JP2019086261A - 磁気熱サイクル装置およびその運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱輸送の効率が高い磁気熱サイクル装置および方法を提供する。【解決手段】磁気熱サイクル装置は、MHP装置1(磁気熱量効果型ヒートポンプ装置)を提供する。MHP装置1は、磁気熱量効果を発揮するMCE素子4(磁気熱量効果素子)を有する。MHP装置1は、MCE素子4に印加される磁場を変調する磁場変調装置6を有する。MHP装置1は、MCE素子4と熱交換する熱媒体5の往復流を生成する熱輸送装置7を有する。熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に、熱媒体5の中にある気泡を圧縮する。熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、気泡を圧縮してもよい。熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの期間中に、気泡を圧縮してもよい。【選択図】図1
Description
この開示は、磁気熱サイクル装置およびその運転方法に関する。
特許文献1−5は、磁性体の温度特性を利用して運動エネルギと熱エネルギとの相互変換を提供する磁気熱サイクル装置を開示する。磁気熱サイクル装置のひとつとして、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置(以下、MHP装置という)が開示されている。この装置は、磁場の強さの変化と、熱を輸送する媒体の往復流とを利用している。従来技術として列挙された先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
従来、熱輸送媒体の流れの開始位相、および/または終了位相が変動する場合がある。流れの位相の変動は、熱輸送の効率を低下させる場合がある。流れの位相は、多様な原因によって変動する。原因のひとつは、気泡である。気泡は、外部から装置の中へ混入することがある。また、気泡は、装置の中で生成されることがある。気泡は、熱輸送媒体の中において、熱輸送媒体(液体)と異なる可圧縮性を発揮する。このため、気泡は、熱輸送媒体の流れの位相を変化させることがある。例えば、位相の進み、または位相の遅れを生じることがある。
上述の観点において、または言及されていない他の観点において、磁気熱サイクル装置およびその運転方法にはさらなる改良が求められている。
開示されるひとつの目的は、熱輸送の効率が高い磁気熱サイクル装置およびその運転方法を提供することである。
開示される他のひとつの目的は、流れの位相の変動が抑制された磁気熱サイクル装置およびその運転方法を提供することである。
開示されるさらに他のひとつの目的は、流れの位相の変動に起因する影響が抑制された磁気熱サイクル装置およびその運転方法を提供することである。
ここに開示された磁気熱サイクル装置は、磁気熱量効果を発揮する磁気熱量効果素子(4)と、磁気熱量効果素子に印加される磁場を変調する磁場変調装置(6)と、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、および/または往復流の少なくとも一方の流れの期間中に、熱輸送媒体の中にある気泡を圧縮するように、磁気熱量効果素子と熱交換する熱輸送媒体の往復流を生成する熱輸送装置(7)とを備える。
開示される磁気熱サイクル装置によると、熱輸送装置は、往復流の少なくとも一方の流の開始前に、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、または往復流の少なくとも一方の流れの期間中に、熱輸送媒体の中にある気泡を圧縮する。熱輸送媒体の中にある気泡が、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に圧縮される場合、その流れの開始位相の誤差が抑制される。熱輸送媒体の中にある気泡が、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に圧縮される場合、その流れの開始位相の誤差が抑制される。熱輸送媒体の中にある気泡が、往復流の少なくとも一方の流れの期間中に圧縮される場合、その流れの終了位相の誤差が抑制される。これにより、流れの位相の誤差が抑制され、目標とされる高い熱輸送効率が実現される。
ここに開示された磁気熱サイクル装置の運転方法は、磁気熱量効果を発揮する磁気熱量効果素子(4)に印加される磁場を変調すること、磁気熱量効果素子と熱交換する熱輸送媒体の往復流を生成すること、および、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、または往復流の少なくとも一方の流れの期間中に、熱輸送媒体の中にある気泡を圧縮することを備える。
開示される磁気熱サイクル装置の運転方法によると、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、または往復流の少なくとも一方の流れの期間中に、熱輸送媒体の中にある気泡が圧縮される。熱輸送媒体の中にある気泡が、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に圧縮される場合、その流れの開始位相の誤差が抑制される。熱輸送媒体の中にある気泡が、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に圧縮される場合、その流れの開始位相の誤差が抑制される。熱輸送媒体の中にある気泡が、往復流の少なくとも一方の流れの期間中に圧縮される場合、その流れの終了位相の誤差が抑制される。これにより、流れの位相の誤差が抑制され、目標とされる高い熱輸送効率が実現される。
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
図1は、磁気熱サイクル装置を示すブロック図である。磁気熱サイクル装置は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置1を提供する。磁気熱量効果型ヒートポンプ装置1は、MHP装置1と呼ばれる。MHPは、Magneto−caloric effect Heat Pumpである。MHP装置1は、磁気ヒートポンプ装置とも呼ばれる。MHP装置1は、乗り物用空調装置を提供する。
図1は、磁気熱サイクル装置を示すブロック図である。磁気熱サイクル装置は、磁気熱量効果型ヒートポンプ装置1を提供する。磁気熱量効果型ヒートポンプ装置1は、MHP装置1と呼ばれる。MHPは、Magneto−caloric effect Heat Pumpである。MHP装置1は、磁気ヒートポンプ装置とも呼ばれる。MHP装置1は、乗り物用空調装置を提供する。
