以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
図1は、発明を実施するための第1実施形態に係る車両用空調装置1を示すブロック図である。車両用空調装置1は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2を備える。磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2はMHP(Magneto-caloric effect Heat Pump)装置2とも呼ばれる。MHP装置2は、熱磁気サイクル装置を提供する。
この明細書においてヒートポンプ装置の語は広義の意味で使用される。すなわち、ヒートポンプ装置の語には、ヒートポンプ装置によって得られる冷熱を利用する装置と、ヒートポンプ装置によって得られる温熱を利用する装置との両方が含まれる。冷熱を利用する装置は、冷凍サイクル装置とも呼ばれることがある。よって、この明細書においてヒートポンプ装置の語は冷凍サイクル装置を包含する概念として使用される。
車両用空調装置1は、MHP装置2の高温側に設けられた熱交換器3を有する。熱交換器3は、MHP装置2の高温と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器3は、主として放熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器3は、MHP装置2の熱輸送媒体と、空気との熱交換を提供する。熱交換器3は、車両用空調装置1における高温系統機器のひとつである。熱交換器3は、例えば車両の室内に設置され、空調用空気と熱交換することにより空気を温める。
車両用空調装置1は、MHP装置2の低温側に設けられた熱交換器4を有する。熱交換器4は、MHP装置2の低温端と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器4は、主として吸熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器4は、MHP装置2の熱輸送媒体と、熱源媒体との熱交換を提供する。熱交換器4は、車両用空調装置1における低温系統機器のひとつである。熱交換器4は、例えば車両の外部に設置され、外気と熱交換する。
MHP装置2は、MHP装置2を駆動するための回転軸2aを有する。回転軸2aは、動力源5と作動的に連結されている。よって、MHP装置2は、動力源5によって回転駆動される。動力源5は、MHP装置2に回転動力を提供する。動力源5は、MHP装置2の唯一の動力源である。動力源5は、電動機、内燃機関など回転機器によって提供される。動力源の一例は、車両に搭載された電池によって駆動される電動機である。
MHP装置2は、ハウジング6を備える。ハウジング6は回転軸2aを回転可能に支持している。MHP装置2は、ロータ7を備える。ロータ7は、ハウジング6内に回転可能に支持されている。ロータ7は、回転軸2aから直接的にまたは間接的に回転力を受けて、回転する。ロータ7は、動力源5によって回転させられる回転体である。ロータ7は、円筒状の部材である。
ロータ7は、熱輸送媒体が流れることができる作業室11を形成する。ロータ7は、本実施形態における容器に相当する。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向に沿って延びている。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向の両方の端面において開口している。ロータ7は、複数の作業室11を備えることができる。複数の作業室11は、ロータ7の回転方向に沿って配列されている。以下、ロータを、容器または素子ベッドと呼ぶ場合がある。
ロータ7は、磁気熱量素子12を備える。磁気熱量素子12は、MCE(Magneto-Caloric Effect)素子12とも呼ばれる。MHP装置2は、MCE素子12の磁気熱量効果を利用する。MHP装置2は、MCE素子12によって低温端と高温端とを生成する。MCE素子12は、低温端と高温端との間に設けられている。図示の例では、図中の右側が低温端であり、図中の左端が高温端である。
MCE素子12は、作業室11内に、熱輸送媒体と熱交換するように配置されている。MCE素子12は、ロータ7に固定され、保持されている。MCE素子12は、熱輸送媒体の流れ方向に沿って配置されている。MCE素子12は、ロータ7の軸方向に沿って細長く延在している。ロータ7は、複数のMCE素子12を備えることができる。複数のMCE素子12は、ロータ7の回転方向に沿って互いに離れて配置されている。
MCE素子12は、外部磁場の強弱の変化に応答して発熱と吸熱とを生じる。MCE素子12は、外部磁場の印加により発熱し、外部磁場の除去により吸熱する。MCE素子12は、外部磁場が印加されることによって電子スピンが磁場方向に揃うと、磁気エントロピーが減少し、熱を放出することによって温度が上昇する。また、MCE素子12は、外部磁場が除去されることによって電子スピンが乱雑になると、磁気エントロピーが増加し、熱を吸収することによって温度が低下する。MCE素子12は、常温域において高い磁気熱量効果を発揮する磁性体によって作られている。例えば、ガドリウム系材料、またはランタン−鉄−シリコン化合物を用いることができる。また、マンガン、鉄、リンおよびゲルマニウムの混合物を用いることができる。MCE素子12には、外部磁場の印加により吸熱し、外部磁場の除去により発熱する素子を利用してもよい。
MHP装置2は、ロータ7と対向して配置されたステータ8を有する。ステータ8は、ハウジング6の一部によって提供されている。ステータ8は、ロータ7の径方向内側および/または径方向外側に配置され、ロータ7と径方向に関して対向する部位を有する。これら径方向に関して対向する部位は、磁場変調装置を提供するために利用される。ステータ8は、ロータ7の軸方向一端および/または軸方向他端に配置され、ロータ7と軸方向に関して対向する部位を有する。これら軸方向に対向する部位は、熱輸送装置、具体的には流路切換機構を提供するために利用される。
MHP装置2は、MCE素子12をAMR(Active Magnetic Regenerator)サイクルの素子として機能させるための磁場変調装置14と熱輸送装置16とを備える。磁場変調装置14は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。磁場変調装置14は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって磁場を周期的に増減させる。磁場変調装置14は、回転軸2aに与えられる回転動力によって駆動される。熱輸送装置16は、ポンプ17と、流路切換機構18とを有する。流路切換機構18は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。流路切換機構18は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって機能する。流路切換機構18は、熱輸送媒体の流路に対する作業室11の接続状態を切換えることにより、作業室11およびMCE素子12に対する熱輸送媒体の流れ方向を反転するように切換える。
磁場変調装置14は、MCE素子12に外部磁場を与えるとともに、その外部磁場の強さを増減させる。磁場変調装置14は、MCE素子12を強い磁界内に置く励磁状態と、MCE素子12を弱い磁界内またはゼロ磁界内に置く消磁状態とを周期的に切換える。磁場変調装置14は、MCE素子12が強い外部磁場の中に置かれる励磁期間、およびMCE素子12が励磁期間より弱い外部磁場の中に置かれる消磁期間を周期的に繰り返すように外部磁場を変調する。磁場変調装置14は、後述する熱輸送媒体の往復的な流れに同期して、MCE素子12への磁場の印加と除去とを繰り返す。磁場変調装置14は、外部磁場を生成するための磁力源13、例えば永久磁石、または電磁石を備える。
具体的には、磁場変調装置14は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。磁場変調装置14は、第1位置にあるMCE素子12を強い磁場の中に位置付ける。磁場変調装置14は、第2位置にあるMCE素子12を弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が強い磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第1位置に位置付ける。第1方向は、低温端から高温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通するときに、その作業室11の中のMCE素子12が強い磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第1位置に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第2位置に位置付ける。第2方向は、高温端から低温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通するときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第2位置に位置付ける。
熱輸送装置16は、MCE素子12が放熱または吸熱する熱を輸送するための熱輸送媒体と、この熱輸送媒体を流すための流体機器とを備える。熱輸送装置16は、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体をMCE素子12に沿って流す装置である。熱輸送装置16は、MCE素子12に沿って熱輸送媒体を往復的に流す。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による外部磁場の変化に同期して、熱輸送媒体の往復的な流れを発生させる。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による磁場の増減に同期して熱輸送媒体の流れ方向を切換える。
MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体は一次媒体と呼ばれる。一次媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。熱輸送装置16は、熱輸送媒体を流すためのポンプ17を備える。ポンプ17は、一方向に熱輸送媒体を流す一方向ポンプである。ポンプ17は、熱輸送媒体を吸入する吸入口と、熱輸送媒体を吐出する吐出口とを有する。ポンプ17は、熱輸送媒体の環状の流れ経路の上に配置されている。ポンプ17は、環状の流れ経路の中に熱輸送媒体の一方向の流れを生じさせる。ポンプ17は、回転軸2aによって駆動される。ポンプ17は、例えば容積型ポンプである。
熱輸送装置16は、流路切換機構18を備える。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12に関する熱輸送媒体の流れ方向を反転させるように、作業室11に対して熱輸送媒体の流路を切換える。言い換えると、流路切換機構18は、一方向型のポンプ17によって生成される熱輸送媒体の一方向の流れの中における作業室11の配置を流れ方向に関して反転させる。流路切換機構18は、ポンプ17を含む環状の流路の中における往路と復路とにひとつの作業室11を交互に位置付ける。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12と、ポンプ17を含む環状の流路との接続関係を少なくとも2つの状態に切換える。第1の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通した状態である。第2の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通した状態である。
具体的には、流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。流路切換機構18は、第1位置にあるMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、第2位置にあるMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流すように、ポンプ17を含む熱輸送媒体の流れ経路と、MCE素子12、すなわち作業室11との接続状態を切換える。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吸入口とを連通し、他端とポンプ17の吐出口とを連通する。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吐出口とを連通し、他端とポンプ17の吸入口とを連通する。
