図面を参照しながら、ここに開示される発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については他の形態の説明を参照し適用することができる。
(第1実施形態)
図1は、発明を実施するための第1実施形態に係る車両用空調装置1を示す。車両用空調装置1は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2を備える。磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2はMHP(Magneto-caloric effect Heat Pump)装置2とも呼ばれる。MHP装置2は、円柱状の外形をもつ。MHP装置2は、熱磁気サイクル装置を提供する。熱磁気サイクル装置は、熱機器のひとつである。熱磁気サイクル装置は、往復的に流れる熱媒体と熱交換する往復流熱交換システムを含む。
この明細書においてヒートポンプ装置の語は広義の意味で使用される。すなわち、ヒートポンプ装置の語には、ヒートポンプ装置によって得られる冷熱を利用する装置と、ヒートポンプ装置によって得られる温熱を利用する装置との両方が含まれる。冷熱を利用する装置は、冷凍サイクル装置とも呼ばれることがある。よって、この明細書においてヒートポンプ装置の語は冷凍サイクル装置を包含する概念として使用される。
車両用空調装置1は、MHP装置2の高温側に設けられた熱交換器3を有する。熱交換器3は、MHP装置2の高温と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器3は、主として放熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器3は、MHP装置2の熱輸送媒体と、空気との熱交換を提供する。熱交換器3は、車両用空調装置1における高温系統機器のひとつである。熱交換器3は、例えば車両の室内に設置され、空調用空気と熱交換することにより空気を温める。
車両用空調装置1は、MHP装置2の低温側に設けられた熱交換器4を有する。熱交換器4は、MHP装置2の低温端と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器4は、主として吸熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器4は、MHP装置2の熱輸送媒体と、熱源媒体との熱交換を提供する。熱交換器4は、車両用空調装置1における低温系統機器のひとつである。熱交換器4は、例えば車両の外部に設置され、外気と熱交換する。
MHP装置2は、MHP装置2を駆動するための回転軸2aを有する。回転軸2aは、動力源5と作動的に連結されている。よって、MHP装置2は、動力源5によって回転駆動される。動力源5は、MHP装置2に回転動力を提供する。動力源5は、MHP装置2の唯一の動力源である。動力源5は、車両に搭載された電池によって駆動される電動機である。動力源5は、電動機、内燃機関など回転機器によって提供される。
MHP装置2は、ハウジング6を備える。ハウジング6は回転軸2aを回転可能に支持している。MHP装置2は、ロータ7を備える。ロータ7は、ハウジング6内に回転可能に支持されている。ロータ7は、回転軸2aから直接的にまたは間接的に回転力を受けて、回転する。ロータ7は、動力源5によって回転させられる回転体である。ロータ7は、円筒状の部材である。
回転軸2aとロータ7との間には、変速機構9が配置されている。変速機構9は、遊星歯車機構によって提供されている。変速機構9は、ロータ7の径方向内側に配置されている。変速機構9は、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなるように回転軸2aから伝達される回転数を調節する。この構成によると、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなる。これにより、高回転型のポンプ17を利用することができる。ポンプ17が高い回転数で回転することにより、ポンプ17の流量の増加、および/または小型のポンプ17の利用が可能となる。
MHP装置2は、電気的な制御装置(CNTL)10を備える。制御装置10は、車両用空調装置1のための制御装置によって提供することができる。制御装置10は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置は、少なくともひとつの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくともひとつのメモリ装置(MMR)とを有する。制御装置は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置は、ひとつのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置を機能させる。制御装置は、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、機能を実行するための手段と呼ぶことができ、別の観点では、それらの要素の少なくとも一部は、構成的なブロック、またはモジュールと呼ぶことができる。
ロータ7は、熱輸送媒体が流れることができる作業室11を形成する。熱輸送媒体は、水の凍結温度より低い温度においても凍結しないように不凍化された不凍液である。熱輸送媒体は、車両用のエンジン冷却水として一般的に使用が推奨されているエチレングリコール濃度が50%の水溶液に対して、熱伝導率が高く、および/または粘性係数が低い。ロータ7は、その円筒状の壁内に複数の作業室11を有する。ロータ7は、4つの作業室11を有する。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向に沿って延びている。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向の両方の端面において開口している。ロータ7は、複数の作業室11を備えることができる。複数の作業室11は、ロータ7の回転方向に沿って並列に配列されている。ロータ7は、内外二重の円筒の間に、それらの両端に開口する作業室11を区画形成する筒状の部材である。ロータ7は、MCE素子12を収容する作業室11を形成するとともに、回転軸2aによって回転させられることによってMCE素子12を第1位置と第2位置とに移動させる。
ロータ7は、磁気熱量素子12を備える。磁気熱量素子12は、MCE(Magneto-Caloric Effect)素子12とも呼ばれる。MHP装置2は、MCE素子12の磁気熱量効果を利用する。MHP装置2は、MCE素子12によって低温端と高温端とを生成する。MCE素子12は、低温端と高温端との間に設けられている。図示の例では、図中の右側が低温端であり、図中の左端が高温端である。
MCE素子12は、作業室11内に、熱輸送媒体と熱交換するように配置されている。MCE素子12は、往復流熱交換システムにおける熱交換部を提供している。MCE素子12は、ロータ7に固定され、保持されている。MCE素子12は、熱輸送媒体の流れ方向に沿って配置されている。MCE素子12は、ロータ7の軸方向に沿って細長く延在している。ロータ7は、複数のMCE素子12を備えることができる。複数のMCE素子12は、ロータ7の回転方向に沿って互いに離れて配置されている。
