JP7270444B2 - フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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- Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)
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Description
〔1〕質量%で、
C+N:0.04%未満、
Si:0.01~0.5%、
Mn:0.5%以下、
P:0.05%以下、
S:0.01%以下、
Cr:18.5~25%、
Ni:0.5%未満、
Al:0.1%以下、
Mo:0.5~3.5%、
Nb:0.001~0.2%未満、
Ti:0.001~0.2%未満、
W:0~0.05%未満、
V:0~0.2%未満、
Mg:0~0.01%、
Ca:0~0.02%、
B:0~0.005%、
Ga:0~0.01%、
Sn:0~0.3%、
Sb:0~0.3%、
Cu:0~0.5%
Zr:0~0.5%、
Co:0~0.5%、
Hf:0~0.1%、
REM:0~0.1%、
残部がFeおよび不可避的不純物であり、
下記式(1)を満たす、
フェライト系ステンレス鋼板。
Nb/Ti>1.0・・・(1)
ただし、上記式(1)の各元素記号は、それぞれの含有量(質量%)を意味する。
フェライト系ステンレス鋼板。
1.5<Mo<10・・・(2)
35<Cr+0.5Si・・・(3)
ただし、上記式(2)および(3)中の各元素記号は、前記不働態皮膜のC、OおよびNを除くカチオン分率における各元素の最大濃度の値(質量%)を意味する。
上記〔1〕のフェライト系ステンレス鋼板。
1.5<Mo<10・・・(2)
35<Cr+0.5Si・・・(3)
ただし、上記式(2)および(3)中の各元素記号は、前記不働態皮膜のC、OおよびNを除くカチオン分率において、各元素の最大濃度の値(質量%)を意味する。
上記〔1〕~〔3〕のいずれかのフェライト系ステンレス鋼板。
上記〔1〕~〔3〕のいずれかのフェライト系ステンレス鋼板。
焼鈍後の鋼板の表面を、♯180以下の研磨材で研磨し、
研磨した鋼板を、1質量%以上のHNO3および0.5質量%以上のHFを含み、70℃以下に保たれた硝フッ酸水溶液中へ浸漬する、
上記〔2〕または〔3〕のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
(化学組成)
C+N:0.04%未満
CおよびNは、鋼中に含まれる不可避的不純物元素であり、本発明の目標とする耐酸化性と曲げ加工性を阻害する。そのため、CおよびNの量は低いほど好ましい。しかし、過度な低減は精錬コストの大幅な上昇を招く。したがって、上限はCとNの含有量の合計は、0.04%未満とする。耐酸化性と曲げ加工性、製造性の点から、好ましい下限は0.001%であり、好ましい上限は0.015%である。
Siは、Cr系酸化皮膜の直下に濃化して高温酸化環境下の耐酸化性を向上させる。これら効果を得るために下限は、0.01%とする。一方、過度な添加は、材料の硬質化を招くため、上限は0.5%とする。本発明の目標とする耐酸化性と曲げ加工性の点から、好ましい下限は0.03%であり、好ましい上限は0.3%である。さらに好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.2%である。
Mnは、電気伝導性の向上および脱酸元素として有効に作用するが、過度な添加はCr系酸化皮膜の耐酸化性を阻害するため、上限は0.5%とする。本発明の目標とする耐酸化性と基本特性の点から、好ましい上限は0.3%である。さらに好ましい上限は0.2%である。好ましい下限は0.08%である。
Pは、製造性や溶接性を阻害する元素であり、その含有量は少ないほど良いため、上限は0.05%とする。ただし、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.003%とすることが好ましい。製造性と溶接性の点から,好ましい下限は0.005%であり、好ましい上限は0.035%、より好ましい下限は0.010%であり、好ましい上限は0.030%である。
Sは、鋼中に含まれる不可避的不純物元素であり、本発明の目標とする耐酸化性を低下させる。特に、Mn系介在物や固溶Sの存在は、長期の高温酸化環境におけるCr系酸化皮膜の保護性を低下させる起点として作用する。そのため,S量は低いほど良いため、上限は0.01%とする。ただし、過度な低減は原料や精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.0001%とする。本発明の目標とする耐酸化性と製造性の点から、好ましい下限は0.0001%であり、好ましい上限は0.0020%である。より好ましい下限は0.0002%であり、好ましい上限は0.0010%である。
