JP2017172027A - Al含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

Al含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コーティングまたはめっき等の表面処理によらず、さらにAlを過剰に含有させなくても耐硫化腐食性を具備し、線膨張係数が小さく、絶縁膜および化合物系薄膜の製膜性が良好なAl含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提供する。【解決手段】母材の化学組成が、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.02〜1.5%、Mn:0.03〜2.0%、Cr:13.0〜22.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.20%以上1.4%未満、Ti:0.03〜0.5%、N:0.03%以下、Mg:0.0005〜0.05%、残部:Feおよび不可避的不純物であり、表面に膜厚が30nm以下の皮膜を有し、前記皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く各元素の含有量が、原子%で、[Al>5]、[15<Si+Ti<33]、[Fe<50]を満足する、Al含有フェライト系ステンレス鋼。【選択図】 なし

Description

本発明は、Al含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法に係り、特に耐硫化腐食性に優れ、かつ、線膨張係数の小さいAl含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法に関する。
近年、太陽光発電は、化石燃料に替わる主要なエネルギーの一つに発展しつつあり、太陽電池の技術開発が加速している。従来、太陽電池基板には、絶縁体で線膨張係数(定義は、熱膨張係数と同じ。)の小さいセラミックスまたはガラスが広く使用されてきた。
しかしながら、ガラスは脆くて重いため、ガラス表面に光吸収層を形成した太陽電池基板を大量生産することは容易でない。そこで、耐熱性に優れるステンレス鋼を基板用材料に適用することが検討されてきた。
例えば、特許文献1および2には、平滑なステンレス鋼板の表面にアルミナ、酸化シリコンまたは窒化シリコン膜をコーティングした絶縁性材料が開示されている。鋼板の素材には、汎用のフェライト系ステンレス鋼SUS430(17Cr鋼)が使用されている。
また、特許文献3には、成膜性が良好なステンレス表面として、表面粗さパラメータのRzおよびRskの両者を規定した材料が開示されている。素材には、Cr:18.2%、Cu:0.48%およびNb:0.41%を含有するフェライト系ステンレス鋼ならびにCr:18.4%およびNi:8.2%を含有する汎用のオーステナイト系ステンレス鋼が使用されている。
ここで、太陽電池の中でも、CIS系薄膜等の化合物系太陽電池は、低コストと高効率とを両立した太陽電池として、将来の普及が期待されている。化合物系薄膜太陽電池は、例えば、基板上に絶縁層を形成し、絶縁層上にMo層からなる第一の電極層を製膜し、その上に光吸収層としてカルコパイライト型化合物層を皮膜し、さらに第2の電極層を製膜したものである。なお、カルコパイライト型化合物とは、Cu−In−Ga−Se−S系(以下CIS系)に代表される5元系合金である。
例えば、特許文献4には、厚みを20〜200μmとしたステンレス箔の表面に絶縁被膜を形成しさらにその上にMo層からなる裏面電極を形成した後、被膜形成熱処理を施して裏面電極上にCu(In1−xGa)Seからなる光吸収層を形成する太陽電池基板材の製造方法が開示されている。なお、ステンレス箔の素材は、SUS430、SUS444(18Cr−2Mo)、SUS447J1(30Cr−2Mo)が用いられている。
また、特許文献5および6には、Cu被覆層を有するCu被覆鋼板において、Cu被覆層上にMo電極およびCu(In1−xGa)Se型化合物層を形成したCIS太陽電池用電極基板が開示されている。ここで、Cu被覆鋼板の素材として、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜1.2%、P:0.001〜0.04%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜0.6%、Cr:11.5〜32.0%、Mo:0〜2.5%、Cu:0〜1.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜0.2%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%、V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を使用することが開示されている。但し、実施例で使用されるフェライト系ステンレス鋼はSUS430に限定されている。
