図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
図1において、第1実施形態は熱機器の一例である車両用空調装置10を提供する。車両用空調装置10は、車両に搭載され、車両の乗員室の温度を調節する。車両用空調装置10は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置11を備える。磁気熱量効果型ヒートポンプ装置11はMHP(Magneto-caloric effect Heat Pump)装置11とも呼ばれる。MHP装置11は、熱磁気サイクル装置を提供する。
この明細書においてヒートポンプ装置の語は広義の意味で使用される。すなわち、ヒートポンプ装置の語には、ヒートポンプ装置によって得られる冷熱を利用する装置と、ヒートポンプ装置によって得られる温熱を利用する装置との両方が含まれる。冷熱を利用する装置は、冷凍サイクル装置とも呼ばれることがある。よって、この明細書においてヒートポンプ装置の語は冷凍サイクル装置を包含する概念として使用される。
MHP装置11は、磁気熱量素子12を備える。磁気熱量素子12は、MCE(Magneto-Caloric Effect)素子12とも呼ばれる。MCE素子12は、外部磁場の強弱により発熱と吸熱とを生じる。MCE素子12は、外部磁場の印加により発熱し、外部磁場の除去により吸熱する。MCE素子12は、外部磁場が印加されることによって電子スピンが磁場方向に揃うと、磁気エントロピーが減少し、熱を放出することによって温度が上昇する。また、MCE素子12は、外部磁場が除去されることによって電子スピンが乱雑になると、磁気エントロピーが増加し、熱を吸収することによって温度が低下する。MCE素子12は、常温域において高い磁気熱量効果を発揮する磁性体によって作られている。例えば、ガドリニウム系材料、またはランタン−鉄−シリコン化合物を用いることができる。また、マンガン、鉄、リンおよびゲルマニウムの混合物を用いることができる。
ひとつのMCE素子12とそれに関連する要素は、磁気熱量素子ユニットを構成する。磁気熱量素子ユニットは、MCD(Magneto-Caloric effect Device)ユニットとも呼ばれる。MHP装置11は、MCE素子12の磁気熱量効果を利用する。MHP装置11は、MCE素子12をAMR(Active Magnetic Refrigeration)サイクルとして機能させるための磁場変調装置13と熱輸送装置14とを備える。
磁場変調装置13は、MCE素子12に外部磁場を与えるとともに、その外部磁場の強さを増減させる。磁場変調装置13は、MCE素子12を強い磁界内に置く励磁状態と、MCE素子12を弱い磁界内またはゼロ磁界内に置く消磁状態とを周期的に切換える。磁場変調装置13は、MCE素子12が強い外部磁場の中に置かれる励磁期間、およびMCE素子12が励磁期間より弱い外部磁場の中に置かれる消磁期間を周期的に繰り返すように外部磁場を変調する。磁場変調装置13は、外部磁場を生成するための磁力源、例えば永久磁石、または電磁石を備える。
熱輸送装置14は、MCE素子12が放熱または吸熱する熱を輸送するための熱輸送媒体を流すための流体機器を備える。熱輸送装置14は、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体をMCE素子12に沿って流す装置である。熱輸送装置14は、MCE素子12に高温端と低温端とを生成するように、熱輸送媒体を流す。
MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体は一次媒体と呼ばれる。一次媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。熱輸送装置14は、磁場変調装置13による磁場の増減に同期して熱輸送媒体を往復的に移動させる。熱輸送装置14は、熱輸送媒体を流すためのポンプを含むことができる。熱輸送装置14は、一次媒体を流すためのポンプ41、42を備える。ポンプ41、42は、ひとつのMCE素子12に関して一次媒体の往復流れを供給する。ポンプ41、42は、MCE素子12の両端に配置されている。ポンプ41、42は、相補的に吸入行程と吐出工程とを実行するように構成されている。
MHP装置11は、動力源としてのモータ(MTR)15を備える。モータ15は、磁場変調装置13の動力源である。モータ15は、熱輸送装置14の動力源である。MHP装置11の動力源として設けられたモータ15は、車載の電池によって駆動される。
モータ15と磁場変調装置13とは、MCE素子12へ外部磁場を印加する状態と、MCE素子12から外部磁場を除去した状態(外部磁場を印加しない状態)との間での周期的な交互切換を生じさせる。モータ15は、熱輸送装置14のポンプ41、42を駆動する。これにより、モータ15とポンプ41、42とは、ひとつのMCE素子12において、一次媒体の往復的な流れを生じさせる。ポンプ41、42は、MCE素子12をAMRサイクルとして機能させるための熱輸送媒体の往復流をMCDユニット内に生じさせる。
MHP装置11は、位相調節器71、72を備える。位相調節器71、72は、位相調節部を提供する。位相調節器71、72は、磁場変調装置13が発生する磁場変化の位相と熱輸送装置14が発生する往復流の位相との間の位相差を調節する。位相調節器71、72は、磁場変調装置13によって発生される磁場の周期的変化と、熱輸送装置14によって発生される熱輸送媒体の流れ方向の周期的変化との間の位相差を調節する。位相調節器71、72は、磁場変調装置13と熱輸送装置14との間に設けられている。位相調節器71、72は、磁場変調装置13と熱輸送装置14との間の機械的な連動関係における位相差を調節する。位相調節器71、72は、回転方向に関する機械的な位相差を調節する。この実施形態では、熱輸送装置14がふたつのポンプ41、42を備えるから、ふたつの位相調節器71、72が用いられている。
ひとつの位相調節器71は、磁場変調装置13のための回転軸と熱輸送装置14との間に設けられている。位相調節器71は、磁場変調装置13のための回転軸とポンプ41との間に設けられている。ひとつの位相調節器72は、磁場変調装置13のための回転軸と熱輸送装置14との間に設けられている。位相調節器72は、磁場変調装置13のための回転軸とポンプ42との間に設けられている。
車両用空調装置10は、MHP装置11によって得られた高温を輸送する高温系統16を備える。高温系統16は、MHP装置11によって得られた高温を利用する熱機器でもある。MHP装置11は、MHP装置11によって得られた低温を輸送する低温系統17を備える。高温系統16は、MHP装置11によって得られた低温を利用する熱機器でもある。高温系統16と低温系統17とは、熱輸送媒体を一次媒体とし、この一次媒体と二次媒体との間の熱交換を提供する熱交換器51、56を備える。熱交換器51、56の構成は、参照によって導入することができる特開2014−62682号公報にも開示されている。
車両用空調装置10は、制御装置(CNTR)18を備える。制御装置18は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置18は、処理装置(CPU)と、プログラムを記憶する記憶媒体としてのメモリ(MMR)とを有する。制御装置18は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクによって提供されうる。プログラムは、制御装置18によって実行されることによって、制御装置18をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置18を機能させる。制御装置18が提供する機能的ブロックは、意図的に手段と特定される場合にのみ手段と扱われるべきである。
MHP装置11は、複数のセンサを備える。センサは、検出対象として意図された物理量を検出し、検出された物理量を示す電気信号を出力する。センサは、制御装置18と電気的に接続されており、出力信号は、制御装置18に入力される。
MHP装置11は、少なくともひとつの流れセンサを備える。MHP装置11は、複数のMCE素子12のそれぞれ、すなわち複数の作業室のそれぞれに対応して、複数の流れセンサを備えることができる。また、MHP装置11は、代表的なMCE素子12、すなわち代表的な作業室における流れを検出するために、ひとつの流れセンサを備えることができる。
