以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
本発明を適用した第1実施形態について、図1〜図14を参照して説明する。
図1は、発明を実施するための第1実施形態に係る車両用空調装置1を示すブロック図である。車両用空調装置1は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2を備える。磁気熱量効果型ヒートポンプ装置2はMHP(Magneto-caloric effect Heat Pump)装置2とも呼ばれる。MHP装置2は、磁気ヒートポンプ装置である熱磁気サイクル装置を提供する。
この明細書においてヒートポンプ装置の語は広義の意味で使用される。すなわち、ヒートポンプ装置の語には、ヒートポンプ装置によって得られる冷熱を利用する装置と、ヒートポンプ装置によって得られる温熱を利用する装置との両方が含まれる。冷熱を利用する装置は、冷凍サイクル装置とも呼ばれることがある。よって、この明細書においてヒートポンプ装置の語は冷凍サイクル装置を包含する概念として使用される。
車両用空調装置1は、MHP装置2の高温側に設けられた熱交換器3を有する。熱交換器3は、MHP装置2の高温と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器3は、主として放熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器3は、MHP装置2の熱輸送媒体と、空気との熱交換を提供する。熱交換器3は、車両用空調装置1における高温系統機器のひとつである。熱交換器3は、例えば車両の室内に設置され、空調用空気と熱交換することにより空気を温める。
車両用空調装置1は、MHP装置2の低温側に設けられた熱交換器4を有する。熱交換器4は、MHP装置2の低温端と、媒体、例えば空気との間の熱交換を提供する。熱交換器4は、主として吸熱のために用いられる。図示の例では、熱交換器4は、MHP装置2の熱輸送媒体と、熱源媒体との熱交換を提供する。熱交換器4は、車両用空調装置1における低温系統機器のひとつである。熱交換器4は、例えば車両の外部に設置され、外気と熱交換する。
MHP装置2は、MHP装置2を駆動するための回転軸2aを有する。回転軸2aは、動力源5と作動的に連結されている。よって、MHP装置2は、動力源5によって回転駆動される。動力源5は、MHP装置2に回転動力を提供する。動力源5は、MHP装置2の唯一の動力源である。動力源5は、電動機、内燃機関など回転機器によって提供される。動力源の一例は、車両に搭載された電池によって駆動される電動機である。以下の説明において、動力源5を、電動機5またはモータ5と呼ぶ場合がある。
MHP装置2は、ハウジング6を備える。ハウジング6は回転軸2aを回転可能に支持している。MHP装置2は、ロータ7を備える。ロータ7は、ハウジング6内に回転可能に支持されている。ロータ7は、回転軸2aから直接的にまたは間接的に回転力を受けて、回転する。ロータ7は、動力源5によって回転させられる回転体である。ロータ7は、円筒状の部材である。
ロータ7は、熱輸送媒体が流れることができる作業室11を形成する。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向に沿って延びている。ひとつの作業室11は、ロータ7の軸方向の両方の端面において開口している。ロータ7は、複数の作業室11を備えることができる。複数の作業室11は、ロータ7の回転方向に沿って配列されている。
ロータ7は、磁気熱量素子12を備える。磁気熱量素子12は、MCE(Magneto-Caloric Effect)素子12とも呼ばれる。MHP装置2は、MCE素子12の磁気熱量効果を利用する。MHP装置2は、MCE素子12によって低温端と高温端とを生成する。MCE素子12は、低温端と高温端との間に設けられている。図示の例では、図中の右側が低温端であり、図中の左端が高温端である。
MCE素子12は、作業室11内に、熱輸送媒体と熱交換するように配置されている。MCE素子12は、ロータ7に固定され、保持されている。MCE素子12は、熱輸送媒体の流れ方向に沿って配置されている。MCE素子12は、ロータ7の軸方向に沿って細長く延在している。ロータ7は、複数のMCE素子12を備えることができる。複数のMCE素子12は、ロータ7の回転方向に沿って互いに離れて配置されている。
MCE素子12は、外部磁場の強弱の変化に応答して発熱と吸熱とを生じる。MCE素子12は、外部磁場の印加により発熱し、外部磁場の除去により吸熱する。MCE素子12は、外部磁場が印加されることによって電子スピンが磁場方向に揃うと、磁気エントロピーが減少し、熱を放出することによって温度が上昇する。また、MCE素子12は、外部磁場が除去されることによって電子スピンが乱雑になると、磁気エントロピーが増加し、熱を吸収することによって温度が低下する。MCE素子12は、常温域において高い磁気熱量効果を発揮する磁性体によって作られている。例えば、ガドリウム系材料、またはランタン−鉄−シリコン化合物を用いることができる。また、マンガン、鉄、リンおよびゲルマニウムの混合物を用いることができる。MCE素子12には、外部磁場の印加により吸熱し、外部磁場の除去により発熱する素子を利用してもよい。
MHP装置2は、ロータ7と対向して配置されたステータ8を有する。ステータ8は、ハウジング6の一部によって提供されている。ステータ8は、ロータ7の径方向内側および/または径方向外側に配置され、ロータ7と径方向に関して対向する部位を有する。これら径方向に関して対向する部位は、磁場変調装置を提供するために利用される。ステータ8は、ロータ7の軸方向一端および/または軸方向他端に配置され、ロータ7と軸方向に関して対向する部位を有する。これら軸方向に対向する部位は、熱輸送装置、具体的には流路切換機構を提供するために利用される。
MHP装置2は、MCE素子12をAMR(ActiveMagnetic Refrigeration)サイクルの素子として機能させるための磁場変調装置14と熱輸送装置16とを備える。磁場変調装置14は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。磁場変調装置14は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって磁場を周期的に増減させる。磁場変調装置14は、回転軸2aに与えられる回転動力によって駆動される。熱輸送装置16は、ポンプ17と、流路切換機構18とを有する。流路切換機構18は、ロータ7と、ステータ8とによって提供される。流路切換機構18は、ステータ8に対するロータ7の相対的な回転運動によって機能する。流路切換機構18は、熱輸送媒体の流路に対する作業室11の接続状態を切換えることにより、作業室11およびMCE素子12に対する熱輸送媒体の流れ方向を反転するように切換える。
磁場変調装置14は、MCE素子12に外部磁場を与えるとともに、その外部磁場の強さを増減させる。磁場変調装置14は、MCE素子12を強い磁界内に置く励磁状態と、MCE素子12を弱い磁界内またはゼロ磁界内に置く消磁状態とを周期的に切換える。磁場変調装置14は、MCE素子12が強い外部磁場の中に置かれる励磁期間、およびMCE素子12が励磁期間より弱い外部磁場の中に置かれる消磁期間を周期的に繰り返すように外部磁場を変調する。磁場変調装置14は、後述する熱輸送媒体の往復的な流れに同期して、MCE素子12への磁場の印加と除去とを繰り返す。磁場変調装置14は、外部磁場を生成するための磁力源13、例えば永久磁石、または電磁石を備える。
具体的には、磁場変調装置14は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。磁場変調装置14は、第1位置にあるMCE素子12を強い磁場の中に位置付ける。磁場変調装置14は、第2位置にあるMCE素子12を弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が強い磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第1位置に位置付ける。第1方向は、低温端から高温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通するときに、その作業室11の中のMCE素子12が強い磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第1位置に位置付ける。
磁場変調装置14は、MCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に位置付けられるように、MCE素子12を第2位置に位置付ける。第2方向は、高温端から低温端に向かう方向である。磁場変調装置14は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通するときに、MCE素子12が弱い磁場またはゼロ磁場の中に置かれるようにMCE素子12を第2位置に位置付ける。
熱輸送装置16は、MCE素子12が放熱または吸熱する熱を輸送するための熱輸送媒体と、この熱輸送媒体を流すための流体機器とを備える。熱輸送装置16は、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体をMCE素子12に沿って流す装置である。熱輸送装置16は、MCE素子12に沿って熱輸送媒体を往復的に流す。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による外部磁場の変化に同期して、熱輸送媒体の往復的な流れを発生させる。熱輸送装置16は、磁場変調装置14による磁場の増減に同期して熱輸送媒体の流れ方向を切換える。
MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体は一次媒体と呼ばれる。一次媒体は、不凍液、水、油などの流体によって提供することができる。熱輸送装置16は、熱輸送媒体を流すためのポンプ17を備える。ポンプ17は、一方向に熱輸送媒体を流す一方向ポンプである。ポンプ17は、熱輸送媒体を吸入する吸入口と、熱輸送媒体を吐出する吐出口とを有する。ポンプ17は、熱輸送媒体の環状の流れ経路の上に配置されている。ポンプ17は、環状の流れ経路の中に熱輸送媒体の一方向の流れを生じさせる。ポンプ17は、回転軸2aによって駆動される。ポンプ17は、回転軸2aによって駆動される容積型ポンプである。ポンプ17は、本実施形態における流体ポンプ装置に相当する。
熱輸送装置16は、流路切換機構18を備える。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12に関する熱輸送媒体の流れ方向を反転させるように、作業室11に対して熱輸送媒体の流路を切換える。言い換えると、流路切換機構18は、一方向型のポンプ17によって生成される熱輸送媒体の一方向の流れの中における作業室11の配置を流れ方向に関して反転させる。流路切換機構18は、ポンプ17を含む環状の流路の中における往路と復路とにひとつの作業室11を交互に位置付ける。流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびひとつのMCE素子12と、ポンプ17を含む環状の流路との接続関係を少なくとも2つの状態に切換える。第1の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吸入口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吐出口に連通した状態である。第2の状態は、作業室11の一端がポンプ17の吐出口に連通し、作業室11の他端がポンプ17の吸入口に連通した状態である。
