JP2020066794A - フェライト系ステンレス鋼及びその製造方法、並びに燃料電池用部材 - Google Patents
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Abstract
Description
更に、このような高温運転下の燃料電池においては、多量の水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素に加え、多量の水素や、炭化水素系燃料由来の硫化水素を微量含んだ雰囲気(以下、浸炭性/還元性/硫化性改質ガス環境、という。)の下に曝されることとなる。このような雰囲気中に、例えば鋼材料が曝されると、材料表面の浸炭、硫化による腐食が進行する状況になり、動作環境としては過酷な状況となる。
更に、SOFCシステムやPEFCシステムの場合、燃料電池の運転温度が高温となるため、前記の酸化特性に加え、高温強度のさらなる向上も求められる。
[1]質量%にて、
Cr:12.0〜16.0%、
C:0.020%以下、
Si:0.50〜2.50%、
Mn:1.00%以下、
P:0.050%以下、
S:0.0030%以下、
Al:1.00〜3.00%
N:0.030%以下、
Nb:0.05〜1.00%、
Ni:0.05〜1.00%、
Mo:0.05〜1.00%、
Sn:0.005〜0.200%
B:0.0005〜0.0100%、
Cu:0〜1.00%、
Sb:0〜0.50%、
W:0〜1.00%、
Co:0〜0.50%、
V:0〜0.50%、
Ti:0〜0.50%、
Zr:0〜0.50%、
La:0〜0.100%、
Y:0〜0.100%、
Hf:0〜0.100%、
REM:0〜0.100%
Ga:0〜0.0200%、
Mg:0〜0.0200%、
Ca:0〜0.0100%
且つ下記式(1)を満たし、残部がFe及び不純物からなり、
鋼板表面から深さ30nmまでの領域であって不働態皮膜を含む表層部において、Cr、Al及びSiの各最大濃度Crm、Alm、Nbm(at%)が、下記式(2)及び下記式(3)を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
0.7Nb+Ni+Mo+0.4Ti+0.4Cu+200B≧0.30 ・・・(1)
15.0<Crm(at%)<50.5 ・・・(2)
2.7<Alm+Nbm(at%)<10.0 ・・・(3)
なお、上記式(1)中の各元素記号は、鋼中の当該元素の含有量(質量%)を示し、元素が含まれないときは0を代入する。
[2]質量%にて、B:0.0010%以上であることを特徴とする上記[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[3]質量%にて、結晶粒界のNb濃度が3.0〜10.0%の範囲であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[4]質量%にて、Cu:0.10〜1.00%、Sb:0.01〜0.50%、W:0.10〜1.00%、Co:0.10〜0.50%、V:0.10〜0.50%、Ti:0.01〜0.50%、Zr:0.01〜0.50%、La:0.001〜0.100%、Y:0.001〜0.100%、Hf:0.001〜0.100%、REM:0.001〜0.100%、Ga:0.0002〜0.0200%、Mg:0.0002〜0.0200%及びCa:0.0002〜0.0100%のうち1種又は2種以上を含むことを特徴とする上記[1]〜[3]のうちいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
[5]燃料改質器、熱交換器あるいは燃料電池部材に適用されることを特徴とする上記[1]〜[4]のうちいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
[6]燃焼器、あるいはバーナーの部材に適用されることを特徴とする上記[1]〜[5]のうちいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
[7]上記[1]〜[4]のいずれかに記載する組成を有するステンレス鋼材を冷間圧延し、仕上げ焼鈍した後、♯100以下の研磨材で研磨を施し、次いで、下記の処理(A)又は処理(B)の少なくとも一方を実施することを特徴とする[1]〜[6]のうちいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
