本発明は、導電性支持体上に、中間層および感光層を順次積層した電子写真感光体であって、前記中間層が、多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子を含有することを特徴とする、電子写真感光体である。
以下、本発明の構成要素および本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で用いる。
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、中間層および感光層を順次積層した電子写真感光体であって、前記中間層が、多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子を含有することを特徴とする。
感光層は、光を吸収して電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能との両方を有し、感光層の層構成としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単層構成であってもよく、また、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構成であってもよい。
また、必要に応じて感光層の上にさらに保護層(表面保護層)を設けてもよい。
感光層は、その層構成を特に制限するものではなく、中間層を含めた具体的な層構成として、例えば、負帯電性感光体では、以下(1)〜(4)に示すものがある:
(1)導電性支持体上に、中間層、電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した層構成
(2)導電性支持体上に、中間層および電荷輸送物質と電荷発生物質とを含有する単層の感光層を順次積層した層構成
(3)導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を順次積層した層構成
(4)導電性支持体上に、中間層、電荷輸送物質と電荷発生物質とを含有する単層の感光層および保護層を順次積層した層構成。
負帯電性感光体は、好ましくは、中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)を設ける構成をとり、正帯電性感光体は、好ましくは、中間層の上に電荷輸送層(CTL)、その上に電荷発生層(CGL)を設ける構成をとる。
したがって、正帯電性感光体は、上記(2)、(4)の他に、以下(1’)、(3’)を好ましい層構成として有しうる:
(1’)導電性支持体上に、中間層、電荷輸送層、および電荷発生層を順次積層した層構成
(3’)導電性支持体上に、中間層、電荷輸送層、電荷発生層、および保護層を順次積層した層構成。
本発明の感光体は、上記(1)〜(4)、(1’)、(3’)のいずれの層構成のものでもよく、これらの中でも、好ましい感光層の層構成は、前記機能分離構造を有する負帯電感光体であり、導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、および電荷輸送層を順次設けて作製された上記(1)の層構成のもの、ならびに導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を順次設けて作製された上記(3)の層構成のものが特に好ましい。
次に、本発明の感光体を構成する中間層、導電性支持体、感光層(電荷発生層および電荷輸送層)および保護層の構成について順を追って説明する。
<中間層>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と感光層との間に中間層を有する。中間層は、バリア機能および接着機能を有する。本発明の電子写真感光体における中間層は、多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子を含有する。このような構成を有することにより、本発明の電子写真感光体は、耐久時および温湿度環境が変わった場合であっても良好なホールブロッキング性および電位安定性が維持される。
電子写真感光体においては、環境負荷低減、生産性向上、コストダウンの観点から、感光体の高寿命化および画質安定性の向上が求められている。電子写真感光体としては、導電性支持体の上に、中間層および感光層を順次積層した積層感光体が実用化されているが、高温高湿環境で使用すると感光層が低抵抗化し、導電性支持体から感光層に電荷が注入し、帯電時に微小部の帯電不良が生じることが原因で、白ベタ画像画出し時に黒ポチ(微小ポチ)などの画像欠陥が発生する課題があった。
中間層は、導電性支持体から感光層への電荷注入を防止する(ホールブロッキング性)目的で設置されるが、中間層の電荷輸送性が悪いと、副作用として電荷発生層で生じた電荷が感光層と中間層との界面または中間層でトラップされてしまう。その結果、イレース後残留電位の上昇が発生する課題が発生する。
上述の特許文献1、2に開示されるように、中間層に酸化チタンのような導電性金属酸化物粒子を分散させて添加して残留電位を改善し、感光体の寿命を延ばす方法が知られている。このとき、導電性金属酸化物のキャリア移動能によって感光体表面の電位の調整が容易になるため、安定性が向上しうると考えられている。
しかしながら、近年、感光体を長寿命で使用することが求められており、感光体を長時間使用すると、微小ポチ発生が顕著になるとともに、除電後の残留電位の上昇も大きくなる。特許文献1、2の方法では、繰り返し露光後の残留電位を改善する効果が十分ではなく、安定した画像形成を行うことが難しい。
また、今後、電子写真装置の低コスト化が求められる中で、電子写真プロセスを構成している帯電前の除電手段をなくし低コスト化を達成する技術が必要になっている。帯電前の除電手段がないと、従来の感光体では、非露光部と露光部との露光後電位の差が生じるために、電子写真プロセスの繰り返し時に露光後電位が上昇することで、黒ベタ画像画出し時に感光体周期で画像濃度差が発生する問題が発生する。そこで、帯電前イレースがない場合であっても十分な電位安定性を示す感光体が求められている。
かような問題に対し鋭意検討を行った結果、中間層に多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物を導入することによって上記の問題が解決されることが明らかになった。
上述の特許文献1、2に開示されるように、中間層に酸化チタンのような導電性金属酸化物粒子を分散させて添加して残留電位を改善し、感光体の寿命を延ばす方法が知られている。このとき、導電性金属酸化物のキャリア移動能によって感光体表面の電位の調整が容易になるため、安定性が向上しうると考えられている。
しかしながら、この方法では、繰り返し露光後の残留電位を改善する効果が十分ではなく、安定した画像形成を行うことが難しい。これは、酸化チタンのようなn型半導体として作用する導電性金属酸化物粒子は、導電性支持体から感光層への電荷注入を防止する反面、感光層中の電荷輸送層で生じた電荷の輸送性が不十分であるため、感光層と中間層との界面または中間層内の金属酸化物粒子界面で電荷がトラップされ、効果的に感光体表面の負電荷をキャンセルできないことに起因すると考えられる。さらに、感光体を長時間使用すると残留電位の上昇も大きくなる。
十分な電位安定性の向上を得るためには導電性金属酸化物粒子を多量に添加することが必要になるが、吸湿しやすいことから、高湿環境下では吸湿によって感光層が低抵抗化してしまい、導電性支持体から感光層に電荷が注入し、帯電時に微小部の帯電不良が生じることが原因で、白ベタ画像画出し時に微小ポチ(黒ポチ)が発生する。また、感光体を長時間使用すると黒ポチの発生が顕著になる。
これに対して、多電子還元触媒を導電性金属酸化物粒子に担持させると、多電子還元触媒と導電性金属酸化物とがショットキー接合となり、導電性金属酸化物粒子中の電子が多電子還元触媒に移行しやすくなる。その結果、電荷がトラップされる確率を減らし、導電性金属酸化物粒子の有しているキャリア移動能をさらに向上させることができるものと考えられる。したがって、感光体表面における電位安定性が大幅に向上でき、得られる画像の安定性も向上しうるものと考えられる。
さらに、多電子還元触媒が担持された導電性金属酸化物粒子は、多電子還元触媒が担持されていない場合と比較して、少量の添加で電位安定性を確保できるため、必要とされる導電性金属酸化物粒子の量が少ない。そのため、導電性金属酸化物粒子を多量に添加することによって、導電性金属酸化物粒子が導電性支持体からのホール注入部となってホールブロッキング性が低下することを抑制できる。また、高湿環境下での吸湿による低抵抗化に起因する帯電不良が生じにくい。なお、本メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
(導電性金属酸化物粒子)
多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子における導電性金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化スズなどを用いることができる。これらの導電性金属酸化物粒子は1種類、または2種類以上混合して用いることができる。2種類以上混合して用いる場合には、固溶体または融着の形態をとってもよい。本発明の感光体においては、キャリア移動能や化学安定性の観点から、酸化チタンおよび酸化タングステンの少なくとも一方を用いることが好ましい。
[酸化チタン]
酸化チタンは、特に制限されないが、四塩化チタンを原料として、気相法(四塩化チタンと酸素との気相反応により酸化チタンを得る方法)によって得られたものが好ましい。気相法で得られた酸化チタンは、粒径が均一であると同時に、製造時に高温プロセスを経由しているため、結晶性が高いものとなり、その結果、得られる酸化チタンまたは多電子還元触媒を担持した酸化チタンのキャリア移動度が良好なものとなる。
酸化チタンとしては、市販されている酸化チタンをそのまま使用するほうが、触媒調製の工程を考えると有利である。市販されている酸化チタンには、液相法で製造されたものと気相法で製造されたものとがあるが、液相法で製造されたものは、結晶性が低いため、焼成等を行って最適な比表面積および結晶性を有する酸化チタンにすることが好ましい。このような焼成工程による手間やコスト、焼成時の着色などを避ける観点から、市販されたものを用いる場合は、適度な結晶性と比表面積とを有する、気相法で得られた酸化チタンの市販品(例えば、昭和電工セラミックス株式会社製の酸化チタン)を、そのまま使用することが好ましい。
