JP2000073192A - フェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents
フェライト系ステンレス鋼板の製造方法Info
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- JP2000073192A JP2000073192A JP10240340A JP24034098A JP2000073192A JP 2000073192 A JP2000073192 A JP 2000073192A JP 10240340 A JP10240340 A JP 10240340A JP 24034098 A JP24034098 A JP 24034098A JP 2000073192 A JP2000073192 A JP 2000073192A
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- Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 生産性を低下することなしに表面模様のな
い、意匠性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造
できるフェライト系ステンレス鋼熱延板の酸洗方法を提
供する。 【解決手段】 Cr:15wt%以上を含有するフェライト系
ステンレス鋼熱延焼鈍板を酸洗による脱スケール処理を
施すに際し、硫酸または硝弗酸溶液で酸洗する粗酸洗を
行ったのち、硝酸濃度と弗酸濃度が、鋼板中のMo含有
量、Nb含有量の合計量に応じ、特定関係式を満足する硝
弗酸溶液で酸洗する仕上げ酸洗を行う。仕上げ酸洗は、
鋼板に硝弗酸溶液の対向流をかけながら行うのが好まし
い。仕上げ酸洗に用いる硝弗酸溶液に、硝酸、弗酸に加
え、さらに過酸化水素5 〜50g/l を添加するのが好まし
い。
い、意匠性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造
できるフェライト系ステンレス鋼熱延板の酸洗方法を提
供する。 【解決手段】 Cr:15wt%以上を含有するフェライト系
ステンレス鋼熱延焼鈍板を酸洗による脱スケール処理を
施すに際し、硫酸または硝弗酸溶液で酸洗する粗酸洗を
行ったのち、硝酸濃度と弗酸濃度が、鋼板中のMo含有
量、Nb含有量の合計量に応じ、特定関係式を満足する硝
弗酸溶液で酸洗する仕上げ酸洗を行う。仕上げ酸洗は、
鋼板に硝弗酸溶液の対向流をかけながら行うのが好まし
い。仕上げ酸洗に用いる硝弗酸溶液に、硝酸、弗酸に加
え、さらに過酸化水素5 〜50g/l を添加するのが好まし
い。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フェライト系ステ
ンレス鋼板の製造方法に係り、とくに熱延板の表面性状
を改善する酸洗方法に関する。本発明における鋼板と
は、鋼板および鋼帯を含むものとする。
ンレス鋼板の製造方法に係り、とくに熱延板の表面性状
を改善する酸洗方法に関する。本発明における鋼板と
は、鋼板および鋼帯を含むものとする。
【0002】
【従来の技術】SUS 430 に代表されるフェライト系ステ
ンレス鋼板は、スラブを熱間圧延して熱延板としたの
ち、再結晶のための熱延板焼鈍と、該熱延板焼鈍により
生成したスケールを除去するための酸洗処理(脱スケー
ル処理)を経て熱延焼鈍(酸洗)板とし、あるいはさら
に冷間圧延、仕上げ焼鈍および酸洗を施されて冷延焼鈍
(酸洗)板とされるのが一般的である。
ンレス鋼板は、スラブを熱間圧延して熱延板としたの
ち、再結晶のための熱延板焼鈍と、該熱延板焼鈍により
生成したスケールを除去するための酸洗処理(脱スケー
ル処理)を経て熱延焼鈍(酸洗)板とし、あるいはさら
に冷間圧延、仕上げ焼鈍および酸洗を施されて冷延焼鈍
(酸洗)板とされるのが一般的である。
【0003】熱延板焼鈍は、燃焼雰囲気中で行われるの
が一般的である。このような熱延板焼鈍により発生した
スケールは、通常、硫酸溶液に浸漬し、さらに硝弗酸溶
液に浸漬する酸洗処理により除去される。しかし、この
酸洗処理によっても、熱延スケールの残存あるいは溶解
ムラが発生し、光沢度や白色度のムラとなる。このよう
な熱延焼鈍(酸洗)板の光沢度や白色度のムラは、板表
面の模様として認識され、このような表面模様を有する
熱延焼鈍(酸洗)板をそのまま屋根やパネル等の意匠性
を要求される使途に使用した場合には表面不良として問
題とされる。また、このような光沢度や白色度のムラ
(表面模様)を有する熱延焼鈍(酸洗)板を素材として
冷延焼鈍(酸洗)板を製造した場合にも、このムラは冷
間圧延、酸洗工程で消滅することなく残存する場合が多
く、冷延焼鈍酸洗板の表面不良として問題とされる。
が一般的である。このような熱延板焼鈍により発生した
スケールは、通常、硫酸溶液に浸漬し、さらに硝弗酸溶
液に浸漬する酸洗処理により除去される。しかし、この
酸洗処理によっても、熱延スケールの残存あるいは溶解
ムラが発生し、光沢度や白色度のムラとなる。このよう
な熱延焼鈍(酸洗)板の光沢度や白色度のムラは、板表
面の模様として認識され、このような表面模様を有する
熱延焼鈍(酸洗)板をそのまま屋根やパネル等の意匠性
を要求される使途に使用した場合には表面不良として問
題とされる。また、このような光沢度や白色度のムラ
(表面模様)を有する熱延焼鈍(酸洗)板を素材として
冷延焼鈍(酸洗)板を製造した場合にも、このムラは冷
間圧延、酸洗工程で消滅することなく残存する場合が多
く、冷延焼鈍酸洗板の表面不良として問題とされる。
【0004】このような熱延焼鈍酸洗板に発生する表面
模様を防止する方法として、幾つかの提案がある。例え
ば、特開平6-10171 号公報には、熱間仕上げしたフェラ
イト系ステンレス鋼帯をメカニカルな研削で表面スケー
ルを除去したのち、40〜80℃に保持した硝弗酸溶液で酸
洗処理するフェライト系ステンレス鋼帯の処理方法が提
案されている。
模様を防止する方法として、幾つかの提案がある。例え
ば、特開平6-10171 号公報には、熱間仕上げしたフェラ
イト系ステンレス鋼帯をメカニカルな研削で表面スケー
ルを除去したのち、40〜80℃に保持した硝弗酸溶液で酸
洗処理するフェライト系ステンレス鋼帯の処理方法が提
案されている。
【0005】また、特開平6-57500 号公報には、14wt%
以上のCrを含有する鋼板を、硫酸、BF4 - 、NO3 - で構