処理(A):10〜50質量%のH2SO4を含む90℃以下の硫酸水溶液中への浸漬
処理(B):1質量%以上のHNO3及び0.5質量%以上のHFを含む90℃以下の硝フッ酸水溶液中への浸漬
[8]前記仕上げ焼鈍を800〜1150℃で行うことを特徴とする上記[7]に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
[9]上記[1]〜[5]のうちいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板を用いた燃料電池用部材。
以下に本発明で得られた知見について説明する。
まず、成分の限定理由を以下に説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
上記の知見でも述べたように、本実施形態においては、NbとBが結晶粒界において共偏析することによって高温強度の向上を図ることができる。また、Snも同様に、粒界へ偏析することによって、粒界すべりを抑制し高温強度の向上を図ることができる。これらの観点から、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼において、Nbの結晶粒界における濃度(粒界濃度)は、3.0%以上とすることが好ましい。Snを含有する場合には、Snの粒界濃度は1.0%以上とすることが好ましい。一方、NbとSnの過度な粒界偏析は結晶粒界が破壊起点となって製造性を阻害することに加え、高温強度の低下をもたらす場合もある。そのため、Nbの粒界濃度は10.0%以下であることが好ましく、Snの粒界濃度は5.0%以下であることが好ましい。
まず、酸化皮膜以外の母相の任意箇所から、ノッチ付き試験片(0.8t×4w×20L(mm))を採取する。次に、ノッチ付き試験片を、真空中(真空度:10−6MPa)において液体窒素で冷却したのちに、その場でノッチ部から試験片を破断して破面を露出させる。露出させた破面における結晶粒界についてAES分析を行い、0〜1000eVのエネルギー範囲でオージェ電子スペクトルを測定し、検出される元素を同定(定性分析)する。さらに、得られたピーク強度比を用いて(相対感度係数法)、検出元素を定量(定量分析)する。以上の方法によって、結晶粒界に偏析した元素(Nb、Sn)の濃度を求めることができる。
0.7Nb+Ni+Mo+0.4Ti+0.4Cu+200B≧0.30 ・・・(1)
なお、本実施形態における「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分であり、不可避的に混入する成分も含む。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、Al系酸化皮膜の生成促進を図り耐酸化性を高めるべく、鋼板表層部に、Cr、Al、Nbを予め濃縮させるものとする。具体的には、鋼板表面から深さ30nmまでの領域(不働態皮膜及び不働態皮膜直下を含む領域)である鋼板表層部において、Cr、Al、Nbの濃度(カチオン分率)分布における各最大値(最大濃度)Crm、Alm、Nbmが、下記式(2)及び下記式(3)を満たすものとする。
15.0<Crm(at%)<50.5 ・・・(2)
2.7<Alm+Nbm(at%)<10.0 ・・・(3)
Crmが15.0%以下の場合、当該領域中のFe濃度が上昇してAl系酸化皮膜の生成を阻害するおそれがあるため、Crmは15.0at%超とし、好ましくは、20.0at%以上とする。一方、Crmが50.5%以上の場合、Crの選択酸化によりAl系酸化皮膜の生成が阻害されるおそれがあるため、Crmは50.5at%未満とし、好ましくは、45.0%以下とする。
またNbは、Alとともに濃縮させることで、FeとCrの酸化を抑制し、Al系酸化皮膜の形成に対して有効に作用する。しかし、Alm+Nbmが2.7at%以下の場合、FeとCrの酸化が進行して、Al系酸化皮膜生成を促進する効果が得られないため、Alm+Nbmは2.7at%超とし、好ましくは3.8at%以上とする。一方、Al系酸化皮膜の形成の促進には、AlとNb濃度を高めることが効果的ではあるものの、Alm+Nbmを10.0%以上とした場合、生産性を低下させることに加え、Nb酸化物が形成し耐酸化性を劣化するおそれもある。よって、Alm+Nbmの上限は、コスト対効果の観点から10.0at%未満とし、好ましくは7.0at%以下とする。
・装置:XPS測定装置(アルバック・ファイ株式会社、QuanteraSXM)