[酸化タングステン(WO3)]
酸化タングステンには特に制限はなく、市販品(例えば、株式会社高純度化学研究所製)を適宜使用することができる。酸化タングステンは、一部がV価に還元されている場合もあるため、高温で焼成する等してVI価に酸化してから使用することが好ましい。酸化タングステンの結晶構造にも特に制限はないが、単斜晶系が好ましい。
導電性金属酸化物粒子は、平均一次粒径(数平均一次粒径)が8〜1100nmであることが好ましく、10〜1000nmであることがより好ましく、20〜500nmであることがさらに好ましい。平均一次粒径が8nm以上であれば、多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子の凝集力が強くなりすぎず、優れた分散性が得られ、その結果、微小ポチが発生しにくくなる。また、平均一次粒径が1100nm以下であれば、導電性金属酸化物粒子の部分が導電性支持体からのホール注入部となって微小ポチが発生することを抑制できるため好ましい。
導電性金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(例えば日本電子製:JSM−7500F)により100000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)から自動画像処理解析装置「LUZEX(登録商標) AP(ソフトウエアバージョン Ver.1.32)」(ニレコ社製)を使用して数平均一次粒径を算出する。
(多電子還元触媒)
多電子還元触媒は、光誘起電子のアクセプター(電子を受け取ることができる物質)となり、多電子を貯蔵し、効率的に還元反応を行う触媒である。
多電子還元触媒は、白金、パラジウム、ルテニウム、銅、鉄、ロジウム、金、クロム、ニッケル、セリウム、タングステンのうち少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。具体的には、上記の元素の少なくとも1つを含む金属、金属化合物などが用いられうる。これらの中でも、白金、パラジウム、ルテニウム、銅、鉄、タングステンを含むことが好ましい。また、安価で汎用性が高いという観点から、銅および鉄がより好ましい。なお、多電子還元触媒に含まれる元素は、導電性金属酸化物粒子に含まれる金属元素と異なる金属元素であることが好ましい。導電性金属酸化物粒子に含まれる金属元素と異なる金属を含む多電子還元触媒であれば、導電性金属酸化物粒子に担持することでそれぞれの価電子体をつなぐショットキー接合が生じ、多電子還元触媒を仲介して導電性金属酸化物粒子内をキャリアが輸送されやすくなるため好ましい。
上記の多電子還元触媒は、金属単体の状態で導電性金属酸化物粒子に担持されていてもよく、金属化合物の状態で導電性金属酸化物粒子に担持されていてもよい。金属化合物としては、上記金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物;酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の塩;水酸化物、酸化物等が挙げられる。タングステンカーバイドなどの炭化物も好ましく用いられうる。好ましくは、金属単体、金属の水酸化物または酸化物である。
多電子還元触媒は、導電性金属酸化物粒子の数平均一次粒径や比表面積にもよるが、導電性金属酸化物粒子に対して、0.00001〜45質量%の割合で担持されてなるのが好ましく、0.0001〜40質量%の割合で担持されてなるのがより好ましい。さらに好ましくは、導電性金属酸化物粒子に対して0.001〜30質量%であり、さらにより好ましくは0.002〜10質量%であり、特に好ましくは0.003〜1質量%である。多電子還元触媒の担持量が導電性金属酸化物粒子に対して0.00001質量%以上であれば、十分な感度向上が得られうる。一方、多電子還元触媒の担持量が導電性金属酸化物粒子に対して45質量%以下であれば、優れた分散性が維持され、コストも抑制されうるため好ましい。また、多電子還元触媒を担持させることによる効果がより顕著に得られうる。なお、多電子還元触媒が上記の金属元素を含む場合、金属の担持量が導電性金属酸化物粒子に対して上記範囲となるように制御することが好ましい。
多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子は、後述するバインダー樹脂100質量部に対して15〜320質量部の割合で含有されることが好ましく、より好ましくは20〜300質量部であり、さらに好ましくは50〜200質量部であり、さらにより好ましくは50〜150質量部である。15質量部以上であれば、残留電位が上昇しにくく、画像の安定性が効果的に得られうる。また、320質量部以下であれば、電位安定性に優れると同時に、優れたホールブロッキング性能も維持されるため、白ベタ画像を印刷したときの微小ポチが発生しにくい。なお、バインダー樹脂に対する多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子の割合は、バインダー樹脂を構成する硬化性化合物などの重合性化合物の合計質量(固形分量)100質量部に対する多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子の質量の割合として求めてもよい。
(多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子の調製方法)
多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子は、公知の方法で材料を適宜選択し、調製条件を適宜設定することにより調製することができる。
例えば、担持させる多電子還元触媒を水性媒体中で導電性金属酸化物粒子の表面に付着させ、濾過・乾燥の後、加熱焼成して、粒子に変換することにより、多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子を得ることができる。
例えば、多電子還元触媒の供給原料、導電性金属酸化物粒子、水性溶媒、および必要に応じてアルカリ性物質を含む混合物を撹拌することにより、導電性金属酸化物粒子に多電子還元触媒を結合または吸着させて担持する。
多電子還元触媒の供給原料としては、多電子還元触媒を構成する金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物;酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の酸の共役塩基;水酸化物等が挙げられる。多電子還元触媒の供給原料は、無水物であっても水和物であってもよい。例えば、銅二価塩の供給原料として、塩化第二銅(CuCl2・2H2O)などを用いることができる。また、鉄三価塩の供給原料として、塩化第三鉄(FeCl3)などを用いることができる。多電子還元触媒の供給原料は、特に制限されないが、導電性金属酸化物粒子に対して、金属が0.002〜800質量%の仕込み量とすることが好ましい。
水性溶媒としては、水が用いられるが、更に水以外の極性溶媒を含んでもよい。水以外の極性溶媒としては、多電子還元触媒の供給原料、水およびアルカリ性物質を溶解するものが用いられ、アルコール類、ケトン類、またはそれらの混合液が例示できる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、その他、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、あるいはこれらの混合液が例示できる。
必要に応じて添加されるアルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン、トリメチルアミン、アンモニア、塩基性界面活性剤等が挙げられる。
導電性金属酸化物粒子、多電子還元触媒の供給原料、水性溶媒、および必要に応じてアルカリ性物質を混合および撹拌する順序には特に制限はない。例えば、まず水性溶媒に導電性金属酸化物粒子を混合すると共に必要に応じて撹拌し、次いで多電子還元触媒の供給原料を混合し、これらを撹拌することが好ましい。ただし、まず水性溶媒に多電子還元触媒の供給原料を混合すると共に必要に応じて撹拌し、次いで導電性金属酸化物粒子を混合し、これらを撹拌してもよい。また、溶媒に導電性金属酸化物粒子および多電子還元触媒を同時に混合し、撹拌してもよい。
アルカリ性物質を添加する場合には、水性溶媒に導電性金属酸化物粒子および/または多電子還元触媒を混合する前、途中、および後の3つのタイミングのうち少なくとも1つのタイミングで添加すればよいが、溶媒に導電性金属酸化物粒子および多電子還元触媒を混合して十分に撹拌した後に添加するのが好ましい。
撹拌時間には特に制限はなく、例えば5〜120分、好ましくは10〜90分程度である。また、撹拌温度には特に制限はないが、例えば室温〜120℃程度である。
上記のようにして得られた多電子還元触媒を付着させた導電性金属酸化物粒子は、混合液から固形分として分離することができる。この分離方法には特に限定はなく、ろ過、沈降分離、遠心分離、蒸発乾固等が挙げられる。
分離した多電子還元触媒を担持させた導電性金属酸化物粒子は、必要に応じて水洗、乾燥される。乾燥温度は、特に制限されないが、例えば、90〜150℃である。
必要に応じて、乾燥後、例えば100〜600℃で加熱焼成して金属粒子に変換することにより、多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子を得ることができる。
また、市販品を適宜使用することができ(例えば、昭和電工セラミックス株式会社製の銅担持酸化チタンや銅担持酸化タングステン:商品名ルミレッシュ(登録商標))、市販品をそのまま使用してもよい。
なお、多電子還元触媒、および多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物の具体的な形態は、例えば、国際公開第2008/149889号、特開2013−184100号公報、特開2011−72961号公報、特開2013−15669号公報、特開2009−226299号公報、特開2011−101876号公報、特開2012−114350号公報、特開2011−20009号公報を適宜参照することができる。
