JP3574806B2 - 硫酸に対する優れた耐食性を有する冷間圧延鋼板 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、硫酸に対する優れた耐食性を有する冷間圧延鋼板に関する。より具体的にいうと、本発明は、熱電発電装置の予熱器やボイラーの構成部品等のような硫酸にさらされる構成部品の材料として用いられる硫酸に対する優れた耐食性を有する冷間圧延鋼板に関する。
【0002】
一般に、多量の銅(Cu)が、耐硫酸性のある鋼の腐食が硫酸雰囲気下で弱められるように、硫酸耐食性のある鋼に添加されることが知られている。しかしながら、銅が他の添加物と比較して硫酸の腐食を弱めることにおいて優れているとはいえ、銅が過剰に添加されると、熱間圧延中に割れ(クラック)の発生等のような問題が生じる。
【0003】
特開平9−25536号公報は、上記の問題を解決することを目的とする耐酸腐食性のある鋼を開示している。この鋼は、重量%で、0.01〜0.15%の炭素、0.1〜0.5%のケイ素、0.1〜0.5%のマンガン、0.03%以下のリン、0.01%以下の硫黄、0.2〜1.0%の銅、0.5%以下のニッケル、2.0%以下のクロム、0.1%以下のアルミニウム、0.01〜1.0%のすず及び/またはアンチモン、0.005%以下のホウ素、0.2%以下のバナジウム、0.2%以下のニオブ、及び0.02%以下のチタンを含む。
【0004】
もう一つの例は、特開平10−110237号公報であり、これは、重量%で、0.01〜0.15%の炭素、0.1〜0.5%のケイ素、0.1〜0.5%のマンガン、0.03%以下のリン、0.005%以下の硫黄、0.2〜1.0%の銅、0.5%以下のニッケル、2.0%以下のクロム、0.1%以下のアルミニウム、0.2%以下のバナジウム、0.2%以下のニオブ、0.2%以下のチタン、0.01〜1.0%のすず及び/またはアンチモンから選択されたもの、0.001〜0.01%のホウ素、0.01〜0.5%モリブデン、及び残部は鉄と他の不可避不純物を含む。
【0005】
すなわち、上記の発明において、適量の銅が添加されると同時に、他の元素が複合的に添加される。このようにして、優れた耐酸腐食性が達成されることを目的としているが、低温、低硫酸濃度での腐食速度は依然高く、このことが問題となっている。
【0006】
このような問題を解決するために、本発明者等は繰り返し研究と実験を行い、その結果が本発明である。
従って、本発明の目的は、腐食速度が低温−低硫酸濃度で大幅に低減されるように、銅だけではなく適量のコバルトも添加されることを特徴とする優れた硫酸耐食性を有する冷間圧延鋼板を提供することにあり、それによって硫酸に対する優れた耐食性を有する冷間圧延鋼を提供する。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による優れた硫酸耐食性をもつ冷間圧延鋼板は、重量%で、0.15%以下の炭素、1.0%以下のケイ素、0.2〜1.5%のマンガン、0.03%以下の硫黄、0.03%以下のリン、0.01〜0.1%のアルミニウム、0.2〜1.0%の銅、0.02〜0.2%のコバルト、及び残部は鉄と他の不可避不純物を含む。
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明による優れた硫酸耐食性をもつ冷間圧延鋼板は、重量%で、0.15%以下の炭素、1.0%以下のケイ素、0.2〜1.5%のマンガン、0.03%以下の硫黄、0.03%以下のリン、0.01〜0.1%のアルミニウム、0.2〜1.0%の銅、0.02〜0.2%のコバルト、及び残部は鉄と他の不可避不純物を含む。
【0009】
炭素の含有量が0.15%を超える場合、溶接性は著しく低下し、欠陥が生じやすくなる。したがって、炭素の含有量は0.15%以下に制限されることが好ましい。
【0010】
ケイ素元素は、主として鋼の強度を高めるために添加されるが、その含有量が1.0%を超える場合、耐食性が低温−低硫酸濃度で大きく悪化する。したがって、ケイ素の含有量は1.0%以下に制限されることが好ましい。
【0011】
通常、マンガン元素は、硫化マンガンの状態で析出させて固溶した硫黄によって引き起こされる熱脆性を防止するために加えられる。本発明において、マンガンは熱脆性を防止するためだけではなく、鋼の強度を高めるためにも加えられる。
【0012】
本発明において、マンガンの含有量は0.2〜1.5%に制限されることが好ましい。その理由は以下の通りである。すなわち、マンガンの含有量が1.5%を超える場合、強度向上の効果が低下するだけではなく、硫酸耐食性もわずかに悪化する。一方、マンガンの含有量が0.2%より少ないと、熱脆性が生じやすい。
【0013】
本発明において、硫黄の含有量はできる限り低いことが好ましい。硫黄の含有量が0.03%を超える場合、熱間圧延脆性に起因して欠陥が生じやすくなり、それゆえ、その上限は0.03%に設定されることが好ましい。
