JP2017147050A - 蓄電デバイス用セパレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、原子間力顕微鏡でセパレータのポリマー表面を観察するという観点から、セパレータと電極の接着性、並びにセパレータを備える蓄電デバイスの強度及び高温保存特性を向上させることができる蓄電デバイス用セパレータを提供することを目的とする。【解決手段】蓄電デバイス用セパレータが、多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも片面に配置された熱可塑性層とを含み、熱可塑性層は、熱可塑性ポリマーを含み、そして原子間力顕微鏡を用い、ばね定数0.4N/mでカンチレバー探針を熱可塑性層に接触させて、押し付け力に基づくフォースカーブを作成したときに、フォースカーブから算出されたカンチレバーのたわみ量が、3.8nm〜10.0nmである。【選択図】図9

Description

本発明は、蓄電デバイス用セパレータに関する。
近年、リチウムイオン電池により代表される非水電解液電池の開発が、活発に行われていた。通常、非水電解液電池には、微多孔膜を含むセパレータが正負極間に設けられている。セパレータは、正負極間の直接的な接触を防ぎ、かつ微多孔中に保持した電解液を通じてイオンを透過させる機能を有する。
非水電解液電池の電気特性及び安全性に加えて、充放電電流の均一化及びリチウムデンドライト抑制の観点から、セパレータには電極との接着性の向上も求められている。セパレータに接着性を持たせるために、セパレータ基材への様々なポリマーの塗工が提案されている(特許文献1〜5)。
ところで、近年、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の1種である原子間力顕微鏡(AFM)による、特にAFMのフォースモードによるセパレータのポリマー表面の観察及び検討が行われていなかった。特許文献1〜5に記述されているセパレータのポリマー表面もAFMによる観察が行われていない。
なお、トナーで形成されたトナー画像を記録媒体上に定着させるための定着部材の表面(特許文献6)、及びポリイソプレンとテトラエトキシシランの混合物を含む膜の表面(特許文献7)について、AFMによる観察が報告されている。当然ながら、特許文献6又は7に記述されているAFMの観察結果は、セパレータのポリマー表面の観察に転用されるものではない。
国際公開第2013/141140号 国際公開第2015/005145号 国際公開第2014/017651号 特開2015−138768号公報 国際公開第2015/076602号 特開2013−088598号公報 特開2013−032436号公報
特許文献1〜5に記述されているセパレータは、原子間力顕微鏡によるポリマー表面の観察に基づいたセパレータと電極の接着性並びにセパレータを備える非水電解液電池の強度及び高温保存特性について未だに検討の余地がある。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、原子間力顕微鏡でセパレータのポリマー表面を観察するという観点から、セパレータと電極の接着性、並びにセパレータを備える蓄電デバイスの強度及び高温保存特性を向上させることができる蓄電デバイス用セパレータを提供することである。
本発明者らは、蓄電デバイス用セパレータの熱可塑性ポリマー層における微細領域の柔らかさを制御することにより上記課題を解決できることを見出して本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも片面に配置された熱可塑性層とを含む蓄電デバイス用セパレータであって、
前記熱可塑性層は、熱可塑性ポリマーを含み、かつ
原子間力顕微鏡を用い、ばね定数0.4N/mでカンチレバー探針を前記熱可塑性層に接触させて、押し付け力に基づくフォースカーブを作成したときに、前記フォースカーブから算出されたカンチレバーのたわみ量が、3.8nm〜10.0nmである、
前記蓄電デバイス用セパレータ。
[2]
前記熱可塑性ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエン共重合体、及びアクリル樹脂から成る群から選択される少なくとも1つである、[1]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[3]
前記熱可塑性ポリマーは、前記スチレン−ブタジエン共重合体又は前記アクリル樹脂である、[2]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[4]
前記熱可塑性ポリマーは、前記アクリル樹脂である、[2]又は[3]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[5]
前記熱可塑性ポリマーは、粒子状熱可塑性ポリマーである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[6]
前記粒子状熱可塑性ポリマーについてボロノイ分割を行って得られるボロノイ多角形の面積(Si)を用いて下記数式:
{式中、Siは、ボロノイ多角形の面積の実測値であり、mは、ボロノイ多角形の面積の実測値の平均値であり、かつnは、ボロノイ多角形の総数である}
により定義される分散(σ)が、0.01以上0.7以下である、[5]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[7]
前記たわみ量は、4.8nm〜10.0nmである、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[8]
前記たわみ量は、7.2nm〜10.0nmである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[9]
[1]〜[8]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータと、
正極と、
負極と、
から成る積層体。
[10]
[9]に記載の積層体が捲回されている捲回体。
[11]
[9]に記載の積層体又は[10]に記載の捲回体と電解液とを含む二次電池。
本発明によれば、セパレータの熱可塑性層の柔らかさが適切に制御されるので、セパレータと電極の接着性、並びにセパレータを備える蓄電デバイスの強度及び高温保存特性を向上させることができる。
図1は、熱可塑性層の表面を観察した写真の一例を示す。 図2は、図1の観察視野に含まれる熱可塑性ポリマーを、画像処理ソフトウェアを用いて自動的に特定した結果の一例を示す。 図3は、図2で特定された複数の粒子にボロノイ分割を行なってボロノイ多角形を得た結果の一例を示す。 図4は、図3で得られたボロノイ多角形の面積を、画像処理ソフトウェアを用いて自動的に算出した結果の一例を示す。 図5は、セパレータ上に配置された熱可塑性ポリマー粒子を観察する95視野のうちの19視野から成る1区画を設定する方法の一例を示す。 図6は、セパレータ上に配置された熱可塑性ポリマー粒子を観察する95視野を包含する5区画を設定する方法の一例を示す。 図7A〜Eは、本発明の実施形態に係るセパレータにおいて、基材の少なくとも1つの面に形成された熱可塑性層の平面形状を示す模式図である。 図8は、原子間力顕微鏡で実施例6に係る熱可塑性層のx−y面を観察したときの凹凸を表す画像である。 図9は、原子間力顕微鏡で実施例6に係る熱可塑性層のx−y面を観察したときの粒子の変形量を表す画像である。 図10は、原子間力顕微鏡で比較例1に係る熱可塑性層のx−y面を観察したときの凹凸を表す画像である。 図11は、原子間力顕微鏡で比較例1に係る熱可塑性層のx−y面を観察したときの粒子の変形量を表す画像である。
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<蓄電デバイス用セパレータ>
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータ(以下「セパレータ」という)は、多孔性基材、及び多孔性基材の少なくとも片面に配置された熱可塑性層を含む。このセパレータは、多孔性基材及び熱可塑性層のみから成っていてもよいし、その他の層を有していてもよい。その他の層は、多孔性基材の片面若しくは両面に、又は積層された多孔性基材層の中間層として、配置される。その他の層を有する面に熱可塑性層を配置する場合、これらの相互位置関係は任意であるが、セパレータと電極の接着性の観点から、熱可塑性層の少なくとも一部を露出させることが好ましい。所望により、セパレータは、無機フィラー及び樹脂製バインダを含むフィラー多孔層をさらに含んでよい。
<AFMカンチレバーのたわみ量>
本実施形態に係るセパレータの熱可塑性層に含まれる熱可塑性ポリマーの硬度(又は柔らかさ若しくは柔軟さ)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の1種である原子間力顕微鏡(AFM)を用い、カンチレバー先端の探針を、熱可塑性層と対応するセパレータ表面に接触させて、ばね定数として0.4N/mの押し付け力によりフォースカーブ(「フォースディスタンスカーブ」とも呼ばれる)を作成し、フォースカーブから算出されたカンチレバーのたわみ量により確認されることができる。
一般に、フォースカーブとは、AFMのカンチレバー先端の探針と試料との間の距離の上限及び下限を設定し、定点を上下動させて、探針と試料の間の距離と、カンチレバーに働く力(すなわち、カンチレバーのたわみ量)との関係をプロットした曲線である。フォースカーブから読み取った振れの量及びカンチレバーのバネ定数から、フックの法則により試料の硬度が求められる。
本実施形態では、原子間力顕微鏡によるフォースカーブ測定は、探針による熱可塑性ポリマーの圧縮試験であり、かつ押し付け力による熱可塑性ポリマーの変形度合いを表すため、熱可塑性層を含むセパレータを、熱可塑性ポリマーの硬度により特徴付けることができる。したがって、セパレータの熱可塑性ポリマー表面が、セパレータと電極の接着性並びにセパレータを備える蓄電デバイスの強度及び高温保存特性に適合していることは、原子間力顕微鏡を用い、ばね定数0.4N/mでカンチレバー探針を熱可塑性層に接触させて、押し付け力に基づくフォースカーブを作成したときに、フォースカーブから算出されたカンチレバーのたわみ量が3.8nm〜10.0nmの範囲内であることにより確認される。
上記で算出されたカンチレバーのたわみ量が3.8nm以上であると、電極との接着性が良好である理由は明らかでないが、熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性層の最表面が柔らかい(柔軟である)と、熱可塑性ポリマーが電極表面の活物質に食い込み易くなるので、セパレータと電極の接着性が良好になったと推定される。また、セパレータと電極の接着性が良好になると、セル捲回体に応力を掛けたときに、セパレータと電極の間でずれが生じ難くなるので、セル捲回体の剛性が向上したと推定される。
本実施形態に係るセパレータについて算出されるカンチレバーのたわみ量は、電極との接着性及びセル剛性の観点から、好ましくは4.8nm〜10.0nm、より好ましくは7.2nm〜10.0nmである。
熱可塑性層に含まれる熱可塑性ポリマーが粒子状であるときには、AFMカンチレバー先端の探針と熱可塑性層との接触は、AFMカンチレバー先端の探針と熱可塑性ポリマー粒子の頂点との接触を意味することが明らかである。
本実施形態に係るセパレータについて算出されるカンチレバーのたわみ量は、限定されるものではないが、熱可塑性ポリマーの種類及び含有量、熱可塑性層を形成するための配合、多孔性基材上に熱可塑性層を配置する方法、多孔性基材上に配置された熱可塑性層の形態及び分布等を種々選定することにより、3.8nm〜10.0nm、好ましくは4.8nm〜10.0nm、より好ましくは7.2nm〜10.0nmの範囲内に制御されることができる。
本実施形態では、上記で説明されたカンチレバーのたわみ量は、原子間力顕微鏡として「Dimension Icon(商品名、Bruker社製)」、及びカンチレバーとして「Scan Asyst−Air(商品名、Bruker社製)」を使用することにより測定される。
Scan Asyst−Airは、70kHzの共振周波数、0.4N/mのバネ定数、115μmの長さ、及び25μmの幅を通常有する。
一般に、カンチレバー先端の探針の形態としては、例えば、三角錐、四角錐等の多角錐形態、針形態等が挙げられる。本実施形態では、Scan Asyst−Airの先端の探針は、三角錐の形状を有する。
一般に、カンチレバーの材質としては、例えば、ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。本実施形態では、Scan Asyst−Airは、窒化ケイ素で形成される。
なお、Scan Asyst−Airと「PNP−TRS(商品名、東陽テクニカ社製)」プローブは、互換可能である。
原子間力顕微鏡によるフォースカーブ測定の方法及び条件は、実施例において詳細に説明される。
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータを構成する各部材、及び蓄電デバイス用セパレータの製造方法について以下に説明する。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
[多孔性基材]
本実施形態に用いる基材は、それ自体が、従来セパレータとして用いられていたものであってもよい。基材は、電子伝導性がなくイオン伝導性があり、有機溶媒の耐性が高く、かつ微細な孔径有する多孔質膜であると好ましい。
多孔質膜としては、例えば、ポリオレフィン系(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリ塩化ビニル)、及びそれらの混合物又はコポリマー等の樹脂を主成分として含む微多孔膜;ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を主成分として含む微多孔膜;ポリオレフィン系繊維の織物(織布);ポリオレフィン系繊維の不織布;紙;並びに絶縁性物質粒子の集合体が挙げられる。これらの中でも、塗工工程を経てポリマー層を得る場合に塗工液の塗工性に優れ、セパレータの膜厚をより薄くして、電池等の蓄電デバイス内の活物質比率を高めて体積当たりの容量を増大させる観点から、ポリオレフィン系の樹脂を主成分として含むポリオレフィン微多孔膜が好ましい。なお、本明細書における「主成分として含む」とは、特定の成分又は部材を50質量%を超えて含むことを意味し、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、なおも更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上含み、100質量%であってもよい。
