の電池では、正極活物質は、Li、Ni、Mn及びCoを含有する複合酸化物である第1の正極活物質と第2の正極活物質を有する。第1の正極活物質のNi含有量は、第2の正極活物質のNi含有量よりも大きく、且つ、第1の正極活物質の平均粒子径は、第2の正極活物質の平均粒子径よりも大きい。また、導電助剤は、平均粒子径が互いに異なる第1の導電助剤と第2の導電助剤を有する。
特許文献1に記載の電池では、高レートでの放電による出力の低下を十分に抑制することができない場合がある。また、高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができない場合がある。
本実施形態は、高レートでの放電による出力の低下を十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができる蓄電素子を提供することを課題とする。
本実施形態の蓄電素子は、正極活物質層を有する正極を備え、正極活物質層は、粒子状の正極活物質を含み、且つ粒子状の黒鉛および黒鉛以外の導電助剤を導電助剤として含み、黒鉛の形状は薄片状であり、正極活物質の平均粒子径をD1、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径をD2、黒鉛の平均粒子径をD3としたときに、D1、D2、およびD3は、
D2<D1<D3の関係式を満たす。
斯かる構成の蓄電素子によれば、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径が正極活物質の平均粒子径よりも小さいため、正極活物質間の空隙に黒鉛以外の導電助剤を十分に充填できる。これにより、距離的により近い関係にある正極活物質粒子間に良好な電子伝導路が形成される。また、黒鉛の平均粒子径が正極活物質粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ黒鉛の形状が薄片状であるため、距離的により遠い関係にある正極活物質粒子群間に良好な電子伝導路が形成される。そのため、正極内に十分な電子伝導路を形成できる。これにより、高レートでの放電による出力低下を十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができる。
D2<D1<D3の関係式を満たす。
斯かる構成の蓄電素子によれば、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径が正極活物質の平均粒子径よりも小さいため、正極活物質間の空隙に黒鉛以外の導電助剤を十分に充填できる。これにより、距離的により近い関係にある正極活物質粒子間に良好な電子伝導路が形成される。また、黒鉛の平均粒子径が正極活物質粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ黒鉛の形状が薄片状であるため、距離的により遠い関係にある正極活物質粒子群間に良好な電子伝導路が形成される。そのため、正極内に十分な電子伝導路を形成できる。これにより、高レートでの放電による出力低下を十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができる。
上記の蓄電素子では、黒鉛以外の導電助剤は、非晶質炭素であってもよい。斯かる構成の蓄電素子によれば、高レートでの放電による出力の低下をより十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下をより十分に抑制することができる。
上記の蓄電素子では、黒鉛の平均粒子径D3は、7μm以上20μm以下であってもよい。上記を満たすことにより、上記の蓄電素子は、高レートでの放電による出力の低下をより十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下をより十分に抑制することができる。
上記の蓄電素子では、正極活物質層の密度は、1.80g/cm3以上2.50g/cm3以下であってもよい。上記を満たすことにより、上記の蓄電素子は、高レートでの放電による出力の低下をより十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下をより十分に抑制することができる。
上記の蓄電素子では、正極は絶縁粒子を含む絶縁層を有し、絶縁粒子の平均粒子径をD4としたときに、D1およびD4は、0.1≦D4/D1≦1の関係式を満たしてもよい。斯かる構成の蓄電素子によれば、高レートでの放電による出力の低下をより十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下をより十分に抑制することができる。
本実施形態によれば、高レートでの放電による出力の低下を十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができる蓄電素子を提供できる。
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1〜図7を参照しつつ説明する。蓄電素子には、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
本実施形態の蓄電素子1は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子1は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子1は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子1は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子1と組み合わされて蓄電装置100に用いられる。前記蓄電装置100では、該蓄電装置100に用いられる蓄電素子1が電気エネルギーを供給する。
蓄電素子1は、図1〜図7に示すように、正極11と負極12とを含む電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3の外側に配置される外部端子7であって電極体2と導通する外部端子7と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2、ケース3、及び外部端子7の他に、電極体2と外部端子7とを導通させる集電体5等を有する。
電極体2は、正極11と負極12とがセパレータ4によって互いに絶縁された状態で積層された積層体22が巻回されることによって形成される。
正極11は、金属箔111(正極基材)と、金属箔111の上に形成された正極活物質層112と、正極活物質層112の上に形成された絶縁層113と、を有する。本実施形態では、正極活物質層112は、金属箔111の両面にそれぞれ重なる。絶縁層113は、各正極活物質層112の一方の面であって金属箔111と重ならない方の面にそれぞれ重なる。正極活物質層112は、金属箔111の厚み方向の両側にそれぞれ配置され、同様に、絶縁層113は、金属箔111の厚み方向の両側にそれぞれ配置される。なお、正極11の厚みは、通常、40μm以上150μm以下である。
金属箔111は帯状である。本実施形態の正極11の金属箔111は、例えば、アルミニウム箔である。正極11は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、正極活物質層112の非被覆部(正極活物質層112が形成されていない部位)115を有する。
正極活物質層112は、正極活物質と、導電助剤と、バインダとを含む。例えば、正極活物質層112は、正極活物質を80質量%以上99質量%以下含み、導電助剤を1質量%以上10質量%以下含んでもよく、バインダを1質量%以上10質量%以下含んでもよい。なお、正極活物質層112の厚みは、20μm以上100μm以下であってもよい。
正極11の正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物である。正極11の正極活物質は、粒子状である。正極11の正極活物質の平均粒子径をD1とすると、D1は、通常3μm以上8μm以下である。