具体的には、流路切換機構18は、ひとつの作業室11およびMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に位置付ける。流路切換機構18は、第1位置にあるMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、第2位置にあるMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体を流すように、そのMCE素子12を収容する作業室11を流れ経路に連通させる。流路切換機構18は、MCE素子12に対して熱輸送媒体を往復的に流すように、ポンプ17を含む熱輸送媒体の流れ経路と、MCE素子12、すなわち作業室11との接続状態を切換える。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第1位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吸入口とを連通し、他端とポンプ17の吐出口とを連通する。
流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12に沿って第1方向とは反対の第2方向に熱輸送媒体が流れるように、そのMCE素子12を収容する作業室11と流路とを接続する。流路切換機構18は、ひとつのMCE素子12が第2位置にあるときに、そのMCE素子12を収容する作業室11の一端とポンプ17の吐出口とを連通し、他端とポンプ17の吸入口とを連通する。
MHP装置2は、熱交換器3から熱輸送媒体を受け入れる高温側入口16aを有する。高温側入口16aはポンプ17の吸入口に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器3へ向けて熱輸送媒体を供給する高温側出口16bを有する。高温側出口16bは、第1位置にある作業室11の一端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4から熱輸送媒体を受け入れる低温側入口16cを有する。低温側入口16cは、第1位置にある作業室11の他端に連通可能である。MHP装置2は、熱交換器4へ向けて熱輸送媒体を供給する低温側出口16dを有する。低温側出口16dは、第2位置にある作業室11の他端に連通可能である。第2位置にある作業室11の一端はポンプ17の吐出口と連通可能である。
ロータ7は、MCE素子12を保持するための素子ベッドとも呼ばれる。この実施形態では、MCE素子12を収容する作業室11を形成する素子ベッドが回転軸2aと作動的に連結されている。流路切換機構18と磁場変調装置14との両方に関連するMCE素子12を含む素子ベッドが回転軸2aによって移動する。よって効率的な駆動が可能である。
ポンプ17、流路切換機構18、および磁場変調装置14は、共通のハウジング6の中に収容されている。この構成によると、ポンプ17を流路切換機構18の近傍に設置することができる。このため、長い配管を要することなくポンプ17と流路切換機構18とが接続される。この結果、ポンプ17を含む流れ経路の分岐があっても、熱輸送媒体の流れの差を抑制することができる。この構成では、ホースなどの配管を用いることなくハウジング6内の流路を利用できる。よって、分岐した流れ経路の間において、配管に起因する熱輸送媒体の流れの差が抑制される。
車両用空調装置1は、車両に搭載され、車両の乗員室の温度を調節する。2つの熱交換器3、4は、車両用空調装置1の一部を提供する。熱交換器3は、熱交換器4より高温になる高温側熱交換器3である。熱交換器4は、熱交換器3より低温になる低温側熱交換器4である。車両用空調装置1は、高温側熱交換器3、および/または低温側熱交換器4を室内空調のために利用するための空調ダクトおよび送風機などの空気系機器を備える。
車両用空調装置1は、冷房装置または暖房装置として利用される。車両用空調装置1は、室内に供給される空気を冷却する冷却器と、冷却器によって冷却された空気を再び加熱する加熱器とを備えることができる。MHP装置2は、車両用空調装置1における冷熱供給源、または温熱供給源として利用される。すなわち、高温側熱交換器3は上記加熱器として用いることができる。また、低温側熱交換器4は上記冷却器として用いることができる。
MHP装置2が温熱供給源として利用される場合、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室内に供給され、暖房のために利用される。このとき、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器3は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器4は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2が冷熱供給源として利用される場合、低温側熱交換器4を通過した空気は車両の室内に供給され、冷房のために利用される。このとき、高温側熱交換器3を通過した空気は車両の室外に排出される。熱交換器4は、室内熱交換器とも呼ばれる。熱交換器3は、室外熱交換器とも呼ばれる。
MHP装置2は、除湿装置として利用されることもある。この場合、低温側熱交換器4を通過した空気は、その後に、高温側熱交換器3を通過し、室内に供給される。MHP装置2は、冬期においても、夏期においても、温熱供給源として利用される。
図2は、MHP装置2の斜視図である。MHP装置2の図中左側はフロント側と呼ばれ、図中右側はリア側と呼ばれる。MHP装置2は、円柱状の外径をもつ。ハウジング6を提供するケース21は、円筒状の胴部22を有する。胴部22のフロント側の端部には、ポンプボディ23、ポンプカバー24、およびフロントエンドカバー25が設けられている。これらの部材23、24、25は、ケース21のフロントエンドを提供する。胴部22のリア側の端部には、リアボディ26、およびリアエンドカバー27が設けられている。これらの部材26、27は、ケース21のリアエンドを提供する。MHP装置2のフロント側には、回転軸2aが露出している。この回転軸2aには、動力源5としての電動機が連結されている。
図3は、MHP装置2の左側面図である。フロントエンドカバー25の中央部に回転軸2aが露出している。図4は、MHP装置2の右側面図である。リアエンドカバー27の中央部に低温側入口16cが開口している。
図5は、MHP装置2の断面図である。図5は、図3のV−V線における縦断面図である。図6は、MHP装置2の断面図である。図6は、図5のVI−VI線における横断面図である。胴部22の径方向内側には、ロータ7が配置されている。ロータ7は円筒状の部材である。ロータ7は、ケース21内において回転可能に支持されている。ロータ7の径方向内側には、ステータ8が配置されている。ステータ8は、ケース21内に固定されている。ステータ8は、ポンプボディ23とリアボディ26との間に配置され、それらに固定されている。
ロータ7は、その円筒状の壁内に複数の作業室11を有する。ロータ7は、4つの作業室11を有する。すべての作業室11は、ロータ7の軸方向の両方の端面において開口している。作業室11は両端が開口した通路によって提供されている。
ロータ7は、内外二重の円筒の間に、それらの両端に開口する作業室11を区画形成する筒状の部材である。ロータ7は、MCE素子12を収容する作業室11を形成するとともに、回転軸2aによって回転させられることによってMCE素子12を第1位置と第2位置とに移動させる。
作業室11の中には、MCE素子12が収容され、固定されている。ひとつの作業室11の中には、複数のMCE素子12が配置されている。ひとつのMCE素子12は、作業室11の一端と他端との間にわたって延在している。ひとつのMCE素子12は、複数の素子片を有する。複数の素子片は、ロータ7の軸方向、すなわち作業室11内における熱輸送媒体の流れ方向に沿って配列されている。複数の素子片のそれぞれは、高い磁気熱量効果を発揮する高効率温度帯が異なる。高効率温度帯は、素子片の材料によって調節することができる。MHP装置2は、低温端と高温端との間に温度分布を発生させる。複数の素子片のひとつは、それが配置された位置に想定される温度帯において高い磁気熱量効果を発揮するように、その材料が選定されている。この構成は、低温端と高温端との間の全体において高い磁気熱量効果を得ることを可能とする。
ステータ8は、磁場変調装置14のためのインナヨーク31を提供する。胴部22は、アウタヨーク32を提供する。胴部22の径方向内側には、磁力源13としての永久磁石33、35が配置されている。ステータ8の径方向外側には、磁力源13としての永久磁石34、36が配置されている。永久磁石33と永久磁石34とは、径方向の内側と外側とに配置されることによって、それらの間に位置付けられたMCE素子12に強い磁場を供給する。永久磁石35と永久磁石36とは、径方向の内側と外側とに配置されることによって、それらの間に位置付けられたMCE素子12に強い磁場を供給する。
ポンプボディ23とポンプカバー24との間には、ポンプ17が配置されている。このポンプ17は、ギヤポンプである。ポンプ17は、熱輸送装置16の一部品でもある。回転軸2aは、ポンプ17と作動的に連結されている。回転軸2aとポンプ17とは、キーによって直接的に連結されている。
回転軸2aとロータ7との間には、変速機構9が配置されている。変速機構9は、遊星歯車機構によって提供されている。変速機構9は、ポンプボディ23とステータ8との間に配置されている。ポンプボディ23には、高温側入口16aと、高温側出口16bとが設けられている。変速機構9は、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなるように回転軸2aから伝達される回転数を調節する。この構成によると、ポンプ17の回転数が、流路切換機構18および磁場変調装置14の回転数より高くなる。これにより、高回転型のポンプ17を利用することができる。ポンプ17が高い回転数で回転することにより、ポンプ17の流量の増加、および/または小型のポンプ17の利用が可能となる。
ロータ7とリアボディ26との間には、ロータ7とケース21との間に形成される隙間を適切に維持するための可動シール機構が設けられている。この可動シール機構は、ロータ7の両端における熱輸送媒体の漏洩を抑制するシール機構とも呼ぶことができる。可動シール機構は、ロータ7の両端における摩擦の抑制と、熱輸送媒体の漏洩の抑制とのトレードオフを適切に調節する。可動シール機構は、ロータ7を軸方向に沿って一方向へ押し付ける付勢機構でもある。可動シール機構は、流路切換機構18の一部でもある。
可動シール機構は、ロータ7の他端側の端面に対向するように配置されたピストン41を有する。ピストン41は、ロータ7に対応した環状である。ピストン41は、軸方向に沿って移動可能にリアボディ26に支持されている。ピストン41は、回転軸2aの周りにおいて回転不能にリアボディ26に支持されている。ピストン41は、リアボディ26に設けられた環状の溝26a内に収容されている。ピストン41は、リアボディ26からロータ7に向けて軸方向に突出可能に支持されている。ピストン41とリアボディ26との間には、複数のシール部材42が設けられている。よって、ピストン41とリアボディ26との間には、ピストン41をロータ7に向けて押し付ける付勢力を発生するための背圧室が区画形成されている。