本実施形態では、ポリオレフィン微多孔膜におけるポリオレフィン樹脂の含有量は、特に限定されないが、セパレータとして用いた場合のシャットダウン性能の観点から、多孔性基材を構成する全成分の50質量%以上100質量%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物から成る多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂が占める割合は、60質量%以上100質量%以下がより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、特に限定されないが、通常の押出、射出、インフレーション、及びブロー成形に使用するポリオレフィン樹脂でよく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のホモポリマー及びコポリマー、多段ポリマー等を使用することができる。これらのホモポリマー、コポリマー及び多段ポリマーから成る群から選ばれるポリオレフィンを単独で、又は混合して使用することもできる。
ポリオレフィン樹脂の代表例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。
セパレータとして使用するポリオレフィン多孔性基材の材料としては、低融点であり、かつ高強度であることから、特に高密度ポリエチレンを主成分とする樹脂を使用することが好ましい。柔軟性を付与するために、これらのポリエチレンを2種以上混合してもよい。これらのポリエチレンの製造の際に用いられる重合触媒も特に制限はなく、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、フィリップス系触媒及びメタロセン系触媒が挙げられる。
ポリオレフィン多孔性基材の耐熱性を向上させるために、ポリプロピレンと、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物から成る多孔膜を用いることがより好ましい。ポリプロピレンの立体構造は、限定されるものではなく、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン及びアタクティックポリプロピレンのいずれでもよい。
ポリオレフィン樹脂組成物中の総ポリオレフィンに対するポリプロピレンの割合は、特に限定されないが、耐熱性と良好なシャットダウン機能の両立の観点から、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%、更に好ましくは4〜10質量%である。
また、重合触媒も特に制限はなく、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒及びメタロセン系触媒が挙げられる。
この場合、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、限定されるものではなく、例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン炭化水素のホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。具体的には、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
ポリオレフィン多孔性基材の孔が熱溶融により閉塞するシャットダウン特性の観点から、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂として、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレンを用いることが好ましい。これらの中でも、強度の観点から、JIS K7112に従って測定した密度が0.93g/cm以上であるポリエチレンを使用することがより好ましい。
ポリオレフィン多孔性基材を構成するポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量は、特に限定されないが、30,000以上12,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは50,000以上2,000,000未満、更に好ましくは100,000以上1,000,000未満である。粘度平均分子量が30,000以上であると、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり成形性が良好になると共に、ポリマー同士の絡み合いにより高強度となる傾向にあるため好ましい。一方、粘度平均分子量が12,000,000以下であると、均一に溶融混練をすることが容易となり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。更に、粘度平均分子量が1,000,000未満であると、温度上昇時に孔を閉塞し易く、良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため、より好ましい。
粘度平均分子量(Mv)は、ASTM−D4020に基づき、溶剤としてデカリンを用い、測定温度135℃で測定された極限粘度[η]から、下記式により算出される。
ポリエチレン:[η]=6.77×10−4Mv0.67(Chiangの式)
ポリプロピレン:[η]=1.10×10−4Mv0.80
例えば、粘度平均分子量が1,000,000未満のポリオレフィンを単独で使用する代わりに、粘度平均分子量が2,000,000のポリオレフィンと粘度平均分子量が270,000のポリオレフィンの混合物であって、その粘度平均分子量が1,000,000未満の混合物を用いてもよい。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材は、任意の添加剤を含有することができる。添加剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン以外のポリマー;無機粒子;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。
これらの添加剤の合計含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量%以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の気孔率は、特に限定されないが、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上であり、好ましくは90%以下、好ましくは80%以下である。気孔率を20%以上とすることは、セパレータのイオン透過性を確保する観点から好ましい。一方、気孔率を90%以下とすることは、突刺強度を確保する観点から好ましい。本明細書では、気孔率は、例えば、ポリオレフィン多孔性基材の体積(cm)、質量(g)、膜密度(g/cm)から、下記数式:
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
により求めることができる。例えば、ポリエチレンから成るポリオレフィン多孔性基材の場合には、膜密度を0.95(g/cm)と仮定して気孔率を計算することができる。気孔率は、ポリオレフィン多孔性基材の延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の透気度は、特に限定されないが、好ましくは10秒/100cc以上、より好ましくは50秒/100cc以上であり、好ましくは1,000秒/100cc以下、より好ましくは500秒/100cc以下である。透気度を10秒/100cc以上とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制する観点から好ましい。一方、透気度を1,000秒/100cc以下とすることは、良好な充放電特性を得る観点から好ましい。本明細書では、透気度は、JIS P−8117に準拠して測定される透気抵抗度である。透気度は、多孔性基材の延伸温度及び/又は延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の平均孔径は、好ましくは0.15μm以下、より好ましくは0.1μm以下であり、そして好ましくは0.01μm以上である。平均孔径を0.15μm以下とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制し、かつ容量低下を抑制する観点から好適である。平均孔径は、ポリオレフィン多孔性基材を製造する際の延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の突刺強度は、特に限定されないが、好ましくは200g/20μm以上、より好ましくは300g/20μm以上であり、好ましくは2,000g/20μm以下、より好ましくは1,000g/20μm以下である。突刺強度が200g/20μm以上であることは、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制する観点、及び充放電に伴う電極の膨張収縮による短絡を抑制する観点から好ましい。一方、突刺強度が2,000g/20μm以下であることは、加熱時の配向緩和による幅収縮を低減する観点から好ましい。突刺強度は、実施例の記載の方法により測定される。突刺強度は、ポリオレフィン多孔性基材の延伸倍率及び/又は延伸温度等を調整することにより調節可能である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。この膜厚を2μm以上とすることは、機械強度を向上させる観点から好ましい。一方、この膜厚を100μm以下とすることは、電池におけるセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化に有利となる傾向があるため好ましい。
[熱可塑性層]
本実施形態では、熱可塑性層は、熱可塑性ポリマーを含む層であり、かつ多孔性基材の少なくとも1つの面に配置される。熱可塑性層は、多孔性基材の少なくとも片面の少なくとも一部の領域に形成されていればよい。本明細書では、用語「熱可塑性ポリマー」は、セパレータと電極を接着するためのバインダ類として通常使用される熱可塑性ポリマー、又は電解液中で熱プレスされることによりゲル化して接着性を発現するポリマーを含むものとする。
熱可塑性層は、熱プレスの工程を経ることにより、電極とセパレータを接着させることができる。すなわち、熱可塑性層は、電極とセパレータとの間で接着層として機能し得るものである。
熱可塑性ポリマーの具体例としては、以下の1)〜4)が挙げられる。
1)共役ジエン系ポリマー、
2)アクリル系ポリマー、
3)ポリビニルアルコール系樹脂、及び
4)含フッ素樹脂。
上記1)共役ジエン系ポリマーは、共役ジエン化合物をモノマー単位として含むポリマーである。上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、共役ジエン系ポリマーは、後述する(メタ)アクリル系化合物又は他のモノマーをモノマー単位として含んでいてもよい。具体的には、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物等である。
上記2)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系化合物をモノマー単位として含むポリマーである。上記(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つを示す。
このような化合物としては、例えば、下記式(P1)で表される化合物が挙げられる。
CH=CRY1−COO−RY2 (P1)
式(P1)中、RY1は水素原子又はメチル基を示し、RY2は水素原子又は1価の炭化水素基を示す。RY2が1価の炭化水素基の場合は、置換基を有していてもよくかつ鎖内にヘテロ原子を有していてもよい。1価の炭化水素基としては、例えば、直鎖であっても分岐していてもよい鎖状アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基が挙げられる。また、置換基としては、例えば、ヒドロキシル基及びフェニル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えばハロゲン原子、酸素原子等が挙げられる。(メタ)アクリル系化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
このような(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリル酸、鎖状アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、フェニル基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
Y2の1種である鎖状アルキル基として、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基である炭素原子数が1〜3の鎖状アルキル基;n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、及びラウリル基等の、炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基が挙げられる。また、RY2の1種であるアリール基としては、例えばフェニル基が挙げられる。