さらに、特許文献7には、耐熱性の良い絶縁皮膜を形成したステンレス鋼材およびその製造方法について開示されている。基材となるステンレス鋼は、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜2.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜2.0%、Cu:0〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Mo:0〜3.0%、Al:1.0〜6.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%、V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、Al酸化物層を介して、厚さ1.0μm以上のNiOとNiFe22との混合層が形成されていることを特徴としている。
ここで、NiO等の混合層およびAl酸化物層は、電気めっきによりNiめっき層を形成した後、大気中の熱処理によりNiめっき層と基材との界面にAl酸化物層を形成させかつNiOとNiFe22との混合層を生成させることにより形成される。
特許文献8および9には、化合物系薄膜太陽電池の製膜工程において、光吸収層のプリカーサーであるCu、In、Gaを基板にスパッタリング製膜後、CIS系化合物薄膜に転化するために、硫化水素(HS)の腐食性が高いガス雰囲気に曝される熱処理工程(硫化工程)が開示されている。特許文献8では、腐食性が高いガス雰囲気に曝される金属基板の裏面に、例えば、シリカをスパッタ法で製膜して耐腐食層を形成する方法が用いられている。
また、コーティング等の表面処理によらない方法として、特許文献8および9には、Alの含有量が高いフェライト系ステンレス基板を適用することにより、金属基板の裏面に、アルミナ層を形成する方法が開示されている。具体的には、特許文献9では、JFE18−3USR:3.4%のAlを含有したフェライト系ステンレス基板の適用が検討されている。
特許文献10には、耐食性に優れた太陽電池部材用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法について開示されている。部材となるステンレス鋼板は14〜18%のCrを含有し、鋼板表層部の酸化皮膜中のCr濃度と前記酸化皮膜直下のCr濃度が(酸化皮膜中のCr濃度(質量%))+3×(酸化皮膜直下のCr濃度(質量%))>62(質量%)を満足することを特徴としている。ここで、前記ステンレス鋼板は、露点−70℃以上−40℃以下に調整した不活性ガス雰囲気中において580℃以上720℃以下の温度域に加熱し、該温度域における滞留時間を5秒以上とする熱処理を施すことで得られる。
特開平6−299347号公報 特開平6−306611号公報 特開2011−204723号公報 特開2012−169479号公報 特開2012−59854号公報 特開2012−59855号公報 特開2012−214886号公報 特開2014−203936号公報 特開2014−127712号公報 特開2014−118620号公報
将来、主要な太陽光発電としてCIS系化合物系薄膜太陽電池の普及を拡大していくには、生産性を向上させることが重要な課題である。そのためには、基板用ステンレス鋼板の耐硫化腐食性を高めることによって、コーティング等の煩雑な表面処理を省略可能にするとともに、線膨張係数を低下させることでの製膜性を向上させる必要がある。
この点に関しては、特許文献1〜8に開示された技術は、コーティングまたはメッキ等の表面処理が必要となるという問題がある。また、特許文献8および9には、コーティングを必要としない技術が開示されてはいるが、高い濃度のAlを含有する必要があるため線膨張係数が高く、課題解決には至らない。
特許文献10に開示された技術においては、14〜18Cr鋼について光吸収層(CIGS層)の製膜時に生じる耐食性劣化を抑制するものの、耐硫化腐食性については一切考慮がなされていない。以上、耐硫化腐食性と製膜性の2つの課題を両立する従来技術はない。
本発明は、コーティングまたはめっき等の表面処理によらず、さらにAlを過剰に含有させなくても耐硫化腐食性を具備し、線膨張係数が小さく、絶縁膜および化合物系薄膜の製膜性が良好なAl含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、Al含有フェライト系ステンレス鋼において、表面皮膜と耐硫化腐食性、および線膨張係数とAl含有量との関係について、鋭意実験および検討を重ねた結果、以下の知見を得るに至った。
(a)SUS430LXおよびSUS430J1Lに代表される高純度フェライト系ステンレス鋼は、400〜700℃の高温で0.5〜2h程度、数%の硫化水素ガスを含む雰囲気中に曝されると、鋼素地の脱落に至るまで硫化腐食が進行する。このような硫化腐食は、ステンレス鋼の構成元素であるFeおよびCrが雰囲気ガス中のSと反応してFeSおよびFeCrを形成して鋼を浸食することにより進行する。