MHP装置2は、熱交換器3から熱輸送媒体を受け入れる高温側入口16aを有する。高温側入口16aはポンプ17の吸入口に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器3へ向けて熱輸送媒体を供給する高温側出口16bを有する。高温側出口16bは、第1位置にある作業室11の一端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4から熱輸送媒体を受け入れる低温側入口16cを有する。低温側入口16cは、第1位置にある作業室11の他端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4へ向けて熱輸送媒体を供給する低温側出口16dを有する。低温側出口16dは、第2位置にある作業室11の他端に連通可能である。第2位置にある作業室11の一端はポンプ17の吐出口と連通可能である。
ロータ7は、MCE素子12を保持するための素子ベッドとも呼ばれる。この実施形態では、MCE素子12を収容する作業室11を形成する素子ベッドが回転軸2aと作動的に連結されている。流路切換機構18と磁場変調装置14との両方に関連するMCE素子12を含む素子ベッドが回転軸2aによって移動する。よって効率的な駆動が可能である。
ポンプ17、流路切換機構18、および磁場変調装置14は、共通のハウジング6の中に収容されている。この構成によると、ポンプ17を流路切換機構18の近傍に設置することができる。このため、長い配管を要することなくポンプ17と流路切換機構18とが接続される。この結果、ポンプ17を含む流れ経路の分岐があっても、熱輸送媒体の流れの差を抑制することができる。この構成では、ホースなどの配管を用いることなくハウジング6内の流路を利用できる。よって、分岐した流れ経路の間において、配管に起因する熱輸送媒体の流れの差が抑制される。
車両用空調装置1は、車両に搭載され、車両の乗員室の温度を調節する。2つの熱交換器3、4は、車両用空調装置1の一部を提供する。熱交換器3は、熱交換器4より高温になる高温側熱交換器3である。熱交換器4は、熱交換器3より低温になる低温側熱交換器4である。車両用空調装置1は、高温側熱交換器3、および/または低温側熱交換器4を室内空調のために利用するための空調ダクトおよび送風機などの空気系機器を備える。
車両用空調装置1は、冷房装置または暖房装置として利用される。車両用空調装置1は、室内に供給される空気を冷却する冷却器と、冷却器によって冷却された空気を加熱する加熱器とを備えることができる。MHP装置2は、車両用空調装置1における冷熱供給源、または温熱供給源として利用される。すなわち、高温側熱交換器3は上記加熱器として用いることができる。また、低温側熱交換器4は上記冷却器として用いることができる。
MHP装置2が温熱供給源として利用される場合、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室内に供給され、暖房のために利用される。このとき、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器3は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器4は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2が冷熱供給源として利用される場合、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室内に供給され、冷房のために利用される。このとき、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器4は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器3は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2は、除湿装置として利用されることもある。この場合、低温側熱交換器4を通過した空気は、その後に、高温側熱交換器3を通過し、室内に供給される。MHP装置2は、冬期においても、夏期においても、温熱供給源として利用される。
図2は、MHP装置2の斜視図である。MHP装置2の図中左側はフロント側と呼ばれ、図中右側はリア側と呼ばれる。MHP装置2は、円柱状の外径をもつ。ハウジング6を提供するケース21は、円筒状の胴部22を有する。胴部22のフロント側の端部には、ポンプボディ23、ポンプカバー24、およびフロントエンドカバー25が設けられている。これらの部材23、24、25は、ケース21のフロントエンドを提供する。胴部22のリア側の端部には、リアボディ26、およびリアエンドカバー27が設けられている。これらの部材26、27は、ケース21のリアエンドを提供する。MHP装置2のフロント側には、回転軸2aが露出している。この回転軸2aには、動力源5としての電動機が連結されている。
図3は、MHP装置2の左側面図である。フロントエンドカバー25の中央部に回転軸2aが露出している。図4は、MHP装置2の右側面図である。リアエンドカバー27の中央部に低温側入口16cが開口している。
図5は、MHP装置2の断面図である。図5は、図3のV−V線における縦断面図である。図6は、MHP装置2の断面図である。図6は、図5のVI−VI線における横断面図である。胴部22の径方向内側には、ロータ7が配置されている。ロータ7は円筒状の部材である。ロータ7は、ケース21内において回転可能に支持されている。ロータ7の径方向内側には、ステータ8が配置されている。ステータ8は、ケース21内に固定されている。ステータ8は、ポンプボディ23とリアボディ26との間に配置され、それらに固定されている。
ロータ7は、その円筒状の壁内に複数の作業室11を有する。ロータ7は、4つの作業室11を有する。すべての作業室11は、ロータ7の軸方向の両方の端面において開口している。作業室11は両端が開口した通路によって提供されている。
ロータ7は、内外二重の円筒の間に、それらの両端に開口する作業室11を区画形成する筒状の部材である。ロータ7は、MCE素子12を収容する作業室11を形成するとともに、回転軸2aによって回転させられることによってMCE素子12を第1位置と第2位置とに移動させる。
作業室11の中には、MCE素子12が収容され、固定されている。ひとつの作業室11の中には、複数のMCE素子12が配置されている。ひとつのMCE素子12は、作業室11の一端と他端との間にわたって延在している。ひとつのMCE素子12は、複数の素子片を有する。複数の素子片は、ロータ7の軸方向、すなわち作業室11内における熱輸送媒体の流れ方向に沿って配列されている。複数の素子片のそれぞれは、高い磁気熱量効果を発揮する高効率温度帯が異なる。高効率温度帯は、素子片の材料によって調節することができる。MHP装置2は、低温端と高温端との間に温度分布を発生させる。複数の素子片のひとつは、それが配置された位置に想定される温度帯において高い磁気熱量効果を発揮するように、その材料が選定されている。この構成は、低温端と高温端との間の全体において高い磁気熱量効果を得ることを可能とする。
ステータ8は、磁場変調装置14のためのインナヨーク31を提供する。胴部22は、アウタヨーク32を提供する。胴部22の径方向内側には、磁力源13としての永久磁石33、35が配置されている。ステータ8の径方向外側には、磁力源13としての永久磁石34、36が配置されている。永久磁石33と永久磁石34とは、径方向の内側と外側とに配置されることによって、それらの間に位置付けられたMCE素子12に強い磁場を供給する。永久磁石35と永久磁石36とは、径方向の内側と外側とに配置されることによって、それらの間に位置付けられたMCE素子12に強い磁場を供給する。
ポンプボディ23とポンプカバー24との間には、ポンプ17が配置されている。このポンプ17は、ギヤポンプである。ポンプ17は、熱輸送装置16の一部品でもある。回転軸2aは、ポンプ17と作動的に連結されている。回転軸2aとポンプ17とは、キーによって直接的に連結されている。
回転軸2aとロータ7との間には、変速機構9が配置されている。変速機構9は、遊星歯車機構によって提供されている。変速機構9は、ポンプボディ23とステータ8との間に配置されている。ポンプボディ23には、高温側入口16aと、高温側出口16bとが設けられている。変速機構9は、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなるように回転軸2aから伝達される回転数を調節する。この構成によると、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなる。これにより、高回転型のポンプ17を利用することができる。ポンプ17が高い回転数で回転することにより、ポンプ17の流量の増加、および/または小型のポンプ17の利用が可能となる。
ロータ7とリアボディ26との間には、ロータ7とケース21との間に形成される隙間を適切に維持するための可動シール機構が設けられている。この可動シール機構は、ロータ7の両端における熱輸送媒体の漏洩を抑制するシール機構とも呼ぶことができる。可動シール機構は、ロータ7の両端における摩擦の抑制と、熱輸送媒体の漏洩の抑制とのトレードオフを適切に調節する。可動シール機構は、ロータ7を軸方向に沿って一方向へ押し付ける付勢機構でもある。可動シール機構は、流路切換機構18の一部でもある。
流路切換機構18は、回転する回転部分と、停止している停止部分との間にわたって延びる横断流路を形成している。流路切換機構18は、回転部分と停止部分とを押し付けあうことにより横断流路のためのシールを提供するシール機構を備える。シール機構は、可動シール機構によって提供されている。
ロータ7は、回転部分として設けられている。ロータ7は、MCE素子12を収容するとともに、ロータ7の端面に開口した作業室11を有する。シール機構は、ロータ7の端面に向けて押し付けられるように移動可能に支持されたピストン41を備える。ピストン41は、ロータ7が回転した際にロータ7に対して相対的回転移動する相対的移動体に相当する。ピストン41に設けられた連通室41a、41b、41c、41dは、それぞれ、ロータ7の端面に対向するように位置付けられ、開口を通して作業室11と連通することによって横断流路を形成する。
可動シール機構は、ロータ7の他端側の端面に対向するように配置されたピストン41を有する。ピストン41は、ロータ7に対応した環状である。ピストン41は、軸方向に沿って移動可能にリアボディ26に支持されている。ピストン41は、回転軸2aの周りにおいて回転不能にリアボディ26に支持されている。ピストン41は、リアボディ26に設けられた環状の溝26a内に収容されている。ピストン41は、リアボディ26からロータ7に向けて軸方向に突出可能に支持されている。ピストン41とリアボディ26との間には、複数のシール部材42が設けられている。よって、ピストン41とリアボディ26との間には、ピストン41をロータ7に向けて押し付ける付勢力を発生するための背圧室が区画形成されている。この実施形態では、ピストン41をロータ7の端面に向けて押し付けるように熱輸送媒体の圧力差をピストン41に作用させる差圧機構が提供される。差圧機構は、ピストン41と、溝26aと、シール部材42とによって提供される。
ピストン41をロータ7に向かって押し付ける付勢力の発生手段は、差圧機構に限定されるものではない。例えば、付勢力はスプリング等の弾性部材により与えられるものであってもよい。また、付勢力の発生手段は、例えば、差圧機構と弾性部材とを組み合わせたものでもよい。この付勢力の発生手段が発生する付勢力により、ピストン41は、ロータ7の軸線方向の端面に押し付けられるとともに、ポンプボディ23もロータ7の軸線方向の端面に押し付けられる。
ピストン41は、ロータ7に対向する面において開口する4つの連通室41a、41b、41c、41dを有する。4つの連通室41a、41b、41c、41dは、周方向に関して互いに仕切られている。4つの連通室41a、41b、41c、41dは、それらと対向する作業室11と連通する。ピストン41の一端面において連通室41a、41b、41c、41dが区画形成する開口は、流路切換機構18を提供する。
連通室41a、41bは、MHP装置2における第1位置に対応して設けられている。連通室41a、41bは、ピストン41の頂面に開設された連通開口41e、41fと、リアボディ26とリアエンドカバー27との間に形成された通路26bとを経由して、低温側入口16cに連通している。よって、連通室41a、41bは、低温側入口16cから導入される熱輸送媒体を第1位置にある作業室11に供給する。
連通室41c、41dは、MHP装置2における第2位置に対応して設けられている。連通室41c、41dは、ピストン41の側面に開設された連通開口41g、41hと、ピストン41とリアボディ26との間に形成された通路とを経由して、低温側出口16dに連通している。ピストン41の外周面には、環状の溝41kが設けられている。この溝41kによって形成される環状の通路は、2つの連通室41c、41dを連通することによって、熱輸送媒体を集め、低温側出口16dに案内する。よって、連通室41c、41dは、第2位置にある作業室11から熱輸送媒体を受け入れ、低温側出口16dへ供給する。