図中には、ふたつの流れセンサ31、32が例示されている。流れセンサ31、32は、熱輸送媒体の往復流の方向を示す電気信号を出力する。流れセンサ31、32は、順方向の流れFNと、逆方向の流れFMとを示す異なる電気信号を出力する。流れセンサ31、32は、熱輸送媒体の流れ方向の切り替わりタイミングを検出するために利用される。流れセンサ31、32は、熱輸送媒体の流れ方向の転流タイミングを検出するために利用される。流れセンサ31、32は、往復流の位相を検出するために利用される。言い換えると、流れセンサ31、32は、往復流の位相を取得するために利用される。
MHP装置11は、少なくともひとつの位相センサを備える。図中には、ふたつの位相センサ33、34が例示されている。位相センサ33、34は、位相調節器71、72の入出力間における回転方向に関する位相差を示す電気信号を出力する。位相調節器71、72とは、入力軸の回転位相を検出する入力回転センサと、出力軸の回転位相を検出する出力回転センサとを含む。これら入力回転センサからの出力と、出力回転センサからの出力との差によって位相調節器71、72の位相差を示すことができる。
位相調節器71、72は、磁場変調装置13と熱輸送装置14との間における、回転方向に関する機械的な位相差を調節する。よって、位相センサ33、34は、磁場変調装置13と熱輸送装置14との間における、回転方向に関する機械的な位相差を検出している。すなわち、位相センサ33、34は、位相調節器71、72によって生成される機械的な位相差を検出している。この機械的な位相差は、位相調節器71、72をフィードバック制御するために利用される。
MHP装置11は、少なくともひとつの温度センサ35を備える。温度センサ35は、MHP装置11の温度を示す電気信号を出力する。温度センサ35は、MHP装置11の高温端の温度または低温端の温度を検出するために利用される。温度センサ35は、熱輸送媒体の中における気泡の発生量と相関関係をもつ変数としての温度を検出ために利用される。温度センサ35は、熱輸送媒体の状態を観測するセンサのひとつである。多くの場合、高温端の温度は、気泡の発生量と強い相関をもつ。温度センサ35は、熱輸送媒体の温度、またはMHP装置11が設置された環境の温度、例えば車両のエンジンルームの温度を検出し、検出された温度を示す電気信号を出力するように構成されてもよい。
MHP装置11は、少なくともひとつの圧力センサ36を備える。圧力センサ36は、MHP装置11における熱輸送媒体の圧力を示す電気信号を出力する。圧力センサ36は、MHP装置11の高温端または低温端における熱輸送媒体の圧力を検出するために利用される。圧力センサ36は、熱輸送媒体の中における気泡の発生量と相関関係をもつ変数としての圧力を検出ために利用される。圧力センサ36は、熱輸送媒体の状態を観測するセンサのひとつである。多くの場合、作業室26の中でも熱輸送媒体の圧力が低下する部位の圧力は、気泡の発生量と強い相関をもつ。
制御装置18は、車両用空調装置10の制御可能な複数の要素を制御する。例えば、制御装置18は、MHP装置11の作動と停止とを少なくとも切換えるようにモータ15を制御する。制御装置18は、MHP装置11をヒートポンプとして機能させるように、モータ15を経由して、磁場変調装置13と熱輸送装置14とを制御する。制御装置18は、MCE素子12の両端に高温端と低温端とを発生させるように、モータ15を経由して、磁場変調装置13と熱輸送装置14とを制御する。
図2において、MHP装置11が図示されている。一群のMCE素子12は、MCE素子12の長手方向、すなわち一次媒体の流れ方向に沿って配置された複数の部分を有する。複数の部分のそれぞれを構成する材料は、キュリー温度が異なる。複数の部分は、異なる温度帯において高い磁気熱量効果(ΔS(J/kgK))を発揮する。高温端に近い部分は、定常運転状態において高温端に現れる温度の近傍において高い磁気熱量効果を発揮する材料組成を有する。中温部に近い部分は、定常運転状態において中温部に現れる温度の近傍において高い磁気熱量効果を発揮する材料組成を有する。低温端に近い部分は、定常運転状態において低温端に現れる温度の近傍において高い磁気熱量効果を発揮する材料組成を有する。
MCE素子12のそれぞれの部分が高い磁気熱量効果を発揮する温度帯は、高効率温度帯と呼ばれる。複数の部分は、高温端と低温端との間において高効率温度帯が並ぶように直列に配列されている。定常運転において高温端と低温端との間に作り出される定常温度差を複数の部分が分担する。これにより、それぞれの部分において高い効率が得られる。言い換えると、MCE素子12は、定常温度差が得られるときに、それぞれの素子ユニットが所定の閾値を上回る磁気熱量効果を発揮するように調節されている。
熱輸送装置14は、磁場変調装置13による外部磁場の変化に同期して、熱輸送媒体の往復的な流れFM、FNを発生させる。モータ15は、磁場変調装置13を提供するロータコア24を回転させる。
ポンプ41、42は、容積型の往復流ポンプである。ポンプ41、42は、斜板型のピストンポンプである。ポンプ41、42は、多気筒のアキシャルピストンポンプである。ひとつのMCE素子12に対応付けられたふたつの気筒は、相補的に作動する。これにより、ひとつのMCE素子12の長手方向に沿って流れる一次媒体の往復流が提供される。この実施形態では、MHP装置11は、熱的に並列接続された複数のMCE素子12を備える。
MHP装置11は、円筒状または円柱状と呼びうるハウジング21を備える。ハウジング21は、その中心軸上に回転軸22を回転可能に支持する。回転軸22は、モータ15の出力軸に連結されている。ハウジング21は、回転軸22の周囲に、磁場変調装置13を収容するための収容室23を区画形成している。収容室23は、円柱状の空間である。回転軸22には、ロータコア24が固定されている。ロータコア24は、ハウジング21とともに、磁束を通すためのヨークを提供する。ロータコア24は、その周方向に沿って磁束を通しやすい範囲と、磁束を通しにくい範囲とを形成するように構成されている。ロータコア24には、永久磁石25が固定されている。永久磁石25は、部分円筒状であり、その断面が扇型である。永久磁石25は、ロータコア24の外周面に固定されている。
ロータコア24と永久磁石25とは、それらの周囲に、永久磁石25が提供する外部磁場が強くなる領域と、永久磁石25が提供する外部磁場が弱くなる領域とを形成する。外部磁場が弱くなる領域では、外部磁場がほぼ除去された状態が提供される。ロータコア24と永久磁石25とは、回転軸22の回転に同期して回転する。よって、外部磁場が強い領域と、外部磁場が弱い領域とは、回転軸22の回転に同期して回転する。この結果、ロータコア24と永久磁石25との周囲の一点においては、外部磁場が強く印加される期間と、外部磁場が弱くなりほぼ除去された期間とが繰り返して生じる。したがって、ロータコア24と永久磁石25とは、外部磁場の印加および除去を繰り返す磁場変調装置13を提供する。ロータコア24と永久磁石25とは、MCE素子12への外部磁場の印加と除去とを切換える装置を提供する。なお、磁場の語は磁界と読み替えることができる。
ハウジング21は、少なくともひとつの作業室26を区画形成している。作業室26は、収容室23に隣接して設けられている。ハウジング21は、収容室23の径方向外側に、等間隔に配置された複数の作業室26を区画形成している。この実施形態では、ひとつのハウジング21は、10の作業室26を区画形成している。作業室26のそれぞれは、ハウジング21の軸方向に沿って長手方向を有する柱状空間を形成している。ひとつの作業室26は、ポンプ41のひとつの気筒と、ポンプ42のひとつの気筒とに対応するように設けられている。ひとつの作業室26の両側に、ふたつの気筒が配置されている。
作業室26は、一次媒体を流すための一次通路を提供する。ハウジング21は、一次媒体を流すための複数の一次通路を区画形成する通路部材でもある。作業室26内には、その長手方向に沿って一次媒体が流れる。一次媒体は、作業室26内を長手方向に沿って往復するように流れる。
さらに、作業室26は、MCE素子12を収容する収容室を提供する。ハウジング21は、作業室26が形成された容器を提供している。作業室26の中には、磁気熱量効果を有する磁気作業物質としてのMCE素子12が配置されている。
ひとつのMCE素子12は、MHP装置11の軸方向に沿って長手方向を有する棒状に形成されている。MCE素子12は、作業室26内を流れる一次媒体と十分に熱交換できる形状に形成されている。それぞれのMCE素子12は、素子ベッドとも呼ばれる。
