JP2017164681A - 有機塩素化合物分解用触媒及び有機塩素化合物の無害化処理システム - Google Patents

有機塩素化合物分解用触媒及び有機塩素化合物の無害化処理システム Download PDF

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鉄太郎 古橋
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Koji Amano
耕治 天野
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Abstract

【課題】活性炭(担体)からパラジウム金属が剥離しにくく、かつ、PCB等の有機塩素化合物分解性が良好な有機塩素化合物分解用触媒、及び、それを用いた有機塩素化合物の無害化処理システムを提供する。【解決手段】活性炭からなる担体と、貴金属とから構成される、有機塩素化合物分解用触媒であって、活性炭に対する基準PCB(5塩化ビフェニル/3塩化ベンゼン=7/3)の吸着率が80%以上、かつ、JIS K 1474 7.6に準じて測定した活性炭の硬さが89以上であることを特徴とする有機塩素化合物分解用触媒であり、有機塩素化合物を分解処理する際に、前記の有機塩素化合物分解用触媒が用いられることを特徴とする有機塩素化合物の無害化処理システムである。【選択図】図1

Description

本発明は、PCB等の有機塩素化合物分解用触媒及びそれを用いた有機塩素化合物の無害化処理システムに関する。
各種PCBのなかでも、ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、人体を含む生体に極めて有害であることから、PCBを含有する絶縁油の入ったトランス等は、PCB特別措置法により、適正な管理・保管が義務付けられている。それらの絶縁油及びPCBで汚染された機器については、国や電力会社等により設けられた処理施設で順次無害化処理が実施されている。
それらの無害化処理方法のうち、活性炭にパラジウム金属を担持させた触媒を充填してなる触媒層にPCBを溶解させた溶液を流通させ、該触媒層にマイクロ波を照射し、溶液中のPCBを分解するオンサイト型マイクロ波抽出分解法(例えば、特許文献1〜5を参照)は、微量のPCB汚染機器の無害化処理に適用されており、無害化処理システムとして現在運転されている。
しかしながら、上記のマイクロ波抽出分解法によって処理する場合、触媒は、使用するに従い性能が劣化してくることから、適時、新品または再生触媒と交換している。再生触媒は、劣化触媒を焼成、精製、還元することによりパラジウムを回収し、回収したパラジウムを新たな活性炭に担持させて作製している(例えば、特許文献6を参照)。
そのため、触媒交換頻度が多いことが、処理コストを増加させる原因となっている。また、触媒に使用されているパラジウム金属は高価であるため、パラジウム金属回収率の向上が求められているものの、劣化触媒の焼成、精製、還元によるパラジウム金属の回収率は85〜90%程度である。また、触媒を使用するに従い、活性炭からのパラジウム金属剥離量が増加する傾向が認められることから、触媒の劣化原因及び再生時のパラジウム金属回収率が低い原因は、パラジウム金属が活性炭から剥離していることに起因すると考えられる。
特開2009−233654号公報 特開2009−183838号公報 特開2010−269283号公報 特開2010−274170号公報 特開2011−125795号公報 特開2009−255072号公報
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、活性炭(担体)からパラジウム金属が剥離しにくく、かつ、PCB等の有機塩素化合物分解性が良好な有機塩素化合物分解用触媒、及び、それを用いた有機塩素化合物の無害化処理システムを提供することを課題とする。
本発明は、パラジウム金属担持活性炭を触媒とする、マイクロ波照射による有機塩素化合物分解に関する種々の検討結果から得られた知見、すなわち、触媒担体はマイクロ波による加熱容易性の点から活性炭が好適であること、及び、本発明の目的に合致する活性炭の構造は、活性炭の硬さと、活性炭に対する有機塩素化合物の吸着率が特定の値になる、との知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)活性炭からなる担体と、貴金属とから構成される、有機塩素化合物分解用触媒であって、活性炭に対する基準PCB(5塩化ビフェニル/3塩化ベンゼン=7/3)の吸着率が80%以上、かつ、JIS K 1474 7.6に準じて測定した活性炭の硬さが89以上であることを特徴とする有機塩素化合物分解用触媒。
(2)活性炭の比表面積(窒素吸着法)が900m/g以上である前記(1)に記載の有機塩素化合物分解用触媒。
(3)活性炭が、粒状活性炭または球状活性炭である前記(1)または(2)に記載の有機塩素化合物分解用触媒。
(4)粒状活性炭および球状活性炭の粒子径が0.4〜5mmである前記(3)に記載の有機塩素化合物分解用触媒。
(5)活性炭原料が、石炭またはヤシ殻である前記(1)〜(4)いずれかに記載の有機塩素化合物分解用触媒。
(6)前記吸着率が83%以上、かつ、前記硬さが95%以上である前記(1)〜(5)いずれかに記載の有機塩素化合物分解用触媒。
(7)有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れた槽と、
前記(1)〜(6)いずれかに記載の有機塩素化合物分解用触媒を充填した触媒充填装置と液溜りをその内部に備えた触媒槽と、
前記触媒槽上部に設置されたマイクロ波発振装置と、
前記触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する循環系統と、
を有し、
前記触媒槽において、前記混合液を触媒充填装置に流通して前記循環系統により循環させ、有機塩素化合物分解用触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理を行うことを特徴とする有機塩素化合物の無害化処理システム。