この明細書において乗り物の語は広義の意味で使用される。すなわち、乗り物の語は、乗員室または荷室を有する移動体、例えば、走行車両、船舶、飛行機を含む。さらに、乗り物の語は、シミュレーション機器、アミューズメント機器などを含む。
この明細書においてヒートポンプ装置の語は広義の意味で使用される。すなわち、ヒートポンプ装置の語は、ヒートポンプ装置によって得られる冷熱を利用する装置と、ヒートポンプ装置によって得られる温熱を利用する装置との両方が含まれる。冷熱を利用する装置は、冷凍サイクル装置とも呼ばれることがある。よって、この明細書においてヒートポンプ装置の語は冷凍サイクル装置を包含する概念として使用される。
MHP装置1は、磁気熱量効果素子ベッド2を備える。磁気熱量効果素子ベッド2は、素子ベッド2と呼ばれる。素子ベッド2は、容器3と、磁気熱量素子4と、熱輸送媒体5とを有する。磁気熱量素子4は、MCE素子4と呼ばれる。MCEは、Magneto−Caloric Effectである。MHP装置1は、MCE素子4の磁気熱量効果を利用する。容器3は、作業室3aを内部に区画形成している。容器3は、MCE素子4を収容する。MCE素子4は、作業室3aの中に収容されている。容器3の中の空洞、すなわち作業室3aの空洞は、熱輸送媒体5によって満たされている。
MCE素子4は、作業室3aの一端における端部領域である高温端11と作業室3aの他端における端部領域である低温端12と間に配置されている。容器3は、MCE素子4に磁場を印加することを許容し、しかも、MCE素子4と熱交換するように熱輸送媒体5が流れることを許容する。容器3は、非磁性材料により形成されている。熱輸送媒体5は、作業室3aの中を往復するように流れる。熱輸送媒体5は、不凍液、水、油などの液体によって提供することができる。熱輸送媒体5は、熱媒体5とも呼ばれる。
MCE素子4は、磁気熱量効果を発揮する磁気作業物質を含む。MCE素子4は、高温端11と低温端12と間に配置されている。MCE素子4は、外部から印加される磁場の強弱により発熱と吸熱とを生じる。容器3とMCE素子4とは、熱輸送媒体5の流路を形成するように、配置されている。
MCE素子4は、複数の温度帯を形成する複数の素子群を有する。図示されている素子群の数は、例示である。複数の素子は、機器が継続的に安定して運転する定常運転時に得られる目標値としての温度勾配(温度分布)を分担する。温度勾配は、高温端11と低温端12とを生成する。高温端11および低温端12の語は、素子ベッド2の中の部分的な領域を指している。高温端11および低温端12は、長さ方向LDにおけるMCE素子4より外側の領域を指している。高温端11および低温端12よりさらに外側には、多くの場合、配管、ポンプ、弁機構などが配置されている。温度勾配は、MHP装置1が長時間にわたって運転される結果として得られる。例えば、定常運転時に得られる温度勾配は、乗り物用空調装置として利用できる高温と低温とを提供する。複数の素子群は、MCE素子4の長手方向、すなわち熱輸送媒体5の流れ方向に沿って配置されている。このようなMCE素子4における複数の素子群の配置は、カスケード配置と呼ばれる。
複数の素子群のそれぞれを構成する材料は、キュリー温度が異なる。複数の素子群は、異なる温度帯において高い磁気熱量効果(ΔS(J/kgK))を発揮する。高温端11に近い素子群は、定常運転状態において高温端11に現れる温度の近傍において高い磁気熱量効果を発揮する材料組成を有する。中温部に近い素子群は、定常運転状態において中温部に現れる温度の近傍において高い磁気熱量効果を発揮する材料組成を有する。低温端12に近い素子群は、定常運転状態において低温端12に現れる温度の近傍において高い磁気熱量効果を発揮する材料組成を有する。
熱媒体5の往復流は、順流FWと逆流RVとを提供する。低温端12から高温端11に向かう流れは、順流FWと呼ばれる。高温端11から低温端12に向かう流れは、逆流RVと呼ばれる。順流FWと逆流RVとは、これと反対に定義されてもよい。順流FWにおける流量、または逆流RVにおける流量は、MCE素子4に沿って熱媒体5を所定の距離にわたって移動させることができるように設定される。往復流の振幅は、熱媒体5の移動距離、または、熱媒体5の流量によって定義することができる。
往復流の振幅は、例えば、互いに隣接する2つの温度帯を提供する2つの素子群の間で熱媒体5を移動させる。往復流の振幅は、固定とすることも、可変とすることもできる。往復流の振幅は、例えば、0(ゼロ)以上に設定することができる。往復流の振幅は、3つ以上の温度帯を提供する3つ以上の素子群にわたって熱媒体5を移動させてもよい。
この実施形態では、MCE素子4は、複数の粒によって提供されている。複数の粒は、容器3の中に充填されている。複数の粒は、それらの間に、熱媒体5の流路を提供する。MCE素子4が提供する流路断面積は、容器3が提供する流路断面積の一部である。この結果、MCE素子4と熱媒体5との間の良好な熱交換が提供される。MCE素子4は、熱媒体5を流すための複数のマイクロチャンネルを形成する板状、ブロック状など多様な形状によって提供することができる。
MCE素子4は、外部磁場の印加により発熱し、外部磁場の除去により吸熱する。MCE素子4は、外部磁場が印加されることによって電子スピンが磁場方向に揃うと、磁気エントロピーが減少し、熱を放出することによって温度が上昇する。また、MCE素子4は、外部磁場が除去されることによって電子スピンが乱雑になると、磁気エントロピーが増加し、熱を吸収することによって温度が低下する。MCE素子4は、常温域において高い磁気熱量効果を発揮する磁性体によって作られている。磁性体は、例えばガドリニウム系材料であってもよい。また、マンガン、鉄、リンおよびゲルマニウムの混合物であってもよい。
MHP装置1は、磁場変調装置6と熱輸送装置7とを備える。磁場変調装置6と熱輸送装置7とは、MCE素子4をAMR(Active Magnetic Refrigeration)サイクルとして機能させる。磁場変調装置6と熱輸送装置7とは、同期的に作動する。
磁場変調装置6は、MCE素子4に外部磁場を与えるとともに、その外部磁場の強さを増減させるように外部磁場を変調する。外部磁場は、厚さ方向TDに沿って与えられる。磁場変調装置6は、MCE素子4を強い磁界内に置く励磁状態と、MCE素子4を弱い磁界内またはゼロ磁界内に置く消磁状態とを周期的に切換える。磁場変調装置6は、MCE素子4が強い外部磁場の中に置かれる励磁期間、およびMCE素子4が励磁期間より弱い外部磁場の中に置かれる消磁期間を周期的に繰り返すように外部磁場を変調する。磁場変調装置6は、励磁期間と消磁期間とを周期的に繰り返すように磁場を変調している。磁場変調装置6は、外部磁場を生成するための磁力源、例えば永久磁石または電磁石を備えることができる。
