以下に、図面を参照しながら開示技術を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
開示技術を適用した第1実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
図1は、開示技術を適用した車両用空調装置1を示すブロック図である。図1に示すように、車両用空調装置1は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2を備える。磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2は、MHP(Magneto-caloric effect Heat Pump)装置2、または単に磁気ヒートポンプ装置2とも呼ばれる。MHP装置2は、熱磁気サイクル装置を提供する。
この明細書においてヒートポンプ装置の語は広義の意味で使用される。すなわち、ヒートポンプ装置の語には、ヒートポンプ装置によって得られる冷熱を利用する装置と、ヒートポンプ装置によって得られる温熱を利用する装置との両方が含まれる。冷熱を利用する装置は、冷凍サイクル装置とも呼ばれることがある。よって、この明細書においてヒートポンプ装置の語は冷凍サイクル装置を包含する概念として使用される。
車両用空調装置1は、MHP装置2の高温側に設けられた熱交換器3を有する。熱交換器3は、MHP装置2の高温と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器3は、主として放熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器3は、MHP装置2の熱輸送媒体と、空気との熱交換を提供する。熱交換器3は、車両用空調装置1における高温系統機器のひとつである。熱交換器3は、例えば車両の室内に設置され、空調用空気と熱交換することにより空気を温める。熱交換器3は、作業室11からの熱出力のうち高温端からの温熱出力を用いて、被加熱流体である例えば空調用空気を加熱する。熱交換器3は、熱輸送媒体との熱交換により被加熱流体を加熱する高温側熱交換器である。
車両用空調装置1は、MHP装置2の低温側に設けられた熱交換器4を有する。熱交換器4は、MHP装置2の低温端と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器4は、主として吸熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器4は、MHP装置2の熱輸送媒体と、熱源媒体との熱交換を提供する。熱交換器4は、車両用空調装置1における低温系統機器のひとつである。熱交換器4は、例えば車両の外部に設置され、外気と熱交換する。熱交換器4は、作業室11からの熱出力のうち低温端からの冷熱出力を用いて、被冷却流体である例えば外気を冷却する。熱交換器4は、熱輸送媒体との熱交換により被冷却流体を冷却する低温側熱交換器である。
MHP装置2は、MHP装置2を駆動するための回転軸2aを有する。回転軸2aは、動力源5と作動的に連結されている。よって、MHP装置2は、動力源5によって回転駆動される。動力源5は、MHP装置2に回転動力を提供する。動力源5は、MHP装置2の唯一の動力源である。動力源5は、電動機、内燃機関など回転機器によって提供される。動力源の一例は、車両に搭載された電池によって駆動される電動機である。以下、動力源を、モータと呼ぶ場合がある。
MHP装置2は、ハウジング6を備える。ハウジング6は回転軸2aを回転可能に支持している。MHP装置2は、ロータ7を備える。ロータ7は、ハウジング6内に回転可能に支持されている。ロータ7は、回転軸2aから直接的にまたは間接的に回転力を受けて、回転する。ロータ7は、動力源5によって回転させられる回転体である。ロータ7は、円筒状の部材である。
ロータ7は、熱輸送媒体が流れることができる作業室11を形成する。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向に沿って延びている。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向の両方の端面において開口している。ロータ7は、複数の作業室11を備えることができる。複数の作業室11は、ロータ7の回転方向に沿って配列されている。ロータ7は、容器に相当する。以下、ロータを、容器または素子ベッドと呼ぶ場合がある。
ロータ7は、磁気熱量素子12を備える。磁気熱量素子12は、MCE(Magneto-Caloric Effect)素子12とも呼ばれる。MHP装置2は、MCE素子12の磁気熱量効果を利用する。MHP装置2は、MCE素子12によって低温端と高温端とを生成する。MCE素子12は、低温端と高温端との間に設けられている。図示の例では、図中の右側が低温端であり、図中の左端が高温端である。
MCE素子12は、作業室11内に、熱輸送媒体と熱交換するように配置されている。MCE素子12は、ロータ7に固定され、保持されている。MCE素子12は、熱輸送媒体の流れ方向に沿って配置されている。MCE素子12は、ロータ7の軸方向に沿って細長く延在している。ロータ7は、複数のMCE素子12を備えることができる。複数のMCE素子12は、ロータ7の回転方向に沿って互いに離れて配置されている。
MCE素子12は、外部磁場の強弱の変化に応答して発熱と吸熱とを生じる。MCE素子12は、外部磁場の印加により発熱し、外部磁場の除去により吸熱する。MCE素子12は、外部磁場が印加されることによって電子スピンが磁場方向に揃うと、磁気エントロピーが減少し、熱を放出することによって温度が上昇する。また、MCE素子12は、外部磁場が除去されることによって電子スピンが乱雑になると、磁気エントロピーが増加し、熱を吸収することによって温度が低下する。MCE素子12は、常温域において高い磁気熱量効果を発揮する磁性体によって作られている。例えば、ガドリウム系材料、またはランタン−鉄−シリコン化合物を用いることができる。また、マンガン、鉄、リンおよびゲルマニウムの混合物を用いることができる。MCE素子12には、外部磁場の印加により吸熱し、外部磁場の除去により発熱する素子を利用してもよい。
MHP装置2は、ロータ7と対向して配置されたステータ8を有する。ステータ8は、ハウジング6の一部によって提供されている。ステータ8は、ロータ7の径方向内側および/または径方向外側に配置され、ロータ7と径方向に関して対向する部位を有する。これら径方向に関して対向する部位は、磁場変調装置を提供するために利用される。ステータ8は、ロータ7の軸方向一端および/または軸方向他端に配置され、ロータ7と軸方向に関して対向する部位を有する。これら軸方向に対向する部位は、熱輸送装置、具体的には流路切換機構を提供するために利用される。