(8)有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れた第1の槽と、
アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れた第2の槽と、
前記(1)〜(6)いずれかに記載の有機塩素化合物分解用触媒を充填した触媒充填装置と液溜りをその内部に備え、並列に設置された複数の触媒槽と、
前記触媒槽上部に設置されたマイクロ波発振装置と、
前記第1の槽と前記触媒槽との間をそれぞれ循環する第1の循環系統と、
前記の各触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する第2の循環系統と、
を有し、
各触媒槽において、第1の槽の混合液を触媒充填装置に流通して第1の循環系統により循環させ有機塩素化合物分解用触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理と、
第2の槽のイソプロピルアルコール溶液を触媒槽の触媒充填装置に供給し第2の循環系統により循環させ有機塩素化合物分解用触媒と接触させて分解処理で劣化した有機塩素化合物分解用触媒を再生する再生処理と
を、繰り返し行うことができ、
一の触媒槽において前記分解処理を行っている間、別の触媒槽において前記再生処理を行うことにより、有機塩素化合物を連続して分解することを特徴とする有機塩素化合物の無害化処理システム。
(9)前記第1の槽の混合液中の有機塩素化合物を分解するに際し、第1の循環系統により、第1の槽の有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液の一部を触媒槽に導入した後、第1の循環系統を停止し、前記第2の循環系統のみを作動させて有機塩素化合物の分解処理を行い、分解処理後の液をシステム外に排出した後、再び第1の循環系統により第1の槽の混合液を触媒槽に導入し、第2の循環系統のみを作動させて有機塩素化合物の分解処理を行う前記(8)に記載の無害化処理システム。
(10)前記分解処理を行った後、触媒槽に滞留する分解処理後の液を第1の槽に回収した後、前記触媒槽に第2の槽からイソプロピルアルコール溶液を流通して有機塩素化合物分解用触媒を再生する再生処理を行い、次いで触媒再生処理後の液をシステム外に排出した後、第1の槽の混合液を触媒槽に流通し、有機塩素化合物の分解処理を行う前記(8)または(9)に記載の無害化処理システム。
(11)前記分解処理を行った後、触媒槽に滞留する分解処理後の液をシステム外に排出した後、前記触媒槽に第2の槽からイソプロピルアルコール溶液を流通して有機塩素化合物分解用触媒を再生する再生処理を行い、次いで触媒再生処理後の液を第1の槽に回収するとともに、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油を第1の槽に供給して混合した後、該混合液を触媒槽に流通して有機塩素化合物の分解処理を行う前記(8)または(9)に記載の無害化処理システム。
請求項1に係る有機塩素化合物分解用触媒によれば、活性炭(担体)からパラジウム金属が剥離しにくく、触媒の性能劣化が低減されるため、触媒の使用日数を長くすることができるだけでなく、触媒再生時のパラジウム回収率の向上が図れるため、有機塩素化合物分解処理にともなう処理コストを大幅に削減することが可能となる。
請求項7に係る有機塩素化合物の無害化処理システムによれば、前記の有機塩素化合物分解用触媒を用いることにより、活性炭(担体)からパラジウム金属が剥離しにくく、触媒の性能劣化が低減されるため、長期間に亘り、安定した無害化処理を行うことが可能となる。
請求項8に係る有機塩素化合物の無害化処理システムによれば、劣化した触媒を触媒充填装置に入れたままの状態で再生する際にも、劣化した触媒の出し入れによって触媒が崩壊する恐れがないため触媒寿命が長くなるという利点も有する。
請求項9に係る発明によれば、2系統の循環系統を使用することができるので、有機塩素化合物の分解処理を効率的に実施することができる。
請求項10に係る発明によれば、触媒槽を循環する有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油中の有機塩素化合物が十分に分解されず所定の処理基準値まで低下しない状況で、触媒の活性低下が認められた場合に、触媒の再生処理を好適に実施することができる。
請求項11に係る発明によれば、触媒槽を循環する有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油中の有機塩素化合物が所定の処理基準値以下まで分解されている状況で、活性が低下した触媒の再生処理を好適に実施することができる。
マイクロ波分解装置の概略図である。 第1の循環系統ならびに第2の循環系統を有する無害化処理システムの構成例を示す概略図である。 触媒槽の構成例を示す概略図である。
本発明に係る有機塩素化合物分解用触媒は、活性炭からなる担体と、貴金属とから構成され、活性炭に対する基準PCB(5塩化ビフェニル/3塩化ベンゼン=7/3)の吸着率が80%以上、かつ、JIS K 1474 7.6に準じて測定した活性炭の硬さが89以上であることを特徴とするものである。
また、本発明において分解処理対象である有機塩素化合物としては、ポリ塩化ビフェニル(PCB)類;ダイオキシン類;2塩化ベンゼン、3塩化ベンゼン等の芳香族塩素化合物類;及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される有機塩素化合物が挙げられる。PCB類には、ダイオキシン類を含有するPCB類も含まれる。
PCB類の市販品としては、例えば、鐘淵化学(株)のKC−200(主成分:2塩化ビフェニル)、KC−300(主成分:3塩化ビフェニル)、KC−400(主成分:4塩化ビフェニル)、KC−500(主成分:5塩化ビフェニル)、KC−600(主成分:6塩化ビフェニル)、KC−1000(KC−500+3塩化ベンゼン)、KC−1300(KC−300+2塩化ベンゼン+4塩化ベンゼン)や、三菱モンサイト(株)のアロクロール1254(54% Chlorine)等を挙げることができる。