Crは、本発明の目標とする耐酸化性と低熱膨張化において基本となる構成元素である。本発明においては、18.5%未満では目標とする特性が十分に確保されない。したがって、下限は18.5%とする。しかし、過度なCrの添加は、高温酸化環境に曝された際、脆化相であるσ相の生成を助長することに加え、曲げ加工性の悪化を招く。上限は、基本特性の視点から25%とする。基本特性およびコストの点から,好ましい下限は18.5%であり、好ましい上限は23%である。
Niは、耐酸化性と高温強度を高めるのに有効な元素である。過度な添加は合金コストの上昇や製造性を阻害するので、0.5%未満とする。Niの好ましい下限は0.005%であり、より好ましい下限は0.01%である。
Alは、強力な脱酸元素であり、耐酸化性の向上に非常に有効な元素である。しかし、低熱膨張係数とするためには、Al量は低いほど好ましい。これら基本特性の視点から、上限は0.1%とする。下限は、脱酸効果を得るために、0.01%とすることが好ましい。本発明の目標とする特性と製造性を両立する点から、好ましい下限は0.02%であり、好ましい上限は0.08%である。
Moは、熱膨張係数を低下させる上で有効であり、本発明の目標とする耐酸化性の発現に作用する重要な元素である。これら効果を得るために、下限を0.5%とする。過度な添加は、脆化相であるσ相の生成を助長して曲げ加工性を低下させることに加え、原料コストの上昇を招ため、上限は3.5%である。本発明の目標とする耐酸化性と曲げ加工性から,好ましい下限は0.8%であり、好ましい上限は2.5%である。
Ti:0.001~0.2%未満
TiおよびNbは、本発明の目標とする耐酸化性に作用する重要な元素である。また、CやNを炭窒化物として固定して曲げ加工性を改善する作用を持つ。これら効果を得るためには、いずれも下限を0.001%とする。過度な添加は、曲げ加工性を悪化させるため、0.2%未満とする。さらにNb/Ti>1.0とすることで、Tiの外方拡散を抑制して、耐酸化性を改善する。Tiの好ましい下限は0.003%であり、好ましい上限は0.14%である。Nbの好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.19%である。
Sb:0~0.3%
Cu:0~0.5%
W:0~0.05%未満
Co:0~0.5%
Sn、Sb、Cu、WおよびCoは、耐酸化性と高温強度を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて含有させてもよい。ただし、過度な添加は合金コストの上昇や製造性を阻害することに繋がるため、SnおよびSbは0.3%以下、Cuは0.5%以下、Wは0.05%未満、Coは0.5%以下とする。Sn、Sb、Cu、WおよびCoの好ましい下限は0.005%であり、より好ましい下限は0.01%である。
Ca:0~0.02%
B:0~0.005%
Ga:0~0.01%
Mg、Ca、BおよびGaは、当該鋼の耐酸化性と他クリープ強さを高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加する。ただし、過度な添加は合金コストに上昇や製造性を阻害するため、それぞれ上限は、Mg:0.01%、Ca:0.02%、B:0.005%、Ga:0.01%とする。それぞれの好ましい下限は、Mg:0.0002%、Ca:0.0004%、B:0.0002%、Ga:0.005%とする。
Vは、当該鋼の耐酸化性を向上させるために低いほど好ましい。一方で、CやNを炭窒化物として固定し高温強度を高める作用も持つ。これら基本特性から、上限は0.2%とする。下限は、クロム原料からの不可避的不純物を考慮した減量コストの上昇から、0.005%とすることが好ましい。本発明の目標とする特性と原料コストを両立する点から、より好ましい下限は0.01%であり、好ましい上限は0.1%である。
Hf:0~0.1%
REM:0~0.1%
Zr、HfおよびREMは、従来から耐酸化性を高める上で有効な元素であり、必要に応じて添加する。ただし、本発明の技術思想と合金コストの低減から、これら元素の添加効果に頼るものではない。Zrは0.5%以下、Hfは0.1%以下、REMは0.1%とする。下限は、いずれも0.001%とすることが好ましい。なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。例えば、Ce、Pr、Nd等である。
高温の酸化ガス環境に曝される前の初期状態の皮膜を不働態皮膜という。不働態皮膜は、耐酸化性を高めるためには、下記の式(2)および(3)を満足することが好ましい。
1.5<Mo<10・・・(2)
35<Cr+0.5Si・・・(3)
ただし、上記式(2)および(3)中の各元素記号は、前記不働態皮膜のC、OおよびNを除くカチオン分率における各元素の最大濃度の値(質量%)を意味する。
製造方法は、熱間加工、冷間加工および各熱処理(焼鈍)を組み合わせることで製造でき、必要に応じて、適宜、研磨や酸浸漬によるデスケーリングを行ってよい。製造方法の一例として、製鋼-熱間圧延-焼鈍-冷間圧延-焼鈍(仕上げ焼鈍)-機械研磨-酸浸漬の各工程を有する製法を採用できる。さらに、ガス配管の用途に適用する場合は、鋼板から製造した溶接管も含まれるが、配管は、溶接管に限定するものでなく、熱間加工により製造した継目無管でもよい。