MHP装置2は、MCE素子12をAMR(Active Magnetic Refrigeration)サイクルの素子として機能させるための磁場変調装置14と熱輸送装置16とを備える。磁場変調装置14は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。磁場変調装置14は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって磁場を周期的に増減させる。磁場変調装置14は、回転軸2aに与えられる回転動力によって駆動される。熱輸送装置16は、ポンプ17と、流路切換機構18とを有する。流路切換機構18は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。流路切換機構18は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって機能する。流路切換機構18は、熱輸送媒体の流路に対する作業室11の接続状態を切換えることにより、作業室11およびMCE素子12に対する熱輸送媒体の流れ方向を反転するように切換える。
磁場変調装置14は、MCE素子12に外部磁場を与えるとともに、その外部磁場の強さを増減させる。磁場変調装置14は、MCE素子12を強い磁界内に置く励磁状態と、MCE素子12を弱い磁界内またはゼロ磁界内に置く消磁状態とを周期的に切換える。磁場変調装置14は、MCE素子12が強い外部磁場の中に置かれる励磁期間、およびMCE素子12が励磁期間より弱い外部磁場の中に置かれる消磁期間を周期的に繰り返すように外部磁場を変調する。磁場変調装置14は、後述する熱輸送媒体の往復的な流れに同期して、MCE素子12への磁場の印加と除去とを繰り返す。磁場変調装置14は、外部磁場を生成するための磁力源13、例えば永久磁石、または電磁石を備える。
具体的には、磁場変調装置14は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。磁場変調装置14は、第1位置にあるMCE素子12を強い磁場の中に位置付ける。磁場変調装置14は、第2位置にあるMCE素子12を弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が強い磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第1位置に位置付ける。第1方向は、低温端から高温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通するときに、その作業室11の中のMCE素子12が強い磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第1位置に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第2位置に位置付ける。第2方向は、高温端から低温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通するときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第2位置に位置付ける。
熱輸送装置16は、MCE素子12が放熱または吸熱する熱を輸送するための熱輸送媒体と、この熱輸送媒体を流すための流体機器とを備える。熱輸送装置16は、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体をMCE素子12に沿って流す装置である。熱輸送装置16は、MCE素子12に沿って熱輸送媒体を往復的に流す。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による外部磁場の変化に同期して、熱輸送媒体の往復的な流れを発生させる。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による磁場の増減に同期して熱輸送媒体の流れ方向を切換える。
MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体は一次媒体と呼ばれる。一次媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。熱輸送装置16は、熱輸送媒体を流すためのポンプ17を備える。ポンプ17は、一方向に熱輸送媒体を流す一方向ポンプである。ポンプ17は、熱輸送媒体を吸入する吸入口と、熱輸送媒体を吐出する吐出口とを有する。ポンプ17は、熱輸送媒体の環状の流れ経路の上に配置されている。ポンプ17は、環状の流れ経路の中に熱輸送媒体の一方向の流れを生じさせる。ポンプ17は、回転軸2aによって駆動される。ポンプ17は、例えば容積型ポンプである。
熱輸送装置16は、流路切換機構18を備える。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12に関する熱輸送媒体の流れ方向を反転させるように、作業室11に対して熱輸送媒体の流路を切換える。言い換えると、流路切換機構18は、一方向型のポンプ17によって生成される熱輸送媒体の一方向の流れの中における作業室11の配置を流れ方向に関して反転させる。流路切換機構18は、ポンプ17を含む環状の流路の中における往路と復路とにひとつの作業室11を交互に位置付ける。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12と、ポンプ17を含む環状の流路との接続関係を少なくとも2つの状態に切換える。第1の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通した状態である。第2の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通した状態である。
具体的には、流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。流路切換機構18は、第1位置にあるMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、第2位置にあるMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流すように、ポンプ17を含む熱輸送媒体の流れ経路と、MCE素子12、すなわち作業室11との接続状態を切換える。以下、熱輸送媒体が往復的に流れることを、熱輸送媒体の往復移動、又は熱輸送媒体の往復動を言う場合がある。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吸入口とを連通し、他端とポンプ17の吐出口とを連通する。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吐出口とを連通し、他端とポンプ17の吸入口とを連通する。