そのようなRY2を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の、芳香環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中では、電極(電極活物質)との密着性向上の観点、及び電解液の溶解パラメータ(SP値)とポリマーのSP値を適度に離すことにより、電解液中での過度な膨潤を抑制し、剛性と抵抗のバランスを両立させる観点から、炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基を有するモノマー、より具体的には、RY2が炭素原子数4以上の鎖状アルキル基である(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。より具体的には、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートから成る群より選択される少なくとも1種が好ましい。なお、炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基における炭素原子数の上限は特に限定されず、例えば14であってもよいが、7が好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、上記炭素原子数が4以上の鎖状アルキル基を有するモノマーに代えて、或いはこれに加えて、RY2としてシクロアルキル基を有するモノマーを含むことも好ましい。傘高いシクロアルキル基の存在により、電解液中での過度な膨潤が抑制でき、これによっても、電極との密着性が更に向上する。
そのようなシクロアルキル基を有するモノマーとしては、より具体的には、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。シクロアルキル基の脂環を構成する炭素原子の数は、4〜8が好ましく、6及び7がより好ましく、6が特に好ましい。また、シクロアルキル基は置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、例えば、メチル基及びt−ブチル基が挙げられる。これらの中では、シクロヘキシルアクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が、アクリル系ポリマー調製時の重合安定性が良好である点で好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、上記のものに代えて、あるいは加えて、好ましくは上記のものに加えて、架橋性モノマーを含むことが好ましい。架橋性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているモノマー、重合中又は重合後に自己架橋構造を与える官能基を有するモノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。上記多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、及び4官能(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、上記と同様の観点から、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
重合中又は重合後に自己架橋構造を与える官能基を有するモノマーとしては、例えば、エポキシ基を有するモノマー、メチロール基を有するモノマー、アルコキシメチル基を有するモノマー、加水分解性シリル基を有するモノマーなどが挙げられる。上記エポキシ基を有するモノマーとしては、アルコキシメチル基を有するエチレン性不飽和モノマーが好ましく、具体的には例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2,3−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
メチロール基を有するモノマーとしては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
上記アルコキシメチル基を有するモノマーとしては、アルコキシメチル基を有するエチレン性不飽和モノマーが好ましく、具体的には例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
上記加水分解性シリル基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、上記アクリル系ポリマーは、様々な品質及び物性を改良するために、上記以外のモノマーをモノマー単位として更に有してもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、カルボキシル基を有するモノマー(但し、(メタ)アクリル酸を除く。)、アミド基を有するモノマー、シアノ基を有するモノマー、ヒドロキシル基を有するモノマー、芳香族ビニルモノマー等が挙げられる。
更に、スルホン酸基、リン酸基等の官能基を有する各種のビニル系モノマー、及び酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等も必要に応じて使用できる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記他のモノマーは、上記各モノマーのうち2種以上に同時に属するものであってもよい。
アミド基を有するモノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
シアノ基を有するモノマーとしては、シアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーが好ましく、具体的には、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等が挙げられる。好ましくはスチレンである。
アクリル系ポリマーは、例えば、通常の乳化重合法によって得られる。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、水性媒体中で上述のモノマー、界面活性剤、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本組成成分とする分散系において、上記各モノマーを含むモノマー組成物を重合することによりアクリル系ポリマーが得られる。重合に際しては、供給するモノマー組成物の組成を全重合過程で一定にする方法、重合過程で逐次又は連続的に変化させることによって生成する樹脂分散体の粒子の形態的な組成変化を与える方法等、必要に応じて様々な方法が利用できる。
界面活性剤は、一分子中に少なくとも1つ以上の親水基と1つ以上の親油基とを有する化合物である。各種界面活性剤には非反応性界面活性剤と反応性界面活性剤があり、好ましくは反応性界面活性剤が好ましく、より好ましくはアニオン性の反応性界面活性剤であり、更に好ましくはスルホン酸基を有する反応性界面活性剤である。
上記界面活性剤は、モノマー組成物100質量部に対して0.1〜5質量部用いることが好ましい。界面活性剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、熱又は還元性物質によりラジカル分解してモノマーの付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤及び有機系開始剤のいずれも用いることができる。また、ラジカル重合開始剤としては、水溶性又は油溶性の重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤は、モノマー組成物100質量部に対して、好ましくは0.05〜2質量部用いることができる。ラジカル重合開始剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記3)ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
上記4)含フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。
電解液中で剛性が高いポリマーは、溶剤に溶解又は分散可能なポリマー(以下「溶剤系ポリマー」という)であっても水に溶解又は分散可能なポリマー(以下「水系ポリマー」という)であってもよい。
溶剤系ポリマーとしては、上記熱可塑性ポリマーの中でも、有機溶媒中での溶解性を有するポリマー及び/又は有機溶媒中での分散性を有するポリマーを使用してよい。
水系ポリマーは、水及び水中に分散した粒状ポリマーを含む水分散体(以下「ラテックス」という)の形態であるか、又はポリマー自体が水との親和性の高い部位を有している形態でよい。
中でも、ポリマーの塗工性又は蓄電デバイスの電気特性の観点から、水系ポリマーが好ましく、ラテックスがより好ましい。ラテックスは、例えば、上記熱可塑性ポリマーを乳化重合により得るときに形成されることができる。
ラテックス中のポリマーとしては、アクリル系ポリマー、含フッ素樹脂及びスチレン−ブタジエンゴムから成る群から選択される少なくとも1つを使用することが好ましい。
アクリル系ポリマーの電解液中での剛性を向上させるために、アクリル系ポリマーの架橋度を適度な範囲に調節することも好ましい。架橋度を過度に増加させるとアクリル系ポリマーの強度が下がることがあるので、アクリル系ポリマーのゲル分率は、85%〜99%であることが好ましく、90%〜99%であることがより好ましい。
水系ポリマーが含フッ素樹脂を含むときには、上記4)で説明された含フッ素樹脂の中でも、ポリフッ化ビニリデン又はフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンを共重合成分として含む共重合体が好ましく、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体等がより好ましい。
含フッ素樹脂の電解液中での剛性を向上させるために、含フッ素樹脂においてヘキサフルオロプロピレンの共重合割合は、例えば、0.5モル%〜15モル%の範囲内であることが好ましく、1モル%〜10モル%の範囲内であることがより好ましい。含フッ素樹脂の分子量を増加させることも好ましく、含フッ素樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、10万以上が好ましく、30万以上がより好ましく、50万以上がさらに好ましい。含フッ素樹脂の結晶化度は、高いほど好ましく、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、特に好ましくは25%以上である。
水系ポリマーがスチレン−ブタジエンゴムを含むときには、スチレン−ブタジエンゴムの電解液中での剛性を向上させるために、スチレン−ブタジエンゴムの架橋度を適度な範囲に調節することが好ましい。架橋度を過度に増加させるとスチレン−ブタジエンゴムの強度が下がることがあるので、スチレン−ブタジエンゴムのゲル分率は、90%〜99%であることが好ましく、95%〜99%であることがより好ましい。
電解液中で剛性が高いポリマーとして熱可塑性ポリマーを使用する場合に、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)は、特に限定されないが、−50℃以上であってもよく、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは20℃〜120℃であり、更に好ましくは20℃〜100℃である。熱可塑性ポリマーのTgが20℃以上であると、上記ポリマー層を備えるセパレータの最表面がべたつくことを抑制でき、ハンドリング性が向上する傾向にある。また、Tgが120℃以下であると、セパレータの電極(電極活物質)との密着性がより良好になる傾向にある。
ここで、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から決定される。具体的には、DSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の変曲点における接線との交点により決定される。
また、「ガラス転移」はDSCにおいて試験片であるポリマーの状態変化に伴う熱量変化が吸熱側に生じたものを指す。このような熱量変化はDSC曲線において階段状変化の形状として観測される。「階段状変化」とは、DSC曲線において、曲線がそれまでの低温側のベースラインから離れ新たな高温側のベースラインに移行するまでの部分を示す。なお、階段状変化とピークとが組み合わされたものも階段状変化に含まれることとする。
更に、「変曲点」とは、DSC曲線の階段状変化部分のこう配が最大になるような点を示す。また、階段状変化部分において、上側を発熱側とした場合に、上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点と表現することもできる。「ピーク」とは、DSC曲線において、曲線が低温側のベースラインから離れてから再度同じベースラインに戻るまでの部分を示す。「ベースライン」とは、試験片に転移及び反応を生じない温度領域のDSC曲線のことを示す。
熱可塑性ポリマーのTgは、例えば、熱可塑性ポリマーの製造に用いるモノマーの種類及び各モノマーの配合比を変更することにより、適宜調整できる。熱可塑性ポリマーのTgは、その製造に用いられる各モノマーについて一般に示されているそのホモポリマーのTg(例えば、「ポリマーハンドブック」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION)に記載)とモノマーの配合比とから、概略で推定することができる。例えば約100℃のTgのポリマーを与えるスチレン、メチルメタクリレ−ト、及びアクリルニトリル等のモノマーを高比率で配合する熱可塑性ポリマーは、高いTgを有する。また、例えば約−80℃のTgのポリマーを与えるブタジエン、約−50℃のTgのポリマーを与えるn−ブチルアクリレ−ト及び2−エチルヘキシルアクリレ−ト等のモノマーを高い比率で配合した熱可塑性ポリマーは、低いTgを有する。
また、ポリマーのTgはFOXの式(下記式(2))より概算することができる。なお、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度としては、上記DSCを用いた方法により測定したものを採用する。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+‥‥+W/Tg+‥‥W/Tg (2)
{式中、Tg(K)は、コポリマーのTgを示し、Tg(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTgを示し、Wは、各モノマーの質量分率を示す}。
また、基材上に形成された熱可塑性ポリマー含有層がガラス転移温度を少なくとも2つ有していることが好ましい。これにより、電極への接着性とハンドリング性とのバランスをより良好に両立することができる。