ピストン41は、ロータ7に対向する面において開口する4つの連通室41a、41b、41c、41dを有する。4つの連通室41a、41b、41c、41dは、周方向に関して互いに仕切られている。4つの連通室41a、41b、41c、41dは、それらと対向する作業室11と連通する。ピストン41の一端面において連通室41a、41b、41c、41dが区画形成する開口は、流路切換機構18を提供する。
連通室41a、41bは、MHP装置2における第1位置に対応して設けられている。連通室41a、41bは、ピストン41の頂面に開設された連通開口41e、41fと、リアボディ26とリアエンドカバー27との間に形成された通路26bとを経由して、低温側入口16cに連通している。よって、連通室41a、41bは、低温側入口16cから導入される熱輸送媒体を第1位置にある作業室11に供給する。
連通室41c、41dは、MHP装置2における第2位置に対応して設けられている。連通室41c、41dは、ピストン41の側面に開設された連通開口41g、41hと、ピストン41とリアボディ26との間に形成された通路とを経由して、低温側出口16dに連通している。ピストン41の外周面には、環状の溝41kが設けられている。この溝41kによって形成される環状の通路は、2つの連通室41c、41dを連通することによって、熱輸送媒体を集め、低温側出口16dに案内する。よって、連通室41c、41dは、第2位置にある作業室11から熱輸送媒体を受け入れ、低温側出口16dへ供給する。
ケース21の中には、空間が形成される。この構成では、ロータ7の一端面とポンプボディ23との間の隙間、ロータ7の他端面とピストン41との間の隙間、および他の隙間を通して、ケース21内の空間には熱輸送媒体が漏れ出してくる。この実施形態では、ケース21内の空間は、ポンプ17の吸入側に連通されている。よって、漏れ出した熱輸送媒体がポンプ17に回収される。同時に、ケース21内の空間が低圧に維持されるから、ピストン41は熱輸送媒体の圧力差によってロータ7に向けて押し付けられる。これにより、ロータ7の一端面とポンプボディ23との間の隙間、およびロータ7の他端面とピストン41との間の隙間が望ましい小さい隙間に維持される。この結果、ロータ7の両端における摩擦の抑制と、熱輸送媒体の漏洩の抑制とが図られる。
図5および図6に図示される構成では、ピストン41とリアボディ26との間にはポンプ17の吐出口側の圧力が作用する。特に、ピストン41を軸方向に沿ってロータ7に向けて推進させる端面には、低温側入口16cから導入される熱輸送媒体の圧力が作用する。熱輸送媒体の圧力は、ピストン41の端面に対して全周にわたって作用する。この結果、ピストン41は、熱輸送媒体の圧力差によってロータ7に向けて押される。これにより、ロータ7とピストン41とが適切な力で相互に押し付けられる。また、ロータ7とポンプボディ23とが適切な力で相互に押し付けられる。これにより、ロータ7の両端における摩擦の過剰な増加を抑制しながら、ロータ7の両端における熱輸送媒体の漏れが抑制される。
図7は、ポンプカバー24の断面を示す。図7は、図5のVII−VII線における断面図である。図8は、ポンプボディ23の断面を示す。図8は、図5のVIII−VIII線における断面図である。ポンプボディ23とポンプカバー24とは、ギヤポンプのためのハウジングを提供する。この実施形態では、ポンプ17は、トロコイド型のギヤポンプによって提供される。図中には、複数のMCE素子12のうちの、ひとつのMCE素子12だけが代表的に図示されている。
ポンプカバー24には、高温側入口16aに連通する連通溝24aが形成されている。連通溝24aは、高温側入口16aとギヤポンプの吸入ポート51とを連通している。吸入ポート51は、ポンプカバー24を軸方向に貫通して形成されている。吸入ポート51は、ポンプ17の吸入口でもある。ポンプカバー24には、第1位置に対応して形成された連通通路24b、24cが形成されている。連通通路24b、24cは、ポンプカバー24を軸方向に貫通して形成されている。さらに、ポンプカバー24には、連通通路24b、24cと、高温側出口16bとを連通する連通溝24d、24eが形成されている。ポンプカバー24に形成された連通溝24a、24d、24eおよび連通通路24b、24cは、フロントエンドカバー25によって覆われている。
ポンプボディ23は、ロータ7に対向する面において開口する4つの連通室23a、23b、23c、23dを有する。4つの連通室23a、23b、23c、23dは、周方向に関して互いに仕切られている。4つの連通室23a、23b、23c、23dは、それらと対向する作業室11と連通する。ポンプボディ23の他端面において連通室23a、23b、23c、23dが区画形成する開口は、流路切換機構18を提供する。連通室23a、23b、23c、23dは、周方向に沿って配列されている。連通室23a、23b、23c、23dのそれぞれがもつ周方向の長さは、その上を通過する作業室に熱輸送媒体を流す期間を規定する。図示されるように、4つの連通室23a、23b、23c、23dのそれぞれは、互いに等しい角度範囲にわたって延びている。
4つの連通室23a、23b、23c、23dは、4つの連通室41a、41b、41c、41dと軸方向に関して対向している。4つの連通室23a、23b、23c、23dそれぞれの開口範囲は、4つの連通室41a、41b、41c、41dそれぞれの開口範囲と同じである。これら連通室23a−23d、41a−41dによって流路切換機構18が提供される。
連通室23a、23bは、MHP装置2における第1位置に対応して設けられている。連通室23a、23bは、ポンプカバー24に形成された連通通路24b、24cに連通している。よって、これら連通室23a、23bは、高温側出口16bに連通している。よって、連通室23a、23bは、第1位置にある作業室11から熱輸送媒体を受け入れ、高温側出口16bへ供給する。これらの連通室23a−23dおよび41a−41dを提供するピストン41とポンプボディ23とは、熱輸送媒体を分配する分配部材を提供している。
連通室23aと連通室23bは対称に形成されている。さらに、連通通路24bと連通通路24cは対称に形成されている。よって、連通室23aから高温側出口16bへ向かう通路と、連通室23bから高温側出口16bへ向かう通路とは、熱輸送媒体の流れに関して対称に形成されている。この結果、連通室23a、23bによって規定される2つの作業室11における熱輸送媒体の流れの差が抑制される。MHP装置2が単一の高温側出口16bをもつことにより、高温系統の流路がMHP装置2内の作業室11における熱輸送媒体の流れに与える影響が抑制される。
連通室23c、23dは、MHP装置2における第2位置に対応して設けられている。連通室23c、23dは、ポンプボディ23に形成された連通溝23e、23fを経由して、ポンプ17の吐出ポート52に連通している。熱輸送媒体は、ポンプ17から吐出ポート52へ吐出される。さらに、熱輸送媒体は、吐出ポート52から2つの連通溝23e、23fに向けて分岐し、連通室23c、23dに供給される。よって、連通室23c、23dは、ポンプ17から吐出された熱輸送媒体を第2位置にある作業室11に供給する。連通室23c、23dは、ポンプ17から吐出された高圧の熱輸送媒体を溜めるギャラリを提供する。
連通室23cと連通室23dは対称に形成されている。さらに、連通溝23eと連通溝23fは対称に形成されている。よって、吐出ポート52から連通室23cへ向かう通路と、吐出ポート52から連通室23dへ向かう通路とは、熱輸送媒体の流れに関して対称である。この結果、連通室23c、23dによって規定される2つの作業室11における熱輸送媒体の流れの差が抑制される。MHP装置2が単一の高温側入口16aをもつことにより、高温系統の流路がMHP装置2内の作業室11における熱輸送媒体の流れに与える影響が抑制される。
ポンプボディ23内には、アウタロータ53とインナロータ54とが配置されている。アウタロータ53は回転軸2aの回転中心に対してやや偏心して回転するように配置されている。この結果、アウタロータ53とインナロータ54との間には、複数の容積室55が形成される。アウタロータ53とインナロータ54とは、回転軸2aによって時計回りに回される。この結果、ポンプ17は吸入ポート51から熱輸送媒体を吸入し、吐出ポート52から熱輸送媒体を吐出する。
図9は、変速機構9の断面を示す。図9は、図5のIX−IX線における断面図である。変速機構9は、回転軸2aの回転を減速し、ロータ7に伝達する減速機構である。変速機構9は、ロータ7をAMRサイクルを提供するために適した回転数で駆動しながら、ポンプ17を高速回転させることを可能とする。この構成は、ポンプ17によって必要な流量を得るために貢献する。変速機構9は、回転軸2aに設けられたサンギヤ61と、ポンプボディ23とインナヨーク31との間に支持されたプラネタリギヤ62と、ロータ7に設けられたリングギヤ63とを有する。
図中には、ロータ7の軸を直交する断面が図示されている。ロータ7は、作業室11を形成するためのロータハウジング71を有する。ロータハウジング71は、円筒状の部材である。ロータハウジング71は、その円筒状の壁の中に、周方向に沿って複数の作業室71a、71b、71c、71dを形成している。図示の例では、4つの作業室71a、71b、71c、71dが形成されている。ロータハウジング71は、第1位置に対応する2つの作業室71a、71bと、第2位置に対応する2つの作業室71c、71dを有する。これら作業室71a、71b、71c、71dは、第1位置および第2位置に対応している必要はない。これら作業室71a、71b、71c、71dの中には、複数のMCE素子12が配置されている。図中には、1つのMCE素子12が代表的に図示されている。図中には、作業室71a、71b、71c、71dの向こう側にあるピストン41の連通室と、ピストン41の連通開口41e、41fとが図示されている。
図10は、磁場変調装置14の断面を示す。図10は、図5のX−X線における断面図である。永久磁石33、34、35、36は、第1位置に対応する約90度の角度範囲に設けられている。永久磁石33、34、35、36は、径方向に関して作業室71a、71b、71c、71dの内側と外側との両方に位置するように配置されている。MHP装置2は、その直径上に位置付けられた複数の第1位置と、第1位置と交互に配置された複数の第2位置とを有する。2つの第1位置は図中の上下に位置し、2つの第2位置は図中の左右に位置している。インナヨーク31およびアウタヨーク32は、第1位置に強い磁場を供給するように形成されている。
図11は、可動シール機構の断面を示す。図11は、図5のXI−XI線における断面図である。ピストン41に設けられた連通室41a、41b、41c、41dは、第1位置および第2位置に対応する角度範囲にわたって広がっている。図示の例では、連通室41a、41b、41c、41dのそれぞれの角度範囲は、永久磁石33、34、35、36の角度範囲より小さい。