本発明の有機塩素化合物分解用触媒では、貴金属を担体させる活性炭は、活性炭に対する基準PCB(5塩化ビフェニル/3塩化ベンゼン=7/3)の吸着率が80%以上であることを要し、前記の吸着率は83%以上であることがより好ましい。基準PCBとしては、同様の組成を有する市販のPCB「KC−1000」を使用することができる。
ここで、上記の基準PCBの活性炭に対する吸着率を規定したのは、現在、分解処理を必要とする変圧器や絶縁油中に混入しているPCBはKC−1000が多く、当該PCBを標準PCBとすることにより、実用面での分解処理の効率化が図れるからである。
さらに、有機塩素化合物の中でもPCBは特に難分解性であり、PCBを分解することができる触媒であれば、ダイオキシン類、あるいは、2塩化ベンゼン、3塩化ベンゼン等の芳香族塩素化合物を分解できると考えられる。基準PCB吸着率が80%未満の場合には、触媒担体(活性炭)にPCBが吸着し難い状態となり、PCBと貴金属が接触し難くなるためにPCBの分解が進行し難くなる。
吸着率は、測定対象活性炭をクロマト管等のカラムに充填した後、該カラムに、基準PCBを所定量の溶媒に溶解させた溶液を入れ、コック等を用いて、滴下速度を調整しながら一定速度で溶液を流下させ、活性炭に基準PCBを吸着させた後、カラムを通過した溶液中の基準PCB量を測定することにより求めることができる。吸着率の測定は、常温、常圧下で行うのがよい。
また、溶媒としては、基準PCBを溶解可能な溶媒であれば、特に限定されるものではないが、本発明ではイソプロピルアルコールを使用するのが良い。その理由としては、後記する有機塩素化合物の無害化処理システムにおいて、有機塩素化合物を溶解させる溶媒として、イソプロピルアルコールを使用しているからである。
また、本発明の有機塩素化合物分解用触媒においては、貴金属を担体させる活性炭は、JIS K 1474 7.6に準じて測定した活性炭の硬さが89以上であることを要する。当該硬さは、値が大きいほど硬く、最大値は100である。前記の硬さは95以上であることがより好ましい。活性炭の硬さが89未満の場合には、触媒担体である活性炭が粉化し易いため、貴金属が剥離しやすくなることで、触媒性能の低下(触媒の劣化)が速くなる。
有機塩素化合物分解用触媒における貴金属の担持量は、触媒全量に対する割合で、1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。担持させる貴金属としては、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム等が挙げられるが、脱ハロゲン化効率を高める観点からは、パラジウム、ルテニウム、白金が好ましく、特にパラジウムが好ましい。
活性炭としては、公知の活性炭を用いることができ、石炭やヤシ殻を原料とするものを好ましく用いることができる。活性炭の形状としては、例えば、粒状活性炭、球状活性炭、ハニカム状活性炭等が挙げられるが、これらの活性炭の中でも、PCB分解効率が高く、触媒再生処理が容易である点より、粒状活性炭及び球状活性炭が好ましい。
粒状活性炭及び球状活性炭の場合、粒子径は0.4〜5mmが好ましく、より好ましくは0.4〜3mmである。5mmを超える場合は、ハンドリングが悪くなる傾向があり、0.4mm未満の場合は、触媒充填装置やカラムに充填させた際に詰りやすくなる傾向がある。
活性炭の比表面積(BET窒素吸着法)は、900m/g以上であることが好ましく、より好ましくは900〜1,500m/g、特に好ましくは900〜1,200m/gである。活性炭の比表面積が900m/g以上であると、多孔質になることで貴金属の吸着サイトが増加することにより、触媒性能の向上を図ることができる。また、活性炭の比表面積が1,500m/g以下であれば、多孔質化によって活性炭が脆くなり所望の硬さを保持できなくなることが少ない。
活性炭に貴金属を担持させる方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法であって良い。
本発明の触媒は、その使用方法に制限はなく、反応系に分散させて使用しても良く、反応系に固定させて使用しても良い。固定させて使用する場合は、触媒充填装置に充填して用いることが好ましい。触媒担体が硬いため、触媒充填装置に充填する際、触媒充填装置から取出す際、劣化した触媒の再生処理を施す際等において、触媒が崩壊するのを最小限に抑えることができる。
次に、本発明の有機塩素化合物分解用触媒(以下、単に「触媒」という。)を用いて、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油を分解処理する無害化処理システムについて、図面を参照しながら、好ましい実施形態を挙げて説明する。なお、触媒は、有機塩素化合物の無害化処理のみを実施するバッチ式無害化処理システム(請求項7)、有機塩素化合物の無害化処理と触媒再生処理を実施する連続式無害化処理システム(請求項8〜11)のいずれにも用いることができる。連続式無害化処理システムの詳細は、特開2011−125795号公報に記載されている装置やシステムを採用することができる。
<バッチ式無害化処理システム>
図1は、本発明のバッチ式無害化処理システムの一部であって、触媒槽と、マイクロ波発振装置と、循環系統とを有するマイクロ波分解装置の概略図である。
バッチ式無害化処理システムでは、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液101を入れた槽(図示していない)から、混合液101を導入して触媒槽102内部の触媒充填装置103に流通し、循環系統104により循環させ、触媒カートリッジ105に充填した触媒106と接触させ、触媒充填装置103を流通する際に触媒ならびに流通液をマイクロ波発振装置107からマイクロ波を照射し加熱して有機塩素化合物を分解する分解処理を行う。108は触媒と混合液の温度を計測する熱電対、109は制御計測装置である。