磁場変調装置6は、永久磁石を含む磁性部材6aを備える。磁性部材6aは、MCE素子4の全体に外部磁場を印加可能である。磁性部材6aの全長は、MCE素子4の全長より長い。磁性部材6aは、MCE素子4と重複するように配置されている。磁性部材6aは、素子ベッド2と重複するように配置されている。
磁場変調装置6は、素子ベッド2および/または永久磁石を移動させ、素子ベッド2と永久磁石との間の距離を周期的に、かつ相対的に変化させる機構によって提供される。磁場変調装置6は、例えば、固定の素子ベッド2に対して、永久磁石を回転移動させる回転機構を含むことができる。この実施形態では、MHP装置1は、素子ベッド2a、および素子ベッド2bを有する。磁場変調装置6は、素子ベッド2aと素子ベッド2bとを交互に励磁する。素子ベッド2aと素子ベッド2bとは、相補的に、励磁状態と、消磁状態とに置かれる。
熱輸送装置7は、MCE素子4が放熱または吸熱する熱を輸送するための熱媒体5を流すための流体機器を備える。熱輸送装置7は、MCE素子4と熱交換する熱媒体5をMCE素子4に沿って流す装置である。熱輸送装置7は、MCE素子4に高温端11と低温端12とを生成するように、熱媒体5を流す。熱輸送装置7は、例えば、磁場変調装置6による外部磁場の変化に同期して熱媒体5を往復的に流す。
熱輸送装置7は、低温系統21と、高温系統31とを有する。低温系統21は、MHP装置1としての流体機器である。低温系統21は、低温端12の冷熱を利用可能に取り出す熱機器でもある。低温端12の冷熱は、例えば、冷房に利用される。低温端12の冷熱は、廃熱として排出されてもよい。高温系統31は、MHP装置1としての流体機器である。高温系統31は、高温端11の温熱を利用可能に取り出す熱機器でもある。高温端11の温熱は、例えば、暖房に利用される。高温端11の温熱は、廃熱として排出されてもよい。
低温系統21は、ポンプ22と、リザーバ23と、バルブ機構24とを有する。ポンプ22は、磁場の変動周期と関係なく、熱媒体5を連続的に流すポンプである。MHP装置1は、ポンプ22が供給する熱媒体5の流れを、順に利用するために複数の素子ベッド2を有する。MHP装置1は、例えば、相補的に機能する素子ベッド2a、2bを有する。リザーバ23は、余剰な熱媒体5を流路から回収し、不足の熱媒体5を流路へ補充する。
バルブ機構24は、MCE素子4より上流における熱媒体5の通路を開閉する上流バルブ25(FW−IN)を有する。上流バルブ25は、順流FWのための上流バルブ25である。上流バルブ25は、熱媒体5を低温端12に供給する。上流バルブ25は、第1の上流バルブとも呼ばれる。上流バルブ25は、順流FWを生成するための入口を提供する。上流バルブ25は、低温端12に位置する低温入口バルブ、または順流のための往流入口バルブとも呼ばれる。
バルブ機構24は、MCE素子4より下流における熱媒体5の通路を開閉する下流バルブ26(RV−OUT)を有する。下流バルブ26は、逆流RVのための下流バルブ26である。下流バルブ26は、熱媒体5を低温端12から取り出すための下流バルブ26である。下流バルブ26は、第2の下流バルブとも呼ばれる。下流バルブ26は、逆流RVを生成するための出口を提供する。下流バルブ26は、低温端12に位置する低温出口バルブ、または逆流のための復流出口バルブとも呼ばれる。
高温系統31は、ポンプ32と、リザーバ33と、バルブ機構34とを有する。ポンプ32は、磁場の変動周期と関係なく、熱媒体5を連続的に流すポンプである。リザーバ33は、余剰な熱媒体5を流路から回収し、不足の熱媒体5を流路へ補充する。
バルブ機構34は、MCE素子4より上流における熱媒体5の通路を開閉する上流バルブ35(RV−IN)を有する。上流バルブ35は、逆流RVのための上流バルブ35である。上流バルブ35は、熱媒体5を高温端11に供給する。上流バルブ35は、第2の上流バルブとも呼ばれる。上流バルブ35は、熱媒体5を高温端11に供給する。上流バルブ35は、逆流RVを生成するための入口を提供する。上流バルブ35は、高温端11に位置する高温入口バルブ、または逆流のための復流入口バルブとも呼ばれる。
バルブ機構34は、MCE素子4より下流における熱媒体5の通路を開閉する下流バルブ36(FW−OUT)を有する。下流バルブ36は、逆流RVのための下流バルブ36である。下流バルブ36は、熱媒体5を高温端11から取り出すための下流バルブ36である。下流バルブ36は、第2の下流バルブとも呼ばれる。下流バルブ36は、順流FWを生成するための出口を提供する。下流バルブ36は、高温端11に位置する高温出口バルブ、または順流のための順出口バルブとも呼ばれる。
上流バルブ25および下流バルブ36は、順流FWに関して対を形成する。上流バルブ35および下流バルブ26は、逆流RVに関して対を形成する。
複数のバルブ25、26、35、および36は、多様なバルブによって提供することができる。複数のバルブ25、26、35、および36は、図示されるような開閉弁、または二位置弁により、または開度を連続的に調節可能な可変開度弁などによって提供することができる。バルブ機構24、34は、磁場の変動周期と同期して開閉される。
MHP装置1は、乗り物用空調装置を提供するための空調装置8(HVAC)を有する。空調装置8は、暖房、換気、および空調のためのユニットとも呼ばれる。空調装置8は、高温端11に得られる高温、および/または低温端12に得られる低温を利用する。高温および/または低温は、MCE素子4から取り出されてもよく、熱媒体5から取り出されてもよい。空調装置8は、低温系統21に設けられた低温熱交換器8aを有する。空調装置8は、高温系統31に設けられた高温熱交換器8bを有する。
低温熱交換器8aは、ポンプ22の上流側に設けられている。高温熱交換器8bは、ポンプ32の上流側に設けられている。言い換えると、ポンプ22は、低温熱交換器8aと素子ベッド2との間に設けられている。また、ポンプ32は、高温熱交換器8bと素子ベッド2との間に設けられている。このような配置は、素子ベッド2における高い圧力損失に抗して熱媒体5を流すことを可能とする。また、低温熱交換器8aおよび高温熱交換器8bの耐圧性能を比較的低くするために貢献する。
MHP装置1は、動力源15を有する。動力源15は、電動機である。動力源15は、磁場変調装置6、および熱輸送装置7を同期的に機能させる。動力源15は、例えば、磁性部材6aを、素子ベッド2aと素子ベッド2bとに交互に対向させることにより、ひとつの素子ベッド2を交互に励磁状態と消磁状態とに置く。動力源15は、ポンプ22、バルブ機構24、ポンプ32、およびバルブ機構34を駆動する。
MHP装置1は、制御装置16を有する。制御装置16は、電子制御装置である。制御装置16は、予め定められた制御方法を実行するためのプログラムを格納するメモリと、処理装置とを含む。制御装置16は、いわゆるマイクロコンピュータ、またはアナログ電気回路によって提供される。この実施形態では、制御装置16は、少なくとも動力源15が提供する回転を制御する。