連通室41aと連通室41bは対称に形成されている。さらに、連通通路26bは図5に図示されるように上下方向に関して対称に形成されている。よって、低温側入口16cから連通室41aへ向かう通路と、低温側入口16cから連通室41bへ向かう通路とは、熱輸送媒体の流れに関して対称に形成されている。この結果、連通室41a、41bによって規定される2つの作業室11における熱輸送媒体の流れの差が抑制される。MHP装置2が単一の低温側入口16cをもつことにより、低温系統の流路がMHP装置2内の作業室11における熱輸送媒体の流れに与える影響が抑制される。
連通室41cと連通室41dは対称に形成されている。さらに、連通室41cと連通室41dとは、対称の位置に設けられた連通開口41g、41hを経由して、ピストン41を取り囲む環状の通路に対称の位置において連通している。また、低温側出口16dは、2つの連通開口41g、41hの間に位置付けられている。よって、連通室41cから低温側出口16dへ向かう通路と、連通室41dから低温側出口16dへ向かう通路とは、熱輸送媒体の流れに関してほぼ対称に形成されている。この結果、連通室41c、41dによって規定される2つの作業室11における熱輸送媒体の流れの差が抑制される。MHP装置2が単一の低温側出口16dをもつことにより、低温系統の流路がMHP装置2内の作業室11における熱輸送媒体の流れに与える影響が抑制される。
この構成において、流路切換機構18は、第1位置において作業室11に熱輸送媒体が第1方向に流れるように流れ経路と作業室とを接続する。流路切換機構18は、第2位置において作業室11に熱輸送媒体が第1方向とは逆の第2方向に流れるように流れ経路と作業室とを接続する。流路切換機構18は、分配部材としてのポンプボディ23とピストン41とを有する。分配部材は、ロータ7の両端に対向して配置されている。分配部材は、第1位置において作業室11と連通するように配置された第1群の連通室23a、23b、41a、41bを有する。分配部材は、第2位置において作業室11と連通するように配置された第2群の連通室23c、23d、41c、41dを有する。
磁場変調装置14は、第1位置と第2位置においてMCE素子12に異なる強さの磁場を与える。磁場変調装置14は、第1位置または第2位置に配置された永久磁石からなる磁力源13を備える。
この構成によると、MCE素子12を収容する作業室11を形成するロータ7が回転軸2aによって回転させられる。これにより、MCE素子12は第1位置と第2位置とに移動される。言い換えると、ロータ7はMCE素子12を収容する素子ベッドである。この構成では、素子ベッドを回転させることによって、作業室11における熱輸送媒体の流れ方向が第1方向と第2方向とに切換えられる。連通室を有する分配部材によって作業室11における流れ方向が切換えられる。素子ベッドを回転させることによって、MCE素子12に与えられる磁場の強さが変化させられる。
図1に示すように、MHP装置2は、制御手段であるECU90を備えている。ECU90は、例えば、車両用空調装置1のエアコンECUである。ECU90は、駆動部91、取得部92、記憶部93および判定部94を有する。ECU90は、例えば演算処理や制御処理を行なう中央演算装置であるCPU、ROMやRAM等のメモリ、入力/出力回路部であるI/Oポート等を含んで構成される。
駆動部91は、例えば、上記CPUやモータ駆動回路としてのインバータ回路等を含んでいる。駆動部91は、電動機からなる動力源5に対し、駆動指令を出力する。駆動部91は、例えば、インバータ回路からの電圧出力をモータコイルに印加し、動力源5を回転駆動制御する。駆動部91は、電動機からなる動力源5に対し、回転数fの指令値を出力する。
取得部92は、例えば、上記I/Oポート等を含んでいる。取得部92は、電動機からなる動力源5からトルク情報Pを入力する。取得部92は、例えば、電動機の消費電力値または電動機に流れるコイル電流値をトルク情報として取得する。以下、トルク情報Pを単にトルクPと呼ぶ場合がある。取得部92は、温度検出手段であるサーミスタ81からの温度情報も取得する。サーミスタ81は、例えば、第1位置に位置付けられた作業室11の高温端の熱輸送媒体の温度Tを検出する。取得部92は、取得した情報を、駆動部91や判定部94に提供する。
記憶部93は、例えば、上記メモリ等を含んでいる。記憶部93は、MHP装置2の本体の運転制御に係るプログラムや、当該プログラムを実行する際に必要なデータ等を記憶している。記憶部93は、MHP装置2が作業室11から所定熱出力を行なう所定熱出力動作の動作制御プログラムを記憶している。また、記憶部93は、所定熱出力動作により所定熱出力が可能であるか否かを判定する所定熱出力可否判定プログラム、および、判定に用いる閾値等の判定基準データ等を記憶している。なお、各種プログラムは、CPUに設定されるものであってもよい。記憶部93は、判定部94に対して、所定熱出力の可否を判定する際の判定基準データである目標物理量を出力する。
判定部94は、例えば、上記CPU等を含んでいる。判定部94は、取得部92から提供された取得データと記憶部93から提供された基準データとを比較して判定を行なう。判定部94は、比較判定結果に基づいて、報知部99に対して報知部作動信号を出力する。
報知部99は、例えば表示手段である。報知部99は、例えば、車両の車室内前方に配置されたインストルメントパネルに設けることができる。報知部99は、例えば、エアコン操作部に設けることができる。報知部99は、例えば、マルチ情報表示部やコンビネーションメータ内の表示部に設けることができる。報知部99は、表示手段に限定されない。報知部99は、例えば、音を発する発音手段とすることができる。また、報知部99は、表示手段と発音手段とを組み合わせたものとすることができる。
次に、MHP装置2が熱出力を行なう際のMHP装置2の作動を説明する。例えば駆動部91からの電圧出力によって動力源5が駆動され、動力源5によって回転軸2aが回される。回転軸2aはポンプ17を作動させる。同時に、回転軸2aは変速機構9を介してロータ7を回転させる。永久磁石からなる磁力源13を含む磁場変調装置14は、第1位置にあるMCE素子12に強い磁場を与える。磁場変調装置14は、第2位置にあるMCE素子12に弱い磁場またはゼロ磁場を与える。
ポンプ17は熱輸送媒体を吸入するとともに吐出する。このとき、ポンプ17は回転軸2aに直結されており、回転軸2aと同じ回転数で回される。ポンプ17は、ロータ7より高い回転数で回される。これにより効率的なポンプ17の運転が可能となる。ポンプ17を含む流路に熱輸送媒体が循環的に流される。熱輸送媒体は、ポンプ17から、第2位置にあるひとつの作業室11、熱交換器4、第1位置にあるひとつの作業室11、熱交換器3を順に経由し、ポンプ17へ戻る。
ロータ7は、作業室11内に収容されたMCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に運び込み、位置付ける。ロータ7の回転数は、ポンプ17の回転数より低い。ロータ7の回転数は、MCE素子12をAMRサイクルとして機能させるための回転数に設定されている。すなわち、磁場の変化と熱輸送媒体による熱の輸送によって大きい温度差が得られるようにロータ7の回転数は設定されている。例えば、ロータ7の回転数は、MCE素子12の特性と、磁場の強さと、熱輸送媒体による熱輸送性能を考慮して設定される。
ロータ7は、ひとつの観点では磁場変調装置14を提供する。ロータ7は、MCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に運び込むことによって、MCE素子12に加えられる磁場の強さを変化させる。ロータ7は、別の観点では、流路切換機構18を提供する。ロータ7は、MCE素子12を第1位置と第2位置とに交互に運び込むことによって、MCE素子12に沿って流れる熱輸送媒体の流れ方向を第1方向と第2方向とに切換える。
ひとつのMCE素子12が第1位置に運び込まれると、MCE素子12に与えられる磁場は強くなり、MCE素子12は発熱する。このとき、熱輸送媒体はMCE素子12に沿って第1方向へ流れる。第1方向は低温端から高温端へ向かう方向である。このため、高温端の温度が上昇する。
ひとつのMCE素子12が第2位置に運び込まれると、MCE素子12に与えられる磁場は弱くなり、MCE素子12は吸熱する。このとき、熱輸送媒体はMCE素子12に沿って第2方向へ流れる。第2方向は高温端から低温端へ向かう方向である。このため、低温端の温度が低下する。
この実施形態によると、一方向へ熱輸送媒体を流すポンプと、ロータ7とが共通の回転軸2aによって回される。この結果、磁場変調装置14と熱輸送装置16との両方を共通の動力源5によって駆動することができる。動力源5は、ポンプ用電動機であるとともに、磁場用電動機でもある。MHP装置2は、ポンプ17の回転数をロータ7の回転数より高くする変速機構9を備える。この結果、MCE素子12と熱輸送媒体との間の熱交換に必要な時間をロータ7上において提供しながら、MHP装置2に一体化可能な小型のポンプ17によって必要な流量を得ることができる。
この実施形態によると、MCE素子12に印加される磁場の変化が、ロータ7の回転によって機械的に与えられる。同時に、熱輸送媒体の流れ方向の切換えが、ロータ7の回転によって機能する流路切換機構18によって与えられる。しかも、流れ方向の切換えは、ポンプボディ23とピストン41とに形成された連通室23a−23d、41a−41dが提供する機械的な分配機構によって実行される。このため、簡単な構成によって、磁場の変化に同期した流れ方向の切換えが実現される。
次に、ECU90が行なう、MHP装置2の所定熱出力動作により所定熱出力が可能であるか否かを診断する診断運転制御動作について説明する。
図12に示すように、ECU90は、MHP装置2の運転を開始する際には、まず、動力源であるモータ5を起動する(ステップ110)。ステップ110でモータ5を起動したら、例えばモータ5への電圧出力パターンによりモータ5の回転数fを制御する(ステップ120)。ステップ120では、当該ステップを実行する度に、回転数fが徐々に上昇するように設定する。ステップ120では、回転数fを徐々に上昇するように設定するものに限定されず、例えば、定常運転の目標回転数を設定し、この目標回転数まで上昇する過程における成り行きの回転数を取得して採用してもよい。
ステップ120を実行したら、次に、取得部92でモータ5からトルクPを取得する(ステップ121)。トルクPは、前述したように、モータ5の消費電力値またはモータ5に流れるコイル電流値とすることができる。消費電力値またはコイル電流値を出力するモータ5は、物理量検出手段に相当する。モータ5の消費電力値またはモータ5に流れるコイル電流値は、モータ5のトルクの関連値である。
ステップ121でトルクPを取得したら、取得したトルクPを、判定部94で目標物理量である判定トルクP0と比較する(ステップ122)。ステップ122では、例えば、記憶部93が記憶している図13に例示する判定トルクP0よりも、取得したトルクPが小さいか否か判断する。
図13に実線で示した判定トルクP0は、MCE素子12に破損がなく、作業室11において過大な圧力損失が発生しないモータトルクに相当する。判定トルクP0はモータ回転数fに依存する。判定トルクP0はモータ回転数fの上昇に伴い上昇する。ステップ122では、ステップ120の回転数fにおける判定トルクP0と、ステップ121で取得したトルクPとを比較する。例えば、ステップ121で取得したトルクPが図13に破線で示した値であった場合には、ステップ122では、NOと判断される。