MCE素子12は、外部磁場の強弱の変化に応答して発熱と吸熱とを生じる。MCE素子12は、外部磁場の印加により発熱し、外部磁場の除去により吸熱する。MCE素子12は、外部磁場が印加されることによって電子スピンが磁場方向に揃うと、磁気エントロピーが減少し、熱を放出することによって温度が上昇する。また、MCE素子12は、外部磁場が除去されることによって電子スピンが乱雑になると、磁気エントロピーが増加し、熱を吸収することによって温度が低下する。MCE素子12は、常温域において高い磁気熱量効果を発揮する磁性体によって作られている。例えば、ガドリウム系材料、またはランタン−鉄−シリコン化合物を用いることができる。また、マンガン、鉄、リンおよびゲルマニウムの混合物を用いることができる。MCE素子12には、外部磁場の印加により吸熱し、外部磁場の除去により発熱する素子を利用してもよい。
ひとつの作業室11の中には、複数のMCE素子12が配置されている。複数のMCE素子12は、作業室11の一端と他端との間にわたって配列されている。作業室11の一端と他端との間に配列された一連のMCE素子12の群は、高温端と低温端との間におけるひとつのMCE素子12として見ることができる。ひとつの作業室11の中には、周方向に沿って複数の列をなすように複数のMCE素子12が配列されている。
ひとつのMCE素子12は、素子片とも呼ぶことができる。複数の素子片は、ロータ7の軸方向、すなわち作業室11内における熱輸送媒体の流れ方向に沿って配列されている。複数の素子片のそれぞれは、高い磁気熱量効果を発揮する高効率温度帯が異なる。高効率温度帯は、素子片の材料によって調節することができる。MHP装置2は、低温端と高温端との間に温度分布を発生させる。複数の素子片のひとつは、それが配置された位置に想定される温度帯において高い磁気熱量効果を発揮するように、その材料が選定されている。この構成は、低温端と高温端との間の全体において高い磁気熱量効果を得ることを可能とする。
MHP装置2は、ロータ7と対向して配置されたステータ8を有する。ステータ8は、ハウジング6の一部によって提供されている。ステータ8は、ロータ7の径方向内側および/または径方向外側に配置され、ロータ7と径方向に関して対向する部位を有する。これら径方向に関して対向する部位は、磁場変調装置を提供するために利用される。ステータ8は、ロータ7の軸方向一端および/または軸方向他端に配置され、ロータ7と軸方向に関して対向する部位を有する。これら軸方向に対向する部位は、熱輸送装置、具体的には流路切換機構を提供するために利用される。
MHP装置2は、MCE素子12をAMR(ActiveMagnetic Refrigeration)サイクルの素子として機能させるための磁場変調装置14と熱輸送装置16とを備える。磁場変調装置14は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。磁場変調装置14は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって磁場を周期的に増減させる。磁場変調装置14は、回転軸2aに与えられる回転動力によって駆動される。熱輸送装置16は、ポンプ17と、流路切換機構18とを有する。流路切換機構18は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。流路切換機構18は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって機能する。流路切換機構18は、熱輸送媒体の流路に対する作業室11の接続状態を切換えることにより、作業室11およびMCE素子12に対する熱輸送媒体の流れ方向を反転するように切換える。
磁場変調装置14は、MCE素子12に外部磁場を与えるとともに、その外部磁場の強さを増減させる。磁場変調装置14は、MCE素子12を強い磁界内に置く励磁状態と、MCE素子12を弱い磁界内またはゼロ磁界内に置く消磁状態とを周期的に切換える。磁場変調装置14は、MCE素子12が強い外部磁場の中に置かれる励磁期間、およびMCE素子12が励磁期間より弱い外部磁場の中に置かれる消磁期間を周期的に繰り返すように外部磁場を変調する。磁場変調装置14は、後述する熱輸送媒体の往復的な流れに同期して、MCE素子12への磁場の印加と除去とを繰り返す。磁場変調装置14は、外部磁場を生成するための磁力源としての永久磁石13を有する。磁力源は、電磁石によって提供されてもよい。
永久磁石13は、第1位置に対応する約90度の角度範囲に設けられている。MHP装置2は、その直径上に位置付けられた複数の第1位置と、第1位置と交互に配置された複数の第2位置とを有する。2つの第1位置と、2つの第2位置とは、MHP装置2の周方向に沿って交互に配置されている。ハウジング6は、永久磁石13のためのヨークとしてのアウタコアを提供する。変速機構9は、永久磁石13のためのヨークとしてのインナーコアを提供する。
磁場変調装置14は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。磁場変調装置14は、第1位置にあるMCE素子12を強い磁場の中に位置付ける。磁場変調装置14は、第2位置にあるMCE素子12を弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が強い磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第1位置に位置付ける。第1方向は、低温端から高温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通するときに、その作業室11の中のMCE素子12が強い磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第1位置に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第2位置に位置付ける。第2方向は、高温端から低温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通するときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第2位置に位置付ける。
熱輸送装置16は、MCE素子12が放熱または吸熱する熱を輸送するための熱輸送媒体と、この熱輸送媒体を流すための流体機器とを備える。熱輸送装置16は、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体をMCE素子12に沿って流す装置である。熱輸送装置16は、MCE素子12に沿って熱輸送媒体を往復的に流す。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による外部磁場の変化に同期して、熱輸送媒体の往復的な流れを発生させる。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による磁場の増減に同期して熱輸送媒体の流れ方向を切換える。
MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体は一次媒体と呼ばれる。一次媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。熱輸送装置16は、熱輸送媒体を流すためのポンプ17を備える。ポンプ17は、一方向に熱輸送媒体を流す一方向ポンプである。ポンプ17は、熱輸送媒体を吸入する吸入口と、熱輸送媒体を吐出する吐出口とを有する。ポンプ17は、熱輸送媒体の環状の流れ経路の上に配置されている。ポンプ17は、環状の流れ経路の中に熱輸送媒体の一方向の流れを生じさせる。ポンプ17は、回転軸2aによって駆動される。ポンプ17は、非容積型ポンプである。ポンプ17は、回転羽根を有する遠心式ポンプである。