図2は、磁場変調装置6と素子ベッド2との配置を示している。MHP装置1は、部品を収容するハウジング17を備える。複数の素子ベッド2a、2bは、ハウジング17の内部に環状に配置されている。それぞれの素子ベッド2a、2bは、扇状の断面を有する。この実施形態では、ひとつの素子ベッド2aは、等間隔に配置された複数の素子ベッド2a−1、2a−2によって提供されている。ひとつの素子ベッド2bは、等間隔に配置された複数の素子ベッド2b−1、2b−2によって提供されている。
MHP装置1は、動力源15によって駆動される回転軸15aを有する。磁場変調装置6は、複数の磁性部材6aを有する。それぞれの磁性部材6aは、扇状の断面形状を有する。複数の磁性部材6aは、回転軸15aによって矢印の方向へ回転させられる。複数の磁性部材6aは、素子ベッド2a、2bと順に対向する。これにより、ひとつの素子ベッド2は、交互に励磁状態と消磁状態とに置かれる。この実施形態では、気泡に起因する位相誤差が抑制されるから、複数の素子ベッド2a、2bは、周方向に関して互いに近くに配置されている。
図3は、バルブ機構24の一例を示している。上流バルブ25および下流バルブ26は、ポペットバルブによって提供されている。バルブ機構24は、ポペットバルブの駆動に適した駆動機構27を有する。駆動機構27は、例えば、ポペットバルブを駆動するカム機構によって提供することができる。図3は、上流バルブ25が開弁状態(OPN)にあり、下流バルブ26が閉弁状態(CLS)にある。この結果、熱媒体5は、ポンプ22から上流バルブ25を経由して素子ベッド2に供給されている。バルブ機構34も、ポペットバルブを有することができる。代替的に、または追加的に、バルブ機構24、34は、多様なバルブを採用することができる。
図4は、加圧状態におけるMHP装置1を示している。加圧状態において、上流バルブ25は、開弁状態にある。加圧状態において、しかし、残るすべてのバルブ、すなわち下流バルブ26、上流バルブ35、および下流バルブ36は、閉弁状態にある。すなわち、加圧状態において、ひとつの入口バルブだけが開かれる。この状態は、駆動機構27によって提供される。加圧状態では、素子ベッド2内の熱媒体5が加圧される。この結果、素子ベッド2内にある気泡が圧縮される。上流バルブ25だけが開かれたとき、すなわち加圧状態が開始されたときに、気泡が圧縮される。素子ベッド2内には、気泡を圧縮するだけのわずかな流れが生じる。この微小な流れは、熱輸送に影響しない。気泡が圧縮されることにより、これに続く往復流の一方の流れ始めの位相誤差が抑制される。
図5は、流れ状態におけるMHP装置1を示している。流れ状態は、加圧状態の後に提供される。言い換えると、加圧状態は、流れ状態より前に提供される。別の観点では、順流FWのための2つのバルブ25、36のうち、上流バルブ25の開弁位相は、下流バルブの開弁位相よりも進んでいる。この結果、入口のバルブを出口のバルブより先に開弁させる進み特性が得られる。
加圧状態の後に流れ状態が提供されることにより、流れ状態の開始位相の誤差が抑制される。言い換えると、気泡が圧縮された状態から、流れが始まる。これにより、気泡の圧縮に起因する位相誤差が抑制される。
図4、図5は、順流FWにおけるMHP装置1の挙動を示している。逆流RVにおいても同様の挙動が提供される。この結果、逆流RVにおいても流れの開始における位相誤差が抑制される。
図6は、典型的な状態におけるMHP装置1の作動を示す。横軸は、時間(s)を示す。波形FW−INは、上流バルブ25の開弁状態(OPN)と閉弁状態(CLS)とを示す。波形FW−OUTは、下流バルブ36の開弁状態(OPN)と閉弁状態(CLS)とを示す。波形RV−INは、上流バルブ35を、波形RV−OUTは、下流バルブ26を示す。波形PRは、素子ベッド2内の圧力(MPa)を示す。波形FRは、素子ベッド2内における熱媒体5の流量(m3/s)を示す。波形MGは、磁場変調装置6によって提供される磁場の磁束密度(mT)を示す。
図6は、磁気熱サイクル装置の運転方法によって提供される典型的な状態を示している。MHP装置1のひとつの素子ベッド2に関連する機器の挙動が図示されている。図示されている状態は、定常的な運転状態を示している。MHP装置1の定常運転状態は、MHP装置1が熱的な負荷に抗する出力を安定的に提供している状態に相当する。定常運転状態は、MHP装置1が所定の期間にわたって運転され、安定的に機能を発揮している状態である。ポンプ22、32は、圧力Pnを発生している。磁場変調装置6は、周期Tpの期間に磁場の増減を繰り返している。ひとつの素子ベッド2は、ほぼ1/2Tpの期間に励磁され、残りの期間に消磁される。熱輸送装置7は、AMRサイクルとして効率的に熱を輸送できる目標期間Ttgtにおいて、順流FWを発生させている。熱輸送装置7は、同様に、AMRサイクルとして効率的に熱を輸送できる目標期間において、逆流RVを発生させている。
周期Tpが始まると、素子ベッド2に鎖交する磁束密度が徐々に上昇する。このとき、すべてのバルブ25、26、35、36が閉じているから、素子ベッド2内の圧力は、不可避の漏れによってゆっくりと低下している。
時刻t1において、駆動機構27は、順流FWのための上流バルブ25を開く。駆動機構27は、下流バルブ36が開く前に上流バルブ25を開く。言い換えると、駆動機構27は、下流バルブ36が開く前であって下流バルブ36が閉じている状態において、上流バルブ25を開く。上流バルブ25が開かれると、素子ベッド2内の圧力が上昇する。このとき、加圧状態が形成される。素子ベッド2内の熱媒体5は、気泡を圧縮する。
この結果、熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に気泡を圧縮するように、MCE素子4と熱交換する熱媒体5の往復流を生成する。しかも、熱輸送装置7は、上流バルブ25だけを開くことによって、流れ期間Tfより早い時期から熱媒体5の圧力の値を変化させることにより気泡を圧縮している。ここでは、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に、熱媒体5の圧力の絶対値が高められる。
時刻t2において、駆動機構27は、順流FWのための下流バルブ36を開く。上流バルブ25の開弁時期は、下流バルブ36の開弁時期よりも進み期間Adだけ先行している。下流バルブ36が開かれると、順流FWが発生する。波形FRで示される流量は、素子ベッド2の圧力損失に起因して徐々に増加する。波形FRは、目標期間Ttgtの中において上限値に到達する。こうして、順流FWが流れる。順流FWの流れ期間Tfは、圧力Pnの下において、素子ベッド2内において熱媒体5を所定の距離移動させるように設定されている。
時刻t3において、駆動機構27は、下流バルブ36を閉じる。よって、流れ期間Tfは、下流バルブ36の開弁期間によって定義される。下流バルブ36が閉じられると、波形FRは急速に低下する。