正極11の正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極活物質は、例えば、LiaMebOc(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表わされる複合酸化物(LiaCOyO2、LiaNixO2、LiaMnzO4、LiaNixCoyMnzO2等)、LiaMeb(XOc)d(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(LiaFebPO4、LiaMnbSiO4、LiaCobPO4F等)である。本実施形態の正極11の正極活物質は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2である。正極活物質は、一次粒子が凝集した二次粒子を含む。斯かる二次粒子は、中空に形成されているものを含む。
正極活物質層112は、導電助剤として、黒鉛、及び黒鉛以外の導電助剤を含む。正極活物質層112は、増粘剤、分散剤を含んでいてもよい。黒鉛以外の導電助剤としては、金属微粒子、及びケッチェンブラック(登録商標)やアセチレンブラックなどの非晶質炭素が挙げられる。導電助剤は、粒子状である。本実施形態の導電助剤は、非晶質炭素および黒鉛である。非晶質炭素はアセチレンブラックであり、黒鉛は薄片状黒鉛である。黒鉛以外の導電助剤の形状は、通常球状であり、薄片状黒鉛の形状は、例えば板状である。上記の薄片状黒鉛は、天然黒鉛や人造黒鉛を薄片化することによって得られる。薄片化の方法としては、例えば天然黒鉛や人造黒鉛を超音波や各種粉砕機を用いて機械的又は物理的に粉砕する方法がある。薄片状黒鉛の厚み方向の寸法をd、厚み方向に垂直な方向の長さ(最も長い長さ)の寸法をlとすると、dに対するlの比(l/d)の値は、2以上1000以下であってもよい。黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径をD2とすると、D2は、0.01μm以上5μm以下であってもよい。薄片状黒鉛の平均粒子径をD3とすると、D3は、7μm以上20μm以下であってもよい。
正極11の正極活物質の平均粒子径をD1、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径をD2、および黒鉛(薄片状黒鉛)の平均粒子径をD3としたときに、D1、D2、およびD3は、D2<D1<D3の関係式を満たす。
D1に対するD2の比率、つまり、D2/D1は、0.001以上1以下であってもよい。D1に対するD3の比率、つまり、D3/D1は、1以上10以下であってもよい。
正極活物質の平均粒子径D1、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径D2、および黒鉛(薄片状黒鉛)の平均粒子径D3は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定する。具体的には、正極活物質層の厚み方向の任意の断面を走査型電子顕微鏡で撮像し、撮像した画像中の任意の50個の粒子の粒子径を測定する。次に、その平均値を算出することにより平均粒子径を測定する。なお、粒子が真球状でない場合、最も長い径を測定する。薄片状黒鉛の場合、D3は先述のlに相当する。正極活物質粒子、黒鉛、および黒鉛以外の導電助剤は、せん断力により解砕され、互いの凝集力により凝集される。これらが解砕される場合、二次粒子が一次粒子になる場合がある。これらが一次粒子まで解砕される場合、撮像した画像中の任意の50個の粒子として、一次粒子および二次粒子の両方が観察されることになる。なお、上記各粒子が単独の一次粒子であるか二次粒子であるかは技術常識により判断する。また、二次粒子同士の境界についても技術常識により判断する。
D1に対するD2の比率、つまり、D2/D1は、0.001以上1以下であってもよい。D1に対するD3の比率、つまり、D3/D1は、1以上10以下であってもよい。
正極活物質の平均粒子径D1、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径D2、および黒鉛(薄片状黒鉛)の平均粒子径D3は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定する。具体的には、正極活物質層の厚み方向の任意の断面を走査型電子顕微鏡で撮像し、撮像した画像中の任意の50個の粒子の粒子径を測定する。次に、その平均値を算出することにより平均粒子径を測定する。なお、粒子が真球状でない場合、最も長い径を測定する。薄片状黒鉛の場合、D3は先述のlに相当する。正極活物質粒子、黒鉛、および黒鉛以外の導電助剤は、せん断力により解砕され、互いの凝集力により凝集される。これらが解砕される場合、二次粒子が一次粒子になる場合がある。これらが一次粒子まで解砕される場合、撮像した画像中の任意の50個の粒子として、一次粒子および二次粒子の両方が観察されることになる。なお、上記各粒子が単独の一次粒子であるか二次粒子であるかは技術常識により判断する。また、二次粒子同士の境界についても技術常識により判断する。
正極活物質に対する非晶質炭素の質量の比は、0.01以上0.15以下であってもよい。正極活物質に対する薄片状黒鉛の質量の比は、0.01以上0.15以下であってもよい。
正極活物質層112に用いられるバインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレンとビニルアルコールの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダは、ポリフッ化ビニリデンである。
正極活物質層112の密度は、1.80g/cm3以上2.50g/cm3以下であってもよい。密度は、金属箔111の両面の上に配置された2層分における密度である。正極11が、金属箔111と、正極活物質層112とを備える場合、正極活物質層112の密度は、例えば、以下のようにして求めることができる。まず、正極11を一定面積に切り出して供試体を作製し、この供試体の厚みT1と、重量W1とを測定する。次に、溶剤を用いて、この供試体から正極活物質層112を溶出させた後、金属箔111の厚みT2と重量W2とを測定する。続いて、(W1−W2)/(供試体の面積×(T1−T2))により、正極活物質層112の密度を算出する。なお、蓄電素子1から取り出した正極11について、正極活物質層112の密度を測定する場合には、放電状態にて蓄電素子1を解体した後、正極11を取り出し、取り出した正極11をジメチルカーボネート(DMC)などの溶媒を用いて洗浄し、乾燥して密度測定用の正極11を得て、上記と同様にして密度を算出する。
また、正極活物質層112の上に絶縁層113が形成されている場合は、テープによる剥離、切削などにより、絶縁層113を正極活物質層112から剥離させた後に、上記と同様にして密度を算出する。
正極活物質層112の密度は、例えば、正極活物質層112を作製するときのプレス圧を大きくすることによって大きくでき、プレス圧を小さくすることによって小さくできる。
また、正極活物質層112の上に絶縁層113が形成されている場合は、テープによる剥離、切削などにより、絶縁層113を正極活物質層112から剥離させた後に、上記と同様にして密度を算出する。
正極活物質層112の密度は、例えば、正極活物質層112を作製するときのプレス圧を大きくすることによって大きくでき、プレス圧を小さくすることによって小さくできる。
絶縁層113は、電気絶縁性を有する絶縁粒子を含み、さらに、バインダを含む。絶縁層113は、増粘剤、分散剤を含んでいてもよい。絶縁層113の厚みは、2μm以上10μm以下であってもよい。絶縁粒子の平均粒子径をD4とすると、D4は、0.1μm以上10μm以下であってもよい。D1に対するD4の比率、つまり、D4/D1は、0.1≦D4/D1≦1であってもよい。絶縁粒子の平均粒子径D4は、正極活物質の平均粒子径D1等と同様にして測定する。
絶縁層113は、Liイオンなどが層内で移動できるように、絶縁粒子間の空隙によって多孔質に形成されている。ここで、絶縁粒子は、電気伝導率が10−6S/m未満の絶縁材料を95質量%以上含むものとする。
絶縁層113は、絶縁粒子を30質量%以上99質量%以下含有してもよい。絶縁層113は、絶縁粒子を70質量%以上99質量%以下含有することが好ましい。
絶縁層113は、通常、バインダを1質量%以上10質量%以下含有する。絶縁層113の電気絶縁性は、正極活物質層112及び負極活物質層122(後述する)のいずれの電気絶縁性よりも高い。絶縁層113の電気伝導率は、10−6S/m未満である。