成される水溶液中で交番電解するCr含有鋼の酸洗法が開
示されている。
以上のCrを含有する鋼板を、硫酸、BF4 - 、NO3 - で構
成される水溶液中で交番電解するCr含有鋼の酸洗法が開
示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
6-10171 号公報に記載された方法では、メカニカルな研
削で表面スケールを除去するため、表面スケール除去処
理に多大な時間を要し、しかも多くの設備を必要とする
うえ、同一のラインでは処理できないため、熱延板の生
産性を著しく低下させるという問題があった。
6-10171 号公報に記載された方法では、メカニカルな研
削で表面スケールを除去するため、表面スケール除去処
理に多大な時間を要し、しかも多くの設備を必要とする
うえ、同一のラインでは処理できないため、熱延板の生
産性を著しく低下させるという問題があった。
【0007】また、特開平6-57500 号公報に記載された
技術では、酸溶液中での電解は多大な電力を必要とし、
さらに高速電解ができないため、熱延板の生産性が低下
するという問題があった。本発明は、上記した従来技術
の問題を解決し、生産性を低下することなしに、表面の
光沢度、白色度のムラがなく表面模様のない、表面性状
の優れたフェライト系ステンレス鋼熱延板、あるいは冷
間圧延、焼鈍済の冷延焼鈍板を製造できる、フェライト
系ステンレス鋼板の製造方法を提供することを目的とす
る。
技術では、酸溶液中での電解は多大な電力を必要とし、
さらに高速電解ができないため、熱延板の生産性が低下
するという問題があった。本発明は、上記した従来技術
の問題を解決し、生産性を低下することなしに、表面の
光沢度、白色度のムラがなく表面模様のない、表面性状
の優れたフェライト系ステンレス鋼熱延板、あるいは冷
間圧延、焼鈍済の冷延焼鈍板を製造できる、フェライト
系ステンレス鋼板の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を達成するため、フェライト系ステンレス鋼熱延板の酸
洗方法について様々な実験を行った。まず、熱延板表面
の酸化物層について調査した。熱間圧延後に形成される
スケール(酸化物層)は、主としてコランダム型酸化物
((Fe,Cr)2O3)とスピネル型酸化物((Fe,Cr)3O4)で、
これらの厚みは場所により異なり、またFeO が多量に存
在する場所もある。また、熱延板を焼鈍すると、Si、M
n、Cr等の合金元素が、焼鈍時に酸化物層と地鉄との界
面に濃化し、酸洗性を劣化させる。また、その濃化度は
粒内と粒界あるいは圧延疵のある箇所とでは異なる。
を達成するため、フェライト系ステンレス鋼熱延板の酸
洗方法について様々な実験を行った。まず、熱延板表面
の酸化物層について調査した。熱間圧延後に形成される
スケール(酸化物層)は、主としてコランダム型酸化物
((Fe,Cr)2O3)とスピネル型酸化物((Fe,Cr)3O4)で、
これらの厚みは場所により異なり、またFeO が多量に存
在する場所もある。また、熱延板を焼鈍すると、Si、M
n、Cr等の合金元素が、焼鈍時に酸化物層と地鉄との界
面に濃化し、酸洗性を劣化させる。また、その濃化度は
粒内と粒界あるいは圧延疵のある箇所とでは異なる。
【0009】このようなスケール組成、厚みが部分的に
相違する熱延板を焼鈍すると、焼鈍時の酸化反応の形態
が部分的に相違し、それが酸洗性の部分的相違を生み、
酸洗後の光沢度ムラの1つの原因となっていることがわ
かった。また、本発明者らは、熱延板の焼鈍後、酸洗後
の表面を詳細に検討した結果、熱延板に発生する模様
は、熱延焼鈍後および熱延焼鈍酸洗後に生じる表面光沢
度の差に対応していることを見いだした。
相違する熱延板を焼鈍すると、焼鈍時の酸化反応の形態
が部分的に相違し、それが酸洗性の部分的相違を生み、
酸洗後の光沢度ムラの1つの原因となっていることがわ
かった。また、本発明者らは、熱延板の焼鈍後、酸洗後
の表面を詳細に検討した結果、熱延板に発生する模様
は、熱延焼鈍後および熱延焼鈍酸洗後に生じる表面光沢
度の差に対応していることを見いだした。
【0010】したがって、熱延板の模様をなくすために
は、酸化物層をコランダム型酸化物あるいはスピネル
型酸化物のどちらか一方の酸化物を主体とするか、表
面組織を熱延焼鈍板の酸洗時に多量にしかも均一に溶解
する、のが効果的である。また、本発明者らは、フェラ
イト系ステンレス鋼に耐食性向上の目的で添加されてい
るNbが、焼鈍時に酸化物層と地鉄との界面に濃化し、酸
洗性を劣化させ、表面模様の発生原因となっているこ
と、およびNbと同様の目的で添加されているMoが、焼鈍
時に酸化物層と地鉄との界面に濃化することはないが、
硝弗混酸による酸洗時に反応面積を著しく減少させ、酸
洗性を劣化させ、表面模様の発生原因となっていること
を見いだした。また、Nb、Moを含有するフェライト系ス
テンレス鋼板は、硫酸では酸洗減量がほとんどなくなる
ことも見いだした。
は、酸化物層をコランダム型酸化物あるいはスピネル
型酸化物のどちらか一方の酸化物を主体とするか、表
面組織を熱延焼鈍板の酸洗時に多量にしかも均一に溶解
する、のが効果的である。また、本発明者らは、フェラ
イト系ステンレス鋼に耐食性向上の目的で添加されてい
るNbが、焼鈍時に酸化物層と地鉄との界面に濃化し、酸
洗性を劣化させ、表面模様の発生原因となっているこ
と、およびNbと同様の目的で添加されているMoが、焼鈍
時に酸化物層と地鉄との界面に濃化することはないが、
硝弗混酸による酸洗時に反応面積を著しく減少させ、酸
洗性を劣化させ、表面模様の発生原因となっていること
を見いだした。また、Nb、Moを含有するフェライト系ス
テンレス鋼板は、硫酸では酸洗減量がほとんどなくなる
ことも見いだした。
【0011】そこで、本発明者らは、Nb、Moを含有する
フェライト系ステンレス熱延板の表面模様をなくすため
に、前記を選択し、さらに酸洗条件について検討し
た。その結果、熱延板の地鉄相当成分および表層酸化物
の不均一組織を短時間でかつ均一に溶解するためには、
硫酸または硝弗酸溶液で酸洗したのち、硝酸濃度を低く
設定し、さらに金属イオンと錯体を形成していない弗酸
(以下、フリー弗酸という)濃度を高くした、特定範囲
濃度の硝弗酸溶液を用いて酸洗を行う、2段酸洗とする
のが有効であるという知見を得た。
フェライト系ステンレス熱延板の表面模様をなくすため
に、前記を選択し、さらに酸洗条件について検討し