なお、バッチ式無害化処理システムにおける混合液の調製、分解処理は、後記の連続式無害化処理システムと同様にして行うことができる。
<連続式無害化処理システム>
図2は、連続式無害化処理システムの一実施形態として、第1の循環系統ならびに第2の循環系統を有する無害化処理システムの構成例を示す概略図である。
図2に示す有機塩素化合物の連続無害化処理システムは、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れる第1の槽1と、アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れる第2の槽11と、並列に設置されている3基の触媒槽2、3、4と、マイクロ波発振装置8、9、10とを備え、各触媒槽の内部には、本発明の触媒を充填した触媒充填装置5、6、7が配置され、これらの触媒充填装置の下部は液溜りとなっている。
そして、前記第1の槽の混合液を、前記触媒充填装置及び液溜りを経由して前記第1の槽に循環させる第1の循環系統(ライン20、21及びポンプ12、13)と、前記第2の槽のイソプロピルアルコール溶液を前記触媒充填装置に供給するライン22及びポンプ14と、各触媒槽の液溜りの液を触媒充填装置に循環する第2の循環系統(ラインL1、L2及びポンプP1;ラインL3、L4及びポンプP2;ラインL5、L6及びポンプP3)と、を有するものである。
例えば、触媒槽2を例として、液の流れを説明すると以下の通りである。第1の循環系統は、第1の槽1の混合液がポンプ12により送り出され、触媒充填装置5に、バルブ31a、32aを介してラインL2より導入され、触媒槽2の液溜りから、バルブ36a、35aを介してライン21に接続し循環する。また、第2の循環系統は、触媒槽2の液溜りの液が、ポンプP1により、ラインL1とL2を通じて触媒充填装置5に導入され循環する。また、第2の槽11のアルカリ金属水酸化物を溶解したイソプロピルアルコール溶液は、ポンプ14によりライン22から、バルブ34aを介して、ラインL2を通じて触媒充填装置5に導入される。
また、第1の循環系統と各触媒槽の液溜りからの液の排出は、バルブ35aと36aを操作することで切り替えられる。バルブ36aを開け、バルブ35aを逆T字形に接続することで第1の循環系統になり、バルブ36aを開け、バルブ35aをト字形に接続することで液が排出される。そして、第2の循環系統が用いられる場合には、バルブ36aが閉じられることになる。
[第1の槽の液調製]
第1の槽1としては、汎用の混合槽、または、有機塩素化合物あるいは有機塩素化合物を含む絶縁油を貯留する柱上変圧器容器などを用いることができる。
有機塩素化合物を分解する際には、第1の槽に、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールを入れ、混合液を調製する。アルカリ金属水酸化物は、有機塩素化合物から脱離した塩素を捕捉するために添加されるが、中でも、脱塩素化効率が高く、低コストで入手可能で、ハンドリング性が良く、イソプロピルアルコールへの溶解性に優れている点より、NaOH又はKOHが好ましく用いられる。アルカリ金属水酸化物は単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。またイソプロピルアルコールは、水素供与体として添加され、安全性、コスト、有機塩素化合物の分解効率、反応制御の容易性の点で優れている。
混合液中における、アルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールの量比は、アルカリ金属水酸化物をイソプロピルアルコールに対して0.1〜20%(wt/vol)使用するのが好ましく、より好ましくは0.1〜10%(wt/vol)である。アルカリ金属水酸化物が少なすぎると分解反応が進行しなくなり、一方、多すぎるとアルカリ金属水酸化物が溶解しきれなくなる。
また、イソプロピルアルコールは、有機塩素化合物のみからなる絶縁油の場合には、有機塩素化合物濃度が3%(vol/vol)以下になるよう使用することが好ましく、有機塩素化合物を含む絶縁油の場合には、該絶縁油に対して5〜200%(vol/vol)使用することが好ましい。5%未満では絶縁油の粘度が高くなり、分解反応が進まなくなる。一方、200%を超える場合でも反応は十分進行するが不経済となる。なお、混合液には、本発明の効果を阻害しない範囲でイソプロピルアルコール以外の化合物が含まれていても良い。このような化合物としては、例えば、複素環式化合物、アミン系化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物及び脂環式化合物等が挙げられる。
[分解処理]
有機塩素化合物の分解処理は、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油にアルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールを混合した混合液を、第1の貯槽から触媒槽までの間を、前記第1または第2の循環系統により循環し、触媒充填装置を流通する際に触媒ならびに流通液を加熱することにより実施される。
加熱温度は、30〜60℃の範囲が好ましい。加熱温度が高い程、有機塩素化合物の分解は促進されるが、一方で、加熱温度高くなる程、ダイオキシン類が生成し易くなる。
加熱方法としては、マイクロ波照射による加熱が好ましい。マイクロ波を用いることにより、触媒を効果的に加熱することができ、また加熱装置をコンパクトにすることができる。マイクロ波の出力は、電気的に制御しながら10W〜20kWの範囲とすることが望ましく、マイクロ波の周波数は0.5〜10GHzが望ましい。マイクロ波の照射は、触媒槽の液溜りの混合液の冷却状況に応じて、電気的に制御しながら連続的又は間欠的に行い、触媒充填装置を流通する混合液の温度を所定の範囲に制御するのが良い。