絶縁粒子としては、例えば、酸化物粒子、窒化物粒子、イオン結晶粒子、共有結合性結晶粒子、粘度粒子、鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物質の粒子などが挙げられる。酸化物粒子(金属酸化物粒子)としては、例えば、酸化鉄、SiO2、Al2O3、TiO2、BaTiO2、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物などの粒子が挙げられる。窒化物粒子としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの粒子が挙げられる。イオン結晶粒子としては、例えば、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの粒子が挙げられる。共有結合性結晶粒子としては、例えば、シリコン、ダイヤモンドなどの粒子が挙げられる。粘土粒子としては、例えば、タルク、モンモリロナイトなどの粒子が挙げられる。鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物質の粒子としては、例えば、ベーマイト(アルミナ水和物)、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカなどの粒子が挙げられる。なお、水和物を含む天然鉱物(例えば、上記の粘土、鉱物資源由来物質)を焼成した焼成体を採用することもできる。本実施形態では、絶縁粒子は、Al2O3粒子である。
絶縁層113のバインダとしては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、又は、ポリカーボネートなどが挙げられる。
負極12は、金属箔121(負極12の基材層)と、金属箔121の上に形成された負極活物質層122と、を有する。本実施形態では、負極活物質層122は、金属箔121の両面にそれぞれ重ねられる。金属箔121は帯状である。本実施形態の負極の金属箔121は、例えば、銅箔である。負極12は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、負極活物質層122の非被覆部(負極活物質層122が形成されていない部位)125を有する。なお、負極12の厚みは、40μm以上150μm以下であってもよい。
負極活物質層122は、負極活物質と、バインダと、を含む。負極活物質層122は、セパレータ4を介して正極11と向き合うように配置される。負極活物質層122の幅は、正極活物質層112の幅よりも大きい。負極活物質層122の厚みは、10μm以上50μm以下であってもよい。
負極活物質層122では、バインダの比率は、負極活物質と負極のバインダとの合計質量に対して、5質量%以上10質量%以下であってもよい。
負極12の負極活物質は、負極12において充電反応及び放電反応の電極反応に寄与し得るものである。例えば、前記負極活物質は、グラファイト、非晶質炭素(難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素)などの炭素材料、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。前記負極活物質は、粒子状である。本実施形態の負極活物質は、非晶質炭素である。より具体的には、本実施形態の負極活物質は、難黒鉛化炭素である。
負極活物質層122に用いられるバインダは、正極活物質層112に用いられたバインダと同様のものである。本実施形態のバインダは、ポリフッ化ビニリデンである。
負極活物質層122は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極11と負極12とがセパレータ4によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極11、負極12、及びセパレータ4の積層体22が巻回される。セパレータ4は、絶縁性を有する部材である。セパレータ4は、正極11と負極12との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極11と負極12とが互いに絶縁される。また、セパレータ4は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ4を挟んで交互に積層される正極11と負極12との間を移動する。
セパレータ4は、帯状である。セパレータ4は、少なくともセパレータ基材41を備える。セパレータ基材41は、多孔質な材料で形成される。本実施形態では、セパレータ4は、セパレータ基材41のみを有する。
セパレータ基材41は、例えば、織物、不織布、又は多孔膜によって多孔質に構成される。セパレータ基材41の材質としては、高分子化合物、ガラス、セラミックなどが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン(PO)、又は、セルロースが挙げられる。
セパレータ4の幅(帯形状の短手方向の寸法)は、負極活物質層122の幅より僅かに大きい。セパレータ4は、正極活物質層112及び負極活物質層122が重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極11と負極12との間に配置される。このとき、図6に示すように、正極11の非被覆部115と負極12の非被覆部125とは重なっていない。即ち、正極11の非被覆部115が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向に突出し、且つ、負極12の非被覆部125が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向(正極11の非被覆部115の突出方向と反対の方向)に突出する。積層された状態の正極11、負極12、及びセパレータ4、即ち、積層体22が巻回されることによって、電極体2が形成される。正極11の非被覆部115又は負極12の非被覆部125のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
非被覆積層部26は、電極体2における集電体5と導通される部位である。非被覆積層部26は、巻回された正極11、負極12、及びセパレータ4の巻回中心方向視において、中空部27(図6参照)を挟んで二つの部位(二分された非被覆積層部26)261に区分される。
以上のように構成される非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極11の非被覆部115のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極11の非被覆積層部を構成し、負極12の非被覆部125のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極12の非被覆積層部を構成する。
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。ケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。ケース3は、ステンレス鋼及びニッケル等の金属材料、又は、アルミニウムにナイロン等の樹脂を接着した複合材料等によって形成されてもよい。
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO4、LiBF4、及びLiPF6等である。本実施形態の電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを所定の割合で混合した混合溶媒に、0.5〜1.5mol/LのLiPF6を溶解させたものである。
ケース3は、ケース本体31の開口周縁部と、長方形状の蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3は、ケース本体31と蓋板32とによって画定される内部空間を有する。本実施形態では、ケース本体31の開口周縁部と蓋板32の周縁部とは、溶接によって接合される。