MCE素子12は、磁場変調装置13によって印加、または除去される外部磁場の影響下に置かれる。すなわち、回転軸22が回転すると、MCE素子12を磁化させるための外部磁場が印加された状態と、MCE素子12から上記外部磁場が除去された状態とが交互に切換えられる。
高温系統16は、一次媒体と二次媒体との間の熱交換を提供する熱交換器51を備える。二次媒体は、高温系統16において熱を輸送するために利用される熱輸送媒体である。二次媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。高温系統16は、二次媒体が循環的に流される通路52を備える。高温系統16は、二次媒体と他の媒体との間の熱交換を提供する熱交換器53を備える。例えば、熱交換器53は、二次媒体と空気との熱交換を提供する。高温系統16は、二次媒体を流すためのポンプ54を備える。ポンプ54は、二次媒体が熱交換器51、通路52、および熱交換器53を循環的に流れるように二次媒体を流す。高温系統16は、MHP装置11の高温端から熱を持ち去り、高温端を冷却する機器でもある。
低温系統17は、一次媒体と二次媒体との間の熱交換を提供する熱交換器56を備える。二次媒体は、低温系統17において熱を輸送するために利用される熱輸送媒体である。二次媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。低温系統17は、二次媒体が循環的に流される通路57を備える。低温系統17は、二次媒体と他の媒体との間の熱交換を提供する熱交換器58を備える。例えば、熱交換器58は、二次媒体と空気との熱交換を提供する。低温系統17は、二次媒体を流すためのポンプ59を備える。ポンプ59は、二次媒体が熱交換器56、通路57、および熱交換器58を循環的に流れるように二次媒体を流す。低温系統17は、MHP装置11の低温端に熱を持ち込み、低温端を加熱する機器でもある。
熱交換器51、56は、複数のMCE素子12の両端に、対称的に配置されている。熱交換器51、56は、互いに対応する構成要素を有している。以下では、熱交換器56が詳細に説明されている。この説明は、熱交換器51にも適用することができる。熱交換器56は、ボディ61を有する。ボディ61は、複数の部材を組み合わせることによって形成されている。
ボディ61は、一次媒体を流すための複数の一次通路62を区画形成する通路部材である。複数の一次通路62は、複数の作業室26の延長上に位置している。複数の一次通路62は、熱交換器56に周方向に沿って等間隔に配置されている。ボディ61は、二次媒体を流すための複数の二次通路63を区画形成する通路部材でもある。ボディ61は、一次媒体と二次媒体との間の熱交換を促進するために、それらの間に高い熱伝達率を実現できるように形成されている。この実施形態では、ボディ61は、アルミニウム系の金属製である。ボディ61は、銅系の金属製、または樹脂材料製でもよい。
図3は、図2のIII−III線における熱交換器56の断面を示す。図2は、図3のII−II線における断面である。ひとつの一次通路62は、ひとつの作業室26に対応している。図示の例では、10個の一次通路62が設けられている。一次通路62は、円柱状の熱交換器56を軸方向に沿って貫通している。一次通路62内には、熱交換に寄与する広い面積を提供するために、複数のフィンが配置されている。
熱交換器56は、二次媒体が流れるための二次通路63を有する。ボディ61は、二次通路63を区画形成している。二次通路63は、熱交換器56の周方向に沿って延びている。二次通路63は、入口から出口に向かう一方向の通路である。二次通路63は、熱交換器56の周方向に沿って一方向に延びる通路である。二次通路63は、複数の一次通路62の近傍を通過している。二次通路63は、複数の一次通路62の近傍を順に通過している。二次通路63は、複数の一次通路62の近傍を一度ずつ通過する。二次通路63は、円柱状の熱交換器56の径方向外側部分を一周するように形成されている。二次通路63内には、熱交換に寄与する広い面積を提供するために、複数のフィンが配置されている。
図2に戻り、ふたつの熱交換器53、58は、車両用空調装置10の一部を提供する。熱交換器53は、熱交換器58より高温になる高温側熱交換器である。熱交換器53は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器58は、熱交換器53より低温になる低温側熱交換器である。熱交換器58は、室外熱交換器とも呼ばれる。車両用空調装置10は、高温側の熱交換器53、および/または低温側の熱交換器56を室内空調のために利用するための空調ダクトおよび送風機などの空気系機器を備える。
車両用空調装置10は、冷房装置または暖房装置として利用される。車両用空調装置10は、室内に供給される空気を冷却する冷却器と、冷却器によって冷却された空気を再び加熱する加熱器とを備えることができる。MHP装置11は、車両用空調装置10における冷熱供給源、または温熱供給源として利用される。すなわち、熱交換器53は上記加熱器として用いることができる。また、熱交換器58は上記冷却器として用いることができる。
MHP装置11が温熱供給源として利用されるとき、熱交換器53を通過した空気は車両の室内に供給され、暖房のために利用される。このとき、熱交換器58を通過した空気は車両の室外に排出される。MHP装置11が冷熱供給源として利用されるとき、熱交換器58を通過した空気は車両の室内に供給され、冷房のために利用される。このとき、熱交換器53を通過した空気は車両の室外に排出される。MHP装置11は、除湿装置として利用されることもある。この場合、熱交換器58を通過した空気は、その後に、熱交換器53を通過し、室内に供給される。MHP装置11は、冬期においても、夏期においても、温熱供給源として利用される。
図1に戻り、制御装置18は、位相調節器71、72を制御する。制御装置18は、磁場変調装置13による磁場変化の磁場位相と熱輸送装置14による往復流の流れ位相との間の位相差が目標位相差に一致するように位相調節器71、72を制御する。モータ15と磁場変調装置13、例えばポンプ42とは、直結されている。よって、磁場変調装置13による磁場変化の磁場位相は、モータ15の回転位置として観測することができる。この実施形態では、位相センサ33、34からの電気信号に基づいて、磁場変調装置13による磁場変化の磁場位相を観測することができる。
磁場変調装置13による磁場変化の磁場位相は、磁場の強さが、MCE素子12に所定能力を上回る磁気熱量効果を発揮させることができる基準の磁場の強さと交差するタイミングによって示される。
往復流の流れ位相は、流れセンサ31、32からの電気信号に基いて観測することができる。往復流の流れ位相は、往復流の転流タイミングによって示される。
制御装置18は、複数の機能ブロック18a−18cを有する。機能ブロック18aは、熱輸送装置14による往復流の流れ位相を取得する流れ位相取得部を提供する。流れ位相は、流れ位相を直接的に検出すること、すなわち観測することによって取得することができる。また、流れ位相は、流れ位相と相関をもつ物理量に基いて推定すること、すなわち推測することよっても取得することができる。この実施形態では、流れセンサ31、32から出力された電気信号に基いて、流れ位相が検出される。
機能ブロック18bは、取得された取得流れ位相が、MHP装置11が高い効率で機能できる目標位相と一致しているか否かを判定する位相判定部を提供する。ここでは、取得流れ位相と、磁場変調装置13による磁場変化の磁場位相との間の位相差が利用される。取得流れ位相に基いて算出される位相差は、実位相差と呼ぶことができる。実位相差は、熱輸送媒体の圧縮性、熱輸送媒体の漏れなど多様な要因に起因して、機械的構成に基いて実現されるべき計算位相差からずれている。多くの場合、実位相差は、計算位相差より遅れている。言い換えると、磁場変化の位相に対して往復流の位相は、遅れている。機能ブロック18a、18bにより、位相差を取得するための位相差取得部が提供される。
MHP装置11がAMRサイクルとして高い効率を発揮するには、取得位相差は、所定の遅れ量である目標位相差であることが望ましい。目標位相差は、流れ位相が磁場位相に対して遅れた遅れ位相差である。ところが、上述の気泡などに起因して、実位相差は、目標位相差からずれる。取得位相差は、目標位相差よりさらに遅れた遅れ位相差である。よって、機械的な構成に基く計算によって位相調節器71、72を制御するだけでは、実位相差を目標位相差に一致させることは困難である。そこで、この実施形態では、実位相差が、目標位相差と一致するように位相調節器71、72が制御される。