【0014】
リンの含有量もまたできる限り低いことが好ましい。リンの含有量が0.03%を超える場合、耐食性は大きく低下し、それゆえその上限は0.03%とすることが好ましい。
【0015】
アルミニウム元素は、脱酸剤として添加される。その含有量が0.01%より少ない場合、脱酸効果が小さ過ぎ、また一方その含有量0.1%を超える場合、酸化アルミニウムの増加に起因して表面欠陥が生じやすくなる。したがって、アルミニウムの含有量は、0.01%〜0.1%に制限されることが好ましい。
【0016】
銅元素は、硫酸耐食性を高めるために添加される。しかしながら、その含有量が0.2%未満の場合に限り、その効果は著しく低下する。しかしながら、その含有量が1.0%を超える場合、添加量に対して付加的な効果が極わずかである。したがって、銅の含有量は0.2〜1.0%に制限されることが好ましい。
【0017】
コバルトの添加は、本発明の特有の特徴であり、コバルトは低温−低硫酸濃度での耐食性を大きく向上させる。
本発明において、コバルトの含有量は0.02〜0.2%に制限されることが好ましく、その理由は以下の通りである。すなわち、コバルトの含有量が0.02%より少ない場合、その添加の効果はほとんど認められず、また一方、その含有量が0.2%を超える場合、添加量の点から見て耐食性の向上は十分ではない。
経済性を考慮すると、コバルトの含有量は0.02〜0.15%に制限されることがさらに好ましい。
【0018】
さらに、本発明において、銅及びコバルトの含有量はそれぞれ制御されなければならなく、またCu/Coの原子比率も適切に制御されなければならなく、その結果、優れた耐食性を得ることができる。すなわち、Cu/Coの原子比率は、2.0以上に制限されることが好ましい。前記原子比率が2.0より小さい場合、鋼中の銅の溶出(エルーション:elution)が減少し、その結果として、耐食性が悪化する。
【0019】
一方、上記のように構成される鋼は、熱間圧延および冷間圧延され、その後、鋼を再結晶温度を超える温度で10秒間以上保持することによって、連続アニールあるいはバッチアニールが行われ、それによって、優れた耐食性を有する冷間圧延鋼板を得る。
【0020】
ここで、本発明を実施例に基づいて説明する。
(実施例)
以下の表1の組成を有する鋼インゴットが用意された。
次に、全てのインゴットが1250℃の温度で1時間保持され、その後熱間圧延が行われた。この条件の下で、熱間仕上圧延は1100℃で開始され、巻取り温度は650℃で、最終の厚さは4.5mmであった。
【0021】
次に、熱間圧延された試験片は、表面の酸化膜を除去するために酸洗いされ、その後、1.2mmの最終の厚さになるまで73%の冷間圧延が行われた。それから、脱脂及び連続アニールが行われた。この条件の下で、連続アニールは830℃の温度で30秒間行われた。
【0022】
次に、これらのアニールした試験片に関して、低温−低濃度の条件での硫酸耐食性が、次の方法で測定された。すなわち、試験片が50%の硫酸溶液に70℃の温度で1時間浸漬され、その後腐食損失が測定された。その測定結果を以下の表1に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003574806
【0024】
上記表1に示したように、銅だけでなく適量のコバルトが添加された本発明鋼(1〜7)の全ての場合において、低い腐食損失を示しており、それによって優れた硫酸耐食性であることが判った。特に、本発明鋼(1〜4)において、銅及びコバルトの含有量が適切であるだけでなく、Cu/Coの原子比率が2以上に制御されたので、これらの場合では、6.0mg/cm・hrより低いような、非常に低い腐食損失を示しており、それによって優れた硫酸耐食性であることが判った。
【0025】
一方、本発明の範囲から外れた化学組成の比較鋼(1〜5)の場合においては、表1に示したように、本発明鋼と比較して極めて高い腐食損失を示した。
【0026】
上記のように本発明により硫酸耐食性は著しく向上し、それによって、(露点腐食が生じる)熱電発電装置の予熱器、ボイラーのパイプ等における平均寿命を大きく向上させることができる。

Claims (2)

  1. 重量%で、0.15%以下の炭素、1.0%以下のケイ素、0.2〜1.5%のマンガン、0.03%以下の硫黄、0.03%以下のリン、0.01〜0.1%のアルミニウム、0.2〜1.0%の銅、0.02〜0.2%のコバルト、及び残部は鉄と他の不可避不純物からなる優れた硫酸耐食性を有する冷間圧延鋼板。
  2. 請求項1に記載された冷間圧延鋼板であって、そのCu/Coの原子比率が2.0以上に制御されていることを特徴とする冷間圧延鋼板。
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