た。その結果、熱延板の地鉄相当成分および表層酸化物
の不均一組織を短時間でかつ均一に溶解するためには、
硫酸または硝弗酸溶液で酸洗したのち、硝酸濃度を低く
設定し、さらに金属イオンと錯体を形成していない弗酸
(以下、フリー弗酸という)濃度を高くした、特定範囲
濃度の硝弗酸溶液を用いて酸洗を行う、2段酸洗とする
のが有効であるという知見を得た。
【0012】また、鋼板を硝弗酸溶液中で酸洗すると、
浸漬電位の関係から、鋼板表面にスマット(金属化合物
の1種)が大量に付着する。フェライト系ステンレス鋼
板の硫酸中でのスマットは、ブラッシング等で比較的容
易に除去できるが、硝弗酸溶液中でのスマットは、ブラ
ッシングでは除去できない。このため、硝弗酸溶液中で
酸洗すると、スマットが表面に残存し、黒色の鋼板とな
る。そこで、本発明者らは、さらに、Nb、Mo含有量、酸
洗溶解量、スマットの付着と硝弗酸濃度との関係につい
て、検討した結果、硝弗酸溶液を特定範囲の濃度として
酸洗を行うと、スマットが付着することなく、かつ溶解
量も低減することなく酸洗が可能であるという知見を得
た。
浸漬電位の関係から、鋼板表面にスマット(金属化合物
の1種)が大量に付着する。フェライト系ステンレス鋼
板の硫酸中でのスマットは、ブラッシング等で比較的容
易に除去できるが、硝弗酸溶液中でのスマットは、ブラ
ッシングでは除去できない。このため、硝弗酸溶液中で
酸洗すると、スマットが表面に残存し、黒色の鋼板とな
る。そこで、本発明者らは、さらに、Nb、Mo含有量、酸
洗溶解量、スマットの付着と硝弗酸濃度との関係につい
て、検討した結果、硝弗酸溶液を特定範囲の濃度として
酸洗を行うと、スマットが付着することなく、かつ溶解
量も低減することなく酸洗が可能であるという知見を得
た。
【0013】本発明は、上記した知見に基づいてさらに
検討を加え構成されたものである。すなわち、本発明
は、Cr:15wt%以上を含有するフェライト系ステンレス
鋼素材を熱間圧延により熱延板とし、さらに該熱延板
に、熱延板焼鈍を施したのち、酸洗による脱スケール処
理を施し、あるいはさらに冷間圧延、焼鈍および酸洗を
施すフェライト系ステンレス鋼板の製造方法において、
前記脱スケール処理が、硫酸または硝弗酸溶液で酸洗す
る粗酸洗を行ったのち、硝酸濃度C(g/l )と金属イオ
ンと錯体を形成していない弗酸濃度D(g/l )が、鋼板
中のMo含有量A(wt%)、Nb含有量B(wt%)の合計量
(A+B)に応じ、(A+B)が3.0 wt%以下の場合に
は、次(1)および(2)式 max{20,(100-54.4×(A+B))}≦C≦130.3-26.8×(A+B) ……(1) 81+56.2×(A+B) ≦D≦ min{300,(122+118×(A+B))} ……(2) (A+B)が3.0 wt%超の場合には、次(3)および
(4)式 20≦C≦ 50 ……(3) 250 ≦D≦ 300 ……(4) (ここに、A:鋼板中のMo含有量(wt%)、B:鋼板中
のNb含有量(wt%)、C:硝弗酸溶液中の硝酸濃度(g/
l )、D:硝弗酸溶液中の弗酸濃度(g/l ))を満足す
る硝弗酸溶液で酸洗する仕上げ酸洗を行うことを特徴と
する表面性状の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製
造方法である。
検討を加え構成されたものである。すなわち、本発明
は、Cr:15wt%以上を含有するフェライト系ステンレス
鋼素材を熱間圧延により熱延板とし、さらに該熱延板
に、熱延板焼鈍を施したのち、酸洗による脱スケール処
理を施し、あるいはさらに冷間圧延、焼鈍および酸洗を
施すフェライト系ステンレス鋼板の製造方法において、
前記脱スケール処理が、硫酸または硝弗酸溶液で酸洗す
る粗酸洗を行ったのち、硝酸濃度C(g/l )と金属イオ
ンと錯体を形成していない弗酸濃度D(g/l )が、鋼板
中のMo含有量A(wt%)、Nb含有量B(wt%)の合計量
(A+B)に応じ、(A+B)が3.0 wt%以下の場合に
は、次(1)および(2)式 max{20,(100-54.4×(A+B))}≦C≦130.3-26.8×(A+B) ……(1) 81+56.2×(A+B) ≦D≦ min{300,(122+118×(A+B))} ……(2) (A+B)が3.0 wt%超の場合には、次(3)および
(4)式 20≦C≦ 50 ……(3) 250 ≦D≦ 300 ……(4) (ここに、A:鋼板中のMo含有量(wt%)、B:鋼板中
のNb含有量(wt%)、C:硝弗酸溶液中の硝酸濃度(g/
l )、D:硝弗酸溶液中の弗酸濃度(g/l ))を満足す
る硝弗酸溶液で酸洗する仕上げ酸洗を行うことを特徴と
する表面性状の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製
造方法である。
【0014】また、本発明では、前記粗酸洗を、硝酸濃
度20〜100g/l、金属イオンと錯体を形成していない弗酸
濃度100 〜300g/lである硝弗酸溶液による酸洗とするの
が好ましく、また、本発明では、前記仕上げ酸洗が、鋼
板に、鋼板との相対速度が0.5 〜5.0m/sの範囲となる硝
弗酸溶液の対向流をかけながら行うのが好ましい。ま
た、本発明では、前記仕上げ酸洗に用いる硝弗酸溶液
が、前記硝酸、弗酸に加え、さらに過酸化水素5 〜50g/
l を添加したものとするのが好ましい。
度20〜100g/l、金属イオンと錯体を形成していない弗酸
濃度100 〜300g/lである硝弗酸溶液による酸洗とするの
が好ましく、また、本発明では、前記仕上げ酸洗が、鋼
板に、鋼板との相対速度が0.5 〜5.0m/sの範囲となる硝
弗酸溶液の対向流をかけながら行うのが好ましい。ま
た、本発明では、前記仕上げ酸洗に用いる硝弗酸溶液
が、前記硝酸、弗酸に加え、さらに過酸化水素5 〜50g/
l を添加したものとするのが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明が対象とする鋼は、Cr:15
wt%以上を含有するフェライト系ステンレス鋼であり、
JIS 規格に規定されているSUS 430LX 、SUS 430J1L、SU
S 434 、SUS436L、SUS 436J1L、SUS 444 、SUS 447J1
、SUS XM27等が含まれる。具体的には、本発明が対象
とする鋼は、Crを15wt%以上含有し、さらにC:0.2 %
以下、Si:1.5 %以下、Mn:1.00%以下を含み、Mo:0.