ケース21の中には、空間が形成される。この構成では、ロータ7の一端面とポンプボディ23との間の隙間、ロータ7の他端面とピストン41との間の隙間、および他の隙間を通して、ケース21内の空間には熱輸送媒体が漏れ出してくる。この実施形態では、ケース21内の空間は、ポンプ17の吸入側に連通されている。よって、漏れ出した熱輸送媒体がポンプ17に回収される。同時に、ケース21内の空間が低圧に維持されるから、ピストン41は熱輸送媒体の圧力差によってロータ7に向けて押し付けられる。これにより、ロータ7の一端面とポンプボディ23との間の隙間、およびロータ7の他端面とピストン41との間の隙間が望ましい小さい隙間に維持される。この結果、ロータ7の両端における摩擦の抑制と、熱輸送媒体の漏洩の抑制とが図られる。
図5および図6に図示される構成では、ピストン41とリアボディ26との間にはポンプ17の吐出口側の圧力が作用する。特に、ピストン41を軸方向に沿ってロータ7に向けて推進させる端面には、低温側入口16cから導入される熱輸送媒体の圧力が作用する。熱輸送媒体の圧力は、ピストン41の端面に対して全周にわたって作用する。この結果、ピストン41は、熱輸送媒体の圧力差によってロータ7に向けて押される。これにより、ロータ7とピストン41とが適切な力で相互に押し付けられる。また、ロータ7とポンプボディ23とが適切な力で相互に押し付けられる。これにより、ロータ7の両端における摩擦の過剰な増加を抑制しながら、ロータ7の両端における熱輸送媒体の漏れが抑制される。
図7は、ポンプカバー24の断面を示す。図7は、図5のVII−VII線における断面図である。図8は、ポンプボディ23の断面を示す。図8は、図5のVIII−VIII線における断面図である。ポンプボディ23とポンプカバー24とは、ギヤポンプのためのハウジングを提供する。この実施形態では、ポンプ17は、トロコイド型のギヤポンプによって提供される。図中には、複数のMCE素子12のうちの、ひとつのMCE素子12だけが代表的に図示されている。
ポンプカバー24には、高温側入口16aに連通する連通溝24aが形成されている。連通溝24aは、高温側入口16aとギヤポンプの吸入ポート51とを連通している。吸入ポート51は、ポンプカバー24を軸方向に貫通して形成されている。吸入ポート51は、ポンプ17の吸入口でもある。ポンプカバー24には、第1位置に対応して形成された連通通路24b、24cが形成されている。連通通路24b、24cは、ポンプカバー24を軸方向に貫通して形成されている。さらに、ポンプカバー24には、連通通路24b、24cと、高温側出口16bとを連通する連通溝24d、24eが形成されている。ポンプカバー24に形成された連通溝24a、24d、24eおよび連通通路24b、24cは、フロントエンドカバー25によって覆われている。
ポンプボディ23は、ロータ7に対向する面において開口する4つの連通室23a、23b、23c、23dを有する。4つの連通室23a、23b、23c、23dは、周方向に関して互いに仕切られている。4つの連通室23a、23b、23c、23dは、それらと対向する作業室11と連通する。ポンプボディ23の他端面において連通室23a、23b、23c、23dが区画形成する開口は、流路切換機構18を提供する。連通室23a、23b、23c、23dは、周方向に沿って配列されている。連通室23a、23b、23c、23dのそれぞれがもつ周方向の長さは、その上を通過する作業室に熱輸送媒体を流す期間を規定する。図示されるように、4つの連通室23a、23b、23c、23dのそれぞれは、互いに等しい角度範囲にわたって延びている。
4つの連通室23a、23b、23c、23dは、4つの連通室41a、41b、41c、41dと軸方向に関して対向している。4つの連通室23a、23b、23c、23dそれぞれの開口範囲は、4つの連通室41a、41b、41c、41dそれぞれの開口範囲と同じである。これら連通室23a−23d、41a−41dによって流路切換機構18が提供される。
連通室23a、23bは、MHP装置2における第1位置に対応して設けられている。連通室23a、23bは、ポンプカバー24に形成された連通通路24b、24cに連通している。よって、これら連通室23a、23bは、高温側出口16bに連通している。よって、連通室23a、23bは、第1位置にある作業室11から熱輸送媒体を受け入れ、高温側出口16bへ供給する。これらの連通室23a−23dおよび41a−41dを提供するピストン41とポンプボディ23とは、熱輸送媒体を分配する分配部材を提供している。
連通室23aと連通室23bとは対称に形成されている。さらに、連通通路24bと連通通路24cとは対称に形成されている。よって、連通室23aから高温側出口16bへ向かう通路と、連通室23bから高温側出口16bへ向かう通路とは、熱輸送媒体の流れに関して対称に形成されている。この結果、連通室23a、23bによって規定される2つの作業室11における熱輸送媒体の流れの差が抑制される。MHP装置2が単一の高温側出口16bをもつことにより、高温系統の流路がMHP装置2内の作業室11における熱輸送媒体の流れに与える影響が抑制される。
連通室23c、23dは、MHP装置2における第2位置に対応して設けられている。連通室23c、23dは、ポンプボディ23に形成された連通溝23e、23fを経由して、ポンプ17の吐出ポート52に連通している。熱輸送媒体は、ポンプ17から吐出ポート52へ吐出される。さらに、熱輸送媒体は、吐出ポート52から2つの連通溝23e、23fに向けて分岐し、連通室23c、23dに供給される。よって、連通室23c、23dは、ポンプ17から吐出された熱輸送媒体を第2位置にある作業室11に供給する。連通室23c、23dは、ポンプ17から吐出された高圧の熱輸送媒体を溜めるギャラリを提供する。
連通室23cと連通室23dとは対称に形成されている。さらに、連通溝23eと連通溝23fは対称に形成されている。よって、吐出ポート52から連通室23cへ向かう通路と、吐出ポート52から連通室23dへ向かう通路とは、熱輸送媒体の流れに関して対称である。この結果、連通室23c、23dによって規定される2つの作業室11における熱輸送媒体の流れの差が抑制される。MHP装置2が単一の高温側入口16aをもつことにより、高温系統の流路がMHP装置2内の作業室11における熱輸送媒体の流れに与える影響が抑制される。
ポンプボディ23内には、アウタロータ53とインナロータ54とが配置されている。アウタロータ53は回転軸2aの回転中心に対してやや偏心して回転するように配置されている。この結果、アウタロータ53とインナロータ54との間には、複数の容積室55が形成される。アウタロータ53とインナロータ54とは、回転軸2aによって時計回りに回される。この結果、ポンプ17は吸入ポート51から熱輸送媒体を吸入し、吐出ポート52から熱輸送媒体を吐出する。
図9は、変速機構9の断面を示す。図9は、図5のIX−IX線における断面図である。変速機構9は、回転軸2aの回転を減速し、ロータ7に伝達する減速機構である。変速機構9は、ロータ7をAMRサイクルを提供するために適した回転数で駆動しながら、ポンプ17を高速回転させることを可能とする。この構成は、ポンプ17によって必要な流量を得るために貢献する。変速機構9は、回転軸2aに設けられたサンギヤ61と、ポンプボディ23とステータ8との間に支持されたプラネタリギヤ62と、ロータ7に設けられたリングギヤ63とを有する。
図中には、ロータ7の軸を直交する断面が図示されている。ロータ7は、作業室11を形成するためのロータハウジング71を有する。ロータハウジング71は、円筒状の部材である。ロータハウジング71は、その円筒状の壁の中に、周方向に沿って複数の作業室71a、71b、71c、71dを形成している。図示の例では、4つの作業室71a、71b、71c、71dが形成されている。ロータハウジング71は、第1位置に対応する2つの作業室71a、71bと、第2位置に対応する2つの作業室71c、71dを有する。これら作業室71a、71b、71c、71dは、第1位置および第2位置に対応している必要はない。これら作業室71a、71b、71c、71dの中には、複数のMCE素子12が配置されている。例えば、作業室71a、71b、71c、71dの中には、それぞれ、複数のMCE素子12が相互に離間して周方向に並設されている。図中には、1つのMCE素子12が代表的に図示されている。図中には、作業室71a、71b、71c、71dの向こう側にあるピストン41の連通室と、ピストン41の連通開口41e、41fとが図示されている。
図10は、磁場変調装置14の断面を示す。図10は、図5のX−X線における断面図である。永久磁石33、34、35、36は、第1位置に対応する約90度の角度範囲に設けられている。永久磁石33、34、35、36は、径方向に関して作業室71a、71b、71c、71dの内側と外側との両方に位置するように配置されている。MHP装置2は、その直径上に位置付けられた複数の第1位置と、第1位置と交互に配置された複数の第2位置とを有する。2つの第1位置は図中の上下に位置し、2つの第2位置は図中の左右に位置している。インナヨーク31およびアウタヨーク32は、第1位置に強い磁場を供給するように形成されている。
図11は、可動シール機構の断面を示す。図11は、図5のXI−XI線における断面図である。ピストン41に設けられた連通室41a、41b、41c、41dは、第1位置および第2位置に対応する角度範囲にわたって広がっている。図示の例では、連通室41a、41b、41c、41dのそれぞれの角度範囲は、永久磁石33、34、35、36の角度範囲より小さい。
連通室41aと連通室41bとは対称に形成されている。さらに、連通通路26bは図5に図示されるように上下方向に関して対称に形成されている。よって、低温側入口16cから連通室41aへ向かう通路と、低温側入口16cから連通室41bへ向かう通路とは、熱輸送媒体の流れに関して対称に形成されている。この結果、連通室41a、41bによって規定される2つの作業室11における熱輸送媒体の流れの差が抑制される。MHP装置2が単一の低温側入口16cをもつことにより、低温系統の流路がMHP装置2内の作業室11における熱輸送媒体の流れに与える影響が抑制される。
連通室41cと連通室41dとは対称に形成されている。さらに、連通室41cと連通室41dとは、対称の位置に設けられた連通開口41g、41hを経由して、ピストン41を取り囲む環状の通路に対称の位置において連通している。また、低温側出口16dは、2つの連通開口41g、41hの間に位置付けられている。よって、連通室41cから低温側出口16dへ向かう通路と、連通室41dから低温側出口16dへ向かう通路とは、熱輸送媒体の流れに関してほぼ対称に形成されている。この結果、連通室41c、41dによって規定される2つの作業室11における熱輸送媒体の流れの差が抑制される。MHP装置2が単一の低温側出口16dをもつことにより、低温系統の流路がMHP装置2内の作業室11における熱輸送媒体の流れに与える影響が抑制される。
この実施形態では、回転部分と停止部分との間の摩擦部分には低摩擦係数の材料が採用されている。具体的には、ロータ7とケース21との間の摩擦部分(摺動部分)に低摩擦係数の材料が設けられている。ロータ7は、その両端面に低摩擦係数の材料を有する。ピストン41は、その全体を低摩擦係数の材料によって形成することができる。ポンプボディ23は、ロータ7の端面と対向する部位に低摩擦係数の材料を有することができる。低摩擦係数の材料は、流路切換機構18を提供する部材に設けられている。低摩擦係数の材料は、摺動部分における摩擦を低減する摩擦低減部を提供する。よって、流路切換機構18は、摩擦低減部を有している。低摩擦係数の材料は、摩擦係数が低い樹脂材料、例えばポリテトラフルオロエチレン系の樹脂によって提供することができる。また、低摩擦係数の材料は、低摩擦膜、例えば硬質炭素膜(ダイヤモンドライクカーボン膜:DLC膜)によって提供することができる。低摩擦係数の材料は、摩擦に起因する発熱を抑制する発熱抑制部を提供する。よって、流路切換機構18は、発熱抑制部を有している。
ピストン41を含む可動シール機構は、ロータ7の両端のそれぞれにおいて流路切換機構18を提供する。この構成では、ロータ7とポンプボディ23との間、およびロータ7とピストン41との間に横断流路が形成される。可動シール機構は、ロータ7とポンプボディ23との間、およびロータ7とピストン41との間に隙間が形成されることを許容する。この隙間は、その隙間に浸入する熱輸送媒体によって摩擦を抑制する。しかも、ピストン41は、熱輸送媒体の圧力によってロータ7に押し付けられる。このため、ピストン41は、ピストン41を押し出すように作用する熱輸送媒体の圧力が高くなるほど、ロータ7に向けてより強く押し付けられる。この結果、ピストン41は、隙間からの熱輸送媒体の漏洩を抑制しながら、摩擦の過剰な増加を抑制する。この可動シール機構は、摺動部分における摩擦を低減する摩擦低減部を提供する。よって、流路切換機構18は、摩擦低減部を有している。可動シール機構は、摩擦に起因する発熱を抑制する発熱抑制部を提供する。よって、流路切換機構18は、発熱抑制部を有している。