・X線:mono−AlKα線(hν=1486.6eV)、X線径:100μmΦ
・中和銃:1.0V、20μA
・スパッタ条件:Ar+、加速電圧:1kV、ラスター:2×2mm
・スパッタ速度:1.8nm/min.(SiO2換算値)
なお、Nは表面に濃化することが無いため、またCは汚染元素であるため、XPS分析で検出した後、これら2元素を除いてCr、Al、Nb濃度を算出することにする。
次に、上述してきた本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法であるが、熱間加工、冷間加工及び各熱処理(焼鈍)を組み合わせることで製造でき、必要に応じて、適宜、研磨や酸浸漬によるデスケーリングを行ってよい。製造方法の一例として、製鋼−熱間圧延−焼鈍−冷間圧延−焼鈍(仕上げ焼鈍)−機械研磨−酸浸漬の各工程を有する製法を採用できる。
処理(A):10〜50質量%のH2SO4を含む90℃以下の硫酸水溶液中への浸漬
処理(B):1質量%以上のHNO3及び0.5質量%以上のHFを含む90℃以下の硝フッ酸水溶液中への浸漬
機械研磨は、100番以下の番手の研磨材を用い、例えばコイルグラインダーを1パス実施する。転位を更に多く導入し、不働態皮膜中のCrやAl、Siの濃度を高める観点から、研磨材の番手は♯80以下が好ましく、♯30以下がより好ましい。
なお、機械研磨をせずに、上記処理(A)、(B)を実施しただけでは、上述した
原子の拡散促進効果を得られないまま酸浸漬を行うことなるため、不働態皮膜中のCr、Al及びSiの濃化は達成できない。
なお、本実施形態において仕上げ焼鈍時の雰囲気は特に規定するものではないが、大気中、LNG燃料雰囲気、水素や窒素、アルゴン等を用いた無酸化性雰囲気(光輝焼鈍)であることが好ましい。
なお、下記にて示す表中の下線は、本発明の範囲から外れているものを示す。
処理(B):1質量%以上のHNO3及び0.5質量%以上のHFを含む90℃以下の硝フッ酸水溶液中への浸漬
なお、表2において「〇」は各処理を実施したこと、「−」は実施しなかったことを表している。
鋼板表層部(鋼板表面から深さ30nmまでの領域)におけるCr、Al、Nbの最大濃度(Crm、Alm、Nbm)は、XPSによるデプスプロファイルによって測定し、鋼板表面から深さ30nmまで、深さ方向への各元素の濃度プロファイルを測定して求めた。デプスプロファイルによって求められた各元素に関して、状態分析を実施して、酸化物として存在している元素(カチオンイオン)と金属として存在している元素(カチオンイオン)とに分離する。金属として存在しているカチオンイオンと酸化物として存在しているカチオンイオンの両方を含む全カチオンイオンの合計濃度を100%として、酸化物として存在しているCr、Al及びNbのカチオンイオン分率(at.%)を算出する。その上で、鋼板表面から30nm深さまでの領域の範囲内でCr、Al、Nb濃度が最大値を示すそれぞれの各位置の値を「Cr最大濃度(Crm)」、「Al最大濃度(Alm)」、「Nb最大濃度(Nbm)」とした。
まず冷延鋼板から幅20mm、長さ25mmの酸化試験片を切り出し酸化試験に供した。酸化試験の雰囲気は、都市ガスを燃料とした改質ガスを想定し、25体積%H2O−8%体積%CO−8体積%CO2−0.01%H2S−bal.H2の雰囲気とした。当該雰囲気において、酸化試験片を550℃若しくは650℃に加熱し、1000時間保持した後に室温まで冷却し、酸化増量ΔW(mg/cm2)を測定した。
550℃における耐酸化性、650℃における耐酸化性ともに、評価は以下の通りとした。
◎:重量増加ΔWが0.1mg/cm2未満
〇:重量増加ΔWが0.1〜0.3mg/cm2
×:重量増加ΔWが0.3mg/cm2超
なお、耐酸化性は「◎」及び「〇」の場合を合格とした。
冷延鋼板から、圧延方向を長手方向とする板状の高温引張試験片(板厚:0.8mm、平行部幅:10.5mm、平行部長さ:35mm)を作製し、750℃、及び800℃それぞれにて、ひずみ速度は、0.2%耐力まで0.3%/min、以降3%/minとして高温引張試験を行い、各温度における0.2%耐力(750℃耐力、800℃耐力)を測定した(JIS G 0567に準拠)。
冷延鋼板から、板面と垂直な断面上の中心(板厚中心部:t/2付近)を観察できるよう試料を2つ採取して、一方は、500℃×1000時間の熱処理(500℃熱処理)、もう一方は650℃×1000時間の熱処理(650℃熱処理)を行った。これら熱処理の雰囲気はともに大気中とした。次に、熱処理後の各試料を樹脂に埋め研磨した後、500℃熱処理後のビッカース硬さHv(500℃)、650℃熱処理後のビッカース硬さHv(650℃)のそれぞれをJIS Z 2244に準拠して荷重9.8Nで測定し、熱処理前に予め測定しておいた熱処理前ビッカース硬さからの硬さ上昇量ΔHv(500℃)、ΔHv(650℃)を算出した。