時刻t4において、駆動機構27は、上流バルブ25を閉じる。駆動機構27は、下流バルブ36が閉じた後に上流バルブ25を閉じる。上流バルブ25の開弁期間は、下流バルブ36の開弁期間より長い。しかも、上流バルブ25の開弁期間は、進み方向と遅れ方向との両方に関して、下流バルブ36の開弁期間より長い。よって、上流バルブ25の閉弁時期は、下流バルブ36の閉弁時期よりも遅れ期間Rtだけ遅れている。この遅れ期間Rtは、順流FWが終了した後も、素子ベッド2内の圧力を維持することを可能とする。これにより、往復流が転流した直後における圧力低下が抑制される。
上述のように、熱輸送装置7は、順流FWを提供する。熱輸送装置7は、引き続いて、逆流RVを提供する。逆流RVは、上流バルブ35および下流バルブ26が、上流バルブ25および下流バルブ36と同様に機能することによって提供される。こうして、熱輸送装置7は、往復流を提供する。
この実施形態は、MHP装置1の運転方法を提供する。運転方法は、磁場変調装置6によって、MCE素子4に印加される磁場を変調すること、および、MCE素子と熱交換する熱媒体5の往復流を生成することを含む。これらの段階は、同時に実行される。さらに、運転方法は、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に、熱媒体5の中にある気泡を圧縮する。
往復流を生成する段階は、MCE素子4より下流の下流バルブ36が閉じている状態において、MCE素子4より上流の上流バルブ25を開くことを含む。これにより、素子ベッド2の内に熱媒体5の圧力が作用するから、流れの開始前に、熱媒体5の中にある気泡が圧縮される。往復流を生成する段階は、上流バルブ25を開いた後であって、かつ進み期間Adの後に、下流バルブ36を開くことを含む。これにより、気泡が圧縮された状態において、往復流の少なくとも一方の流れを始めることができる。
運転方法は、さらに、MCE素子4より下流の下流バルブ26が閉じられている状態において、MCE素子4より上流の上流バルブ25を閉じることを含むことができる。これにより、素子ベッド2の内に熱媒体5の圧力が作用する期間を、流れの期間よりも長くなる。この結果、素子ベッド2の中の圧力を高く維持して、気泡の膨脹を抑制することができる。上流バルブ25は、下流バルブ36が閉じられた後、すなわち流れの終了後であって、かつ遅れ期間Rtの後に閉じられる。遅れ期間Rtは、他方の流れ(逆流RV)のための手順が開始される直前までの期間であることが望ましい。これにより、気泡が圧縮された状態のまま、往復流を転流することが可能となる。
以上に述べたこの実施形態によると、熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの開始前に、気泡を圧縮する。この結果、その流れの開始位相の誤差が抑制される。これにより、流れの位相の誤差が抑制され、目標とされる高い熱輸送効率が実現される。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、連続して一定流量の熱媒体5を吐出するポンプ22、32が用いられている。これに代えて、この実施形態では、ポンプによる加圧力を一時的に高く制御することによって気泡を圧縮する。
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、連続して一定流量の熱媒体5を吐出するポンプ22、32が用いられている。これに代えて、この実施形態では、ポンプによる加圧力を一時的に高く制御することによって気泡を圧縮する。
図7において、MHP装置1は、吐出流量を可変のポンプ222、232を有する。ポンプ222、232の吐出流量は、制御装置216(ECU)によって調節可能である。制御装置216は、複数のバルブ25、26、35、および36に同期して一時的に吐出量を増加させる。この結果、ポンプ222、232の吐出側通路における圧力は、一時的に高くなる。図中には、順流FWにおいて圧力が高くなることによって気泡が圧縮されている状態が図示されている。圧力は、逆流RVにおいても一時的に高く調節される。
図8において、往復流の両方において、流れの開始直後に熱媒体5を加圧する波形が図示されている。言い換えると、ポンプ222、232は、流れの開始直後に、素子ベッド2の圧力を一時的に高くするように機能する。これにより、素子ベッド2内の気泡が圧縮され、流れの開始時における位相誤差が抑制される。
時刻t1において、駆動機構27は、上流バルブ25および下流バルブ36を開く。この実施形態では、これら開弁時期の間に位相差は設けられていない。これら開弁時期に、上記実施形態のような位相差を設けてもよい。これにより、順流FWが流れ始める。
同時に、制御装置216は、ポンプ222の吐出流量を増加させるようにポンプ222を制御する。これにより、素子ベッド2の圧力は、圧力Pnを下回る圧力からピーク圧力Ppsへ上昇する。このとき、素子ベッド2内の圧力の上昇勾配は大きい。圧力は、その上昇勾配によって急激に上昇する。制御装置216は、ポンプ222の吐出流量を一時的に増加させる。よって、ポンプ222の吐出流量は急激に低下し、素子ベッド2内の圧力も圧力Pnに向けて急激に低下する。この結果、順流FWが開始されるときに、素子ベッド2内の圧力が高められ、気泡が圧縮される。これにより、順流FWの開始位相の誤差が抑制される。なお、吐出流量が増加される期間は、AMRサイクルを実現するために必要となれる熱輸送に悪影響を与えない程度の短時間とされている。
時刻t2において、駆動機構27は、上流バルブ25および下流バルブ36を閉じる。これにより、順流FWが終了する。上流バルブ25および下流バルブ36が閉じられると、素子ベッド2内の圧力は徐々に低下する。
やがて、時刻t3において、駆動機構27は、上流バルブ35および下流バルブ26を開く。これにより、逆流RVが流れ始める。同時に、制御装置216は、ポンプ232の吐出流量を増加させるようにポンプ232を制御する。この結果、逆流RVにおいても、気泡が圧縮される。これにより、逆流RVの開始位相の誤差が抑制される。
この実施形態は往復流の両方において、流れの開始時にポンプ222、232の吐出流量を増加させている。これに代えて、順流FWまたは逆流RVにおいてのみ、ポンプ222、232の吐出流量を増加させてもよい。