以下では、図1に示すように、蓋板32の長辺方向をX軸方向とし、蓋板32の短辺方向をY軸方向とし、蓋板32の法線方向をZ軸方向とする。ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。
蓋板32は、ケース3内のガスを外部に排出可能なガス排出弁321を有する。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース3内から外部にガスを排出する。ガス排出部321は、X軸方向における蓋板32の中央部に設けられる。
ケース3には、電解液を注入するための注液孔が設けられる。注液孔は、ケース3の内部と外部とを連通する。注液孔は、蓋板32に設けられる。注液孔は、注液栓326によって密閉される(塞がれる)。注液栓326は、溶接によってケース3(本実施形態の例では蓋板32)に固定される。
外部端子7は、他の蓄電素子1の外部端子7又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子7は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子7は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
外部端子7は、バスバ等が溶接可能な面71を有する。面71は、平面である。外部端子7は、蓋板32に沿って拡がる板状である。詳しくは、外部端子7は、Z軸方向視において矩形状の板状である。
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、クリップ部材50を介して電極体2と通電可能に接続される。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを通電可能に接続するクリップ部材50を備える。
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。図3に示すように、集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。集電体5は、蓄電素子1の正極11と負極12とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、集電体5は、ケース3内において、電極2の正極11の非被覆積層部26と、負極12の非被覆積層部26とにそれぞれ配置される。
正極11の集電体5と負極12の集電体5とは、異なる材料によって形成される。具体的に、正極11の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極12の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
本実施形態の蓄電素子1では、電極体2とケース3とを絶縁する袋状の絶縁カバー6に収容された状態の電極体2(詳しくは、電極体2及び集電体5)がケース3内に収容される。
次に、上記実施形態の蓄電素子1の製造方法について説明する。
蓄電素子1の製造方法では、まず、金属箔(電極基材)に活物質を含む合剤を塗布して活物質層を形成する。次に、活物質層の上に絶縁粒子を含む組成物を塗布し絶縁層を形成して、電極(正極11及び負極12)を作製する。次に、正極11、セパレータ4、及び負極12を重ね合わせて電極体2を形成する。続いて、電極体2をケース3に入れ、ケース3に電解液を入れることによって蓄電素子1を組み立てる。
電極(正極11)の作製では、まず、金属箔の両面に、正極活物質と導電助剤とバインダと溶媒とを含む合剤をそれぞれ塗布することによって正極活物質層112を形成する。前記合材は、増粘剤、分散剤を含んでいてもよい。次に、金属箔の両面に形成された正極活物質層112の上に絶縁粒子を含む組成物を塗布することによって絶縁層113を形成する。前記組成物は、増粘剤、分散剤を含んでいてもよい。合剤の塗布量を変化させることによって、正極活物質層112の目付量を調整することができる。絶縁層113の目付量も、組成物の塗布量を変化させることによって調整することができる。正極活物質層112および絶縁層113を形成するための塗布方法としては、一般的な方法が採用される。塗布された正極活物質層112および絶縁層113を所定の圧力(例えば、10kgf/mm以上100kgf/mm以下の線圧)でロールプレスする。正極活物質層112および絶縁層113の密度は、プレス圧を大きくすることによって大きくでき、プレス圧を小さくすることによって小さくできる。絶縁層を形成する以外は、負極も同様にして作製する。
電極体2の形成では、正極11と負極12との間にセパレータ4を挟み込んだ積層体22を巻回することにより、電極体2を形成する。詳しくは、正極活物質層112と負極活物質層122とがセパレータ4を介して互いに向き合うように、正極11とセパレータ4と負極12とを重ね合わせ、積層体22を作る。次に、積層体22を巻回して、電極体2を形成する。
蓄電素子1の組み立てでは、ケース3のケース本体31に電極体2を入れ、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぎ、電解液をケース3内に注入する。ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐときには、ケース本体31の内部に電極体2を入れ、正極11と一方の外部端子7とを導通させ、且つ、負極12と他方の外部端子7とを導通させた状態で、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐ。電解液をケース3内へ注入するときには、ケース3の蓋板32の注入孔から電解液をケース3内に注入する。
上記のように構成された本実施形態の蓄電素子1は、正極活物質層を有する正極を備え、正極活物質層は、粒子状の正極活物質を含み、且つ粒子状の黒鉛および黒鉛以外の導電助剤を導電助剤として含み、黒鉛の形状は薄片状であり、正極活物質の平均粒子径をD1、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径をD2、黒鉛の平均粒子径をD3としたときに、D1、D2、およびD3は、
D2<D1<D3の関係式を満たす。
斯かる構成の蓄電素子によれば、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径が正極活物質の平均粒子径よりも小さいため、正極活物質間の空隙に黒鉛以外の導電助剤を十分に充填できる。これにより、距離的により近い関係にある正極活物質粒子間に良好な電子伝導路が形成される。また、黒鉛の平均粒子径が正極活物質粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ黒鉛の形状が薄片状であるため、距離的により遠い関係にある正極活物質粒子群間に良好な電子伝導路が形成される。そのため、正極内に十分な電子伝導路を形成できる。これにより、高レートでの放電による出力低下を十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができる。なお、高レートでの充放電とは、例えば、5CA以上の大電流で電池の充放電を行うことである。
D2<D1<D3の関係式を満たす。
斯かる構成の蓄電素子によれば、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径が正極活物質の平均粒子径よりも小さいため、正極活物質間の空隙に黒鉛以外の導電助剤を十分に充填できる。これにより、距離的により近い関係にある正極活物質粒子間に良好な電子伝導路が形成される。また、黒鉛の平均粒子径が正極活物質粒子の平均粒子径よりも大きく、且つ黒鉛の形状が薄片状であるため、距離的により遠い関係にある正極活物質粒子群間に良好な電子伝導路が形成される。そのため、正極内に十分な電子伝導路を形成できる。これにより、高レートでの放電による出力低下を十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができる。なお、高レートでの充放電とは、例えば、5CA以上の大電流で電池の充放電を行うことである。
上記の蓄電素子では、黒鉛以外の導電助剤は、非晶質炭素であってもよい。斯かる構成の蓄電素子によれば、高レートでの放電による出力の低下をより十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下をより十分に抑制することができる。