熱可塑性ポリマー含有層がガラス転移温度を少なくとも2つ有している場合、上記ガラス転移温度のうちの少なくとも1つは、20℃未満の領域に存在することが好ましい。これにより、基材との密着性に一層優れることとなる。その結果、セパレータが電極との密着性により優れるという効果を奏する。同様の観点から、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうちの少なくとも1つが、15℃以下の領域に存在することがより好ましい。更に好ましくは−30℃以上15℃以下の領域に存在することである。熱可塑性ポリマーと基材との密着性を高めつつ、ハンドリング性を更に良好に保持する点から、20℃未満の領域に存在するガラス転移温度が−30℃以上15℃以下の領域にのみ存在することが好ましい。
熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有している場合、上記ガラス転移温度のうちの少なくとも1つが20℃以上の領域に存在することが好ましい。これにより、セパレータと電極との接着性及びハンドリング性に更に優れるという効果を奏する。また、用いる熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうちの少なくとも1つが20℃以上120℃以下の領域に存在することがより好ましい。更に好ましくは、50℃以上120℃以下である。上記範囲にガラス転移温度が存在することで、更に良好なハンドリング性を付与できる。更に、電池作製時の加圧により発現する電極とセパレータとの間の密着性を一層高めることができる。熱可塑性ポリマーと基材との密着性を一層高めつつ、ハンドリング性を更に良好に保持する点から、20℃以上の領域に存在するガラス転移温度は、20℃以上120℃以下の領域にのみ存在することが好ましく、50℃以上120℃以下の領域にのみ存在することがより好ましい。
熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有することは、例えば、2種類以上の熱可塑性ポリマーをブレンドする方法、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーを用いる方法等によって達成できる。しかし、これらの方法に限定されない。コアシェル構造とは、中心部分に属するポリマーと、外殻部分に属するポリマーが異なる組成からなる、二重構造の形態をしたポリマーである。
特に、ポリマーブレンド及びコアシェル構造において、ガラス転移温度の高いポリマーと低いポリマーとを組み合せることにより、熱可塑性ポリマー全体のガラス転移温度を制御できる。また、熱可塑性ポリマー全体に複数の機能を付与できる。
例えば、ブレンドの場合は、特にガラス転移温度が20℃以上の領域に存在するポリマーと、ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在するポリマーとを、2種類以上ブレンドすることにより、耐ベタツキ性と基材への塗れ性とを更に良好に両立することができる。ブレンドする場合の混合比としてはガラス転移温度が20℃以上の領域に存在するポリマーと、ガラス転移温度が20℃未満の領域に存在するポリマーとの比が、0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは、5:95〜95:5であり、更に好ましくは50:50〜95:5であり、特に好ましくは60:40〜90:10である。
コアシェル構造の場合は、外殻ポリマーの種類を変えることにより、他材料(例えばポリオレフィン微多孔膜等)に対する接着性及び相溶性の調整ができる。また、中心部分に属するポリマーの種類を変更することにより、例えば熱プレス後の電極への接着性を高めたポリマーに調整することができる。或いは、粘性の高いポリマーと弾性の高いポリマーとを組み合わせることにより、粘弾性の制御をすることも可能である。
なお、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーのシェルのガラス転移温度は、特に限定されないが、20℃未満が好ましく、15℃以下がより好ましく、−30℃以上15℃以下が更に好ましい。また、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーのコアのガラス転移温度は、特に限定されないが、20℃以上が好ましく、20℃以上120℃以下がより好ましく、50℃以上120℃以下が更に好ましい。
熱可塑性ポリマーは、粒状でもよく、より詳細には、1種類の熱可塑性ポリマー又は複数の熱可塑性ポリマーの混合物から成る粒子であるか、又は上記で説明したコアシェル構造を有してよい。
熱可塑性ポリマーが粒状であるとき、「粒状」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)の測定において、個々のポリマーが輪郭を持った状態のことを指す。したがって、粒状熱可塑性ポリマーは、例えば、扁平形状であっても、球状であっても、多角形状等であってもよい。
熱可塑性ポリマーの電解液中での接着性と剛性を確保し、さらに蓄電デバイスのサイクル特性又はレート特性を向上させるためには、セパレータを電解液に含浸した後に、ポリマーにより被覆される基材の面の面積割合が、100%以下、80%以下、70%以下、60%以下、又は50%以下であることが好ましく、この面積割合は、5%以上、10%以上、15%以上、又は20%以上であることが好ましい。この面積割合は、基材の最表面をSEM(倍率30000倍)で観察することにより測定される。
図7は、セパレータにおいて、基材の少なくとも1つの面に存在するポリマー層の平面形状を示す模式図である。基材上のポリマー層は、例えば、図7に黒塗りで示す平面形状を有していてもよい。ポリマー層は、例えば、ドット状(図7A)、格子目状(図7B)、線状(図7C)、縞状(図7D)、亀甲模様状(図7E)等の平面形状で存在してもよい。
セパレータを備える蓄電デバイスの強度及び高温保存特性の観点から、セパレータ基材上に配置された粒状熱可塑性ポリマー(以下「熱可塑性ポリマー粒子」ともいう)についてボロノイ分割を行って得られるボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)が、0.01以上0.7以下であることが好ましい。
ボロノイ分割とは、ある距離空間上の任意の位置に配置された複数個の点(母点)に対して、同一空間上の他の点がどの母点に近いかによって領域分けすることをいう。このようにして得られた領域を含む図は、ボロノイ図と呼ばれる。一般に、ボロノイ図において、複数の領域の境界線は、各母点の二等分線の一部になり、かつ各領域は多角形(ボロノイ多角形)を形成する。
セパレータ表面を特定の視野で観察するときに、その観察視野において、1つの熱可塑性ポリマー粒子を、平均直径(l)を有する1つの円と見做す。そして、隣接する複数の熱可塑性ポリマー粒子の間に、それぞれ垂直二等分線を引き、各粒子について前記垂直二等分線によって囲まれた多角形を「ボロノイ多角形」と称する。
ボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)とは、下記式:
{式中、sは、ボロノイ多角形の面積の実測値であり、mは、ボロノイ多角形の面積の実測値の平均値であり、かつnは、ボロノイ多角形の総数である}
により算出される値である。観察視野においてボロノイ分割を行なった時に、閉じられていない領域は、上記式の計算対象としないものとする。閉じられていない領域としては、例えば、観察視野の境界に粒子が存在し、その粒子の全体が観察されていない時に、その粒子に対してボロノイ分割を行なうことによって得られる領域が挙げられる。
従って、セパレータ表面の少なくとも一部の領域を撮影して得られた画像において、その画像の端に位置する粒子については、その粒子全体が観察されているか否かを確認することが好ましい。
本実施形態では、上記で説明されたAFMカンチレバーのたわみ量は、AFMフォースモードにより測定されるので、熱可塑性ポリマー面のZ方向の観察結果に関するのに対して、ボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)は、多孔性基材上における熱可塑性ポリマー粒子の配置のばらつきの水準を示す指標となる。この分散(σ)は、熱可塑性ポリマー粒子の塗工面における分布又は凝集状態を表しているので、AFMフォースモードとボロノイ分割の組み合わせによって、熱可塑性ポリマー粒子を含む熱可塑性層の表面の観察を、z方向からx、y及びz方向まで拡張することができる。したがって、熱可塑性ポリマー粒子を含む熱可塑性層の3次元的な構造が、セパレータと電極の接着性並びに蓄電デバイスの強度及び高温保存特性に適合していることは、熱可塑性ポリマー粒子についてボロノイ分割を行なって得られるボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)が0.01以上0.7以下の範囲内であることにより確認される。
さらに、ボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)が0.01以上であると、粒状の熱可塑性ポリマーが適度に凝集してセパレータ表面に配置されていると評価できる。従って、この場合には、電極とセパレータとの間の接着性が十分である傾向にある。この分散(σ)が0.7以下であると、粒状の熱可塑性ポリマーがセパレータ表面において、過度に凝集していないと評価できる。従って、この場合には、セパレータ表面におけるイオン抵抗が均一化されており、表面の特定領域にリチウムイオンが集中せず、金属リチウムの発生が抑制されるので、蓄電デバイスの高温保存特性に優れる傾向にある。この分散(σ)の値は、0.01以上0.6以下であることが好ましく、0.01以上0.5以下であることがより好ましく、0.1以上0.4以下であることが更に好ましく、0.1以上0.35以下であることが特に好ましい。
粒状の熱可塑性ポリマーの平均粒径は、好ましくは10nm〜2,000nm、より好ましくは50nm〜1,500nm、更に好ましくは100nm〜1,000nm、特に好ましくは130nm〜800nmであり、とりわけ好ましくは150〜800nmであり、最も好ましくは200〜750nmである。この平均粒径を10nm以上とすることは、少なくとも多孔膜を含む基材に粒状の熱可塑性ポリマーを塗工したときに、基材の孔に入り込まない程度の粒状の熱可塑性ポリマーの寸法が確保されることを意味する。従って、この場合、電極とセパレータとの間の接着性、及び蓄電デバイスのサイクル特性を向上させるという観点から好ましい。また、この平均粒径を2,000nm以下とすることは、電極とセパレータとの接着性、及び蓄電デバイスのサイクル特性を両立させるために必要な量の粒状の熱可塑性ポリマーを基材上に塗工するという観点から好ましい。粒状の熱可塑性ポリマーの平均粒径は、下記実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
熱可塑性ポリマー粒子の面積密度、及び熱可塑性ポリマー粒子についてボロノイ分割を行って得られるボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)を知るためには、セパレータ表面を観察する。その観察手段は、セパレータ上に塗工された熱可塑性ポリマー粒子の寸法又は分布状態によって適宜選定され、任意の方法を採用することが可能である。例えば、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、光学顕微鏡、微分干渉顕微鏡等を用いることが可能である。これらの中でも、本実施形態のような分散粒子の分布状態を扱う場合には、電子顕微鏡又は原子間力顕微鏡を用いるのが好適である。
観察視野内には、セパレータ表面に塗工されたポリマー層の平均的な観察視野が確保されるべきである。また、当該観察視野における投影面積は、分散粒子の平均的な分布状態が把握されるように適宜調整されるべきである。例えば、計算対象として採用される分散粒子は、約80個から200個/1視野であることが好ましい。この観察視野は、予め設定された観測手段及び倍率によってポリマー層を観察することにより、得ることができる。例えば、図1は、観測手段を走査型電子顕微鏡とし、倍率を1万倍として、ポリマー層の表面を観察した写真の一例である。図1は、粒子径約500nmの熱可塑性ポリマー粒子がポリマー層の表面に分散して存在している状態を明確に捉えている。このように熱可塑性ポリマー粒子がポリマー層の表面に分散した状態を捉えることにより熱可塑性ポリマー粒子の分散状態を、ボロノイ分割によって分析することができる。
走査型電子顕微鏡を用いる観察においては、熱可塑性ポリマー粒子の粒子径に応じて、ボロノイ分割による分析に適切な倍率を設定する。具体的には、1視野に観察される熱可塑性ポリマー粒子の数が、好ましくは40個〜300個、より好ましくは60個〜240個、更に好ましくは80個〜200個となる倍率に設定する。このことにより、ボロノイ分割による分析を適切に行うことができる。例えば、粒子径が500nm程度であれば倍率は1万倍とすることが適切であり、粒子径が200nm程度であれば倍率は3万倍程度の倍率設定とすることが、ボロノイ分割による分析に適切である。
上記観察方法により得られた観察視野に含まれる熱可塑性ポリマー粒子を特定する。例えば、肉眼で、又は画像処理ソフトウェアを用いて、観察視野から熱可塑性ポリマー粒子を特定する。図2は、図1の観察視野に含まれる熱可塑性ポリマー粒子を、画像処理ソフトウェアを用いて自動的に特定した結果を示す一例である。予め設定された方法及び倍率の観察視野において熱可塑性ポリマー粒子を特定することにより、粒子の総数、各粒子の直径、及び各粒子の投影面積が計算される(後述、図3も参照)。その場合、観察視野内に全体が含まれている粒子のみを特定することが好ましい。
セパレータ表面の特定の観察視野において特定された熱可塑性ポリマー粒子について、上記で定義されたボロノイ分割を行なうことができる。具体的には、セパレータ表面に熱可塑性ポリマーを塗工した後の塗工膜表面を撮影して、画像を得る。得られた画像中で特定された熱可塑性ポリマー粒子を平均直径(l(エル))の円と見なして、ボロノイ分割を行なうことにより、ボロノイ多角形を描画することができる。例えば、手動で、又は画像処理ソフトウェアを用いて、ボロノイ多角形を描画してよい。そして、描画されたボロノイ多角形の面積を算出する。
例えば、図3は、図2で特定された複数の熱可塑性ポリマー粒子にボロノイ分割を行なってボロノイ多角形を得た結果の一例である。図3に示されるボロノイ多角形の中で、閉じられた領域と対応しているボロノイ多角形の数及び面積を、画像処理ソフトウェアを用いて自動的に算出した結果を図4に示す。
上記の観察方法及び画像処理方法により、観察視野における投影面積が決定され、かつ該視野における熱可塑性ポリマー粒子の総数、投影面積、及びボロノイ多角形の面積が得られる。そして、上記の定義に従って、該視野における熱可塑性ポリマー粒子について、面積密度、及びボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)を算出することができる。