(b)3%以上のAlを含有するフェライト系ステンレス鋼の場合、高温環境下においてAlの連続皮膜が形成されるため、上述した硫化腐食は改善される。一方、Al含有量が3%未満のフェライト系ステンレス鋼の場合、耐硫化腐食性は表面の皮膜組成の影響を受ける。通常、酸洗または研磨後の表面には、数nm程度の薄いFeとCrとの不動態皮膜が形成されている。硫化腐食は、FeとCrとを主体とする不動態皮膜が表面に形成されている場合に生じ易い。
表面皮膜中のFeおよびCr濃度の低減には、Alに加えてSi+Ti濃度を高めることが効果的であり、低いAl含有量でも硫化腐食を抑止できる。ただし、Siの過剰な添加はかえって耐硫化腐食性を低下させる。これは、SiOがAlの連続皮膜の保護性を損なう作用があるためと考られる。
(c)前記した表面皮膜中のFeおよびCr濃度の低減には、ステンレス鋼中のAlおよびSi+Tiの含有量を高めるのではなく、微量元素としてのMgの添加が効果的である。
Mgは、表面活性元素であり、微量添加でも表面に濃化し、さらにMgは酸化物を形成し、FeまたはCrの酸化を抑制してAlを主体とした皮膜形成に対して有効に作用する。この効果によって耐硫化腐食性を維持したまま、Al含有量を低減することが可能となり、ステンレス鋼の線膨張係数の低減が可能となる。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、下記のAl含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法を要旨とする。
(1)母材の化学組成が、質量%で、
C:0.03%以下、
Si:0.02〜1.5%、
Mn:0.03〜2.0%、
Cr:13.0〜22.0%、
P:0.05%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.20%以上1.4%未満、
Ti:0.03〜0.5%、
N:0.03%以下、
Mg:0.0005〜0.05%、
残部:Feおよび不可避的不純物であり、
表面に膜厚が30nm以下の皮膜を有し、
前記皮膜中に含まれる各元素の含有量が、下記(i)〜(iii)式を満足する、Al含有フェライト系ステンレス鋼。
Al>5 ・・・(i)
15<Si+Ti<33 ・・・(ii)
Fe<50 ・・・(iii)
但し、上記式中の各記号は、皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占める各元素の含有量(原子%)を表す。
(2)前記母材の化学組成が、さらに、質量%で、Ga:0.1%以下を含有し、MgおよびGaの合計含有量が0.001%を超えて0.15%以下である、上記(1)に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
(3)前記母材の20〜700℃における線膨張係数が12.4×10−6(1/℃)未満である、上記(1)または(2)に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
(4)前記皮膜中に含まれるSの含有量が、下記(iv)式を満足する、上記(1)から(3)までのいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
S<3.0 ・・・(iv)
但し、上記式中のSは、皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占めるSの含有量(原子%)を表す。
(5)前記母材の化学組成が、さらに、質量%で、
Ni:1.0%以下、
Cu:1.0%以下、
Mo:2.0%以下、
Nb:0.5%以下、
V:0.5%以下、
Sn:0.2%以下、
Sb:0.2%以下、
W:1.0%以下、
Co:0.5%以下、
B:0.005%以下、
Ca:0.005%以下、
Zr:0.5%以下、
Hf:0.1%以下、
REM:0.1%以下、および
Ta:0.1%以下、
から選択される1種以上を含有する、上記(1)から(4)までのいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
(6)太陽電池基板として用いられる、上記(1)から(5)までのいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
(7)上記(1)から(6)までのいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼を製造する方法であって、
上記(1)、(2)または(5)に記載の化学組成を有する鋼を、700〜1100℃の温度域で熱処理した後、硝フッ酸または硫酸中で酸洗する、Al含有フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
(8)前記酸洗後にさらに、3〜20質量%の硝酸水溶液中で電解酸洗する、上記(7)に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