上記の蓄電素子1では、薄片状黒鉛の平均粒子径D3は、7μm以上20μm以下であってもよい。上記を満たすことにより、上記の蓄電素子1は、高レートでの放電による出力の低下をより十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下をより十分に抑制することができる。
上記の蓄電素子1では、正極活物質層の密度は、1.80g/cm3以上2.50g/cm3以下であってもよい。上記を満たすことにより、上記の蓄電素子1は、高レートでの放電による出力の低下をより十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下をより十分に抑制することができる。
上記の蓄電素子1では、正極は絶縁粒子を含む絶縁層を有し、絶縁粒子の平均粒子径をD4としたときに、D1およびD4は、0.1≦D4/D1≦1の関係式を満たしてもよい。
斯かる構成の蓄電素子によれば、高レートでの放電による出力の低下をより十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下をより十分に抑制することができる。
斯かる構成の蓄電素子によれば、高レートでの放電による出力の低下をより十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下をより十分に抑制することができる。
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
上記の実施形態では、活物質を含む活物質層が金属箔に直接接した電極(正極および負極)について詳しく説明したが、本発明では、電極のうち少なくとも正極がバインダと導電助剤とを含む導電層を有してもよい。
上記の実施形態では、活物質層が各電極の金属箔の両面側にそれぞれ配置された電極について説明したが、本発明の蓄電素子では、正極11又は負極12は、活物質層を金属箔の片面側にのみ備えてもよい。
上記の実施形態では、正極11の正極活物質層112の上にのみ絶縁層が形成された例について説明したが、絶縁層は、正極活物質層112および負極活物質層113の両方の上にそれぞれ形成されていてもよい。
上記の実施形態では、セパレータ4がセパレータ基材41のみを有する蓄電素子1について説明したが、本発明の蓄電素子では、セパレータ基材層41の少なくとも一方の面に、無機粒子を含む無機層が重ねられてもよい。
上記の実施形態では、積層体22が巻回されてなる電極体2を備えた蓄電素子1について詳しく説明したが、本発明の蓄電素子は、巻回されない積層体22を備えてもよい。詳しくは、それぞれ矩形状に形成された正極、セパレータ、負極、及びセパレータが、この順序で複数回積み重ねられてなる電極体を蓄電素子が備えてもよい。
上記の実施形態では、蓄電素子1が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子1の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記の実施形態では、蓄電素子1の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
蓄電素子1(例えば電池)は、図8に示すような蓄電装置100(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)に用いられてもよい。蓄電装置100は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材91と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
以下に示すようにして、非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を製造した。
(実施例1)
(1)正極の作製
溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、平均粒子径が6μmの正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の粒子と、バインダ(PVdF)と、平均粒子径が0.5μmの非晶質炭素(アセチレンブラック)と、平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛とを、混合し、混練することで、正極用の合剤を調製した。正極活物質、バインダ、アセチレンブラック、薄片状黒鉛の配合量は、それぞれ86.5質量%、4.5質量%、4.5質量%、4.5質量%とした。調製した正極用の合剤を、アルミニウム箔(15μm厚み)の両面に、乾燥後の塗布量(目付量)が10mg/cm2となるようにそれぞれ塗布した。塗布後、正極用の合剤を乾燥し、ロールプレスを実施した。次に、溶剤としてのNMPと、平均粒子径が1μmの絶縁粒子(アルミナフィラー)と、バインダ(PVdF)とを、混合し、混練することで、正極の絶縁層用の組成物を調製した。絶縁粒子、バインダの配合量は、それぞれ97質量%、3質量%とした。調製した組成物を、アルミニウム箔の両面に塗布された正極用の合剤の上に、乾燥後の塗布量(目付量)が1mg/cm2となるようにそれぞれ塗布した。塗布後、組成物を乾燥した。
電池製造後において、正極活物質の平均粒子径D1は6μm、アセチレンブラックの平均粒子径D2は0.05μm、薄片状黒鉛の平均粒子径D3は10μm、絶縁粒子の平均粒子径D4は、1μmであった。正極活物質層の密度は2g/cm3であった。
電池製造における上記各粒子の平均粒子径及び正極活物質層の密度は、以下のように測定した。
<平均粒子径の測定>
正極活物質の平均粒子径D1、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径D2、および黒鉛(薄片状黒鉛)の平均粒子径D3は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定した。具体的には、正極活物質層の厚み方向の任意の断面を走査型電子顕微鏡で撮像し、撮像した画像中の任意の50個の粒子の粒子径を測定した。次に、その平均値を算出することにより平均粒子径を測定した。なお、粒子が真球状でない場合、最も長い径を測定した。薄片状黒鉛の場合、D3は厚み方向に垂直な方向の長さ(最も長い長さ)の寸法lに相当する。正極活物質粒子、黒鉛、および黒鉛以外の導電助剤は、せん断力により解砕され、互いの凝集力により凝集される。これらが解砕される場合、二次粒子が一次粒子になる場合がある。これらが一次粒子まで解砕される場合、撮像した画像中の任意の50個の粒子として、一次粒子および二次粒子の両方が観察されることになる。なお、上記各粒子が単独の一次粒子であるか二次粒子であるかは技術常識により判断した。また、二次粒子同士の境界についても技術常識により判断した。
絶縁粒子の平均粒子径についても、上記と同様にして測定した。
<正極活物質層の密度の測定>
正極を一定面積に切り出し、テープによる剥離により正極活物質層から絶縁層を剥離させて供試体を作製した。次に、この供試体の厚みT1と、重量W1とを測定した。次に、溶剤(N−メチル−2−ピロリドン(NMP))を用いて、この供試体から正極活物質層を溶出させた後、アルミニウム箔の厚みT2と重量W2とを測定した。続いて、(W1−W2)/(供試体の面積×(T1−T2))により、正極活物質層の密度を算出した。
(1)正極の作製
溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、平均粒子径が6μmの正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の粒子と、バインダ(PVdF)と、平均粒子径が0.5μmの非晶質炭素(アセチレンブラック)と、平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛とを、混合し、混練することで、正極用の合剤を調製した。正極活物質、バインダ、アセチレンブラック、薄片状黒鉛の配合量は、それぞれ86.5質量%、4.5質量%、4.5質量%、4.5質量%とした。調製した正極用の合剤を、アルミニウム箔(15μm厚み)の両面に、乾燥後の塗布量(目付量)が10mg/cm2となるようにそれぞれ塗布した。塗布後、正極用の合剤を乾燥し、ロールプレスを実施した。次に、溶剤としてのNMPと、平均粒子径が1μmの絶縁粒子(アルミナフィラー)と、バインダ(PVdF)とを、混合し、混練することで、正極の絶縁層用の組成物を調製した。絶縁粒子、バインダの配合量は、それぞれ97質量%、3質量%とした。調製した組成物を、アルミニウム箔の両面に塗布された正極用の合剤の上に、乾燥後の塗布量(目付量)が1mg/cm2となるようにそれぞれ塗布した。塗布後、組成物を乾燥した。