MHP装置2は、熱交換器3から熱輸送媒体を受け入れる高温側入口16aを有する。高温側入口16aはポンプ17の吸入口に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器3へ向けて熱輸送媒体を供給する高温側出口16bを有する。高温側出口16bは、第1位置にある作業室11の一端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4から熱輸送媒体を受け入れる低温側入口16cを有する。低温側入口16cは、第1位置にある作業室11の他端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4へ向けて熱輸送媒体を供給する低温側出口16dを有する。低温側出口16dは、第2位置にある作業室11の他端に連通可能である。第2位置にある作業室11の一端はポンプ17の吐出口と連通可能である。
ロータ7は、MCE素子12を保持するための素子ベッドとも呼ばれる。この実施形態では、MCE素子12を収容する作業室11を形成する素子ベッドが回転軸2aと作動的に連結されている。流路切換機構18と磁場変調装置14との両方に関連するMCE素子12を含む素子ベッドが回転軸2aによって移動する。よって効率的な駆動が可能である。
ポンプ17、流路切換機構18、および磁場変調装置14は、共通のハウジング6の中に収容されている。この構成によると、ポンプ17を流路切換機構18の近傍に設置することができる。このため、長い配管を要することなくポンプ17と流路切換機構18とが接続される。この結果、ポンプ17を含む流れ経路の分岐があっても、熱輸送媒体の流れの差を抑制することができる。この構成では、ホースなどの配管を用いることなくハウジング6内の流路を利用できる。よって、分岐した流れ経路の間において、配管に起因する熱輸送媒体の流れの差が抑制される。
回転軸2aとロータ7との間には、変速機構9が配置されている。変速機構9は、例えば遊星歯車機構によって提供される。変速機構9は、ポンプ17のボディとステータ8との間に配置されている。変速機構9は、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなるように回転軸2aから伝達される回転数を調節する。この構成によると、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなる。これにより、高回転型のポンプ17を利用することができる。ポンプ17が高い回転数で回転することにより、ポンプ17の流量の増加、および/または小型のポンプ17の利用が可能となる。
車両用空調装置1は、車両に搭載され、車両の乗員室の温度を調節する。2つの熱交換器3、4は、車両用空調装置1の一部を提供する。熱交換器3は、熱交換器4より高温になる高温側熱交換器3である。熱交換器4は、熱交換器3より低温になる低温側熱交換器4である。車両用空調装置1は、高温側熱交換器3、および/または低温側熱交換器4を室内空調のために利用するための空調ダクトおよび送風機などの空気系機器を備える。
車両用空調装置1は、冷房装置または暖房装置として利用される。車両用空調装置1は、室内に供給される空気を冷却する冷却器と、冷却器によって冷却された空気を加熱する加熱器とを備えることができる。MHP装置2は、車両用空調装置1における冷熱供給源、または温熱供給源として利用される。すなわち、高温側熱交換器3は上記加熱器として用いることができる。また、低温側熱交換器4は上記冷却器として用いることができる。
MHP装置2が温熱供給源として利用される場合、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室内に供給され、暖房のために利用される。このとき、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器3は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器4は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2が冷熱供給源として利用される場合、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室内に供給され、冷房のために利用される。このとき、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器4は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器3は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2は、除湿装置として利用されることもある。この場合、低温側熱交換器4を通過した空気は、その後に、高温側熱交換器3を通過し、室内に供給される。MHP装置2は、冬期においても、夏期においても、温熱供給源として利用される。
図2には、容器であるロータ7のうち、一つの作業室11の形成部分を図示している。図2は、ロータ7の一部を、作業室11の端部側から見た図である。MCE素子12は、作業室11に配設されている。図3に示すように、一つのMCE素子12は、複数の素子ユニット12a−12dを備える。複数の素子ユニット12a−12dは、MCE素子12の長手方向、すなわち熱輸送媒体の流れ方向に沿って積層されている。一つのMCE素子12を構成する複数の素子ユニットの数は4つに限定されない。素子ユニットは3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
複数の素子ユニット12a−12dのそれぞれを構成する材料は、互いにキュリー温度が異なる。複数の素子ユニット12a−12dは、異なる温度帯において高い磁気熱量効果を発揮する。高温端に近い素子ユニット12dは、定常運転状態において高温端に現れる温度の近傍において高い磁気熱量効果を発揮する材料組成を有する。低温端に近い素子ユニット12aは、定常運転状態において低温端に現れる温度の近傍において高い磁気熱量効果を発揮する材料組成を有する。中温部に近い素子ユニット12b、12cは、定常運転状態において中温部に現れる温度の近傍において高い磁気熱量効果を発揮する材料組成を有する。