さらに、分散性向上や疎水化処理、粒子と樹脂との接着性向上の為、多電子還元触媒を担持する前後いずれの状態でも、導電性金属酸化物粒子に表面処理を行ってもよい。
表面処理としては、例えば、上記導電性金属酸化物粒子を表面修飾剤で処理する方法が挙げられる。
(表面修飾剤)
表面修飾剤としては、導電性金属酸化物粒子の表面に存在するヒドロキシ基等と反応する表面修飾剤が好ましく、これらの表面修飾剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。
また、表面修飾剤としては、例えば反応性有機基を有する表面修飾剤が用いられ、反応性有機基を有する表面修飾剤としては、ラジカル重合性反応基を有する表面修飾剤が挙げられる。
ラジカル重合性反応基を有する表面修飾剤としては、ビニル基、アクリロイル基などのラジカル重合性反応基を有するシランカップリング剤が好ましく、このようなラジカル重合性反応基を有する表面修飾剤としては、下記に記すような公知の化合物が例示される。
S−1:CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2
S−2:CH2=CHSi(OCH3)3
S−3:CH2=CHSiCl3
S−4:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−5:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3
S−6:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OC2H5)(OCH3)2
S−7:CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3
S−8:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−9:CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3
S−10:CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−11:CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3
S−12:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−13:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3
S−14:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2
S−15:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3
S−16:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−17:CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3
S−18:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−19:CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3
S−20:CH2=CHSi(C2H5)(OCH3)2
S−21:CH2=C(CH3)Si(OCH3)3
S−22:CH2=C(CH3)Si(OC2H5)3
S−23:CH2=CHSi(OCH3)3
S−24:CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH3)2
S−25:CH2=CHSi(CH3)Cl2
S−26:CH2=CHCOOSi(OCH3)3
S−27:CH2=CHCOOSi(OC2H5)3
S−28:CH2=C(CH3)COOSi(OCH3)3
S−29:CH2=C(CH3)COOSi(OC2H5)3
S−30:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OC2H5)3
S−31:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)2(OCH3)
S−32:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCOCH3)2
S−33:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(ONHCH3)2
S−34:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OC6H5)2
S−35:CH2=CHCOO(CH2)2Si(C10H21)(OCH3)2
S−36:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH2C6H5)(OCH3)2
また、表面修飾剤としては、前記S−1からS−36以外でも、ラジカル重合可能な反応性有機基を有するシラン化合物を用いてもよい。これらの表面修飾剤は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(表面修飾導電性金属酸化物粒子の作製方法)
表面修飾するに際して、粒子100質量部に対し、表面修飾剤0.1〜100質量部の範囲内、溶媒50〜5000質量部の範囲内を用いて湿式メディア分散型装置を使用して処理することが好ましい。また、乾式でも処理することができる。
以下に、均一に表面修飾剤で表面修飾する方法について説明する。
すなわち、導電性金属酸化物粒子と表面修飾剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式粉砕することにより、導電性金属酸化物粒子を微細化すると同時に粒子の表面修飾が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化することで均一に表面修飾剤により表面修飾された導電性金属酸化物粒子を得ることができる。
本発明において用いられる表面修飾装置である湿式メディア分散型装置とは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた撹拌ディスクを高速回転させることにより、導電性金属酸化物の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置である。その構成としては、導電性金属酸化物粒子に表面修飾を行う際に、導電性金属酸化物粒子を十分に分散させ、かつ表面修飾できる形式であれば問題なく、例えば、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が採用できる。
具体的には、サンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミル等が使用できる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズ等の粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、剪断、ズリ応力等により微粉砕、分散が行われる。
上記湿式メディア分散型装置で用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料としたボールが使用可能であるが、特にジルコニア製やジルコン製のものが好ましい。
また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1〜2mm程度のものを使用するが、本発明では0.1〜1.0mm程度のものを用いるのが好ましい。
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製など種々の素材のものが使用できるが、本発明では特にジルコニアまたはシリコンカーバイドといったセラミック製のディスクや容器内壁が好ましい。
以上のような湿式処理により、表面修飾剤によって表面修飾された導電性金属酸化物粒子を得ることができる。
(バインダー樹脂)
本発明の感光体は、上述のように中間層にバインダー樹脂を含むことが好ましい。
バインダー樹脂としては特に制限されないが、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリウレタンおよびゼラチン等のバインダー樹脂を用いることができる。中間層は、多電子還元触媒を担持した導電性を有する金属酸化物粒子と、バインダー樹脂とを、公知の溶媒に分散、溶解させて浸漬塗布等により形成させることができる。前記バインダー樹脂の中でもアルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。
中間層の形成に使用可能な溶媒としては、前述した多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子を良好に分散させ、ポリアミド樹脂をはじめとするバインダー樹脂を溶解するものが好ましい。具体的には、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が、バインダー樹脂として好ましいとされるポリアミド樹脂に対して良好な溶解性と塗布性能を発現させることから好ましい。
また、保存性や無機粒子の分散性を向上させるために、前記溶媒に対して助溶剤を併用することができ、好ましい効果が得られる助溶媒としては、例えば、ベンジルアルコール、トルエン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
塗布液形成時のバインダー樹脂濃度は、中間層の膜厚や塗布方式に合わせて適宜選択することができる。また、前述した多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子を分散させたとき、バインダー樹脂に対する多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子の混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子を、例えば15〜320質量部の範囲内で用いることができ、20〜300質量部の範囲内とすることが好ましく、50〜200質量部の範囲内とすることがより好ましく、50〜150質量部の範囲内とすることがさらに好ましい。
