図面を参照しながら、この開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については他の形態の説明を参照し適用することができる。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る車両用の空調装置1を示すブロック図である。空調装置1は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2を備える。磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2はMHP(Magneto-caloric effect Heat Pump)装置2とも呼ばれる。MHP装置2は、熱磁気サイクル装置を提供する。
この明細書においてヒートポンプ装置の語は広義の意味で使用される。すなわち、ヒートポンプ装置の語には、ヒートポンプ装置によって得られる冷熱を利用する装置と、ヒートポンプ装置によって得られる温熱を利用する装置との両方が含まれる。冷熱を利用する装置は、冷凍サイクル装置とも呼ばれることがある。よって、この明細書においてヒートポンプ装置の語は冷凍サイクル装置を包含する概念として使用される。
空調装置1は、車両に搭載され、車両の乗員室の温度を調節する。空調装置1は、冷房装置または暖房装置として利用される。空調装置1は、室内に供給される空気を冷却する冷却器と、冷却器によって冷却された空気を再び加熱する加熱器とを備えることができる。
空調装置1は、MHP装置2の高温側に設けられた熱交換器3を有する。空調装置1は、MHP装置2の低温側に設けられた熱交換器4を有する。2つの熱交換器3、4は、空調装置1の一部を提供する。熱交換器3は、熱交換器4より高温になる高温側の熱交換器3である。熱交換器4は、熱交換器3より低温になる低温側の熱交換器4である。空調装置1は、熱交換器3、および/または熱交換器4を室内空調のために利用するための空調ダクトおよび送風機などの空気系機器を備える。
熱交換器3は、MHP装置2の高温端2aと、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器3は、主として放熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器3は、MHP装置2の熱輸送媒体と、空気との熱交換を提供する。熱交換器3は、空調装置1における高温系統1aに属する機器のひとつである。
熱交換器4は、MHP装置2の低温端2bと、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器4は、主として吸熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器4は、MHP装置2の熱輸送媒体と、熱源媒体との熱交換を提供する。熱交換器4は、空調装置1における低温系統1bに属する機器のひとつである。
MHP装置2は、空調装置1における冷熱供給源、または温熱供給源として利用される。すなわち、熱交換器3は上記加熱器として用いることができる。また、熱交換器4は上記冷却器として用いることができる。
MHP装置2が温熱供給源として利用される場合、熱交換器3を通過した空気は車両の室内に供給され、暖房のために利用される。このとき、熱交換器4を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器3は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器4は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2が冷熱供給源として利用される場合、熱交換器4を通過した空気は車両の室内に供給され、冷房のために利用される。このとき、熱交換器3を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器4は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器3は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2は、除湿装置として利用されることもある。この場合、熱交換器4を通過した空気は、その後に、熱交換器3を通過し、室内に供給される。MHP装置2は、冬期においても、夏期においても、温熱供給源として利用される。
MHP装置2は、MHP装置2を駆動するための回転軸5aを有する。回転軸5aは、動力源5と作動的に連結されている。動力源5は、MHP装置2に回転動力を提供する。よって、MHP装置2は、動力源5から与えられる回転によって機能する。動力源5は、MHP装置2の唯一の動力源である。動力源5は、電動機、内燃機関など回転機器によって提供される。動力源の一例は、車両に搭載された電池によって駆動される電動機である。
MHP装置2は、ハウジング6を備える。ハウジング6は回転軸5aを回転可能に支持している。MHP装置2は、ロータ7を備える。ロータ7は、ハウジング6内に回転可能に支持されている。ロータ7は、回転軸5aから直接的にまたは間接的に回転力を受けて、回転する。ロータ7は、動力源5によって回転させられる回転体である。ロータ7は、円筒状の部材である。
回転軸5aとロータ7との間には、変速機構9が配置されている。変速機構9は、多様な機構によって提供できる。例えば、変速機構9は、遊星歯車機構によって提供される。変速機構9は、ポンプ17とロータ7との間の動力伝達経路に配置されている。変速機構9は、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなるように回転軸5aから伝達される回転数を調節する。変速機構9は、その変速比を変更可能に構成することができる。変速比は、流路切換機構18により設定される一行程における流量を調節するために利用することができる。言い換えると、変速比は、一周期における外部からの熱輸送媒体の流入量、すなわち熱輸送媒体の流入深さを変化させるために利用できる。
ロータ7は、熱輸送媒体が流れることができる作業室11を形成する。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向に沿って延びている。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向の両方の端面において開口している。ロータ7は、複数の作業室11を備えることができる。複数の作業室11は、ロータ7の回転方向に沿って配列されている。
ロータ7は、磁気熱量素子(MCE(Magneto-Caloric Effect)素子)12を備える。MHP装置2は、MCE素子12の磁気熱量効果を利用する。MHP装置2は、MCE素子12によって高温端2aと低温端2bとを生成する。MCE素子12は、高温端2aと低温端2bとの間に設けられている。図示の例では、図中の左端が高温端2aであり、図中の右側が低温端2bである。
MCE素子12は、作業室11内に、熱輸送媒体と熱交換するように配置されている。MCE素子12は、ロータ7に固定され、保持されている。MCE素子12は、熱輸送媒体の流れ方向に沿って配置されている。MCE素子12は、ロータ7の軸方向に沿って細長く延在している。ロータ7は、複数のMCE素子12を備えることができる。複数のMCE素子12は、ロータ7の回転方向に沿って互いに離れて配置されている。
MCE素子12は、外部磁場の強弱の変化に応答して発熱と吸熱とを生じる。MCE素子12は、外部磁場の印加により発熱し、外部磁場の除去により吸熱する。MCE素子12は、外部磁場が印加されることによって電子スピンが磁場方向に揃うと、磁気エントロピーが減少し、熱を放出することによって温度が上昇する。また、MCE素子12は、外部磁場が除去されることによって電子スピンが乱雑になると、磁気エントロピーが増加し、熱を吸収することによって温度が低下する。MCE素子12は、常温域において高い磁気熱量効果を発揮する磁性体によって作られている。例えば、ガドリニウム系材料、またはランタン−鉄−シリコン化合物を用いることができる。また、マンガン、鉄、リンおよびゲルマニウムの混合物を用いることができる。MCE素子12には、外部磁場の印加により吸熱し、外部磁場の除去により発熱する素子を利用してもよい。
MHP装置2は、ロータ7と対向して配置されたステータ8を有する。ステータ8は、ハウジング6の一部によって提供されている。ステータ8は、ロータ7の径方向内側および/または径方向外側に配置され、ロータ7と径方向に関して対向する部位を有する。これら径方向に関して対向する部位は、磁場変調装置14を提供するために利用される。ステータ8は、ロータ7の軸方向一端および/または軸方向他端に配置され、ロータ7と軸方向に関して対向する部位を有する。これら軸方向に対向する部位は、熱輸送装置16、具体的には流路切換機構18を提供するために利用される。
MHP装置2は、MCE素子12をAMR(Active Magnetic Refrigeration)サイクルの素子として機能させるための磁場変調装置14と熱輸送装置16とを備える。磁場変調装置14は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。磁場変調装置14は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって磁場を周期的に増減させる。磁場変調装置14は、回転軸5aに与えられる回転動力によって駆動される。熱輸送装置16は、ポンプ17と、流路切換機構18とを有する。流路切換機構18は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。流路切換機構18は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって機能する。流路切換機構18は、熱輸送媒体の流路に対する作業室11の接続状態を切換えることにより、作業室11およびMCE素子12に対する熱輸送媒体の流れ方向を反転するように切換える。