本実施形態では、定常運転において高温端と低温端との間に作り出される温度差を複数の素子ユニット12a−12dが分担する。これにより、それぞれの素子ユニットにおいて高い効率が得られる。換言すると、複数の素子ユニット12a−12dは、定常温度差が得られるときに、それぞれの素子ユニットが所定の閾値を上回る磁気熱量効果を発揮するように調節されている。複数の素子ユニット12a−12dは、作業室11内に、所謂カスケード配置されている。
複数の素子ユニット12a−12dのそれぞれは、図4に例示する構造を有している。一つの素子ユニット12aは、外形が例えば直方体である。素子ユニット12aは、例えば断面矩形状の内部流通路123を複数有している。内部流通路123は、素子ユニット12aの内部に熱輸送媒体を流通可能に形成されている。内部流通路123は、作業室11内における熱輸送媒体の往復動方向に延びている。内部流通路123は、素子ユニット12aの内部において、素子ユニット12aに沿って熱輸送媒体を往復移動可能な通路を提供する。
図5に例示するように、素子ユニット12aは、板部材121と対をなすスペーサ122とを交互にZZ方向に積層して構成することができる。対をなすスペーサ122は、2枚の板部材121の間で、板部材121の延在方向の両端部に配設される。2枚の板部材121と一対のスペーサ122により、1つの内部流通路123が形成される。板部材121及びスペーサ122は、同一の材料により形成されている。素子ユニット12aは、板部材121とスペーサ122とを、例えば焼成加工により一体化して形成される。
素子ユニット12b−12dのそれぞれも、素子ユニット12aと同様の構成を有している。複数の素子ユニット12a−12dは、図3に示すように、熱輸送媒体の往復動方向であるXX方向に配列されている。図2では、紙面表裏方向がXX方向である。また、図2では図示左右方向であるYY方向が、図3では紙面表裏方向が、磁場方向である。YY方向は、磁場変調装置14による磁力線の通過方向である。各素子ユニットの板部材121は、YY方向に延びている。
図3に示すように、素子ユニット12a−12dのそれぞれの両端には、枠体21が配設されている。素子ユニット列の両端及び各素子ユニット間には、それぞれ1枚の枠体21が設けられている。枠体21は、素子ユニットに密着するように配設されている。各素子ユニット間では、隣り合う素子ユニット同士に挟まれるように枠体21が配設されている。
図2に示すように、枠体21の外周部は、ロータ7の作業室11に臨む面に密着している。枠体21は、例えばゴム材又は樹脂材からなる。枠体21は、比較的硬度が低い金属材により形成することもできる。枠体21は、弾性材からなる弾性部材である。枠体21は、弾性部材がロータ7や素子ユニット12a−12dに押されて弾性変形した際に発生する復原力により、弾性部材がロータ7や素子ユニット12a−12dに密着する。
枠体21は、ロータ7と素子ユニットとの間の隙間111を、XX方向の端部で閉塞するように設けられる。また、枠体21は、内部流通路123を流れる熱輸送媒体の流れを阻害しないように設けられる。素子ユニット12a−12dの外形寸法、及び、作業室11の寸法は、素子ユニット12a−12dの作業室11内への収容性を考慮して設定される。そのため、素子ユニット12a−12dとロータ7との間には、若干の隙間111が形成されてしまう。
素子ユニット12a−12d及びロータ7は、いずれも加工ばらつき等を加味して加工公差が設定される。素子ユニット12a−12dの寸法及びロータ7の寸法には、設計標準値からの許容偏差が設定される。素子ユニット12a−12dとロータ7との間には、許容偏差内であれば相互に組付を可能とするために、隙間111が生まれてしまう。枠体21は、この隙間111を閉塞するために設けられる。枠体21の幅は、素子ユニット及び作業室の寸法許容偏差内における隙間111の最大幅以上に設定される。また、枠体21の幅は、図5に示したスペーサ122の幅以下であることが好ましい。枠体21は、本実施形態において磁気熱量素子と容器との間の隙間を閉塞するための閉塞部材に相当する。また、枠体21は、隙間における熱輸送媒体の流通を規制する規制部材に相当する。
なお、規制部材としての閉塞部材をなす枠体21の枠幅寸法は、以下に述べる現象に起因して変化する隙間寸法にも対応するものであることが好ましい。
複数の素子ユニット12a−12dは、異なる温度帯において高い磁気熱量効果を発揮するように、磁性材料に添加される添加物量が互いに異なる場合がある。この場合には、添加物量に応じて変化する外形寸法を考慮することが好ましい。磁性材料に添加される添加物量とは、例えば添加元素量である。例えば、MCE素子12の材料がランタン−鉄−シリコン化合物の場合には、水素添加量による寸法変化を考慮することが好ましい。
また、組付容易性を向上するために、素子ユニット及び作業室の寸法許容偏差内において形成される隙間寸法の最小値を正の所定値とする場合には、これにより増大する隙間寸法を考慮することが好ましい。
また、MCE素子12は、磁場に晒された際に磁歪が発生する。この歪による干渉等により過剰な応力が発生することを防止することを目的とする、変形を許容する隙間構成も考慮することが好ましい。
本実施形態によれば、以下に述べる効果を得ることができる。
MHP装置2は、MCE素子12と、容器であるロータ7と、磁場変調装置14と、熱輸送装置16とを備える。MCE素子12は、外部磁場の強弱により発熱と吸熱とを生じる。ロータ7は、MCE素子12が配置される作業室11を形成する。磁場変調装置14は、MCE素子12に印加される外部磁場を変調する。熱輸送装置16は、MCE素子12に高温端と低温端とを生成するように、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体を作業室11の内部で往復移動させる。MCE素子12は、熱輸送媒体を往復移動方向に流通可能な内部流通路123を有する。MHP装置2は、MCE素子12とロータ7との間の隙間111を閉塞するための閉塞部材からなり、熱輸送媒体の隙間111における流通を規制する規制部材としての枠体21を備える。
これによると、規制部材としての閉塞部材である枠体21により、MCE素子12とロータ7との間の隙間111に熱輸送媒体が流れることを抑止することができる。したがって、枠体21により、MCE素子12の内部流通路123に理想的な設計振幅の熱輸送媒体の往復移動を提供することができる。このようにして、MHP装置2から安定して熱出力を得ることができる。
また、MCE素子12は、キュリー温度が異なる複数の素子ユニット12a−12dを熱輸送媒体の往復動方向に配列してなる。そして、規制部材である枠体21は、複数の素子ユニット12a−12dのそれぞれに対応して設けられた構成である。