1 〜3.0 %、Nb:0.1 〜3.0 %の1種または2種を含有
し、残部Feおよび不可避的不純物とするのが好ましい。
不可避的不純物としては、Ni:1.0 %以下、N:0.025
%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下が許容でき
る。
wt%以上を含有するフェライト系ステンレス鋼であり、
JIS 規格に規定されているSUS 430LX 、SUS 430J1L、SU
S 434 、SUS436L、SUS 436J1L、SUS 444 、SUS 447J1
、SUS XM27等が含まれる。具体的には、本発明が対象
とする鋼は、Crを15wt%以上含有し、さらにC:0.2 %
以下、Si:1.5 %以下、Mn:1.00%以下を含み、Mo:0.
1 〜3.0 %、Nb:0.1 〜3.0 %の1種または2種を含有
し、残部Feおよび不可避的不純物とするのが好ましい。
不可避的不純物としては、Ni:1.0 %以下、N:0.025
%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下が許容でき
る。
【0016】上記した範囲の組成のCr:15wt%以上を含
有するフェライト系ステンレス鋼溶鋼を転炉、電気炉等
通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊
−分塊法で所定の寸法の鋼素材(スラブ)とするのが望
ましい。Cr:15wt%以上を含有するフェライト系ステン
レス鋼素材を加熱し熱間圧延により熱延板とし、さらに
該熱延板に、熱延板焼鈍を施したのち、酸洗による脱ス
ケール処理を施す。
有するフェライト系ステンレス鋼溶鋼を転炉、電気炉等
通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊
−分塊法で所定の寸法の鋼素材(スラブ)とするのが望
ましい。Cr:15wt%以上を含有するフェライト系ステン
レス鋼素材を加熱し熱間圧延により熱延板とし、さらに
該熱延板に、熱延板焼鈍を施したのち、酸洗による脱ス
ケール処理を施す。
【0017】熱間圧延の加熱温度は、とくに限定する必
要はなく、熱間圧延が可能である加熱温度でよい。な
お、好ましくは、1100〜1200℃である。また、熱延板の
焼鈍温度、時間、熱延板の板厚等もとくに限定するもの
ではなく、用途により適宜決定すればよい。なお、焼鈍
温度は800 〜1100℃とするのが好ましい。
要はなく、熱間圧延が可能である加熱温度でよい。な
お、好ましくは、1100〜1200℃である。また、熱延板の
焼鈍温度、時間、熱延板の板厚等もとくに限定するもの
ではなく、用途により適宜決定すればよい。なお、焼鈍
温度は800 〜1100℃とするのが好ましい。
【0018】熱延焼鈍板の脱スケール処理は、粗酸洗お
よび仕上げ酸洗からなる2段酸洗処理とする。なお、こ
の酸洗による脱スケール処理の前処理として、ショット
ブラスト、ベンディング等のメカニカルデスケーリング
を施してもなんら問題はない。第1段の粗酸洗は、硫酸
または硝弗酸溶液に浸漬する酸洗とする。硫酸溶液の硫
酸濃度は、150 〜250g/lとするのが好ましい。しかし、
Nb、Moが鋼板中に含有されると、硫酸溶液による酸洗で
は、スケールの溶解はほとんどなくなる。このため、よ
り高速に処理するには、硝弗酸溶液を用いるのが好まし
い。硝弗酸溶液の濃度は、硝酸:20〜100g/l、フリー弗
酸:100 〜300g/lとするのが望ましい。なお、フリー弗
酸とは、金属イオンと錯体を形成していないフリーの弗
酸をいう。上記した濃度の硝弗酸溶液を用いて酸洗する
ことにより、高速処理が可能となる。一般の酸洗であ
る、硫酸200g/lの硫酸溶液(温度:80℃)あるいは硝
酸:100g/lと弗酸:30g/l の硝弗酸溶液(温度:50℃)
による酸洗では、溶解速度が遅く、高速脱スケールを達
成できない。
よび仕上げ酸洗からなる2段酸洗処理とする。なお、こ
の酸洗による脱スケール処理の前処理として、ショット
ブラスト、ベンディング等のメカニカルデスケーリング
を施してもなんら問題はない。第1段の粗酸洗は、硫酸
または硝弗酸溶液に浸漬する酸洗とする。硫酸溶液の硫
酸濃度は、150 〜250g/lとするのが好ましい。しかし、
Nb、Moが鋼板中に含有されると、硫酸溶液による酸洗で
は、スケールの溶解はほとんどなくなる。このため、よ
り高速に処理するには、硝弗酸溶液を用いるのが好まし
い。硝弗酸溶液の濃度は、硝酸:20〜100g/l、フリー弗
酸:100 〜300g/lとするのが望ましい。なお、フリー弗
酸とは、金属イオンと錯体を形成していないフリーの弗
酸をいう。上記した濃度の硝弗酸溶液を用いて酸洗する
ことにより、高速処理が可能となる。一般の酸洗であ
る、硫酸200g/lの硫酸溶液(温度:80℃)あるいは硝
酸:100g/lと弗酸:30g/l の硝弗酸溶液(温度:50℃)
による酸洗では、溶解速度が遅く、高速脱スケールを達
成できない。
【0019】硝弗酸溶液中の硝酸濃度が20g/l 未満で
は、溶液中の水素イオン濃度が少なくなり溶解量が減少
する。表層部の低Cr領域は、硝酸、弗酸の濃度がいずれ
も高いほど溶解量が増加する。一方、硝酸濃度が100g/l
を超えると、高Crの地鉄部分の溶解速度が減少する。硝
弗酸溶液中のフリー弗酸濃度が100g/l未満では、地鉄部
分の溶解は殆どなく、一方、300g/lを超えるとイオンの
拡散、電離が妨げられかえって溶解量が減少する。
は、溶液中の水素イオン濃度が少なくなり溶解量が減少
する。表層部の低Cr領域は、硝酸、弗酸の濃度がいずれ
も高いほど溶解量が増加する。一方、硝酸濃度が100g/l
を超えると、高Crの地鉄部分の溶解速度が減少する。硝