ステップ122では、トルクPをモータ回転数に対応した判定トルクP0と比較判定する。ステップ122を実行する時点では、作業室11内に生じる温度勾配は比較的小さなものである。そのため、トルク値の温度特性は無視することが可能である。ステップ122において、トルク値の温度特性を考慮して判定をおこなうものであってもかまわない。
ステップ122において、トルクPが判定トルクP0以上である場合には、異常であると判断してステップ123へ進む。ステップ123では、ステップ122における異常判断が3回連続したか否かを判断する。ステップ123において、異常であるとの判断が3回連続していないと判断した場合には、ステップ120へリターンする。
一方、ステップ123において、ステップ122における異常であるとの判断が3回連続したと判断した場合には、報知部99の作動信号であるアラーム出力を行なう(ステップ124)。ステップ124における出力によって、報知部99が、MCE素子12が破損したことにより、所定熱出力が不可能である旨を報知する。報知部99は、MHP装置2が、定常運転で所定熱出力を行なうための所定熱出力動作を行なっても、MCE素子12が破損しており、所定熱出力が得られないことを報知する。
ステップ124を実行したら、モータ5を停止し、MHP装置2からの熱出力を中止する(ステップ125)。なお、ステップ124を行なった後に、MHP装置2の運転を継続するものであってもよい。すなわち、ステップ124を実行した後に、ステップ140の定常運転を行なってもよい。このとき、定常運転モードにおける目標回転数は、当初の目標回転数を用い、熱出力が所定値以下の状態でMHP装置2を運転する。また、定常運転モードにおけるモータ5の目標回転数を上昇補正して、所定熱出力が行なえるようにしてもよい。
ステップ122において、トルクPが判定トルクP0未満である場合には、正常であると判断してステップ126へ進む。ステップ126では、ステップ122における正常判断が3回連続したか否かを判断する。ステップ126において、正常であるとの判断が3回連続していないと判断した場合には、ステップ120へリターンする。一方、ステップ126において、ステップ122における正常であるとの判断が3回連続したと判断した場合には、ステップ130へ進む。
ステップ130では、サーミスタ81からの温度情報を取得する。ステップ130では、実行の度に徐々に上昇する熱輸送媒体温度を取得する。ステップ130を実行したら、次に、取得部92でモータ5からトルクPを取得する(ステップ131)。トルクPは、前述したように、モータ5の消費電力値またはモータ5に流れるコイル電流値とすることができる。消費電力値またはコイル電流値を出力するモータ5は、物理量検出手段に相当する。モータ5の消費電力値またはモータ5に流れるコイル電流値は、モータ5のトルクの関連値である。
ステップ131でトルクPを取得したら、取得したトルクPを、判定部94で目標物理量である判定トルクP1と比較する(ステップ132)。ステップ132では、例えば、記憶部93が記憶している図14に例示する判定トルクP1よりも、取得したトルクPが大きいか否か判断する。
図14に実線で示した判定トルクP1は、MCE素子12に所定以上の物性劣化がなく、作業室11において所定の磁気熱量効果が得られるときのモータトルクに相当する。MCE素子12に所定以上の物性劣化がない場合には、磁場変調装置14の磁気回路により与えられる磁場において、MCE素子12の磁気吸引力は所定値以上となる。MCE素子12の物性劣化が所定以上となった場合には、磁気吸引力が低下してモータトルクも小さくなる。判定トルクP1は熱輸送媒体温度Tに依存する。判定トルクP1は、例えば作業室11の高温端から流出する熱輸送媒体温度Tに依存する。
なお、図14に例示したマップは、MCE素子12がほぼ均一な材質からなる場合を示している。MCE素子12が磁気熱量効果特性の異なる複数の素子片を並設してなる場合には、例えば後述する図18に例示するようなマップとなる。
ステップ132では、ステップ130で取得した温度Tにおける判定トルクP1と、ステップ131で取得したトルクPとを比較する。例えば、ステップ131で取得したトルクPが図13に破線で示した値であった場合には、ステップ132では、NOと判断される。
ステップ132では、トルクPを熱輸送媒体温度に対応した判定トルクP1と比較判定する。ステップ132を実行する時点では、モータ回転数は、ほぼ定常運転時の目標回転数に到達している。そのため、トルク値のモータ回転数特性は無視することが可能である。ステップ132において、トルク値のモータ回転数特性を考慮して判定をおこなうものであってもかまわない。
ステップ132において、トルクPが判定トルクP1以下である場合には、異常であると判断してステップ133へ進む。ステップ133では、ステップ132における異常判断が3回連続したか否かを判断する。ステップ133において、異常であるとの判断が3回連続していないと判断した場合には、ステップ130へリターンする。
一方、ステップ133において、ステップ132における異常であるとの判断が3回連続したと判断した場合には、報知部99の作動信号であるアラーム出力を行なう(ステップ134)。ステップ134における出力によって、報知部99が、MCE素子12が劣化したことにより、所定熱出力が不可能である旨を報知する。報知部99は、MHP装置2が、定常運転で所定熱出力を行なうための所定熱出力動作を行なっても、MCE素子12が物性劣化しており、所定熱出力が得られないことを報知する。
ステップ134を実行したら、MHP装置2の定常運転を行なう(ステップ140)。このとき、定常運転モードにおける目標回転数は、当初の目標回転数を用い、熱出力が所定値以下の状態でMHP装置2を運転する。また、定常運転モードにおけるモータ5の目標回転数を上昇補正して、所定熱出力が行なえるようにしてもよい。なお、ステップ134を実行した後に、モータ5を停止し、MHP装置2からの熱出力を中止してもよい。
ステップ132において、トルクPが判定トルクP0を超えている場合には、正常であると判断してステップ135へ進む。ステップ135では、ステップ132における正常判断が3回連続したか否かを判断する。ステップ135において、正常であるとの判断が3回連続していないと判断した場合には、ステップ130へリターンする。一方、ステップ135において、ステップ132における正常であるとの判断が3回連続したと判断した場合には、ステップ140へ進み、MHP装置2の定常運転を行なう。このとき、定常運転モードにおける目標回転数は、当初の目標回転数を用い、所定熱出力が得られる状態でMHP装置2を運転する。
MHP装置2の定常運転は、例えば車両用空調装置1の運転が中止されるまで継続する。MHP装置2の定常運転中は、例えば車両用空調装置1に必要とされるMHP装置2からの熱出力に応じて、モータ5の回転数が制御される。
なお、ステップ130では、作業室11の高温端から流出する熱輸送媒体温度を取得し、ステップ132では、例えば図14に示すマップによりトルクPを閾値である判定トルクP1と比較していたが、これに限定されるものではない。例えば、1つの代表位置温度ではなく、複数個所の熱輸送媒体温度を取得し、各箇所に対応したそれぞれのマップによりトルクPを閾値である判定トルクと比較するものであってもよい。これによれば、劣化判定精度を向上することができる。
熱輸送媒体の温度検出箇所は、例えば、第1位置に位置付けられた作業室11の両端の2箇所とすることができる。また、熱輸送媒体の温度検出箇所は、例えば、第1位置に位置付けられた作業室11の両端、および第2位置に位置付けられた作業室11の両端の4箇所とすることができる。
また、ステップ123、126、133、135では、同一の判断結果が3回連続したときに、YESと判断するようになっていたが、これに限定されるものではない。例えば、1回であってもよいし、2回または4回以上の複数回であってもかまわない。また、複数回連続するものに限らず、例えば、不連続であっても所定割合以上を占めるか否かで判断してもかまわない。
ステップ120〜ステップ123は、MCE素子12の破損状態を診断する破損診断運転ステップである。また、ステップ124は、MCE素子12の破損を報知する破損報知ステップである。一方、ステップ130〜ステップ133は、MCE素子12の劣化状態を診断する劣化診断運転ステップである。また、ステップ134は、MCE素子12の劣化を報知する劣化報知ステップである。なお、ステップ120〜ステップ123、およびステップ130〜ステップ133は、それぞれ、例えば1Hzの周波数で繰り返すことができる。
本実施形態の破損診断運転ステップおよび劣化診断運転ステップは、定常運転モードに至る前の過渡運転モード時に行なわれる。破損診断ステップは、過渡運転モード時のうち、モータ5の回転数が定常運転に向かって上昇しており、かつ、作業室11内に生じる温度勾配が比較的小さいときに行なわれる。また、劣化診断ステップは、過渡運転モード時のうち、モータ5の回転数の上昇がほぼ終了し、かつ、作業室11内に生じる温度勾配が徐々に大きくなっているときに行なわれる。
本実施形態のMHP装置2は、作業室11に設けられたMCE素子12を備えている。また、MCE素子12と熱交換する熱輸送媒体をMCE素子12に沿って流すためのポンプ17を備えている。また、熱輸送媒体の流れに同期して、MCE素子12へ与えられる磁場の強さを変調する磁場変調装置14を備えている。そして、熱輸送媒体により作業室11から熱出力を行なう。
MHP装置2は、作業室11からの熱出力に対応するMCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量を検出物理量として検出する物理量検出手段としてのモータ5を備えている。MCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量はモータ5のトルクPである。トルクPは、物理量検出手段が検出する検出物理量である。ここで、特性物理量とは、MCE素子12の形状特性、および、磁気熱量効果特性に係る物理量である。
MHP装置2は、モータ5で検出した検出物理量であるトルクPを、作業室11から所定熱出力を行なう所定熱出力動作に対応した目標物理量である判定トルクP0と比較する物理量比較手段として判定部94を備えている。MHP装置2は、判定部94における検出物理量と目標物理量との比較結果に基づいて、所定熱出力動作により所定熱出力が可能であるか否かを判断する。
これによると、作業室11からの熱出力に対応するMCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量を検出物理量として検出し、所定熱出力動作に対応した目標物理量と比較して、MCE素子12の性能低下の有無または度合いを判断することができる。そして、このMCE素子12の性能低下の有無または度合いから、所定熱出力動作を行なった際の作業室11からの所定熱出力の可否を判断することができる。
また、MHP装置2は、ポンプ17および磁場変調装置14を駆動制御する制御手段であるECU90と、所定熱出力が不可能である旨を報知する報知手段である報知部99と、を備えている。ECU90は、取得部92、記憶部93、および判定部94を有している。取得部92は、物理量検出手段から検出物理量を取得する。記憶部93は、目標物理量を記憶する。判定部94は、物理量比較手段を含み、取得部92が取得した検出物理量と記憶部93が記憶記目標物理量との比較結果に基づいて所定熱出力が可能であるか否かを判定する。そして、ECU90は、判定部94において所定熱出力が不可能であると判定した場合には、報知部99を作動させて所定熱出力が不可能である旨を報知する。