マイクロ波照射による方法以外でも、マイクロ波を使用せずに、常温、常圧で放置して分解する方法を採用することもできる。マイクロ波照射による加熱と常温、常圧での放置を、併用することもできる。
図3は、図2に示した各触媒槽の詳細図である。触媒槽2を例に詳細を説明する。触媒槽2はその上部に触媒充填装置5を収容し、その下部が液溜りとなっている。バルブ31aを介してライン20とラインL2が接続し、前記の第1の槽1の混合液が、触媒充填装置5に供給される。一方、バルブ34aを介して、ライン22とラインL2が接続し、前記の第2の槽11のアルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液が、触媒充填装置5に供給される。
触媒充填装置5に供給された第1の槽の混合液あるいは第2の槽のイソプロピルアルコール溶液は、触媒層の中を流通し、流通した液は触媒カートリッジaの底部に開けられた流通孔(図示していない)を通じて流出し、触媒充填装置5に設けられた溢流口bより溢れ出て、触媒槽の液溜りに溜る。触媒充填装置に供給された混合液あるいはイソプロピルアルコール溶液は、触媒カートリッジa内の触媒層中を流通する際に、マイクロ波発振装置8から照射されるマイクロ波により加熱されるが、図示しない温度コントローラー等を用いてマイクロ波の照射時間や強度を電気的に制御することで、液温を所定の温度に制御することができる。図中、cは温度センサである。触媒カートリッジa中にはセラミックやテフロン(登録商標)等のマイクロ波を透過する耐熱性材料で形成された棒状の構造体dが配置され、この構造体はマイクロ波を触媒層の奥まで伝達する役割を果たしている。液溜りに溢れ出た液は、液溜りで冷却コイルeにより冷却される。
液溜りで冷却された液は、排出口fより排出され、第1の槽1に戻ることで循環する第1の循環系統による循環と、液溜りからラインL1、L2及びポンプP1により触媒充填装置5に戻り循環する第2の循環系統による循環に供される。
第1の循環系統と第2の循環系統の切替えは、バルブ31a、33a及び図2のバルブ36aを操作することにより行われる。すなわち、バルブ31aと36aを開け、バルブ33aを閉じることで第1の循環系統による循環が行われ、逆にバルブ31aと36aを閉じ、バルブ33aを開けることで第2の循環系統による循環が行われる。
<第1及び第2の循環系統による無害化処理システム>
本発明では、基本的な無害化処理システムとして、有機塩素化合物の分解処理には第1の循環系統あるいは第2の循環系統を使用し、活性が低下した触媒の再生処理には第2の循環系統を使用することができる。
前記の有機塩素化合物の無害化処理システムにおいては、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れる第1の槽1と、アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れる第2の槽11と、貴金属を担体に担持させた触媒を充填した触媒充填装置5、6、7を備え触媒充填装置の下部が液溜りになっている触媒槽2、3、4が並列に設置され、前記第1の槽の混合液を、前記触媒槽を経由して第1の槽に循環させる第1の循環系統と、前記の各触媒槽2、3、4において、各触媒充填装置5、6、7と液溜りの間を循環する第2の循環系統と、を有する、連続無害化処理装置を用いる。
各触媒槽2、3、4においては、第1の槽の混合液を触媒充填装置5、6、7に流通し触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理と、第2の槽のイソプロピルアルコール溶液を触媒充填装置2、3、4に流通し触媒と接触させて分解処理で劣化した触媒を再生する再生処理と、を繰り返し行うことができる。こうすることで、触媒充填装置に充填された触媒が、有機塩素化合物の分解処理で劣化した際に、劣化触媒を触媒充填装置から取り出すことなく再生することができ、再生後は引き続いて分解処理に供することが可能になる。
そして、複数の触媒槽を用いることで、一の触媒槽において分解処理を行っている間、別の触媒槽において再生処理を行う並行処理が可能となり、有機塩素化合物の分解処理を連続して効率的に実施することができる。具体的には、例えば、図2に示す触媒槽2で分解処理を行い触媒活性が低下してきた時点で、劣化触媒を再生する再生処理を行う。触媒槽2で再生処理を行っている間は、触媒槽3で有機塩素化合物の分解処理を行う。触媒槽3で分解処理を行っている間に触媒槽2の劣化触媒が再生されるため、次に触媒槽2で再生触媒を用いて分解処理を行い、その間、触媒槽3では劣化触媒を再生する再生処理を行う。このように、2系統の循環系統を随時切り替えるだけで、連続して有機塩素化合物の無害化処理を行うことが可能になる。触媒槽4は非常用として利用することができる。
本発明の無害化処理システムにおいては、有機塩素化合物の分解処理は、主に第1の循環系統を用いて実施し、有機塩素化合物の濃度が所定の処理基準値をクリアするまで分解処理を行い、分解処理が終了後の混合液は、システム外に排出して回収する。触媒が十分な活性を維持している場合には、引き続いて、第1の槽に新たに混合液を調製して、第1の循環系統により分解処理に供することができる。
そして、本発明の無害化処理システムでの有機塩素化合物の分解処理においては、有機塩素化合物の分解処理に第2の循環系統を組み合せることで、触媒の活性低下を効率よく判定することができる。循環する混合液の量は、第1の循環系統に比べて、第2の循環系統では少なくなるので、単位時間当たりに触媒中を循環する回数を増大させられる結果、GC−MS等の公知の分析装置を用いて有機塩素化合物の濃度変化を測定することで、触媒活性が低下したことを短時間で認識することができるからである。したがって、有機塩素化合物の分解処理の終盤やあるいは分解処理を繰り返したことで、触媒活性の低下が想定される場合には、第1の循環系統を停止し、触媒槽内の混合液のみを用いた第2の循環系統による分解処理に切り替えることにより、触媒の活性低下を判定することが容易になる。