この実施形態では、熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、熱媒体5の中にある気泡を圧縮するように、往復流を生成する。熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に吐出流量が一時的に多くなるポンプ222、232を備える。ここでは、圧力波形PRは、一時的に圧力Pnより高い圧力Ppsに到達する。よって、流れの開始直後に素子ベッド2内の圧力の上昇勾配が大きくなる。上昇勾配は、圧力Ppsに向かう大きい勾配である。上昇勾配は、例えば、ポンプ222、232の吐出流量が圧力Pnを維持するように制御されている場合よりも大きい。このため、流れの開始直後、すなわち上流バルブおよび下流バルブの両方が開弁状態となった直後において、気泡を圧縮でき、流れの開始位相の誤差が抑制される。また、吐出流量が一時的に多くなるポンプ222、232は、素子ベッド2内の圧力の絶対値を一時的に高くする。これにより、気泡を圧縮でき、流れの開始位相の誤差が抑制される。
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、バルブ機構24、34は、開閉式のバルブを有している。これに代えて、この実施形態では、開度を少なくとも2段階に変更可能な開度可変型のバルブが用いられる。
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、バルブ機構24、34は、開閉式のバルブを有している。これに代えて、この実施形態では、開度を少なくとも2段階に変更可能な開度可変型のバルブが用いられる。
図9は、バルブ機構24を示す。バルブ機構34も同様の構成を備えている。バルブ機構24は、開度可変型の上流バルブ325を備える。上流バルブ325の開度は、少なくとも2段階に調節可能である。上流バルブ325は、閉弁状態(CLS)と、開弁状態(OPN)とを提供する。さらに、上流バルブ325は、小開度状態(Lf1)と、小開度状態(Lf1)より開度が大きい大開度状態(Lf2)とを提供する。上流バルブ325は、小リフト量によって小開度状態(Lf1)を提供する。上流バルブ325は、小リフト量よりリフト量が大きい大リフト量によって大開度状態(Lf2)を提供する。上流バルブ325のリフト量(開度)は、駆動機構327によって調節される。
図10において、往復流の両方において、流れの開始直後に熱媒体5を加圧する波形が図示されている。上流バルブ325は、流れの開始直後に大開度状態(Lf2)に制御され、流れの期間中に小開度状態(Lf1)に制御される。これにより、素子ベッド2内の気泡が圧縮され、流れの開始時における位相誤差が抑制される。なお、往復流の片方のみにおいて、このような開度制御を実施してもよい。
時刻t1において、駆動機構327は、上流バルブ325および下流バルブ36を開く。この実施形態では、これら開弁タイミングに位相差は設けられていない。これら開弁タイミングに、上記実施形態のような位相差を設けてもよい。これにより、順流FWが流れ始める。
しかも、駆動機構327は、上流バルブ325だけを大開度状態に駆動する。これにより、素子ベッド2内の圧力は急激に上昇する。ここでは、素子ベッド2の圧力は、上流バルブ325が小開度状態であるときよりも急激に上昇する。すなわち、駆動機構327は、順流FWの開始時にのみ、圧力の上昇勾配を大きくする。この結果、順流FWが開始されるときに、素子ベッド2内の圧力が高められ、気泡が圧縮される。これにより、順流FWの開始位相の誤差が抑制される。
駆動機構327は、上流バルブ325の開度を一時的に大開度状態に駆動する。この大開度状態の期間は、順流FWが提供される期間の一部である。駆動機構327は、上流バルブ325の開度を、大開度のあとに、小開度に制御することによって、所定の期間にわたって順流FWを流し続ける。大開度状態の期間は、例えば、駆動機構327のカムプロファイルによって設定可能である。
時刻t2において、駆動機構327は、上流バルブ325および下流バルブ36を閉じる。これにより、順流FWが終了する。上流バルブ25および下流バルブ36が閉じられると、素子ベッド2内の圧力は徐々に低下する。
やがて、時刻t3において、逆流RVが流れ始める。同時に、逆流RVのための上流バルブも一時的に大開度状態に制御される。この結果、逆流RVにおいても、気泡が圧縮される。これにより、逆流RVの開始位相の誤差が抑制される。
この実施形態は往復流の両方において、流れの開始時に上流バルブを一時的に大開度状態に制御している。これに代えて、順流FWまたは逆流RVにおいてのみ、上流バルブを大開度状態に制御してもよい。
この実施形態でも、熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、熱媒体5の中にある気泡を圧縮するように、往復流を生成する。熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、熱媒体5を加圧する。上流バルブ325は、MCE素子4より上流における熱媒体5の通路を開閉する。しかも、上流バルブ325は、通路面積を少なくとも大面積(Lf2)と、小面積(Lf1)とに調節可能である。大面積は、小面積より面積が大きい。下流バルブ36は、MCE素子4より下流における熱媒体5の通路を開閉する。駆動機構327は、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に上流バルブを一時的に大面積とする。よって、流れの開始直後に素子ベッド2内の圧力の上昇勾配が大きくなる。大面積による上昇勾配は、小面積による上昇勾配よりも大きい。このため、流れの開始直後、すなわち上流バルブおよび下流バルブの両方が開弁状態となった直後において、気泡を圧縮でき、流れの開始位相の誤差が抑制される。
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、比較的長い流れ期間にわたって順流FWおよび/または逆流RVを流すために、所定の圧力Pnを提供するポンプが用いられている。これに代えて、この実施形態では、位相誤差があっても、その影響が抑制されるほどに短い流れ期間を実現できる比較的大能力のポンプが用いられる。
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、比較的長い流れ期間にわたって順流FWおよび/または逆流RVを流すために、所定の圧力Pnを提供するポンプが用いられている。これに代えて、この実施形態では、位相誤差があっても、その影響が抑制されるほどに短い流れ期間を実現できる比較的大能力のポンプが用いられる。
図11に図示されるように、MHP装置1は、吐出流量が大きく、高い吐出圧力を提供できるポンプ422、432を備える。ポンプ422、432は、気泡の圧縮に起因する位相誤差があっても、必要な流量を流しきることができる圧力を提供する。ポンプ422、432は、ポンプ22、32の1.5倍を超える流量と圧力とを提供する。
熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流量を、励磁期間Tmおよび/または消磁期間Tdよりも短い流れ期間Tfの間に流しきる。励磁期間Tmと、消磁期間Tdとは、ほぼ等しい場合がある。励磁期間Tm(消磁期間Td)は、磁場変化の遅れがあるから、1/2Tpより短い。よって、流れ期間Tf(Tr)は、Tf(Tr)<Tm(Td)<1/2Tpを満たすように設定される。