但し、熱可塑性ポリマー粒子の分布は、観測視野によって変化することがある。従って、面積密度及び分散(σ)としては、好ましくは複数の観察視野についてそれぞれ算出された値の平均値を採用することが好ましい。この視野数としては、3以上とすることが好ましい。
特に好ましくは、次のように決定された95視野について算出された値の平均値を採用することである。
i)各測定視野:走査電子顕微鏡で撮像した画像
ii)視野の設定方法:
a)起点の視野を設定し、
b)前記起点の視野に対して横方向に順次に隣接する領域からなる視野の9個と、縦方向に順次に隣接する領域からなる視野の9個と、前記起点の視野と、からなる19視野を設定し、
c)前記19視野によって規定される領域を起点の区画として設定し、
d)前記起点の区画に対して10mm間隔で一軸方向に順次に隣接する領域からなる区画を4個設定し、
e)前記4個の区画について、前記起点の区画における19視野と相似の位置に各19視野を設定し、そして
f)前記4個の区画及び前記起点の区画における全95視野(19視野×5区画)を測定視野として設定する。
前記各測定視野は、1視野に観察される熱可塑性ポリマー粒子の数が80〜200個となる倍率に設定して撮像された撮像画像であることが好ましい。
以下、図を参照しつつ、本実施形態における95視野の好ましい設定方法を説明する。
i)撮像画像としては、上記のとおり、倍率1万倍の走査電子顕微鏡で撮像した画像を採用することが好ましい。例えば図5に示す画像である。図5は、倍率1万倍の走査電子顕微鏡で撮像した、基材上の熱可塑性ポリマー粒子の画像の一部をモデル的に示した図である。
この図5の画像において、先ず、起点の視野(10)を設定する。1視野は倍率1万倍の走査電子顕微鏡で撮像した画像により構成されるため、その1視野のスケールは10μm×10μm程度であり、熱可塑性ポリマー粒子を基準としたボロノイ分割評価に適した視野を構成する。次に、前記起点の視野(10)に対して横方向(X軸方向)に順次に隣接する9個の視野(1〜9)を設定する。これらの視野(1〜9)は、それぞれ、起点の視野(10)と同じ倍率の撮像画像からなり、隣接する領域と一辺を共通にして一方向に順次に設定される。次に、前記起点の視野(10)に対して縦方向に順次に隣接する9個の視野(11〜19)を設定する。これらの視野(11〜19)は、それぞれ、起点の視野(10)と同じ領域からなり、隣接する領域と一辺を共通にして一方向に順次に設定される。
続いて、前記の19視野によって規定される領域を起点の区画(I)として設定する。該起点の区画(I)は、図5における視野1〜10の上辺と、視野10〜19の右辺とを2辺とする正方形の領域からなるため、1区画のスケールは100μm×100μm程度であり、倍率1,000倍の走査電子顕微鏡で撮像した画像に相当し、区画(I)を構成する19視野から算出した分散はセパレータ表面の状態をより正確に代表した値として評価できる。
本実施態様においては、更にセパレータ表面の状態を正確に評価すべく、上記1区画と同等の区画を5区画設けて評価を実施する。具体的には、図6を参照する。図6は、図5に示した基材上の熱可塑性ポリマー粒子の画像の全体像である。該図6において、前記起点の区画(I)に対して、10mm間隔で一軸方向に順次に隣接する4個の区画(II〜V)を設定する。これら4個の区画は、それぞれ、起点の区画(I)と同じ領域から成る。
次いで、これら4個の区画(II〜V)について、前記起点の区画(I)における19視野と相似の位置に各19視野を設定する。そして、前記4個の区画(II〜V)及び前記起点の視野(I)における全95視野(19視野×5区画)を、基材上における熱可塑性ポリマー粒子の観察視野として設定する。
上記のセパレータ表面の観察は、セパレータ表面のうちの、イオン伝導に関与していない領域について行われることが好ましい。例えば、製造直後のセパレータであって未だ蓄電素子に組み込まれていない状態のセパレータについて観察することができる。蓄電素子が使用中又は使用後である場合には、セパレータのうちの、所謂「耳」と呼ばれる部分(セパレータの外縁部近傍であって、イオン伝導に関与していない領域)について観察することも、本実施形態における好ましい態様である。
上記評価方法から理解されるとおり、95視野を観察対象とする場合、長さ約40mmのセパレータ片を測定対象とするため、セパレータ表面における熱可塑性ポリマーの分散状態を正確に評価することができる。
熱可塑性ポリマー粒子について、上記のようなボロノイ分割ができるということは、基材上に形成されたポリマー層において、該熱可塑性ポリマー粒子が実質的に重なり合うことなく、単層の粒子として存在していることを示している。例えばポリマー層中で熱可塑性ポリマー同士が幾重にも重なり合う場合には、単一の粒子が占有する面積という概念が成立しないため、ボロノイ分割を行うことができない。
本実施形態におけるセパレータは、基材上に形成されたポリマー層中の熱可塑性ポリマー粒子が、実質的に重なり合うことがないように配置されたうえで、上記の面積密度、及び分散(σ)が、それぞれ、上記した範囲に調整されることが好ましい。
熱可塑性ポリマーの面積密度及び分散(σ)を上記の範囲に調整する手段としては、限定されるものではないが、例えば、基材に塗工する塗工液における熱可塑性ポリマー含有量、塗工液の塗工量、並びに塗工方法及び塗工条件を変更することにより、調整することができる。より具体的には、熱可塑性ポリマー溶液の粘度を高く調整し、多孔膜の被塗工面に対してせん断力をかけながら塗工することにより、熱可塑性ポリマーを上記の範囲に分散して配置させることができる。
ポリマー層の基材上での存在形態(パターン)は、特に限定されるものではないが、上記分散を満たすように基材の全面にわたって熱可塑性ポリマー粒子が相互に分散して存在することが好ましい。熱可塑性ポリマー粒子が一部の領域においてクラスターを形成していてもよいが、全体として上記分散の範囲を満たす程度に各粒子が分散していることが必要となる。また、その一部の領域においてポリマー粒子同士が積み重なっていてもよいが、全体として上記分散の範囲を満たす程度に各粒子が分散していることが必要となる。
基材上でポリマー層がパターン状に存在する場合には、上記の面積密度及び分散(σ)は、それぞれ、ポリマー層が存在する領域を撮影した画像を用いて評価されることが好ましい。
[熱可塑性ポリマーの塗工方法]
セパレータの製造方法の一態様は、上記で説明された熱可塑性ポリマーを含む塗工液を多孔性基材上に塗工する工程を含む。
塗工液の塗工条件としては、熱可塑性ポリマーの多孔性基材に対する塗工面積割合が、5%〜70%であることが好ましく、ポリマーの塗工目付が、0.05g/m〜1.0g/mであることが好ましく、かつ/又はポリマーの塗工厚みが、0.1μm〜3μmであることが好ましい。上記で説明されたボロノイ分割に供されることができる粒状熱可塑性ポリマーを含む塗工液を塗工する場合には、塗工厚みが、0.1μm〜0.8μmであることが好ましい。
塗工液を多孔性基材に塗工する方法としては、特に限定されないが、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗工法、インクジェット塗工法等が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性ポリマーの塗工形状の自由度が高く、かつ好ましい面積割合を容易に得られるという観点から、グラビアコーター法又はスプレー塗工法が好ましい。
多孔膜を含む基材に熱可塑性ポリマーを塗工する場合、塗工液が基材の内部にまで入り込んでしまうと、接着性樹脂が孔の表面及び内部を埋めてしまい透過性が低下してしまう。そのため、塗工液の媒体としては、熱可塑性ポリマーの貧溶媒が好ましい。塗工液の媒体として熱可塑性ポリマーの貧溶媒を用いた場合には、多孔膜の内部に塗工液は入り込まず、接着性ポリマーは主に多層微多孔膜の表面上に存在するため、透過性の低下を抑制する観点から好ましい。このような媒体としては水が好ましい。また、水と併用可能な媒体は、特に限定されないが、エタノール、メタノール等を挙げることができる。
塗工前に、基材に表面処理を施すと、塗工液を塗工し易くなると共に、基材と接着性ポリマーとの接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法としては、多層微多孔膜の多孔質構造を著しく損なわなければ特に限定はなく、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
塗工後に塗工膜から溶媒を除去する方法は、ポリオレフィン微多孔膜又は多層微多孔膜に悪影響を及ぼさないならば、限定されない。例えば、ポリオレフィン微多孔膜又は多層微多孔膜を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、接着性ポリマーに対する貧溶媒に浸漬して接着性ポリマーを凝固させると同時に溶媒を抽出する方法等を用いてよい。
[フィラー多孔層]
フィラー多孔層は、無機フィラー及び樹脂バインダを含む。
(無機フィラー)
フィラー多孔層に使用する無機フィラーとしては、特に限定されないが、200℃以上の融点を持ち、電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
これらの中でも、電気化学的安定性及びセパレータの耐熱特性を向上させる観点から、
アルミナ、水酸化酸化アルミニウム等の酸化アルミニウム化合物;及び
カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト等の、イオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物が好ましい。
酸化アルミニウム化合物としては、透過性および耐熱性の観点から、水酸化酸化アルミニウム(AlO(OH))が特に好ましい。
イオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物としては、安価で入手も容易なため、主としてカオリン鉱物から構成されているカオリンがより好ましい。カオリンには、湿式カオリン及びこれを焼成処理して成る焼成カオリンが知られている。本発明においては、焼成カオリンが特に好ましい。焼成カオリンは、焼成処理の際に、結晶水が放出されており、更に不純物も除去されていることから、電気化学的安定性の点で特に好ましい。
無機フィラーの平均粒径は、0.01μmを超えて4.0μm以下であることが好ましく、0.2μmを超えて3.5μm以下であることがより好ましく、0.4μmを超えて3.0μm以下であることが更に好ましい。無機フィラーの平均粒径を上記範囲に調整することは、フィラー多孔層の厚さが薄い場合(例えば、7μm以下)であっても、高温における熱収縮を抑制する観点から好ましい。無機フィラーの粒径及びその分布を調整する方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の適宜の粉砕装置を用いて無機フィラーを粉砕して粒径を小さくする方法等を挙げることができる。
無機フィラーの形状としては、例えば、板状、鱗片状、針状、柱状、球状、多面体状、塊状等が挙げられる。これらの形状を有する無機フィラーの複数種を組み合わせて用いてもよい。
無機フィラーが、フィラー多孔層中に占める割合は、無機フィラーの結着性、セパレータの透過性、及び耐熱性等の観点から適宜決定されることができる。フィラー多孔層中の無機フィラーの割合は、20質量%以上100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上99.99質量%以下、更に好ましくは80質量%以上99.9質量%以下、特に好ましくは90質量%以上99質量%以下である。
(樹脂バインダ)
フィラー多孔層に含有される樹脂バインダの種類としては、特に限定されないが、リチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲において電気化学的に安定な樹脂バインダを用いることが好ましい。
このような樹脂バインダの具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂;フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム;スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の、融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂等が挙げられる。
樹脂バインダとしては、樹脂ラテックスバインダを用いることが好ましい。樹脂バインダとして樹脂ラテックスバインダを用いた場合、該バインダと無機フィラーとを含むフィラー多孔層を具備するセパレータは、樹脂バインダ溶液を基材上に塗布する工程を経て樹脂バインダを多孔膜上に結着させたセパレータと比較して、イオン透過性が低下し難く、出力特性の高い蓄電デバイスを与える傾向にある。更に、該セパレータを有する蓄電デバイスは、異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い傾向にある。
樹脂ラテックスバインダとしては、電気化学的安定性及び結着性を向上させる観点から、脂肪族共役ジエン系モノマー及び不飽和カルボン酸モノマー、並びにこれらと共重合可能な他のモノマーを共重合して得られるものが好ましい。この場合の重合方法に特に制限はないが、乳化重合が好ましい。乳化重合の方法としては、特に制限はなく、既知の方法を用いることができる。モノマー及びその他の成分の添加方法については、特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、及び連続添加方法の何れも採用することができ、重合方法は、一段重合、二段重合、又は三段階以上の多段階重合の何れも採用することができる。
樹脂バインダの平均粒径は、50〜500nmであることが好ましく、より好ましくは60〜460nm、更に好ましくは80〜250nmである。樹脂バインダの平均粒径が50nm以上である場合、該バインダと無機フィラーとを含むフィラー多孔層を具備するセパレータは、イオン透過性が低下し難く、高い出力特性の蓄電デバイスを与え易い。更に、異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性を有する蓄電デバイスが得られ易い。樹脂バインダの平均粒径が500nm以下である場合、良好な結着性を発現し、多層多孔膜とした場合に熱収縮が良好となり、安全性に優れる傾向にある。