これによると、所謂カスケード配置した複数の素子ユニット12a−12dでMCE素子12を構成した場合であっても、各素子ユニット12a−12dとロータ7との間の隙間111に熱輸送媒体が流れることを抑止することができる。したがって、規制部材である枠体21により、各素子ユニット12a−12dの内部流通路123に理想的な設計振幅の熱輸送媒体の往復移動を提供することができる。
また、規制部材である枠体21は、複数の素子ユニット12a−12dのそれぞれについて、熱輸送媒体の往復移動方向における両方の端部位置に設けられた構成である。これによると、複数の素子ユニット12a−12dとロータ7との間のそれぞれの隙間111において熱輸送媒体流れの抑止を可能とする構成を、容易かつ確実に形成することができる。
なお、素子ユニット12a、12dの保持が可能であれば、MCE素子12の両端の枠体21は省略することが可能である。また、図9に示す変形例のように、隣り合う素子ユニットの内部流通路123同士が連通可能であれば、素子ユニット12aと素子ユニット12bの間の枠体21、及び素子ユニット12cと素子ユニット12dの間の枠体21を省略することが可能である。すなわち、規制部材である枠体21は、複数の素子ユニット12a−12dのそれぞれについて、熱輸送媒体の往復移動方向における少なくとも一方の端部位置に設けられた構成とすることができる。これによっても、複数の素子ユニット12a−12dとロータ7との間のそれぞれの隙間111において熱輸送媒体流れの抑止を可能とする構成を、容易かつ確実に形成することができる。
また、図3に示した枠体21は、熱輸送媒体の往復移動方向における隙間111の端部に設けられていた。これに対し、規制部材である枠体21を、図10に例示するように、隙間111及び熱輸送媒体の往復移動方向における隙間111の端部の両方の領域に設けたり、図11に示すように、隙間111のみに設けたりしてもよい。また、図12に示すように、熱輸送媒体の往復動方向においてMCE素子12とロータ7との隙間の全域を埋めるように、閉塞部材としての規制部材を設けてもよい。
すなわち、規制部材は、隙間111及び熱輸送媒体の往復移動方向における隙間111の端部の少なくともいずれかに配設された構成である。これによると、端部を含む隙間111に規制部材を直接介在させて、磁気熱量素子と容器との間の隙間に熱輸送媒体が流れることを抑止することができる。
また、規制部材は、弾性部材を含み、弾性部材が弾性変形した際に発生する復原力により、隙間111を閉塞する構成である。これによると、弾性部材の復原力を利用して、MCE素子12と容器であるロータ7との間の隙間111に熱輸送媒体が流れることを容易に抑止することができる。
本実施形態の装置によれば、上述したように、MCE素子12とロータ7との間の隙間111に熱輸送媒体が流れることを抑止することができる。これによれば、図6に例示するように、熱輸送媒体の往復動の振幅を理想的な設計振幅に揃え易い。そのため、図8に実線矢印で示すように、熱輸送媒体の良好な往復移動により効率の良い熱移動を行なうことが可能となる。
図7に示す枠体21を設けない比較例では、流通抵抗が比較的小さい隙間111では、熱輸送媒体の往復移動振幅が理想的な設計振幅より大きくなる。一方、流通抵抗が比較的大きい内部流通路123では、熱輸送媒体の往復移動振幅が理想的な設計振幅より小さくなる。そのため、図8に細い破線矢印で示すように、内部流通路123では良好な熱移動が行なえない。また、太い破線矢印で示すように、隙間111では往復移動距離が大きくなり過ぎ、設計とは逆の方向へ熱が運ばれてしまう。これらにより、比較例の装置では、熱出力が安定して得られない。これに対し、本実施形態の装置では、安定して熱出力を得ることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図13に基づいて説明する。
第2実施形態は、前述の第1実施形態と比較して、規制部材が閉塞部材ではなく絞り部材である点が異なる。なお、第1実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第2実施形態において説明しない他の構成は、第1実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図13は、作業室11を熱輸送媒体の往復移動方向から見た図である。図13に示すように、本実施形態では、MCE素子12の素子ユニット12a−12dと、容器であるロータ7との間に、絞り板部材221が介設されている。絞り板部材221は、ロータ7側の面が例えば平面状であり、ロータ7の作業室11側の面と密着する。絞り板部材221は、MCE素子12側の面が例えば凹凸のある波状面であり、凹部及び凸部が熱輸送媒体の往復移動方向である紙面表裏方向に延びている。絞り板部材221の波状面では、凸部が素子ユニットに接するようになっている。
絞り板部材221は、例えばゴム材又は樹脂材からなる。絞り板部材221は、比較的硬度が低い金属材により形成することもできる。絞り板部材221は、弾性材からなる弾性部材である。絞り板部材221は、弾性部材がロータ7や素子ユニット12a−12dに押されて弾性変形した際に発生する復原力により、ロータ7に密着するとともに、素子ユニット12a−12dに一部が接する。
絞り板部材221は、ロータ7と素子ユニットとの間の隙間111における流路断面積を絞るように設けられる。ロータ7と素子ユニットとの間における熱輸送媒体の流路は、絞り板部材221の波状面の凹部により提供される。ロータ7と素子ユニットとの間における流路は、熱輸送媒体を素子ユニットに沿って流す。
絞り板部材221の凹部により提供される流路は、この流路における熱輸送媒体の圧力損失が内部流通路123における熱輸送媒体の圧力損失以上となるように設定されることが好ましい。さらに、当該流路における熱輸送媒体の圧力損失が内部流通路123における熱輸送媒体の圧力損失と同等となるように設定されることがより好ましい。
絞り板部材221は、本実施形態において磁気熱量素子と容器との間の隙間における熱輸送媒体の流路断面積を絞る絞り部材に相当する。また、絞り板部材221は、隙間における熱輸送媒体の流通を規制する規制部材に相当する。
本実施形態のMHP装置2は、MCE素子12とロータ7との間の隙間111における熱輸送媒体の流路断面積を絞るための絞り部材からなり、熱輸送媒体の隙間111における流通を規制する規制部材としての絞り板部材221を備える。
これによると、規制部材としての絞り部材である絞り板部材221により、MCE素子12とロータ7との間の隙間111に熱輸送媒体が流れることを抑制することができる。したがって、絞り板部材221により、MCE素子12の内部流通路123に理想的な設計振幅の熱輸送媒体の往復移動を提供することができる。このようにして、MHP装置2から安定して熱出力を得ることができる。