磁場変調装置14は、MCE素子12に外部磁場を与えるとともに、その外部磁場の強さを増減させる。磁場変調装置14は、MCE素子12を強い磁界内に置く励磁状態と、MCE素子12を弱い磁界内またはゼロ磁界内に置く消磁状態とを周期的に切換える。磁場変調装置14は、MCE素子12が強い外部磁場の中に置かれる励磁期間、およびMCE素子12が励磁期間より弱い外部磁場の中に置かれる消磁期間を周期的に繰り返すように外部磁場を変調する。磁場変調装置14は、後述する熱輸送媒体の往復的な流れに同期して、MCE素子12への磁場の印加と除去とを繰り返す。磁場変調装置14は、外部磁場を生成するための磁力源13、例えば永久磁石、または電磁石を備える。
具体的には、磁場変調装置14は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。磁場変調装置14は、第1位置にあるMCE素子12を強い磁場の中に位置付ける。磁場変調装置14は、第2位置にあるMCE素子12を弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が強い磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第1位置に位置付ける。第1方向は、低温端2bから高温端2aに向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通するときに、その作業室11の中のMCE素子12が強い磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第1位置に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第2位置に位置付ける。第2方向は、高温端2aから低温端2bに向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通するときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第2位置に位置付ける。
熱輸送装置16は、MCE素子12が放熱または吸熱する熱を輸送するための熱輸送媒体と、この熱輸送媒体を流すための流体機器とを備える。熱輸送媒体は、熱を蓄熱する機能も提供する。熱輸送装置16は、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体をMCE素子12に沿って流す装置である。熱輸送装置16は、MCE素子12に沿って熱輸送媒体を流す。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による磁場の増減に同期して熱輸送媒体の流れ方向を切換える。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による外部磁場の変化に同期して、熱輸送媒体の往復的な流れを発生させる。MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体は一次媒体と呼ばれる。一次媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。
熱輸送装置16は、熱輸送媒体を流すためのポンプ17を備える。ポンプ17は、熱輸送媒体の一方向の流れを生成する一方向ポンプである。ポンプ17は、熱輸送媒体を吸入する吸入口と、熱輸送媒体を吐出する吐出口とを有する。ポンプ17は、熱輸送媒体の環状の流れ経路の上に配置されている。ポンプ17は、環状の流れ経路の中に熱輸送媒体の一方向の流れを生じさせる。ポンプ17は、回転軸5aによって駆動される。ポンプ17は、容積型ポンプである。
熱輸送装置16は、流路切換機構18を備える。流路切換機構18は、MCE素子12に対する熱輸送媒体の供給方向を切り換えることによりMCE素子12に往復的な流れを供給する。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12に関する熱輸送媒体の流れ方向を反転させるように、作業室11に対して熱輸送媒体の流路を切換える。言い換えると、流路切換機構18は、一方向型のポンプ17によって生成される熱輸送媒体の一方向の流れの中における作業室11の配置を流れ方向に関して反転させる。流路切換機構18は、ポンプ17を含む環状の流路の中における往路と復路とにひとつの作業室11を交互に位置付ける。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12と、ポンプ17を含む環状の流路との接続関係を少なくとも2つの状態に切換える。第1の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通した状態である。第2の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通した状態である。
具体的には、流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。流路切換機構18は、第1位置にあるMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、第2位置にあるMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流すように、ポンプ17を含む熱輸送媒体の流れ経路と、MCE素子12、すなわち作業室11との接続状態を切換える。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吸入口とを連通し、他端とポンプ17の吐出口とを連通する。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吐出口とを連通し、他端とポンプ17の吸入口とを連通する。
MHP装置2は、熱交換器3から熱輸送媒体を受け入れる高温側入口16aを有する。高温側入口16aはポンプ17の吸入口に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器3へ向けて熱輸送媒体を供給する高温側出口16bを有する。高温側出口16bは、第1位置にある作業室11の一端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4から熱輸送媒体を受け入れる低温側入口16cを有する。低温側入口16cは、第1位置にある作業室11の他端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4へ向けて熱輸送媒体を供給する低温側出口16dを有する。低温側出口16dは、第2位置にある作業室11の他端に連通可能である。第2位置にある作業室11の一端はポンプ17の吐出口と連通可能である。
ロータ7は、MCE素子12を保持するための素子ベッドとも呼ばれる。この実施形態では、MCE素子12を収容する作業室11を形成する素子ベッドが回転軸5aと作動的に連結されている。ポンプ17、流路切換機構18、および磁場変調装置14は、共通のハウジング6の中に収容されている。
MHP装置2は、回転軸5a上に断続可能な動力伝達機構71を有する。動力伝達機構71は、ポンプ17とロータ7との間に設けられている。動力伝達機構71は、ポンプ17とロータ7との間の動力伝達経路に設けられている。動力伝達機構71は、クラッチ機構によって提供される。クラッチ機構として、多様な形式のクラッチを利用可能である。ここでは、電磁的に操作可能な摩擦クラッチが採用されている。これに代えて、電磁的に操作可能な噛み合いクラッチ、電磁パウダークラッチなどを利用可能である。
動力伝達機構71は、ポンプ17とロータ7との間の動力伝達経路を断続する。動力伝達機構71は、ポンプ17、磁場変調装置14、および流路切換機構18を機能的に作動させるモードを提供できる。さらに、動力伝達機構71は、ポンプ17を作動させながら、磁場変調装置14と流路切換機構18との両方を機能的に停止させるモードを提供できる。動力伝達機構71は、ポンプ17を作動状態に維持したまま、流路切換機構18を作動状態と停止状態とに切り換えるように流路切換機構18への動力供給を断続する。動力伝達機構71が接続状態にあるとき、熱輸送装置16は、ポンプ17と流路切換機構18とによって、熱輸送媒体の往復流を発生する。動力伝達機構71が切断状態にあるとき、熱輸送装置16は、ポンプ17だけによって、熱輸送媒体の一方向流を発生する。磁場変調装置14は、動力伝達機構71の断続にかかわらず作動状態におかれてもよい。
熱輸送媒体の往復流は、周期CPと、往復的な流長LCとで表現できる。流長LCは、往復流長とも呼ばれる。周期CPは、流路切換機構18、すなわちロータ7の回転数で表わすことができる。周期CPは、磁場変調装置14による磁場変調に同期している。流長LCは、半周期の期間CP/2において熱輸送媒体がMCE素子12の上を移動する距離である。流長LCは、MCE素子12の長さ方向、すなわち温度勾配の方向における熱輸送媒体の流れの長さである。流長LCは、往復流の振幅とも呼ぶことができる。流長LCは、熱輸送媒体のストローク長さとも呼ぶことができる。
流長LCは、高温端2aまたは低温端2bにおける吐出量または吸入量に対応する。流長LCは、ポンプ17の能力と、周期CPとで表すことができる。流長LCは、熱磁気サイクル装置が求められる機能を発揮できるように設定されている。この実施形態では、流長LCは、MHP装置2がヒートポンプとして機能するように設定されている。言い換えると、流長LCは、MHP装置2がAMRサイクルとして機能するように設定されている。言い換えると、流長LCは、MCE素子12がAMRサイクルの素子として機能するように設定されている。望ましい形態では、流長LCは、MCE素子12が発揮しうる磁気熱量効果(吸熱量と発熱量)、MCE素子12と熱輸送媒体との熱交換量を考慮して、MCE素子12が高い性能を発揮するように設定されている。