機能ブロック18cは、取得された流れ位相に基いて算出される実位相差が、目標位相差に接近するように、そして一致するように、位相調節器71、72を制御する制御部を提供する。機能ブロック18cは、取得された実位相差を、目標位相差に一致させるように位相調節器71、72をフィードバック制御するフィードバック制御部でもある。実位相差と目標位相差との差が、所定の許容範囲内にある場合、実位相差は目標位相差に一致していると評価することができる。
図4において、位相調節器71、72の断面が図示されている。位相調節器71、72は、ベーン型の位相調節器である。位相調節器71と位相調節器72とは、同じ構造である。以下、位相調節器71について説明する。位相調節器71は、ハウジング73と、ロータ74とを有する。ハウジング73は、内部にロータ74を収容する。ハウジング73とロータ74とは、それらの間に、作動流体のための容積室75、76を区画形成する。容積室75、76は、ハウジング73の内側に設けられたシュー部分と、ロータ74の外側に設けられたベーン部分との間に周方向に沿って広がっている。
位相調節器71は、回転可能な入力軸と回転可能な出力軸との間の回転方向に関する位相差を調節する。ハウジング73は、入力軸と出力軸との一方に連結されている。ロータ74は、入力軸と出力軸との他方に連結されている。例えば、ハウジング73は、ポンプ41に連結されており、ロータ74はロータコア24に連結されている。容積室75、76の容積は可変である。容積室75、76の容積は、ハウジング73とロータ74との間の位相差に応じて変化する。
ハウジング73とロータ74とが、回転方向RTへ向けて回転する場合、ハウジング73に対して、ロータ74は、進み方向ADVと遅れ方向RETとへ相対回転することができる。例えば、第1の容積室75(進角室とも呼ばれる)の容積が減少し、第2の容積室76(遅角室とも呼ばれる)の容積が増加する場合、ハウジング73に対するロータ74の位相は進み方向ADVへ変化する。第1の容積室75の容積が増加し、第2の容積室76の容積が減少する場合、ハウジング73に対するロータ74の位相は遅れ方向RETへ変化する。このように、位相調節器71は、進み方向ADVと遅れ方向RETとに対応して設けられ、作動流体が入れられた複数の容積室75、76を区画形成する部材としてハウジング73とロータ74とを備える。
位相調節器71は、容積室75、76への作動流体の供給と、容積室75、76からの作動流体の排出とを制御する流体機械(FD)78を有する。流体機械78は、ポンプと制御弁とによって提供することができる。
図5において、流れセンサ31、32の断面が図示されている。流れセンサ31、32は、熱輸送媒体の流れ方向を直接的に観測する。流れセンサ31、32は、光学式の流れ方向センサとも呼ぶことができる。流れセンサ31と流れセンサ32とは、同じ構造である。以下、流れセンサ31について説明する。流れセンサ31は、熱輸送媒体の流れに応じて移動するフロート37を備える。フロート37は、作業室26内に配置されている。流れセンサ31は、フロート37の位置を光学的に検出する光学センサ38、39を有する。光学センサ38がフロート37を検出するとき、熱輸送媒体の流れ方向は順方向FNである。光学センサ39がフロート37を検出するとき、熱輸送媒体の流れ方向は逆方向FMである。
図6において、制御装置18は、位相制御処理190を実行する。位相制御処理190は、冷凍機としてのMHP装置11の出力が最大化されるように、位相調節器71、72を制御する。
図7は、磁場MGの波形と、流れFLの波形とを示す。図8は、位相遅れRTDに対するMHP装置11の出力Qを示している。実際の磁場波形MGrに対して、流れ波形FLtが目標位相差PHtだけ遅れているときに、能力Qは、最大値となる。目標位相差PHtは、MCE素子12に、AMRサイクルとしての高い能力を発揮させることができる位相差である。目標位相差PHtは、磁場の強さがMCE素子12に所定の磁気熱量効果を発揮させる水準MGthに到達したタイミングと、熱輸送媒体の流れが転流するタイミングとの位相差である。
熱輸送媒体の中に気泡が発生すると、気泡の圧縮性に起因して、流れの位相は遅れる。気泡が発生した場合の実際の流れ波形FLrは、理想的な流れ波形FLtより誤差位相差PHeだけ遅れる。このとき、実際の磁場波形MGrに対して、実際の流れ波形FLrは、取得された取得位相差PHrだけ遅れている。
能力Qを最大値の近傍に維持するには、位相遅れRTDが所定の目標範囲PHpの中に維持される必要がある。取得位相差PHrが、目標位相差PHtを含む目標範囲PHpの中に制御されることによって、閾値Qth以上の高い能力が発揮される。
制御装置18は、熱輸送媒体の中に気泡が発生しても、磁場波形MGrと流れ波形FLrとの間に観測され、取得される取得位相差PHrが、目標位相差PHtを含む目標範囲PHpの中に制御されるように、位相調節器71、72を制御する。
図6に戻り、ステップ191において、制御装置18は、流れセンサ31、32によって熱輸送媒体の流れを観測することにより、流れセンサ31、32の出力に基いて流れ位相を検出する。ステップ191は、流れ位相を取得する機能ブロック18aを提供する。ステップ191は、熱輸送媒体の往復流の流れ位相を取得する流れ位相取得部を提供する。流れ位相は、熱輸送媒体の実際の流れを観測することによって取得される。よって、気泡が発生していても、気泡に起因して遅れた流れ位相が観測される。
ステップ192において、制御装置18は、位相遅れ量が目標値に一致しているか否かを判定する。ステップ192は、位相遅れが適正であるか否かを判定する機能ブロック18bを提供する。ステップ192は、外部磁場の変化の磁場位相と、流れ位相取得部によって取得された取得流れ位相とに基いて取得位相差PHrを取得する位相判定部を提供する。ここでは、磁場位相は、モータ15と磁場変調装置13との機械的な連動関係に基いて固定的に特定することができる。ステップ192では、取得位相差PHrが、目標範囲PHpの中にあるか否かが判定される。
ステップ193において、制御装置18は、位相調節器71、72を制御する。制御装置18は、取得された取得位相差PHrが、望ましい目標位相差PHtに向けて接近するように位相調節器71、72を制御する。制御装置18は、取得位相差PHrを目標位相差PHtを含む目標範囲PHpの中に制御する。制御装置18は、取得位相差PHrを目標範囲PHpの中に維持するように位相調節器71、72を制御する。制御装置18は、取得位相差PHrと目標位相差PHtとの間の誤差位相差PHeを減少させるように位相調節器71、72を制御しているともいえる。位相調節器71、72の制御は、フィードバック制御によって提供されている。ステップ193は、位相変換器を制御する機能ブロック18cを提供する。ステップ193は、制御部を提供する。ステップ193では、複数の容積室75、76の容積比を調節することにより位相差が制御される。
これにより、位相調節器71、72は、磁場波形MGrと流れ波形FLrとの間の位相差が目標値PHtに一致するように制御される。なお、この実施形態では、一致とは、磁場波形MGrと流れ波形FLrとの間の位相差が目標値PHtに数学的に一致する状態と、磁場波形MGrと流れ波形FLrとの間の位相差が目標値PHtを含む範囲PHpの中にある状態とを含む。
以上に述べた実施形態は、熱輸送媒体の中のガス発生に起因する往復流の位相ずれ(位相遅れ)を取得する。さらに、取得された位相ずれに応じて、磁場変調装置13と熱輸送装置14との間の位相差が調節される。この調節は、MHP装置11の出力を最大値の近傍に維持するように実行される。この結果、MHP装置11は、熱輸送媒体の中に気泡が発生するなど、熱輸送媒体の流れに変化を生じさせる外乱が発生しても、高い能力を維持することができる。位相遅れの判定は、センサによって観測された流れ波形に基いて実行される。よって、気泡などの外乱に起因する流れ波形の位相遅れ量が正確に検出される。この結果、望ましい位相差への修正が正確に実行される。位相差の調節は、位相調節器71、72によって実行される。この実施形態によると、磁場変化と往復流との位相差を、望ましい状態に調節可能な熱磁気サイクル装置が提供される。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、熱輸送媒体の流れを流れセンサ31、32によって観測することによって流れ位相が取得されている。これに代えて、この実施形態では、気泡の発生、すなわち熱輸送媒体の中におけるガス成分の量を予測することにより、流れ位相が取得される。