これによると、ECU90は、取得部92で取得した検出物理量と記憶部93が記憶している目標物理量とを判定部94で比較して、作業室11からの所定熱出力の可否を判定することができる。そして、作業室11からの所定熱出力が不可能であると判定した場合には、報知部99を作動させて所定熱出力が不可能である旨を報知することができる。したがって、MCE素子12の性能低下のため、ポンプ17および磁場変調装置14を駆動しても作業室11から所定熱出力が得られない場合には、その旨を使用者等に知らせることができる。
また、物理量検出手段であるモータ5が検出する検出物理量であるトルクPは、熱輸送媒体が作業室11を流れる際の圧力損失値の関連値である。ECU90は、取得部92が取得した圧力損失値の関連値に基づいて判定部94が判定を行なう。判定部94は、作業室11における圧力損失値が目標物理量に対応する閾値を超える条件を満たしたと判断した場合には、報知部99を作動させてMCE素子12が破損したことにより所定熱出力が不可能である旨を報知する。
これによると、MCE素子12が破損して作業室11の流通抵抗が増大すると、取得部92が取得する圧力損失値の関連値であるトルクPも変化する。ECU90は、圧力損失値の関連値から圧力損失値が目標値を超えると判断した場合には、MCE素子12が破損したことにより所定熱出力が不可能である旨を報知部99で報知することができる。したがって、所定熱出力動作を行なっても所定熱出力が得られないこと、および、その原因がMCE素子12の破損であることを、使用者等に容易に知らせることができる。
また、MHP装置2は、ポンプ17を駆動する動力源としてのポンプ用電動機であるモータ5を備えている。そして、取得部92が取得する圧力損失値の関連値は、モータ5のトルクの関連値である。これによると、ECU90は、ポンプ17の動力源であるポンプ用電動機のトルクの関連値を、圧力損失値の関連値として取得部92で取得することができる。したがって、ポンプ用電動機のトルクの関連値を用いて、MCE素子12の破損が原因となり所定熱出力が得られないことを容易に判定することができる。
また、取得部92が取得するポンプ用電動機のトルクの関連値は、ポンプ用電動機の消費電力値またはポンプ用電動機に流れるコイル電流値である。これによると、ECU90は、ポンプ用電動機の消費電力値またはポンプ用電動機に流れるコイル電流値を、ポンプ用電動機のトルクの関連値として取得することができる。したがって、ポンプ用電動機の消費電力値またはポンプ用電動機に流れるコイル電流値を用いて、MCE素子12の破損が原因となり所定熱出力が得られないことを容易に判定することができる。
また、ECU90は、ポンプ17を起動して所定熱出力動作を行なうための定常運転モードに至るまで過渡運転モードとなる。この過渡運転モード時に、取得部92で圧力損失値の関連値を取得して、判定部94で作業室11における圧力損失値が目標物理量に対応する閾値を超える条件を満たしたか否かを判断する。
これによると、作業室11からの熱出力が所定熱出力よりも小さい時に圧力損失値の関連値を取得することができる。したがって、判定部94で作業室11における圧力損失値が閾値を超える条件を満たしたか否かを判定する際に、MCE素子12の温度特性を考慮しない簡易判定を行なうことが可能である。このように、過渡運転モード時に圧力損失値の関連値を取得して判定を行なうことで、MCE素子12の破損が原因となり所定熱出力が得られないことを極めて容易に判定することができる。取得部92が、圧力損失値の関連値を取得するタイミングは、過渡運転モード時のうち、作業室11内に温度勾配が発生する前が好ましい。
また、物理量検出手段であるモータ5が検出する検出物理量であるトルクPは、MCE素子12が呈する磁気熱量効果値の関連値である。ECU90は、取得部92が取得した磁気熱量効果値の関連値に基づいて判定部94が判定を行なう。判定部94は、目標物理量に対応する閾値よりも磁気熱量効果値が小さいという条件を満たしたと判断した場合には、報知部99を作動させてMCE素子12が劣化したことにより所定熱出力が不可能である旨を報知する。
これによると、MCE素子12が劣化して、得られる磁気熱量効果が低下すると、所定熱出力動作を行なっても所定熱出力が得られなくなる。ECU90は、磁気熱量効果値またはその関連値から磁気熱量効果値が目標値を下回ると判断した場合には、磁気熱量素子が劣化したことにより所定熱出力が不可能である旨を報知部99で報知することができる。したがって、所定熱出力動作を行なっても所定熱出力が得られないこと、および、その原因がMCE素子12の劣化であることを、使用者等に容易に知らせることができる。
また、取得部92が取得する磁気熱量効果値の関連値は、磁場変調装置14により与えられる磁場におけるMCE素子12の磁気吸引力の関連値である。これによると、ECU90は、磁場変調装置14により与えられる磁場におけるMCE素子12の磁気吸引力の関連値を、磁気熱量効果値の関連値として取得部92で取得することができる。したがって、MCE素子12の磁気吸引力の関連値を用いて、MCE素子12の劣化が原因となり所定熱出力が得られないことを容易に判定することができる。
また、MHP装置2は、磁場変調装置14を駆動する動力源としての磁場用電動機であるモータ5を備えている。そして、取得部92が取得する磁気吸引力の関連値は、モータ5のトルクの関連値である。これによると、ECU90は、磁場変調装置14の動力源である磁場用電動機のトルクの関連値を、磁気吸引力の関連値として取得部92で取得することができる。したがって、磁場用電動機のトルクの関連値を用いて、MCE素子12の劣化が原因となり所定熱出力が得られないことを容易に判定することができる。
また、取得部92が取得する磁場用電動機のトルクの関連値は、磁場用電動機の消費電力値または磁場用電動機に流れるコイル電流値である。これによると、ECU90は、磁場用電動機の消費電力値または磁場用電動機に流れるコイル電流値を、磁場用電動機のトルクの関連値として取得することができる。したがって、磁場用電動機の消費電力値または磁場用電動機に流れるコイル電流値を用いて、MCE素子12の劣化が原因となり所定熱出力が得られないことを容易に判定することができる。
本実施形態では、MCE素子12の破損状態の診断と、MCE素子12の物性劣化状態の診断とを行なったが、いずれか一方のみを行なうものであってもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図15〜図18に基づいて説明する。
第2実施形態は、前述の第1実施形態と比較して、MCE素子12の物性劣化した素子片を特定する点が異なる。なお、第1実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第2実施形態において説明しない他の構成は、第1実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図15に示すように、本実施形態では、MHP装置2は、定温媒体循環装置201を備えている。定温媒体循環装置201は、作業室11内に所定温度に温度調節した熱輸送媒体を流通できるようになっている。定温媒体循環装置201は、バイパス流路202、流路切替バルブ203、204、ポンプ205、および温調装置206を有する。
バイパス流路202は、MHP装置2が定常運転を行なう際の熱輸送媒体の流路に対して、ポンプ17をバイパスするように接続している。バイパス流路202の上流端は、熱交換器3からポンプ17へ向かう流路に接続している。バイパス流路202の下流端は、ポンプ17から作業室11へ向かう流路に接続している。バイパス流路202の両端部には、流路切替バルブ203、204が設けられている。流路切替バルブ203、204は、熱輸送媒体の流路を、ポンプ17を通る流路とバイパス流路202とで選択的に切り替える。
バイパス流路202には、熱輸送媒体の流路としてバイパス流路202側が選択されたときに、熱輸送媒体を流通するためのポンプ205が設けられている。バイパス流路202のポンプ205配設位置よりも下流側には、熱輸送媒体を温度調節する温調装置206が配設されている。
本実施形態のMCE素子12は、磁気熱量効果特性の異なる複数の素子片を並設してなる。複数の素子片は、作業室11内の熱輸送媒体の流通方向に沿って並んでいる。図16に示すように、MCE素子12は、例えば4つの素子片12a、12b、12c、12dにより構成することができる。4つの素子片12a、12b、12c、12dは、高い磁気熱量効果を発揮する高効率温度帯が異なる。4つの素子片12a、12b、12c、12dを構成する材料は、例えば相互にキュリー温度が異なる。素子片12aのキュリー温度をT1、素子片12bのキュリー温度をT2、素子片12cのキュリー温度をT3、素子片12dのキュリー温度をT4としたときに、T1〜T4には、T1<T2<T3<T4の関係がある。そして、MCE素子12は、素子片12a側を低温端側とし、素子片12d側を高温端側として、作業室11内に配置される。
本実施形態のMHP装置2も、第1の実施形態と同様に制御手段としてのECU90を備えている。次に、ECU90が行なう、MHP装置2の所定熱出力動作により所定熱出力が可能であるか否かを診断する診断運転制御動作について説明する。ここでは、MCE素子12の劣化状態を診断する制御動作について説明するが、例えば第1の実施形態で説明したMCE素子12の破損状態を診断する制御動作と組み合わせることも可能である。
図17に示すように、ECU90は、まず、流路切替バルブ203、204で熱輸送媒体の流路をバイパス流路202側とし、ポンプ205を駆動するとともに、温調装置206の温調動作によって、熱輸送媒体の温度TnをT1とする。このとき、モータ5も所定回転数で運転する。これにより、作業室11に流通する熱輸送媒体の温度をT1に設定する(ステップ230)。
ステップ230を実行したら、次に、ステップ131を実行する。ステップ131でトルクPを取得したら、取得したトルクPを、判定部94で目標物理量である判定トルクP3と比較する(ステップ232)。ステップ232では、例えば、記憶部93が記憶している図18に例示する判定トルクP3よりも、取得したトルクPが大きいか否か判断する。
ステップ232では、ステップ230で設定した温度T1における判定トルクP3と、ステップ131で取得したトルクPとを比較する。例えば、ステップ131で取得したトルクPが図18に示す実線よりも小さい値であった場合には、ステップ232では、NOと判断される。
ステップ232において、トルクPが判定トルクP3以下である場合には、異常であると判断してステップ133へ進む。ステップ133では、ステップ232における異常判断が3回連続したか否かを判断する。ステップ133において、異常であるとの判断が3回連続していないと判断した場合には、ステップ230へリターンする。一方、ステップ133において、ステップ232における異常であるとの判断が3回連続したと判断した場合には、記憶部93に素子片12aが異常状態であることを記憶する(ステップ234)。