ケース21は、ロータ7を収容する室を形成している。この室は、ポンプ17の吸入口に間接的に連通している。このため、ケース21は、ロータ7を収容するとともに、ポンプ17の吸入口に連通する低圧室を区画形成している。可動シール機構は、それが提供する隙間を通して熱輸送媒体がわずかに漏れ出すことを許容する。可動シール機構を通して漏れ出た熱輸送媒体は、低圧室に受け入れられ、ポンプ17に吸入される。低圧室は、熱輸送媒体を溜めるリザーバでもある。よって、この構成によると、流路切換機構18の摺動部分には隙間が設けられており、流路切換機構18の直近に配置されたリザーバが、上記隙間を通して漏れ出した熱輸送媒体を受ける。しかも、熱輸送媒体の圧力が高くなるほど、隙間が小さくなるように可動シール機構が機能するから、熱輸送媒体の漏れ量は、隙間を形成する部位における摩擦を抑制するために必要な適量に制御される。
このように可動シール機構は、摺動部分における回転部分(ロータ7)と回転部分に対する相対的移動体である停止部分(ポンプボディ23、ピストン41)とを互いに押し付ける押付力を調節する調節機構を提供している。可動シール機構は、作業室11内の熱輸送媒体の圧力が高くなるほど、押付力を強くする。別の観点では、可動シール機構は、作業室11内の熱輸送媒体の圧力が低いと小さい押付力を発生するから、摺動部分における押付力を抑制する抑制部とも呼ぶことができる。
この構成において、流路切換機構18は、第1位置において作業室11に熱輸送媒体が第1方向に流れるように流れ経路と作業室とを接続する。流路切換機構18は、第2位置において作業室11に熱輸送媒体が第1方向とは逆の第2方向に流れるように流れ経路と作業室とを接続する。流路切換機構18は、分配部材としてのポンプボディ23とピストン41とを有する。分配部材は、ロータ7の両端に対向して配置されている。分配部材は、第1位置において作業室11と連通するように配置された第1群の連通室23a、23b、41a、41bを有する。分配部材は、第2位置において作業室11と連通するように配置された第2群の連通室23c、23d、41c、41dを有する。
磁場変調装置14は、第1位置と第2位置においてMCE素子12に異なる強さの磁場を与える。磁場変調装置14は、第1位置または第2位置に配置された永久磁石を有する磁力源13を備える。
この構成によると、MCE素子12を収容する作業室11を形成するロータ7が回転軸2aによって回転させられる。これにより、MCE素子12は第1位置と第2位置とに移動される。言い換えると、ロータ7はMCE素子12を収容する素子ベッドである。この構成では、素子ベッドを回転させることによって、作業室11における熱輸送媒体の流れ方向が第1方向と第2方向とに切換えられる。連通室を有する分配部材によって作業室11における流れ方向が切換えられる。素子ベッドを回転させることによって、MCE素子12に与えられる磁場の強さが変化させられる。
本実施形態のMHP装置2は、装置内部において熱輸送媒体が熱輸送媒体流路をショートカットする熱輸送媒体のリークである内部リークを抑制するための内部リーク抑制機構19を備えている。内部リーク抑制機構19は、第1群の連通室23a、23b、41a、41bの作業室11側の端部開口と、第2群の連通室23c、23d、41c、41dの作業室11側の端部開口との相互の位置関係により提供される。
図12は、ピストン41を容器7側から見た平面図である。図示された円周状の面は、ピストン41の外面のうち、ロータ7の回転軸線方向の端面に対向する対向面である。ピストン41は、この対向面がロータ7の端面に押し付けられるように付勢される。ピストン41は、ロータ7と同軸上に配置される。以下の説明において、ロータ7の回転軸線方向を、単に回転軸線方向、軸線方向または軸方向と呼ぶ場合がある。また、ロータ7が回転する方向を、単に回転方向または周方向と呼ぶ場合がある。また、ロータ7の径方向を単に径方向と呼ぶ場合がある。
図12に示すように、ピストン41は、第1位置において作業室11と連通するように配置された第1群の連通室41a、41bと、第2位置において作業室11と連通するように配置された第2群の連通室41c、41dとを有する。連通室41a、41b、41c、41dは、いずれも、ロータ7側の作業室11の端部開口と接続する端部開口を有している。連通室41aの作業室11側の端部開口41a1と連通室41bの作業室11側の端部開口41b1とは、同一形状をなしている。端部開口41a1と端部開口41b1とは、回転軸線を中心に対称の位置にある。また、連通室41cの作業室11側の端部開口41c1と連通室41dの作業室11側の端部開口41d1とは、同一形状をなしている。端部開口41c1と端部開口41d1とは、回転軸線を中心に対称の位置にある。端部開口41a1、41b1、41c1、41d1は、いずれも周方向に延びる円弧状の開口を形成している。端部開口41a1、41b1、41c1、41d1は、いずれもほぼ同一幅で周方向に延びている。端部開口41a1、41b1、41c1、41d1は、それぞれの開口全域が作業室11に臨むことが可能な位置に形成されている。
本例では、端部開口41a1、41b1、41c1、41d1は、互いに、ピストン41の径方向における幅が同一となっており、ピストン41の周方向における形成角度範囲が同一となっている。したがって、端部開口41a1、41b1よりもロータ7の回転軸線に近い内径側に位置付けられた端部開口41c1、41d1の方が、周方向の長さが若干短くなっている。
径方向における端部開口41a1、41b1の中心を通り径方向に延びる中心線CL1と、径方向における端部開口41c1、41d1の中心を通り径方向に延びる中心線CL2とは、径方向にずれている。
図12において符号AR1を付した領域は、ロータ7とピストン41とが相対的回転移動する際の端部開口41a1、41b1の相対的移動軌跡である。また、図12において符号AR2を付した領域は、ロータ7とピストン41とが相対的回転移動する際の端部開口41c1、41d1の相対的移動軌跡である。相対的移動軌跡は、相対的に移動する相手側部材を基準にした移動軌跡である。ピストン41の端部開口の相対的移動軌跡は、ピストン41に対して相対的に移動するロータ7を基準とした端部開口の移動軌跡である。
相対的移動軌跡AR1と相対的移動軌跡AR2とは、重複していない。端部開口41a1、41b1は、全部が、相対的移動軌跡AR2と重なっていない。端部開口41c1、41d1は、全部が、相対的移動軌跡AR1と重なっていない。中心線CL1は、相対的移動軌跡AR1の中心線でもある。また、中心線CL2は、相対的移動軌跡AR2の中心線でもある。
上述したように、流路切換機構18の相対的移動体であるピストン41には、作業室11に連通可能な連通室41a、41b、41c、41dが形成されている。連通室41a、41bは、本実施形態における第1連通室に相当する。連通室41aを含んでピストン41とロータ7との間に渡って延びる横断流路、および、連通室41bを含んでピストン41とロータ7との間に渡って延びる横断流路が、本実施形態における第1横断流路に相当する。端部開口41a1、41b1は、第1横断流路において第1連通室の作業室11側の端部開口をなす第1開口に相当する。相対的移動軌跡AR1は、第1移動軌跡に相当する。
また、連通室41c、41dは、本実施形態における第2連通室に相当する。連通室41cを含んでピストン41とロータ7との間に渡って延びる横断流路、および、連通室41dを含んでピストン41とロータ7との間に渡って延びる横断流路が、本実施形態における第2横断流路に相当する。端部開口41c1、41d1は、第2横断流路において第2連通室の作業室11側の端部開口をなす第2開口に相当する。相対的移動軌跡AR2は、第2移動軌跡に相当する。
第1連通室を含む第1横断流路と第2連通室を含む第2横断流路とには、作業室11に対する逆方向の熱輸送媒体の流れが形成される。流路切換機構18は、ピストン41とロータ7との相対的回転移動により第1連通室が連通する作業室11と第2連通室に連通する作業室11とを変更する。これにより、流路切換機構18は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流す。
図13は、ポンプボディ23を容器7側から見た平面図である。図示された円周状の面は、ポンプボディ23の外面のうち、ロータ7の回転軸線方向の端面に対向する対向面である。ポンプボディ23は、この対向面がロータ7の端面に押し付けられるように付勢される。ポンプボディ23は、ロータ7と同軸上に配置される。
図13に示すように、ポンプボディ23は、第1位置において作業室11と連通するように配置された第1群の連通室23a、23bと、第2位置において作業室11と連通するように配置された第2群の連通室23c、23dとを有する。連通室23a、23b、23c、23dは、いずれも、ロータ7側の作業室11の端部開口と接続する端部開口を有している。連通室23aの作業室11側の端部開口23a1と連通室23bの作業室11側の端部開口23b1とは、同一形状をなしている。端部開口23a1と端部開口23b1とは、回転軸線を中心に対称の位置にある。また、連通室23cの作業室11側の端部開口23c1と連通室23dの作業室11側の端部開口23d1とは、同一形状をなしている。端部開口23c1と端部開口23d1とは、回転軸線を中心に対称の位置にある。端部開口23a1、23b1、23c1、23d1は、いずれも周方向に延びる円弧状の開口を形成している。端部開口23a1、23b1、23c1、23d1は、いずれもほぼ同一幅で周方向に延びている。端部開口23a1、23b1、23c1、23d1は、それぞれの開口全域が作業室11に臨むことが可能な位置に形成されている。
本例では、端部開口23a1、23b1、23c1、23d1は、互いに、ポンプボディ23の径方向における幅が同一となっており、ポンプボディ23の周方向における形成角度範囲が同一となっている。したがって、端部開口23a1、23b1よりもロータ7の回転軸線に近い内径側に位置付けられた端部開口23c1、23d1の方が、周方向の長さが若干短くなっている。
径方向における端部開口23a1、23b1の中心を通り径方向に延びる中心線CL3と、径方向における端部開口23c1、23d1の中心を通り径方向に延びる中心線CL4とは、径方向にずれている。
図13において符号AR3を付した領域は、ロータ7とポンプボディ23とが相対的回転移動する際の端部開口23a1、23b1の相対的移動軌跡である。また、図13において符号AR4を付した領域は、ロータ7とポンプボディ23とが相対的回転移動する際の端部開口23c1、23d1の相対的移動軌跡である。相対的移動軌跡AR3と相対的移動軌跡AR4とは、重複していない。端部開口23a1、23b1は、全部が、相対的移動軌跡AR4と重なっていない。端部開口23c1、23d1は、全部が、相対的移動軌跡AR3と重なっていない。中心線CL3は、相対的移動軌跡AR3の中心線でもある。また、中心線CL4は、相対的移動軌跡AR4の中心線でもある。
上述したように、流路切換機構18の相対的移動体であるポンプボディ23には、作業室11に連通可能な連通室23a、23b、23c、23dが形成されている。連通室23a、23bは、本実施形態における第1連通室に相当する。連通室23aを含んでポンプボディ23とロータ7との間に渡って延びる横断流路、および、連通室23bを含んでポンプボディ23とロータ7との間に渡って延びる横断流路が、本実施形態における第1横断流路に相当する。端部開口23a1、23b1は、第1横断流路において第1連通室の作業室11側の端部開口をなす第1開口に相当する。相対的移動軌跡AR3は、第1移動軌跡に相当する。
また、連通室23c、23dは、本実施形態における第2連通室に相当する。連通室23cを含んでポンプボディ23とロータ7との間に渡って延びる横断流路、および、連通室23dを含んでポンプボディ23とロータ7との間に渡って延びる横断流路が、本実施形態における第2横断流路に相当する。端部開口23c1、23d1は、第2横断流路において第2連通室の作業室11側の端部開口をなす第2開口に相当する。相対的移動軌跡AR4は、第2移動軌跡に相当する。
第1連通室を含む第1横断流路と第2連通室を含む第2横断流路とには、作業室11に対する逆方向の熱輸送媒体の流れが形成される。流路切換機構18は、ポンプボディ23とロータ7との相対的回転移動により第1連通室が連通する作業室11と第2連通室に連通する作業室11とを変更する。これにより、流路切換機構18は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流す。
図1に戻り、MHP装置2の作動を説明する。MHP装置2を作動させるために動力源5によって回転軸2aが回される。回転軸2aはポンプ17を作動させる。同時に、回転軸2aは変速機構9を介してロータ7を回転させる。永久磁石からなる磁力源13を含む磁場変調装置14は、第1位置にあるMCE素子12に強い磁場を与える。磁場変調装置14は、第2位置にあるMCE素子12に弱い磁場またはゼロ磁場を与える。