多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物粒子の分散手段としては、超音波分散機、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー、および、ホモミキサー等が使用できるが、これらに限定されるものではない。また、中間層用の塗布液は塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。
また、中間層の乾燥方法は、溶媒の種類や形成する膜厚に応じて公知の乾燥方法を適宜選択することができ、特に熱乾燥が好ましい。乾燥条件は、例えば100〜150℃で10〜60分熱乾燥することができる。
中間層の膜厚は、0.1〜15μmの範囲内が好ましく、0.3〜10μmの範囲内がより好ましい。
(導電性支持体)
本発明で用いられる導電性支持体は、導電性を有するものであればいずれのものでもよく、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレスなどの金属をドラムまたはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムおよび酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂とともに塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルムおよび紙などが挙げられる。
(感光層)
前述したように、本発明の感光体を構成する感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能とを一つの層に付与した単層構造の他に、電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)とに感光層の機能を分離させた層構成のものがより好ましい。
このように、機能分離型の層構成とすることにより、繰り返し使用に伴う残留電位の上昇を小さく制御できる他、各種の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすいメリットがある。
以下に、感光層の具体例として機能分離型の負帯電感光体の感光層の各層について説明する。
(電荷発生層)
本発明で形成される電荷発生層は、電荷発生物質とバインダー樹脂とを含有するものであることが好ましく、電荷発生物質をバインダー樹脂溶液中に分散させてなる塗布液を塗布して形成されたものがより好ましい。
電荷発生物質は、スーダンレッドやダイアンブルー等のアゾ原料、ピレンキノンやアントアントロン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴおよびチオインジゴ等のインジゴ顔料、ピランスロン、ジフタロイルピレンなどの多環キノン顔料、フタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料等があり、これらに限定されるものではない。これらの中でも、多環キノン顔料、チタニルフタロシアニン顔料が好ましい。これらの電荷発生物質は、単独若しくは公知のバインダー樹脂中に分散させる形態で使用することができる。
電荷発生層を形成するバインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂のうち二つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)およびポリ−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
電荷発生層の形成は、バインダー樹脂を溶媒で溶解した溶液中に分散機を用いて電荷発生物質を分散して塗布液を調製し、塗布液を塗布機で一定の膜厚に塗布し、塗布膜を乾燥して作製することが好ましい。
電荷発生層に使用するバインダー樹脂を溶解し塗布するための溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸t−ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、2種以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。
電荷発生物質の分散手段としては、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、サンドグラインダーおよびホモミキサー等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
バインダー樹脂に対する電荷発生物質の混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質1〜600質量部の範囲内が好ましく、50〜500質量部の範囲内がより好ましい。電荷発生層の膜厚は、電荷発生物質の特性、バインダー樹脂の特性および混合割合等により異なるが0.01〜5μmの範囲内が好ましく、0.05〜3μmの範囲内がより好ましい。
なお、電荷発生層用の塗布液は、塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。また、電荷発生層は、上記の顔料などの電荷発生物質を真空蒸着することによって形成することもできる。
(電荷輸送層)
本発明で形成される電荷輸送層は、少なくとも層内に電荷輸送物質とバインダー樹脂とを含有するものであることが好ましく、電荷輸送物質をバインダー樹脂溶液中に溶解、塗布して形成されうる。
電荷輸送物質は、公知の化合物を用いることが可能で、例えば、以下のものが挙げられる。すなわち、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレンおよびポリ−9−ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの化合物を単独または2種類以上混合して使用することができる。
また、電荷輸送層用のバインダー樹脂は、公知の樹脂を用いることが可能で、例えば、以下のものが挙げられる。すなわち、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの中でもポリカーボネート樹脂が好ましく、さらに、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールZ(BPZ)、ジメチルBPA、BPA−ジメチルBPA共重合体等のタイプのポリカーボネート樹脂が耐クラック性、耐磨耗性、帯電特性の観点から好ましいものである。
電荷輸送層は、塗布法に代表される公知の方法で形成することが可能であり、例えば、塗布法では、バインダー樹脂と電荷輸送物質とを溶解して塗布液を調製し、塗布液を一定の膜厚で塗布後、乾燥処理することにより所望の電荷輸送層を形成することができる。
上記バインダー樹脂と電荷輸送物質とを溶解する溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。なお、電荷輸送層形成用の塗布液を作製する際に使用する溶媒は、上記のものに限定されるものではない。また、2種以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。
バインダー樹脂と電荷輸送物質との混合比率は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質を10〜500質量部の範囲内とすることが好ましく、20〜100質量部の範囲内とすることがより好ましい。
電荷輸送層の厚さは、電荷輸送物質やバインダー樹脂の特性、および、これらの混合比等により異なるが、5〜40μmの範囲内が好ましく、10〜30μmの範囲内がより好ましい。
電荷輸送層中には公知の酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイル等を添加してもよい。酸化防止剤については特開2000−305291号公報、電子導電剤は特開昭50−137543号公報、特開昭58−76483号公報等に記載のものが好ましく用いられうる。
(感光体を構成する各層の塗布方法)
本発明の感光体を構成する中間層、電荷発生層、電荷輸送層、および表面保護層等の各層は、公知の塗布方法により形成することができる。
具体的には、浸漬塗布法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、円形量規制型塗布法等が挙げられる。
なお、円形量規制型塗布方法については、例えば、特開昭58−189061号公報、特開2005−275373号公報に記載されている。
(保護層)
本発明の電子写真感光体は、上記感光層上にさらに保護層を有していてもよい。保護層は、感光体を外部環境や衝撃から保護する役割を担う。保護層が形成される場合には、当該保護層は、無機粒子およびバインダー樹脂(以下、「保護層用バインダー樹脂」ともいう)を含有することが好ましく、必要に応じて酸化防止剤や滑剤などの他の成分を含有してもよい。
保護層に含まれる無機粒子としては、遷移金属も含めたいずれかの金属酸化物粒子であればよく、例えば、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化ジルコニウム、酸化スズ、チタニア(酸化チタン)、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の金属酸化物粒子が例示されるが、中でも、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナが好ましい。
前記無機粒子の製造方法は、特に限定はなく、公知の製造方法で作製された粒子を用いることができる。
上記無機粒子の数平均一次粒径は1〜300nmの範囲が好ましい。特に好ましくは3〜100nm、さらに好ましくは5〜40nmである。
上記無機粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置LUZEX(登録商標)AP(ニレコ社製)ソフトウエアバージョン Ver.1.32を使用して数平均一次粒径を算出することができる。
上記無機粒子は、表面修飾剤で処理されたものであることが好ましい。表面修飾剤、および表面修飾剤で修飾された無機粒子の作製方法の具体的な形態は上記の導電性金属酸化物粒子の表面修飾剤、および表面修飾導電性金属酸化物粒子の作製方法に準じる。