弗酸溶液中のフリー弗酸濃度が100g/l未満では、地鉄部
分の溶解は殆どなく、一方、300g/lを超えるとイオンの
拡散、電離が妨げられかえって溶解量が減少する。
【0020】このようなことから、粗酸洗は、硫酸:15
0 〜250g/lの硫酸溶液、とくに高速に処理する酸洗で
は、硝酸:20〜100g/l、フリー弗酸:100 〜300g/lの硝
弗酸溶液中に浸漬して行うのが好ましい。より好ましく
は、硝酸濃度が40〜75g/l 、フリー弗酸濃度が150 〜22
0g/lの硝弗酸溶液中での浸漬である。仕上げ酸洗は、硝
酸濃度C(g/l )とフリー弗酸濃度D(g/l )が、鋼板
中のMo含有量A(wt%)、Nb含有量B(wt%)の合計量
(A+B)に応じ、(A+B)が3.0 wt%以下の場合に
は、次(1)および(2)式 max{20,(100-54.4×(A+B))}≦C≦130.3-26.8×(A+B) ……(1) 81+56.2×(A+B) ≦D≦ min{300,(122+118×(A+B))} ……(2) (A+B)が3.0 wt%超の場合には、次(3)および
(4)式 20≦C≦ 50 ……(3) 250 ≦D≦ 300 ……(4) (ここに、A:鋼板中のMo含有量(wt%)、B:鋼板中
のNb含有量(wt%)、C:硝弗酸溶液中の硝酸濃度(g/
l )、D:硝弗酸溶液中のフリー弗酸濃度(g/l))を
満足する硝弗酸溶液で酸洗する。
0 〜250g/lの硫酸溶液、とくに高速に処理する酸洗で
は、硝酸:20〜100g/l、フリー弗酸:100 〜300g/lの硝
弗酸溶液中に浸漬して行うのが好ましい。より好ましく
は、硝酸濃度が40〜75g/l 、フリー弗酸濃度が150 〜22
0g/lの硝弗酸溶液中での浸漬である。仕上げ酸洗は、硝
酸濃度C(g/l )とフリー弗酸濃度D(g/l )が、鋼板
中のMo含有量A(wt%)、Nb含有量B(wt%)の合計量
(A+B)に応じ、(A+B)が3.0 wt%以下の場合に
は、次(1)および(2)式 max{20,(100-54.4×(A+B))}≦C≦130.3-26.8×(A+B) ……(1) 81+56.2×(A+B) ≦D≦ min{300,(122+118×(A+B))} ……(2) (A+B)が3.0 wt%超の場合には、次(3)および
(4)式 20≦C≦ 50 ……(3) 250 ≦D≦ 300 ……(4) (ここに、A:鋼板中のMo含有量(wt%)、B:鋼板中
のNb含有量(wt%)、C:硝弗酸溶液中の硝酸濃度(g/
l )、D:硝弗酸溶液中のフリー弗酸濃度(g/l))を
満足する硝弗酸溶液で酸洗する。
【0021】仕上げ酸洗に用いる硝弗酸溶液の硝酸濃度
Cと、フリー弗酸濃度Dと、鋼板中のMoとNb含有量の合
計量(A+B)との関係を図1(a)、(b)に示す。
なお、本発明の仕上げ酸洗に用いる硝弗酸溶液の濃度
範囲は、図1(a)、(b)に示す斜線部である。本発
明では、max {a,b}は、aとbのどちらか大きい方
の値をとることを意味する。また、min {a,b}は、
aとbのどちらか小さい方の値をとることを意味する。
max {20,(100-54.4×(A+B))}では、20と(100-54.4 ×
(A+B))のどちらか大きい方の値をとることを意味し、図
1(a)の下側の実線となる。また、min {300,(122+1
18×(A+B))}は、300 と(122+118×(A+B))のどちらか小
さい方の値をとることを意味し、図1(b)の上側の実
線となる。
Cと、フリー弗酸濃度Dと、鋼板中のMoとNb含有量の合
計量(A+B)との関係を図1(a)、(b)に示す。
なお、本発明の仕上げ酸洗に用いる硝弗酸溶液の濃度
範囲は、図1(a)、(b)に示す斜線部である。本発
明では、max {a,b}は、aとbのどちらか大きい方
の値をとることを意味する。また、min {a,b}は、
aとbのどちらか小さい方の値をとることを意味する。
max {20,(100-54.4×(A+B))}では、20と(100-54.4 ×
(A+B))のどちらか大きい方の値をとることを意味し、図
1(a)の下側の実線となる。また、min {300,(122+1
18×(A+B))}は、300 と(122+118×(A+B))のどちらか小
さい方の値をとることを意味し、図1(b)の上側の実
線となる。
【0022】まず、硝弗酸溶液の硝酸濃度C、フリー弗
酸濃度Dの限定理由について説明する。鋼板中のMoとNb
含有量の合計量(A+B)が3.0 wt%以下の場合は、次
(1)および(2)式 max{20,(100-54.4×(A+B))}≦C≦130.3-26.8×(A+B) ……(1) 81+56.2×(A+B) ≦D≦ min{300,(122+118×(A+B))} ……(2) を満足する濃度とする。なお、(A+B)が3.0 wt%以
下の場合には、Mo、Nbのうちの一方が含有されない場合
も含まれることは言うまでもない。
酸濃度Dの限定理由について説明する。鋼板中のMoとNb
含有量の合計量(A+B)が3.0 wt%以下の場合は、次
(1)および(2)式 max{20,(100-54.4×(A+B))}≦C≦130.3-26.8×(A+B) ……(1) 81+56.2×(A+B) ≦D≦ min{300,(122+118×(A+B))} ……(2) を満足する濃度とする。なお、(A+B)が3.0 wt%以
下の場合には、Mo、Nbのうちの一方が含有されない場合
も含まれることは言うまでもない。
【0023】硝弗酸溶液の硝酸濃度が、20g/l 未満で
は、水素イオンが不足し溶解が進行しない。また、(100
-54.4 ×(A+B)) g/l未満では、鉄イオンが3価のイオン
に酸化されず、スマットの発生が著しくなり、製品板の
仕上がりが黒色を帯びる。一方、硝酸濃度が(130.3-26.