樹脂バインダの平均粒径は、重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pHなどを調整することで制御することが可能である。
フィラー多孔層の層厚は、耐熱性及び絶縁性を向上させる観点から、0.5μm以上であることが好ましく、電池の高容量化と透過性を向上させる観点から50μm以下であることが好ましい。
フィラー多孔層の層密度は、0.5〜3.0g/cmであることが好ましく、0.7〜2.0cmであることがより好ましい。フィラー多孔層の層密度が0.5g/cm以上であると、高温での熱収縮率が良好となる傾向にあり、3.0g/cm以下であると、透気度が低下する傾向にある。
フィラー多孔層の形成方法としては、例えば、基材の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂バインダとを含む塗工液を塗工する方法を挙げることができる。この場合の塗工液は、分散安定性及び塗工性の向上のために、溶剤、分散剤等を含んでいてもよい。
塗工液を基材に塗工する方法は、必要とする層厚及び塗工面積を実現できる限り特に限定されない。樹脂バインダを含んだフィラー原料と、ポリマー基材原料と、を共押出法により積層して押出してもよいし、基材とフィラー多孔膜とを個別に作製した後に貼り合せてもよい。
[蓄電デバイス用セパレータ]
セパレータは、多孔性基材上に熱可塑性層を備えることにより、電極活物質との接着性に優れる。
本実施形態に係るセパレータの曲げ強度は、セパレータと電極の接着性及びセパレータを備える非水電解液電池の強度の観点から、好ましくは98.1×10N/m(10kgf/cm)以上、より好ましくは196.2×10N/m以上、さらに好ましくは294.3×10N/m以上である。
セパレータの曲げ強度は、実施例で説明される方法及び条件に従って測定される。実施例で詳述されるが、曲げ強度を測定するために、正極と負極の間にセパレータを介在させて巻取って電極組立体を製造する。電極組立体の構成に基づくと、非水電解液電池は電極組立体によりモデル化されるので、曲げ強度が高いほど、セパレータを備える非水電解液電池の強度も高い。曲げ強度が、98.1×10N/m以上であるとき、電解液中でセパレータと電極の間にせん断応力が掛かったとしても、非水電解液電池は、非水電解液電池の変形又はセパレータと電極の界面剥離を抑制するのに十分な強度を有する。非水電解液電池の強度の観点から、セパレータの曲げ強度は高いほど好ましく、かつ曲げ強度の上限値は、非水電解液電池の設計に応じて決定されるので制限されない。
熱可塑性層が露出しているセパレータ最表面に対して、アルミニウム箔を、温度110℃及び圧力1MPaの条件下で5秒間に亘って、セパレータの積層方向にプレスした場合には、セパレータとアルミニウム箔の間の剥離強度が、1N/m以上であることが好ましく、2N/m以上であることがより好ましく、3N/m以上であることがさらに好ましい。セパレータとアルミニウム箔の間の剥離強度は、実施例で説明される方法により測定される。
アルミニウム箔は電極集電体として使用されるので、セパレータとアルミニウム箔の間の剥離強度の測定によって、セパレータと電極の接着性を簡便に確認することができる。剥離強度が1N/m未満であると、非水電解液電池の組立工程又は使用時に、電極とセパレータの剥離が見られ、非水電解液電池の性能が低下する原因となる。
セパレータの厚みは、蓄電デバイスの剛性とセパレータの強度を確保するという観点から、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、蓄電デバイスの充放電特性の観点から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。セパレータ基材上にポリマーが存在する場合には、ポリマーが存在するセパレータ部を測定することにより得られた厚みが、セパレータの厚みである。
セパレータの透気度は、蓄電デバイスの良好な充放電特性を得るために、少なくとも1つの多孔膜を含む基材の透気度と比べて、同等であるか、又は高いことが好ましい。セパレータの透気度は、基材としてのポリオレフィン微多孔膜を製造する際の延伸温度又は延伸倍率、基材上に存在するポリマーの面積割合又は存在形態等により調節される。
セパレータの耐熱性の指標であるショート温度は、蓄電デバイスの安全性の観点から、140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることがさらに好ましい。
[蓄電デバイス]
本実施形態に係るセパレータを電極と接着することにより、セパレータと電極とが積層している積層体を得ることができる。
積層体は、捲回時のハンドリング性並びに蓄電デバイスのレート特性及びサイクル特性だけでなく、接着性及び透過性にも優れる。そのため、積層体は、例えば、非水電解液二次電池等の電池、コンデンサー、キャパシタ等の蓄電デバイスに好適に使用されることができる。
積層体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態に係るセパレータと電極とを重ね、必要に応じて加熱及び/又はプレスする工程を含んでよい。加熱及び/又はプレスは、電極とセパレータとを重ねる際に行われることができる。電極とセパレータとを重ねた後に円又は扁平な渦巻き状に捲回して、捲回体を得ることもできる。捲回体に対して、加熱及び/又はプレスを行ってもよい。
幅10〜500mm(好ましくは80〜500mm)及び長さ200〜4000m(好ましくは1000〜4000m)の縦長形状のセパレータを調製して、電極と重ねることができる。
積層体は、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順に平板状に積層し、加圧及び必要に応じて補助的に加熱して製造することもできる。
加圧時の圧力は、1MPa〜30MPaであることが好ましい。加圧時間は5秒〜30分であることが好ましい。加熱温度は、40℃〜120℃であることが好ましい。加熱時間は、5秒〜30分であることが好ましい。さらに、加熱をしてから加圧しても、加圧をしてから加熱をしても、加圧と加熱を同時に行ってもよい。これらのなかでも、加圧と加熱を同時に行うことが好ましい。
蓄電デバイスが二次電池である場合には、積層体を円又は扁平な渦巻状に捲回して捲回体を得て、缶、パウチ型ケース等の収納体に捲回体を収納し、更に電解液を注入し、所望により加熱及び/又はプレスをさらに行って、二次電池を得ることができる。
本実施形態に係るセパレータを用いて非水電解液二次電池を製造する場合には、既知の正極、負極及び非水電解液を使用してよい。
正極材料としては、特に限定されないが、例えば、LiCoO、LiNiO、スピネル型LiMnO、オリビン型LiFePO等のリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
負極材料としては、特に限定されないが、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種の合金材料等が挙げられる。
非水電解液としては、特に限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩が挙げられる。
なお、上述した各種物性の測定値は、特に断りの無い限り、後述する実施例における測定法に準じて測定される値である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下の製造例、実施例及び比較例において使用された各種物性の測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。なお、特に記載のない限り、各種測定および評価は、室温23℃、1気圧及び相対湿度50%の条件下で行われた。
<測定方法及び評価方法>
[粘度平均分子量Mv]
ASRM−D4020に準拠して、デカリン溶剤中、135℃における極限粘度[η]を求めた。この[η]値を用いて、下記数式の関係から粘度平均分子量Mvを算出した。
ポリエチレンの場合:[η]=0.00068×Mv0.67
ポリプロピレンの場合:[η]=1.10×Mv0.80
[気孔率]
ポリオレフィン多孔性基材から10cm×10cm角のサンプルを切り取り、その体積(cm)及び質量(g)を求めた。これらの値を用い、該多孔性基材の密度を0.95(g/cm)として、気孔率を下記数式:
気孔率(%)=(1−質量/体積/0.95)×100
により計算した。
[透気度(秒/100cc)]
JIS P−8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計G−B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度とした。
[突刺強度(g)]
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーでポリオレフィン多孔性基材を固定した。次に、固定された多孔性基材の中央部を、先端の曲率半径0.5mmの針を用いて、突刺速度2mm/秒で、25℃雰囲気下において突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として突刺強度(g)を得た。
[平均孔径(μm)]
ポリオレフィン微多孔膜の平均孔径は、下記方法で測定した。
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さいときはポアズイユの流れに従うことが知られているので、ポリオレフィン微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、またポリオレフィン微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
平均孔径d(μm)は、空気の透過速度定数Rgas(m/(m・秒・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m/(m・秒・Pa))、空気の分子速度ν(m/秒)、水の粘度η(Pa・秒)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×10
ここで、Rgasは、上記で説明した方法により得られた透気度から次式を用いて求められた。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm/(cm・秒・Pa))から次式を用いて求められた。
liq=透水度/100
なお、透水度は、直径41mmのステンレス製の透液セルに、予めエタノールに浸しておいたポリオレフィン微多孔膜をセットし、膜のエタノールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120秒間経過した際の透水量(cm)を測定することにより、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量として計算された。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10−2kg/mol)から次式を用いて求められた。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
[ガラス転移温度の測定]
熱可塑性ポリマーを試料として、下記の方法によってガラス転移温度を測定した。なお、シェル部のガラス転移温度は、シードポリマーを使用しない他は、後述される項目「シェルの製造」と同じ操作を行って、シェル部と同一の組成を有するポリマー粒子を得て、該粒子を試料として、下記の方法によって測定した。
試料約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)にて窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。測定条件は下記の通りとした。
1段目昇温プログラム:70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
2段目降温プログラム:110℃から毎分40℃の割合で降温。−50℃に到達後5分間維持。
3段目昇温プログラム:−50℃から毎分15℃の割合で130℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。
ベースライン(得られたDSC曲線におけるベースラインを高温側に延長した直線)と、変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)における接線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
[粒子径の測定]
熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は、粒子径測定装置(日機装株式会社製、Microtrac UPA150)を使用し、測定した。測定条件としては、ローディングインデックス=0.15〜0.3、測定時間300秒とし、得られたデータにおける50%粒子径の数値を粒子径として記載した。
[AFMカンチレバーたわみ量測定]
実施例又は比較例で得られたセパレータの熱可塑性層の表面状態(但し、熱可塑性ポリマーが粒子状である場合、熱可塑性ポリマー粒子の頂点の状態)について、原子間力顕微鏡(AFM)のフォースカーブ測定により確認した。このフォースカーブ測定は、極微小部分の針による圧縮試験であり、押し付け力による変形度合いを測定するため、硬さの指標となる。
具体的には、以下の条件に従って、原子間力顕微鏡を用い、ばね定数0.4N/mのカンチレバー先端の探針を熱可塑性層の表面又は熱可塑性ポリマー粒子に接触させ、押し付け力に基づくフォースカーブを作成し、フォースカーブからカンチレバーのたわみ量を算出した。10点測定(但し、熱可塑性ポリマーが粒子状である場合、間隔が10μm以上である個別の粒子をそれぞれ測定し、粒子頂点のたわみ量を用いた)を行なって、たわみ量の平均値を評価値(単位:nm)として採用した。
原子間力顕微鏡:Dimension Icon(Bruker社製、商品名)
測定モード:Peak Force QNM
カンチレバー:Scan Asyst−Air
[Scan Asyst−Airの詳細]
(形態、共振周波数、長さ及び幅)
形態:三角形(Triangular)
共振周波数:70kHz(通常)
45kHz(最少)
95kHz(最大)
バネ定数:0.4N/m(通常、測定時)
0.2N/m(最少)
0.8N/m(最大)