(保護層用バインダー樹脂)
保護層に用いられるバインダー樹脂としては、重合性化合物の重合物からなる樹脂を含有することが好ましい。
重合性化合物を重合して得られる重合物である樹脂としては、硬化性化合物を硬化して得られる硬化物である硬化性樹脂または熱可塑性樹脂であることが好ましく、特に、高い膜強度が得られることから、硬化性樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等のビニル系重合体よりなる樹脂が挙げられる。また、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の縮合系の高分子材料などを用いることもできる。
バインダー樹脂として硬化性化合物を硬化して得られる硬化性樹脂を用いる場合、保護層に使用可能な硬化性化合物としては、ラジカル重合性の化合物が挙げられる。
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性反応基として、アクリロイル基、メタクリロイル基の少なくともいずれかを有する重合性単量体が好ましい。
これらの重合性単量体としては、例えば、以下の化合物を例示することができるが、本発明に使用可能な重合性単量体はこれらに限定されるものではない。
上記のラジカル重合性化合物は公知であり、また市販品として入手できる。ここで、Rは下記アクリロイル基、R’は下記メタクリロイル基を表す。
本発明の感光体の保護層には、これらの他に必要に応じて重合開始剤、滑剤粒子等を含有させて形成してもよい。
(重合開始剤)
保護層に使用可能な硬化性化合物を硬化反応させる方法としては、電子線開裂反応を利用する方法やラジカル重合開始剤の存在下で光や熱を利用する方法等により硬化反応を行うことができる。
ラジカル重合開始剤を用いて硬化反応を行う場合、重合開始剤として光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。また、光、熱の両方の開始剤を併用することもできる。
本発明で使用できる重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルアゾビスバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物等の熱重合開始剤が挙げられる。
また、光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(イルガキュア(登録商標)369:BASFジャパン社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(登録商標)819:BASFジャパン社製)、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物が挙げられる。
また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
本発明に用いられる重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、アルキルフェノン系化合物、ホスフィンオキシド系化合物が好ましく、さらに好ましくは、α−ヒドロキシアセトフェノン構造、またはアシルホスフィンオキシド構造を有する開始剤が好ましい。
これらの重合開始剤は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対し0.1〜40質量部の範囲内、好ましくは0.5〜20質量部の範囲内である。
(滑剤粒子)
また、保護層に各種の滑剤粒子を含有させることも可能である。例えば、フッ素原子含有樹脂粒子を加えることができる。
フッ素原子含有樹脂粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、およびこれらの共重合体の中から1種または2種以上を適宜選択するのが好ましいが、特に四フッ化エチレン樹脂およびフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
(溶媒)
保護層の形成に使用される溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、ベンジルアルコール、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(保護層の形成)
保護層は、バインダー樹脂(または、ラジカル重合性の硬化性化合物などの重合性化合物)、および上記の多電子還元触媒を担持した導電性酸化物粒子、必要に応じて公知の樹脂、重合開始剤、滑剤粒子、酸化防止剤等を添加して調製した塗布液を、公知の方法により感光層表面に塗布し、自然乾燥または熱乾燥を行い、その後硬化処理して作製することができる。
保護層の膜厚は、0.2〜10μmの範囲内が好ましく、0.5〜6μmの範囲内がより好ましい。
本発明では、保護層の硬化は、塗布膜に活性線を照射してラジカルを発生して重合し、かつ分子間および分子内で架橋反応による架橋結合を形成して硬化し、硬化性樹脂を生成することが好ましい。活性線としては、紫外線、可視光などの光や電子線が好ましく、使い易さ等の見地から紫外線が特に好ましい。
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン、紫外線LED等を用いることができる。
照射条件は、それぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常1〜20mJ/cm2の範囲内、好ましくは、5〜15mJ/cm2の範囲内である。光源の出力電圧は、好ましくは0.1〜5kWの範囲内であり、特に好ましくは、0.5〜3kWの範囲内である。
電子線源としては、電子線照射装置に格別の制限はなく、一般にはこのような電子線照射用の電子線加速機として、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式のものが有効に用いられる。
電子線照射の際の加速電圧は、100〜300kVの範囲内であることが好ましい。吸収線量としては0.005Gy〜100kGy(0.5〜10Mrad)の範囲内であることが好ましい。
活性線の照射時間は、活性線の必要照射量が得られる時間であり、具体的には0.1秒〜10分の範囲内が好ましく、硬化効率または作業効率の観点から1秒〜5分の範囲内がより好ましいとされる。
本発明では、活性線の照射前後、および、活性線を照射中に表面保護層を乾燥処理することができ、乾燥を行うタイミングは活性線の照射条件と組み合わせて適宜選択することができる。
保護層の乾燥条件は、塗布液に使用する溶媒の種類や保護層の膜厚などにより適宜選択することが可能である。また、乾燥温度は、室温〜180℃の範囲内が好ましく、80〜140℃の範囲内が特に好ましい。また、乾燥時間は、1〜200分の範囲内が好ましく、5〜100分の範囲内が特に好ましい。
[画像形成装置および画像形成方法]
本発明の感光体は、一般的な電子写真方式の画像形成装置に備えることができる。また、本発明の感光体は、該画像形成装置を用いた画像形成方法に好適に用いることができる。
以下に、画像形成装置とともに画像形成方法について説明する。
本発明の効果を実現する画像形成装置は、好ましくは、(1)本実施形態の電子写真感光体、(2)前述した電子写真感光体表面を帯電する帯電手段、(3)帯電手段により帯電された電子写真感光体表面に像露光を行い潜像形成を行う露光手段、(4)露光手段により形成された潜像を顕像化してトナー画像を形成する現像手段、(5)現像手段により電子写真感光体表面に形成されたトナー画像を用紙等の転写媒体または転写ベルト上に転写する転写手段、を有するものである。
なお、電子写真感光体を帯電させる帯電手段では、非接触帯電装置を用いることが好ましい。非接触帯電装置としては、コロナ帯電装置、コロトロン帯電装置、スコロトロン帯電装置を挙げることができる。
図1は、本発明の実施形態の一つを示すカラー画像形成装置の一例を説明する断面構成図である。
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21および定着手段24と、を有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の電子写真感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラー5Y、クリーニング手段6Yを有する。
マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の電子写真感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラー5M、クリーニング手段6Mを有する。
シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の電子写真感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラー5C、クリーニング手段6Cを有する。
黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の電子写真感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラー5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkを中心に、帯電手段2Y、2M、2C、2Bk、像露光手段3Y、3M、3C、3Bk、現像手段4Y、4M、4C、4Bk、および、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkに、それぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
画像形成ユニット10Yは、像形成体である電子写真感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、または帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Y(以下、単にクリーニング手段6Y、またはクリーニングブレード6Yという)を配置し、電子写真感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも電子写真感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