流長LCは、高温端2aまたは低温端2bにおいて、外部から作業室11内へ取り込まれる流入量に対応する。この流入量は、MCE素子12と外部との熱交換量を規定する。すなわち、MCE素子12は、流長LCに依存して外部と熱交換する。
別の観点では、往復流が提供されるとき、外部から作業室11に流入した熱輸送媒体は、流長LCだけMCE素子12に沿って流れ、熱交換する。流長LCは、MCE素子12をAMRサイクルとして機能させるために設定されているから、MCE素子12の全長より短く設定される。往復流が提供されるとき、MHP装置2の外部と、高温端2aおよび/または低温端2bとの間における熱交換量は、流長LCに依存して少ない状態にある。往復流が提供されるとき、MHP装置2およびMCE素子12は、流長LCに依存して、外部と僅かずつ断続的に熱交換する。このような観点から、流長LCは、熱輸送媒体が作業室11の端から作業室11の内部に向けて導入される導入深さとも呼ぶことができる。
一方向流は、その方向と、流長LSとで表現できる。流長LSは、後述の活性化運転において利用されるから、活性化流長とも呼ばれる。一方向流は周期が無限大(∞)の流れと見ることができる。よって、流長LSも無限大である。一方向流の方向は、ポンプ17による熱輸送媒体の流れ方向に対応する。この実施形態では、ひとつの素子ベッドでは、高温端2aから低温端2bへ向かう一方向流が提供され、他の素子ベッドでは、低温端2bから高温端2aへ向かう一方向流が提供される。一方向流の流長LSは、高温端2aまたは低温端2bにおいて、外部から作業室11内へ取り込まれる流入量に対応する。この流入量は、MCE素子12と外部との熱交換量を規定する。すなわち、MCE素子12は、流長LSに依存して外部と熱交換する。一方向流が提供されるとき、MCE素子12およびMHP装置2は、流長LSに依存して、外部と連続的に熱交換する。
別の観点では、一方向流が提供されるとき、外部から作業室11に流入した熱輸送媒体は、MCE素子12の全体に沿って流れ、熱交換する。MCE素子12の高温端2aおよび/または低温端2bは、外部と連続的に熱交換する。しかも、高温端2aおよび/または低温端2bには、外部から次々と熱輸送媒体が流れ込むから、高温端2aおよび/または低温端2bは外部と大量に熱交換する。一方向流は、往復流より大きい熱交換深さと、熱交換長さとを提供する。一方向流が提供されるとき、MHP装置2の外部と、高温端2aおよび/または低温端2bとの間における熱交換量は、往復流が提供される場合の熱交換量より多い。
空調装置1は、制御システムを備える。制御システムは、空調装置1のための制御装置(ECU)81を有する。制御装置81は、MHP装置2のための制御装置でもある。制御システムは、複数のセンサ82、83、84と、複数の制御対象とを備える。制御システムは、MCE素子12の温度TMを直接的に又は間接的に示すデータを取得するための温度取得部を有する。温度取得部は、ハウジング6の温度を検出する温度センサ82によって提供することができる。
MHP装置2がそれ自身の熱的な平衡に要する時間を超えて停止された後は、ハウジング6の温度は、内部のMCE素子12の温度と同じ温度に到達すると考えられる。よって、ハウジング6の温度によって、MCE素子12の温度、特に、MHP装置2が起動されるときのMCE素子12の温度を検出することができる。
温度取得部は、MCE素子12の温度を推定する処理を実行する装置によって提供されてもよい。例えば、制御装置81は、MHP装置2が停止された後の経過時間、外気温度、日射量などに基づいてMCE素子12の温度を推定することができる。このように温度取得部は多様な装置によって提供されうる。また、温度は、温度を間接的に示す多様な物理量によって代替することができる。例えば、上記経過時間、日射量などによって代替されうる。
制御システムは、高温系統1aの温度THを検出する温度センサ83を有する。温度センサ83は、外気温度を検出するセンサによって提供することができる。制御システムは、低温系統1bの温度TLを検出する温度センサ84を有する。温度センサ84は、車室内の温度を検出するセンサによって提供することができる。
制御装置81は、温度センサ82、83、84を含む複数のセンサから信号を入力する。制御装置81は、予め設定された制御処理を実行することにより空調装置1およびMHP装置2を制御する。例えば、制御装置81は、MHP装置2を暖房用高温源として、または冷房用低温源として機能させるように動力源5を制御する。
制御装置は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置は、少なくともひとつの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくともひとつのメモリ装置とを有する。制御装置は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置は、ひとつのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置を機能させる。制御装置は、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、機能を実行するための手段と呼ぶことができ、別の観点では、それらの要素の少なくとも一部は、構成として解釈されるブロック、または構成として解釈されるモジュールと呼ぶことができる。
制御装置が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。
図2は、この実施形態における制御処理を示すフローチャートである。空調装置1が起動されると、制御装置81は、制御処理190を実行する。図中には、MHP装置2に関連する処理が図示されている。
ステップ191では、制御装置81は、複数のセンサからMHP装置2の状態を示すデータを入力する。制御装置81は、少なくともMCE素子12の温度を示すデータを取得する。
ステップ192では、制御装置81は、MHP装置2が、その起動を支援するための制御を必要としているか否かを判定する。ステップ192の処理は、MHP装置2の温度TMが、MHP装置2を起動可能な温度範囲Trgの中にあるか否かを判定する処理である。温度範囲Trgは、MHP装置2を起動するときの初期温度を示す。温度TMが温度範囲Trgの中にあるとき、MHP装置2は自らの磁気熱量効果によって高温端2aと低温端2bとの間に所定の温度差を作り出すことができる。温度範囲Trgは、起動可能温度範囲とも呼ばれる。温度範囲Trgは、上限温度Tihと、下限温度Ticとで示される。
温度TMが温度範囲Trg内にある場合(YES)、処理は、ステップ193に進む。後述のステップ194によって温度TMが温度範囲Trg内に移行した場合も、ステップ193へ進む。
ステップ193では、制御装置81は、MHP装置2をAMRサイクルとして機能させるように通常運転を実行する。通常運転では、制御装置81は、MCE素子12に与えられる磁場を周期的に増減させるように磁場変調装置14を運転する。通常運転では、制御装置81は、磁場の変動に同期して熱輸送媒体の往復流を提供するように熱輸送装置16を運転する。言い換えると、磁場変調装置14は、通常運転における往復流に同期して、MCE素子12に印加される磁場を変調する。具体的には、制御装置81は、動力伝達機構71を接続状態に制御する。これにより、MCE素子12がAMRサイクルの素子として機能するように往復流がMCE素子12に供給される。通常運転は、AMR運転とも呼ぶことができる。
通常運転には、ステップ194が含まれている。通常運転において、制御装置81は、周期CP1、流長LC=L1の往復流をMCE素子12に供給するように熱輸送装置16を制御する。流長LCは、MCE素子12の長さLmceより短い。長さLmceは、熱輸送媒体の流れ方向におけるMCE素子12の長さに対応する。複数のMCE素子12が分散的に配置されている場合、長さLmceは、複数のMCE素子12が配置された範囲の長さに対応する。流長LCは、MCE素子12をAMRサイクルの素子として機能させるように設定されている。このとき、MHP装置2の外部と、MCE素子12との熱交換量は往復流と、その流長LCとによって所定の小さい量に制限されている。温度TMが温度範囲Trgの中にある場合、MCE素子12は高い磁気熱量効果を発揮する。MCE素子12と熱輸送媒体とは、AMRサイクルとして機能する。このため、高温端2aと低温端2bとの間には、所定の温度差が生成される。
図3は、MHP装置2におけるMCE素子12と、温度TEMPとの関係を示すグラフである。MCE素子12は、複数の素子を直列に接続することによって構成されている。複数の素子のそれぞれが高い磁気熱量効果を発揮する温度帯は、互いに異なる。これら温度帯は、互いに重複している。複数の素子は、高温端2aと低温端2bとの間の温度差を分担するように設定されている。このような構造は、カスケード接続構造と呼ぶことができる。図中には、6段のカスケード接続が例示されている。
MHP装置2が定格の運転状態にあるとき、MCE素子12は、高温端2aと低温端2bとの間に、上限温度Tihから下限温度Ticにわたる温度差を生成し、維持することができる。定格運転状態における温度差Tih−Ticは、上記温度範囲Trgに対応する。定格運転状態における温度差は、上記温度範囲Trgよりやや広くてもよい。
MCE素子12の初期温度が温度T11にある場合、MCE素子12は、自らが発揮する磁気熱量効果によって高温端2aの温度を上昇させ、低温端2bの温度を低下させる。この結果、MCE素子12は、太い実線で示される温度分布を生成する。