図9に図示されるように、ステップ291において、制御装置18は、流れ位相を推定する。流れ位相は、熱輸送媒体の流方向を観測することなしに、推定される気泡量と、熱輸送装置14が発生する流れ波形の基準位相とから推定される。熱輸送媒体の中に発生する気泡には、飽和圧力および/または飽和温度を下回ることによって発生する気泡と、キャビテーションによって発生する気泡とが含まれる。この実施形態では、飽和条件から推定される気泡量Gvsと、キャビテーションから推定される気泡量Gvcとに基いて、全気泡量Gvが推定される。
図10は、温度TP(℃)および圧力Pr(MPa)に基づいて推定される気泡量Gvs(TP、Pr)(m3)を示すグラフである。温度TPは、MHP装置11における最も気泡が発生しやすい部位の温度である。圧力Prは、MHP装置11における最も気泡が発生しやすい部位の圧力である。この実施形態では、MHP装置11は、圧力センサを備える。気泡量Gvsは、熱輸送媒体の中に溶存している気体成分が、圧力の低下および/または温度の低下によって発生させる気泡量を示している。
図11は、圧力Pr(MPa)および温度TP(℃)に基いて推定される気泡量Gvc(TP、Pr)(m3)を示すグラフである。作業室26の形状に起因して、熱輸送媒体はキャビテーションを生じ、気泡を発生させる場合がある。気泡量Gvcは、熱輸送媒体の中にキャビテーションによって発生する気泡量を示している。
図12は、気泡量Gvに対する流れ波形の位相遅れ量RTDを示すグラフである。気泡量Gvは、気泡量Gvsと気泡量Gvcとの和である。気泡量Gvが多いほど、位相遅れ量は大きくなる。
ステップ291は、流れ位相取得部を提供する。この実施形態では、気泡量Gvsと気泡量Gvcとの両方が利用される。これに代えて、気泡量Gvsおよび気泡量Gvcのいずれか一方だけが利用されてもよい。ステップ291は、温度センサ35および/または圧力センサ36の出力に基いて流れ位相を推定する。
この実施形態でも、磁場変化と往復流との位相差を、望ましい状態に調節可能な熱磁気サイクル装置が提供される。しかも、流れ波形の位相差は、流れを直接的に観測することなく、関連物理量から推定される。よって、比較的簡単な構成によって望ましい位相差を実現することができる。
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、位相調節器71、72の容積室75、76の容積を調節することにより位相差が調節される。これに代えて、この実施形態では、容積室75、76の中に、意図された容量の気泡を発生させることにより、位相差を望ましい位相差に調節するためのダンピング特性が付与される。この実施形態では、少なくともひとつの容積室75、76の中に、意図された容量の気泡が注入される。
図13に図示されるように、ステップ393では、容積室75、76に意図された気泡を供給することによって位相差が調節される。よって、この実施形態における制御部は、位相調節器71、72にダンピング機能を与えて位相差を制御する。
図14に図示されるように、位相調節器71、72は、第1の容積室75に気泡を注入する気泡源(BS)379を備える。気泡源379は、容積室75に気泡を注入することによりダンピング機能を与える気泡注入器を提供する。制御部は、気泡注入器を制御することにより位相差を制御する。気泡源379によって第1の容積室75に気泡が注入されると、気泡の圧縮性によってロータ74は進み方向ADVへ回転しやすくなる。気泡源379は、容積室75、76への気泡の注入と、気泡の除去とを実行可能である。気泡源379は、第1の容積室75と第2の容積室76との両方に気泡を注入可能に構成されてもよい。気泡源379は、第2の容積室76だけに気泡を注入可能に構成されてもよい。
気泡量は、誤差位相差PHeに応じて設定される。気泡は、位相調節器71、72に、誤差位相差PHeに相当するダンピング機能を追加する。この結果、位相調節器71、72は、熱輸送媒体の中における気泡の発生に起因する位相遅れを補償するように進み方向ADVへ回転する。これにより、磁場変調装置13と熱輸送装置14との間の位相差は、望ましい位相差(目標位相差PHt)に向けて接近する。この実施形態によると、比較的簡単な構成によって望ましい位相差を実現することができる。
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、容積室75、76に気泡が注入される。これに代えて、この実施形態では、作動流体に気泡を発生させるように作動流体の温度が調節される。
図15に図示されるように、ステップ493では、作動流体に気泡を発生させるように作動流体の温度が調節される。発生した気泡は、位相差を調節するようにダンピング機能を追加する。
図16に図示されるように、位相調節器71、72は、作動流体の温度を調節する温度調節器(HT)479を備える。温度調節器479は、作動流体の温度を調節することにより容積室75に気泡を注入する温度調節器を提供する。温度調節器479は、気泡注入器を提供する。作動流体の気体溶解度は既知である。よって、温度によって気泡量を正確に制御することができる。温度調節器479の一例は、熱輸送媒体を加熱するヒータである。
この実施形態でも、位相調節器71、72は、熱輸送媒体の中における気泡の発生に起因する位相遅れを補償するように進み方向ADVへ回転する。これにより、磁場変調装置13と熱輸送装置14との間の位相差は、目標位相差PHtに向けて接近する。この実施形態によると、比較的簡単な構成によって望ましい位相差を実現することができる。
第5実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、磁場変調装置13と熱輸送装置14との間に位相調節器71、72が設けられている。これに代えて、この実施形態では、MCE素子12を移動させることにより、磁場変化の位相と往復流の位相との間の位相差を調節する。
図17は、車両用空調装置10のMHP装置11を示す断面図である。なお、理解を容易にするために、複数の部品の図示が省略されている。例えば、熱交換器は図示されない。この実施形態では、MCE素子12は、周方向に関して移動可能なハウジング521の中に収容されている。ハウジング521は、磁場変調装置13の回転方向に沿って移動可能である。このハウジング521は、作業室を形成する部材でもある。ハウジング521は、MCE素子12のための容器を提供する部材でもある。ハウジング521とMCE素子12とは、磁気熱量効果を取り出すためのベッドとも呼ばれる。
MHP装置11は、ハウジング521を移動させるための位相調節器571、572を備える。位相調節器571、572は、磁場変調装置13とMCE素子12との相対的な位置をずらす。位相調節器571、572は、ハウジング521を移動させることができる種々の機構によって提供される。例えば、回転機構、直線移動機構、円軌道移動機構などが用いられる。MHP装置11は、複数の流れセンサ531を備える。複数の流れセンサ531は、作業室の両端に位置づけられている。この結果、往復流の位相の変化が迅速に検出される。
磁場変調装置13は、永久磁石を含む回転子と、磁束を通すためのヨーク527とを有する。磁場変調装置13は、永久磁石を回転移動させることにより、MCE素子12に作用する磁場を周期的に変動させる。位相調節器571、572は、ハウジング521とMCE素子12とを同時に移動させる。これにより、磁場がMCE素子12に作用するタイミングがずらされる。結果的に、磁場の変動の位相が変化する。
この実施形態では、MHP装置11に含まれる調節可能な要素のうち、MCE素子12を移動させる。よって、磁場変調装置13および/または熱輸送装置14に依存することなく、磁場変化の位相と、往復流の位相との間の位相差を調節することができる。MCE素子12は、磁場変調装置13の回転方向に沿って移動する。よって、可変部分は磁場変調装置13の中にあるともいえる。このため、往復流の位相に不可避の変化が生じる場合でも、AMRサイクルとして望ましい位相差を実現できる。
図18は、基準位置における磁場変調装置13とMCE素子12との相対的な位置関係を示す断面図である。MCE素子12とハウジング521とを含むベッドは、所定の範囲内で回転方向へ移動可能である。ハウジング521の基準位置0を想定する場合、ハウジング521は、進角方向および/または遅角方向へ移動することができる。例えば、ハウジング521を破線で図示される遅角した位置へ移動させる場合を想定する。位相調節器571、572は、ハウジング521を回転方向にずらす。この場合、ハウジング521は、回転方向に沿って位相PHmだけ移動する。位相PHmは、MCE素子12に関する磁場変化の位相でもある。