帯電手段2Yは、電子写真感光体1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施形態においては、電子写真感光体1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた電子写真感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、電子写真感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名:セルフォック(登録商標)レンズ;日本板硝子株式会社製)とから構成されるもの、またはレーザ光学系などが用いられる。
現像手段4Yは、電子写真感光体1Yにトナーを供給し、電子写真感光体1Yの表面に形成された静電潜像を現像可能に構成されている。
クリーニング手段6Yは、電子写真感光体1Yの表面に圧接するローラーや、ブレードを有しうる。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkと当接可能に設けられている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、第2の像担持体である無端ベルト状中間転写体70と、当該無端ベルト状中間転写体70と当接して配置された一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkと、当該無端ベルト状中間転写体70のクリーニング手段6bとを有する。
無端ベルト状中間転写体70は、複数のローラー71、72、73、74により巻回され、回動可能に支持されている。
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像手段、クリーニング手段等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。
また、帯電手段、露光手段、現像手段、一次転写ローラー、およびクリーニング手段の少なくとも一つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
プロセスカートリッジ8は、筐体と、それに収容された電子写真感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Yおよびクリーニング手段6Yと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とを有する。また、装置本体には、プロセスカートリッジ8を装置本体内にガイドする手段として支持レール82L、82Rが設けられている。それにより、プロセスカートリッジ8を装置本体に着脱可能となっている。これらのプロセスカートリッジ8は、装置本体に着脱自在に構成された単一の画像形成ユニットとなりうる。
給紙搬送手段21は、給紙カセット20内の転写材Pを、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22Dおよびレジストローラー23を経て、二次転写ローラー5bに搬送可能に設けられている。
定着手段24は、二次転写ローラー5bにより転写されたカラー画像を定着処理する。排紙ローラー25は、定着処理された転写材Pを挟持して、画像形成装置外部に設けられた排紙トレイ26上に載置可能に設けられている。
このように構成された画像形成装置Aでは、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkにより画像を形成する。具体的には、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkにより電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面にコロナ放電して負に帯電させる。次いで、露光手段3Y、3M、3C、3Bkで、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段4Y、4M、4C、4Bkで、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面にトナーを付与し、現像する。
次いで、一次転写ローラー(一次転写手段)5Y、5M、5C、5Bkを、回動する無端ベルト状中間転写体70と当接させる。それにより、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bk上にそれぞれ形成した各色の画像を、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写させて、カラー画像を転写する(一次転写する)。画像形成処理中、一次転写ローラー5Bkは、常時、電子写真感光体1Bkに当接する。一方、他の一次転写ローラー5Y、5M、5Cは、カラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する電子写真感光体1Y、1M、1Cに当接する。
そして、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkと無端ベルト状中間転写体70とを分離させた後、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面に残留するトナーを、クリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkで除去する。そして、次回の画像形成に備えて、必要に応じて電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面を除電手段(不図示)によって除電した後、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkにより負に帯電させる。
一方、給紙カセット20内に収容された転写材P(例えば普通紙、透明シート等の最終画像を担持する支持体)を、給紙搬送手段21で給紙し、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て二次転写ローラー(二次転写手段)5bに搬送する。そして、二次転写ローラー5bを回動する無端ベルト状中間転写体70と当接させて、転写材P上にカラー画像を一括して転写する(二次転写する)。二次転写ローラー5bは、転写材P上に二次転写を行うときのみ、無端ベルト状中間転写体70と当接する。その後、カラー画像が一括転写された転写材Pを、無端ベルト状中間転写体70の曲率が高い部位で分離する。
このようにしてカラー画像が一括して転写された転写材Pを、定着手段24で定着処理した後、排紙ローラー25で挟持して装置外の排紙トレイ26上に載置する。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体という。また、カラー画像が一括転写された転写材Pを無端ベルト状中間転写体70から分離した後、クリーニング手段6bで無端ベルト状中間転写体70上の残留トナーを除去する。
本発明の画像形成装置においては、現像手段により電子写真感光体表面に形成されたトナー画像を用紙等の転写媒体または転写ベルト上に転写した後、次に電子写真感光体の表面を帯電手段によって帯電する前に、前記電子写真感光体の表面における残留電荷を除電するための除電手段を有さないことが好ましい。除電手段を有さない場合、中間層の電荷輸送性が十分でないと、非露光部と露光部との露光後電位の差が生じるため、電子写真プロセスの繰り返し時に露光後電位が上昇し、黒ベタ画像を印刷したときに感光体周期で画像濃度差が発生してしまう。しかしながら、本発明の電子写真感光体は、中間層の電荷輸送性に優れるため、例えば除電ランプまたはプレチャージランプのような除電手段を用いない場合であっても、露光後電位の差が生じにくいため、安定した画像が形成される。したがって、除電手段を用いないことによる画像形成装置の低コスト化を図ることができる。
例えば、図1に示す画像形成装置においては、現像手段により電子写真感光体表面に形成されたトナー画像を無端ベルト状中間転写体70(転写ベルト)上に転写し、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面のクリーニングを行って残留トナーを除去した後、次の帯電の前に、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面の残留電荷を除去するための除電手段を設けない形態とすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において、「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りない限り「質量部」または「質量%」を表す。
[実施例1]
<感光体1の作製>
下記に示す導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、および電荷輸送層を順次積層して感光体1を作製した。
(導電性支持体)
直径30mmの円筒形アルミニウム支持体の導電性支持体を用意した。
(中間層)
TiO2/Cu2+系化合物1の調製
導電性金属酸化物粒子としてルチル型TiO2粉末(MT−150A、数平均一次粒径100nm、テイカ株式会社製)を用い、このTiO2の微粒子を蒸留水中に、水に対してTiO2が10質量%となる濃度で懸濁させ、次いでこれに、CuCl2・2H2O(和光純薬工業株式会社製)をCu(II)がTiO2に対して0.1質量%となる量で加え、撹拌しながら90℃に加熱して1時間保持した。次に、得られた懸濁液を吸引濾過によって濾別した後に、残渣を蒸留水によって洗浄し、さらに110℃で加熱乾燥することによって、銅二価塩を担持したTiO2微粒子を得た。
得られた銅二価塩担持TiO2微粒子について、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES,P−4010,HITACHI)および偏光ゼーマン原子吸光分析(Polarized Zeeman AAS,Z−2000,HITACHI)でCu(II)担持量を評価したところ、TiO2に対して0.0050質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