さらに、第2の循環系統を組み合せることで、触媒の活性が低下していない場合でも、第2の循環系統で分解処理を終了した混合液をシステム外に排出することで、第1の槽中の混合液の量を減らすことができるので、アルカリ金属水酸化物やイソプロピルアルコールを第1の槽に追加添加することができ、分解条件を状況にあわせて適宜変更することが可能になる。あるいは、分解処理に供する混合液の量が少量のため、第1の循環系統を満たす量に達しない場合でも、第2の循環系統により分解反応を実施することができる。
無害化処理システムにおいては、有機塩素化合物の分解に使用されて活性が低下した触媒は、触媒充填装置から取り出すことなく第2の循環系統を用いて再生される。この再生処理は次のようにして実施することができる。
[第2の槽の液調製]
第2の槽にはアルカリ金属水酸化物を溶解したイソプロピルアルコール溶液を入れる。アルカリ金属水酸化物は、イソプロピルアルコールに溶解して用いられるが、予めアルカリ金属水酸化物をイソプロピルアルコールに溶解した溶液を調製しておき、それを第2の槽に投入しても良いし、アルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールを別々に第2の槽に投入して第2の槽中で攪拌し溶解させても良い。
前記溶液中のアルカリ金属水酸化物の量は、イソプロピルアルコールに対し、0.1〜0.3w/v%、好ましくは0.15〜0.2w/v%である。アルカリ金属水酸化物の使用量が少ないとイソプロピルアルコールから水素が発生しにくくなるために触媒の再生効率が低下するため好ましくなく、一方使用量が多すぎても、触媒再生効率は最早向上せず不経済となるため好ましくない。
イソプロピルアルコールに溶解させるアルカリ金属水酸化物としては、NaOH又はKOHが好ましく用いられる。アルカリ金属水酸化物を有機塩素化合物の分解処理時と同一のものにすれば、触媒再生後、特段の処理を必要とせずに有機塩素化合物の分解処理を開始することができ、また、有機塩素化合物の分解で生成する副生塩の回収操作が容易になる。
触媒の再生に使用するイソプロピルアルコール溶液の量は、再生処理時に触媒充填装置に残存させた被処理液と均一に混合でき、かつ第2の循環系統により触媒充填装置と液溜り間を循環するのに支障がない量であればよく、通常、触媒1kg当たり1〜6Lである。少なすぎると触媒の洗浄効果が不十分となる。一方、多すぎても、触媒の再生効率は最早向上せず不経済となる。
[再生処理]
触媒の再生処理を、例えば、触媒槽2を例として説明すると、有機塩素化合物の分解処理を停止した後、触媒充填装置5の下部に設置した排出口gから、触媒充填装置内に残る分解処理後の液(以下、被処理液と称する。)を触媒が気相中に暴露されないぎりぎりまで排出し、次いで液溜りの被処理液を排出する。アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れた前記第2の槽11より、所定量のイソプロピルアルコール溶液をポンプ14によりライン22を通じてラインL2に供給して触媒充填装置5に導入する。触媒充填装置5から溢流して液溜りに溜まった液を、第2の循環系統により触媒充填装置5に流通して循環させ、該触媒充填装置に残存させた被処理液と第2の槽から供給したイソプロピルアルコール溶液を均一に混合する。混合が終了後、第2の循環系統により混合した液を循環させながら触媒充填装置へのマイクロ波の照射を開始して加熱し、触媒再生を行う。
触媒再生処理においては、触媒充填装置内に被処理液を残すことで、被処理液中に残存する有機塩素化合物を、触媒の再生状況を把握するための指標として利用することができる。すなわち、マイクロ波照射後の前記混合液中の有機塩素化合物の濃度変化を追跡し、有機塩素化合物の分解処理における所定の基準値を用い、混合液中の有機塩素化合物濃度が、当該基準値以下まで低下した時点で触媒の再生が終了したものと判断する。
また、触媒再生時に、触媒充填装置内に被処理液を残存させることで、触媒が気相中に露出して乾燥し付着した阻害物質がより強固に吸着して、触媒の再生が困難になることを防ぐとともに、触媒表面が露出した場合のマイクロ波加熱による発火等の危険を回避することもできる。
本発明の触媒再生処理においては、アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を使用することで、活性が低下した触媒が効果的に再生される。その詳細な理由は不明であるが、次のように推定される。
多種類のPCBを分解処理した経験上、PCBそのものを絶縁油として使用した高濃度PCBに比べ、絶縁油中にPCBが含有されている低濃度PCBの方が、分解し難いことが判っている。このことから、絶縁油中の添加剤(酸化防止剤など)や経時による絶縁油の酸化劣化物が触媒反応を強く阻害することが示唆される。
そこで、イソプロピルアルコールは、触媒表面に付着した未変性の絶縁油や有機塩素化合物の分解により生成する無機塩等を溶解して除去すると同時に、アルカリ金属水酸化物を併用することでイソプロピルアルコールが水素供与体として機能し、絶縁油の酸化劣化物等を還元分解して触媒表面から脱着し易くする作用を発揮し、これらの相乗効果により触媒の再生が効果的に行われるものと推定される。
触媒の再生処理における加熱温度は、30〜60℃の範囲が好ましい。加熱温度が高い程、水素発生量が増加するため触媒の再生効率は向上するが、一方で、加熱温度高くなる程、残存する有機塩素化合物からダイオキシン類が副生し易くなる。
触媒再生処理時の加熱温度は、前記の有機塩素化合物の分解処理時の加熱温度と同じである必要はないが、分解処理と触媒の再生処理を操作条件を変更することなく円滑に実施できる点より、再生処理と分解処理の加熱温度を同一の温度に設定するのが好ましい。