電池製造後において、正極活物質の平均粒子径D1は6μm、アセチレンブラックの平均粒子径D2は0.05μm、薄片状黒鉛の平均粒子径D3は10μm、絶縁粒子の平均粒子径D4は、1μmであった。正極活物質層の密度は2g/cm3であった。
電池製造における上記各粒子の平均粒子径及び正極活物質層の密度は、以下のように測定した。
<平均粒子径の測定>
正極活物質の平均粒子径D1、黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径D2、および黒鉛(薄片状黒鉛)の平均粒子径D3は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定した。具体的には、正極活物質層の厚み方向の任意の断面を走査型電子顕微鏡で撮像し、撮像した画像中の任意の50個の粒子の粒子径を測定した。次に、その平均値を算出することにより平均粒子径を測定した。なお、粒子が真球状でない場合、最も長い径を測定した。薄片状黒鉛の場合、D3は厚み方向に垂直な方向の長さ(最も長い長さ)の寸法lに相当する。正極活物質粒子、黒鉛、および黒鉛以外の導電助剤は、せん断力により解砕され、互いの凝集力により凝集される。これらが解砕される場合、二次粒子が一次粒子になる場合がある。これらが一次粒子まで解砕される場合、撮像した画像中の任意の50個の粒子として、一次粒子および二次粒子の両方が観察されることになる。なお、上記各粒子が単独の一次粒子であるか二次粒子であるかは技術常識により判断した。また、二次粒子同士の境界についても技術常識により判断した。
絶縁粒子の平均粒子径についても、上記と同様にして測定した。
<正極活物質層の密度の測定>
正極を一定面積に切り出し、テープによる剥離により正極活物質層から絶縁層を剥離させて供試体を作製した。次に、この供試体の厚みT1と、重量W1とを測定した。次に、溶剤(N−メチル−2−ピロリドン(NMP))を用いて、この供試体から正極活物質層を溶出させた後、アルミニウム箔の厚みT2と重量W2とを測定した。続いて、(W1−W2)/(供試体の面積×(T1−T2))により、正極活物質層の密度を算出した。
(2)負極の作製
負極活物質としては、平均粒子径が4μmの粒子状の非晶質炭素(難黒鉛化炭素)を用いた。また、バインダとしては、PVdFを用いた。負極用の合剤は、溶剤としてNMPと、バインダと、負極活物質とを混合、混練することで調製した。バインダは、7質量%となるように配合し、負極活物質は、93質量%となるように配合した。調製した負極用の合剤を、銅箔(10μm厚み)の両面にそれぞれ塗布した。塗布後、負極用の合剤を乾燥した。電池製造後の負極活物質の平均粒子径は4μmであった。
負極活物質の平均粒子径は、正極活物質の平均粒子径と同様にして測定した。
負極活物質としては、平均粒子径が4μmの粒子状の非晶質炭素(難黒鉛化炭素)を用いた。また、バインダとしては、PVdFを用いた。負極用の合剤は、溶剤としてNMPと、バインダと、負極活物質とを混合、混練することで調製した。バインダは、7質量%となるように配合し、負極活物質は、93質量%となるように配合した。調製した負極用の合剤を、銅箔(10μm厚み)の両面にそれぞれ塗布した。塗布後、負極用の合剤を乾燥した。電池製造後の負極活物質の平均粒子径は4μmであった。
負極活物質の平均粒子径は、正極活物質の平均粒子径と同様にして測定した。
(3)セパレータ
基材層として厚みが22μmのポリエチレン製微多孔膜を用いた。ポリエチレン製微多孔膜の透気度は、100秒/100ccであった。
基材層として厚みが22μmのポリエチレン製微多孔膜を用いた。ポリエチレン製微多孔膜の透気度は、100秒/100ccであった。
(4)電解液の調製
電解液としては、以下の方法で調製したものを用いた。非水溶媒として、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを、いずれも1容量部ずつ混合した溶媒を用い、この非水溶媒に、塩濃度が1mol/LとなるようにLiPF6を溶解させ、電解液を調製した。
電解液としては、以下の方法で調製したものを用いた。非水溶媒として、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを、いずれも1容量部ずつ混合した溶媒を用い、この非水溶媒に、塩濃度が1mol/LとなるようにLiPF6を溶解させ、電解液を調製した。
(5)ケース内への電極体の配置
上記の正極、上記の負極、上記の電解液、セパレータ、及びケースを用いて、一般的な方法によって電池を製造した。
まず、セパレータが上記の正極および負極の間に配されて積層されてなるシート状物を巻回した。次に、巻回されてなる電極体を、ケースとしてのアルミニウム製の角形電槽缶のケース本体内に配置した。続いて、正極及び負極を2つの外部端子それぞれに電気的に接続させた。さらに、ケース本体に蓋板を取り付けた。上記の電解液を、ケースの蓋板に形成された注液口からケース内に注入した。最後に、ケースの注液口を封止することにより、ケースを密閉した。
上記の正極、上記の負極、上記の電解液、セパレータ、及びケースを用いて、一般的な方法によって電池を製造した。
まず、セパレータが上記の正極および負極の間に配されて積層されてなるシート状物を巻回した。次に、巻回されてなる電極体を、ケースとしてのアルミニウム製の角形電槽缶のケース本体内に配置した。続いて、正極及び負極を2つの外部端子それぞれに電気的に接続させた。さらに、ケース本体に蓋板を取り付けた。上記の電解液を、ケースの蓋板に形成された注液口からケース内に注入した。最後に、ケースの注液口を封止することにより、ケースを密閉した。
(実施例2)
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が7μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が7μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例3)
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が15μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が15μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例4)
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が20μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が20μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例5)
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が25μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が25μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例6)
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を1.7g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を1.7g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例7)