図19は、磁場変化の位相を遅らせた場合の相対的な位置関係を示す断面図である。磁場変調装置13が矢印方向へ回転する場合、ハウジング521が図示されるように移動することにより、MCE素子12に作用する磁場変化は、位相PHmだけ遅れる。こうして、位相調節器571、572は、磁場変化の位相を変化させる。この結果、位相調節器571、572は、磁場変化の位相と往復流の位相との間の位相差を調節する。
図20は、磁場変化MGの波形と往復流FLの波形とを示す波形図である。MHP装置11の機械的な構成によって規定される磁場変化MGの基本波形MG1は、破線で図示されている。位相調節器571、572により、磁場変化MGは、太い実線で図示される遅れ波形MGdのように位相PHmだけ遅れる。MHP装置11の機械的な構成によって規定される往復流FLの基本波形FL1は、一点鎖線で図示されている。往復流FLは、例えば、気泡の混入、部分的なキャビテーションなどにより、細い実線で図示される遅れ波形FLdのように位相PHfだけ遅れることがある。
制御装置18は、磁場変化の磁場位相PHmと往復流の流れ位相PHfとの位相差PHrを取得する。制御装置18は、取得した位相差PHrが、望ましい目標位相差PHtに向けて接近するように位相調節器571、572を制御する。
この実施形態では、磁場変調装置13は、自らの回転により、MCE素子12およびハウジング521に作用する磁場を変調する。MCE素子12およびハウジング521は、回転方向に関して所定角度範囲に渡ってのみ移動可能である。MCE素子12およびハウジング521の移動は、磁場変調装置13とMCE素子12との相対的な位置をずらすことである。MCE素子12に対して磁場変調装置13が発生する磁場変化の位相が変化する。熱輸送装置14が発生する往復流の位相は、装置の機械的構成、または運転状態により決まる。よって、MCE素子12およびハウジング521の移動は、磁場変化の位相と往復流の位相との間の位相差を調節する。
この実施形態では、制御装置18は、磁場変化の磁場位相PHmと往復流の流れ位相PHfとの位相差PHrを取得する。制御装置18は、取得した位相差PHrが、望ましい目標位相差PHtに向けて接近するように位相調節器571、572を制御する。
この実施形態によると、磁場変化の位相と往復流の位相との位相差を調節するために、ハウジング521、すなわちMCE素子12を回転方向へ移動させている。このため、駆動力を伝達する回転軸22に位相調節器を装着することなく、位相差を調節することができる。
第6実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態は、位相調節器571、572の具体例を開示する。この実施形態では、位相調節器571、572は、直線移動機構であるねじ送り機構によって提供される。
図21は、位相調節器571(572)を示す。位相調節器571は、動力源としてのモータ675と、モータ675によって駆動される送りねじ676とを有する。位相調節器571は、送りねじ676に設けられたねじと嵌合するナットが形成されたステージ677を有する。ステージ677は、送りねじ676の長手方向に沿って直線的に移動する軌道を有する。
ステージ677とハウジング521とは、ステー678によって連結されている。ステー678は、ステージ677の直線的な移動をハウジング521の回転移動に変換する変換器である。ステー678は、歪ゲージ679を備える。歪ゲージ679は、ハウジング521に発生する荷重を計測する。
図22は、ハウジング521に発生する荷重Tdと、MCE素子12の活性化量RMとの関係を示す。ハウジング521内には、MCE素子12が固定されている。MCE素子12の温度が高効率温度帯に到達すると、MCE素子12は活性化し、磁場変調装置13の磁場に反応する。磁場変調装置13によりMCE素子12に生じるトルクは、ハウジング521に表れる。ここでは、磁場変調装置13によりMCE素子12に生じるトルクは、ハウジング521に荷重Tdとなって表れる。ハウジング521の荷重Tdは、ハウジング521に連結されたステー678の歪となる。
MCE素子12がカスケード接続されている場合、高効率温度帯に到達したMCE素子12の量に応じた荷重Tdがハウジング521に発生する。よって、歪ゲージ679が検出する荷重Tdは、高効率温度帯に到達したMCE素子12の活性化量RMを示す成分を含む。例えば、歪ゲージ679の出力のうち、磁場変調装置13の回転に同期した交流成分は、磁場変化を示す。歪ゲージ679の出力のうち、交流成分の最大値、または振幅は、MCE素子12の活性化量RMを示している。
制御装置18は、歪ゲージ679によりMCE素子12の活性化量RM、すなわち反応状態を検出する。反応状態は、MCE素子12の全体に占める活性化された素子の割合を示す。制御装置18は、歪ゲージ679の出力(荷重Td)に基づいて、MHP装置11の制御状態を切換える。ここでは、歪ゲージ679の出力から、活性化量RMを示す成分が抽出される。具体的には、歪ゲージ679の出力(荷重Td)は、起動制御と定常制御との間の閾値Thを示す指標として利用される。
図23において、制御装置18は制御処理695を実行する。制御装置18は、ステップ696において、歪ゲージ679から荷重Tdを入力する。制御装置18は、ステップ697において、荷重Tdを判定する。ここでは、荷重Tdは、閾値Thと比較される。荷重Tdが閾値Thを下回るか否かが判定される。結果が肯定的な場合、ステップ698へ進む。結果が否定的な場合、ステップ699へ進む。荷重Tdが閾値Thを下回る場合、活性化量RMは、MHP装置11が高温端と低温端との温度差を維持するためには不十分であると判定される。ステップ698では、起動制御が実行される。起動制御では、MCE素子12の活性化量RMを増加させるための制御が実行される。ステップ699では、定常制御が実行される。
この実施形態によると、比較的簡単な位相調節器571により磁場変化の位相を変えることができる。このため、往復流の位相を流れセンサ531により検出して磁場変化の位相と往復流の位相との位相差を望ましい値に制御することができる。また、ハウジング521に作用する荷重Tdが活性化量RMを判定するための指標として利用される。活性化量RMに基づいて、起動制御と定常制御との切り換えを実行することができる。
第7実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態は、位相調節器571、572の具体例を開示する。この実施形態では、位相調節器571、572は、直線移動機構である流体機構によって提供される。
図24は、位相調節器571(572)を示す。位相調節器571は、空気、油などの流体を動力源とする流体機構である。位相調節器571は、流体シリンダ775と、流体シリンダ775により延び出し量が調節されるロッド776とを有する。位相調節器571は、ロッド776に固定され、ロッド776により位置が調節されるステージ777を有する。ステー678は、ステージ777とハウジング521との間に設けられている。ステー678は、歪ゲージ679を有している。この実施形態でも、先行する実施形態と同様の作用効果が得られる。
第8実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態は、位相調節器571、572の具体例を開示する。この実施形態では、位相調節器571、572は、回転移動機構であるギヤ機構によって提供される。
図25において、位相調節器571(572)は、動力源としてのモータ875と、モータ875によって直接的に駆動される第1ギヤ876とを有する。位相調節器571は、第1ギヤ876と噛み合っている第2ギヤ877を有する。第2ギヤ877は、ステー878を有する。第2ギヤ877は、ステー878と共に回動する。ステー878は、ハウジング521と第2ギヤ877とを連結している。第1ギヤ876、第2ギヤ877、およびステー878は、回動機構を提供する。
モータ875が回転すると、第1ギヤ876が回転する。第1ギヤ876の回転により、第2ギヤ877も回転する。第2ギヤ877の回転により、ハウジング521が移動する。MCE素子12の活性化量RMは、ハウジング521を移動させるためのトルクとして観測可能である。よって、モータ875のための駆動トルクを観測することにより、活性化量RMを知ることができる。この実施形態では、先行する実施形態における荷重Tdに代えて、モータ875に作用する反力トルクを用いる。この実施形態でも、先行する実施形態と同様の作用効果が得られる。