熱輸送装置16は、流路切換機構18を備える。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12に関する熱輸送媒体の流れ方向を反転させるように、作業室11に対して熱輸送媒体の流路を切換える。言い換えると、流路切換機構18は、一方向型のポンプ17によって生成される熱輸送媒体の一方向の流れの中における作業室11の配置を流れ方向に関して反転させる。流路切換機構18は、ポンプ17を含む環状の流路の中における往路と復路とにひとつの作業室11を交互に位置付ける。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12と、ポンプ17を含む環状の流路との接続関係を少なくとも2つの状態に切換える。第1の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通した状態である。第2の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通した状態である。
具体的には、流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。流路切換機構18は、第1位置にあるMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、第2位置にあるMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流すように、ポンプ17を含む熱輸送媒体の流れ経路と、MCE素子12、すなわち作業室11との接続状態を切換える。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吸入口とを連通し、他端とポンプ17の吐出口とを連通する。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吐出口とを連通し、他端とポンプ17の吸入口とを連通する。
MHP装置2は、熱交換器3から熱輸送媒体を受け入れる高温側入口16aを有する。高温側入口16aはポンプ17の吸入口に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器3へ向けて熱輸送媒体を供給する高温側出口16bを有する。高温側出口16bは、第1位置にある作業室11の一端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4から熱輸送媒体を受け入れる低温側入口16cを有する。低温側入口16cは、第1位置にある作業室11の他端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4へ向けて熱輸送媒体を供給する低温側出口16dを有する。低温側出口16dは、第2位置にある作業室11の他端に連通可能である。第2位置にある作業室11の一端はポンプ17の吐出口と連通可能である。
MCE素子12を含むロータ7は、素子ベッドとも呼ばれる。この実施形態では、素子ベッドが回転軸2aと作動的に連結されている。流路切換機構18と磁場変調装置14との両方に関連するMCE素子12を含む素子ベッドが回転軸2aによって移動する。よって効率的な駆動が可能である。
ポンプ17、流路切換機構18、および磁場変調装置14は、共通のハウジング6の中に収容されている。この構成によると、ポンプ17を流路切換機構18の近傍に設置することができる。このため、長い配管を要することなくポンプ17と流路切換機構18とが接続される。この結果、ポンプ17を含む流れ経路の分岐があっても、熱輸送媒体の流れの差を抑制することができる。この構成では、ホースなどの配管を用いることなくハウジング6内の流路を利用できる。よって、分岐した流れ経路の間において、配管に起因する熱輸送媒体の流れの差が抑制される。
ハウジング6とロータ7との間には、ロータ7とハウジング6との間に形成される隙間を適切に維持するための可動シール機構が設けられている。この可動シール機構は、ロータ7の両端における熱輸送媒体の漏洩を抑制するシール機構とも呼ぶことができる。可動シール機構は、ロータ7の両端における摩擦の抑制と、熱輸送媒体の漏洩の抑制とのトレードオフを適切に調節する。可動シール機構は、ロータ7を軸方向に沿って一方向へ押し付ける付勢機構でもある。可動シール機構は、流路切換機構18の一部でもある。
可動シール機構は、ロータ7の他端側の端面に対向するように配置されたピストン41を有する。ピストン41は、ロータ7に対応した環状である。ピストン41は、軸方向に沿って移動可能にハウジング6に支持されている。ピストン41は、回転軸2aの周りにおいて回転不能にハウジング6に支持されている。ピストン41は、ハウジング6に設けられた環状の溝内に収容されている。ピストン41は、ハウジング6からロータ7に向けて軸方向に突出可能に支持されている。ピストン41とハウジング6との間には、複数のシール部材としてのOリングが設けられている。よって、ピストン41とハウジング6との間には、ピストン41をロータ7に向けて押し付ける付勢力を発生するための背圧室が区画形成されている。
さらに、MHP装置2は、ロータ7の一端側に分配部材81を備える。分配部材81はハウジング6に固定されている。ピストン41と分配部材81とは、分配機構を提供する。ピストン41と分配部材81とは、流路切換機構18を提供する。ピストン41と分配部材81とは、可動シール機構でもある。
ピストン41とハウジング6との間にはポンプ17の吐出口側の圧力が作用する。特に、ピストン41を軸方向に沿ってロータ7に向けて推進させる端面には、低温側入口16cから導入される熱輸送媒体の圧力が作用する。熱輸送媒体の圧力は、ピストン41の端面に対して全周にわたって作用する。この結果、ピストン41は、熱輸送媒体の圧力差によってロータ7に向けて押される。これにより、ロータ7とピストン41とが適切な力で押し付けられる。また、ロータ7は、ハウジング6に固定された分配部材81に向けて適切な力で押し付けられる。これにより、ロータ7の両端における摩擦の過剰な増加を抑制しながら、ロータ7の両端における熱輸送媒体の漏れが抑制される。
ハウジング6は、ポンプ17の吸入口に連通する吸入ギャラリ82を区画形成するアウタハウジング83を備える。吸入ギャラリ82は、熱輸送媒体のリザーバ室としても機能する。吸入ギャラリ82は、一方においてポンプ17の吸入口に連通している。吸入ギャラリ82は、他方においてハウジング6内の空間に連通している。これにより、ハウジング6内の空間は吸入ギャラリ82を通してポンプ17の吸入口に連通する。よって、ハウジング6内の空間は、ポンプ17によって低圧空間とされる。
ハウジング6の中には、空間が形成される。ロータ7の一端面とハウジング6との間の隙間、ロータ7の他端面とピストン41との間の隙間、および他の隙間を通して、ハウジング6内の空間に熱輸送媒体が漏れ出してくる。ケース21内の空間は、ポンプ17の吸入側に連通されている。よって、漏れ出した熱輸送媒体がポンプ17に回収される。同時に、ケース21内の空間が低圧に維持されるから、ピストン41は熱輸送媒体の圧力差によってロータ7に向けて押し付けられる。これにより、ロータ7の一端面とポンプボディ23との間の隙間、およびロータ7の他端面とピストン41との間の隙間が望ましい小さい隙間に維持される。この結果、ロータ7の両端における摩擦の抑制と、熱輸送媒体の漏洩の抑制とが図られる。