ポンプ17は熱輸送媒体を吸入するとともに吐出する。このとき、ポンプ17は回転軸2aに直結されており、回転軸2aと同じ回転数で回される。ポンプ17は、ロータ7より高い回転数で回される。これにより効率的なポンプ17の運転が可能となる。ポンプ17を含む流路に熱輸送媒体が循環的に流される。熱輸送媒体は、ポンプ17から、第2位置にあるひとつの作業室11、熱交換器4、第1位置にあるひとつの作業室11、熱交換器3を順に経由し、ポンプ17へ戻る。
ロータ7は、作業室11内に収容されたMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に運び込み、位置付ける。ロータ7の回転数は、ポンプ17の回転数より低い。ロータ7の回転数は、MCE素子12をAMRサイクルとして機能させるための回転数に設定されている。すなわち、磁場の変化と熱輸送媒体による熱の輸送によって大きい温度差が得られるようにロータ7の回転数は設定されている。例えば、ロータ7の回転数は、MCE素子12の特性と、磁場の強さと、熱輸送媒体による熱輸送性能を考慮して設定される。
ロータ7は、ひとつの観点では磁場変調装置14を提供する。ロータ7は、MCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に運び込むことによって、MCE素子12に加えられる磁場の強さを変化させる。ロータ7は、別の観点では、流路切換機構18を提供する。ロータ7は、MCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に運び込むことによって、MCE素子12に沿って流れる熱輸送媒体の流れ方向を第1方向と第2方向とに切換える。
ひとつのMCE素子12が第1位置に運び込まれると、MCE素子12に与えられる磁場は強くなり、MCE素子12は発熱する。このとき、熱輸送媒体はMCE素子12に沿って第1方向へ流れる。第1方向は低温端から高温端へ向かう方向である。このため、高温端の温度が上昇する。
ひとつのMCE素子12が第2位置に運び込まれると、MCE素子12に与えられる磁場は弱くなり、MCE素子12は吸熱する。このとき、熱輸送媒体はMCE素子12に沿って第2方向へ流れる。第2方向は高温端から低温端へ向かう方向である。このため、低温端の温度が低下する。
MHP装置2の流路切換機構18のうちポンプボディ23側の部分では、熱輸送媒体の流れ経路において、連通室23a、23bを含む第1横断流路よりも連通室23c、23dを含む第2横断流路の方がポンプ17の吐出口に近い。第2横断流路は、ポンプ17の吐出口よりも下流側、かつ、第1横断流路よりも上流側にある。したがって、連通室23a、23bを含む第1横断流路よりも連通室23c、23dを含む第2横断流路に高圧の熱輸送媒体が流通される。また、流路切換機構18のうちピストン41側の部分では、熱輸送媒体の流れ経路において、連通室41a、41bを含む第1横断流路よりも連通室41c、41dを含む第2横断流路の方がポンプ17の吐出口に近い。こちらの場合も、第2横断流路は、ポンプ17の吐出口よりも下流側、かつ、第1横断流路よりも上流側にある。したがって、連通室41a、41bを含む第1横断流路よりも連通室41c、41dを含む第2横断流路に高圧の熱輸送媒体が流通される。
本実施形態のMHP装置2によれば、以下に述べる効果を得ることができる。
本実施形態によると、流路切換機構18は、作業室11に連通可能な第1連通室および第2連通室が形成されるとともに容器7に対して相対的回転移動する相対的移動体であるポンプボディ23およびピストン41を有している。流路切換機構18は、第1連通室を含んで相対的移動体と容器7との間に渡って延びる第1横断流路と、第2連通室を含んで相対的移動体と容器7との間に渡って延びる第2横断流路とを形成している。
流路切換機構18は、容器7と相対的移動体との相対的回転移動により、複数の作業室11のうち第1連通室が連通する作業室11および第2連通室が連通する作業室11をそれぞれ変更して、熱輸送媒体の流れ経路と作業室11との接続状態を切換える。流路切換機構18は、第1横断流路と第2横断流路とに作業室11に対する逆方向の熱輸送媒体の流れを形成する。これにより、MHP装置2は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流す。MHP装置2は、第1横断流路と第2横断流路との間における熱輸送媒体のリークである内部リークを抑制する内部リーク抑制機構19を備えている。MHP装置2は流路切換機構18の構成の一部として内部リーク抑制機構19を備えている。
これによると、流路切換機構18の第1横断流路と第2横断流路との間における熱輸送媒体の漏洩である内部リークを、内部リーク抑制機構19により抑制することができる。したがって、内部リークを抑制することでMHP装置2の成績係数を向上させ、高い成績係数を実現することができる。
また、本実施形態では、流路切換機構18は、第1横断流路において第1連通室の作業室11側の端部開口をなす第1開口と、第2横断流路において第2連通室の作業室11側の端部開口をなす第2開口とを有している。そして、内部リーク抑制機構19は、第1開口と第2開口との相互の位置関係により、第1横断流路と第2横断流路との間における熱輸送媒体のリークを抑制する。これによると、相対的移動体の第1開口と第2開口との相互の位置関係により、容易に内部リークを抑制することができる。
また、本実施形態では、第1開口の少なくとも一部が相対的移動軌跡AR2、AR4に重複しないように、第1開口と第2開口とは、容器7と相対的移動体とが相対的回転移動する方向に直交する方向の一つである径方向に相互にずれて配置されている。これによると、第1開口の少なくとも一部は、第2開口の相対的移動軌跡である第2移動軌跡と重ならない。したがって、相対的回転移動に伴って連れ回されて第1開口から容器7と相対的移動体との間に進入する熱輸送媒体のうち、第1開口の第2移動軌跡と重ならない部分から進入する熱輸送媒体は、第2開口に到達し難い。これにより、内部リークを抑制することができる。
また、本実施形態では、第2開口の少なくとも一部が相対的移動軌跡AR1、AR3に重複しないように、第1開口と第2開口とは、容器7と相対的移動体とが相対的回転移動する方向に直交する方向の一つである径方向に相互にずれて配置されている。これによると、第2開口の少なくとも一部は、第1開口の相対的移動軌跡である第1移動軌跡と重ならない。したがって、相対的回転移動に伴って連れ回されて第2開口から容器7と相対的移動体との間に進入する熱輸送媒体のうち、第2開口の第1移動軌跡と重ならない部分から進入する熱輸送媒体は、第1開口に到達し難い。これにより、一層内部リークを抑制することができる。
また、本実施形態では、第1移動軌跡と第2移動軌跡とが重複しないように、第1開口と第2開口とは、容器7と相対的移動体とが相対的回転移動する方向に直交する方向の一つである径方向に相互にずれて配置されている。これによると、第1移動軌跡と第2移動軌跡とが重ならない。すなわち、第1開口の全部が第2移動軌跡と重ならず、かつ、第2開口の全部が第1移動軌跡と重ならない。したがって、相対的回転移動に伴って連れ回されて第1開口から容器と相対的移動体との間に進入する熱輸送媒体は、第2開口に到達し難い。また、相対的回転移動に伴って連れ回されて第2開口から容器と相対的移動体との間に進入する熱輸送媒体は、第1開口に到達し難い。これにより、一層確実に内部リークを抑制することができる。
ここで、本発明者らが本発明に至る際に見出した知見と、本実施形態の作用効果との関係について説明する。
本発明者らは、容器7と相対的移動体との間の隙間、すなわち、ロータ7の一端面とポンプボディ23との間の隙間、およびロータ7の他端面とピストン41との間の隙間の寸法を低減する構成について検討した。容器7と相対的移動体との間の隙間寸法は、熱輸送媒体の装置外部へのリークである外部リークに大きく影響する。装置内部を流れる熱輸送媒体は、ポンプ17に圧送されるため装置外部に対して比較的高圧である。したがって、隙間寸法が大きいと、装置内外の圧力勾配により外部リーク量が極めて大きくなり、MHP装置2の成績係数の低下を招く。ここで、成績係数とは、ポンプ17等の駆動のための入力エネルギーに対するMHP装置2からの熱出力エネルギーの比である。容器7と相対的移動体との間の隙間寸法を低減するにつれて、ポンプ17により圧送され装置内部を流れる熱輸送媒体の装置外部へのリーク量が低減され、成績係数も向上した。
ところが、隙間寸法を極めて小さくしていった際に、熱輸送媒体の外部リーク量が低減できた割には、MHP装置2の成績係数の向上が頭打ちになるという現象が発生した。本発明者らは、この現象を解明するために実験やシミュレーション等を鋭意実行し、成績係数の頭打ちの原因が、容器7と相対的移動体との間における熱輸送媒体の内部リークであることを見出した。ここで言う内部リークとは、装置内部において熱輸送媒体が熱輸送媒体流路をショートカットする熱輸送媒体のリークである。内部リークは、ショートカットする熱輸送媒体が熱出力に寄与し難く、外部リーク程ではないが成績係数に影響する。本発明者らは、内部リークを抑制することで、更なる成績係数の向上が可能であることを見出した。
本実施形態では、内部リーク抑制機構19により熱輸送媒体の内部リークを抑制することができる。したがって、内部リークを抑制することでMHP装置2の成績係数を向上させ、高い成績係数を実現することができる。
本発明者らは、更に内部リークのメカニズムに関しても解析を行なった。内部リークは、例えば、容器7と相対的移動体との間の隙間を介して、第1、第2横断流路間を熱輸送媒体が移動することにより発生する。本発明の内部リーク抑制機構を適用しない比較例の場合には、図14に実線で示すような内部リークが発生する。この比較例は、第1開口の相対的移動軌跡と第2開口との相対的移動軌跡とが全く一致する点以外は、本例のMHP装置2と同様のものである。比較例では、隙間寸法を0.005〜0.01mm程度まで小さくしても、内部リーク量が充分に抑制できない。
本発明者らは、内部リークが、隙間部における2つの流れモードによるものであることに着目した。壁面同士が相対的移動する隙間部においては、例えばポアズイユ流れのような圧力勾配による流れと、例えばクエット流れのような壁面のずれ運動に伴う連れ回り流れとが形成される。比較例における内部リーク量は、図14に破線で示す圧力勾配流れ分と、一点鎖線で示す連れ回り流れ分との和になる。
図14から明らかなように、隙間寸法を極めて小さくした場合には、圧力勾配に起因する内部リークに対して連れ回りに起因する内部リークが優位になる。したがって、隙間寸法を0.005〜0.01mm程度にまで小さくした場合には、隙間部における熱輸送媒体の連れ回りによる内部リークを抑制することが有効であることを見出した。
本実施形態では、内部リーク抑制機構19は、第1開口と第2開口との相互の位置関係により、連れ回り流れに起因する熱輸送媒体の移動を抑制して第1横断流路と第2横断流路との間における熱輸送媒体のリークを抑制する。これによると、相対的移動体の第1開口と第2開口との相互の位置関係により、容易に内部リークを抑制することができる。本実施形態では、隙間寸法0.005〜0.01mmの範囲において、内部リーク抑制機構19を設けることにより、内部リーク量を約十分の一にまで低減できることを確認している。
本実施形態では、MHP装置2の第1、第2横断流路間に圧力差がある構成であったが、第1、第2横断流路間に圧力差がない場合であっても、熱輸送媒体の連れ回り流れは発生する。したがって、圧力差がない横断流路間であっても、内部リーク抑制機構19を適用することは有効である。
また、本実施形態のMHP装置2によれば、以下に述べる効果も得ることができる。
本実施形態によると、容器7は、容器7と相対的移動体とが相対的回転移動する際の回転軸線方向の端面に開口した作業室11を有している。そして、相対的移動体は、容器7の軸線方向端面に押し付けられて、容器7の軸線方向端面に対向する対向面に、第1開口および第2開口が開口している。これによると、相対的移動体を容器7の軸線方向端面に押し付けて、容器7と相対的移動体との間の隙間寸法を比較的小さくする構成をなすことが容易である。したがって、熱輸送媒体の内部リークおよび外部リークを共に抑制することが容易である。また、MHP装置2の径方向の体格が大きくなることを抑制し易い。
また、本実施形態によると、流路切換機構18は、第1横断流路よりも第2横断流路に高圧の熱輸送媒体を流通するものである。そして、第2開口は、第1開口よりも、容器7と相対的移動体とが相対的回転移動する際の回転軸線に近い位置に形成されている。これによると、第1開口と第2開口との形成角度範囲を同一とした場合には、第2開口の周方向長さを第1開口の周方向長さよりも短くすることができる。したがって、第1開口よりも高圧の熱輸送媒体が流れる第2開口からの外部リークを抑制し易い。
また、本実施形態によると、一方向へ熱輸送媒体を流すポンプ17と、ロータ7とが共通の回転軸2aによって回される。この結果、磁場変調装置14と熱輸送装置16との両方を共通の動力源5によって駆動することができる。MHP装置2は、ポンプ17の回転数をロータ7の回転数より高くする変速機構9を備える。この結果、MCE素子12と熱輸送媒体との間の熱交換に必要な時間をロータ7上において提供しながら、MHP装置2に一体化可能な小型のポンプ17によって必要な流量を得ることができる。