第9実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態では、流れセンサ(FD)31によって流れ位相PHfが検出される。制御装置18は、流れセンサ31から、流れ位相PHfを取得する。これに代えて、または加えて、この実施形態では、反応位相PHtrを取得するために、位相センサ(MD)933が用いられる。
MCE素子12は、磁場の変動に対して、磁気熱量効果によって熱的に反応する。MCE素子12は、磁場の変動に反応して、発熱と吸熱とを発生する。よって、発熱または吸熱から、反応波形の位相を取得できる。この反応波形の位相が反応位相PHtrである。MCE素子12の反応は、一定時間の遅れ、または可変時間の遅れを生じる。磁場の変動の周波数が低い場合には、遅れによる影響は小さい。一方、磁場の変動の周波数が高い場合には、遅れによる影響は無視できない。そこで、この実施形態では、MCE素子12の反応の遅れを含む反応位相PHtrを取得し、遅れによる影響を抑制するようにMHP装置11の位相を制御する。
図26には、この実施形態におけるMHP装置11がモデル化されて図示されている。MHP装置11は、MCE素子12と、磁場変調装置(MAGD)13と、熱輸送装置(HYDD)14、制御装置(CNTR)18と、位相調節器(PHAD)71とを有する。磁場変調装置13は、MCE素子12に作用する磁場を変化させる。熱輸送装置14は、MCE素子12と熱交換する作業流体の流れを生じさせる。制御装置18は、流れ位相取得部18a、反応位相取得部918b、および制御部918cを有する。位相調節器71は、MCE素子12に対する磁場と流れの位相を調節する。
流れセンサ31は、熱輸送装置14によって生成される作動流体の流れを検出する。流れ位相取得部18aは、流れセンサ31によって検出された流れから、流れ位相PHfを取得する。流れ位相PHfは、基準位置と、流れとの差によって示される。流れ位相PHfは、後述の位相センサ933によって検出された信号と、流れセンサ31によって検出された信号との位相差によって示される。
位相センサ933は、磁場変調装置13、熱輸送装置14、またはモータ15の作動を検出する。位相センサ933は、例えば、回転位置センサ、磁気センサなどによって提供される。位相センサ933は、位相を規定するための基準位置を特定する。位相センサ933は、基準位置センサでもある。
反応位相取得部918bは、位相センサ933によって検出された信号から、反応位相PHtrを取得する。反応位相取得部918bは、磁場変調装置13が発生する外部磁場の変化に起因してMCE素子12に生じる発熱または吸熱の変化の遅れを含むように、反応位相PHtrを算出する。反応位相PHtrは、機械的構成から想定される位相と、MCE素子12の反応遅れとから算出することができる。
MCE素子12が一定時間の反応遅れを生じる場合、反応位相取得部918bは、位相センサ933が検出する基準位置と、MCE素子12の反応遅れを加えて反応位相PHtrを算出する。MCE素子12は、固定時間の反応遅れを生じる場合がある。MCE素子12は、可変時間の反応遅れを生じる場合がある。この場合、反応位相取得部918bは、位相センサ933が検出する基準位置と、可変時間の反応遅れとに基づいて反応位相PHtrを算出する。
可変時間の反応遅れは、例えば環境温度、圧力、定常負荷などの少なくともひとつを含むパラメータによって変化する。そこで、反応位相取得部918bは、少なくともひとつのパラメータに応じて可変時間の反応遅れを算出する。この場合、反応位相PHtrは、位相センサ933が検出する基準位置と、算出された可変時間の遅れとから算出される。
制御部(FB)918cは、流れ位相PHfと、反応位相PHtrとの関係を目標関係に向けて接近させるように位相調節器(PHAD)71を制御する。制御部918cは、例えば、位相調節器71をフィードバック制御する。制御部918cは、例えば、流れ位相PHfと反応位相PHtrとの位相差を算出し、算出された位相差を目標位相差に向けて接近させ、一致させる。制御部918cは、例えば、流れ位相PHfと反応位相PHtrとの位相差をゼロ(0)にするように位相調節器71を制御する。制御部918cは、例えば、比例積分制御、比例積分微分制御、最適レギュレータ制御など多様な制御方法を利用することができる。
図27は、この実施形態の作動を示すフローチャートである。MHP装置11が停止状態から運転状態に移行すると、制御装置18は、位相制御処理990を実行する。
ステップ991では、制御装置18は、流れ位相PHfを検出する。流れ位相PHfは、流れセンサ31から検出される。
ステップ992では、制御装置18は、反応位相PHtrを算出する。制御装置18は、位相センサ933が示す基準位置と、少なくともひとつのパラメータとに基づいて、反応位相PHtrを算出する。パラメータを外気温度Tamとする場合、基準位置と、実験的に決められる関数f(Tam)とに基づいて、反応位相PHtrを算出することができる。
ステップ993では、制御装置18は、位相調節器71をフィードバック制御する。ステップ993は、少なくとも比例制御を含むことができる。この場合、ステップ993は、位相差を算出するステップ993a、制御量を算出するステップ993b、および位相調節器71を制御するステップ993cを含む。ステップ993bでは、位相差に比例した制御量が算出される。
図28は、磁場変調装置13と熱輸送装置14とに関連する波形図である。この図では、理解を助けるために、流速およびMCE素子12の反応が、正弦波状に簡単化されている。磁気熱量効果熱輸送装置14を提供するポンプの作動は、ポンプ波形PMrで示される。実際の流れは、流れ波形FLrで示される。ポンプ波形PMrに対して、流れ波形FLrは、流れ位相PHfだけ遅れている。ポンプ波形PMrが最大流速を発揮している時刻より、流れ波形FLrにおいて極大値が観測される時刻は、流れ位相PHfだけ遅れている。磁場変調装置13の作動は、磁場波形MGrで示される。MCE素子12の磁気熱量効果は、熱的波形TRrで示される。熱的波形TRrは、磁場変調装置13が発生する外部磁場の変化に起因してMCE素子12に生じる発熱または吸熱の反応を示している。磁場の変化に対して、MCE素子12の反応は、反応位相PHtrだけ遅れている。磁場波形MGrが最大磁場を発揮している時刻より、熱的波形TRrにおいて極大値が観測される時刻は、反応位相PHtrだけ遅れている。
この実施形態では、流れ波形FLrにおいて極大値が観測される時刻と、熱的波形TRrにおいて極大値が観測される時刻とが目標関係となるように位相調節器71が制御される。目標関係は、MHP装置11の運転効率が高くなるように予め設定されている。例えば、流れ波形FLrにおいて極大値が観測される時刻と、熱的波形TRrにおいて極大値が観測される時刻とが一致するように位相調節器71が制御される。これに代えて、流れ波形FLrが熱的波形TRrよりやや先行するような位相差を目標関係としてもよい。また、流れ波形FLrが熱的波形TRrよりやや遅れるような位相差を目標関係としてもよい。目標関係は、MHP装置11の機械的な構成に応じて設定することができる。
この実施形態によると、熱的波形TRrの遅れに起因する悪影響が抑制される。例えば、熱的波形TRrの遅れが変化しても、MHP装置11の出力変動を抑制することができる。例えば、熱的波形TRrの遅れが変化しても、MHP装置11を高い効率で運転することができる。
さらに、この実施形態では、熱的波形TRrの遅れに相当する反応位相PHtrを算出している。これにより、比較的簡単な装置を採用可能である。
この実施形態によると、流れ波形FLrの遅れに起因する悪影響と、熱的波形TRrの遅れに起因する悪影響との両方が抑制される。例えば、流れ波形FLrの遅れ、または、熱的波形TRrの遅れが変化しても、MHP装置11の出力変動を抑制することができる。例えば、流れ波形FLrの遅れ、または、熱的波形TRrの遅れが変化しても、MHP装置11を高い効率で運転することができる。
第10実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態では、反応位相PHtrが算出されている。これに代えて、この実施形態では、反応位相PHtrが検出される。