また、MCE素子12は、キュリー温度が異なる複数の素子ユニット12a−12dを熱輸送媒体の往復動方向に配列してなる。そして、規制部材である絞り板部材221は、複数の素子ユニット12a−12dのそれぞれに対応して設けられた構成である。
これによると、MCE素子12を所謂カスケード配置した複数の素子ユニット12a−12dで構成した場合であっても、各素子ユニット12a−12dとロータ7との間の隙間111に熱輸送媒体が流れることを抑制することができる。したがって、規制部材である絞り板部材221により、各素子ユニット12a−12dの内部流通路123に理想的な設計振幅の熱輸送媒体の往復移動を提供することができる。
また、規制部材である絞り板部材221は、複数の素子ユニット12a−12dのそれぞれについて、熱輸送媒体の往復移動方向における両方の端部位置に設けられた構成である。これによると、複数の素子ユニット12a−12dとロータ7との間のそれぞれの隙間111において熱輸送媒体流れの抑制を可能とする構成を、容易かつ確実に形成することができる。
なお、絞り部材は、絞り板部材221のように、素子ユニットの端部を含む隙間111の全域に設けることができる。また、絞り部材は、複数の素子ユニットのそれぞれについて、熱輸送媒体の往復移動方向における少なくとも一方の端部位置に設ける構成であってもよい。これによると、複数の素子ユニットと容器との間のそれぞれの隙間において熱輸送媒体流れの抑制を可能とする構成を、容易かつ確実に形成することができる。
また、絞り部材は、隙間111及び熱輸送媒体の往復移動方向における隙間111の端部の少なくともいずれかに配設された構成であればよい。これによると、端部を含む隙間に絞り部材を直接介在させて、MCE素子と容器との間の隙間に熱輸送媒体が流れることを抑制することができる。
また、規制部材は、弾性部材を含み、弾性部材が弾性変形した際に発生する復原力により、隙間111における流通路断面積を絞る構成である。これによると、弾性部材の復原力を利用して、磁気熱量素子と容器との間の隙間に熱輸送媒体が流れることを容易に抑制することができる。
また、本実施形態では、規制部材が絞り部材からなる。そして、隙間111における熱輸送媒体の圧力損失が、内部流通路123における熱輸送媒体の圧力損失以上となるように、絞り部材が流通路断面積を絞る構成である。これによると、内部流通路123を熱輸送媒体が往復移動する際の流速を、MCE素子12と容器との間の隙間111の流速よりも速くすることができる。したがって、隙間111に熱輸送媒体が流れても、MCE素子12の内部流通路123に設計振幅の熱輸送媒体の往復移動を提供することが容易である。
また、本実施形態では、絞り部材により断面積が絞られた熱輸送媒体の流路は、MCE素子12に沿って形成され、熱輸送媒体はMCE素子12に接しつつ流れる。したがって、隙間の絞り流路においても熱輸送媒体と素子との間で熱の受け渡しが可能である。絞り部材の形態は、絞り板部材221に限定されない。絞り部材は、隙間111における流路断面積を絞るものであればよい。隙間111を流れる熱輸送媒体がMCE素子12に触れるように流れる絞り構造を有することが好ましい。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図14、図15に基づいて説明する。
第3実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、MCE素子の形態が異なる。なお、第1、第2実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1、第2実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第3の実施形態において説明しない他の構成は、第1、第2実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図14に示すように、一つのMCE素子12は、複数の素子ユニット12e−12hを備える。複数の素子ユニット12e−12hは、MCE素子12の長手方向、すなわち熱輸送媒体の流れ方向に沿って積層されている。一つのMCE素子12を構成する複数の素子ユニットの数は4つに限定されない。素子ユニットは3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
複数の素子ユニット12e−12hのそれぞれを構成する材料は、互いにキュリー温度が異なる。複数の素子ユニット12e−12hは、異なる温度帯において高い磁気熱量効果を発揮する。複数の素子ユニット12e−12hは、第1実施形態で説明した複数の素子ユニット12a−12dに対応している。複数の素子ユニット12a−12dがいずれもブロック状であったのに対し、複数の素子ユニット12e−12hは、いずれも、複数の磁性体の粒子からなる。すなわち、複数の素子ユニット12e−12hは、いずれも粒子群からなる。粒子群からなる複数の素子ユニット12e−12hは、作業室11内に、所謂カスケード配置されている。
図14に示すように、素子ユニット12e−12hのそれぞれの両端には、仕切部材32が配設されている。素子ユニット列の両端及び各素子ユニット間には、それぞれ1枚の仕切部材32が設けられている。仕切部材32は、素子ユニットに密着するように配設されている。各素子ユニット間では、隣り合う素子ユニット同士に挟まれるように仕切部材32が配設されている。
図15に示すように、仕切部材32は、枠体321と、メッシュ体322とを有する。メッシュ体322は、素子ユニットを構成する粒子の通過を阻止し、熱輸送媒体の通過を許容するサイズの目を有する。
仕切部材32は、例えばゴム材又は樹脂材からなる。仕切部材32は、ゴムや樹脂からなる板部材を例えばカッティング加工して形成することができる。ゴム材又は樹脂材により形成される仕切部材32は、好適な弾性を有し粒子群の保持が容易である。仕切部材32は、金属材により形成することもできる。仕切部材32は、金属からなる板部材を例えばエッチング加工やプレス加工して形成することができる。金属材により形成される仕切部材32は、強度に優れるとともに量産性に優れる。仕切部材32は、互いに異なる材料からなる枠体321とメッシュ体322とを組み合わせるものであってもよい。
仕切部材32の枠体321は、第1実施形態で説明した枠体21と同様の機能を有する。枠体321の外周部は、ロータ7の作業室11に臨む面に密着している。枠体321は、弾性材からなる弾性部材である。枠体321は、弾性部材がロータ7や素子ユニット12e−12hに押されて弾性変形した際に発生する復原力により、枠体321がロータ7や素子ユニット12e−12hに密着する。