図2に図示されるように、ピストン41は、ロータ7に対向する面において開口する4つの連通室41a、41b、41c、41dを有する。4つの連通室41a、41b、41c、41dは、周方向に関して互いに仕切られている。4つの連通室41a、41b、41c、41dは、それらと対向する作業室11と連通する。ピストン41の一端面において連通室41a、41b、41c、41dが区画形成する開口は、流路切換機構18を提供する。分配部材81には、ピストン41と同様の連通室が設けられている。これにより、ロータ7と分配部材81とも、流路切換機構18を提供する。
連通室41a、41b、41c、41dは、周方向に沿って配列されている。連通室41a、41b、41c、41dのそれぞれがもつ周方向の長さは、その上を通過する作業室11の一部分に熱輸送媒体を流す期間を規定する。図示されるように、4つの連通室41a、41b、41c、41dのそれぞれは、互いに等しい角度範囲にわたって延びている。
連通室41a、41bは、MHP装置2における第1位置に対応して設けられている。連通室41aと連通室41bは対称に形成されている。連通室41a、41bは、ピストン41とハウジング6に形成された通路を経由して、低温側入口16cに連通している。よって、連通室41a、41bは、低温側入口16cから導入される熱輸送媒体を第1位置にある作業室11に供給する。
連通室41c、41dは、MHP装置2における第2位置に対応して設けられている。連通室41cと連通室41dは対称に形成されている。連通室41c、41dは、ピストン41とハウジング6とに形成された通路を経由して、低温側出口16dに連通している。よって、連通室41c、41dは、第2位置にある作業室11から熱輸送媒体を受け入れ、低温側出口16dへ供給する。
図3は、連通室41a、41b、41c、41dの開口端部における形状を示す。図示されるように連通室41a、41b、41c、41dの開口端部における形状は、周方向に沿って径方向の幅が増減するように形成されている。この結果、作業室11の一部分が、ひとつの連通室の上を通過していく過程において、連通室から作業室11の一部分に供給される熱輸送媒体の流量が変化する。流量の変化は、作業室11の一部分における熱輸送媒体の流速としても把握することができる。この結果、作業室11の一部分に設けられたMCE素子12の表面における熱輸送媒体の流量および/または流速も変化する。
この実施形態では、特殊な形状をもつ連通室41a、41b、41c、41dを含む流路切換機構18が、熱輸送媒体の流れに往復流の周波数より高い周波数をもつ高周波成分を生じさせる流体制御要素を提供する。流路切換機構18は、ポンプ17とともに、MCE素子12と熱交換するようにMCE素子12に沿って熱輸送媒体を往復的に流す往復流生成機構を提供している。
図4は、作業室11の一部分における磁束BHの変化と、熱輸送媒体の流速FSの変化とを示す。磁束BHは磁場の強さでもある。図示されるように、磁場変調装置14によって、作業室11の一部分、すなわちそこに設けられたMCE素子12に与えられる磁場の強さは周期的に増減されている。さらに、流路切換機構18によって、作業室11の一部分、すなわちそこに設けられたMCE素子12に供給される熱輸送媒体の流れ方向は往復的に切換えられている。往復流の流速変化と高周波成分の流速変化とは、曲線状である。
図示されるように、熱輸送媒体の流速FSは、磁場変化に対応する往復流としての変化に加えて、往復流の基礎周波数より高い周波数をもつ高周波成分を含む。高周波成分の周波数は、往復流の基礎周波数の2倍を上回る。高周波成分は、往復流を維持できるように、基礎周波数よりも充分に高い周波数をもつ。高周波成分は、往復流を維持できる振幅を有する。高周波成分の振幅は、往復流の振幅の1/2以下である。ここで、高周波成分の振幅は、その最高値と最低値との差である。往復流の振幅は、その最高値と最低値との差である。高周波成分は、往復流と同期した位相を有する。高周波成分は、連通室41a、41b、41c、41dの開口端部における形状によって与えられている。
高周波成分は、MCE素子12の表面における熱的な境界層の発生および/または成長を抑制する。これにより、MCE素子12と熱輸送媒体との間に高い熱伝達率が得られる。また、基礎周波数が高く場合であっても、往復流のそれぞれにおいて熱伝達率が高く維持されるから、MHP装置2としての高い性能が得られる。この結果、MHP装置2の小型化、および/または軽量化を図ることができる。
図1に戻り、MHP装置2の作動を説明する。MHP装置2を作動させるために動力源5によって回転軸2aが回される。回転軸2aはポンプ17を作動させる。同時に、回転軸2aは変速機構9を介してロータ7を回転させる。変速機構9は、ロータ7をAMRサイクルを提供するために適した回転数で駆動しながら、ポンプ17を高速回転させることを可能とする。磁場変調装置14は、第1位置にあるMCE素子12に強い磁場を与える。磁場変調装置14は、第2位置にあるMCE素子12に弱い磁場またはゼロ磁場を与える。
ポンプ17は熱輸送媒体を吸入するとともに吐出する。このとき、ポンプ17は回転軸2aに直結されており、回転軸2aと同じ回転数で回される。ポンプ17は、ロータ7より高い回転数で回される。これにより効率的なポンプ17の運転が可能となる。ポンプ17を含む流路に熱輸送媒体が循環的に流される。熱輸送媒体は、ポンプ17から、第2位置にあるひとつの作業室11、熱交換器4、第1位置にあるひとつの作業室11、熱交換器3を順に経由し、ポンプ17へ戻る。
MCE素子12を収容する作業室11を形成するロータ7が回転軸2aによって回転させられる。これにより、MCE素子12は第1位置と第2位置とに移動される。ロータ7は、作業室11内に収容されたMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に運び込み、位置付ける。ロータ7の回転数は、ポンプ17の回転数より低い。ロータ7の回転数は、MCE素子12をAMRサイクルとして機能させるための回転数に設定されている。すなわち、磁場の変化と熱輸送媒体による熱の輸送によって大きい温度差が得られるようにロータ7の回転数は設定されている。例えば、ロータ7の回転数は、MCE素子12の特性と、磁場の強さと、熱輸送媒体による熱輸送性能を考慮して設定される。
素子ベッドを回転させることによって、作業室11における熱輸送媒体の流れ方向が第1方向と第2方向とに切換えられる。流路切換機構18は、第1位置において作業室11に熱輸送媒体が第1方向に流れるように流れ経路と作業室とを接続する。流路切換機構18は、第2位置において作業室11に熱輸送媒体が第1方向とは逆の第2方向に流れるように流れ経路と作業室とを接続する。
ロータ7は、ひとつの観点では磁場変調装置14を提供する。磁場変調装置14は、第1位置と第2位置においてMCE素子12に異なる強さの磁場を与える。素子ベッドを回転させることによって、MCE素子12に与えられる磁場の強さが変化させられる。ロータ7は、MCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に運び込むことによって、MCE素子12に加えられる磁場の強さを変化させる。ロータ7は、別の観点では、流路切換機構18を提供する。ロータ7は、MCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に運び込むことによって、MCE素子12に沿って流れる熱輸送媒体の流れ方向を第1方向と第2方向とに切換える。