図29には、この実施形態におけるMHP装置11がモデル化されて図示されている。MHP装置11は、MCE素子12の反応、すなわち磁気熱量効果に起因する変化を直接的に検出する反応センサA81を備える。反応センサA81は、磁場変調装置13が発生する外部磁場の変化に起因してMCE素子12に生じる発熱または吸熱の熱的波形TRrを観測する。反応センサA81は、MCE素子12の温度変化を観測する。反応センサA81は、磁気熱量効果に起因するMCE素子12自身の温度変化を検出する。反応センサA81は、温度センサによって提供される。反応センサA81は、MCE素子12の表面に設けられた温度センサによって提供される。反応センサA81は、MCE素子12の磁気熱量効果を模擬するセンサ、透磁率の変化を検出するセンサなど多様なセンサによって提供されてもよい。
反応センサA81は、MCE素子12を提供する複数の部分のうち、ひとつの部分の温度を検出するように、または、複数の部分の温度を検出するように設置されている。反応センサA81は、MHP装置11が起動された後に、最初に磁気熱量効果を発揮する部分の温度を検出するように設置されている。これにより、MHP装置11が起動された後の初期から位相制御を開始することができる。
反応位相取得部A18bは、位相センサ933によって検出された信号と、反応センサA81によって検出された信号から、反応位相PHtrを取得する。反応位相取得部A18bは、磁場変化に対するMCE素子12の反応の遅れを含むように、反応位相PHtrを検出する。この実施形態では、反応位相PHtrは、基準位置からの熱的波形TRrの遅れによって示されている。
図30は、この実施形態の作動を示すフローチャートである。MHP装置11が停止状態から運転状態に移行すると、制御装置18は、位相制御処理A90を実行する。ステップA92bでは、制御装置18は、反応位相PHtrを検出する。このため、実際の作動状態に適合した正確な反応位相PHtrが取得される。例えば、MHP装置11が設置された環境に外乱磁場がある場合、MCE素子12が劣化した場合、他の外乱がある場合でも正確な反応位相PHtrが取得される。
この実施形態では、熱的波形TRrの遅れに相当する反応位相PHtrが、直接的に検出される。これにより、正確に位相を制御することができる。
第11実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態では、ひとつの反応センサA81を用いる。これに代えて、この実施形態では、反応位相PHtrを検出するために、複数の反応センサB81が用いられる。
図31には、この実施形態におけるMHP装置11がモデル化されて図示されている。MCE素子12は、カスケード接続された複数の部分を有する。複数の部分のそれぞれは、異なるキュリー温度を有している。複数の部分は、高温端と低温端との間の負荷温度差を、分担するようにカスケード接続されている。MHP装置11が初期環境温度から起動される場合、複数の部分の中の一部が最初に磁気熱量効果を発揮する。その最初に反応する部分は、初期環境温度に依存する。例えば、寒冷な初期環境温度では、低温端の近くの部分が最初に反応する。例えば、温暖な初期環境温度では、高温端の近くの部分が最初に反応する。
MCE素子12は、複数の部分のそれぞれに対応して、複数の反応センサB81を有する。複数の反応センサB81のひとつは、ひとつの部分の温度を検出する。複数の反応センサB81の検出信号は、制御装置18に入力される。複数の検出信号は、反応位相PHtrを検出するために利用される。
複数の検出信号は、選択器B18dに入力される。選択器B18dは、最初に反応する検出信号を選択する。選択された検出信号は、最初に反応した素子部分の位相を示す。よって、選択された検出信号は、反応位相取得部A18bに入力される。反応位相取得部A18bは、反応位相PHtrを取得する。残部の構成、および反応位相PHtrが取得された後の作動は、他の実施形態を参照することができる。
この実施形態によると、初期環境温度が寒冷であるときと、初期環境温度が温暖であるときとで、異なる素子部分の反応が選択される。よって、初期環境温度が変化しても、早期から反応位相PHtrを検出することができる。さらに、早期に反応位相PHtrに応じた位相制御を開始することができる。
他の実施形態
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、斜板式ポンプによって多気筒ポンプを提供した。これに代えて、他の形式の容積型ポンプを利用してもよい。また、熱輸送装置14は、モータ15によって駆動されない別体の装置として構成されてもよい。また、上記第1実施形態では、ポンプの1気筒に、ひとつの作業室26を対応させて配置した。これに代えて、複数の気筒とひとつの作業室、またはひとつの気筒と複数の作業室、または複数の気筒と複数の作業室を対応させて配置してもよい。
上記実施形態では、車両用空調装置10が提供される。これに代えて、住宅用の空調装置を提供してもよい。また、水を加熱または冷却する装置、例えば給湯装置または冷水機を提供してもよい。また、上記実施形態では、室外の空気を主要な熱源とするMHP装置11を説明した。これに代えて、水、土などの他の熱源を主要熱源として利用してもよい。
上記実施形態では、熱磁気サイクル装置の一形態であるMHP装置11が提供される。これに代えて、熱磁気サイクル装置の一形態である熱磁気エンジン装置を提供してもよい。例えば、上記実施形態のMHP装置11の磁場変化と熱輸送媒体の流れとの位相を調節することにより熱磁気エンジン装置を提供することができる。
上記実施形態では、ベーン型の位相調節器71、72が用いられている。これに代えて、多様な形式の位相調節器を利用することが可能である。例えば、ヘリカル歯車の噛み合いを利用した位相調節器、または遊星歯車機構を利用した位相調節器などを利用可能である。上記実施形態では、作動流体を利用した容積調節型の位相調節器71、72が用いられている。これに代えて、電動機の回転角、またはトルク伝達を制御するクラッチ機構を用いて位相差を調節する位相調節器が用いられてもよい。
上記実施形態では、単一のモータ15が利用されている。これに代えて、磁場変調装置13のためのモータと、熱輸送装置14のためのモータとを採用してもよい。この場合、ふたつのモータの回転位相を調節することによって、磁場変化の位相と、往復流の位相との位相差を調節することができる。この場合、ふたつのモータと、それらを制御する制御回路とによって位相調節部が提供される。
上記実施形態では、流れセンサ31、32、531は、光学センサによってフロート37を観測する。これに代えて、超音波式センサ、磁気的センサ、機械的接触スイッチなど多様なセンサを利用してフロート37を観測してもよい。また、流れセンサ31、32、531は、フロート37を観測する。これに代えて、熱輸送媒体の中に生じる気泡を観測してもよい。また、流れセンサ31、32、531は、圧力センサ、カルマン渦センサ、熱線式センサなど、多様な検出原理を利用して提供することができる。
流れセンサ31、32、531は、例えば、熱輸送媒体の圧力を検出するセンサにより提供することができる。熱輸送媒体の圧力は、往復流の状態、すなわち往復流の波形を示す。流れセンサ31、32、531は、例えば、熱輸送媒体の温度を検出するセンサにより提供することができる。AMRサイクルでは、熱輸送媒体の温度は、往復流の状態、すなわち往復流の波形を示す。このため、簡単な温度センサにより往復流の波形が検出される。
上記実施形態では、磁場変動の位相は、MHP装置11の機械的構成により規定される。これに代えて、磁場変化の位相をセンサにより検出してもよい。例えば、ハウジング521に表れるトルクのうち、交流成分は、磁場変動を示している。このため、歪ゲージ679の出力の交流成分により磁場変化の位相を検出してもよい。
上記実施形態に代えて、MHP装置11の能力に基づいて流れ位相を検出してもよい。例えば、MHP装置11の能力が最大となるように位相調節器71、72を探索的に制御することができる。この場合には、磁場位相と流れ位相との位相差が取得されると同時に、取得位相差を目標位相差へ向けて接近させる制御とが同時に実行される。よって、磁場位相と流れ位相との位相差を取得する部は内包されている。
また、磁場変調装置13を駆動するための仕事量から流れの位相を検出してもよい。例えば、磁場変調装置13、すなわちロータコア24を回転させるためのトルクを検出するトルクセンサ、歪ゲージを利用することができる。仕事量は、磁場位相と流れ位相との位相差に応じて変化する。よって、トルクセンサ、歪ゲージからの出力に基づいて位相差を観測することができる。この場合も、磁場位相と流れ位相との位相差を取得する部は内包されているといえる。