また、本実施形態によると、MCE素子12に印加される磁場の変化が、ロータ7の回転によって機械的に与えられる。同時に、熱輸送媒体の流れ方向の切換えが、ロータ7の回転によって機能する流路切換機構18によって与えられる。しかも、流れ方向の切換えは、ポンプボディ23とピストン41とに形成された連通室23a−23d、41a−41dが提供する機械的な分配機構によって実行される。このため、簡単な構成によって、磁場の変化に同期した流れ方向の切換えが実現される。
なお、本実施形態では、ポンプ17は作業室11の高温端側の熱輸送媒体の流れ経路に設けられていたが、これに限定されるものではない。作業室11の低温端側の熱輸送媒体の流れ経路にポンプを設けてもかまわない。また、熱輸送媒体の流れ経路に2つ以上のポンプを設けて、熱輸送媒体を流れ経路に対して一方向に流すものであってもよい。作業室11の高温端側の熱輸送媒体の流れ経路と、作業室11の低温端側の熱輸送媒体の流れ経路とに、それぞれポンプを設けてもかまわない。
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態は、先行または後続の実施形態の一部分に適用することができる。図15は、この実施形態に係る可動シール機構を示す分解斜視図である。図16は、可動シール機構の断面図であり、第1連通室の形成部位を示している。図17は、可動シール機構の断面図であり、第2連通室の形成部位を示している。図18は、図16のXVIII部の拡大図である。図19は、シールプレート243をロータ7側から見た平面図である。先行する実施形態の要素と同一または対応する要素には同一の符号が付されており、先行する説明を参照することができる。
これらの図には、ハウジング6のポンプボディ23に配置された可動シール機構が図示されている。可動シール機構は、リアボディ26内に設けられてもよい。可動シール機構は、ロータ7の一方の端部、および/または他方の端部に設けることができる。
この実施形態では、ポンプボディ23側が低温端となるようにMHP装置2が構成される。具体的には、ポンプボディ23側が低温端となるように、磁場変調装置14、および熱輸送装置16が構成されている。ポンプボディ23側に配置される熱交換器3が低温側熱交換器である。ポンプボディ23側の通路には、ポンプ17から吐出された比較的高圧の熱輸送媒体が供給される。このような高圧の熱輸送媒体に起因して、熱輸送媒体の漏洩量が多くなる傾向があらわれる。一方で、低温側熱交換器が配置される低温端においては、熱輸送媒体の粘度が高くなる。粘度が高い場合、熱輸送媒体の漏洩量が少なくなる傾向があらわれる。この実施形態では、低温端が高圧側に位置づけられるから、熱輸送媒体の漏洩が抑制されやすい。
図15、図16および図17において、可動シール機構は、シールプレート243と、伸縮部材244とによってピストンを提供する。シールプレート243と伸縮部材244とは、ハウジング6のポンプボディ23に配置されている。ポンプボディ23は、シールプレート243を収容する環状の収容室23gを有する。収容室23gは、凹部として形成されている。ポンプボディ23は、複数の伸縮部材244を収容する複数の収容室23hを有する。収容室23hは、収容室23gの底部に凹部として形成されている。ポンプボディ23は、非磁性の金属製である。
シールプレート243は、ロータ7の枠体71と対向して配置される環状の部材である。シールプレート243は、停止側シール部材とも呼ばれる。シールプレート243は、非磁性の金属製である。シールプレート243の表面には、摩耗を抑制するための表面処理が施されている。シールプレート243は、例えば、ステンレス製である。
シールプレート243は、先行する実施形態の連通室41a〜41dに対応する連通室243a〜243dを有する。連通室243a〜243dのそれぞれは、シールプレート243の一方の面において、ロータ7に向けて開口している。連通室243a〜243dのそれぞれは、シールプレート243の他方の面において、連通開口243rによって開口している。連通室243a〜243dのそれぞれは、対応する連通開口243rと連通している。
連通室243a、243bに対応付けられた連通開口243rの数は、連通室243c、243dに対応付けられた連通開口243rの数より多い。連通室243a、243bは、連通室243c、243dより、高圧の熱輸送媒体が流れ、熱輸送媒体の外部への漏洩を生じやすい。連通開口243rの数は、後述の伸縮部材244の数と対応している。伸縮部材244の数は、シールプレート243を押す力の差を生じさせる。この押す力の差は、熱輸送媒体の漏洩を抑制するために貢献する。例えば、伸縮部材244の数は、熱輸送媒体の粘度が低い高温端において強い押付力を発生させるように設定することができる。
伸縮部材244は、蛇腹状の側壁を有する管状の部材である。伸縮部材244は、非磁性の金属製である。伸縮部材244は、内部に導入される熱輸送媒体の圧力によって伸長する。さらに、伸縮部材244は、蛇腹状の側壁によってバネとしての機能を発揮する。伸縮部材244は、ベローズ部材とも呼ばれる。伸縮部材244の一端は、連通開口243rに接続されている。伸縮部材244の他端は、ポンプボディ23の通路に接続されている。伸縮部材244は、ハウジング6内の複数の流路と、それに対応付けられたシールプレート243の連通室243a〜243dとを連通するための通路部材である。さらに、伸縮部材244は、シールプレート243をロータ7に向けて押し付ける押付力発生部材でもある。伸縮部材244は、蛇腹状の側壁に代えて、弾性変形可能な材料製の側壁を備えることができる。例えば、伸縮部材244は、ゴムまたは樹脂によって形成されてもよい。
伸縮部材244は、ハウジング6とシールプレート243との間に、やや圧縮された状態で収容されている。よって、伸縮部材244は、自らのバネ力によって、シールプレート243をロータ7に向けて押し付ける。さらに、伸縮部材244内に加圧された熱輸送媒体が導入されると、伸縮部材244は伸長し、熱輸送媒体の圧力によって、シールプレート243をロータ7に向けて押し付ける。
シールプレート243は、収容室23g内において径方向および軸方向の両方に関してわずかに移動可能に収容されている。例えば、シールプレート243は、収容室23g内においてやや傾くことができる。さらに、複数の伸縮部材244は、自らが変形することによって、シールプレート243の径方向および軸方向の両方に関する移動を許容する。言い換えると、ハウジング6および伸縮部材244は、シールプレート243を径方向および軸方向の両方に関して拘束することなく支持するフロート支持構造を提供する。フロート支持構造によって支持されたシールプレート243は、ロータ7との接触状態を維持するように変位することができる。この結果、複数の部品の寸法の誤差、および複数の部品の組立に誤差があっても、必要なシール性能を発揮するようにシールプレート243とロータ7との接触状態が適合的に調節される。
ロータ7は、リング部材245を備える。リング部材245は、ロータ7の枠体71の端部に設けられている。リング部材245は、枠体71の端面に接着されている。リング部材245は、シールプレート243の端面243sと接触する。ロータ7が回転すると、リング部材245も回転する。リング部材245は、端面243sに接触しながら、摺動する。リング部材245は、回転側シール部材とも呼ばれる。シールプレート243とリング部材245とは、ロータ7の回転を許容しながら、シールプレート243とロータ7とにわたって延びる流路を区画形成する。リング部材245は、枠体71よりも耐摩耗性に優れた材料によって形成されている。リング部材245は、非磁性の材料により形成されている。例えば、リング部材245は、非磁性の金属製である。
図18において、リング部材245は、ボディ245aを有する。ボディ245aは、枠体71が提供する通路に対応する通路を提供する。ボディ245aは、非磁性の金属製である。ボディ245aは、エンドチップ、または爪部材とも呼ばれる。ボディ245aは、シールプレート243との間において所定のシール性能を提供するための平面度と、シールプレート243との摩擦に耐えうる硬さとを有する材料で作られている。
ボディ245aは、MCE素子12を枠体71内の作業室11に保持するための保持部材を備える。この実施形態では、MCE素子12は、小片状またはペレット状と呼びうる形状である。保持部材は、MCE素子12を枠体71内に保持するためのメッシュ体245bと、メッシュ体245bをボディ245aに固定するためのリテーナリング245cとを有する。
ボディ245aは、台形の断面を有する。ボディ245aは、台形の下面において枠体71と接続されている。ボディ245aは、台形の頂面においてシールプレート243と接触する。ボディ245aは、シールプレート243と対向する部位に、接触部245dと、非接触部245eとを有する。
接触部245dは、シールプレート243とボディ245aとの間の環状の対向面における径方向外側と径方向内側との両方に設けられている。接触部245dは、円形に延在している。図には、径方向外側の接触部245dが図示されている。言い換えると、接触部245dは、通路内空間と通路外空間とを仕切る境界を提供する。
接触部245dは、ロータ7およびシールプレート943の中に区画形成される熱輸送媒体のための通路の内部と、その外部の空間との間の外部シール部を提供する。外部シール部は、熱輸送に貢献するための主要な通路から、外部への漏れ出しを抑制している。外部シール部を経由する熱輸送媒体の漏洩は、外部リークと呼ぶことができる。
非接触部245eは、シールプレート243とボディ245aとの間の環状の対向面において、環状に広がっている。非接触部245eは、径方向において、径方向外側の接触部245dと、径方向内側の接触部245dとの間にわたって広がっている。非接触部245eは、ボディ245aの端面において、浅い凹部として形成されている。非接触部245eを提供する凹部の深さは10μmである。凹部の深さは、10μm以下とすることができる。この結果、シールプレート243と非接触部245eとの間には、10μm以下の隙間が区画形成される。
非接触部245eは、接触部245dよりも通路の内側に設けられている。よって、非接触部245eは、接触部245dに到達する熱輸送媒体の流れを抑制する予備的なシール部でもある。非接触部245eは、複数の連通室243a〜243dの間における内部シール部を提供する。内部シール部は、隣接する2つの作動室の間における熱輸送媒体の漏れ出しを抑制する。2つの作動室の間における熱輸送媒体の漏洩は、内部リークと呼ぶことができる。
本実施形態のMHP装置は、第1の実施形態と同様に、装置内部において熱輸送媒体が熱輸送媒体流路をショートカットする熱輸送媒体のリークである内部リークを抑制するための内部リーク抑制機構19を備えている。本実施形態の内部リーク抑制機構19は、シールプレート243の連通室243a〜243dの作業室11側の端部開口の相互の位置関係により提供される。
図15に示すように、ポンプボディ23に配置されたシールプレート243は、連通室243a、243b、243c、243dを有する。連通室243a、243b、243c、243dは、いずれも、ロータ7側の作業室11の端部開口と接続する端部開口を有している。連通室243a、243b、243c、243dの作業室11側の端部開口は、第1実施形態のポンプボディ23の連通室の端部開口23a1、23b1、23c1、23d1と同様の配置構成とすることができる。図13と図15とを比較して明らかなように、連通室243cの端部開口43c1および連通室243dの端部開口43d1が端部開口23a1、23b1に対応する。連通室243aの端部開口43a1および連通室243bの端部開口43b1が端部開口23c1、23d1に対応する。
図19は、シールプレート243を容器7側から見た平面図である。図示された円周状の面は、シールプレート243の外面のうち、ロータ7の回転軸線方向の端面に対向する対向面である。シールプレート243は、この対向面がロータ7の端面に押し付けられるように付勢される。シールプレート243は、ロータ7と同軸上に配置される。
連通室243cの端部開口43c1と連通室243dの端部開口43d1とは、同一形状をなしている。端部開口43c1と端部開口43d1とは、回転軸線を中心に対称の位置にある。また、連通室243aの端部開口43a1と連通室243bの端部開口43b1とは、同一形状をなしている。端部開口43a1と端部開口43b1とは、回転軸線を中心に対称の位置にある。端部開口43a1、43b1、43c1、43d1は、いずれも周方向に延びる円弧状の開口を形成している。端部開口43a1、43b1、43c1、43d1は、いずれもほぼ同一幅で周方向に延びている。端部開口43a1、43b1、43c1、43d1は、それぞれの開口全域が作業室11に臨むことが可能な位置に形成されている。