ステップ232において、トルクPが判定トルクP3を超えている場合には、正常であると判断してステップ135へ進む。ステップ135では、ステップ232における正常判断が3回連続したか否かを判断する。ステップ135において、正常であるとの判断が3回連続していないと判断した場合には、ステップ230へリターンする。一方、ステップ135において、ステップ232における正常であるとの判断が3回連続したと判断した場合には、記憶部93に素子片12aが正常状態であることを記憶する(ステップ236)。
ステップ234またはステップ236を実行したら、温度Tnのnを一つ繰り上げる(ステップ237)。すなわち、先のステップ230実行時に熱輸送媒体の温度をT1に設定していた場合には、温度をT1からT2に変更する。次に、一つ繰り上げたnが5になったか否か判断する(ステップ238)。ステップ238では、全ての素子片に対応する温度設定を行なったか否かを判断する。
ステップ238で、nが5に到達しておらずNOと判断した場合には、ステップ237で繰り上げ設定したnを用いて、ステップ230以降を再度実行する。すなわち、TnをT1からT4まで順次変更して、ステップ230からステップ238までのフローを繰り返す。
ステップ238で、nが5に到達してYESと判断した場合には、ステップ234、236で記憶した各素子片の状態を、報知部99で報知する(ステップ239)。報知部99では、各素子片12a〜12dと各状態との対応関係を、例えば表示手段により表示する。
本実施形態のMHP装置によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ポンプ205で、各素子片12a〜12dに対応した温度の熱輸送媒体を作業室11に流通して、MCE素子12を各設定温度に保つことができる。各素子片12a〜12dのキュリー温度にMCE素子12を保温した状態で、トルクPを取得して診断し、設定温度を順次変更してカスケードさせることで、いずれの素子片の性能が劣化しているかを推定することができる。このようにして、所定熱出力動作を行なった際の作業室11からの所定熱出力の可否と、いずれの素子片の物性劣化により所定熱出力が得られないかを使用者等に知らせることができる。
なお、本実施形態では、一つのMCE素子12を4つの素子片12a〜12dで構成した場合について説明したが、これに限定されるものではない。一つのMCE素子12が複数の素子片により構成されるものであればよい。また、ポンプ205で熱輸送媒体を循環する際には、ポンプ17は空運転されていたが、これに限定されるものではなく、例えばクラッチ機構等を設けて、ポンプ17を運転停止してもかまわない。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図19〜図21に基づいて説明する。
第3実施形態は、前述の第2実施形態と比較して、MCE素子12の物性劣化した素子片を特定する構成が異なる。なお、第1、第2実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1、第2実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第3実施形態において説明しない他の構成は、第1、第2実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図19に示すように、本実施形態のMHP装置2は、温度検出手段であるサーミスタ83a、83b、83c、83dを備えている。各サーミスタ83a〜83dは、例えば、内部に作業室11が形成された容器であるロータ7の外表面の温度を検出する。
本実施形態のMCE素子12は、第2実施形態と同様に、磁気熱量効果特性の異なる複数の素子片を並設してなる。複数の素子片は、作業室11内の熱輸送媒体の流通方向に沿って並んでいる。MCE素子12は、図16に例示する4つの素子片12a、12b、12c、12dにより構成することができる。
サーミスタ83aは、素子片12aの配設位置に対応したロータ7外表面の温度を検出する。サーミスタ83bは、素子片12bの配設位置に対応したロータ7外表面の温度を検出する。サーミスタ83cは、素子片12cの配設位置に対応したロータ7外表面の温度を検出する。サーミスタ83dは、素子片12dの配設位置に対応したロータ7外表面の温度を検出する。
サーミスタ83a〜83dは、各素子片12a〜12dの特性物理量である磁気熱量効果値の関連温度を検出する。サーミスタ83a〜83dは、本実施形態における物理量検出手段である。サーミスタ83a〜83dが検出する温度は、MCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量である。サーミスタ83a〜83dが検出する温度は、検出物理量である。磁場変調装置が容器を固定し磁気回路を移動させるタイプである場合には、各温度検出手段で各素子片の温度を直接検出することができる。この場合には、各温度検出手段は、各素子片12a〜12dの特性物理量である磁気熱量効果値を直接検出する。
本実施形態のMHP装置2も、第1の実施形態と同様に制御手段としてのECU90を備えている。サーミスタ83a〜83dが検出する温度Ta〜Tdも、ECU90の取得部92に取得される。次に、ECU90が行なう、MHP装置2の所定熱出力動作により所定熱出力が可能であるか否かを診断する診断運転制御動作について説明する。ここでは、MCE素子12の劣化状態を診断する制御動作について説明するが、例えば第1の実施形態で説明したMCE素子12の破損状態を診断する制御動作と組み合わせることも可能である。
図20に示すように、ECU90は、まず、モータ5の回転数を固定する(ステップ330)。そして、取得部92で、サーミスタ83a〜83dが検出する各温度Ta〜Tdを取得する(ステップ331)。そして、所定時間が経過するまで(ステップ332)、ステップ330、331を実行する。すなわち、モータ5の回転数を固定したまま、各温度Ta〜Tdの取得を継続する。
ステップ332で所定時間が経過したと判断したら、ステップ333を実行する。ステップ333では、例えば図21に例示する変化する温度に対して、3サイクル以上の異常サイクルがあるか否か判断する。ステップ333では、図21に実線で示す目標物理量である温度に対して、例えば破線で示すように3サイクル以上検出温度の変化が小さいか否かを判断する。これを、各サーミスタ83a〜83dの検出温度について行なう。
ステップ333では、上記した判断結果から、各素子片12a〜12dの状態を判定し、異常状態にある素子片についてはステップ234を実行して、記憶部93に当該素子片が異常状態であることを記憶する。一方、正常状態にある素子片についてはステップ236を実行して、記憶部93に当該素子片が正常状態であることを記憶する。
全ての素子片に対してステップ234またはステップ236のいずれかを実行したら、ステップ234、236で記憶した各素子片の状態を、報知部99で報知する(ステップ239)。報知部99では、各素子片12a〜12dと各状態との対応関係を、例えば表示手段により表示する。
本実施形態のMHP装置によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、一つのMCE素子12を4つの素子片12a〜12dで構成した場合について説明したが、これに限定されるものではない。一つのMCE素子12が複数の素子片により構成されるものであればよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図22、図23に基づいて説明する。
第4実施形態は、前述の第2実施形態と比較して、MCE素子12の破損診断を通常運転モードとは異なるモードで行なう点が異なる。なお、第1〜第3実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1〜第3実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第4実施形態において説明しない他の構成は、第1〜第3実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図22に示すように、本実施形態のMHP装置2は、熱輸送媒体の循環回路の流量を検出する流量検出手段である流量計84を備えている。流量計84が検出した流量は、ECU90の取得部92に出力される。また、本実施形態のMHP装置2は、第2実施形態で説明した定温媒体循環装置201を備えている。そして、ポンプ205の駆動に必要なポンプ動力も取得部92へ出力される。
本実施形態のMHP装置2は、MCE素子12の破損診断を行なう際には、第2実施形態でMCE素子12の劣化状態を診断するときのように、流路切替バルブ203、204で熱輸送媒体の流路をバイパス流路202側とし、ポンプ205を駆動する。ポンプ205は、モータ5を運転して作業室11から熱出力を行なう通常運転時よりも、熱輸送媒体流量を大きくする。
すなわち、本実施形態の制御手段であるECU90は、作業室11から熱出力を行なうための通常運転モードと、取得部92で圧力損失値の関連値の一例であるポンプ動力を取得するための点検運転モードと、を切り替え可能である。そして、点検運転モード時には、通常運転モード時よりも、作業室11を流れる熱輸送媒体の流量を増大させる。ECU90は、流量計84により検出される熱輸送媒体の流量をフィードバックして、ポンプ205を運転制御する。ECU90が通常運転を行なう際には、必要な熱出力に応じてモータ5の回転数が変更され、ポンプ17による熱輸送媒体の流量も変化する。ECU90は、点検運転を行なう際には、通常運転時のポンプ17による熱輸送媒体流量の最大値よりも、ポンプ205による熱輸送媒体流量を増加させる。
これによると、作業室11から熱出力を行なうための通常運転モードとは異なる点検運転モードで圧力損失値の関連値を取得することができる。点検運転モード時には、通常運転モード時よりも作業室11を流れる熱輸送媒体の流量を増大させるので、圧力損失値の関連値を精度よく検出して取得することができる。
例えば、図13に実線で示す目標物理量であるポンプ動力の閾値に対し、破線で示す異常状態となった場合には、通常運転モード時よりも、点検運転モード時の方が、異常状態を確実に検出することができる。これにより、点検運転モードでは、MCE素子12の微小破損も検出することができる。
なお、ポンプ205が、容積型の流体ポンプである場合には、流量計84は省略することができる。また、定温媒体循環装置201を設けずに、ポンプ17のトルクでMCE素子12の破損診断を行なう際にも、点検運転モードとして通常運転モードよりも熱輸送媒体の流量増加を行なうことは有効である。
本実施形態のMHP装置2は、作業室11からの熱出力に対応するMCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量を検出物理量として検出する物理量検出手段としてのポンプ205を備えている。MCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量はポンプ205のポンプ動力である。ポンプ動力は、物理量検出手段が検出する検出物理量である。
MHP装置2は、ポンプ205で検出した検出物理量であるポンプ動力を、作業室11から所定熱出力を行なう所定熱出力動作に対応した目標物理量であるポンプ動力閾値と比較する物理量比較手段として判定部94を備えている。ECU90は、判定部94における検出物理量と目標物理量との比較結果に基づいて、MHP装置2の所定熱出力動作により所定熱出力が可能であるか否かを判断する。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図24、図25に基づいて説明する。