本実施形態では、各素子ユニット12e−12hは、作業室11に充填された粒子群からなる。粒子群からなる素子ユニット12e−12hは、粒子間に内部流通路323が形成される。また、粒子群が作業室11内においてロータ7に接する部位には、粒子間の内部流通路323よりも熱輸送媒体の流通抵抗が小さい通路として隙間311が形成される。隙間311は、素子ユニットを構成する粒子のうち外周部に位置する粒子と、容器であるロータ7との間に形成される。
枠体321は、ロータ7と素子ユニットとの間の隙間311を閉塞するように設けられる。また、枠体321は、内部流通路323を流れる熱輸送媒体の流れを阻害しないように設けられる。枠体321の幅は、素子ユニットを構成する粒子群の平均粒子半径とほぼ同等に設定されることが好ましい。
枠体321は、本実施形態において磁気熱量素子と容器との間の隙間を閉塞するための閉塞部材に相当する。また、枠体321は、隙間における熱輸送媒体の流通を規制する規制部材に相当する。本実施形態の素子ユニットでは、内部流通路323と隙間311とは連通している。したがって、枠体321は隙間311に熱輸送媒体が流れることを完全に抑止することが困難である。この観点から、枠体321は、磁気熱量素子と容器との間の隙間における熱輸送媒体の流路断面積を絞る絞り部材に相当すると言うこともできる。
本実施形態によれば、閉塞部材であり規制部材としての枠体321を備える。枠体321が第1実施形態で説明した枠体21とほぼ同様の機能を有することにより、第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図16に基づいて説明する。
第4実施形態は、前述の第3実施形態と比較して、規制部材が閉塞部材ではなく絞り部材である点が異なる。なお、第1〜第3実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1〜第3実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第4実施形態において説明しない他の構成は、第1〜第3実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図16に示すように、本実施形態では、MCE素子12の素子ユニット12e−12hと、容器であるロータ7との間に、絞り部材421が介設されている。図示例において絞り部材421はロータ7と一体的に形成されている。絞り部材421は、ロータ7とは別体として形成し、ロータ7の作業室11に臨む面に取り付けてもよい。
絞り部材421は、MCE素子12側の面が、例えば凹凸のある凹凸面となっている。この凹凸面の凸部は、例えば半球状の突起であり、半球状突起の半径は素子ユニットを構成する粒子群の平均粒子半径とほぼ同一としている。
絞り部材421は、ロータ7と素子ユニットとの間の隙間311における流路断面積を絞るように設けられる。ロータ7と素子ユニットとの間における熱輸送媒体の流路は、絞り部材421の半球状突起により提供される。ロータ7と素子ユニットとの間における流路は、熱輸送媒体を内部流通路323と同様に素子ユニットを構成する粒子に沿って流す。
絞り部材421により提供される隙間311における流路は、この流路における熱輸送媒体の圧力損失が内部流通路323における熱輸送媒体の圧力損失以上となるように設定されることが好ましい。さらに、当該流路における熱輸送媒体の圧力損失が内部流通路323における熱輸送媒体の圧力損失と同等となるように設定されることがより好ましい。
絞り部材421は、本実施形態において磁気熱量素子と容器との間の隙間における熱輸送媒体の流路断面積を絞る。絞り部材421は、隙間における熱輸送媒体の流通を規制する規制部材に相当する。
本実施形態によれば、規制部材としての絞り部材421を備える。絞り部材421は、第2実施形態で説明した絞り板部材221とほぼ同様の機能を有する。これにより、第2実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図17に基づいて説明する。
第5実施形態は、前述の第1実施形態と比較して、磁気熱量素子の内部に規制部材を設けた点が異なる。なお、第1実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第5実施形態において説明しない他の構成は、第1実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図17は、作業室11内に配設されるMCE素子12の一つの素子ユニットを熱輸送媒体の往復移動方向から見た図である。複数の素子ユニット12a−12dのそれぞれは、図17に例示する構造を有している。
一つの素子ユニット12aは、板部材121と対をなすスペーサ122Aとを交互にZZ方向に積層して構成することができる。対をなすスペーサ122Aは、2枚の板部材121の間で、板部材121の延在方向の両端部に配設される。2枚の板部材121と一対のスペーサ122Aにより、1つの内部流通路123が形成される。スペーサ122Aは、例えばゴム材等の弾性材により形成されている。本実施形態の素子ユニット12aは、板部材121とスペーサ122Aとを、例えば接着加工により一体化して形成される。
板部材121及びスペーサ122Aの積層方向であるZZ方向における素子ユニット12aの寸法は、荷重が印加されていない自由状態では、作業室11の対応する部位の寸法よりも大きくなっている。素子ユニット12aを作業室11内に配設する際には、素子ユニット12aに対してZZ方向に荷重が印加され、スペーサ122Aを圧縮した状態で挿設する。作業室11内で荷重が除去された素子ユニット12aは、弾性部材であるスペーサ122Aの復原力により、図17に矢印で示すようにZZ方向の寸法が大きくなる。これにより、素子ユニット12aのZZ方向の端面がロータ7の作業室11の臨む面に押し付けられる。これにより、素子ユニット12aとロータ7との隙間が閉塞される。
素子ユニット12b−12dのそれぞれも、素子ユニット12aと同様の構成を有している。素子ユニット12b−12dのそれぞれも、素子ユニット12aと同様に作業室11内に配設される。これにより、少なくとも素子ユニットのZZ方向の端面において、素子ユニットとロータ7との隙間が閉塞される。したがって、このZZ方向における隙間には、素子ユニットの熱輸送媒体往復動方向の端部位置に閉塞部材等の規制部材を設ける必要がない。YY方向における隙間には、閉塞部材等の規制部材を設けてもよい。