長さ:115μm(通常)
100μm(最少)
130μm(最大)
幅:25μm(通常)
20μm(最少)
30μm(最大)
(チップ(探針)仕様)
Geometry:Rotated(Symmetric)
Tip Height(h):2.5〜8.0μm
Front Angle(FA):15±2.5°
Back Angle(BA):25±2.5°
Side Angle(SA):17.5±2.5°
Tip Radius(Nom):2nm
Tip Radius(Max):12nm
Tip SetBack(TSB)(Nom):5μm
Tip Set Back(TSB)(RNG):3〜7μm
(カンチレバー仕様)
Material:窒化ケイ素(Silicon Nitride)
Geometry:三角形(Triangular)
Cantilevers Number:1
Cantilever Thickness(Nom):0.65μm
Cantilever Thickness(RNG):0.6〜0.7μm
Back Side Coating:反射アルミニウム
(Reflective Aluminum)
上記で説明された原子間力顕微鏡でフォースカーブ測定を行なうときに、実施例6及び比較例1に係る熱可塑性層のx−y面を観察して、熱可塑性層の表面の凹凸と、熱可塑性層に含まれる熱可塑性ポリマー粒子のたわみ量(すなわち、変形量)を表す画像も作成した(図8〜11)。なお、図9及び11には、粒子頂点の変形量の単位として、任意単位(a.u.)が示されているが、この任意単位は実測単位(単位:nm)に置き換えて用いることができる(図9及び11に示されるグレースケールバー(単位:nm)参照)。
[セパレータと電極との接着性]
基材又は実施例若しくは比較例で得られたセパレータと、被着体としての正極集電体(冨士加工紙株式会社製アルミニウム箔、厚さ:20μm)とをそれぞれ30mm×150mmに切り取り、重ね合わせて積層体を得た。積層体をテフロン(登録商標)シート(ニチアス株式会社製ナフロン(商標)PTFEシート TOMBO−No.9000)で挟んでサンプルを得た。得られた各サンプルについて、温度110℃及び圧力1MPaの条件下で、5秒間に亘って積層方向にプレスを行うことによって試験用プレス体を得た。
得られた各試験用プレス体のセパレータと正極集電体との間の剥離強度を、株式会社島津製作所製オートグラフAG−IS型(商標)を用いて、JIS K6854−2に準じて引張速度200mm/分で測定した。剥離強度の値(単位:N/m)に基づいて、基材又はセパレータと電極との接着性を評価した。
[セル(電極組立体)曲げ強度]
a.電極組立体の製造
正極活物質としてLiCoO、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ使用して、正極活物質:バインダ:導電材の質量比が94:3:3になるように、活物質、バインダ及び導電材をミキサーでN−メチル−2−ピロリドンに分散させ、混合して、正極活物質コーティング組成物を製造した。ドクターブレードを用いて、厚さ14μmのアルミ箔の両面に、正極活物質コーティング組成物を厚さ94μmでコーティングして乾燥させた。その後、ロールプレスによるプレスを実施して、真空乾燥機でコーティング層内の水分を除去して正極を製造した。
負極活物質としてグラファイト、及びバインダとして、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)の混合物(SBR:CMCの質量比は、1:1である)を、それぞれ使用して、負極活物質:バインダの質量比が96:4となるように、活物質及びバインダをミキサーでN−メチル−2−ピロリドンに分散させ、混合して、負極活物質コーティング組成物を製造した。その後、厚さ8μmの銅箔の両面に負極活物質コーティング組成物を厚さ120μmでコーティングしたことを除いて、正極の製造と同様に負極を製造した。
得られた正極と負極を100cm×4.2cmでそれぞれ裁断し、さらに実施例又は比較例で得られたセパレータを100cm×4.4cmに裁断した後、正極と負極の間にセパレータを介在させて7cm(長さ方向)×4.4cm(幅方向)に巻取って、電極組立体(セル)を製造した。
b.曲げ強度測定
製造された電極組立体(セル)を、9kgf/cm(0.88MPa)の圧力及び80℃の温度で10秒間に亘って圧着した。その後、3点曲げ試験機(「万能試験機(UTM)」とも呼ばれる)を使用して、下記条件(i)〜(iii)を除いて、ASTM D790に記載された曲げ試験方法に従って、圧着された電極組立体の曲げ強度を測定した。
(i)支点間距離が60mmである。
(ii)電極組立体の長さ方向(MD方向)が、2つの支持台を結ぶ方向と平行になるように、圧着された電極組立体をUTMに配置する。
(iii)圧着された電極組立体に対して突き刺し冶具を2.8mm/分の速度で下降させる。
測定された曲げ強度を下記基準に従って評価した:
A(著しく良好):曲げ強度が、294.3×10N/m以上(30kgf/cm以上)である。
B(良好):曲げ強度が、196.2×10N/m以上294.3×10N/m未満(20kgf/cm以上30kgf/cm未満)である。
C(許容):曲げ強度が、98.1×10N/m以上196.2×10N/m未満(10kgf/cm以上20kgf/cm未満)である。
D(不良):曲げ強度が、98.1×10N/m未満(10kgf/cm未満)である。
[高温保存特性]
a.正極の作製
正極活物質としてニッケル、マンガン、コバルト複合酸化物(NMC)(Ni:Mn:Co=1:1:1(元素比)、密度4.70g/cm)を90.4質量%、導電助材としてグラファイト粉末(KS6)(密度2.26g/cm、数平均粒子径6.5μm)を1.6質量%及びアセチレンブラック粉末(AB)(密度1.95g/cm、数平均粒子径48nm)を3.8質量%、並びにバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(密度1.75g/cm)を4.2質量%の比率で混合し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて塗布し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧縮成形することにより、正極を作製した。この時の正極活物質塗布量は109g/mであった。
b.負極の作製
負極活物質としてグラファイト粉末A(密度2.23g/cm、数平均粒子径12.7μm)を87.6質量%及びグラファイト粉末B(密度2.27g/cm、数平均粒子径6.5μm)を9.7質量%、並びにバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)(固形分濃度1.83質量%水溶液)及びジエンゴム系ラテックス1.7質量%(固形分換算)(固形分濃度40質量%水溶液)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、負極を作製した。この時の負極活物質塗布量は5.2g/mであった。
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより、非水電解液を調製した。
d.電池組立
各実施例及び比較例で得られた蓄電素子用セパレータを24mmφ、正極及び負極をそれぞれ16mmφの円形に切り出した。正極と負極の活物質面とが対向するように、負極、セパレータ、正極の順に重ね、線圧2.3kg/cm、ロール速度2m/分、及び表5の記載のプレス温度にてロールプレスしたうえで、蓋付きステンレス金属製容器に収容した。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と、それぞれ接していた。この容器内に前記非水電解液を0.4ml注入して密閉することにより、電池を組み立てた。
上記a〜dのように組み立てた簡易電池を用いて、高温保存特定の評価を行った。
上記の電池を、25℃気下、3mA(約0.5C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を3mAから絞り始めるという方法により、合計6時間の充電を行った。その後、3mAの電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。
次に25℃雰囲気下、6mA(約1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計3時間充電を行った。そして6mAの電流値で電池電圧3.0Vまで放電した時の放電容量をA(mAh)とした。
次に25℃雰囲気下、6mA(約1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計3時間充電を行った。充電状態に保持したセルを60℃雰囲気下で7日間保持した。その後セルを取り出し、25℃雰囲気下、6mAの電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。次に25℃雰囲気下、6mA(約1.0C)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計3時間充電を行った。更に6mAの電流値で電池電圧3.0Vまで放電した時の放電容量をB(mAh)とした。
そして、BのAに対する比率を用いて、以下の基準により高温保存特性を評価した。
A(良好):放電容量Bの放電容量Aに対する比率が70%以上であった場合
B(許容):放電容量Bの放電容量Aに対する比率が70%未満であった場合
[熱可塑性層の観察方法(ボロノイ分割)]
i)3視野を用いる評価
走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、ポリマー粒子の粒径に応じて倍率1万倍又は3万倍でセパレータ上のポリマー層表面を3つの視野で写真撮影した。これら3つの視野に含まれる粒状熱可塑性ポリマーについての面積密度、ボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)、及び投影面積(c)とボロノイ多角形の面積(s)との比(c/s)を、それぞれ3つの視野の平均値として得た。ここで、面積密度、ボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)、及び比(c/s)は、画像処理ソフトウェア「A像くん」(登録商標;旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて自動的に算出された。また、観察視野においてボロノイ分割を行なった時に、閉じられていない領域は、ボロノイ多角形の面積を計算するための対象としなかった。
ii)95視野を用いる評価
走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、ポリマー粒子の粒径に応じて倍率1万倍又は3万倍でセパレータ上の熱可塑性層の表面を写真撮影した。得られた画像を用いて、上述したように5区画95視野を設定した。これら95個の視野に含まれる粒状熱可塑性ポリマーについての面積密度、ボロノイ多角形の面積密度、ボロノイ多角形の面積(s)の分散(σ)、及び投影面積(c)とボロノイ多角形の面積(s)との比(c/s)を、上記i)と同様にして、それぞれ95視野の平均値として得た。
<基材の製造>
(基材aの製造)
Mvが70万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、
Mvが30万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、
Mvが40万であるホモポリマーのポリプロピレン5質量部とを、
タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。
得られたポリオレフィン混合物99質量部に酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。
得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。
また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
押し出される全混合物中の、流動パラフィンの割合が65質量部、及びポリマー濃度が35質量部となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で230℃に加熱しながら溶融混練し、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度80℃に制御された冷却ロール上に押し出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物を得た。
このシートを同時二軸延伸機にて、温度112℃において倍率7×6.4倍に延伸した。その後、延伸物を塩化メチレンに浸漬して、流動パラフィンを抽出除去後、乾燥し、更にテンター延伸機を用いて温度130℃において横方向に2倍延伸した。
その後、この延伸シートを幅方向に約10%緩和して熱処理を行い、ポリオレフィン樹脂多孔膜である基材aを得た。
(基材bの製造)
水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)96.0質量部、アクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)4.0質量部、及びポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部を100質量部の水に均一に分散させて塗工液を調製した。続いて、その塗工液を、基材aの表面にグラビアコーターで塗工した。その後、60℃において乾燥して水を除去して、ポリオレフィン樹脂多孔膜(基材a)上に水酸化アルミニウム(無機フィラーの多孔層)が厚さ2μmで形成されている基材bを得た。
得られた基材のそれぞれについて、上記方法により各種物性を測定した。測定結果を表1に示す。
<熱可塑性ポリマーの製造及び塗工液の調製>
[ポリマーA]
表2にポリマーAとして示される溶剤系PVDF樹脂(「KF8500」、クレハ社製、Tg:−30℃)を用意した。このPVDF樹脂を5質量%の濃度で、ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=7/3の質量比である混合溶媒に溶解して、熱可塑性ポリマーAを含有する塗工液を調製した。
[ポリマーB]
表2にポリマーBとして示される水系PVDF(「Solef XPH−838」、Solvey社製、Tg:−30℃、50%平均粒径(以下、単に「平均粒径」とも言う):150nm)を用意した。