ひとつのMCE素子12が第1位置に運び込まれると、MCE素子12に与えられる磁場は強くなり、MCE素子12は発熱する。このとき、熱輸送媒体はMCE素子12に沿って第1方向へ流れる。第1方向は低温端から高温端へ向かう方向である。このため、高温端の温度が上昇する。
ひとつのMCE素子12が第2位置に運び込まれると、MCE素子12に与えられる磁場は弱くなり、MCE素子12は吸熱する。このとき、熱輸送媒体はMCE素子12に沿って第2方向へ流れる。第2方向は高温端から低温端へ向かう方向である。このため、低温端の温度が低下する。
この実施形態によると、一方向へ熱輸送媒体を流すポンプと、ロータ7とが共通の回転軸2aによって回される。この結果、磁場変調装置14と熱輸送装置16との両方を共通の動力源5によって駆動することができる。MHP装置2は、ポンプ17の回転数をロータ7の回転数より高くする変速機構9を備える。この結果、MCE素子12と熱輸送媒体との間の熱交換に必要な時間をロータ7上において提供しながら、MHP装置2に一体化可能な小型のポンプ17によって必要な流量を得ることができる。
この実施形態によると、MCE素子12に印加される磁場の変化が、ロータ7の回転によって機械的に与えられる。同時に、熱輸送媒体の流れ方向の切換えが、ロータ7の回転によって機能する流路切換機構18によって与えられる。しかも、流れ方向の切換えは、機械的な分配機構によって実行される。このため、簡単な構成によって、磁場の変化に同期した流れ方向の切換えが実現される。
車両用空調装置1は、車両に搭載され、車両の乗員室の温度を調節する。2つの熱交換器3、4は、車両用空調装置1の一部を提供する。熱交換器3は、熱交換器4より高温になる高温側熱交換器3である。熱交換器4は、熱交換器3より低温になる低温側熱交換器4である。車両用空調装置1は、高温側熱交換器3、および/または低温側熱交換器4を室内空調のために利用するための空調ダクトおよび送風機などの空気系機器を備える。
車両用空調装置1は、冷房装置または暖房装置として利用される。車両用空調装置1は、室内に供給される空気を冷却する冷却器と、冷却器によって冷却された空気を再び加熱する加熱器とを備えることができる。MHP装置2は、車両用空調装置1における冷熱供給源、または温熱供給源として利用される。すなわち、高温側熱交換器3は上記加熱器として用いることができる。また、低温側熱交換器4は上記冷却器として用いることができる。
MHP装置2が温熱供給源として利用される場合、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室内に供給され、暖房のために利用される。このとき、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器3は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器4は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2が冷熱供給源として利用される場合、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室内に供給され、冷房のために利用される。このとき、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器4は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器3は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2は、除湿装置として利用されることもある。この場合、低温側熱交換器4を通過した空気は、その後に、高温側熱交換器3を通過し、室内に供給される。MHP装置2は、冬期においても、夏期においても、温熱供給源として利用される。
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図5は、この実施形態のブロック図である。上記実施形態では、連通室41a、41b、41c、41dの開口端部における形状、すなわち通路の断面積の変化という機械的手段によって高周波成分が与えられた。これに代えて、この実施形態では、ポンプ17を駆動するための制御装置210によって電気的に高周波成分が与えられる。
制御装置210は、基本駆動部(BSC)10aを有する。基本駆動部10aは、モータ5を直流的に所定の回転数で回転させるための基本信号BSを出力する。基本信号BSは、ポンプ17が発揮すべき流量を実現するように設定することができる。例えば、基本信号BSは、基本回転数とも呼ぶことができる。
制御装置210は、高周波駆動部(CYC)10bを有する。高周波駆動部10bは、モータ5の回転数に高周波の変動を与えるための高周波信号CYを出力する。高周波駆動部10bは、モータ5の回転数を交流的に変動させる。高周波駆動部10bは、モータ5の回転数を周期的に変動させる。高周波信号CYは、高周波成分に相当する周波数と振幅とをもつ。高周波信号CYは、モータ5の回転数の交流的な変動成分に相当するから、変動回転数CYとも呼ぶことができる。高周波信号CYは、MHP装置2の往復流の周波数より高い周波数をもつ。高周波信号CYは、基本信号BSより小さい振幅をもつ。これにより、往復流の流れ方向を維持しながら、両方向の流れのそれぞれに高周波の流速変動が与えられる。
制御装置210は、基本信号BSと高周波信号CYとを加算し、モータ5の駆動電力として出力する加算部10cを有する。制御装置210は、加算部10cによって算出された駆動電力をモータ5に供給する。モータ5が直流モータである場合、制御装置210は、加算部10cの出力に応じてモータ5への印加電圧を設定する。この実施形態では、高周波駆動部10b、モータ5、およびポンプ17が、熱輸送媒体の流れに往復流の周波数より高い周波数をもつ高周波成分を生じさせる流体制御要素を提供する。
図6は、この実施形態の作動を示す。基本信号BSだけがモータ5に与えられると、一定の流量FL0が得られる。この場合、作業室11内における熱輸送媒体は、高周波成分を含まない往復流となる。往復流の流速RFでは、MCE素子12の表面上に熱的な境界層が成長しやすい。
一方、加算部10cの出力BS+CYがモータ5に与えられると、モータ5の回転数は、高周波信号CYに相当する分だけ変動する。モータ5の回転数の変動は、ポンプ17の回転数の変動である。ポンプ17は、その回転数の変動に応じた吐出量の変動を生じる。ポンプ17は、交流的に変動する流量FLを供給する。この場合、作業室11内に流れる熱輸送媒体の流速FSは、高周波成分の変動を含む。高周波成分は、MCE素子12の表面における熱的な境界層の成長を阻害する。これにより、MCE素子12と熱輸送媒体との間において高い熱伝達率が実現される。
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図7は、この実施形態のブロック図である。先の実施形態では、モータ5およびポンプ17の回転数を変動させることによって高周波成分が与えられた。これに代えて、この実施形態では、熱輸送媒体の流路に設けられた可変流路部材317aによって高周波成分が与えられる。
