JPH0938714A - Alを含有するフェライト系ステンレス鋼帯の製造方法 - Google Patents

Alを含有するフェライト系ステンレス鋼帯の製造方法

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JPH0938714A
JPH0938714A JP19192795A JP19192795A JPH0938714A JP H0938714 A JPH0938714 A JP H0938714A JP 19192795 A JP19192795 A JP 19192795A JP 19192795 A JP19192795 A JP 19192795A JP H0938714 A JPH0938714 A JP H0938714A
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富美夫 札軒
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、Alを含有する耐熱・電磁フェラ
イト系ステンレス鋼冷延鋼帯において、その焼鈍時のス
ケーリング特性、および酸洗時のデスケーリング特性を
改善することにより、作業性を改善し、さらに研磨工程
を省略する製造法を提供する。 【解決手段】 重量%にて C:0.05%以下、 N:0.05%
以下、Cr:10〜40%、Al: 2.5〜7.0 %含有するフェラ
イト系ステンレス鋼の冷間圧延帯を焼鈍して、スケール
皮膜厚が 3.0μm以下で、かつ皮膜中でのAl濃度が原
子%にて15〜60at%である表面スケールを生成し、続い
てHF濃度が20〜160 g/l、HNO3 濃度が40〜200
g/lの混酸で、液温度が30〜80℃、Feイオン濃度が
30g/l以下である酸洗でデスケールする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性および電磁
特性に優れたAl(アルミニウム)を含有するフェライ
ト系ステンレス鋼帯の冷延工程における製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年、耐熱材料あるいは電磁材料として
Alを含有するフェライト系ステンレス鋼が注目されて
きている。これら材料は、自動車用排ガス部品、電磁調
理器用部品等に使用されつつある。しかしながら、Al
を含有するフェライト系ステンレス鋼の冷延鋼帯を大気
中で焼鈍すると、Al系のスケール皮膜が生成されるた
めに、通常の仕上げ酸洗として使用される硝酸電解酸洗
では十分にはデスケールされず、表面にスケール残りと
して残留するという問題がある。さらに、該スケール残
りを除去するための研磨工程を追加するので、著しいコ
ストアップになっている。従って、Alを含有するフェ
ライト系ステンレス鋼冷延鋼帯の焼鈍時のスケーリング
特性、および酸洗時のデスケーリング特性を改善するこ
とが強く要望されている。
【0003】フェライト系ステンレス鋼板の酸洗方法と
しては、例えば特公平6−94575号公報に開示され
ているように、硫酸酸洗と硝フッ酸酸洗の複合酸洗によ
り熱延板焼鈍のスケールを除去する方法がある。しかし
ながら、Alを2.5%以上含有するフェライト系ステ
ンレス鋼冷延焼鈍板においては、前述の酸洗方法ではデ
スケールが過大となって、表面の肌荒れが発生する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、Alを含有
する耐熱・電磁フェライト系ステンレス鋼冷延鋼帯にお
いて、その焼鈍時のスケーリング特性、および酸洗時の
デスケーリング特性を改善することにより、作業性を改
善し、さらに研磨工程を省略することを目的としてい
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、この目的のた
めに成分、焼鈍条件および酸洗条件を検討した結果完成
したもので、その要旨とするところは下記のとおりであ
る。 (1)重量%にてC:0.05%以下、N:0.05%
以下、Cr:10〜40%、Al:2.5〜7.0%含
有するフェライト系ステンレス鋼の冷間圧延帯を焼鈍し
て、スケール皮膜厚が3.0μm以下で、かつ皮膜中で
のAl濃度が原子%にて15〜60at%である表面スケ