本発明によれば、コーティングまたはめっき等の表面処理によらず、さらにAlを過剰に含有させなくても耐硫化腐食性を具備し、線膨張係数が小さく、絶縁膜および化合物系薄膜の製膜性が良好なAl含有フェライト系ステンレス鋼が得られる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.母材の化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.03%以下
Cは、フェライト相に固溶し、またはCr炭化物を形成して耐酸化性を低下させ、本発明に係る表面皮膜の形成を阻害する。このため、C含有量は低いほどよく、0.03%以下とする。C含有量は0.02%以下であるのが好ましい。ただし、過度の低減は精錬コストの上昇に繋がるため、C含有量は0.001%以上とすることが好ましく、0.002%以上とすることがより好ましい。
Si:0.02〜1.5%
Siは、本発明の目的とする耐硫化腐食性を確保する上で重要な元素である。Siは酸化皮膜中に固溶するとともに、酸化皮膜/鋼界面にも濃化し、硫化水素(HS)の鋼中への浸入を抑制して耐硫化腐食性を向上させる。したがって、Si含有量は0.02%以上とする。しかしながら、Siを過剰に含有させると、SiOがAlの連続皮膜の保護性を損ない、耐硫化腐食性を著しく低下させる。さらに、鋼の靭性および加工性の低下を招く。そのため、Si含有量は1.5%以下とする。酸洗において皮膜中のSi濃度を増加させるためには、Si含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのがより好ましい。また、耐硫化腐食性と基本特性との点から、Si含有量は1.2%以下であるのが好ましい。
Mn:0.03〜2.0%
Mnは、Feの表面酸化を抑制して、Al、SiおよびTiの組成が本発明の規定範囲内となる表面皮膜の形成を促す作用を持つ。したがって、Mn含有量は0.03%以上とする。しかしながら、Mnを過剰に含有させると、耐酸化性を低下させ、耐硫化腐食性の劣化に繋がるため、Mn含有量は2.0%以下とする。Mn含有量は0.1%以上であるのが好ましく、0.2%以上であるのがより好ましい。耐酸化性と耐硫化腐食性との点から、Mn含有量は1.0%以下であるのが好ましい。
Cr:13.0〜22.0%
Crは、耐食性に加えて、本発明に係る表面皮膜を形成して耐硫化腐食性を確保する上でも基本となる構成元素である。Cr含有量が13.0%未満では目標とする耐硫化腐食性が十分に確保されず、さらに線膨張係数の増加を招く。したがって、Cr含有量は13.0%以上とする。しかしながら、Crを過剰に含有させると、表面皮膜中のCr濃度を高めて、高温硫化水素雰囲気に曝された際、耐硫化腐食性を劣化させることに加え、合金コストの上昇を招く。そのため、耐硫化腐食性と合金コストとの点から、Cr含有量は22.0%以下とする。Cr含有量は15.0%以上であるのが好ましく、16.0%以上であるのがより好ましい。また、Cr含有量は20.0%以下であるのが好ましく、19.0%以下であるのがより好ましい。
P:0.05%以下
Pは、製造性および溶接性を劣化させる元素であり、その含有量は低いほどよい。そのため、P含有量は0.05%以下とする。P含有量は0.04%以下であるのが好ましく、0.03%以下であるのがより好ましい。ただし、過度の低減は精錬コストの上昇に繋がるため、P含有量は0.003%以上とすることが好ましく、0.005%以上とすることがより好ましく、0.01%以上とすることがさらに好ましい。
S:0.01%以下
Sは、鋼中に含まれる不可避的不純物元素であり、耐硫化腐食性を劣化させる。特に、表面皮膜中に存在するS、または鋼中に存在するMn系介在物もしくは固溶Sは、高温硫化水素雰囲気に曝された際、表面皮膜の破壊起点として作用する。したがって、S含有量は低いほどよく、0.01%以下とする。S含有量は0.002%以下であるのが好ましく、0.001%以下であるのがより好ましい。ただし、過度の低減は原料および精錬のコストの上昇に繋がるため、0.0001%以上とすることが好ましく、0.0002%以上とすることがより好ましい。
Al:0.20%以上1.4%未満
Alは、脱酸作用を有する元素であるのに加えて、表面皮膜改質により、本発明の目標とする耐硫化腐食性を達成するために必須の元素である。これまで、Al含有量が3%未満では十分な耐硫化腐食性が得られないとされていた。しかし、本発明においては、所定の組成を有する表面皮膜を形成するため、Al含有量が0.20%以上であれば目標とする耐硫化腐食性は十分に発現される。したがって、Al含有量は0.20%以上とする。一方、Al含有量が1.4%以上であると、線膨張係数が増加し、絶縁膜の製膜性が劣化するだけでなく、製造性の悪化および合金コストの上昇を招く。したがって、Al含有量は1.4%未満とする。Al含有量は0.80%以上とするのが好ましく、1.3%以下とするのが好ましい。
Ti:0.03〜0.5%