ポンプ17を含む流路には、可変流路部材317aが設けられている。可変流路部材317aは、流路に流れる熱輸送媒体の流速を変動させる。可変流路部材317aは、流路の断面積を変化させる弁装置によって提供することができる。代替的に、可変流路部材317aは、可変の絞り装置、流路の容積を変動させる可変容積装置など多様な機器によって提供することができる。また、可変流路部材317aは、熱輸送媒体の流れの中において振動的な挙動を発生する自励的な振動要素によっても提供することができる。
制御装置310は、可変流路部材317aを駆動するためのアクチュエータ10dを有する。高周波駆動部10bが出力する高周波信号CYは、アクチュエータ10dに与えられる。高周波駆動部10bが出力する高周波信号CYに応じて可変流路部材317aが制御される。可変流路部材317aは、高周波信号CYに対応する流路断面積の変化、すなわち流路抵抗の変化を発生させる。これにより、ポンプ17を含む熱輸送媒体の流路には、高周波信号CYに対応する流速変動が生じる。この実施形態では、高周波駆動部10b、アクチュエータ10d、および可変流路部材317aが、熱輸送媒体の流れに往復流の周波数より高い周波数をもつ高周波成分を生じさせる流体制御要素を提供する。
図8は、この実施形態の作動を示す。この実施形態によると、流体力学的な調節によって、作業室11内に流れる熱輸送媒体の流速FSに高周波成分の変動を与えることができる。
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図9は、この実施形態のブロック図である。先の実施形態では、電気的な制御によって高周波成分が与えられた。これに代えて、この実施形態では、高周波成分に相当する吐出量変動をもつポンプ417によって高周波成分が与えられる。ポンプ417は、例えば、容積型ポンプによって提供することができる。この実施形態では、ポンプ417が、熱輸送媒体の流れに往復流の周波数より高い周波数をもつ高周波成分を生じさせる流体制御要素を提供する。
図10において、ポンプ417が吐出する熱輸送媒体の流量RPは、高周波成分に相当する変動成分を含んでいる。このような変動成分は、吐出脈動、またはリップルとも呼ばれる。この実施形態によると、ポンプ417の構造に起因する回避不能な変動成分によって、作業室11内に流れる熱輸送媒体の流速FSに高周波成分の変動を与えることができる。
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図11は、図3に相当する平面図である。先の実施形態では、流路切換機構18における流路形状の中にひとつだけくびれ部分を設けている。これに代えて、この実施形態では、2つ以上のくびれ部分を有する開口形状を提供する連通室541aが採用される。この開口端部における形状によると、図3により与えられる高周波成分より高い周波数をもつ高周波成分を熱輸送媒体の流速に与えることができる。また、熱輸送媒体が往復流のいずれか一方に流れる期間中に、多数の流速変動を生じさせることができる。
(第6実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図12は、この実施形態の流速FSと磁束密度BHとの関係を示す。先の実施形態では、往復流のための流れ切換えの位相と、磁場の強さを変化させる磁場切換えの位相とは一致している。これに代えて、流れ切換えの位相と、磁場切換えの位相とをずらしてもよい。例えば、磁場切換えの位相より、流れ切換えの位相を遅れさせることができる。このような構成においても、熱輸送媒体の流速における高周波成分は、MCE素子12と熱輸送媒体との間において高い熱伝達率を提供するから、高効率の提供に貢献する。
(第7実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図13は、この実施形態の流速FSを示す。先の実施形態では、熱輸送媒体の流速は曲線状の変化を示す。これに代えて、この実施形態では、熱輸送媒体は矩形波状の変化を示すように制御される。往復流の流速変化と高周波成分の流速変化とは、矩形波状である。矩形波状の流速FSは高効率の提供に貢献する。
(第8実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図14は、この実施形態の流速FSを示す。先の実施形態では、高周波成分の流速の振幅は、往復流の一方における最大流速より小さく設定されている。これに代えて、この実施形態では、高周波成分の流速の振幅は、往復流の一方における最大流速と等しい。この実施形態によると、往復流を維持しながら、一方向の流れにかおける流速の変動幅を大きくすることができる。よって、熱的な境界層の成長をより抑制することができる。
(第9実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図15は、この実施形態の流速FSを示す。先の実施形態では、高周波成分の流速の振幅は、往復流の一方における最大流速以下に設定されている。これに代えて、この実施形態では、高周波成分の流速の振幅は、往復流の一方における最大流速を上回る。この実施形態によると、一方向の流れにかおける流速の変動幅を大きくすることができる。よって、熱的な境界層の成長をより抑制することができる。
(第10実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図16は、この実施形態の流速FSを示す。先の実施形態では、高周波成分は規則的な波形によって与えられる。これに代えて、この実施形態では、高周波成分はランダムな波形によって与えられる。高周波成分は、ランダムに変動する振幅と周波数とを有する。この実施形態でも、MCE素子12の表面における熱的な境界層の成長が抑制され、MCE素子12と熱輸送媒体との間における高い熱伝達率を提供することができる。
(第11実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図17は、この実施形態に係るMHP装置B02を示す。先行する実施形態の要素と同一または対応する要素には同一の符号が付されており、先行する説明を参照することができる。
MHP装置B02は、ロータ7の径方向内側に配置されたステータB08を備える。磁力源は、ロータ7の径方向外側に配置された永久磁石B13aと、ロータ7の径方向内側に配置された永久磁石B13bとによって提供される。ハウジング6はヨークとしてのアウタコアを提供する。ステータB08は、ヨークとしてのインナーコアを提供する。
MHP装置B02は、回転軸2aによって回転させられるポンプB17を有する。ポンプB17は、容積型ポンプである。ポンプB17は、トロコイドギヤポンプなどのギヤポンプによって提供することができる。
MHP装置B02は、ロータ7の径方向内側であって、ロータ7の軸方向の端部に集中して設けられた変速機構B09を備える。変速機構B09は遊星歯車機構である。変速機構B09は減速機構であって、ロータ7を、ポンプB17の回転数より低い回転数で回す。
この実施形態でも流路切換機構18は、熱輸送媒体の流速に高周波成分を与える。これにより、MCE素子12と熱輸送媒体との間に、高い熱伝達率が実現される。