ールを生成し、続いてHF濃度が20〜160g/l、
HNO3 濃度が40〜200g/lの混酸で、液温度が
30〜80℃、Feイオン濃度が30g/l以下である
酸洗でデスケールすること、および(2)上記焼鈍の条
件を、酸素雰囲気が体積%にて、10 vol%以下、保定
温度が800〜1100℃、保定時間が5〜60秒、か
つ600℃〜保定温度間の平均加熱速度が30℃/sec以
上であるような条件とすることにある。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の限定理由を以下に詳細に
説明する。まず、本発明合金の各元素の限定理由につい
て述べる。Crは、ステンレス鋼の必須元素であり、1
0%未満では耐食性、耐酸化性が劣化する。またCrが
40%を超えると、鋼が脆くなり、加工成形ができなく
なる。従って、Crは10〜40%に限定した。望まし
い範囲は、14〜23%である。
【0007】Alは、本発明にあっては耐熱性および電
磁特性を確保する基本元素であり、2.5%未満では所
望の耐酸化性や電気比抵抗が得られない。一方、7.0
%を超えて含まれると、熱延板の靭性が極度に低下し製
造性が損なわれる。従って、Alは2.5〜7.0%に
限定した。望ましい範囲は4.0〜6.0%である。
【0008】C,Nは、それぞれが0.05%を超えて
存在する場合、熱延板の靭性を著しく低下させる。従っ
て、C,Nはそれぞれ0.05%以下に限定した。望ま
しい範囲は、C+Nの総量が0.06%以下である。
【0009】本発明者等は、冷延鋼帯の焼鈍時に生成さ
れるスケール皮膜のデスケール特性に及ぼすスケール皮
膜厚および該皮膜中でのAl濃度の影響を検討した結
果、スケール残りを防止しエッチピットのない良好な表
面性状を得るには焼鈍時のスケール皮膜厚が3.0μm
以下とし、該皮膜中でのAl濃度が15〜60at%とす
ることが有効であることを見出した。
【0010】板厚が1.0mmである20Cr〜5Alフ
ェライト系ステンレス鋼冷延鋼帯において、焼鈍時のス
ケール皮膜厚と該皮膜中でのAl濃度を種々変化させ、
HF濃度が40g/l(リットル)、HNO3 濃度が6
0g/lの混酸で液温度が60℃、Feイオン濃度が1
5g/lである酸洗条件でデスケールして、スケール残
りの有無を調査した結果を図1に示す。ここで、スケー
ル皮膜厚と該皮膜中でのAl濃度は、オージェ電子分光
分析装置を用いて表面から深さ方向の酸素、Fe,Cr
およびAlの各濃度分布を測定し、酸素濃度曲線とFe
濃度曲線の交点と表面間の深さをスケール皮膜厚とし、
その間でのAl濃度の平均値を該皮膜中でのAl濃度と
して算出した。
【0011】図1から明らかなように、スケール皮膜厚
が3.0μmまたは該スケール皮膜中でのAl濃度が6
0at%を超えると、スケール残りが発生することがわか
る。また、該スケール皮膜中でAl濃度が15at%未満
ではデスケールされるが、過酸洗によるエッチピットが
顕著に発生し表面性状が劣化する。従って、スケール残
りがなく表面性状が良好であるためには、焼鈍時のスケ
ール皮膜厚は3.0μm以下、かつ該皮膜中でのAl濃
度の範囲は15〜60at%である。望ましくは、スケー
ル皮膜厚は2.0μm以下、該皮膜中でのAl濃度は2
0〜50at%である。
【0012】HFとHNO3 の混酸は、フェライト系ス
テンレス鋼冷延鋼帯の仕上げ酸洗に使用される硝酸電解
酸洗に比べてデスケール能力が優れており、Al系のス
ケール皮膜を除去するのに有効である。HF濃度は、1
60g/lを超えると、過酸洗によるエッチピットが顕
著に発生し表面性状が劣化する。一方、20g/l未満
ではスケール残りが発生する。HNO3 濃度は、高いほ
どHFによるデスケール能力を向上させるが、その効果
は40g/l未満で小さく、200g/lを超えると過
酸洗によるエッチピットが顕著に発生し表面性状が劣化
する。従って、スケール残りがなく表面性状が良好であ
るためには、HF濃度の範囲は20〜160g/l、H
NO3 濃度の範囲は40〜200g/lである。望まし
くは、HF濃度は30〜100g/l、HNO3 濃度は
50〜100g/lである。
【0013】本発明者等は、冷延鋼帯の焼鈍時に生成さ
れるスケール皮膜のデスケール特性に及ぼすHFとHN