バインダー樹脂としてのポリアミド樹脂(東レ株式会社製CM8000)100質量部を、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比45/20/35)の混合溶媒1700質量部に加えて、20℃で撹拌混合した。この溶液に、上記で調製した銅二価塩担持TiO2微粒子を100質量部添加し、ビーズミルにより、ミル滞留時間5時間として分散させた。そして、この溶液を一昼夜静置した後、ろ過することにより、中間層塗布液を得た。ろ過は、ろ過フィルターとして、公称濾過精度が5μmのリジメッシュフィルター(日本ポール社製)を用いて、50kPaの圧力下で行った。このようにして得られた中間層塗布液を、上記の支持体を洗浄した後の外周に浸漬塗布法で塗布し、120℃で30分乾燥して乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。
(電荷発生層)
電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で、少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料) 20質量部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000−C:電気化学工業社製) 10質量部
酢酸t−ブチル 700質量部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
(電荷輸送層)
電荷輸送物質(4,4’−ジメチル−4”−(β−フェニルスチリル)トリフェニルアミン) 225質量部
バインダー樹脂:ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300質量部
酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエン、BHT) 6質量部
テトラヒドロフラン(THF) 1600質量部
トルエン 400質量部
シリコーンオイル(KF−96:信越化学工業社製) 1質量部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、120℃で70分間乾燥して乾燥膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
[実施例2]
<感光体2の作製>
TiO2/Fe3+系化合物の調製
上記の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、CuCl2・2H2Oに代えて、塩化鉄(III)六水和物(FeCl3・6H2O、関東化学株式会社製、純度99.9質量%)をTiO2に対してFe(III)が0.1質量%となる量で加えたことを除いては同様の手順で、鉄三価塩を担持したTiO2微粒子を得た。
得られた鉄三価塩担持TiO2微粒子について、上記と同様にFe(III)担持量を評価したところ、TiO2に対して0.0050質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Fe3+系化合物に代えたことを除いては同様の手順で、感光体2を作製した。
[実施例3]
<感光体3の作製>
TiO2/Ptの調製
上記の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、CuCl2・2H2Oに代えて、塩化白金(4)酸(キシダ化学株式会社製)をTiO2に対して白金が0.1質量%となる量で加えたことを除いては同様の手順で、Ptを担持したTiO2微粒子を得た。
得られたPt担持TiO2微粒子について、上記と同様にPt担持量を評価したところ、TiO2に対して0.0050質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Ptに代えたことを除いては同様の手順で、感光体3を作製した。
[実施例4]
<感光体4の作製>
TiO2/Pdの調製
上記の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、CuCl2・2H2Oに代えて、塩化パラジウムをTiO2に対してパラジウムが0.1質量%となる量で加えたことを除いては同様の手順で、Pdを担持したTiO2微粒子を得た。
得られたPd担持TiO2微粒子について、上記と同様にPd担持量を評価したところ、TiO2に対して0.0050質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Pdに代えたことを除いては同様の手順で、感光体4を作製した。
[実施例5]
<感光体5の作製>
TiO2/Niの調製
上記の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、CuCl2・2H2Oに代えて、酸化ニッケル試薬(1級)をTiO2に対してニッケルが0.1質量%となる量で加えたことを除いては同様の手順で、Niを担持したTiO2微粒子を得た。
得られたNi担持TiO2微粒子について、上記と同様にNi担持量を評価したところ、TiO2に対して0.0050質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(保護層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Niに代えたことを除いては同様の手順で、感光体5を作製した。
[実施例6]
<感光体6の作製>
WO3/Cu2+系化合物の調製
WO3粉末(数平均一次粒径90nm、株式会社高純度化学研究所製)をフィルターに通して粒径1μm以上の粒子を除去し、650℃で3時間焼成する前処理を行なうことに
よって、三酸化タングステン微粒子を得た。
上記の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」の調製において、TiO2の微粒子に代えて、上記で調製した三酸化タングステン微粒子を用い、「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」と同様の手法で銅二価塩を担持させることによって、銅二価塩を担持した三酸化タングステン微粒子を得た。
この銅二価塩担持三酸化タングステン微粒子について、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES,P−4010,HITACHI)および偏光ゼーマン原子吸光分析(Polarized Zeeman AAS,Z−2000,HITACHI)でCu(II)担持量を評価したところ、WO3に対して0.0050質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したWO
3/Cu2+系化合物に代えたことを除いては同様の手順で、感光体6を作製した。
[実施例7]
<感光体7の作製>
WO3/Pdの調製
上記の「WO3/Cu2+系化合物の調製」において、CuCl2・2H2Oに代えて、塩化パラジウムをWO3に対してパラジウムが0.1質量%となる量で加えたことを除いては同様の手順で、Pdを担持したWO3微粒子を得た。
得られたPd担持WO3微粒子について、上記と同様にPd担持量を評価したところ、WO3に対して0.0050質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したWO3/Pdに代えたことを除いては同様の手順で、感光体7を作製した。
[実施例8]
<感光体8の作製>
TiO2/Cu2+系化合物2の調製
実施例1の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、CuCl2・2H2O(和光純薬工業株式会社製)をCu(II)がTiO2に対して0.002質量%となる量で加えたこと以外は同様の手順で、銅二価塩を担持したTiO2微粒子(TiO2/Cu2+系化合物2)を得た。
得られたTiO2/Cu2+系化合物2について、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES,P−4010,HITACHI)および偏光ゼーマン原子吸光分析(Polarized Zeeman AAS,Z−2000,HITACHI)でCu(II)担持量を評価したところ、TiO2に対して0.0001質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Cu2+系化合物2に代えたことを除いては同様の手順で、感光体8を作製した。
[実施例9]
<感光体9の作製>
TiO2/Cu2+系化合物3の調製
実施例1の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、CuCl2・2H2O(和光純薬工業株式会社製)をCu(II)がTiO2に対して800質量%となる量で加えたこと以外は同様の手順で、銅二価塩を担持したTiO2微粒子(TiO2/Cu2+系化合物3)を得た。
得られたTiO2/Cu2+系化合物3について、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES,P−4010,HITACHI)および偏光ゼーマン原子吸光分析(Polarized Zeeman AAS,Z−2000,HITACHI)でCu(II)担持量を評価したところ、TiO2に対して40質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Cu2+系化合物3に代えたことを除いては同様の手順で、感光体9を作製した。
[実施例10]
<感光体10の作製>
TiO2/Cu2+系化合物4の調製
実施例1の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、CuCl2・2H2O(和光純薬工業株式会社製)をCu(II)がTiO2に対して0.0016質量%となる量で加えたこと以外は同様の手順で、銅二価塩を担持したTiO2微粒子(TiO2/Cu2+系化合物4)を得た。
得られたTiO2/Cu2+系化合物4について、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES,P−4010,HITACHI)および偏光ゼーマン原子吸光分析(Polarized Zeeman AAS,Z−2000,HITACHI)でCu(II)担持量を評価したところ、TiO2に対して0.00008質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Cu2+系化合物4に代えたことを除いては同様の手順で、感光体10を作製した。