Tiは、CおよびNを固定する安定化元素の作用による鋼の高純度化を通じて耐酸化性を向上させることに加えて、皮膜改質により耐硫化腐食性を向上させる作用を有する。そのため、Ti含有量は0.03%以上とする。しかしながら、Tiを過剰に含有させると、合金コストの上昇および再結晶温度の上昇に伴う製造性の低下に繋がる。そのため、Ti含有量は0.5%以下とする。Ti含有量は0.05%以上とするのが好ましく、0.1%以上とするのがより好ましい。また、Ti含有量は0.35%以下とするのが好ましく、0.25%以下とするのがより好ましい
N:0.03%以下
Nは、Cと同様に耐硫化腐食性を劣化させる元素である。そのため、N含有量は低いほどよく、0.03%以下とする。N含有量は0.02%以下であるのが好ましい。ただし、過度の低減は精錬コストの上昇に繋がるため、N含有量は0.002%以上とすることが好ましく、0.005%以上とすることがより好ましい。
Mg:0.0005〜0.05%
Mgは、前述のように、表面に濃縮してFeおよびCrの酸化を抑制し、Alを主体としてSiおよびTiの含有量が高い皮膜形成を促進する作用を有する元素である。そのため、Mg含有量は0.0005%以上とする。しかしながら、Mgを過剰に含有させると、鋼の精錬コストを上昇させ製造性を悪化させるだけでなく、かえって耐硫化腐食性の劣化を招く。したがって、Mg含有量は0.05%以下とする。Mg含有量は0.001%以上とするのが好ましく、0.03%以下とするのが好ましい。
本発明のAl含有フェライト系ステンレス鋼は、上記のCからMgまでの元素を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる化学組成を有する。
ここで「不可避不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼は、上記の元素に加えて必要に応じて、下記に示す量のGa、Ni、Cu、Mo、Nb、V、Sn、Sb、W、Co、B、Ca、Zr、Hf、REMおよびTaから選択される1種以上を含有させても良い。
Ga:0.1%以下
Gaは、Mgと同様に、表面に濃縮してFeおよびCrの酸化を抑制し、Alを主体としてSiおよびTi量の高い皮膜形成を促進する作用を有する元素である。そのため、必要に応じてGaを含有させてもよい。しかしながら、Gaを過剰に含有させると、鋼の精錬コストを上昇させ製造性を悪化させるだけでなく、かえって耐硫化腐食性の劣化を招く。したがって、Ga含有量は0.1%以下とする。Ga含有量は0.02%以下であるのが好ましい。上記の効果を得たい場合は、Ga含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.001%以上とするのがより好ましい。なお、Gaを含有させる場合、MgおよびGaの合計含有量は、0.001%を超えて0.15%以下とすることが好ましい。MgおよびGaの合計含有量は、0.002%を超える量とすることがより好ましい。
Ni:1.0%以下
Cu:1.0%以下
Mo:2.0%以下
Nb:0.5%以下
V:0.5%以下
Sn:0.2%以下
Sb:0.2%以下
W:1.0%以下
Co:0.5%以下
上記の元素は、ステンレス鋼の高温強度および耐食性を高めるのに有効な元素である。そのため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、合金コストの上昇および製造性の悪化に繋がる。そのため、Ni、CuおよびWの含有量は1.0%以下とする。また、Moは線膨張係数の低下による高温変形の抑制にも有効な元素であるため、Mo含有量は2.0%以下とする。さらに、Nb、VおよびCoの含有量は0.5%以下とする。そして、SnおよびSbの含有量は、製造性の点から0.2%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合には、上記元素の少なくともいずれかを0.05%以上含有させることが好ましい。
B:0.005%以下
Ca:0.005%以下
BおよびCaは、熱間加工性および2次加工性を向上させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると、製造性の悪化に繋がるため、BおよびCaの含有量はそれぞれ0.005%以下とする。なお、上記の効果を得たい場合には、上記元素の少なくともいずれかを0.0001%以上含有させることが好ましい。
Zr:0.5%以下
Hf:0.1%以下
REM:0.1%以下
Ta:0.1%以下
上記の元素は、熱間加工性および鋼の清浄度を向上するとともに、耐酸化性改善に有効な元素である。そのため、必要に応じて含有させてもよい。ただし、本発明の目標とする耐硫化腐食性は、これら元素の添加効果に頼るものではない。そのため、各元素の上限値を上記のように規定する。なお、上記の効果を得たい場合には、Zr:0.01%以上、Hf:0.001%以上、REM:0.001%以上およびTa:0.001%以上の少なくともいずれかを満足させることが好ましい。
ここで、REMとは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、REMの含有量は、これらの元素の合計含有量を指す。