(第12実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図18は、この実施形態に係るMHP装置B02を示す。先行する実施形態の要素と同一または対応する要素には同一の符号が付されており、先行する説明を参照することができる。先行する実施形態では、機械的な流路切換機構18によって作業室11に往復流が供給される。これに代えて、電気的に切換えられる流路切換機構C18によって作業室11に往復流を提供してもよい。流路切換機構C18は、ポンプ17の吐出経路と吸入経路との間に設けられ、MHP装置2の素子ベッドに対して往復流を供給する。流路切換機構C18は、ポンプ17が提供する一方向の流れを往復流に変換する変換器でもある。流路切換機構C18は、複数の電磁弁によって実現することができる。制御装置C10は、流路切換機構C18を駆動する往復制御部(RFC)C10eを備える。この実施形態によると、往復流の切換えを電気的に制御することができる。例えば、往復流の切換タイミングを運転状態に応じてずらすなどの制御が可能となる。
(第13実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。図19は、この実施形態に係る熱機器としてのスターリングエンジンD02を示す。スターリングエンジンD02は、膨張気筒91および圧縮気筒92を有する。膨張気筒91と圧縮気筒92とは、共通のクランク軸93に連結されている。膨張気筒91と圧縮気筒92との間には、それらを連通するように作動流体が流れる通路94が設けられている。通路94には、加熱部95、および冷却部96が設けられている。加熱部95と冷却部96との間には、熱的な再生器(RG)97が配置されている。
再生器97は、往復流熱交換システムとして機能する。この実施形態では、通路94に流れる流体、すなわち熱輸送媒体の流速に高周波成分が与えられる。高周波成分は、多様な手法によって与えることができる。例えば、膨張気筒91と通路94との連通部分、または圧縮気筒92と通路94との連通部分における通路断面積を周期的に変動させることができる。また、図7に例示した可変流路部材317aを通路94に設けてもよい。加熱部95、冷却部96、および再生器97は、熱輸送媒体と熱交換する熱交換部を提供する。
この実施形態によると、加熱部95、冷却部96、および再生器97における熱的な境界層の成長が抑制され、高い熱伝達率が提供される。この結果、熱伝達率が高い往復流熱交換システムを提供することができる。
(第14実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態では、熱輸送媒体として水または不凍液が利用される。不凍液の一例は、凝固点降下剤であるエチレングリコールを水に対して5割程度加えた液体である。これに代えて、以下に述べる液体を熱輸送媒体として利用することができる。この液体は平成26年5月23日に特許出願された特願2014−106783号に開示されており、その記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用される。
熱輸送媒体は、水の凍結温度より低い温度においても凍結しないように不凍化された不凍液である。熱輸送媒体は、車両用のエンジン冷却水として一般的に使用が推奨されているエチレングリコール濃度が50%の水溶液に対して、熱伝導率が高く、および/または粘性係数が低い。熱輸送媒体は、溶媒と1種類の溶質ANFとを有する溶液により構成されている。図20に示されるように、熱輸送媒体の溶質ANFは、第1部位であるヘッドHDMと、第2部位であるテールTLMとを備える分子により構成されている。ヘッドHDMは、熱輸送媒体の温度が予め定めた基準温度以下になった場合に、溶媒の固液界面ICRに選択的に近接する部位である。テールTLMは、ヘッドHDMに接続されるとともに、溶媒に対して疎となる関係を有する部位である。
溶媒として、水を利用することができる。溶質ANFのヘッドHDMとして、第4級アンモニウム基、スルホ基、エステル基、カルボキシル基およびヒドロキル基のうちのいずれかが採用されている。溶質ANFのテールTLMとして、複数の炭素を主鎖とするとともに、各炭素と結合される親水基が4個以下であるものが採用されている。
具体的には、溶質ANFは、ヘッドHDMがトリメチルアンモニウム基であるとともに、テールTLMが炭素数16以下の直鎖状炭化水素基である化合物である。具体的には、溶質ANFは、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(以下、C16TABともいう)である。
代替的に、溶質ANFとして、C16TABの他に、図21に示されるように、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton(登録商標)X−100)、ポリオキシエチレン(25)オクチルドデシルエーテル(エマルゲン(登録商標)2025G)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)80)、ステアリン酸PEG−150、ミリスチルスルホベタイン、コール酸ナトリウムを採用することができる。溶質ANFとして上記に挙げた化合物を採用することで、図21に示されるように、凍結温度を低下させることができる。
上記溶質ANFのうち、C16TABは親水基を有しておらず、ミリスチルスルホベタインは親水基を1個有しており、コール酸ナトリウムは親水基を3個有している。図21の破線で囲まれた領域に示されるように、コール酸ナトリウム、ミリスチルスルホベタイン、C16TABの順に凍結温度が低くなっている。したがって、親水基の数を減らす程、凍結温度を低下させることができる。具体的には、上述したように、溶質ANFのテールTLMに含まれる親水基の個数を4個以下とすることで、凍結温度を低くすることができる。
熱輸送媒体における溶質ANFの濃度は、水に対する溶質ANFの飽和溶解濃度よりも小さい。これにより、溶質ANFが再結晶し、その結晶を核として氷が成長することを抑制できる。さらに、熱輸送媒体における溶質ANFの濃度は、水に対する溶質ANFの臨界ミセル濃度以下にすることで、溶質ANFがミセル化し、そのミセルを核として氷が成長することを抑制できる。
図22に示されるように、水に対する溶質ANFの重量パーセント濃度を上昇させていくと、約0.1重量パーセント濃度までは、濃度が高くなるにつれて、凍結温度が低くなっている。しかしながら、水に対する溶質ANFの重量パーセント濃度が約0.1重量パーセント濃度を超えると、凍結温度が徐々に高くなっている。したがって、本実施形態では、水に対する溶質ANFの濃度を0.1重量パーセント濃度以下としている。
ここで、熱輸送媒体中のエチレングリコール濃度に対する液側熱伝達率比および凍結温度の関係を図23に示す。なお、図23の上段の縦軸に示す液側熱伝達比とは、車両のエンジン冷却液として現在一般的に使用が推奨されているLLC(エチレングリコール濃度:50%)の液側熱伝達率比を100%として表した液側熱伝達率の値である。JIS K 2234にて規定された不凍液の性能を確保するためには、凍結温度が−34℃以下であることが必要である。このため、LLCでは、水に対するエチレングリコール濃度を50%としている。
図23の上段に示されるように、熱輸送媒体中の水に対するエチレングリコール濃度が低くなる程、熱伝達率は向上する。しかしながら、図23の下段に示されるように、熱輸送媒体中の水に対するエチレングリコール濃度が低くなる程、凍結温度が高くなる。
これに対し、熱輸送媒体として、重量パーセント濃度が0.1%であるC16TAB水溶液を採用した場合、凍結温度は−20℃となる。このとき、熱輸送媒体のエチレングリコール濃度は0であるため、熱伝達率を向上させることができる。