[実施例11]
<感光体11の作製>
TiO2/Cu2+系化合物5の調製
実施例1の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、CuCl2・2H2O(和光純薬工業株式会社製)をCu(II)がTiO2に対して840質量%となる量で加えたこと以外は同様の手順で、銅二価塩を担持したTiO2微粒子(TiO2/Cu2+系化合物5)を得た。
得られたTiO2/Cu2+系化合物5について、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES,P−4010,HITACHI)および偏光ゼーマン原子吸光分析(Polarized Zeeman AAS,Z−2000,HITACHI)でCu(II)担持量を評価したところ、TiO2に対して42質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Cu2+系化合物5に代えたことを除いては同様の手順で、感光体11を作製した。
[実施例12]
<感光体12の作製>
TiO2/Cu2+系化合物6の調製
実施例1の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、導電性金属酸化物であるルチル型TiO2粉末(MT−150A、数平均一次粒径100nm、テイカ株式会社製)を、ルチル型TiO2粉末(数平均一次粒径10nm)に変更したこと以外は同様の手順で、TiO2/Cu2+系化合物6を調製した。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Cu2+系化合物6に代えたことを除いては同様の手順で、感光体12を作製した。
[実施例13]
<感光体13の作製>
TiO2/Cu2+系化合物7の調製
実施例1の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、導電性金属酸化物であるルチル型TiO2粉末(MT−150A、数平均一次粒径100nm、テイカ株式会社製)を、ルチル型TiO2粉末(数平均一次粒径1000nm)に変更したこと以外は同様の手順で、TiO2/Cu2+系化合物7を調製した。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Cu2+系化合物7に代えたことを除いては同様の手順で、感光体13を作製した。
[実施例14]
<感光体14の作製>
TiO2/Cu2+系化合物8の調製
実施例1の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、導電性金属酸化物であるルチル型TiO2粉末(MT−150A、数平均一次粒径100nm、テイカ株式会社製)を、ルチル型TiO2粉末(数平均一次粒径9nm)に変更したこと以外は同様の手順で、TiO2/Cu2+系化合物8を調製した。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Cu2+系化合物8に代えたことを除いては同様の手順で、感光体14を作製した。
[実施例15]
<感光体15の作製>
TiO2/Cu2+系化合物9の調製
実施例1の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」において、導電性金属酸化物であるルチル型TiO2粉末(MT−150A、数平均一次粒径100nm、テイカ株式会社製)を、ルチル型TiO2粉末(数平均一次粒径1003nm)に変更したこと以外は同様の手順で、TiO2/Cu2+系化合物9を調製した。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/Cu2+系化合物9に代えたことを除いては同様の手順で、感光体15を作製した。
[実施例16]
<感光体16の作製>
実施例1の(中間層)において、バインダー樹脂としてのポリアミド樹脂100質量部に対して、銅二価塩担持TiO2微粒子(TiO2/Cu2+系化合物1)の添加量を100質量部から20質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様の手順で感光体16を作製した。
[実施例17]
<感光体17の作製>
実施例1の(中間層)において、バインダー樹脂としてのポリアミド樹脂100質量部に対して、銅二価塩担持TiO2微粒子(TiO2/Cu2+系化合物1)の添加量を100質量部から300質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様の手順で感光体17を作製した。
[実施例18]
<感光体18の作製>
実施例1の(中間層)において、バインダー樹脂としてのポリアミド樹脂100質量部に対して、銅二価塩担持TiO2微粒子(TiO2/Cu2+系化合物1)の添加量を100質量部から18質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様の手順で感光体18を作製した。
[実施例19]
<感光体19の作製>
実施例1の(中間層)において、バインダー樹脂としてのポリアミド樹脂100質量部に対して、銅二価塩担持TiO2微粒子(TiO2/Cu2+系化合物1)の添加量を100質量部から303質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様の手順で感光体19を作製した。
[実施例20]
<感光体20の作製>
TiO2/WO3/Cu2+系化合物の調製
実施例1の「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」の調製において、ルチル型TiO2粉末(MT−150A、数平均一次粒径100nm、テイカ株式会社製)10質量%に代えて、ルチル型TiO2粉末(MT−150A、数平均一次粒径100nm、テイカ株式会社製)5質量%と、実施例6で調製した三酸化タングステン微粒子(数平均一次粒径90nm)5質量%とを用いたことを除いては、上記「TiO2/Cu2+系化合物1の調製」と同様の手法で銅二価塩を担持させることによって、銅二価塩を担持した酸化チタン/三酸化タングステン微粒子を得た。このとき、酸化チタン/三酸化タングステン微粒子の数平均一次粒径は95nmであった。
得られた銅二価塩担持TiO2/WO3微粒子について、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES,P−4010,HITACHI)および偏光ゼーマン原子吸光分析(Polarized Zeeman AAS,Z−2000,HITACHI)でCu(II)担持量を評価したところ、TiO2/WO3に対して0.0050質量%(仕込量の5質量%)が担持されていた。
実施例1の(中間層)において、TiO2/Cu2+系化合物1を上記で調製したTiO2/WO3/Cu2+系化合物に代えたことを除いては同様の手順で、感光体20を作製した。
[比較例1]
<比較感光体1の作製>
実施例1の(中間層)において、銅二価塩担持TiO2微粒子100質量部の代わりに、金属を担持しない酸化チタン(SMT500SAS、数平均一次粒径100nm、テイカ株式会社製)を100質量部用いたことを除いては同様の手順で、比較感光体1を作製した。
[比較例2]
<比較感光体2の作製>
実施例6の(中間層)において、銅二価塩担持三酸化タングステン微粒子100質量部の代わりに、銅二価塩を担持させていない三酸化タングステン微粒子を100質量部添加したことを除いては同様の手順で、比較感光体2を作製した。
[比較例3]
<比較感光体3の作製>
比較例1において、多電子還元触媒を担持させていない導電性金属酸化物粒子の添加量をバインダー樹脂としてのポリアミド樹脂100質量部に対して300質量部としたことを除いては同様の手順で、比較感光体3を作製した。
[評価方法]
(1)電位安定性の評価
コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製Bizhub(登録商標)554実機のBk現像位置で、帯電前イレースを除去し、現像機に表面電位計を設置する改造を行い、温度10℃、湿度15%RHの低温低湿環境で、A3黒ベタ画像20枚画出し前後の露光部の表面電位Vi(V)の変化幅をΔVi(V)として測定した。表面電位の変化幅ΔViが10V未満であれば実用可能と評価した。
(2)ホールブロッキング性の評価
温度30℃、湿度80%RHの高温高湿環境において、Bizhub(登録商標)554実機の、Bk現像位置で感光体表面電位V0=600V、バイアス電位Vb=450Vで、白ベタ画像画出しを行い、黒ポチ(斑点状の画像欠陥)の数を数えた。100cm2あたりの黒ポチの数が5個未満であれば実用上問題ないと判断した。
得られた結果を下記表1に示す。
表1に示した結果より、実施例1〜20の感光体は、比較例1〜3の感光体に比べて、優れた電位安定性およびホールブロッキング性が得られることが認められる。比較例1、2の感光体では、多電子還元触媒を含まないため、中間層のキャリア輸送性が十分ではなく、帯電前イレースがない場合は優れた電位安定性が得られない。多電子還元触媒を含まない場合、比較例3のように、中間層のキャリア輸送性を向上させるために導電性金属酸化物粒子の含有量を高くすると、導電性金属酸化物粒子がキャリア注入点となることによってホールブロッキング性が低下しやすくなることがわかった。
実施例1〜7のように、CuやFe以外にもPt、Pd、Niなどの金属も多電子還元触媒として酸化チタンや酸化タングステンに担持させて中間層に導入することによって優れた電位安定性およびホールブロッキング性を与える。
また、実施例1、8〜11の比較から、多電子還元触媒の担持量が導電性金属酸化物に対して0.0001〜40質量%である実施例1、8、9の感光体は特に優れた電位安定性を示すことがわかった。
また、実施例1、12〜15の比較から、導電性金属酸化物の数平均一次粒径が10〜1000nmである実施例1、12、13の感光体はより優れた電位安定性を示す。
また、実施例1、16〜19の比較から、多電子還元触媒を担持した導電性金属酸化物の含有量がバインダー樹脂100質量部に対して、20〜300質量部である実施例1、12、13の感光体はより優れた電位安定性およびホールブロッキング性を示すことがわかった。