図2に戻り、温度TMが温度範囲Trg内にない場合(NO)、処理は、ステップ195に進む。ステップ195では、制御装置81は、MHP装置2を活性化するための活性化運転を実行する。温度TMが温度範囲Trgの外にある場合、MCE素子12は高い磁気熱量効果を発揮できない。このため、MHP装置2が所定の温度差を生成するまでに長い時間を要することがある。また、MHP装置2が所定の温度差を生成することができない場合がある。
図3に図示されるように、MCE素子12の初期温度が温度T01のような温度範囲Trgより高い温度である場合、MCE素子12は高い磁気熱量効果を発揮できない。すなわち、MCE素子12およびMHP装置2は、熱機器として機能できない。このため、MHP装置2は、期待される温度差を生成することができない。このような状態は、砂漠のような地理的条件によって、または夏季のような季節的な条件によって、もしくは、MHP装置2を運転した後の余熱のような運転条件に起因して発生することがある。
図示されるように、MCE素子12の初期温度が温度T02のように温度範囲Trgより低い場合、MCE素子12は高い磁気熱量効果を発揮できない。すなわち、MCE素子12およびMHP装置2は、熱機器として機能できない。このため、MHP装置2は、期待される温度差を生成することができない。このような状態は、寒冷地のような地理的条件によって、または冬季のような季節的な条件に起因して発生することがある。
図2に戻り、ステップ195における活性化運転では、MCE素子12の温度TMが温度範囲Trg内に移行するようにMHP装置2および空調装置1が運転される。この実施形態では、MHP装置2の外部の温度を利用してMCE素子12の温度が調節される。しかも、MHP装置2の外部の温度を、MHP装置2の内部に取り込みやすいように、熱輸送装置16が運転される。言い換えると、外部の温度がMCE素子12に伝わりやすくなるように熱輸送装置16が運転される。
活性化運転には、ステップ196が含まれている。ステップ196では、制御装置81は、流長LS=L2が提供されるように熱輸送装置16を制御する。活性化運転のための流長LSは、通常運転のための流長LCより長い。
具体的には、制御装置81は、動力伝達機構71を切断状態に制御する。これにより、ロータ7の回転が停止するから、流路切換機構18による流路の切り換えが停止する。その一方で、ポンプ17は運転を継続するから、MCE素子12には一方向の熱輸送媒体の流れが供給される。このとき、熱輸送媒体の流れの周期CP2は無限大である。ステップ196は、活性化運転における周期CP2を、通常運転における周期CP1より長くする周期延長部を提供する。このとき、流長LSは無限大である。よって、活性化運転における流長LSは、通常運転における流長LCより長く、かつ、MCE素子12の長さLmceより長い(LS>Lmce>LC)。この実施形態では、動力伝達機構71が、流長を変化させる流長切換機構を提供する。流長切換機構は、活性化運転における流長を、通常運転における流長より長くする。
この結果、作業室11には熱交換器3および/または熱交換器4を通過した熱輸送媒体が次々と導入される。一方向に流れる熱輸送媒体は、MCE素子12と熱交換することによりMCE素子12の温度を高温系統1aの温度および/または低温系統1bの温度に向けて接近させる。高温系統1aまたは低温系統1bは室内温度または室外温度である。このため、MCE素子12の温度を温度範囲Trgの中に移行させるように作用する。
図3には、活性化運転による温度変化が例示されている。MCE素子12の温度が温度範囲Trgを上回るT01である場合、活性化運転によってMCE素子12の温度を温度範囲Trgの中に移行させることができる場合がある。
例えば、車両を停止させた直後において、MHP装置2およびMCE素子12の温度は、自らの余熱と、車両の動力源(例えば電気モータや内燃機関)の余熱とによって大気温度を上回る高温に到達することがある。このような時に空調装置1を起動した場合、活性化運転は、MHP装置2およびMCE素子12の温度を室内の空気温度および/または室外の空気温度に向けて接近させる。これにより、MCE素子12全体の温度、またはMCE素子12の高温端2aおよび/または低温端2bの温度が、温度範囲Trgの中に移行する。これにより、MCE素子12の少なくとも一部が高い磁気熱量効果を発揮できるようになる。この結果、MHP装置2の起動を可能とすることができる。また、MHP装置2の迅速な起動を可能とすることができる。同様の作用効果は、MCE素子12の温度が温度範囲Trgを下回る低温である場合にも得ることができる場合がある。
活性化運転によってMCE素子12の温度が温度範囲Trgの中に到達すると、ステップ192からステップ193へ分岐する。この結果、活性化運転の後に通常運転が実行される。
図4は、活性化運転における熱輸送媒体の流れと、通常運転における熱輸送媒体の流れを示す。活性化運転では、一方向の流れが提供される。この実施形態では、ひとつの作業室11において正方向FORWD(+)の流れが提供され、他のひとつの作業室11において逆方向BACKWD(−)の流れが提供される。通常運転の前に、活性化運転が提供されることにより、MHP装置2の起動が促進される。
ステップ193は、通常運転部を提供する。通常運転部は、熱輸送媒体が往復的に所定の往復流長LCを流れる往復流を供給するように熱輸送装置16を制御することにより通常運転を提供する。ステップ195は、活性化運転部を提供する。活性化運転部は、通常運転の前に、活性化運転を提供し、実行する。活性化運転部は、熱輸送媒体が往復流長LCより長い活性化流長LSを流れるように熱輸送装置16を制御することにより活性化運転を提供する。ステップ196は、熱輸送装置16を制御することによって活性化運転における周期を、通常運転における周期より長くする周期延長部を提供している。同時に、ステップ196は、活性化運転における流長を、通常運転における流長より長くする流長延長部を提供している。
動力伝達機構71は、ポンプ17と流路切換機構18との連動を断続する。動力伝達機構71は、熱輸送装置16に属する要素のひとつである。ステップ192は、判定部を提供する。MCE素子12が高いMCE効果を発揮できる温度範囲Trgの外にMCE素子12の温度TMがあることを判定すると、活性化運転部によって通常運転の前に活性化運転を提供する。
この実施形態によると、通常運転の前に活性化運転を実行する熱磁気サイクル装置の運転方法が提供される。通常運転の前に、活性化運転が提供される。通常運転では、熱輸送媒体は往復的に所定の往復流長LCを流れる。一方、活性化運転では、熱輸送媒体は往復流長LCを上回る流長LSを流れる。活性化運転における長い流長は、MCE素子12に沿って、高温端2aまたは低温端2bから長い距離にわたって熱交換媒体を導入することを可能とする。よって、端部の温度がMCE素子12の広い範囲にわたって供給される。これにより、熱磁気サイクル装置の端部において熱輸送媒体が獲得する温度が、MCE素子12の広い範囲に迅速に供給される。MCE素子12の温度が異常な高温または異常な低温にある場合、熱磁気サイクル装置の端部において熱輸送媒体が獲得する温度を利用して、MCE素子12の温度を望ましい温度へ移行させることができる場合がある。例えば、MCE素子12の温度を、MCE素子12が高い磁気熱量効果を発揮できる温度範囲Trg内に移行させることができる場合がある。よって、熱磁気サイクル装置の起動が促進される。
以上に述べた実施形態によると、MHP装置2の起動が促進される。また、MCE素子12の初期温度が、MCE素子12が磁気熱量効果を発揮できる作動可能な温度範囲Trgの外にあっても、MHP装置2の外部の温度を利用することによってMCE素子12の温度を温度範囲Trgの中に移行させることができ、MHP装置2を起動することができる。また、高温系統1aおよび/または低温系統1bの温度を利用するから、少ないエネルギ消費で起動を促進できる。
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、熱輸送媒体の一方向の流れによって活性化運転を提供した。これに代えて、往復流によって活性化運転を提供してもよい。この実施形態では、通常運転において流長LCの往復流を提供し、活性化運転において流長LCより長い流長LSの往復流を提供する。
図5は、この実施形態のMHP装置2を示すブロック図である。MHP装置2は、制御装置81からの指令に従って吐出能力を可変の可変ポンプ217を有する。可変ポンプ217は、MCE素子12に沿って熱輸送媒体の流れを生成する。可変ポンプ217は、回転速度、または圧縮有効容積を変化させることによって吐出能力を変化させることができる。吐出能力は、吐出量および/または吐出圧力によって表すことができる。可変ポンプとして、多様な形式のポンプを利用可能である。例えば、遠心ポンプでは回転速度を変化させることによって吐出能力を変化させることができる。回転速度の変化は、動力源である電動機の制御によって簡単に実現できる。また、回転速度の変化は、変速機構によって提供されてもよい。また、有効容積が可変のポンプも利用することができる。例えば、ピストンポンプでは、ピストンのストロークを変化させることにより吐出能力を変化させることができる。
MHP装置2は、一方向に熱輸送媒体を流す可変ポンプ217を有する。流路切換機構18は、可変ポンプ217に対するMCE素子12および作業室11の接続状態を切り換えることによって、MCE素子12に沿って往復的に流れる往復流を提供する。
図6は、この実施形態の作動を示すフローチャートである。制御処理290は、制御装置81によって実行される。この実施形態では、ステップ196に代えてステップ296が実行される。