3 の混酸において液温度とFeイオン濃度の影響を検
討した結果、スケール残りを防止しエッチピットのない
良好な表面を得るには液温度が30〜80℃、Feイオ
ン濃度が30g/l以下であることが有効であることを
見出した。板厚が1.0mmで、焼鈍によるスケール皮膜
厚が1.0μmで該皮膜中でのAl濃度が38at%であ
る20Cr−5Alフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍
鋼帯を用いて、HF濃度が20g/l、HNO3 濃度が
40g/lの混酸において液温度とFeイオン濃度を種
々変化させた条件で酸洗して、スケール残りの有無を調
査した結果を図2に示す。図2から明らかなように、液
温度が80℃を超えると過酸洗によるエッチピットが顕
著に発生して表面性状が劣化し、一方30℃未満ではス
ケール残りが発生することがわかる。また、Feイオン
濃度が30g/lを超えるとスケール残りが発生するこ
とがわかる。従って、スケール残りがなく表面性状が良
好であるためには、液温度の範囲は30〜80℃、Fe
イオン濃度の範囲は30g/l以下である。望ましく
は、液温度は50〜70℃、Feイオン濃度は20g/
l以下である。
【0014】焼鈍時の保定温度は、本発明におけるスケ
ール生成に係わる重要な要因であり、保定温度が高いほ
どAl系のスケール皮膜が成長し、1100℃を超える
とスケール皮膜厚みが3.0μmを超える。一方、保定
温度が800℃未満では2.5%を超えてAl含有する
フェライト系ステンレス鋼冷延鋼帯の再結晶が十分でな
く材質が硬くなるので、圧延加工や成形加工が難しくな
る。従って、焼鈍時の保定温度の範囲は800〜110
0℃とした。望ましくは、900〜1000℃である。
【0015】本発明者等は、冷延鋼帯の焼鈍時に生成さ
れるスケール皮膜厚と該皮膜中でのAl濃度に及ぼす焼
鈍時の加熱速度と雰囲気中の酸素濃度の影響を検討した
結果、焼鈍時のスケール皮膜中でのAl濃度を15〜6
0at%とするには、600℃〜保定温度間の平均加熱速
度を30℃/sec以上とし、かつ酸素濃度を0.5〜10
vol%をすることが必要であることを見出した。
【0016】板厚が1.0mmである20Cr−5Alフ
ェライト系ステンレス鋼冷延鋼帯を用いて、焼鈍時の加
熱速度および雰囲気中の酸素濃度を種々変化させて、焼
鈍板のスケール皮膜中でのAl濃度を調査した結果を図
3に示す。
【0017】図3から明らかなように、焼鈍における6
00℃〜保定温度間の平均加熱速度が30℃/sec未満で
は、スケール皮膜中でのAl濃度が15〜60at%の範
囲外となることがわかる。また、雰囲気の酸素濃度が
0.5 vol%未満あるいは10vol%を超えると、加熱
速度の傾向と同じようにAl濃度が15〜60at%の範
囲外となることがわかる。
【0018】従って、焼鈍時のスケール皮膜内でのAl
濃度を15〜60%とするためには、600℃〜保定温
度間の平均加熱速度は30〜1000℃/secかつ焼鈍雰
囲気中の酸素濃度は0.5〜10 vol%である。望まし
くは、加熱速度は40〜1000℃/secかつ酸素濃度は
1.0〜6.0 vol%である。尚、加熱速度の上限を1
000℃/secにした理由は、この速度を超えて行うため
の加熱装置は設備投資が多額となり、また製造コストの
負担も膨大になり、経済的でないためである。
【0019】
【実施例】表1に本発明例および表2に比較例、従来例
を示す。表1−1,2−1には、成分、前履歴、焼鈍条
件および焼鈍板のスケール皮膜厚と該皮膜間でのAl濃
度を示している。また表1−2,2−2には酸洗条件お
よび焼鈍酸洗後の板表面性状および研磨工程の有無も示
している。酸洗板のスケール残りやエッチピットの観察
は、目視および光学顕微鏡で行った。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】本発明例は、比較例、従来例に比較して、
Alを含有するフェライト系ステンレス鋼冷延鋼帯の焼
鈍酸洗板にスケール残りもなく、過酸洗によるエッチピ
ットが発生しない良好な表面性状が得られており、更に
スケール残りやエッチピットの除去のための研磨工程の
追加もないことがわかる。
【0025】ここで、スケール皮膜厚と該皮膜中でのA
l濃度は、オージェ電子分光分析装置を用いて表面から