図12において、流れ期間Tfおよび流れ期間Trは、励磁期間Tmおよび消磁期間Tdより短い。しかも、流れ期間Tf、Trの前には、遅れ期間DLが設けられている。さらに、流れ期間Tf、Trの前には、進み期間PPが設けられている。遅れ期間DLは、波形MGに対して波形FRが遅れる期間である。進み期間PPは、波形MGに対して波形FRが進む期間である。遅れ期間DLは、励磁期間Tm(Td)の約14%である。進み期間PPも、励磁期間Tm(Td)の約14%である。よって、この実施形態では、流れ期間Tf(Tr)は、励磁期間Tm(Td)の約70%を上回らない。流れ期間Tf(Tr)は、励磁期間Tm(消磁期間Td)の60%より短くすることができる。さらに、流れ期間Tf(Tr)は、励磁期間Tm(消磁期間Td)の50%より短く設定されてもよい。気泡の圧縮によって流れの開始位相が誤差を有していても、遅れ期間DLおよび/または進み期間PPは、励磁期間Tm(消磁期間Td)に対して流れ期間Tf(Tr)が過度にずれることを防止する。
この実施形態では、往復流の両方に遅れ期間DLと、進み期間PPとを設けている。これに代えて、往復流の片方にのみ、遅れ期間DLと、進み期間PPとを設けてもよい。また、遅れ期間DLおよび進み期間PPの一方のみを設けてもよい。例えば、遅れ期間DLのみを採用するだけで、流れの開始位相の誤差による影響が抑制される。
この実施形態でも、熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、熱媒体5の中にある気泡を圧縮するように、往復流を生成する。しかも、熱輸送装置7は、往復流の少なくとも一方の流れの期間中に、熱媒体5の中にある気泡を圧縮するように、往復流を生成する。この実施形態では、ポンプ422、432は、往復流の少なくとも一方の流量を、励磁期間Tmおよび/または消磁期間Tdよりも短い流れ期間Tf、Trの間に流しきるための高い圧力を素子ベッド2内の熱媒体5に作用させる。しかも、駆動機構27、327は、流れ期間Tf、Trの間に上流バルブ25および下流バルブ36の両方を開く。よって、比較的高い圧力を提供するポンプ422、432は、素子ベッド2内の圧力の上昇勾配を大きくする。圧力Psdに向かう上昇勾配は、圧力Pnに向かう上昇勾配より大きい。また、比較的高い圧力を提供するポンプ422、432は、素子ベッド2内の圧力の絶対値を圧力Pnより高い圧力Psdまで到達させる。これらの結果、素子ベッド2内の気泡は圧縮される。このため、位相誤差が抑制される。しかも、この実施形態では、流れ期間Tf(Tr)が、励磁期間Tm(消磁期間Td)より短いから、位相誤差があっても、その影響が抑制される。この実施形態では、往復流の少なくとも一方の流れの期間中に、熱媒体5の中にある気泡を圧縮するから、その流れの終了位相の誤差が抑制される。
第5実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、ポペット型のバルブ25、26、325によってバルブ機構24、34が提供される。これに代えて、バルブ機構24、34は、多様なバルブによって提供することができる。この実施形態では、バタフライ型のバルブが用いられる。
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、ポペット型のバルブ25、26、325によってバルブ機構24、34が提供される。これに代えて、バルブ機構24、34は、多様なバルブによって提供することができる。この実施形態では、バタフライ型のバルブが用いられる。
図13に図示されるように、バルブ機構24は、バタフライ型のバルブ525、526を有する。バルブ525、526は、可動弁体の回転角度によって流路を開閉する。バルブ525、526の開閉は、駆動機構27によって操作される。駆動機構27は、カム機構など多様な機械的な連動機構によって提供することができる。同様に、バルブ機構34も、バタフライ型のバルブによって提供することができる。
第6実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、ロータリ式のシャッタ型のバルブが用いられる。
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、ロータリ式のシャッタ型のバルブが用いられる。
図14に図示されるように、バルブ機構24は、シャッタ型のバルブ625、626を有する。バルブ625、626は、可動弁体として機能する回転板627を有する。バルブ625、626は、回転板627に形成された可動ポートが固定ポートと連通することによって開弁し、回転板627が固定ポートを閉鎖することによって閉弁する。バルブ625、626の開閉は、駆動機構としての回転板627によって操作される。回転板627は、例えば、動力源15によって駆動される。同様に、バルブ機構34も、シャッタ型のバルブによって提供することができる。
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、熱輸送装置7は、順流FWと逆流RVとの両方、すなわち往復流の両方の流れにおいて気泡を圧縮する。これに代えて、順流FWにおいてのみ、または逆流RVにおいてのみ、すなわち往復流の一方の流れのみにおいて気泡を圧縮してもよい。
上記実施形態では、バルブ機構24、34は、機械的な駆動機構27、を備えている。磁気熱サイクル装置の運転方法は、主として、駆動機構27、327、627によって実現されている。これに代えて、バルブ機構24、34は、電磁的な駆動機構と、電気的な制御装置とを備えていてもよい。電磁的な駆動機構と電気的な制御装置とは、例えば、多様な制御を可能とする。この場合、運転方法は、主として制御装置によって実現される。
上記実施形態では、MHP装置1は、磁場変調装置6の位相と、熱輸送装置7との間の位相差を調節する位相調節器を備えない。これに代えて、MHP装置1は、位相調節器を備えていてもよい。なお、この開示は、位相誤差を抑制するから、位相調節器を用いなくても、望ましい位相を実現することができる。