以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲での不純物元素の混入は許容される。一般的な不純物元素である前述のP、Sを始め、Zn、Bi、Pb、Se、Hf等は可能な限り低減することが好ましい。一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Zn:500ppm以下、Bi:100ppm以下、Pb:100ppm以下、Se:100ppm以下、Hf:100ppm以下の1種以上が含有されていてもよい。
2.表面皮膜
本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼は、表面に膜厚が30nm以下であり、所定の組成を有する皮膜を備える。皮膜の膜厚を、30nmを超える厚さにするためには、特殊な焼鈍および/または酸洗処理を施す必要があり、生産性が悪化するためである。皮膜の膜厚は20nm以下とすることが好ましく、15nm以下とすることがより好ましい。一方、膜厚の下限については特に制限は設けないが、硫化水素中の耐硫化腐食性に効果を発揮するためには3nm以上とすることが好ましい。
また、HS中の耐硫化腐食性を向上させるため、皮膜中に含まれるAlおよびSi+Tiの含有量を高める必要がある。具体的には、皮膜中に含まれる各元素の含有量が、下記(i)〜(iii)式を満足する。
Al>5 ・・・(i)
15<Si+Ti<33 ・・・(ii)
Fe<50 ・・・(iii)
但し、上記式中の各記号は、皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占める各元素の含有量(原子%)を表す。
Alは表面皮膜の内層から地鉄界面にかけて濃化し、腐食性ガスSの鋼への侵入を顕著に抑制する。これらの効果は、表面皮膜中のAl含有量を、5原子%を超える量とすることで顕著に発現する。Al含有量は、8原子%以上とするのが好ましく、10原子%以上とするのがより好ましい。Al含有量の上限については特に制限は設けないが、焼鈍・酸洗の効率を考慮して30原子%以下とするのが好ましい。
また、SiおよびTiは表面皮膜中および地鉄界面に濃縮して、耐硫化腐食性を高める効果を有する。これら効果を得るには、表面皮膜中のSiおよびTiの合計含有量は、15原子%を超える量とする。SiおよびTiの合計含有量は、20原子%以上とするのが好ましい。一方、SiおよびTiが過剰となると、Alを主体とする皮膜の形成を阻害するため、SiおよびTiの合計含有量は33原子%未満とする。SiおよびTiの合計含有量は30原子%未満とするのが好ましい。なお、SiおよびTiの両元素を複合して含有させることが好ましい。
皮膜中に含まれるAlおよびSi+Tiの含有量を高めるためには、相対的にFe含有量を低下させる必要がある。そのため、表面皮膜中のFe含有量を、50原子%未満とする。
さらに、皮膜中に含まれるSの含有量は、下記(iv)式を満足することが好ましい。
S<3.0 ・・・(iv)
但し、上記式中のSは、皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占めるSの含有量(原子%)を表す。
高温での硫化水素による腐食起点を抑制するため、皮膜中に含まれるS含有量を3.0原子%未満とすることが好ましい。S含有量は、2.0原子%未満とすることがより好ましく、1.0原子%未満とすることがさらに好ましい。S含有量の下限については特に制限は設けないが、低ければ低い方が好ましく、非検出=ゼロとなることが好ましい。
皮膜組成の分析方法については定量分析が可能であれば特に制限はない。例えば、皮膜中のAl、Si、Ti、Cr、Fe、Sの含有量はオージェ電子分光法(AES)によって測定することができ、Sの含有量はX線光電子分光法(XPS)により測定することができる。
3.線膨張係数
上述のように、CIS系化合物系薄膜太陽電池の基板として用いられるステンレス鋼には、高い製膜性が要求される。製膜性を向上させるためには、鋼の線膨張係数を低くすることが好ましい。具体的には、CIS系太陽電池の製膜プロセスを想定した、20〜700℃における線膨張係数を、12.4×10−6(1/℃)未満とすることが好ましい。
4.製造方法
本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼の製造方法については、特に制限は設けないが、例えば、上記の化学組成を有する鋼素材に対して、以下に示す処理を施すことによって製造することができる。鋼素材として鋼板を用いる場合、例えば、薄板、箔、厚中板を用いることができる。ここで、薄板は0.2mm以上、箔は0.02〜0.2mm、厚中板は6mm以上の板厚を有するものとする。鋼の表面粗度は特に規定する必要はなく、例えば、JIS G 0203(2009)に規定される、No.2B、No.2D、No.4等の仕上げが施されたものを用いればよい。
また、鋼素材となる鋼板の種類についても特に制限は設けないが、熱間圧延鋼帯に対して必要に応じて焼鈍し、デスケーリングの後、冷間圧延した冷延板を用いることができる。該冷延板の表面に本発明で規定する皮膜を形成するためには、冷間圧延後に700〜1100℃の温度域で仕上げ焼鈍する熱処理を施した後、硝フッ酸または硫酸中で酸洗し、必要に応じて、さらにその後に硝酸水溶液中で電解酸洗することが好ましい。