焼鈍温度は、850~1100℃とする。焼鈍温度が850℃未満では鋼の軟質化と再結晶が不十分となり、所定の材料特性が得られないことがある。1100℃を超えると粗大粒となり、鋼の靭性・延性を害することもある。焼鈍の保持時間には制約がないが、10~3600秒とする。焼鈍時の雰囲気には、制約がないが、大気中、LNG燃料雰囲気、水素や窒素、アルゴン等を用いた無酸化性雰囲気(光輝焼鈍)であることが好ましい。
焼鈍後の鋼板の表面を、♯180以下の研磨材で研磨する。鋼板表面に転位が導入されて原子の拡散が促進される。その結果、その後の大気放置もしくは酸浸漬工程において形成される不働態皮膜中においてCrだけではなくMo、Siの濃度も高めることができる。機械研磨は、#180以下の番手の研磨材を用い、例えばコイルグラインダーを1パス実施する。転位をより導入し、不働態皮膜中のCrやMo、Siの濃度を高める観点から、研磨材の番手は♯150以下が好ましく、♯80以下がより好ましい。
研磨した鋼板を、1質量%以上のHNO3および0.5質量%以上のHFを含み、70℃以下に保たれた硝フッ酸水溶液中へ浸漬する。硝フッ酸水溶液の温度は40~70℃としてよい。また、硝フッ酸水溶液中のHNO3の濃度は、1~20質量%、HFの濃度は0.5~10質量%としてもよい。これにより、上記式(2)および(3)を満足する不働態皮膜が得られる。なお、機械研磨をせずに、上記浸漬を実施しただけでは、上述した原子の拡散促進効果を得られないまま酸浸漬を行うことなるため、上記式(2)および(3)を満足する不働態皮膜が得られない。
グロー放電発光分光分析(GDS分析)を用いて、得られた鋼板の表面から深さ方向における各元素のプロファイルを得た。各元素のプロファイルについては、鋼の構成元素であるFe、Cr、Si、Mn、Al、Mo、Nb、Ti、O、CおよびNを測定する。不働態皮膜の厚みは、Oの深さ方向の強度プロファイルにおいて最大強度の1/2となる深さとする。C、OおよびNの軽元素を除くカチオン分率の深さ方向プロファイルを作成し、不働態皮膜における、各元素の最大濃度を求めた。なお、濃度は質量%とする。
水蒸気酸化試験は、20%H2Oを含有した空気を1分間に500ml流入し、800℃で100時間保持し、試験前後の質量増加量を測定した。判定は質量増加量が0.1mg/cm2未満を「◎」、0.1mg/cm2以上、0.2mg/cm2未満を「○」、0.2mg/cm2以上を「×」とする。
曲げ試験は、冷間圧延によって5%の歪を導入後、JIS Z 2248に準拠して、曲げ半径を試験片板厚と同じ0.8mmまたは15mmとして180℃の押曲げを行った。判定は試験片の破断または外面・内面に亀裂が確認されない場合に「○」、そうでない場合に「×」とする。
Claims (4)
- 燃料電池システムの高温部材に用いられるフェライト系ステンレス鋼板であって、
質量%で、
C+N:0.04%未満、
Si:0.01~0.5%、
Mn:0.5%以下、
P:0.05%以下、
S:0.01%以下、
Cr:18.5~25%、
Ni:0.5%未満、
Al:0.1%以下、
Mo:0.5~3.5%、
Nb:0.001~0.2%未満、
Ti:0.001~0.2%未満、
W:0~0.05%未満、
V:0~0.2%未満、
Mg:0~0.01%、
Ca:0~0.02%、
B:0~0.005%、
Ga:0~0.01%、
Sn:0~0.3%、
Sb:0~0.3%、
Cu:0~0.5%、
Zr:0~0.5%、
Co:0~0.5%、
Hf:0~0.1%、
REM:0~0.1%、
残部がFeおよび不可避的不純物であり、
下記式(1)を満たす、
フェライト系ステンレス鋼板。
Nb/Ti>1.0・・・(1)
ただし、上記式(1)の各元素記号は、それぞれの含有量(質量%)を意味する。 - 表面に下記式(2)および(3)を満足する不働態皮膜を備える、
請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
1.5<Mo<10・・・(2)
35<Cr+0.5Si・・・(3)
ただし、上記式(2)および(3)中の各元素記号は、前記不働態皮膜のC、OおよびNを除くカチオン分率における各元素の最大濃度の値(質量%)を意味する。 - 燃料電池システムのマニュホールドに用いられる、
請求項1または2のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板。 - 鋼板を、850~1100℃の温度で焼鈍し、
焼鈍後の鋼板の表面を、♯180以下の研磨材で研磨し、
研磨した鋼板を、1質量%以上のHNO3および0.5質量%以上のHFを含み、70℃以下に保たれた硝フッ酸水溶液中へ浸漬する、
請求項2に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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