本例では、端部開口43a1、43b1、43c1、43d1は、互いに、シールプレート243の径方向における幅が同一となっており、シールプレート243の周方向における形成角度範囲が同一となっている。したがって、端部開口43c1、43d1よりもロータ7の回転軸線に近い内径側に位置付けられた端部開口43a1、43b1の方が、周方向の長さが若干短くなっている。
径方向における端部開口43c1、43d1の中心を通り径方向に延びる中心線CL5と、径方向における端部開口43a1、43b1の中心を通り径方向に延びる中心線CL6とは、径方向にずれている。
図19において符号AR5を付した領域は、ロータ7とシールプレート243とが相対的回転移動する際の端部開口43c1、43d1の相対的移動軌跡である。また、図19において符号AR6を付した領域は、ロータ7とシールプレート243とが相対的回転移動する際の端部開口43a1、43b1の相対的移動軌跡である。相対的移動軌跡AR5と相対的移動軌跡AR6とは、重複していない。端部開口43c1、43d1は、全部が、相対的移動軌跡AR6と重なっていない。端部開口43a1、43b1は、全部が、相対的移動軌跡AR5と重なっていない。中心線CL5は、相対的移動軌跡AR5の中心線でもある。また、中心線CL6は、相対的移動軌跡AR6の中心線でもある。
上述したように、流路切換機構18の相対的移動体であるシールプレート243には、作業室11に連通可能な連通室243a、243b、243c、243dが形成されている。連通室243c、243dは、本実施形態における第1連通室に相当する。連通室243cを含んでシールプレート243とロータ7との間に渡って延びる横断流路、および、連通室243dを含んでシールプレート243とロータ7との間に渡って延びる横断流路が、本実施形態における第1横断流路に相当する。端部開口43c1、43d1は、第1横断流路において第1連通室の作業室11側の端部開口をなす第1開口に相当する。相対的移動軌跡AR5は、第1移動軌跡に相当する。
また、連通室243a、243bは、本実施形態における第2連通室に相当する。連通室243aを含んでシールプレート243とロータ7との間に渡って延びる横断流路、および、連通室243bを含んでシールプレート243とロータ7との間に渡って延びる横断流路が、本実施形態における第2横断流路に相当する。端部開口43a1、43b1は、第2横断流路において第2連通室の作業室11側の端部開口をなす第2開口に相当する。相対的移動軌跡AR4は、第2移動軌跡に相当する。
第1連通室を含む第1横断流路と第2連通室を含む第2横断流路とには、作業室11に対する逆方向の熱輸送媒体の流れが形成される。流路切換機構18は、シールプレート243とロータ7との相対的回転移動により第1連通室が連通する作業室11と第2連通室に連通する作業室11とを変更する。これにより、流路切換機構18は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流す。
MHP装置2の流路切換機構18のうちポンプボディ23側の部分では、熱輸送媒体の流れ経路において、連通室243c、243dを含む第1横断流路よりも連通室243a、243bを含む第2横断流路の方がポンプ17の吐出口に近い。したがって、連通室243c、243dを含む第1横断流路よりも連通室243a、243bを含む第2横断流路に高圧の熱輸送媒体が流通される。
本実施形態のMHP装置によれば、流路切換機構18に内部リーク抑制機構19を設けることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
外部リーク量の増加は、入力される外部動力の増加、すなわち消費動力の増加を生じる。外部リーク量の増加は、熱損失の増加を生じる。これらの結果、ヒートポンプとしての成績係数の低下を生じる。一方、内部リーク量の増加は、入力される外部動力の増加を生じる。内部リーク量の増加は、専ら、外部動力の増加によって成績係数の低下を生じる。よって、成績係数の低下を抑制するためには、主として外部リーク量を抑制することが有効である。更に成績係数の低下を抑制するためには、従として内部リーク量を抑制することが有効である。言い換えると、外部リークと、内部リークとを別々に抑制するように装置を構成することが望ましい。この実施形態では、内部シール部を非接触部245eによって提供するとともに内部リーク抑制機構19を設けて、外部シール部を接触部245dによって提供している。ここで、非接触部245eからなる内部シール部も、内部リーク抑制機構の一つであると言える。よって、外部リーク量を確実に抑制し、更に内部リーク量も抑制することが容易である。この結果、成績係数の高いMHP装置2が提供される。
本実施形態では、ロータ7の端面に対向するように位置づけられたシールプレート243と、シールプレート243をロータ7に向けて押し付けるように伸縮可能な伸縮部材244とがピストンを提供する。この伸縮部材244は、自らの弾性により、および/または内部に導入される熱輸送媒体の圧力によりシールプレート243をロータ7に向けて押し付ける蛇腹状部分を有する。この構成は、簡単な構成によって熱輸送媒体の漏洩を抑制することを可能とする。
また、ピストンは、軸方向および径方向の両方に関して移動可能に支持されている。ピストンは、フロート支持構造によって支持されている。ピストンを提供するシールプレート243は、ロータ7との接触を維持するように移動可能である。この構成は、停止部分であるピストンと、回転部分であるロータとの接触を安定的に提供するために貢献する。
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態は、先行または後続の実施形態の一部分に適用することができる。図20は、シールプレート243の分解斜視図である。この実施形態では、内部シール部は、回転部分と停止部分との間に設けられ、両者に接触するシール部材B43uを有する。
シールプレート243は、複数の連通室243a〜243dを有する。連通室243a〜243dの数は、ロータ7が提供する作業室の数に対応している。この実施形態では、作業室の数は、2の倍数である。隣接する2つの連通室の間には、内部シール部を提供するためのワイパ状のシール部が設けられている。シール部は、シールプレート243に設けられた放射状に延びる溝B43tと、この溝B43tの中に配置されたシール部材B43uとを含む。シール部は、面シール部とも呼ばれる。
溝B43tは、周方向に隣接する2つの連通室、例えば連通室243bと、連通室243dとの間に設けられている。溝B43tは、放射状に延びている。この実施形態では、複数のシール部を設けるために複数の溝B43tが設けられている。
シール部材B43uは、溝B43tの中に配置される。シール部材B43uは、摩擦係数が低い樹脂材料製である。シール部材B43uは、シールプレート243の端面よりわずかに突出する。シール部材B43uの突出量は、接触部245dにおける接触を妨げることがないように設定されている。シール部材B43uの突出量は、非接触部245eにおける間隙を小さくするように設定されている。よって、シール部材B43uは、非接触部245eの径方向幅に対応する径方向長さを有していてもよい。
本実施形態によると、内部リーク抑制機構19とシール部材B43uとが協働して内部シール部における内部リーク量を抑制することができる。この結果、更に高い成績係数を実現することが可能となる。ここで、シール部材B43uも内部リーク抑制機構の一つであると言える。
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態は、先行または後続の実施形態の一部分に適用することができる。図21は、ピストン441を容器7側から見た平面図である。図22は、図21のXXII−XXII線断面図である。ピストン441は、第1実施形態のピストン41に対応する要素である。
本実施形態のMHP装置は、装置内部において熱輸送媒体が熱輸送媒体流路をショートカットする熱輸送媒体のリークである内部リークを抑制するための内部リーク抑制機構419を備えている。本実施形態の内部リーク抑制機構419は、ピストン441の連通室41a〜41dの作業室11側の端部開口の相互の位置関係、および、段差部420により提供される。
ピストン441は、ロータ7の端面に対向する対向面に段差部420を有している。段差部420はピストン441の周方向に連続するように延びている。段差部420は、その外周側と内周側とに、互いに軸線方向の位置が異なる周状面を提供する。図22に示すように、段差部420の外周側の面は、内周側の面よりも、ロータ7側に突出した位置にある。端部開口41a1、41b1は、外周側の面に開口している。端部開口41c1、41d1は、内周側の面に開口している。換言すれば、相対的移動軌跡AR1は、段差部420よりも外周側の面上にある。また、相対的移動軌跡AR2は、段差部420よりも内周側の面上にある。ロータ7の端面は、段差部420を有するピストン441の対向面に対応した形状をなしている。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
更に、本実施形態では、相対的移動体であるピストン441は、第1開口である端部開口41a1、41b1と第2開口である41c1、41d1との間に、ロータ7とピストン441とが相対的回転移動する方向に連続して延びる段差部420を有している。そして、第1開口と第2開口とは、段差部420の両側に形成された異なる面に開口している。
これによると、第1開口と第2開口とを、ロータ7とピストン441との相対的回転移動方向に直交する方向に、段差部420の段差寸法分だけ更に離すことができる。したがって、相対的回転移動に伴って連れ回される熱輸送媒体の内部リークをより一層確実に抑制することができる。
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態は、先行または後続の実施形態の一部分に適用することができる。図23は、ピストン541を容器7側から見た平面図である。ピストン541は、第1実施形態のピストン41に対応する要素である。
本実施形態のMHP装置は、装置内部において熱輸送媒体が熱輸送媒体流路をショートカットする熱輸送媒体のリークである内部リークを抑制するための内部リーク抑制機構519を備えている。本実施形態の内部リーク抑制機構519は、ピストン541の連通室41a〜41dの作業室11側の端部開口の相互の位置関係、および、保持溝420Aにより提供される。
図23に示すように、ピストン541は、ロータ7の端面に対向する対向面に保持溝420Aを有している。保持溝420Aは、周方向に延びる溝である。保持溝420Aは、幅および深さが比較的小さい溝である。保持溝420Aの幅や深さは、いずれも、例えばロータ7の端面とピストン541の対向面との間の隙間部の隙間寸法よりも小さい。保持溝420Aは、複数を並設することができる。なお、図23では、保持溝420Aの一部のみを図示している。
保持溝420Aは、ロータ7の端面に対向する対向面の一部または全部に設けることができる。保持溝420Aは、少なくとも第2開口である端部開口41c1、41d1の相対的移動軌跡AR2に対応する部位に設けることが好ましい。第2開口に第1開口よりも高圧の熱輸送媒体が流れる場合には、第2開口から漏れた熱輸送媒体が隙間を介して第1開口へ漏れ易い。保持溝420Aは、第2開口から漏れた熱輸送媒体を保持する。保持溝420Aは、内部に保持した熱輸送媒体の径方向への移動を抑制する。
保持溝420Aは、端部開口41a1、41b1の相対的移動軌跡AR1に対応する部位に設けることもできる。相対的移動軌跡AR1に対応する部位に設けた保持溝420Aは、第1開口から漏れた熱輸送媒体を保持する。保持溝420Aは、内部に保持した熱輸送媒体の径方向への移動を抑制する。保持溝420Aは、相対的移動軌跡AR1、AR2以外に設けることもできる。
保持溝は、相対的移動体であるピストン541側ではなく、ロータ7側に設けてもよい。また、ピストン541とロータ7との両者に設けてもよい。保持溝は、ロータ7と相対的移動体とにより形成される隙間部に臨む面の少なくとも一部に設けることができる。保持溝は、相対的移動体の第1開口および第2開口が開口している面、および、ロータ7の作業室11が開口している面の少なくともいずれかに設けられる。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
更に、本実施形態では、相対的移動体の第1開口および第2開口が開口している面、および、容器7の作業室11が開口している面の少なくともいずれかに、相対的回転移動方向に延びるように形成され、内部に熱輸送媒体を保持する保持溝420Aを有する。
これによると、相対的回転移動に伴い連れ回される熱輸送媒体が周方向に延びる保持溝に保持され易い。したがって、連れ回される熱輸送媒体が径方向に移動することが抑制される。これにより、熱輸送媒体の内部リークおよび外部リークを一層抑制することができる。
(他の実施形態)