8 ×(A+B))g/l を超えると、硝酸イオンにより鋼板表面
が不動態化しやすくなり、反応面積が減少し溶解量が著
しく減少する。このため、高速脱スケール処理が困難と
なるうえ、粗酸洗により付着したスマットが溶解しきれ
ず、製品鋼板の色調が黒く、模様が発生する。このよう
なことから、硝酸濃度Cは、(A+B)が3.0 wt%以下
の場合には、 max{20,(100-54.4×(A+B))}g/l 以上、
(130.3-26.8 ×(A+B))g/l 以下に限定した。
は、水素イオンが不足し溶解が進行しない。また、(100
-54.4 ×(A+B)) g/l未満では、鉄イオンが3価のイオン
に酸化されず、スマットの発生が著しくなり、製品板の
仕上がりが黒色を帯びる。一方、硝酸濃度が(130.3-26.
8 ×(A+B))g/l を超えると、硝酸イオンにより鋼板表面
が不動態化しやすくなり、反応面積が減少し溶解量が著
しく減少する。このため、高速脱スケール処理が困難と
なるうえ、粗酸洗により付着したスマットが溶解しきれ
ず、製品鋼板の色調が黒く、模様が発生する。このよう
なことから、硝酸濃度Cは、(A+B)が3.0 wt%以下
の場合には、 max{20,(100-54.4×(A+B))}g/l 以上、
(130.3-26.8 ×(A+B))g/l 以下に限定した。
【0024】硝弗酸溶液のフリー弗酸濃度が、(81+56.2
×(A+B))g/l 未満では、溶解速度が不十分であり、模様
や溶解残りが発生し、高速脱スケール処理が困難とな
る。また、フリー弗酸濃度が(122+118×(A+B))g/l を超
えると、フッ素イオンと鉄との反応が激しくなり、スマ
ット生成要因の1つとなり鋼板表面に反応生成物が付着
する。また、フリー弗酸濃度が300g/lを超えると、溶解
促進効果は飽和する。このようなことから、硝弗酸溶液
のフリー弗酸濃度は(81+56.2×(A+B))g/l 以上、min
{300,(122+188×(A+B))}g/l 以下に限定した。
×(A+B))g/l 未満では、溶解速度が不十分であり、模様
や溶解残りが発生し、高速脱スケール処理が困難とな
る。また、フリー弗酸濃度が(122+118×(A+B))g/l を超
えると、フッ素イオンと鉄との反応が激しくなり、スマ
ット生成要因の1つとなり鋼板表面に反応生成物が付着
する。また、フリー弗酸濃度が300g/lを超えると、溶解
促進効果は飽和する。このようなことから、硝弗酸溶液
のフリー弗酸濃度は(81+56.2×(A+B))g/l 以上、min
{300,(122+188×(A+B))}g/l 以下に限定した。
【0025】鋼板中のMoとNb含有量の合計量(A+B)
が3.0 wt%超の場合には、次(3)および(4)式 20≦C≦ 50 ……(3) 250 ≦D≦ 300 ……(4) を満足する濃度とする。
が3.0 wt%超の場合には、次(3)および(4)式 20≦C≦ 50 ……(3) 250 ≦D≦ 300 ……(4) を満足する濃度とする。
【0026】(A+B)が3.0 wt%を超えると、Mo、Nb
の含有量に依存しない一定の濃度範囲とする。硝弗酸溶
液の硝酸濃度が、20g/l 未満では、水素イオンが不足し
溶解が進行しない。一方、50g/l を超えると、硝酸イオ
ンにより鋼板表面が不動態化しやすくなり、反応面積が
減少し溶解量が著しく減少する。このため、高速脱スケ
ール処理が困難となるうえ、粗酸洗により付着したスマ
ットが溶解しきれず、製品鋼板の色調が黒く、模様が発
生する。このようなことから、硝酸濃度Cは、(A+
B)が3.0 wt%を超えると、20〜50g/l の範囲に限定し
た。
の含有量に依存しない一定の濃度範囲とする。硝弗酸溶
液の硝酸濃度が、20g/l 未満では、水素イオンが不足し
溶解が進行しない。一方、50g/l を超えると、硝酸イオ
ンにより鋼板表面が不動態化しやすくなり、反応面積が
減少し溶解量が著しく減少する。このため、高速脱スケ
ール処理が困難となるうえ、粗酸洗により付着したスマ
ットが溶解しきれず、製品鋼板の色調が黒く、模様が発
生する。このようなことから、硝酸濃度Cは、(A+
B)が3.0 wt%を超えると、20〜50g/l の範囲に限定し
た。
【0027】硝弗酸溶液のフリー弗酸濃度が、250g/l未
満では、溶解速度が不十分であり、模様や溶解残りが発
生し、高速脱スケール処理が困難となる。また、フリー
弗酸濃度が300g/lを超えると、溶解促進効果は飽和す
る。このようなことから、フリー弗酸濃度Dは、250 〜
300g/lの範囲に限定した。なお、本発明の仕上げ酸洗に
用いる硝弗酸溶液の温度は、とくに限定しないが、低す
ぎると溶解反応が進行せず、また高すぎるとNOX 等のガ
ス発生が激しくなる。好ましくは55〜70℃である。
満では、溶解速度が不十分であり、模様や溶解残りが発
生し、高速脱スケール処理が困難となる。また、フリー
弗酸濃度が300g/lを超えると、溶解促進効果は飽和す
る。このようなことから、フリー弗酸濃度Dは、250 〜
300g/lの範囲に限定した。なお、本発明の仕上げ酸洗に
用いる硝弗酸溶液の温度は、とくに限定しないが、低す
ぎると溶解反応が進行せず、また高すぎるとNOX 等のガ
ス発生が激しくなる。好ましくは55〜70℃である。
【0028】さらに、仕上げ酸洗においては、硝弗酸溶
液中に過酸化水素を添加するのが好ましい。硝弗酸溶液
中に過酸化水素を添加することにより、鉄イオンを、沈
殿を作りにくいFe2+イオンとすることができ、スマット
の鋼板への吸着を防止することができる。これにより、
模様やスケール残りのない酸洗をより高速で行うことが
できる。添加する過酸化水素の量は、5 〜50g/l とする
のが好ましい。添加量が5g/l未満では、期待される効果
が少なく、一方、50g/l を超えると、鋼板表面の不動態
皮膜が強固になり、溶解が進まなくなる。なお、過酸化
水素の添加方法はとくに限定しないが、市販の水溶液を
添加するのが工程上好ましい。
液中に過酸化水素を添加するのが好ましい。硝弗酸溶液
中に過酸化水素を添加することにより、鉄イオンを、沈
殿を作りにくいFe2+イオンとすることができ、スマット
の鋼板への吸着を防止することができる。これにより、
模様やスケール残りのない酸洗をより高速で行うことが
できる。添加する過酸化水素の量は、5 〜50g/l とする
のが好ましい。添加量が5g/l未満では、期待される効果
が少なく、一方、50g/l を超えると、鋼板表面の不動態
皮膜が強固になり、溶解が進まなくなる。なお、過酸化
水素の添加方法はとくに限定しないが、市販の水溶液を
添加するのが工程上好ましい。
【0029】また、本発明では、仕上げ酸洗は、鋼板
に、鋼板との相対速度が0.5 〜5.0m/sの範囲となる硝弗
酸溶液の対向流をかけながら行うのが好ましい。鋼板に