しかしながら、上述したように、JIS K 2234にて規定された不凍液の性能を確保するためには、凍結温度を−34℃以下にする必要がある。このため、本実施形態では、熱輸送媒体に、第1溶質であるC16TABの他に、C16TABとは異なるとともに、水と互溶することにより水の凝固点を降下させる第2溶質を加えている。第2溶質としては、アルコール類を採用することができる。本実施形態では、第2溶質として、エチレングリコールを採用している。
図23の下段に示されるように、C16TAB水溶液に対してエチレングリコールを加えることで、凍結濃度を低下させることができる。具体的には、エチレングリコールの熱輸送媒体に対する濃度を、10重量パーセント濃度以上、40重量パーセント濃度以下とすることが望ましい。
より詳細には、熱輸送媒体として、重量パーセント濃度が0.1%であるC16TAB水溶液を採用した場合、エチレングリコールの重量パーセント濃度を約18%とすることで、凍結温度を−34℃とすることができる。このとき、熱伝達率を、LLCに対して約4割向上させることができる。
ところで、図20に示すように、溶質ANFのヘッドHDMが溶媒の固液界面ICRに吸着した際に、テールTLMはヘッドHDMを基点として運動する。このとき、隣り合う溶質分子のテールTLM同士が接触しないようになっている。したがって、溶質分子のテールTLMの長さが長すぎると動径も大きくなり、隣り合う溶質分子同士の距離dが長くなるので、溶媒の氷核の成長を阻害し難くなる。これにより、熱輸送媒体の凍結の進行抑制効果が低下してしまう。
これに対し、上述したように、溶質分子のテールTLMを、炭素数16以下の直鎖状炭化水素基とすることで、テールTLMの長さが長くなりすぎることを抑制できる。このため、隣り合う溶質分子同士の距離dを短くすることができるので、溶媒の氷核の成長を阻害し易くなり、熱輸送媒体の凍結の進行を確実に抑制することができる。
以上説明したように、熱輸送媒体の溶質ANFを、熱輸送媒体温度が基準温度以下になった場合に、溶媒の固液界面ICRに選択的に近接するヘッドHDMと、ヘッドHDMに接続されるとともに、溶媒に対して疎となる関係を有するテールTLMとを備える分子により構成している。これにより、熱輸送媒体の温度が低下して基準温度以下になった場合に、溶質ANFのヘッドHDMが溶液の固液界面に選択的に近接して吸着する。そして、溶媒の固液界面ICRに吸着したヘッドHDMにより、溶媒の氷核(凝固核)の成長が阻害されるため、凍結の進行を抑制できる。さらに、溶媒に対して疎となる関係を有するテールTLMにより、溶媒が固液界面ICRに近づくことが抑制されるので、凍結の進行をより抑制できる。
したがって、熱輸送媒体に凝固点降下剤(エチレングリコール)を含有させなくても、熱輸送媒体の凍結の進行を遅らせる、すなわち熱輸送媒体の凝固点を低下させることができる。このため、熱輸送媒体の熱物性悪化および粘度増加を抑制できる。
また、熱輸送媒体の凝固点を低下させるために、過冷却状態を維持する必要はない。すなわち、熱輸送媒体の溶質ANFは、過冷却を促進させるものではなく、上述したように、氷核の成長を阻害するものである。このため、外乱により熱輸送媒体の過冷却状態が解除されて凍結が進行することはない。
以上のように、熱輸送媒体の熱物性悪化および粘度増大を抑制しつつ、熱輸送媒体の不凍性能を充分に確保することが可能となる。
(他の実施形態)
ここに開示される発明は、その発明を実施するための実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。開示される発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。実施形態は追加的な部分をもつことができる。実施形態の部分は、省略される場合がある。実施形態の部分は、他の実施形態の部分と置き換え、または組み合わせることも可能である。実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示である。開示される発明の技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される発明のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
例えば、上記実施形態では、車両用空調装置にMHP装置2を利用した。これに代えて、住宅用の空調装置に本発明を適用してもよい。また、水を加熱する給湯装置として利用してもよい。また、上記実施形態では、室外の空気を主要な熱源とするMHP装置2を説明した。これに代えて、水、土などの他の熱源を主要熱源として利用してもよい。
また、上記実施形態では、熱磁気サイクル装置の一形態であるMHP装置2を説明した。これに代えて、熱磁気サイクル装置の一形態である熱磁気エンジン装置に本発明を適用してもよい。例えば、上記実施形態のMHP装置2の磁場変化と熱輸送媒体の流れとの位相を調節することにより熱磁気エンジン装置を提供することができる。
また、上記実施形態では、MHP装置2の外部の熱交換器3、4に熱輸送媒体を供給した。これに代えて、一次媒体である熱輸送媒体と、二次媒体とを熱交換する熱交換器をMHP装置2内に設け、二次媒体を低温系統と高温系統とに供給してもよい。
上記実施形態では、容積型のギヤポンプまたは非容積型の遠心式ポンプを採用した。これに代えて、多様な形式のポンプを採用することができる。例えば、ベーン型ポンプ、ターボ型ポンプ、再生ポンプ、ギヤポンプ、レシプロポンプなどを利用することができる。
また、上記実施形態では、回転軸2aとロータ7との間に減速型の変速機構9を設けた。これに代えて、回転軸2aとロータ7とを直結し、回転軸2aとポンプ17との間に増速型の変速機構を設けてもよい。また、回転軸2aとロータとの間、および回転軸2aとポンプとの間の両方に変速機構を設けてもよい。
また、上記実施形態では、作業室11とMCE素子12とを有する素子ベッドが回転する構成を採用した。これに代えて、素子ベッドと磁場変調装置14との間の相対的な回転と、素子ベッドと流路切換機構18との間の相対的な回転とを提供するための多様な構成を採用することができる。例えば、素子ベッドを静止させておき、永久磁石を含む磁場変調装置を素子ベッドに対して相対的に回転移動させてもよい。これにより、ひとつのMCE素子12に与えられる磁場を変動させることができる。また、素子ベッドを静止させておき、連通室41a−41dに相当する開口をもつ分配部材を素子ベッドに対して相対的に回転させてもよい。これにより、ひとつのMCE素子12に沿って流れる熱輸送媒体の流れ方向を第1方向と第2方向とに交互に切換えることができる。
また、上記実施形態では、一方向にのみ熱輸送媒体を流すポンプ17が利用される。これに代えて、往復的に熱輸送媒体を流すポンプを利用してもよい。例えば、ピストンポンプの吸入流れと吐出流れとによって往復流を提供してもよい。
上記実施形態に加えて、MCE素子12などの熱交換部の表面に熱交換を促進するための凹凸を設けてもよい。また、熱交換のために寄与する表面積を増加させるための付加的なフィンなど熱交換部材をMCE素子12の表面に設けてもよい。同様の手法は、スターリングエンジンD02などの熱機器にも適用することができる。
上記実施形態では、熱機器としてMHP装置2とスターリングエンジンD02とを例示した。これらに代えて、ここに開示された往復流熱交換システムは、熱媒体が往復的に流れて熱交換する部分を有する多様な熱機器に適用することができる。例えば、ここに開示された往復流熱交換システムは、特開2013−217280号公報に記載される熱機関に適用されてもよい。