ここに開示される発明は、その発明を実施するための実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。開示される発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。実施形態は追加的な部分をもつことができる。実施形態の部分は、省略される場合がある。実施形態の部分は、他の実施形態の部分と置き換え、または組み合わせることも可能である。実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示である。開示される発明の技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される発明のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、第1移動軌跡と第2移動軌跡とが重複しないように、第1開口と第2開口とが径方向に相互にずれて配置されていた。しかしながら、これに限定されるものではない。
例えば、図24に示すように、相対的移動軌跡AR1の一部と相対的移動軌跡AR2の一部とが重複するものであってもよい。すなわち、第1開口の一部が第2移動軌跡である相対的移動軌跡AR2に重ならないとともに、第2開口の一部が第1移動軌跡である相対的移動軌跡AR1に重ならないように、第1開口と第2開口とを径方向に相互にずらして配置してもよい。
図24に示した例によれば、第1開口と第2開口とは、相対的回転移動する方向に直交する方向に相互にずれて配置されている。第1開口の少なくとも一部が、容器と相対的移動体とが相対的回転移動する際の第2開口の相対的移動軌跡である第2移動軌跡に重複しない。
これによると、第1開口の少なくとも一部は、第2開口の相対的移動軌跡である第2移動軌跡と重ならない。したがって、相対的回転移動に伴って連れ回されて第1開口から容器と相対的移動体との間に進入する熱輸送媒体のうち、第1開口の第2移動軌跡と重ならない部分から進入する熱輸送媒体は、第2開口に到達し難い。これにより、内部リークを抑制することができる。
また、第2開口の少なくとも一部が、容器と相対的移動体とが相対的回転移動する際の第1開口の相対的移動軌跡である第1移動軌跡に重複しないように、第1開口と第2開口とは、相対的回転移動する方向に直交する方向に相互にずれて配置されている。
これによると、第2開口の少なくとも一部は、第1開口の相対的移動軌跡である第1移動軌跡と重ならない。したがって、相対的回転移動に伴って連れ回されて第2開口から容器と相対的移動体との間に進入する熱輸送媒体のうち、第2開口の第1移動軌跡と重ならない部分から進入する熱輸送媒体は、第1開口に到達し難い。これにより、一層内部リークを抑制することができる。
また、例えば、図25に示すように、相対的移動軌跡AR1の一部と相対的移動軌跡AR2の全部とが重複するものであってもよい。すなわち、第1開口の一部が第2移動軌跡である相対的移動軌跡AR2に重ならないように、第1開口と第2開口とを径方向に相互にずらして配置してもよい。
図25に示した例によれば、第1開口と第2開口とは、相対的回転移動する方向に直交する方向に相互にずれて配置されている。第1開口の少なくとも一部が、容器と相対的移動体とが相対的回転移動する際の第2開口の相対的移動軌跡である第2移動軌跡に重複しない。
これによると、第1開口の少なくとも一部は、第2開口の相対的移動軌跡である第2移動軌跡と重ならない。したがって、相対的回転移動に伴って連れ回されて第1開口から容器と相対的移動体との間に進入する熱輸送媒体のうち、第1開口の第2移動軌跡と重ならない部分から進入する熱輸送媒体は、第2開口に到達し難い。これにより、内部リークを抑制することができる。
また、上記実施形態では、第1開口を通過する熱輸送媒体の圧力に対して第2開口を通過する熱輸送媒体の圧力が高くなる構成について説明したが、これに限定されるものではない。第1開口を通過する熱輸送媒体の圧力と第2開口を通過する熱輸送媒体の圧力とが同じになるものであってもよい。また、第1開口を通過する熱輸送媒体の圧力に対して第2開口を通過する熱輸送媒体の圧力が低くなるものであってもよい。上記各実施形態の第1開口と第2開口との相互の位置関係を入れ替えた場合であっても、本発明を適用して有効である。
また、上記実施形態では、作業室11は容器7の回転軸線方向の端面に開口していた。そして、相対的移動体は、容器7の軸線方向の端面に対向する対向面に第1開口および第2開口が開口して、第1開口と第2開口とは径方向にずれていた。しかしながら、第1開口および第2開口の位置は、これに限定されるものではない。
例えば、図26および図27に示すように、容器7の回転軸線方向の端面と外周面とに作業室11を開口させる。そして、図28および図29に示すように、相対的移動体であるピストン等に、容器の外周側に位置する部分を設け、容器7の外周面に対向する対向面に第1開口を開口させ、容器7の端面に対向する対向面に第2開口を開口させる。矢印で示す容器7と相対的移動導体とが相対的回転移動する方向において、第1開口と第2開口とがずれている。また、容器7と相対的移動導体とが相対的回転移動する方向に直交する方向においても、第1開口と第2開口とがずれている。これによっても、相対的移動に伴う熱輸送媒体の連れ回りに起因する内部リークを抑制することができる。また、この例によれば、第1開口および第2開口の開口面積を確保し易く、第1横断流路および第2横断流路の圧力損失の低減に有効である。
図26〜図29で示した例では、容器7の端面と外周面とに作業室11を開口していたが、容器7の端面と内周面とに作業室11を開口するものであってもよい。これによれば、相対的移動体を容器7の端面と内周面とに対向するように配置するので、第1開口および第2開口の開口面積を確保し易いばかりでなく、MHP装置の径方向の体格を抑制し易い。
また、例えば、図30および図31に示すように、容器7の回転軸線方向の端面には作業室11を開口させず、容器7の外周面のみに作業室11を開口させる。そして、容器7の外周面に対向する対向面に第1開口および第2開口を開口させる。矢印で示す容器7と相対的移動導体とが相対的回転移動する方向において、第1開口と第2開口とはずれている。また、容器7の回転軸線方向において、第1開口と第2開口とがずれている。すなわち、容器7と相対的移動導体とが相対的回転移動する方向に直交する方向においても、第1開口と第2開口とはずれている。これによっても、相対的移動に伴う熱輸送媒体の連れ回りに起因する内部リークを抑制することができる。
図30および図31で示した例では、容器7の外周面のみに作業室11を開口させていたが、円筒状の容器7の内周面のみに作業室11を開口するものであってもよい。これによれば、相対的移動体を容器7の内周面に対向するように配置するので、MHP装置の径方向の体格を抑制し易い。容器7の外周面のみ、または内周面のみに作業室11を開口する構成を採用する場合には、容器7の軸線方向端面を高精度に製作する必要がない。
なお、ここで説明した容器の外周面のみに作業室を開口する構成例や容器の内周面のみに作業室を開口する構成例においても、第4実施形態で用いたような段差部を適用して有効である。第1開口と第2開口との間に、相対的回転移動する方向に連続して延びる段差部を設ける。そして、第1開口と第2開口とを、段差部の両側に形成された径寸法が異なる面に開口させることができる。
また、例えば、図32および図33に示すように、容器7の端面から外周面に亘る第1角部領域、および、容器7の端面から内周面に亘る第2角部領域に、作業室11を開口する。そして、第1角部領域に対向する相対的移動体の対向面に第1開口を、第2角部領域に対向する相対的移動体の対向面に第2開口を開口する。この構成例でも、矢印で示す容器7と相対的移動導体とが相対的回転移動する方向において、第1開口と第2開口とがずれている。また、容器7と相対的移動導体とが相対的回転移動する方向に直交する方向においても、第1開口と第2開口とがずれている。これによっても、相対的移動に伴う熱輸送媒体の連れ回りに起因する内部リークを抑制することができる。また、第1開口および第2開口の開口面積を確保し易く、第1横断流路および第2横断流路の圧力損失の低減に有効である。
また、図32および図33に示す例に対して、図34および図35に示す変形例を採用してもよい。図32および図33に示す例では、容器7の隣り合う作業室11間の隔壁は、容器7の端部付近において、容器7の端面と外周面とが交差する外周側の角部、および端面と内周面とが交差する内周側の角部に向かって突出していた。作業室11間の隔壁は、容器7の端部付近において、回転軸線に直交する辺部と回転軸線に平行な辺部とを有していた。これに対し、図34および図35に示す例では、容器7の隣り合う作業室11間の隔壁が前例のように突出していない。作業室11間の隔壁は、容器7の端部付近において、容器の端面に近づくにつれて回転軸線に近づく傾斜辺部を有している。図34および図35に示す例によれば、図32および図33に示す例よりも、相対的回転移動時の摺接面積を低減できるので、摩擦を低減して、相対的回転移動に伴って作業室11間の隔壁へ加わる負荷を低減することができる。また、容器7に対向する相対的移動体の対向面部を谷型の凹部とすることができ、容器7の径方向において、第1、第2開口と作業室開口との位置合わせが容易である。なお、図34および図35に示す構成例では、図32および図33に示す前例に対して第1横断流路および第2横断流路の通路形状は変更されておらず、前例と同様に、第1横断流路および第2横断流路の圧力損失の低減に有効である。
他の実施形態において図24〜図35を用いて説明した各例では、第1実施形態の要素と対応する要素に同一の符号を付している。また、他の実施形態で説明した各例においても、第5実施形態の保持溝を適用して有効である。
また、上記実施形態では、ひとつのMHP装置2に、2つの第1位置と、2つの第2位置とを設けた。これに代えて、1つの第1位置と、1つの第2位置とを設けてもよい。また、3つ以上の第1位置と第2位置とを設けてもよい。
また、上記実施形態では、MHP装置2の外部の熱交換器3、4に熱輸送媒体を供給した。これに代えて、一次媒体である熱輸送媒体と、二次媒体とを熱交換する熱交換器をMHP装置2内に設け、二次媒体を低温系統と高温系統とに供給してもよい。
また、上記実施形態では、容積型のギヤポンプまたは非容積型の遠心式ポンプを採用した。これに代えて、多様な形式のポンプを採用することができる。例えば、ベーン型ポンプ、ターボ型ポンプ、再生ポンプ、ギヤポンプ、レシプロポンプなどを利用することができる。
また、上記実施形態では、回転軸2aとロータ7、207との間に減速型の変速機構9、209を設けた。これに代えて、回転軸2aとロータ7、207とを直結し、回転軸2aとポンプ17、217との間に増速型の変速機構を設けてもよい。また、回転軸2aとロータとの間、および回転軸2aとポンプとの間の両方に変速機構を設けてもよい。
また、上記実施形態では、作業室11とMCE素子12とを有する素子ベッドが回転する構成を採用した。これに代えて、素子ベッドと磁場変調装置14との間の相対的な回転と、素子ベッドと流路切換機構18との間の相対的な回転とを提供するための多様な構成を採用することができる。例えば、素子ベッドを静止させておき、永久磁石を含む磁場変調装置を素子ベッドに対して相対的に回転移動させてもよい。これにより、ひとつのMCE素子12に与えられる磁場を変動させることができる。また、素子ベッドを静止させておき、連通室23a−23d、41a−41dに相当する開口をもつ分配部材を素子ベッドに対して相対的に回転させてもよい。これにより、ひとつのMCE素子12に沿って流れる熱輸送媒体の流れ方向を第1方向と第2方向とに交互に切換えることができる。
また、上記実施形態では、広い端面243sをシールプレート243に設け、接触部245dと非接触部245eとをリング部材245に設けることによって外部シール部と内部シール部とが形成される。これに代えて、広い端面を回転部材としてのリング部材245に設け、接触部と非接触部とを停止部材としてのシールプレート243に設けることによって外部シール部と内部シール部とが形成されてもよい。
また、上記実施形態では、MHP装置が、第1開口と第2開口との相互の位置関係により構成された内部リーク抑制機構を備えていたが、内部リーク抑制機構は、これに限定されるものではない。例えば、第2実施形態で説明した非接触部245e、および、第3実施形態で説明したシール部材B43uの片方のみ、または、両方のみで、内部リーク抑制機構を構成してもかまわない。
また、上記実施形態では、車両用空調装置に本発明を適用した。これに代えて、住宅用の空調装置に本発明を適用してもよい。また、水を加熱する給湯装置として利用してもよい。また、上記実施形態では、室外の空気を主要な熱源とするMHP装置2を説明した。これに代えて、水、土などの他の熱源を主要熱源として利用してもよい。
また、上記実施形態では、熱磁気サイクル装置の一形態であるMHP装置2を説明した。これに代えて、熱磁気サイクル装置の一形態である熱磁気エンジン装置に本発明を適用してもよい。例えば、上記実施形態のMHP装置2の磁場変化と熱輸送媒体の流れとの位相を調節することにより熱磁気エンジン装置を提供することができる。