深さ方向の酸素、Fe,CrおよびAlの各濃度分布を
測定し、酸素濃度曲線とFe濃度曲線の交点と表面間の
深さをスケール皮膜厚とし、その間でのAl濃度の平均
値を該皮膜中でのAl濃度として算出した。
【0026】
【発明の効果】以上のことから明らかな如く、Alを含
有するフェライト系ステンレス鋼冷延鋼帯を本発明法に
より焼鈍酸洗すれば、焼鈍時のスケーリング特性、およ
び酸洗時のデスケーリング特性を改善し、酸洗板におい
てスケール残りやエッチピットの発生がなく、作業性も
向上し、更に研磨工程を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】板厚が1.0mmである20Cr−5Alフェラ
イト系ステンレス鋼冷延鋼帯を用いて、焼鈍時のスケー
ル皮膜厚と該皮膜中でのAl濃度を種々変化させて、H
F濃度が40g/l、HNO3 濃度が60g/lの混酸
において液温度が60℃、Feイオン濃度が15g/l
である条件で酸洗して、スケール残りの有無を調査した
結果を示す図である。
【図2】板厚が1.0mmで、焼鈍によるスケール皮膜厚
が1.0μmで該皮膜中でのAl濃度が38at%である
20Cr−5Alフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍鋼
帯を用いて、HF濃度が20g/l、HNO3 濃度が4
0g/lの混酸において液温度とFeイオン濃度を種々
変化させた条件で酸洗して、スケール残りの有無を調査
した結果を示す図である。
【図3】板厚が1.0mmである20Cr−5Alフェラ
イト系ステンレス鋼冷延鋼帯を用いて、焼鈍時の加熱速
度および雰囲気の酸素濃度を種々変化させて、焼鈍板の
スケール皮膜中でのAl濃度を調査した結果を示す図で
ある。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C23G 1/08 C23G 1/08 // C21D 9/46 C21D 9/46 R

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、C:0.05%以下、N:
    0.05%以下、Cr:10〜40%、Al:2.5〜
    7.0%含有するステンレス鋼の冷間圧延帯を焼鈍し
    て、スケール皮膜厚が3.0μm以下で、かつ該皮膜中
    でのAl濃度が原子%にて15〜60at%であるスケー
    ルを生成し、続いてHF濃度が20〜160g/l(リ
    ットル)、HNO3 濃度が40〜200g/l(リット
    ル)の混酸で、液温度が30〜80℃、Feイオン濃度
    が30g/l(リットル)以下である酸液でデスケール
    することを特徴とするAlを含有するフェライト系ステ
    ンレス鋼帯の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記焼鈍の条件が、焼鈍雰囲気の酸素濃
    度が体積%にて0.5〜10 vol%、保定温度が800
    〜1100℃、かつ保定時間が5〜60秒、かつ600
    ℃〜保定温度間の平均加熱速度が30〜1000℃/sec
    であることを特徴とする請求項1記載のAlを含有する
    フェライト系ステンレス鋼帯の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011162812A (ja) * 2010-02-05 2011-08-25 Nisshin Steel Co Ltd ステンレス鋼帯の酸洗操業方法
JP2017170504A (ja) * 2016-03-25 2017-09-28 日新製鋼株式会社 フェライト系ステンレス鋼板の製造方法
JP2017172027A (ja) * 2016-03-25 2017-09-28 新日鐵住金ステンレス株式会社 Al含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法
CN110814032A (zh) * 2019-10-18 2020-02-21 甘肃酒钢集团宏兴钢铁股份有限公司 一种2b表面439铁素体不锈钢冷轧方法

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