対し、硝弗酸溶液の対向流をかけることにより、溶解反
応の律速である、フッ素イオン、水素イオンの拡散およ
びFe2+イオンの地鉄表面からの拡散を促進でき、溶解反
応を助長できる。対向流の流速は、0.5m/s未満では、対
向流による溶解反応の助長効果が認められない。一方、
5.0m/sを超える対向流を誘起させるためには、大きな設
備を必要とし、経済的に不利となる。このようなことか
ら、対向流の流速は0.5 〜5.0m/sの範囲に限定するのが
好ましい。なお、対向流の流速が2.0m/sを超えると、対
向流による溶解反応の助長効果が飽和するため、より好
ましくは、0.5 〜2.0m/sの範囲である。
に、鋼板との相対速度が0.5 〜5.0m/sの範囲となる硝弗
酸溶液の対向流をかけながら行うのが好ましい。鋼板に
対し、硝弗酸溶液の対向流をかけることにより、溶解反
応の律速である、フッ素イオン、水素イオンの拡散およ
びFe2+イオンの地鉄表面からの拡散を促進でき、溶解反
応を助長できる。対向流の流速は、0.5m/s未満では、対
向流による溶解反応の助長効果が認められない。一方、
5.0m/sを超える対向流を誘起させるためには、大きな設
備を必要とし、経済的に不利となる。このようなことか
ら、対向流の流速は0.5 〜5.0m/sの範囲に限定するのが
好ましい。なお、対向流の流速が2.0m/sを超えると、対
向流による溶解反応の助長効果が飽和するため、より好
ましくは、0.5 〜2.0m/sの範囲である。
【0030】上記した2段酸洗を施された熱延焼鈍(酸
洗)板は、好ましくは調質圧延を施されて製品とされ
る。あるいは、これら熱延焼鈍(酸洗)板は、さらに冷
間圧延、仕上げ焼鈍、酸洗の工程を経て、冷延焼鈍(酸
洗)板とされ、好ましくは、調質圧延を施され製品板と
される。この冷間圧延焼鈍工程は、フェライト系ステン
レス鋼冷延板の通常公知の条件でとくに問題はない。な
お、本発明は、Nbおよび/またはMoを含有するフェライ
ト系ステンレス鋼板の製造に適した酸洗条件を示してい
るが、Nb,Moを含有しないステンレス鋼板の酸洗に適用
しても有効であることは言うまでもない。
洗)板は、好ましくは調質圧延を施されて製品とされ
る。あるいは、これら熱延焼鈍(酸洗)板は、さらに冷
間圧延、仕上げ焼鈍、酸洗の工程を経て、冷延焼鈍(酸
洗)板とされ、好ましくは、調質圧延を施され製品板と
される。この冷間圧延焼鈍工程は、フェライト系ステン
レス鋼冷延板の通常公知の条件でとくに問題はない。な
お、本発明は、Nbおよび/またはMoを含有するフェライ
ト系ステンレス鋼板の製造に適した酸洗条件を示してい
るが、Nb,Moを含有しないステンレス鋼板の酸洗に適用
しても有効であることは言うまでもない。
【0031】
【実施例】表1に示す組成のフェライト系ステンレス鋼
を高周波真空溶解炉で溶製し、小型鋼塊(100kg )とし
た。これら鋼塊から試験片を切出し、1150℃に加熱し、
熱間圧延により板厚4.0mm の熱延板とした。これら熱延
板に、熱延板焼鈍(1150℃×30sec )を施し、表2に示
す条件で粗酸洗を行ったのち、表2に示す条件で仕上げ
酸洗を行い、ついで、5%の調質圧延を行った。一部の
仕上げ酸洗においては、鋼板に、表2に示す流速の対向
流を与えて酸洗した。また、一部の仕上げ酸洗において
は、仕上げ酸洗液に過酸化水素を添加した。なお、硝弗
酸溶液中の硝酸濃度、フリー弗酸濃度の分析は、特開平
7-294509号公報に記載された方法、すなわち、鉄とアセ
チルアセトンによって形成される錯体の色が弗酸分が多
いほど薄くなることを利用し、その色を吸光光度計によ
り測定する方法、で行った。具体的には、試料溶液50μ
lに硝酸鉄溶液、アセチルアセトンを加え、吸光度を測
定した。
を高周波真空溶解炉で溶製し、小型鋼塊(100kg )とし
た。これら鋼塊から試験片を切出し、1150℃に加熱し、
熱間圧延により板厚4.0mm の熱延板とした。これら熱延
板に、熱延板焼鈍(1150℃×30sec )を施し、表2に示
す条件で粗酸洗を行ったのち、表2に示す条件で仕上げ
酸洗を行い、ついで、5%の調質圧延を行った。一部の
仕上げ酸洗においては、鋼板に、表2に示す流速の対向
流を与えて酸洗した。また、一部の仕上げ酸洗において
は、仕上げ酸洗液に過酸化水素を添加した。なお、硝弗
酸溶液中の硝酸濃度、フリー弗酸濃度の分析は、特開平
7-294509号公報に記載された方法、すなわち、鉄とアセ
チルアセトンによって形成される錯体の色が弗酸分が多
いほど薄くなることを利用し、その色を吸光光度計によ
り測定する方法、で行った。具体的には、試料溶液50μ
lに硝酸鉄溶液、アセチルアセトンを加え、吸光度を測
定した。
【0032】得られた鋼板について、光沢度と、スケー
ル残り等表面性状とを調査した。なお、光沢度の測定
は、JIS Z 8741の規定に準拠して、同一鋼板から採取し
た10枚のサンプルについて白部、黒部を各10箇所測定し
その平均値を求め、白部と黒部の平均光沢度の差を鋼板
の模様として評価した。表面性状は目視により評価し
た。
ル残り等表面性状とを調査した。なお、光沢度の測定
は、JIS Z 8741の規定に準拠して、同一鋼板から採取し
た10枚のサンプルについて白部、黒部を各10箇所測定し
その平均値を求め、白部と黒部の平均光沢度の差を鋼板
の模様として評価した。表面性状は目視により評価し
た。
【0033】調査結果を表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】本発明例は、短時間の酸洗で、光沢度の差
が30以下と小さくなり模様が解消され、しかもスケール
残り、スマット残りもなく、表面性状も良好である。ま
た、仕上げ酸洗時に鋼板に硝弗酸溶液の対向流を付与し
て酸洗することにより40sec以下と仕上げ酸洗時間をさ
らに短縮できる。これに対し本発明の範囲を外れる比較
例では、模様が解消されないか、模様が解消されても、
スケールやスマットが残り、さらに長い酸洗時間を要す
る。
が30以下と小さくなり模様が解消され、しかもスケール
残り、スマット残りもなく、表面性状も良好である。ま
た、仕上げ酸洗時に鋼板に硝弗酸溶液の対向流を付与し
て酸洗することにより40sec以下と仕上げ酸洗時間をさ
らに短縮できる。これに対し本発明の範囲を外れる比較
例では、模様が解消されないか、模様が解消されても、
スケールやスマットが残り、さらに長い酸洗時間を要す
る。
【0039】また、熱延焼鈍酸洗板(試験No.1、No.14
、No.24 、No.32 )に、さらに大径ロール(30mmφ胴
径) を用い、圧下率:50〜80%の冷間圧延を施し、板厚
0.8 〜1.0mm の冷延板とし、さらに仕上げ焼鈍( 980℃
×30sec )、酸洗(中性塩電解→硝酸電解)を施し、0.