再生処理時の加熱方法としては、分解処理時の加熱の場合と同様、マイクロ波照射による加熱が好ましい。マイクロ波を用いることにより、触媒を効果的に加熱することができ、同一の加熱装置を用いることで装置もコンパクトにできる。マイクロ波の照射条件は、分解処理の場合と同様であり、マイクロ波の出力は、電気的に制御しながら10W〜20kWの範囲とすることが望ましく、マイクロ波の周波数は0.5〜10GHzが望ましい。マイクロ波の照射は、触媒槽の液溜りの混合液の冷却状況に応じて、電気的に制御しながら連続的又は間欠的に行い、触媒充填装置を流通する混合液の温度を所定の範囲に制御するのが良い。
[再生触媒を用いた分解処理]
再生終了後の触媒は、引き続いて有機塩素化合物の分解処理に供される。触媒の再生処理とそれに引き続く有機塩素化合物の分解処理は、再生前の触媒と同様の方法で実施することができる。
本発明の無害化処理システムにおいては、有機塩素化合物の分解処理及び再生処理に、水素供与体としてイソプロピルアルコールを共通して用い、また同じアルカリ金属水酸化物を用い、さらには分解処理と再生処理を同一の温度設定で実施できるので、有機塩素化合物の分解処理により活性が低下した触媒は、分解処理後の被処理液の一部を排出するだけで、触媒を取り出すことなく直ちに再生処理することができ、触媒の再生後は、触媒槽内に残存する液を取り除く必要もなく、有機塩素化合物の分解処理を再開することができる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。また、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「質量%」は「%」と略記する。
(活性炭に対する基準PCB吸着率測定方法)
基準PCBとして、市販品(商品名:KC−1000;5塩化ビフェニル/3塩化ベンゼン=7/3)をイソプロピルアルコール(IPA)に溶解させてPCB溶液(PCB濃度5.4mg/kg)を調製した。別に、表1に示す触媒の担体(活性炭)5gを、内径15mmφ×長さ300mmのガラス製クロマト管に充填した。触媒を充填したクロマト管の中に、上記のPCB溶液200mlを入れ、触媒層の中を10ml/minの速度で流下させた後、流下した溶液中の基準PCB濃度(mg/kg)を測定することにより、担体(活性炭)への吸着率を求めた。
(活性炭の硬さ測定方法)
JIS K 1474 7.6法に準拠した。
[触媒試験例]
原料、形状及び特性が異なる5種類の活性炭にPdを担持させた5種類の触媒(Pd−C)を準備した。各活性炭の有機塩素化合物吸着率、硬さを表1に示す。
[実施例1]
ジムロート冷却管、窒素導入管、光ファイバー温度計を備えた内容量200mlの三つ口フラスコに、PCB(KC−1000)の濃度10mg/kgの1種2号絶縁油100ml、イソプロピルアルコール(IPA)20ml、KOH0.6gを、マグネチックスターラーで5分間攪拌し混合液としたものを導入し、さらにPd/C触媒Eを1g(乾燥重量)導入した。
上記フラスコをマイクロ波反応装置内に載置し、フラスコ内部をマグネチックスターラーで攪拌しながら、マイクロ波で加熱し、反応温度を60℃に制御しながら、28時間反応させた。
フラスコ内の溶液中のPCB濃度を定期的にサンプリングし、サンプリングした溶液中のPCB濃度を、DB1(J&Wサイエンティフィック製)をキャピラリーカラムとする(株)島津製作所製のガスクロマトグラフィー質量分析計QP5050AW(「GC−MS」)を用いて分析した。
PCB分解時間(hr)とPCB濃度濃度(mg/kg)の関係を表2に示す。
[比較例1]
触媒Eの替わりに、Pd/C触媒Dを用いた以外は、実施例1と同様にしてPCB分解試験を行った。PCB分解時間(hr)とPCB濃度濃度(mg/kg)の関係を表2に示す。
[実施例2〜5]
[PCB分解試験]
図1に示す構成のマイクロ波分解試験装置を使用した。
PCB(KC−1000)濃度約10,000mg/kgの1種2号絶縁油に、イソプロピルアルコール(IPA)30L、KOH500gを添加し、混合液を調製した。
触媒カートリッジにPd−Cとして、触媒E、触媒A、触媒B、触媒Cを、それぞれ、800g充填し、調製した混合液を800ml/minの速度で触媒充填装置に流通させながら、マイクロ波発振装置より2.45GHz、出力400〜500Wのマイクロ波をPID制御しながら連続的に照射し、熱電対で温度測定しながら、混合液の温度を60℃に維持した。混合液中のPCB濃度の経時変化は、サンプリングバルブからサンプルを採取し、前記のGC−MSを用いて分析した。
混合液の触媒充填装置への流通と循環を開始後、PCB濃度が0.5ppm以下になるまで分解処理を継続して行った。各触媒系において、PCB濃度が0.5ppmまで低下するまでに要した時間を表3に示す。
[触媒継続使用試験]
上記のPCB分解処理で用いたPd/C触媒を触媒カートリッジに充填したまま、該触媒充填装置に、新たにPCB濃度約10,000mgの1種2号絶縁油に、イソプロピルアルコール(IPA)30L、KOH500gを添加して調製した混合液を流通させ、上記の方法と同様の方法でPCBを分解処理した。混合液の触媒充填装置への流通と循環を開始後、PCB濃度が0.5ppm以下になるまで分解処理を継続して行った。各触媒系において、PCB濃度が0.5ppmまで低下するまでに要した時間を表3に示す。
表3より、触媒A、触媒B、触媒C、触媒Eを使用することにより、PCB濃度10,000mg/kgを0.5mg/kgまで分解することができた。また、これらの触媒はいずれも、継続使用2回目までPCBを分解することができた。
[使用触媒のPd回収確認試験]
PCB分解試験を2回継続使用後に、触媒を800℃以上で焼成した後、パラジウムのアンミン系錯体の合成により精製、還元することによりPd回収量を求め、初期仕込量との差からPd剥離率を算出した。また、Pd剥離率は、PCB分解試験時間が増加するに従い増加すると考えられるため、PCB分解時間あたりのPd剥離率も算出した。使用後触媒からのPd回収散を表4に示す。
以上の結果より、触媒担体(活性炭)のPCB吸着率が83%以上であれば、初濃度10,000mg/kgのPCBを0.5mg/kg以下まで分解することができ、継続使用2回まで同様の分解が可能であること、また、硬さが89以上であれば、Pd剥離率が10%以下と低くなり、硬さが93以上であれば、Pd剥離率がさらに改善されることがわかる。