No.1、4〜13は、本発明で規定する成分及び表層部の組成を満たし、すべての特性の評価は「○」あるいは「◎」となったものである。中でも、No.5、7、9〜12は、表層部の組成が本発明の好適な範囲内である場合であり、耐酸化性の向上効果を顕著に発現でき、その評価は「◎」となった。
Claims (9)
- 質量%にて、
Cr:12.0〜16.0%、
C:0.020%以下、
Si:0.50〜2.50%、
Mn:1.00%以下、
P:0.050%以下、
S:0.0030%以下、
Al:1.00〜3.00%
N:0.030%以下、
Nb:0.05〜1.00%、
Ni:0.05〜1.00%、
Mo:0.05〜1.00%、
Sn:0.005〜0.200%
B:0.0005〜0.0100%、
Cu:0〜1.00%、
Sb:0〜0.50%、
W:0〜1.00%、
Co:0〜0.50%、
V:0〜0.50%、
Ti:0〜0.50%、
Zr:0〜0.50%、
La:0〜0.100%、
Y:0〜0.100%、
Hf:0〜0.100%、
REM:0〜0.100%
Ga:0〜0.0200%以下、
Mg:0〜0.0200%以下、
Ca:0〜0.0100%以下
かつ下記式(1)を満たし、残部がFe及び不純物からなり、
鋼板表面から深さ30nmまでの領域であって不働態皮膜を含む表層部において、Cr、Al及びSiの各最大濃度Crm、Alm、Nbm(at%)が、下記式(2)及び下記式(3)を満たすことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
0.7Nb+Ni+Mo+0.4Ti+0.4Cu+200B≧0.30 ・・・(1)
15.0<Crm(at%)<50.5 ・・・(2)
2.7<Alm+Nbm(at%)<10.0 ・・・(3)
なお、上記式(1)中の各元素記号は、鋼中の当該元素の含有量(質量%)を示し、元素が含まれないときは0を代入する。 - 質量%にて、前記B:0.0010%以上であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 質量%にて、結晶粒界のNb濃度が3.0〜10.0%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 質量%にて、更に、Cu:0.10〜1.00%、Sb:0.01〜0.50%、W:0.10〜1.00%、Co:0.10〜0.50%、V:0.10〜0.50%、Ti:0.01〜0.50%、Zr:0.01〜0.50%、La:0.001〜0.100%、Y:0.001〜0.100%、Hf:0.001〜0.100%、REM:0.001〜0.100%、Ga:0.0002〜0.0200%、Mg:0.0002〜0.0200%、Ca:0.0002〜0.0100%のうち1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 燃料改質器、熱交換器あるいは燃料電池部材に適用されることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 燃焼器、あるいはバーナーの部材に適用されることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 請求項1〜4のうちいずれか1項に記載する組成を有するステンレス鋼材を冷間圧延し、仕上げ焼鈍した後、♯100以下の研磨材で研磨を施し、次いで、下記の処理(A)又は処理(B)の少なくとも一方を実施することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
処理(A):10〜50質量%のH2SO4を含む90℃以下の硫酸水溶液中への浸漬
処理(B):1質量%以上のHNO3及び0.5質量%以上のHFを含む90℃以下の硝フッ酸水溶液中への浸漬 - 前記仕上げ焼鈍を800〜1150℃で行うことを特徴とする請求項7に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼を用いた燃料電池用部材。
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