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を1.8g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を1.8g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例8)
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を2.2g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を2.2g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例9)
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を2.5g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を2.5g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例10)
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を2.7g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
正極活物質層の密度を2g/cm3とする代わりに、正極活物質層の密度を2.7g/cm3として正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例11)
平均粒子径が1μmの絶縁粒子の代わりに、平均粒子径が0.5μmの絶縁粒子を用いて絶縁層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
平均粒子径が1μmの絶縁粒子の代わりに、平均粒子径が0.5μmの絶縁粒子を用いて絶縁層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例12)
平均粒子径が1μmの絶縁粒子の代わりに、平均粒子径が2μmの絶縁粒子を用いて絶縁層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
平均粒子径が1μmの絶縁粒子の代わりに、平均粒子径が2μmの絶縁粒子を用いて絶縁層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例13)
平均粒子径が1μmの絶縁粒子の代わりに、平均粒子径が5μmの絶縁粒子を用いて絶縁層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
平均粒子径が1μmの絶縁粒子の代わりに、平均粒子径が5μmの絶縁粒子を用いて絶縁層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例14)
平均粒子径が1μmの絶縁粒子の代わりに、平均粒子径が7μmの絶縁粒子を用いて絶縁層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
平均粒子径が1μmの絶縁粒子の代わりに、平均粒子径が7μmの絶縁粒子を用いて絶縁層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が5μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
平均粒子径が10μmの薄片状黒鉛の代わりに、平均粒子径が5μmの薄片状黒鉛を用いて正極活物質層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
<サイクル試験での電池の評価>
[電池サイクル試験]
1)実施例1〜14および比較例1のリチウムイオン二次電池をSOC50%に調整した。
詳しくは、まず、各例に係るリチウムイオン二次電池を、環境温度25℃において、充電上限電圧4.2V、放電下限電圧2.4Vの条件で充放電して、放電容量を求め、求めた放電容量から1時間で放電が終了する電流値、すなわち、1C(A)を求めた。
次に、各例に係るリチウムイオン二次電池を、環境温度25℃において、下限電圧2.4Vの条件で定電流放電させた後、0.5C、充電時間1.0hの条件で定電流充電させることにより、SOC50%に調整した。
2)次に、各例に係るリチウムイオン二次電池を環境温度55℃で4時間以上保持させて、電池内部の温度を均一にした。電池内部の温度が均一になった各例に係るリチウムイオン二次電池を、電流値10C(A)で108秒放電した後、電流値10C(A)で216秒充電した。放電108秒後の電圧をサイクル下限電圧とし、充電216秒後の電圧をサイクル上限電圧とした。
3)各例に係るリチウムイオン二次電池の表面温度が55℃になるように調整しながら、電流値10C(A)、先に決めた上下限電圧の範囲にて定電流充放電を行った。
4)定電流充放電サイクルの経過時間500時間ごとにDCR(直流抵抗値)を測定した。
詳しくは、まず、温度25℃において、各例に係るリチウムイオン二次電池をそれぞれ電流値0.5C(A)、充電時間1.0hの条件でSOC50%まで充電させた後、電流値5C(A)、10C(A)、20C(A)、30C(A)、および40C(A)で10秒間放電し、放電1秒後の電圧値を測定した。次に、各電流値と、測定された電圧値とからI−V近似直線を作成し、この近似直線の傾きからDCRを算出した。
なお、各例に係るリチウムイオン二次電池の各電流値での放電間において、通電した電気量に相当する補充電を行った。
各例に係るリチウムイオン二次電池についてDCRを算出した後、その増加率を算出した。DCR増加率は、サイクル5000時間におけるDCRをDCRの初期値で除することによって算出した。DCRの初期値は、先述の1C(A)を求めた後であって、サイクルの開始前に測定した。
表1に、各例における、各粒子の平均粒子径D1〜D4、正極活物質層の密度、粒子径の比率、及びリチウムイオン二次電池のDCR増加率を示した。表1の各粒子の平均粒子径及び正極活物質層の密度の値は、電池製造後の値。表1のDCR増加率は、実施例1に係るリチウムイオン二次電池のDCR増加率に対する各例に係るリチウムイオン二次電池のDCR増加率の割合を示している。
[電池サイクル試験]
1)実施例1〜14および比較例1のリチウムイオン二次電池をSOC50%に調整した。
詳しくは、まず、各例に係るリチウムイオン二次電池を、環境温度25℃において、充電上限電圧4.2V、放電下限電圧2.4Vの条件で充放電して、放電容量を求め、求めた放電容量から1時間で放電が終了する電流値、すなわち、1C(A)を求めた。
次に、各例に係るリチウムイオン二次電池を、環境温度25℃において、下限電圧2.4Vの条件で定電流放電させた後、0.5C、充電時間1.0hの条件で定電流充電させることにより、SOC50%に調整した。
2)次に、各例に係るリチウムイオン二次電池を環境温度55℃で4時間以上保持させて、電池内部の温度を均一にした。電池内部の温度が均一になった各例に係るリチウムイオン二次電池を、電流値10C(A)で108秒放電した後、電流値10C(A)で216秒充電した。放電108秒後の電圧をサイクル下限電圧とし、充電216秒後の電圧をサイクル上限電圧とした。
3)各例に係るリチウムイオン二次電池の表面温度が55℃になるように調整しながら、電流値10C(A)、先に決めた上下限電圧の範囲にて定電流充放電を行った。
4)定電流充放電サイクルの経過時間500時間ごとにDCR(直流抵抗値)を測定した。
詳しくは、まず、温度25℃において、各例に係るリチウムイオン二次電池をそれぞれ電流値0.5C(A)、充電時間1.0hの条件でSOC50%まで充電させた後、電流値5C(A)、10C(A)、20C(A)、30C(A)、および40C(A)で10秒間放電し、放電1秒後の電圧値を測定した。次に、各電流値と、測定された電圧値とからI−V近似直線を作成し、この近似直線の傾きからDCRを算出した。
なお、各例に係るリチウムイオン二次電池の各電流値での放電間において、通電した電気量に相当する補充電を行った。
各例に係るリチウムイオン二次電池についてDCRを算出した後、その増加率を算出した。DCR増加率は、サイクル5000時間におけるDCRをDCRの初期値で除することによって算出した。DCRの初期値は、先述の1C(A)を求めた後であって、サイクルの開始前に測定した。