制御装置81は、ステップ193において通常運転を実行する。このとき、可変ポンプ217は所定の第1の吐出能力を発揮するように運転される。例えば、可変ポンプ217は所定の吐出圧を実現する。流路切換機構18が所定の周期で流路を切り換えることにより、MCE素子12には、所定の周期CP1と、所定の流長LC=L1とで特徴付けられる往復流が供給される。通常運転において提供される往復流は、MHP装置2がAMRサイクルとして機能することを可能とする。流長LCは、MCE素子12の流れ方向における長さLmceより短い。
制御装置81は、ステップ195において活性化運転を実行する。制御装置81は、往復流を提供するように熱輸送装置16を制御する。この実施形態では、活性化運転において、磁場変調装置14と、可変ポンプ217と、流路切換機構18とのすべてが作動状態におかれる。ただし、ステップ296において、制御装置81は、可変ポンプ217が通常運転における吐出能力より高い吐出能力を活性化運転において発揮するように可変ポンプ217を制御する。例えば、制御装置81は、可変ポンプ217の吐出量および/または吐出圧力を高めるように可変ポンプ217を制御する。制御装置81は、可変ポンプ217の吐出能力を相対的に高めるように変速機構を制御してもよい。
図7は、熱輸送媒体の流れを示すグラフである。この実施形態では、通常運転における周期CP1と、活性化運転における周期CP1とは同じである。可変ポンプ217の吐出能力が高くなると、MCE素子12には、周期CP1、流長LS=L2の往復流が提供される。可変ポンプ217の吐出能力が高められると、同一時間内において作業室11に流入する熱輸送媒体の量が増加するから、流長LSは、増加する。活性化運転における流長LSは、通常運転における流長LCより長い。さらにこの実施形態では、流長LSは、長さLmceより長い。この実施形態では、可変ポンプ217が流長切換機構を提供する。
この実施形態でも、ステップ195は、活性化運転部を提供する。活性化運転部は、通常運転における吐出能力より高い吐出能力を可変ポンプが発揮するように可変ポンプを制御する。これにより、往復流長LCより長い活性化流長LSが提供される。この実施形態でも、通常運転の前に活性化運転が提供されることによりMCE素子12の温度を作動可能な温度範囲Trg内へ移行させることができる場合がある。また、MHP装置2の起動を促進できる場合がある。しかも、この実施形態によると、MCE素子12の周囲における熱輸送媒体の流れを往復流としたままで、その流長を切り換えることによって活性化運転を提供することができる。
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、熱輸送媒体の一方向の流れによって活性化運転を提供した。これに代えて、往復流によって活性化運転を提供してもよい。この実施形態では、通常運転において流長LCの往復流を提供し、活性化運転において流長LCより長い流長LSの往復流を提供する。
図8は、この実施形態のMHP装置2を示すブロック図である。図中には、MHP装置2の具体的な断面図が図示されている。変速機構9は、円筒状のロータ7の内側に配置された遊星歯車機構によって提供される。ハウジング6は、ロータ7の両端に対向するように配置され、流路切換機構18を提供するリング部材18a、18bを有する。リング部材18a、18bは、往復流を提供するために周方向に沿って配置された複数の流路を区画形成している。リング部材18a、18bは、ロータ7の両端において軸方向に移動可能なシール機構を提供する。リング部材18a、18bは、ロータ7の両端における摩擦の抑制と、必要なシール性とを提供するために貢献する。
MHP装置2は、動力伝達機構72を備える。動力伝達機構72は、回転軸5aから動力を入力する。動力伝達機構72は、動力を2系統に出力する。動力伝達機構72は、動力を2系統に分配する分配機構と、一方の系統における動力伝達を断続するクラッチ機構とを含む。動力伝達機構72は、2重の回転軸5b、5cに動力を出力する。
内側の回転軸5bは、ポンプ17に連結されている。動力伝達機構72は、回転軸5bに動力を常時供給する。この結果、ポンプ17は常時運転される。外側の回転軸5cは、変速機構9のサンギアに連結されている。動力伝達機構72は、回転軸5cに供給する動力を断続可能である。動力伝達機構72は、制御装置81によって制御される。回転軸5cへ動力が供給されるとき、磁場変調装置14および流路切換機構18が作動する。回転軸5cへ動力が供給されないとき、磁場変調装置14および流路切換機構18が停止する。
制御装置81は、通常運転において回転軸5cへ動力を供給するように動力伝達機構72を制御する。これにより、熱輸送媒体は、MCE素子12に沿って、往復流として流れる。
制御装置81は、活性化運転において回転軸5cへの動力を遮断するように動力伝達機構72を制御する。これにより、熱輸送媒体は、MCE素子12に沿って一方向に流れる。この結果、活性化運転において通常運転における流長LCより長い流長LSが提供される。動力伝達機構72は、変速機構を有していてもよい。この場合、制御装置81は、活性化運転において、回転軸5cの回転数を通常運転における回転数より低下させるように動力伝達機構72を制御する。これにより、流路切換機構18による流路切換の周期、すなわち往復流の周期CPが長くなる。この結果、熱輸送媒体が1周期の間にMCE素子12に沿って流れる流長が長くなる。
この実施形態でも、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、熱輸送装置の一部、すなわちポンプ17、217および/または流路切換機構18を制御することによって流長の変化を提供した。流長は、多様な手法によって変化させるtことができる。例えば、熱輸送媒体の一部をバイパスすることによって流長を変化させてもよい。
図9は、この実施形態のMHP装置2を示すブロック図である。図10および図11は、MHP装置2の断面図を示す。図10は、図11のX−X断面を示す。図11は、図10のXI−XI断面を示す。
図9において、MHP装置2は、高温側のユニットと低温側のユニットとを有する。これら2つのユニットは、共通の動力源5によって駆動される。これら2つのユニットは、熱的に直列な関係にあり、ひとつのMHP装置2を提供する。2つのユニットは、単一の熱輸送装置16の両側に配置されている。低温側のユニットは、MCE素子12aおよび磁場変調装置14aを有する。高温側のユニットは、MCE素子12bおよび磁場変調装置14bを有する。
図10において、低温側のユニットは、ハウジング6aを有する。ハウジング6aは、複数の作業室11aを区画形成している。高温側のユニットは、ハウジング6bを有する。ハウジング6bは、複数の作業室11bを区画形成している。複数の作業室11a、11bは、MCE素子12a、12bを収容している。MCE素子12aは、高温端2aと中間低温端2cとの間に配置されている。MCE素子12bは、中間高温端2dと低温端2bとの間に配置されている。MCE素子12a、12bは、高温端2aと低温端2bとの間において、一連のMCE素子12として機能する。
熱輸送装置16は、容積型のポンプ417を有する。ポンプ417は、複数の気筒を有する。ポンプ417は、ピストンポンプである。ポンプ417は、それ自身が往復流を生成できる往復型のポンプとも呼ぶことができる。低温側のユニットとポンプ417との間には、変速機構9aが設けられている。高温側のユニットとポンプ417との間には、変速機構9bが設けられている。これら変速機構9a、9bは、ポンプ417の回転数を変化させるために利用することができる。低温側のユニットは、磁場変調装置14aを提供するロータ7aと永久磁石13aとを有する。高温側のユニットは、磁場変調装置14bを提供するロータ7bと永久磁石13bとを有する。
ポンプ417のひとつの気筒に、一対の作業室11a、11bが連通している。ひとつの作業室11a、11bの端部には、逆止弁6c、6dが設けられている。逆止弁6c、6dは、作業室11a、11b内において往復流を許容しながら、熱輸送媒体を外部へ取り出し、または導入することを可能とする。
図11において、ひとつのハウジング6bは、複数の作業室11b、例えば5つ、を提供する。ひとつの作業室11bは、ひとつのMCE素子12bを収容する。ロータ7bと永久磁石13とが回転することによりMCE素子12bに印加される磁場が変調される。
図9および図10に戻り、MHP装置2は、バイパス通路74a、74bを有する。バイパス通路74a、74bは、作業室11a、11bの少なくとも一部を経由することなく熱輸送媒体を流すことができるように作業室11a、11bの少なくとも一部と並列的に設けられている。バイパス通路74a、74bは、対応するひとつの作業室11a、11bの両端を連通するように設けられている。バイパス通路74a、74bは、熱輸送媒体が作業室11a、11bを経由することなく流れることを可能とするように形成され、配置されている。バイパス通路74aは、作業室11aの中間低温端2cにおける端部と高温系統1aとを連通する。バイパス通路74bは、作業室11bの中間高温端2dにおける端部と低温系統1bとを連通する。このように、バイパス通路74a、74bは、作業室11a、11bの少なくとも一部をバイパスするように形成され、配置されている。
バイパス通路74a、74bには、逆止弁75a、75bが設けられている。逆止弁75a、75bは、MHP装置2から外部へ向かう熱輸送媒体の流れのみを許容し、反対の流れを阻止する。
バイパス通路74a、74bには、電磁的に操作可能な開閉弁76a、76bが設けられている。開閉弁76a、76bは、バイパス通路74a、74bを開閉する。よって、開閉弁76a、76bが閉じているとき、熱輸送媒体はバイパス通路74a、74bを通過することができない。開閉弁76a、76bが開いているとき、熱輸送媒体は、バイパス通路74a、74bを通過することができる。このとき、熱輸送媒体は、逆止弁75a、75bによって許容される方向へのみ流れることができる。