仕上げ焼鈍における加熱温度が700℃未満では、鋼の軟質化と再結晶とが不十分となり、所定の材料特性が得られない場合がある。そのため、加熱温度は700℃以上とすることが好ましい。雰囲気ガスの露点を下げるためには、加熱温度は800℃以上とすることがより好ましく、850℃以上とすることがさらに好ましい。一方、加熱温度が1100℃を超えると、結晶粒が粗大になり、鋼の靭性および延性が劣化するおそれがある。そのため、加熱温度は1100℃以下とすることが好ましく、1000℃以下とすることがより好ましい。
また、熱処理後の酸洗においては、0.1〜5%フッ酸および5〜15%硝酸からなるフッ硝酸または5〜15%硫酸のいずれかを用いることが好ましく、40〜60℃の温度で酸洗を行うことが好ましい。酸洗によって、皮膜中のFe含有量を減少させ、AlおよびSi+Tiの含有量を高めことができる。
また、皮膜中のS含有量を低減するために、硝酸水溶液中で電解酸洗を行うことが好ましい。硝酸濃度は、表面に付着したSおよびFeを電解で除去するために、3〜20重量%の範囲とするのが好ましい。硝酸濃度が3%未満の場合、電解酸洗の効果が得られ難い。一方、硝酸濃度が20%を超えると、表面皮膜へのCrの濃化が進行し、AlおよびSi+Ti含有量の低下により耐硫化腐食性が劣化することに繋がる。硝酸電解は、工業的な電解酸洗装置で実施することが好ましく、例えば、前処理槽および複数の電解酸洗槽を備えた設備において水洗いおよび希硫酸電解酸洗などの洗浄工程を施した後、硝酸電解を実施しても良い。硝酸電解の電流密度および温度は皮膜組成を害さない限り、特に限定するものではない。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有するフェライト系ステンレス鋼(鋼A〜U)を溶製し、熱間圧延および焼鈍を実施し、冷間圧延を行い板厚0.1〜0.5mmの箔または薄板とした後、各鋼に対して下記の処理を施した(試験No.1〜23)。該箔または薄板は、いずれも再結晶が完了する950℃で焼鈍し、その後、55℃、2.5%HF−5%HNOで酸洗を行った。試験No.2、3、9および10の鋼板については、さらに8%硝酸水溶液中で硝酸電解酸洗を実施した。また、酸洗の効果を調査するため、試験No.3および12の鋼板については、酸洗後に研磨によるデスケールを行った。
Figure 2017172027
得られた鋼板について、AES分析により表面皮膜の組成の測定を行った。AES分析には、走査型FEオージェ電子分光分析装置(アルバック・ファイ社製)を用い、電子銃の加速電圧は10kV、イオン銃(Ar)の加速電圧は3kV、スパッタレートは10nm/min(SiO実測値)とし、板厚方向の膜厚に換算した。
得られたオージェ電子スペクトルから、Fe、Cr、Al、Si、Ti、Sのオージェ
ピーク高さ(微分スペクトルでのピーク間の高さ)を読み取り、相対濃度を算出した。皮膜厚さはOのプロファイルを測定し、Oの強度が半分の値となる半値幅で求めることとした。皮膜厚さおよび組成について、表2に示す。
また、上記の鋼板を用いて、線膨張係数の測定を行った。各鋼板から厚さ2.0mm、幅3.0mm、長さ18mmの試験片を切り出し、熱機械分析(TMA)法により平均線膨張係数を求めた。装置は理学電機(株)製TMA8140型(示差膨張方式)を用いた。測定雰囲気はHe、荷重は5gfとし、標準試料はアルミナを用いた。CIS系太陽電池の製膜プロセスを想定して、20℃から700℃の温度区間を5℃/minで昇温して測定した。
なお、本発明においては、線膨張係数が12.4×10−6(1/℃)未満となった場合に、製膜性が良好であると判断して「○」とし、12.4×10−6(1/℃)以上となった場合に、製膜性が劣ると判断して「×」とした。
続いて、上記の各鋼板を用いて、耐硫化腐食性の評価を行った。具体的には、各鋼板に対して、700℃、2%HS−bal.Nの雰囲気中に1h保持する熱処理を実施した。そして、目視判定にて、剥離がないものを「◎」、軽微な剥離が生じたものの、腐食増量が2mg/cm以下であったものを「○」、著しく剥離が生じ、腐食増量が2mg/cmを超えたものを「×」とした。本発明においては、上記結果が「◎」または「○」に該当する場合に、耐硫化腐食性が優れると判断することとした。
上記の結果を表2に併せて示す。
Figure 2017172027
試験No.1〜11は、本発明の規定を満足する本発明例に係る鋼である。表2から分かるように、本発明例の鋼は、優れた製膜性および耐硫化腐食性を有することが分かる。なお、試験No.3は研磨による脱スケールを行ったため、皮膜中のFe濃度が高く、相対的にAl、Cr、Si+Ti量が低下することが予想されるが、研磨に次いで硝酸電解を行うことで、Fe濃度が低下し、相対的にAl、Cr、Si+Ti量が増加して評価が「○」となった。