上記実施形態では、熱輸送装置7は、(1)往復流の少なくとも一方の流れの開始前、(2)往復流の少なくとも一方の流れの開始直後、(3)往復流の少なくとも一方の流れの期間中、の少なくともいずれかひとつにおいて、気泡を圧縮する。これに代えて、(1)、(2)および(3)において、気泡を圧縮してもよい。例えば、第4実施形態において、第1実施形態のように上流バルブだけを開いてもよい。この開示は、(1)および(2)の組合わせ、(1)および(3)の組合わせなど多様な組合せを包含している。なお、(1)は、往復流の少なくとも一方の流れが開始されるまでの期間と解釈されてもよい。(2)は、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後から、その流れ期間の1/2までと解釈されてもよい。(2)は、往復流の少なくとも一方の流れの開始直後から、その流れ期間の1/3、または1/4までと解釈されてもよい。「直後」の語は、必要な熱輸送に悪影響を与えない程度の短時間と解釈されてもよい。(3)は、往復流の少なくとも一方の流れが終了するまでの期間と解釈されてもよい。
1 磁気熱量効果型ヒートポンプ装置(MHP装置)、
2 素子ベッド、 3 容器、 3a 作業室、
4 磁気熱量効果素子(MCE素子)、 5 熱輸送媒体、
6 磁場変調装置、 6a 磁性部材、 7 熱輸送装置、
8 空調装置(HVAC)、 11 高温端、 12 低温端、
15 動力源、 16 制御装置、 17 ハウジング、
21 低温系統、 31 高温系統、 22、32 ポンプ、
23、33 リザーバ、 24、34 バルブ機構、
25、35 上流バルブ、26、36 下流バルブ、
216 制御装置、 222、232 ポンプ、
325 上流バルブ、 327 駆動機構、
422、432 ポンプ、
525 上流バルブ、 526 下流バルブ、
625 上流バルブ、626 下流バルブ、
FW 順流、 RV 逆流、
LD 長さ方向、 TD 厚さ方向。
2 素子ベッド、 3 容器、 3a 作業室、
4 磁気熱量効果素子(MCE素子)、 5 熱輸送媒体、
6 磁場変調装置、 6a 磁性部材、 7 熱輸送装置、
8 空調装置(HVAC)、 11 高温端、 12 低温端、
15 動力源、 16 制御装置、 17 ハウジング、
21 低温系統、 31 高温系統、 22、32 ポンプ、
23、33 リザーバ、 24、34 バルブ機構、
25、35 上流バルブ、26、36 下流バルブ、
216 制御装置、 222、232 ポンプ、
325 上流バルブ、 327 駆動機構、
422、432 ポンプ、
525 上流バルブ、 526 下流バルブ、
625 上流バルブ、626 下流バルブ、
FW 順流、 RV 逆流、
LD 長さ方向、 TD 厚さ方向。
Claims (12)
- 磁気熱量効果を発揮する磁気熱量効果素子(4)と、
前記磁気熱量効果素子に印加される磁場を変調する磁場変調装置(6)と、
往復流の少なくとも一方の流れの開始前に、前記往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、および/または前記往復流の少なくとも一方の流れの期間中に、前記熱輸送媒体の中にある気泡を圧縮するように、前記磁気熱量効果素子と熱交換する熱輸送媒体の前記往復流を生成する熱輸送装置(7)とを備える磁気熱サイクル装置。 - 前記熱輸送装置は、前記気泡が圧縮されるように、前記磁気熱量効果素子が収容された素子ベッド内における前記熱輸送媒体の圧力の上昇勾配、または前記熱輸送媒体の圧力の値を変化させる請求項1に記載の磁気熱サイクル装置。
- 前記熱輸送装置は、
前記磁気熱量効果素子より上流における前記熱輸送媒体の通路を開閉する上流バルブ(25、35、325、525、625)と、
前記磁気熱量効果素子より下流における前記熱輸送媒体の通路を開閉する下流バルブ(26、36、526、626)と、
前記下流バルブが開く前に前記上流バルブを開く駆動機構(27、327、627)とを備える請求項1または請求項2に記載の磁気熱サイクル装置。 - 前記駆動機構は、
前記下流バルブが開く前であって前記下流バルブが閉じている状態において、前記上流バルブを開く請求項3に記載の磁気熱サイクル装置。 - 前記駆動機構は、
前記下流バルブが閉じた後に前記上流バルブを閉じる請求項3または請求項4に記載の磁気熱サイクル装置。 - 前記熱輸送装置は、
前記往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に前記気泡が圧縮されるように、前記熱輸送媒体を加圧する請求項1または請求項2に記載の磁気熱サイクル装置。 - 前記熱輸送装置は、
前記往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に吐出流量が一時的に多くなるポンプ(222、232)を備える請求項6に記載の磁気熱サイクル装置。 - 前記熱輸送装置は、
前記磁気熱量効果素子より上流における前記熱輸送媒体の通路を開閉し、かつ通路面積を少なくとも大面積(Lf2)と小面積(Lf1)とに調節可能な上流バルブ(325)と、
前記磁気熱量効果素子より下流における前記熱輸送媒体の通路を開閉する下流バルブ(26、36、526、626)と、
前記往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に前記上流バルブを前記大面積とする駆動機構(327)とを備える請求項6に記載の磁気熱サイクル装置。 - 前記磁場変調装置は、励磁期間と消磁期間とを周期的に繰り返すように前記磁場を変調しており、
前記熱輸送装置は、前記往復流の少なくとも一方の流量を、前記励磁期間および/または前記消磁期間よりも短い流れ期間の間に流す請求項1または請求項2に記載の磁気熱サイクル装置。 - 前記熱輸送装置は、
前記磁気熱量効果素子より上流における前記熱輸送媒体の通路を開閉する上流バルブ(25、35、325、525、625)と、
前記磁気熱量効果素子より下流における前記熱輸送媒体の通路を開閉する下流バルブ(26、36、526、626)と、
前記往復流の少なくとも一方の流量を、前記励磁期間および/または前記消磁期間よりも短い前記流れ期間の間に流すための圧力を素子ベッド内の前記熱輸送媒体に作用させるポンプ(422、432)と、
前記流れ期間の間に前記上流バルブおよび前記下流バルブの両方を開く駆動機構とを備える請求項9に記載の磁気熱サイクル装置。 - 磁気熱量効果を発揮する磁気熱量効果素子(4)に印加される磁場を変調すること、
前記磁気熱量効果素子と熱交換する熱輸送媒体の往復流を生成すること、および、
前記往復流の少なくとも一方の流れの開始前に、前記往復流の少なくとも一方の流れの開始直後に、または前記往復流の少なくとも一方の流れの期間中に、前記熱輸送媒体の中にある気泡を圧縮することを備える磁気熱サイクル装置の運転方法。 - 前記往復流を生成する段階は、
前記磁気熱量効果素子より下流の下流バルブ(26、36、526、626)が閉じている状態において、前記磁気熱量効果素子より上流の上流バルブ(25、35、325、525、625)を開くことと、
前記上流バルブを開いた後であって、かつ遅れ期間(Rt)の後に、前記下流バルブを開くこととを備える請求項11に記載の磁気熱サイクル装置の運転方法。
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