表1に、各例における、各粒子の平均粒子径D1〜D4、正極活物質層の密度、粒子径の比率、及びリチウムイオン二次電池のDCR増加率を示した。表1の各粒子の平均粒子径及び正極活物質層の密度の値は、電池製造後の値。表1のDCR増加率は、実施例1に係るリチウムイオン二次電池のDCR増加率に対する各例に係るリチウムイオン二次電池のDCR増加率の割合を示している。
表1から把握されるように、正極活物質の平均粒子径をD1、アセチレンブラックの平均粒子径をD2、薄片状黒鉛の平均粒子径をD3としたときに、D1、D2およびD3が、
D2<D1<D3の関係式を満たす実施例1〜14の電池は、DCR増加率が小さかった。これは、黒鉛以外の導電助剤であるアセチレンブラックの平均粒子径D2が正極活物質の平均粒子径D1よりも小さいため、正極活物質間の空隙にアセチレンブラックが十分に充填されて、距離的により近い関係にある正極活物質粒子間に良好な電子伝導路が形成され、また、薄片状黒鉛の平均粒子径D3が正極活物質粒子の平均粒子径D1よりも大きく、且つその形状が薄片状であるため、距離的により遠い関係にある正極活物質粒子群間に良好な電子伝導路が形成されることにより、正極内に十分な電子伝導路が形成されていることを意味する。即ち、実施例1〜14の電池は、高レートでの放電による出力低下を十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができる。一方で、上記の関係式を満たさない比較例1の電池は、DCR増加率が大きく、正極内に十分な電子伝導路が形成されていない。そのため、比較例1の電池は、高レートでの放電による出力の低下を十分に抑制することができず、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができない。
また、実施例1〜5および比較例1から、黒鉛の平均粒子径D3が7μm以上20μm以下であると、DCR増加率がより小さくなることが分かった。
また、実施例1および実施例6〜10から、正極活物質層の密度が1.80g/cm3以上2.50g/cm3以下であると、DCR増加率がより小さくなることが分かった。
また、実施例1および実施例11〜14から、正極活物質の平均粒子径D1に対する、絶縁粒子であるアルミナフィラーの平均粒子径D4の比率D4/D1が、0.1≦D4/D1≦1の関係式を満たすと、DCR増加率がより小さくなることが分かった。
D2<D1<D3の関係式を満たす実施例1〜14の電池は、DCR増加率が小さかった。これは、黒鉛以外の導電助剤であるアセチレンブラックの平均粒子径D2が正極活物質の平均粒子径D1よりも小さいため、正極活物質間の空隙にアセチレンブラックが十分に充填されて、距離的により近い関係にある正極活物質粒子間に良好な電子伝導路が形成され、また、薄片状黒鉛の平均粒子径D3が正極活物質粒子の平均粒子径D1よりも大きく、且つその形状が薄片状であるため、距離的により遠い関係にある正極活物質粒子群間に良好な電子伝導路が形成されることにより、正極内に十分な電子伝導路が形成されていることを意味する。即ち、実施例1〜14の電池は、高レートでの放電による出力低下を十分に抑制することができ、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができる。一方で、上記の関係式を満たさない比較例1の電池は、DCR増加率が大きく、正極内に十分な電子伝導路が形成されていない。そのため、比較例1の電池は、高レートでの放電による出力の低下を十分に抑制することができず、且つ高レートでの繰り返し充放電による容量低下を十分に抑制することができない。
また、実施例1〜5および比較例1から、黒鉛の平均粒子径D3が7μm以上20μm以下であると、DCR増加率がより小さくなることが分かった。
また、実施例1および実施例6〜10から、正極活物質層の密度が1.80g/cm3以上2.50g/cm3以下であると、DCR増加率がより小さくなることが分かった。
また、実施例1および実施例11〜14から、正極活物質の平均粒子径D1に対する、絶縁粒子であるアルミナフィラーの平均粒子径D4の比率D4/D1が、0.1≦D4/D1≦1の関係式を満たすと、DCR増加率がより小さくなることが分かった。
1:蓄電素子(非水電解質二次電池)、
2:電極体、
26:非被覆積層部、
3:ケース、 31:ケース本体、 32:蓋板、
4:セパレータ、
5:集電体、 50:クリップ部材、
6:絶縁カバー、
7:外部端子、 71:面、
11:正極、
111:正極の金属箔(正極基材)、 112:正極活物質層、
113:絶縁層、
12:負極、
121:負極の金属箔(負極基材)、 122:負極活物質層、
123:絶縁層、
91:バスバ部材、
100:蓄電装置。
2:電極体、
26:非被覆積層部、
3:ケース、 31:ケース本体、 32:蓋板、
4:セパレータ、
5:集電体、 50:クリップ部材、
6:絶縁カバー、
7:外部端子、 71:面、
11:正極、
111:正極の金属箔(正極基材)、 112:正極活物質層、
113:絶縁層、
12:負極、
121:負極の金属箔(負極基材)、 122:負極活物質層、
123:絶縁層、
91:バスバ部材、
100:蓄電装置。
Claims (5)
- 正極活物質層を有する正極を備え、
前記正極活物質層は、粒子状の正極活物質を含み、且つ粒子状の黒鉛および黒鉛以外の導電助剤を導電助剤として含み、
前記黒鉛の形状は薄片状であり、
前記正極活物質の平均粒子径をD1、前記黒鉛以外の導電助剤の平均粒子径をD2、前記黒鉛の平均粒子径をD3としたときに、D1、D2、およびD3は、
D2<D1<D3の関係式を満たす、蓄電素子。 - 前記黒鉛以外の導電助剤は、非晶質炭素である、請求項1に記載の蓄電素子。
- 前記黒鉛の平均粒子径D3は、7μm以上20μm以下である、請求項1または2に記載の蓄電素子。
- 前記正極活物質層の密度は、1.80g/cm3以上2.50g/cm3以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
- 前記正極は、絶縁粒子を含む絶縁層を有し、
前記絶縁粒子の平均粒子径をD4としたときに、D1およびD4は、
0.1≦D4/D1≦1の関係式を満たす、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電素子。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110914942A (zh) * | 2017-07-18 | 2020-03-24 | 帝伯爱尔株式会社 | 混合电容器 |
WO2024053488A1 (ja) * | 2022-09-08 | 2024-03-14 | 三菱鉛筆株式会社 | 電池電極用黒鉛分散体 |
Citations (4)
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JP2008112594A (ja) * | 2006-10-30 | 2008-05-15 | Hitachi Vehicle Energy Ltd | リチウム二次電池 |
JP2014182873A (ja) * | 2013-03-18 | 2014-09-29 | Toyo Ink Sc Holdings Co Ltd | 非水二次電池電極形成材料、非水二次電池電極、及び非水二次電池 |
JP2014207050A (ja) * | 2013-04-10 | 2014-10-30 | 株式会社豊田自動織機 | リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 |
JP2015232930A (ja) * | 2014-06-09 | 2015-12-24 | 株式会社村田製作所 | 非水電解質二次電池 |
-
2016
- 2016-04-22 JP JP2016086357A patent/JP2017195158A/ja active Pending
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CN110914942B (zh) * | 2017-07-18 | 2020-10-13 | 帝伯爱尔株式会社 | 混合电容器 |
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