バイパス通路74a、74b、逆止弁75a、75b、および開閉弁76a、76bは、作業室11a、11bを経由することなく熱輸送媒体を流すバイパス機構を提供する。MHP装置2は、複数のバイパス機構を備える。ひとつの作業室11a、11bに、ひとつのバイパス機構が設けられている。
開閉弁76a、76bは、制御装置81によって制御される。MHP装置2が備える複数の開閉弁76a、76bは、それぞれ独立して開閉可能である。高温側に属する複数の開閉弁76aは、連動して開閉される。低温側に属する複数の開閉弁76bは、連動して開閉される。
開閉弁76aまたは開閉弁76bの少なくとも一方が開いているとき、ポンプ417から吐出された熱輸送媒体は、対応する作業室11a、11bを経由することなく、対応するバイパス通路74a、74bを通過する。このとき、ポンプ417が吸入する熱輸送媒体は、逆止弁75a、75bの作用によって、対応するバイパス通路74a、74bを経由することなく、対応する作業室11a、11bを通過する。この結果、開閉弁76aまたは開閉弁76bの少なくとも一方が開いているとき、対応する作業室11a、11bには、熱輸送媒体の一方向の流れが提供される。開閉弁76aまたは開閉弁76bの少なくとも一方が閉じているとき、対応する作業室11a、11bには、熱輸送媒体の往復的な流れが提供される。
開閉弁76aが開かれると、作業室11aに高温端2aから中間低温端2cに向かう一方向流だけが供給される。作業室11aは、高温系統1aから高温系統1aの温度をもつ熱輸送媒体を次々と導入する。よって、MCE素子12aは高温系統1aの温度に向けて接近しやすい。しかも、MCE素子12aの中の高温端2aおよびその近傍の素子が、高温系統1aの温度に向けて接近しやすい。開閉弁76bが開かれると、作業室11bに低温端2bから中間高温端2dに向かう一方向流だけが供給される。作業室11bは、低温系統1bから低温系統1bの温度をもつ熱輸送媒体を次々と導入する。よって、MCE素子12bは低温系統1bの温度に向けて接近しやすい。しかも、MCE素子12bの中の低温端2bおよびその近傍の素子が、低温系統1bの温度に向けて接近しやすい。
このように、開閉弁76a、76bの一方だけを開くことにより、一方向流の方向が選択される。例えば、開閉弁76aが開かれているときの一方向流の方向を正方向FORWDとし、開閉弁76bが開かれているときの一方向流の方向を逆方向BACKWDとすることができる。
図12は、この実施形態の作動を示すフローチャートである。制御処理490は、制御装置81によって実行される。この実施形態では、ステップ497が追加的に実行される。
制御装置81は、ステップ193において通常運転を実行する。制御装置81は、動力源5を駆動することにより、磁場変調装置14と熱輸送装置16とを作動させる。さらに、制御装置81は、開閉弁76a、76bを閉じる。
この場合、作業室11a、11bには、所定の周期CP1と、所定の流長LCとで特徴付けられる往復流が供給される。往復流が提供されるとき、作業室11a、11bの端部では、熱輸送媒体の導入と排出とが繰り返される。作業室11a、11bの端部には、逆止弁6c、6dが設けられているから、新たな熱輸送媒体が次々と導入されるが、導入された熱輸送媒体の多くは再び排出される。よって、通常運転においては、作業室11a、11bの中における熱輸送媒体の入替量は小さい。
制御装置81は、ステップ195において活性化運転を実行する。制御装置81は、ステップ497において、開閉弁76a、または開閉弁76bの一方だけ、または両方を開く。制御装置81は、ステップ497において、MCE素子12a、12bの温度を温度範囲Trg内に移行させるために利用可能な開閉弁を選定する。制御装置81は、ステップ497において、選定された少なくともひとつの開閉弁を開く。ステップ497は、活性化運転における熱輸送媒体の流れ方向、すなわち外部温度の導入方向を選択する方向選択部を提供する。
例えば、高温系統1aの温度が、MCE素子12aの温度を温度範囲Trg内に移行させるために利用可能である場合、制御装置81は、開閉弁76aを開く。例えば、低温系統1bの温度が、MCE素子12bの温度を温度範囲Trg内に移行させるために利用可能である場合、制御装置81は、開閉弁76bを開く。制御装置81は、高温系統1aの温度と、低温系統1bの温度とに基づいて、MCE素子12a、12bの温度を温度範囲Trg内に向けて移行させるために有利なほうを選択してもよい。この場合、制御装置81は、選択された系統に対応する開閉弁76a、76bだけを開く。
制御装置81は、ステップ196において少なくとも熱輸送装置16を作動させる。この実施形態では、制御装置81は、磁場変調装置14と熱輸送装置16とを作動させる。
この場合、ポンプ417から吐出された熱輸送媒体は、開かれた開閉弁に対応するバイパス通路74a、74bを経由して、高温系統1aまたは低温系統1bへ直接的に排出される。一方、ポンプ417が吸入する熱輸送媒体は、開かれた開閉弁に対応する作業室11a、11bを経由して流れる。よって、作業室11a、11bには、所定の周期CP1と、所定の流長LSとで特徴付けられる間欠的な一方向流が供給される。
このとき、作業室11a、11bの端部、すなわち高温端2aまたは低温端2bでは、熱輸送媒体の導入だけが間欠的に繰り返される。作業室11a、11bの端部には、高温系統1aまたは低温系統1bから新たな熱輸送媒体が次々と導入される。よって、活性化運転においては、積算的な観点において長い流長LSが実現される。活性化運転における作業室11a、11b内の熱輸送媒体の入替量は、通常運転における入替量より多い。
図13は、熱輸送媒体の流れを示すグラフである。この実施形態では、通常運転における周期CP1と、活性化運転における周期CP1とは同じである。バイパス通路74a、74bの少なくとも一方が開かれることにより、対応する作業室11a、11bには、間欠的な一方向流が供給される。この間欠的な一方向流は、活性化運転の期間中にわたって繰り返される。活性化運転の期間は、周期CP1より十分に長い。活性化運転の期間は、n回の周期CP1に相当する。この場合、流長LSは、LS=L3×nと表すことができる。活性化運転における流長LSは、通常運転における流長LCより長い。しかも、流長LSは、長さLmceより長い。
この実施形態では、熱輸送装置16は、作業室11a、11b内において一方向流だけを許容する整流機構を備える。整流機構は、バイパス通路74a、74bと、逆止弁75a、75bとによって提供することができる。また、整流機構は、6c、6dによって提供されてもよい。この場合、ステップ195が提供する活性化運転部は、整流機構によって、MCE素子12に一方向流を供給することにより活性化流長LSを提供する。活性化運転部は、整流機構によって間欠的な一方向流を供給する。整流機構は往復流を半波整流する。整流機構は全波整流を提供するように構成されてもよい。
この実施形態によると、MHP装置2の基本構成部分に変更を加えることなく、バイパス機構を付加することによって一方向流を供給することができる。この実施形態では、バイパス機構および整流機構が流長切換機構を提供する。この実施形態でも、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、通常運転のための往復流を供給する熱輸送装置の一部を制御することによって入替量を調節した。入替量は、多様な手法によって変化させることができる。例えば、入替量を変化させるための付加的なポンプを設けてもよい。
図14は、この実施形態のMHP装置2を示すブロック図である。MHP装置2は、熱輸送装置16を備える。この実施形態の熱輸送装置16は、往復流を供給するための主要なポンプ17を備える。ポンプ17は、相補的に運動する多気筒のピストンポンプによって提供できる。
熱輸送装置16は、バイパス通路74cを有する。バイパス通路74cは、作業室11を含む閉回路を構成するように形成され、配置されている。バイパス通路74cは、作業室11の両端を連通可能である。熱輸送装置16は、バイパス通路74cに設けられた電磁的に操作可能な開閉弁76cを有する。熱輸送装置16は、さらに、MCE素子12に沿って一方向に流れる一方向流を供給するための付加的なポンプ77を備える。ポンプ77は、バイパス通路74c上に設けられている。バイパス通路74c、開閉弁76c、ポンプ77は、バイパス機構を提供する。このバイパス機構は、MCE素子12に熱輸送媒体の一方向流を供給する。
通常運転において、制御装置81は、磁場変調装置14と、熱輸送装置16とを作動させる。熱輸送装置16は、作業室11に往復流を供給する。これによりMCE素子12はAMRサイクルの素子として機能する。
活性化運転において、制御装置81は、少なくとも開閉弁76cを開き、ポンプ77を作動させる。ポンプ77は、作業室11内を一方向に流れる熱輸送媒体の一方向流を供給する。この結果、作業室11内には、流長LSの熱輸送媒体の流れが提供される。このとき、作業室11内における熱輸送媒体の入替量が、通常運転における入替量より多くなる。活性化運転においては、制御装置81は、ポンプ17を作動させてもよい。この場合、ポンプ77は、一方向のバイアス成分を供給する。ポンプ77が提供するバイパス通路74c内の流量は任意に設定することができる。
この実施形態では、付加的に設けられたバイパス通路74cとポンプ77とが流長切換機構を提供する。この実施形態でも、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第6実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、作業室11を含む閉回路を形成した。これに代えて、作業室11と、外部の系統との両方を含む閉回路を形成するようにバイパス通路を形成し、配置してもよい。