第5実施形態は、前述の第1実施形態と比較して、MCE素子12の破損診断を行なう際に作業室11における圧力損失を直接検出する点が異なる。なお、第1〜第4実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1〜第4実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第5実施形態において説明しない他の構成は、第1〜第4実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図24に示すように、本実施形態のMHP装置2は、作業室11の両端部の圧力差を検出する圧力差検出手段としての差圧計85を備えている。差圧計85が検出した圧力差は、ECU90の取得部92に出力される。
本実施形態のMHP装置2は、MCE素子12の破損診断を行なう際には、差圧計85から取得した圧力差ΔPと、記憶部93が記憶している目標物理量としての正常時の目標圧力差とを判定部94で比較判定する。これによると、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、熱輸送媒体が作業室11を流れる際の圧力損失値を、作業室11の両端部の圧力差として検出するので、MCE素子12の破損を容易に検出することができる。
また、差圧計85は、流路切換機構18において作業室11の両端部の差圧を検出するように設定することで、多気筒に構成された作業室11のいずれでMCE素子12の破損が発生しているかを特定することができる。
また、第4実施形態と同様に、点検運転モードを設定可能としてもよい。これによれば、点検運転モード時には、通常運転モード時よりも作業室11を流れる熱輸送媒体の流量を増大させて、圧力損失値の関連値である圧力差を精度よく検出して取得することができる。
例えば、図25に実線で示す目標物理量である圧力差の閾値に対し、破線で示す異常状態となった場合には、通常運転モード時よりも、点検運転モード時の方が、異常状態を確実に検出することができる。これにより、点検運転モードでは、MCE素子12の微小破損も検出することができる。なお、ポンプ17が、容積型の流体ポンプ装置である場合には、流量計84は省略することができる。
本実施形態のMHP装置2は、作業室11からの熱出力に対応するMCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量を検出物理量として検出する物理量検出手段としての差圧計85を備えている。MCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量は差圧計85が検出する圧力差である。圧力差は、物理量検出手段が検出する検出物理量である。
MHP装置2は、差圧計85で検出した検出物理量である圧力差を、作業室11から所定熱出力を行なう所定熱出力動作に対応した目標物理量である圧力差閾値と比較する物理量比較手段として判定部94を備えている。ECU90は、判定部94における検出物理量と目標物理量との比較結果に基づいて、MHP装置2の所定熱出力動作により所定熱出力が可能であるか否かを判断する。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について図26、図27に基づいて説明する。
第6実施形態は、前述の第1実施形態と比較して、MCE素子12の破損診断を点検作業者等が行なう点が異なる。なお、第1〜第5実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1〜第5実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第6実施形態において説明しない他の構成は、第1〜第5実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
図26に示すように、本実施形態のMHP装置2は、熱輸送媒体流路の熱交換器3とポンプ17との間に、異物捕捉部材としてもメッシュ部材86を備えている。メッシュ部材86は、例えば図7に示す連通溝24aに配設される。
本実施形態のMHP装置2におけるMCE素子12の破損診断は、例えば図27に示す作業手順により行われる。
図27に示すように、点検者は、まず、MHP装置2からメッシュ部材86を取り外す(ステップ610)。次に、メッシュ部材86が捕捉しているMCE素子12の破片の量を確認する(ステップ611)。ここで、捕捉されているMCE素子12の破片量が、MCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量である。そして、メッシュ部材86が、物理量検出手段に相当し、MCE素子12の破片量が検出物理量である。
ステップ611を実行したら、メッシュ部材86が捕捉しているMCE素子12の破片量が規定量以上であるか否かを判断する(ステップ612)。規定量が0gである場合には、目視により判断するものであってもよい。また、ステップ611で破片量の重量測定を行ない、ステップ612で目標物理量である規定量と比較するものであってもよい。ここで、ステップ612が、本実施形態の物理量比較手段に相当する。
ステップ612において、捕捉破片量が規定量以上であると判断した場合には、MCE素子12が破損した異常状態であるとして、MCE素子12の交換を行なう(ステップ613)。そして、メッシュ部材86等の再組付を行なう(ステップ614)。ステップ612において、捕捉破片量が規定量未満であると判断した場合には、MCE素子12が正常状態であるとして、ステップ613をパスして、ステップ614へ進む。
本実施形態によれば、MHP装置2は、作業室11からの熱出力に対応するMCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量を検出物理量として検出する物理量検出手段としてのメッシュ部材86を備えている。そして、メッシュ部材86で検出した検出物理量である捕捉破片量を、作業室11から所定熱出力を行なう所定熱出力動作に対応した目標物理量である規定量と比較する物理量比較手段として、ステップ612を行なう。作業者等は、ステップ612における検出物理量と目標物理量との比較結果に基づいて、MHP装置2の所定熱出力動作により所定熱出力が可能であるか否かを判断する。
これによると、作業室11からの熱出力に対応するMCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量を検出物理量として検出し、所定熱出力動作に対応した目標物理量と比較して、MCE素子12の性能低下の有無を判断することができる。そして、このMCE素子12の性能低下の有無から、所定熱出力動作を行なった際の作業室11からの所定熱出力の可否を判断することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
上記各実施形態では、ポンプ用電動機と磁場用電動機とを共通のモータ5で構成していたが、これに限定されるものではない。ポンプ用電動機と磁場用電動機とを別々に設けてもかまわない。
また、上記各実施形態では、MCE素子12の特性物理量に関連する関連物理量として、各種の物理量を説明した。MCE素子12の特性物理量の一つであるMCE素子12の形状特性に関連する関連物理量として、第1、第2実施形態では、ポンプ用電動機のトルク値の関連値である消費電力値またはコイル電流値を用いた。ポンプ用電動機のトルク値の関連値は、他の物理量であってもかまわない。また、例えば、回転軸2aにトルク計を設けて、ポンプ用電動機のトルク値を用いてもかまわない。
ポンプ用電動機のトルク値またはその関連値は、作業室11の圧力損失値の関連値である。したがって、圧力損失値の関連値として、第3実施形態のように、圧力差を用いることができる。圧力損失値の関連値は、他の物理量であってもかまわない。例えば、熱輸送媒体の流量であってもよい。また、圧力損失値を直接検出して用いてもかまわない。圧力損失値またはその関連値は、MCE素子12の形状特性に関連する関連物理量である。形状特性に関連する関連物理量として、他の物理量を用いてもかまわない。また、MCE素子12の形状特性、すなわち、素子形状を直接検出して用いてもかまわない。
また、上記各実施形態では、MCE素子12の特性物理量の一つであるMCE素子12の磁気熱量効果特性に関連する関連物理量として、第1、第2実施形態では、磁場用電動機のトルク値の関連値である消費電力値またはコイル電流値を用いた。磁場用電動機のトルク値の関連値は、他の物理量であってもかまわない。また、例えば、回転軸2aにトルク計を設けて、ポンプ用電動機のトルク値を用いてもかまわない。
磁場用電動機のトルク値またはその関連値は、磁場変調装置14により与えられる磁場におけるMCE素子12の磁気吸引力の関連値である。磁気吸引力の関連値は、他の物理量であってもかまわない。また、磁気吸引力を直接検出して用いてもかまわない。磁気吸引力またはその関連値は、MCE素子12が呈する磁気熱量効果値の関連値である。磁気熱量効果値の関連値は、他の物理量であってもかまわない。また、磁気熱量効果値を検出して用いてもかまわない。磁気熱量効果値またはその関連値は、MCE素子12の磁気熱量効果特性に関連する物理量である。磁気熱量効果特性に関連する関連物理量として、他の物理量を用いてもかまわない。また、MCE素子12の磁気熱量効果特性を直接検出して用いてもかまわない。
上記各実施形態では、作業室11とMCE素子12とを有する素子ベッドである容器が回転する構成を採用した。これに代えて、素子ベッドと磁場変調装置14との間の相対的な回転と、素子ベッドと流路切換機構18との間の相対的な回転とを提供するための多様な構成を採用することができる。例えば、素子ベッドである容器を静止させておき、永久磁石を含む磁場変調装置を容器に対して相対的に回転移動させてもよい。これにより、ひとつのMCE素子12に与えられる磁場を変動させることができる。換言すれば、磁場変更手段は、相対的移動体を容器に対して容器外表面に沿った方向に移動させるものであってもよい。すなわち、容器と相対的移動体とを容器外表面に沿った方向に相対的に移動させて、磁気作業物質へ印加する磁場の大きさを変更するものであればよい。
また、上記各実施形態では、作業室が形成された容器と磁気回路部を有する相対的移動体とを相対的に回転移動させていたが、これに限定されるものではない。例えば、容器と相対的移動体とを相対的にリニア移動させるものであってもよい。
また、上記各実施形態では、MHP装置2の外部の熱交換器3、4に熱輸送媒体を供給した。これに代えて、一次媒体である熱輸送媒体と、二次媒体とを熱交換する熱交換器をMHP装置2内に設け、二次媒体を低温系統と高温系統とに供給してもよい。
また、上記各実施形態では、ひとつのMHP装置2に、2つの第1位置と、2つの第2位置とを設けた。これに代えて、1つの第1位置と、1つの第2位置とを設けてもよい。また、3つ以上の第1位置と第2位置とを設けてもよい。
また、上記各実施形態では、車両用空調装置に本発明を適用した。これに代えて、住宅用の空調装置に本発明を適用してもよい。また、水を加熱する給湯装置として利用してもよい。また、上記各実施形態では、室外の空気を主要な熱源とするMHP装置2を説明した。これに代えて、水、土などの他の熱源を主要熱源として利用してもよい。