本発明に係る有機塩素化合物分解用触媒及び分解処理方法を、PCBやダイオキシン類の分解処理に利用することにより、有機塩素化合物分解処理にともなう処理コストを削減することができる。よって、産業上の利用可能性大である。
1:第1の槽
2、3、4:触媒槽
5、6、7:触媒充填装置
8、9、10:マイクロ波発振装置
11:第2の槽
12、13、14:ポンプ
20、21、22:ライン
31a、b、c、32a、b、c、33a、b、c、34a、b、c、36a、b、c:開閉バルブ
35a、b、c:切替えバルブ
38a:サンプリングバルブ
P1、P2、P3:ポンプ
L1、L2、L3、L4、L5、L6:ライン
a:触媒カートリッジ
b:溢流口
c:温度センサ
d:構造体
e:冷却コイル
f、g:排出口
102:触媒槽
103:触媒充填装置
105:触媒カートリッジ
107:マイクロ波発振装置

Claims (11)

  1. 活性炭からなる担体と、貴金属とから構成される、有機塩素化合物分解用触媒であって、活性炭に対する基準PCB(5塩化ビフェニル/3塩化ベンゼン=7/3)の吸着率が80%以上、かつ、JIS K 1474 7.6に準じて測定した活性炭の硬さが89以上であることを特徴とする有機塩素化合物分解用触媒。
  2. 活性炭の比表面積(窒素吸着法)が900m/g以上である請求項1に記載の有機塩素化合物分解用触媒。
  3. 活性炭が、粒状活性炭または球状活性炭である請求項1または2に記載の有機塩素化合物分解用触媒。
  4. 粒状活性炭および球状活性炭の粒子径が0.4〜5mmである請求項3に記載の有機塩素化合物分解用触媒。
  5. 活性炭原料が、石炭またはヤシ殻である請求項1〜4いずれかに記載の有機塩素化合物分解用触媒。
  6. 前記吸着率が83%以上、かつ、前記硬さが95%以上である請求項1〜5いずれかに記載の有機塩素化合物分解用触媒。
  7. 有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れた槽と、
    請求項1〜6いずれかに記載の有機塩素化合物分解用触媒を充填した触媒充填装置と液溜りをその内部に備えた触媒槽と、
    前記触媒槽上部に設置されたマイクロ波発振装置と、
    前記触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する循環系統と、
    を有し、
    前記触媒槽において、前記混合液を触媒充填装置に流通して前記循環系統により循環させ、有機塩素化合物分解用触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理を行うことを特徴とする有機塩素化合物の無害化処理システム。
  8. 有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れた第1の槽と、
    アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れた第2の槽と、
    請求項1〜6いずれかに記載の有機塩素化合物分解用触媒を充填した触媒充填装置と液溜りをその内部に備え、並列に設置された複数の触媒槽と、
    前記触媒槽上部に設置されたマイクロ波発振装置と、
    前記第1の槽と前記触媒槽との間をそれぞれ循環する第1の循環系統と、
    前記の各触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する第2の循環系統と、
    を有し、
    各触媒槽において、第1の槽の混合液を触媒充填装置に流通して第1の循環系統により循環させ有機塩素化合物分解用触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理と、
    第2の槽のイソプロピルアルコール溶液を触媒槽の触媒充填装置に供給し第2の循環系統により循環させ有機塩素化合物分解用触媒と接触させて分解処理で劣化した有機塩素化合物分解用触媒を再生する再生処理と
    を、繰り返し行うことができ、
    一の触媒槽において前記分解処理を行っている間、別の触媒槽において前記再生処理を行うことにより、有機塩素化合物を連続して分解することを特徴とする有機塩素化合物の無害化処理システム。
  9. 前記第1の槽の混合液中の有機塩素化合物を分解するに際し、第1の循環系統により、第1の槽の有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液の一部を触媒槽に導入した後、第1の循環系統を停止し、前記第2の循環系統のみを作動させて有機塩素化合物の分解処理を行い、分解処理後の液をシステム外に排出した後、再び第1の循環系統により第1の槽の混合液を触媒槽に導入し、第2の循環系統のみを作動させて有機塩素化合物の分解処理を行う請求項8に記載の無害化処理システム。
  10. 前記分解処理を行った後、触媒槽に滞留する分解処理後の液を第1の槽に回収した後、前記触媒槽に第2の槽からイソプロピルアルコール溶液を流通して有機塩素化合物分解用触媒を再生する再生処理を行い、次いで触媒再生処理後の液をシステム外に排出した後、第1の槽の混合液を触媒槽に流通し、有機塩素化合物の分解処理を行う請求項8または9に記載の無害化処理システム。
  11. 前記分解処理を行った後、触媒槽に滞留する分解処理後の液をシステム外に排出した後、前記触媒槽に第2の槽からイソプロピルアルコール溶液を流通して有機塩素化合物分解用触媒を再生する再生処理を行い、次いで触媒再生処理後の液を第1の槽に回収するとともに、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油を第1の槽に供給して混合した後、該混合液を触媒槽に流通して有機塩素化合物の分解処理を行う請求項8または9に記載の無害化処理システム。
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