図15は、この実施形態のMHP装置2を示すブロック図である。MHP装置2は、バイパス通路74dを有する。バイパス通路74dは、作業室11と、外部系統のひとつとしての低温系統1bの一部とを含む閉回路を構成するように形成され、配置されている。バイパス通路74dは、作業室11の一端から、低温系統1bの熱交換器4を経由して、作業室11の他端へ到達する。MHP装置2は、電磁的に操作可能な開閉弁78a、78bを有する。開閉弁78a、78bは、熱交換器4を、低温系統1bと、バイパス通路74dとに選択的に接続するために利用される。開閉弁78a、78bは、制御装置81によって制御される。
通常運転において、制御装置81は、磁場変調装置14と、熱輸送装置16とを作動させる。これによりMCE素子12はAMRサイクルの素子として機能する。
活性化運転において、制御装置81は、少なくとも開閉弁76cを開き、ポンプ77を作動させる。このとき、制御装置81は、開閉弁78a、78bを閉じることが望ましい。これにより、ポンプ77は、一方向流を供給する。この実施形態でも、活性化運転における流長LSは、通常運転における流長LCより長い。しかも、熱交換器4を通過した熱輸送媒体が作業室11に導入される。この実施形態でも、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらにこの実施形態によると、低温系統1bおよび低温系統1bが熱交換する外気などの温度がより迅速にMCE素子12に供給される。
(第7実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、活性化運転は、MCE素子12の全体の温度、またはMCE素子12の一部の温度を、そこにあるMCE素子12またはその一部の素子が高い磁気熱量効果を発揮しうる温度に調節する。これに代えて、この実施形態では、活性化運転は、MCE素子12に含まれる少なくとも2つの素子の温度を、それらの素子が高い磁気熱量効果を発揮できる温度に調節する。言い換えると、活性化運転は、MCE素子12の上に、温度勾配を提供する。MCE素子12においてカスケード接続された複数の素子のひとつの素子が高い磁気熱量効果を発揮できる温度帯は、活性化温度帯とも呼ばれる。
この実施形態では、MHP装置2が再起動されるときに、高温端2aにおいて得られる高温および/または低温端2bにおいて得られる低温の少なくとも一方が、MCE素子12に供給される。すなわち、この実施形態でも、活性化運転部は、高温端2aにおいて得られる高温および/または低温端2bにおいて得られる低温を利用してMCE素子12の温度を調節する。これにより、2つ以上の素子が高い磁気熱量効果を発揮し、自らの磁気熱量効果によって定常的な運転状態へ移行できるように、すなわち活性化されるように、MCE素子12の上の少なくとも一部に温度勾配が提供される。
特定の用途においては、冷蔵庫または冷凍庫内の冷熱と、外部環境の温熱とがMCE素子12に導入される。望ましい形態では、MCE素子12に含まれる多くの素子が、直ちに、高い磁気熱量効果を発揮できるよう、MCE素子12の温度勾配が最適化される。
図16は、この実施形態におけるフローチャートである。この実施形態では、ステップ792が採用される。ステップ792において、制御装置81は、MHP装置2が起動された場合に、活性化運転が必要とされているか否かを判定する。ステップ792の判定は、活性化運転を実行するか否かの判定でもある。ステップ792における処理は、活性化運転を開始するか否かの判定と、活性化運転を終了して通常運転に移行するか否かの判定とを含む。よって、ステップ792は、活性化運転を開始するための手段と、活性化運転を終了するための手段とを提供する。
ステップ792は、MHP装置2の再起動が、MHP装置2が停止された後の所定の期間内であるか否かの判定を含む。これにより、制御装置81が提供する活性化運転部は、MHP装置2の運転によって生成された高温端2aと低温端2bとの間の温度差が、高温端2aと低温端2bとの間に残留している期間における再起動時に活性化運転を提供する。制御装置81は、MCE素子12に含まれる2つ以上の素子の温度を、それらが高い磁気熱量効果を発揮できる温度に調節できるような温度差が残留しているか否かを判定する。
ステップ792は、高温端2aの温度および低温端2bの温度が、少なくとも2つの素子の温度を、それらの素子が高い磁気熱量効果を発揮できる温度範囲内に調節することができる所定の温度範囲の中にあるか否かの判定を含む。肯定的な判定に応答して、制御装置81は、通常運転の前に、活性化運転部によって活性化運転を提供する。
少なくとも2つの素子の温度をそれらの活性温度帯に調節するためには、高温端2aと低温端2bとの間に十分に大きい温度差が必要である。例えば、高温端2aと低温端2bとの間には、少なくとも2つ以上の素子の活性温度帯にわたる温度差が必要である。ステップ792は、高温端2aの温度と、低温端2bの温度とが、所定の温度差を有しているか否かの判定を含む。例えば、高温端2aと低温端2bとの温度差が少ない場合、活性化運転はMHP装置2の起動を遅らせるおそれがある。そこで、ステップ792は、高温端2aと低温端2bとの温度差が少ない場合に、活性化運転を経由することなく、通常運転に移行するように構成される場合がある。
ステップ792は、活性化運転によって、少なくとも2つの素子の温度が、それらの素子が高い磁気熱量効果を発揮できる温度範囲内に調節されたか否かの判定を含む。この判定は、活性化運転から通常運転へ移行するか否かの判定を提供する。この実施形態では、この判定は、MCE素子12の上における任意の位置の温度が、所定温度範囲に到達したか否かの判定によって提供される。例えば、MCE素子12の中間部分の温度が、その位置に設けられた素子が高い磁気熱量効果を発揮できる温度帯に到達したか否かの判定が用いられる。
図17は、MCE素子12の上における温度分布を示すグラフである。図中には、MCE素子12が図示されている。MCE素子12は、カスケード接続された複数の素子を含む。
太い実線NMLは、通常運転が所定の期間にわたって継続された場合に得られる定格としての温度分布である。この状態では、MCE素子12に含まれるすべての素子が、高い磁気熱量効果を発揮している。網掛けされた四角形は、ひとつの素子が高い磁気熱量効果を発揮する温度帯を示している。この温度帯は、ひとつの素子が自らの磁気熱量効果によって熱負荷に抗して図示される温度分布NMLへ近づいてゆける温度帯でもある。ひとつの素子の温度が、この温度帯にあると、その素子は、自らを活性化すること、言い換えると起動することができる。
太い一点鎖線RSTは、MHP装置2が実線NMLの状態で運転された後に、停止された後の一時停止期間における温度分布を示す。MHP装置2は、温度調節の対象である室の外に設定される場合がある。この場合、MHP装置2の運転が停止されると、MHP装置2の温度は、外気温度Tamに向けて急速に変化する。
高温端2bの温度は、通常運転中に外気温度Tamより高い上限温度Tihに到達しているが、MHP装置2の運転が停止されると外気温度Tamへ低下する。高温端2bに近い素子の温度も低下する。冷房または冷凍用途の場合、多くの素子の温度は、外気温度Tamにむけて上昇する。
一方で、低温端2bの温度は、低温系統1bの保温機能および/または熱容量に起因して、下限温度Ticからわずかに高い温度に維持される。低温系統1bの温度は、温度調節の対象である室の保温構造および/または低温系統1bの熱容量によって維持される。図示の例では、低温端2bの温度は、低温系統1bまたは温度調節の対象である室の保温温度(目標温度)Tcsに維持されている。
低温端2bの温度は、MHP装置2が停止された後の経過時間に応じて徐々に上昇する。低温端2bの温度は、所定の期間にわたって外気温度Tamより低い温度に維持される。この期間は、低温系統1bおよび温度調節の対象である室の保温性能に依存する。なお、MHP装置2が暖房用途または加熱用途に使用される場合、高温端2aの温度が維持される。
MHP装置2が停止されてから、主たる熱負荷を受ける端部、すなわち高温端2aまたは低温端2bの温度が環境温度である外気温度に一致するまでの期間は、一時停止期間、ホットリスタート期間または余熱再起動期間と呼ばれる。この実施形態は、余熱再起動期間においてMHP装置2が再起動される場合に、効率的な再起動を可能とする。
図18は、余熱再起動期間においてMHP装置2が再起動され、かつ、活性化運転が実行された場合に得られる温度分布の一例を示している。破線TRNは、一点鎖線RSTから、実線NMLへ移行する過程における温度分布の一例を示している。一点鎖線RSTの状態から活性化運転が実行される。活性化運転により、低温端2bから、低温系統1bの低温がMCE素子12に導入される。この結果、MCE素子12の温度は、保温温度Tscに向けて徐々に低下する。このとき、MCE素子12の温度分布は、上に凸の温度勾配を生じながら徐々に変化してゆく。
破線TRNによって示される温度分布は、やがて、複数の素子が高い磁気熱量効果を発揮できる複数の温度帯の上を横切る状態に到達する。この結果、活性化運転部は、複数の素子の中の少なくとも2つの素子の温度を、それらの素子が高い磁気熱量効果を発揮できる温度に調節する。このときの温度分布は、起動温度分布とも呼ぶことができる。起動温度分布は、少なくとも2つの素子が、自らの磁気熱量効果によって熱負荷に抗して温度差を作り出すことができる温度分布でもある。起動温度分布は、少なくとも2つの素子を活性化することができる温度分布でもある。このように、活性化運転部は、複数の素子が通常運転において生成する通常温度分布(NML)に近い起動温度分布(TRN)を、少なくとも2つの素子に提供する。