3 %の調質圧延を施した。これら冷延焼鈍酸洗板につい
て熱延板と同様に、光沢度、表面状況を調査した。その
結果、いずれも光沢度の差も少なく模様もなく、表面性
状は良好であった。
、No.24 、No.32 )に、さらに大径ロール(30mmφ胴
径) を用い、圧下率:50〜80%の冷間圧延を施し、板厚
0.8 〜1.0mm の冷延板とし、さらに仕上げ焼鈍( 980℃
×30sec )、酸洗(中性塩電解→硝酸電解)を施し、0.
3 %の調質圧延を施した。これら冷延焼鈍酸洗板につい
て熱延板と同様に、光沢度、表面状況を調査した。その
結果、いずれも光沢度の差も少なく模様もなく、表面性
状は良好であった。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、生産性を低下すること
なく、表面の光沢度のムラがなく、表面模様のない意匠
性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を得ることがで
き、産業上格別の効果を奏する。
なく、表面の光沢度のムラがなく、表面模様のない意匠
性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を得ることがで
き、産業上格別の効果を奏する。
【図1】仕上げ酸洗溶液の硝酸濃度C、フリー弗酸濃度
DとMo含有量とNb含有量の合計量(A+B)との関係を
示す説明図である。
DとMo含有量とNb含有量の合計量(A+B)との関係を
示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宇城 工 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 佐藤 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 菊山 正剛 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 Fターム(参考) 4K053 PA05 PA12 PA13 QA01 QA03 RA13 RA16 RA17 TA02 TA03 TA04 TA16 TA24 YA23 ZA10
Claims (4)
- 【請求項1】 Cr:15wt%以上を含有するフェライト系
ステンレス鋼素材を熱間圧延により熱延板とし、さらに
該熱延板に、熱延板焼鈍を施したのち、酸洗による脱ス
ケール処理を施し、あるいはさらに冷間圧延、焼鈍およ
び酸洗を施すフェライト系ステンレス鋼板の製造方法に
おいて、前記脱スケール処理が、硫酸または硝弗酸溶液
で酸洗する粗酸洗を行ったのち、硝酸濃度C(g/l )と
金属イオンと錯体を形成していない弗酸濃度D(g/l )
が、鋼板中のMo含有量A(wt%)、Nb含有量B(wt%)
の合計量(A+B)に応じ、(A+B)が3.0 wt%以下
の場合には下記(1)および(2)式、(A+B)が3.
0 wt%超の場合には(3)および(4)式を満足する硝
弗酸溶液で酸洗する仕上げ酸洗を行うことを特徴とする
表面性状の優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方
法。 記 max{20,(100-54.4×(A+B))}≦C≦130.3-26.8×(A+B) ……(1) 81+56.2×(A+B) ≦D≦ min{300,(122+118×(A+B))} ……(2) 20≦C≦ 50 ……(3) 250 ≦D≦ 300 ……(4) - 【請求項2】 前記粗酸洗が、硝酸濃度20〜100g/l、金
属イオンと錯体を形成していない弗酸濃度100 〜300g/l
である硝弗酸溶液による酸洗であることを特徴とする請
求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方
法。 - 【請求項3】 前記仕上げ酸洗が、鋼板に、鋼板との相
対速度が0.5 〜5.0m/sの範囲となる硝弗酸溶液の対向流
をかけながら行うことを特徴とする請求項1または2に
記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 前記仕上げ酸洗に用いる硝弗酸溶液が、
前記硝酸、弗酸に加え、さらに過酸化水素5 〜50g/l を
添加したものであることを特徴とする請求項1ないし3
のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造
方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10240340A JP2000073192A (ja) | 1998-08-26 | 1998-08-26 | フェライト系ステンレス鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10240340A JP2000073192A (ja) | 1998-08-26 | 1998-08-26 | フェライト系ステンレス鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000073192A true JP2000073192A (ja) | 2000-03-07 |
Family
ID=17058039
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10240340A Pending JP2000073192A (ja) | 1998-08-26 | 1998-08-26 | フェライト系ステンレス鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2000073192A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100550291B1 (ko) * | 2001-11-13 | 2006-02-08 | 주식회사 포스코 | 고크롬 페라이트계 스테인레스 강판의 연속 소둔 산세 방법 |
JP2007154263A (ja) * | 2005-12-06 | 2007-06-21 | Nippon Yakin Kogyo Co Ltd | 表面品質に優れるステンレス鋼、Fe−Ni基合金およびNi基高合金の熱帯酸洗方法 |
KR101228730B1 (ko) | 2010-12-28 | 2013-02-01 | 주식회사 포스코 | 고크롬 페라이트계 스테인리스강 산세 방법 |
KR101239473B1 (ko) | 2011-08-01 | 2013-03-06 | 주식회사 포스코 | 산세액 및 스테인리스강의 산세방법 |
KR101621052B1 (ko) * | 2015-06-01 | 2016-05-13 | 주식회사 포스코 | 페라이트계 스테인리스강 및 그 제조방법 |
CN114045378A (zh) * | 2021-10-18 | 2022-02-15 | 山西太钢不锈钢股份有限公司 | 一种提升耐热钢表面洁净度的方法 |
-
1998
- 1998-08-26 JP JP10240340A patent/JP2000073192A/ja active Pending
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