スペーサ122Aは、本実施形態において磁気熱量素子と容器との間の隙間を閉塞するための閉塞部材に相当する。また、スペーサ122Aは、隙間における熱輸送媒体の流通を規制する規制部材に相当する。本実施形態では、各素子ユニットのYY方向において磁気熱量素子と容器との間に隙間が残る。したがって、スペーサ122Aは、磁気熱量素子と容器との間の隙間における熱輸送媒体の流路断面積を絞る絞り部材に相当すると言うこともできる。
なお、図5に例示した各素子ユニットを構成する板部材121及びスペーサ122を、いずれも例えば磁性体粒子間に弾性部材を分散配置させた材料により形成することができる。これによれば、YY方向及びZZ方向のいずれにおいても弾性部材の復原力により隙間を閉塞することが可能である。
本実施形態によれば、規制部材は、MCE素子12の内部に設けられて、隙間を閉塞又は隙間における流通路断面積を絞る構成である。これによると、磁気熱量素子の内部に設けた部材を利用して、磁気熱量素子と容器との間の隙間に熱輸送媒体が流れることを抑制又は抑止することができる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について図18に基づいて説明する。
第6実施形態は、前述の第1実施形態と比較して、熱輸送媒体の往復移動振幅を調整する構成が異なる。なお、第1実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第6実施形態において説明しない他の構成は、第1実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図18に示すように、隣り合う素子ユニット12a−12dの間には、それぞれ多孔体60が配設されている。各素子ユニット間では、隣り合う素子ユニット同士に挟まれるように多孔体60が配設されている。多孔体60は、作業室11内を往復移動する熱輸送媒体の流路を横断するように設けられている。多孔体60は、素子ユニットのYY方向及びZZ方向に拡がって、作業室11を横断するように設けられている。多孔体60は、多孔体60を挟み込む両側の素子ユニットに密着している。
多孔体60は、熱輸送媒体が往復移動方向に通過可能な連通路を多数有している。多孔体60は、例えば、連泡構造の発泡体とすることができる。また、多孔体60は、不織布又は織布とすることができる。多孔体60は、比較的大きな流通抵抗を有する。多孔体60の流通抵抗は、作業室11を横断する拡がり方向において均一となっている。多孔体60は、往復移動する熱輸送媒体に比較的大きな圧力損失を提供する。
多孔体60は、圧力損失体と言うことができる。多孔体60が提供する圧力損失は、例えば内部流通路123における圧力損失や隙間111における圧力損失よりも大きい。多孔体60は、内部流通路123を流れる熱輸送媒体の流速と隙間111を流れる熱輸送媒体の流速とを近似させる。多孔体60は、内部流通路123を流れる熱輸送媒体の流速と隙間111を流れる熱輸送媒体の流速との差を、多孔体60を設けない場合よりも抑制する。多孔体60は、内部流通路123及び隙間111の流路間に圧力損失特性の相違があっても、熱輸送媒体の往復移動振幅にばらつきが出ないようにする。
本実施形態によれば、MCE素子12に接するとともに、作業室11を横断するように設けられた多孔体60を備える。多孔体60は、内部流通路123を流れる熱輸送媒体の流速と隙間111を流れる熱輸送媒体の流速との差を、多孔体60を設けない場合よりも抑制する構成である。
これによると、多孔体60により、内部流通路123を流れる熱輸送媒体の流速とMCE素子12とロータ7との間の隙間111を流れる熱輸送媒体の流速とを近似させることができる。したがって、多孔体60により、MCE素子12の内部流通路123に理想的な設計振幅の熱輸送媒体の往復移動を提供することが可能である。このようにして、熱磁気サイクル装置から安定して出力を得ることができる。
(他の実施形態)
この明細書に開示される技術は、その開示技術を実施するための実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。開示される技術は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。実施形態は追加的な部分をもつことができる。実施形態の部分は、省略される場合がある。実施形態の部分は、他の実施形態の部分と置き換え、または組み合わせることも可能である。実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示である。開示技術の技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示技術のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、MCE素子12は、キュリー温度が異なる複数の素子ユニット12a−12d、または複数の素子ユニット12e−12hを、熱輸送媒体の往復動方向に配列していたが、これに限定されるものではない。例えば、図19に示すように、1つの素子体からなるMCE素子12と容器であるロータ7との間の隙間111に、閉塞部材であり規制部材である枠体21を設けたものであってもよい。規制部材の配設位置は、図示例のように熱輸送媒体の往復動方向において隙間111の両端部であってもよいし、一方の端部であってもよい。また、中間部であってもよい。少なくとも一箇所に規制部材を設ければよい。
また、上記実施形態では、規制部材は弾性材で形成された弾性部材であったが、これに限定されるものではない。例えば、規制部材は、その一部に弾性部材を有するものであってもよい。また、例えば、規制部材を塑性体により形成してもかまわない。
また、上記実施形態では、作業室11とMCE素子12とを有する素子ベッドが回転する構成を採用したが、これに限定されるものではない。上記実施形態の構成に代えて、素子ベッドと磁場変調装置14との間の相対的な回転と、素子ベッドと流路切換機構18との間の相対的な回転とを提供するための多様な構成を採用することができる。例えば、素子ベッドを静止させておき、永久磁石を含む磁場変調装置を素子ベッドに対して相対的に回転移動させてもよい。
また、上記実施形態では、車両用空調装置に開示技術を適用した。これに代えて、住宅用の空調装置に開示技術を適用してもよい。また、水を加熱する給湯装置として利用してもよい。また、上記実施形態では、室外の空気を主要な熱源とするMHP装置2を説明した。これに代えて、水、土などの他の熱源を主要熱源として利用してもよい。
また、上記実施形態では、熱磁気サイクル装置の一形態であるMHP装置2を説明した。これに代えて、熱磁気サイクル装置の一形態である熱磁気エンジン装置に開示技術を適用してもよい。例えば、上記実施形態のMHP装置2の磁場変化と熱輸送媒体の流れとの位相を調節することにより熱磁気エンジン装置を提供することができる。