MCE素子12の温度分布が起動温度分布(TRN)に到達したか否かは、MCE素子12の温度を観測し、閾値と比較することによって判定することができる。この判定は、活性化運転を終了するための手段を提供する。制御システムは、温度取得部として、MCE素子12の中の特定の位置P1の温度を検出する温度センサ782を備える。位置P1は、MHP装置2の試験的な運転に基づいて、起動温度分布への到達を判定するために適した位置として選定される。温度センサ782により検出された温度は、制御装置81に入力される。ステップ792において、制御装置81は、位置P1における温度が、閾値温度Tthを下回ったか否かを判定する。閾値温度Tthは、MHP装置2の試験的な運転に基づいて、起動温度分布への到達を判定するために適した温度として選定される。ステップ792において起動温度分布への到達が肯定的に判定されると、活性化運転が停止され、通常運転が開始される。
図18の例では、活性化運転が実行されると、高温端2aから2番目、および3番目の素子の温度が、活性化温度帯の中に調節される。また、高温端2aから4番目の素子の温度も、活性化温度帯の近傍に調節される。また、低温端2bに近い6番目の素子の温度は、保温温度Tcsによって活性化温度帯の中にある。なお、高温端2aに最も近い1番目の素子の温度は、活性化温度帯の中に調節することができない。
次に、活性化運転の後に、通常運転に移行すると、高温端2aから2番目、および3番目の素子が活性化、言い換えると高い磁気熱量効果を発揮する。この結果、高温端2aから2番目、および3番目の素子における温度差が大きくなる。これにより、隣接する1番目の素子の温度が上昇し、1番目の素子の温度が活性化温度帯に入る。同時に、4番目の素子の温度が低下し、4番目の素子の温度が活性化温度帯に入る。このようにして、活性化された素子が徐々に増加し、MCE素子12の上における温度差が大きくなる。
この実施形態によると、MHP装置2が再起動されるときに、活性化運転が実行される。活性化運転は、高温端2aおよび/または低温端2bに得られる低温および/または高温を利用して、少なくとも2つの素子に起動温度勾配を提供するように実行される。しかも、この実施形態では、高温端2aおよび/または低温端2bに残存する温度、すなわち前の運転による低温および/または高温が利用される。この結果、MHP装置2の起動が促進される。
(第8実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、起動温度分布(TRN)への到達は、位置P1における温度で判定される。これに代えて、起動温度分布への到達は、多様な手法によって判定することができる。この実施形態では、MCE素子12の上における温度勾配に基づいて、起動温度分布への到達が判定される。
図19において、実線NMLが示す温度分布の温度勾配GD0は、MCE素子12の性能に依存して固定の値である。MCE素子12の温度が外気温度Tamに一致しているとき、一点鎖線RSTが示す停止期間中における温度分布の温度勾配Grd1は、ほぼゼロか、所定の下限値にある。余熱再起動期間においてMHP装置2が再起動され、かつ、活性化運転が実行されると、温度分布は、複数の破線で示されるように徐々に変化する。破線で示される温度分布は、一点鎖線RSTから、破線TRNへ向けて、徐々に移行する。このとき、温度勾配は、徐々に大きくなる。温度勾配は、定常運転における温度勾配GD0に徐々に近づいてゆく。
温度勾配は、MCE素子12の上における任意の2つの位置P1、P2の間の温度によって観測することができる。制御システムは、温度取得部として、MCE素子12の中の特定の位置P1の温度を検出する温度センサ882a、および、位置P1とは異なる位置P2の温度を検出する温度センサ882bを備える。図示の例では、温度勾配は、GD1、GD2、GD3の順で変化している。位置P1、P2は、MHP装置2の試験的な運転に基づいて、起動温度分布への到達を判定するために適した位置として選定される。温度センサ882a、882bにより検出された温度は、制御装置81に入力される。ステップ792において、制御装置81は、位置P1と位置P2との間における温度勾配が、温度勾配GD0に近い所定の閾値勾配を上回ったか否かを判定する。閾値勾配は、MHP装置2の試験的な運転に基づいて、起動温度分布への到達を判定するために適した勾配として選定される。閾値勾配は、温度勾配GD0に近い所定範囲として設定されてもよい。ステップ792において起動温度分布への到達が肯定的に判定されると、活性化運転が停止され、通常運転が開始される。
(他の実施形態)
この開示は、実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。この開示は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。実施形態は追加的な部分をもつことができる。実施形態の部分は、省略される場合がある。実施形態の部分は、他の実施形態の部分と置き換え、または組み合わせることも可能である。実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示である。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。この開示のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
例えば、上記実施形態では、車両用空調装置を例示した。これに代えて、実施形態は、住宅用の空調装置でもよい。実施形態は、水を加熱する給湯装置でもよい。また、上記実施形態では、室外の空気を主要な熱源とするMHP装置2を説明した。これに代えて、水、土などの他の熱源を主要熱源として利用してもよい。
また、上記実施形態では、熱磁気サイクル装置の一形態であるMHP装置2を説明した。これに代えて、実施形態は、熱磁気サイクル装置の一形態である熱磁気エンジン装置でもよい。例えば、上記実施形態のMHP装置2の磁場変化と熱輸送媒体の流れとの位相を調節することにより熱磁気エンジン装置を提供することができる。
また、上記実施形態では、MHP装置2の外部の熱交換器3、4に熱輸送媒体を供給した。これに代えて、一次媒体である熱輸送媒体と、二次媒体とを熱交換する熱交換器をMHP装置2内に設け、二次媒体を高温系統1aと低温系統1bとに供給してもよい。
上記実施形態では、非容積型の遠心式ポンプまたは容積型のレシプロポンプを採用した。これに代えて、多様な形式のポンプを採用することができる。例えば、ベーン型ポンプ、ターボ型ポンプ、再生ポンプ、ギヤポンプなどを利用することができる。
また、上記実施形態では、作業室11とMCE素子12とを有する素子ベッドが回転する構成を採用した。これに代えて、素子ベッドと磁場変調装置14との間の相対的な回転と、素子ベッドと流路切換機構18との間の相対的な回転とを提供するための多様な構成を採用することができる。例えば、静止型の素子ベッドと、素子ベッドに対して相対的に回転する流路切換機構とを採用してもよい。
活性化運転における流長を、通常運転における流量より長くするために、多様な構成および方法を採用することができる。一例では、活性化運転における熱輸送媒体の流れの振幅および/または周期が、通常運転における熱輸送媒体の流れの振幅および/または周期を上回るように熱輸送装置16が制御される。例えば、第1実施形態では、活性化運転において周期を∞に設定することによって活性化運転において長い流長を提供した。これに代えて、活性化運転における周期を、通常運転における周期より大きくする多様な構成および方向を採用することができる。例えば、活性化運転における周期を、通常運転における周期の数倍に設定してもよい。ポンプ17の吐出能力を維持したまま、周期が長くなることにより、流長を長くすることができる。また、活性化運転における振幅を、通常運転における振幅より大きくする多様な構成および方向を採用することができる。例えば、ポンプの揚程を増加させるために、ポンプの回転速度の増加、ポンプの吐出容量の増加、付加的ポンプの利用を含むポンプ要素の増加、ピストンポンプにおけるストロークの増加など多様な構成と方法とを採用することができる。
また、流長の変化は、例えば、第4実施形態における流出側の逆止弁6cを閉状態に固定する整流機構を採用することにより、作業室11内の流れを整流することによって実現されてもよい。この場合、逆止弁6c、6dの少なくともひとつは電磁的に操作可能な電磁弁によって提供される。
また、複数の実施形態に例示された複数の構成および方法を組み合わせてもよい。例えば、流長を増加させるために、第1実施形態のような周期の延長と、第2実施形態のような振幅の増大とを併用してもよい。また、第2実施形態のような振幅の増大と、第4実施形態のようなバイパスによる整流とを併用してもよい。
第7実施形態および第8実施形態では、活性化運転の期間はMCE素子12の温度を観測することによって規定されている。これに代えて、MHP装置2が再起動された後の所定期間にわたって温度に関係なく活性化運転が実行されてもよい。例えば、所定量の熱輸送媒体が流されるまでの期間にわたって活性化運転が実行されてもよい。また、所定の往復周期だけ活性化運転が実行されてもよい。また、予め設定された時間にわたって活性化運転が実行されてもよい。これらの変形例においても、活性化運転によってMHP装置2の起動が促進される場合がある。また、制御装置81は、MCE素子12に含まれる複数の素子のうちの所定の素子に、起動温度分布を提供するように活性化運転における振幅および/または周期を調節してもよい。かかる構成においては、再起動時において高温端2aと低温端2bとの間に残留している温度差、およびそれらの温度に応じて、望ましい素子群に、起動温度分布が提供される。
また、上記実施形態では、バイパス通路74a、74b、74c、74dが提供するバイパス機構は、作業室11、11a、11bをその全長にわたってバイパスする。これに代えて、バイパス機構は作業室11、11a、11bの一部だけをバイパスするように形成され、配置されてもよい。例えば、バイパス機構が作業室11、11a、11bの端部だけをバイパスすることにより、作業室11、11a、11bの端部にだけ間欠的な一方向流が供給される。この場合、MCE素子12の端部を迅速に温度範囲Trg内に移行させることができる。