これらに対して、化学組成が本発明の規定から外れる鋼を用いた試験No.12〜23では、製膜性または耐硫化腐食性の一方が劣る結果となった。具体的には、試験No.12では、Al含有量が規定範囲の上限を超えたため、線膨張係数が高くなり、製膜性が劣る結果となった。また、試験No.20では、Cr含有量が規定範囲の下限値未満であったため、硫化腐食性が劣り、さらに線膨張係数が高くなり、製膜性が劣る結果となった。
さらに、試験No.13〜19および21〜23については、種々の化学組成が規定範囲から外れるため、本発明で規定する好適な焼鈍および酸洗を実施しても、皮膜組成が本発明の規定を満足せず、耐硫化腐食性が劣る結果となった。
本発明によれば、コーティングまたはめっき等の表面処理によらず、さらにAlを過剰に含有させなくても耐硫化腐食性を具備し、線膨張係数が小さく、絶縁膜および化合物系薄膜の製膜性が良好なAl含有フェライト系ステンレス鋼が得られる。したがって、本発明に係るAl含有フェライト系ステンレス鋼は、油炊きまたは燃焼環境において硫化水素ガス等の硫化雰囲気に曝される熱処理を含む製膜プロセスを経て製造される化合物系薄膜太陽電池の基板に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 母材の化学組成が、質量%で、
    C:0.03%以下、
    Si:0.02〜1.5%、
    Mn:0.03〜2.0%、
    Cr:13.0〜22.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.01%以下、
    Al:0.20%以上1.4%未満、
    Ti:0.03〜0.5%、
    N:0.03%以下、
    Mg:0.0005〜0.05%、
    残部:Feおよび不可避的不純物であり、
    表面に膜厚が30nm以下の皮膜を有し、
    前記皮膜中に含まれる各元素の含有量が、下記(i)〜(iii)式を満足する、Al含有フェライト系ステンレス鋼。
    Al>5 ・・・(i)
    15<Si+Ti<33 ・・・(ii)
    Fe<50 ・・・(iii)
    但し、上記式中の各記号は、皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占める各元素の含有量(原子%)を表す。
  2. 前記母材の化学組成が、さらに、質量%で、Ga:0.1%以下を含有し、MgおよびGaの合計含有量が0.001%を超えて0.15%以下である、請求項1に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
  3. 前記母材の20〜700℃における線膨張係数が12.4×10−6(1/℃)未満である、請求項1または請求項2に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
  4. 前記皮膜中に含まれるSの含有量が、下記(iv)式を満足する、請求項1から請求項3までのいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
    S<3.0 ・・・(iv)
    但し、上記式中のSは、皮膜中に含まれるO、CおよびNを除く成分に占めるSの含有量(原子%)を表す。
  5. 前記母材の化学組成が、さらに、質量%で、
    Ni:1.0%以下、
    Cu:1.0%以下、
    Mo:2.0%以下、
    Nb:0.5%以下、
    V:0.5%以下、
    Sn:0.2%以下、
    Sb:0.2%以下、
    W:1.0%以下、
    Co:0.5%以下、
    B:0.005%以下、
    Ca:0.005%以下、
    Zr:0.5%以下、
    Hf:0.1%以下、
    REM:0.1%以下、および
    Ta:0.1%以下、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1から請求項4までのいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
  6. 太陽電池基板として用いられる、請求項1から請求項5までのいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれかに記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼を製造する方法であって、
    請求項1、請求項2または請求項5に記載の化学組成を有する鋼を、700〜1100℃の温度域で熱処理した後、硝フッ酸または硫酸中で酸洗する、Al含有フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
  8. 前記酸洗後にさらに、3〜20質量%の硝酸水溶液中で電解酸洗する、請求項7に記載のAl含有フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
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