ポリマーBと、後述されるポリマーIとを、ポリマーBとポリマーIの合計質量に対するポリマーIの配合量が10質量%となるように混合して、混合液を得た。この混合液をポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーBを含む塗工液を調製した。
[ポリマーC]
表2にポリマー1Cとして示されるスチレン−ブタジエン(SB)ラテックスA(Tg:−8℃、平均粒径:300nm)と、ポリマー2Cとして示されるSBラテックスB(Tg:33℃、平均粒径:300nm)を用意した。ポリマー1Cとポリマー2Cを、表2に記載の混合割合で混合し、ポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーCを含有する塗工液を調製した。
[ポリマーD]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を装着した反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.5質量部と、を投入し、反応容器の内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)を7.5質量部添加した。
過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に、表2中のポリマーDの「乳化液1」欄に記載したモノマー及びその他の使用原料をホモミキサーにより5分間混合して調製した乳化液を、滴下槽から反応容器に滴下し始めて、150分掛けて全量を滴下した。
乳化液の滴下終了後、反応容器の内部温度を90分間に亘って80℃に維持し、その後室温まで冷却し、エマルジョンを得た。得られたエマルジョンに水酸化アンモニウム水溶液(25質量%水溶液)を加えて、pH=9.0に調整することにより、原料ポリマーD(Tg:60℃、平均粒径:140nm)を40質量%含むラテックスを得た。
表2に示される原料ポリマーDの使用原料をポリマーIの使用原料に置き換えたこと以外は原料ポリマーDと同じ条件下で、原料ポリマーI(Tg:−30℃、平均粒径:160nm)を製造した。
次に、原料ポリマーDとポリマーIの合計質量に対するポリマーIの配合量が20質量%となるように、原料ポリマーDとポリマーIを混合して混合液を得た。この混合液をポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーDを含有する塗工液を調製した。
[ポリマーEの製造]
表2に示されるポリマーDの使用原料をポリマーEの使用原料に置き換えたこと以外は原料ポリマーDと同条件下で、原料ポリマーE(Tg:60℃、平均粒径:120nm)を製造した。
次に、原料ポリマーEとポリマーIの合計質量に対するポリマーIの配合量が20質量%となるように、原料ポリマーEとポリマーIを混合して混合液を得た。この混合液をポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーEを含有する塗工液を調製した。
[ポリマーFの製造]
(コアの製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を装着した反応容器に、初期仕込みとして、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.5質量部とを投入し、反応容器の内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)を7.5質量部添加した。
上記で説明した反応容器中の混合物とは別に、表2中のポリマー1Fの「乳化液1」欄に従って、架橋剤及びシリコン化合物以外のモノマーと、その他の使用原料とをホモミキサーにより5分間混合して乳化液1を調製した。
反応容器に過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に、滴下槽から乳化液1を反応容器へ滴下し始めて、150分掛けて全量を滴下した。乳化液1の滴下終了後、反応容器の内部温度を90分間に亘って80℃に維持し、その後室温まで冷却し、エマルジョンを得た。その後、反応容器に、表2中のポリマー1Fの「乳化液1」欄に記載された架橋剤と、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製「パーブチルO」)を0.4質量部と、イオン交換水20質量部とを加え、35℃で12時間撹拌し、その後、室温まで冷却して、エマルジョンを得た。得られたエマルジョンに水酸化アンモニウム水溶液(25質量%水溶液)を加えてpH=9.0に調整することにより、コアポリマー粒子1Fを40質量%含むエマルジョンを得た。
(シェルの製造)
コアポリマー粒子1Fを含むエマルジョンをシードポリマーとして用い、シードポリマーの存在下で、以下のように2段目の重合を行ってシェル部を合成することにより、コア/シェル構造を有する熱可塑性ポリマー粒子を製造した。
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を装着した反応容器に、シードポリマーエマルジョンと、表3中の成分2Fの「初期仕込み」欄に記載されたイオン交換水及び乳化剤を投入し、反応容器中の温度を30℃に保ち、表3中の「初期仕込み」欄に記載された開始剤の2質量%水溶液を更に添加した。
上記で説明した反応容器中の混合物とは別に、表3中の成分2Fの「乳化液2」欄に記載したモノマー及びその他の使用原料をホモミキサーにより5分間混合して乳化液2を調製した。
滴下槽から乳化液2を反応容器へ滴下し始めて、150分掛けて全量を滴下した。この状態で更に30分撹拌を継続して、シードポリマーにモノマーを吸収させた。
次に、反応系のpHを4以下に維持した状態で、反応容器の内部温度を80℃に上昇させ、120分間に亘って攪拌を続け、その後、室温まで冷却した。冷却後、200メッシュの金網でろ過を行い、凝集物等を除去することにより、熱可塑性ポリマー粒子F(Tg:60℃、平均粒径:500nm)を含むエマルジョン得た。
得られたエマルジョンをろ過した後、25質量%のアンモニア水及び水を加えて、pH=8及び固形分含量=40質量%に調整した。熱可塑性ポリマー粒子F及びポリマーIの合計質量に対するポリマーIの配合量が10質量%となるように、熱可塑性ポリマー粒子FとポリマーI混合して混合液を得た。この混合液をポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーFを含有する塗工液を調製した。
[ポリマーGの提供]
表2に示されるポリマー1Fの使用原料をポリマー1Gの使用原料に置き換え、かつ表3に示されるポリマー2Fの使用原料をポリマー2Gの使用原料に置き換えたこと以外はポリマーFと同条件下で、コア/シェル構造を有するポリマーG(Tg:60℃、平均粒径:500nm)を製造した。
ポリマーG及びポリマーIの合計質量に対するポリマーIの配合量が10質量%となるように、ポリマーGとポリマーIを混合して混合液を得た。この混合液をポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーGを含有する塗工液を調製した。
[ポリマーHの製造]
(コアの製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を装着した反応容器に、初期仕込みとして、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.5質量部とを投入し、反応容器の内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)を7.5質量部添加した。
上記で説明した反応容器中の混合物とは別に、表2のポリマー1Hの「乳化液1」欄に記載したモノマー及びその他の使用原料をホモミキサーにより5分間混合して乳化液1を調製した。
反応容器に過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に、滴下槽から乳化液1を反応容器へ滴下し始めて、150分掛けて全量を滴下した。
乳化液1の滴下終了後、反応容器の内部温度を90分間に亘って80℃に維持し、その後室温まで冷却し、エマルジョンを得た。得られたエマルジョンに水酸化アンモニウム水溶液(25質量%水溶液)を加えてpH=9.0に調整することにより、コアポリマー粒子1Hを40質量%含むエマルジョンを得た。
(シェルの製造)
コアポリマー粒子1Hを含むエマルジョンをシードポリマーとして用い、シードポリマーの存在下で、以下のように2段目の重合を行ってシェル部を合成することにより、コア/シェル構造を有する熱可塑性ポリマー粒子を製造した。
シードポリマーエマルジョンと、表3中の成分2Hの「初期仕込み」欄に記載されたイオン交換水及び乳化剤を投入し、反応容器中の温度を30℃に保ち、表3中の「初期仕込み」欄に記載された開始剤の2質量%水溶液を更に添加した。
上記で説明した反応容器中の混合物とは別に、表3中の成分2Hの「乳化液2」欄に記載したモノマー及びその他の使用原料をホモミキサーにより5分間混合して乳化液2を調製した。
反応容器に開始剤を添加した5分後に、滴下槽から乳化液2を反応容器へ滴下し始めて、150分掛けて全量を滴下した。この状態で更に30分撹拌を継続して、シードポリマーにモノマーを吸収させた。
次に、反応系のpHを4以下に維持した状態で、反応容器の内部温度を80℃に上昇させ、120分間に亘って攪拌を続け、その後、室温まで冷却した。冷却後、200メッシュの金網でろ過を行い、凝集物等を除去することにより、熱可塑性ポリマー粒子H(Tg:100℃、平均粒径:500nm)を含むエマルジョン得た。
得られたエマルジョンをろ過した後、25質量%のアンモニア水及び水を加えて、pH=8及び固形分含量=40質量%に調整した。さらに、ポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーHを含有する塗工液を調製した。
ポリマーH及びポリマーIの合計質量に対するポリマーIの配合量が10質量%となるように、ポリマーHとポリマーIを混合して混合液を得た。この混合液をポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーHを含有する塗工液を調製した。
(注) 表2又は3中の原材料名の説明
MMA :メタクリル酸メチル
BA :アクリル酸n−ブチル
CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル
EHA :アクリル酸2−エチルヘキシル
BMA :メタクリル酸ブチル
MAA :メタクリル酸
AA :アクリル酸
HEMA :メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
AM :アクリルアミド
GMA :メタクリル酸グリシジル
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
KH1025:アクアロンKH1025(登録商標、第一工業製薬株式会社製)
SR1025:アデカリアソープSR1025(登録商標、株式会社ADEKA製)
APS :過硫酸アンモニウム
なお、表2又は3中の各成分の配合量及び全成分の合計量は、質量部に基づく。
実施例1
熱可塑性ポリマーAを含有する塗工液を基材aの両面に等量で塗工し、水/ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=57/30/13の質量比である凝固液(40℃)に浸漬することによって、樹脂を固化させた。固化物を水洗、乾燥することによって、複合膜の両表面にポリフッ化ビニリデン系樹脂から成る接着性多孔質層が合計1.0g/mで形成されたセパレータを得た。
このセパレータを用いて、上述の通りにリチウムイオン二次電池を組み立てて、評価を行なった。
実施例2
グラビアコーターを用いて、粒子状熱可塑性ポリマーBを含有する塗工液を基材aの片面上に、塗工面積比率60%及び塗工目付け0.5g/mとなるように全面に塗布した。次いで、塗工された基材を50℃で1分間加熱して乾燥することにより、基材上に熱可塑性ポリマー粒子層を形成して、セパレータを得た。
実施例3〜10及び比較例1〜3
実施例2において、基材及び熱可塑性ポリマー粒子の種類、塗工方法、塗工形状、及び塗工目付けを、それぞれ表3に記載の通りに変更した他は実施例2と同様にして、セパレータを製造した。
評価結果
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られたセパレータを用いて、上述の通りにリチウムイオン二次電池を組み立てて、評価した。評価結果を表4に示した。
熱可塑性層表面の凹凸と、熱可塑性層に含まれる熱可塑性ポリマー粒子のたわみ量(変形量)とを表す原子間力顕微鏡の観察像を、実施例6で得られたセパレータについて図8及び9に、比較例1で得られたセパレータについて図10及び11にそれぞれ示した。

Claims (11)

  1. 多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも片面に配置された熱可塑性層とを含む蓄電デバイス用セパレータであって、
    前記熱可塑性層は、熱可塑性ポリマーを含み、かつ
    原子間力顕微鏡を用い、ばね定数0.4N/mでカンチレバー探針を前記熱可塑性層に接触させて、押し付け力に基づくフォースカーブを作成したときに、前記フォースカーブから算出されたカンチレバーのたわみ量が、3.8nm〜10.0nmである、
    前記蓄電デバイス用セパレータ。
  2. 前記熱可塑性ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエン共重合体、及びアクリル樹脂から成る群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  3. 前記熱可塑性ポリマーは、前記スチレン−ブタジエン共重合体又は前記アクリル樹脂である、請求項2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  4. 前記熱可塑性ポリマーは、前記アクリル樹脂である、請求項2又は3に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  5. 前記熱可塑性ポリマーは、粒子状熱可塑性ポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  6. 前記粒子状熱可塑性ポリマーについてボロノイ分割を行って得られるボロノイ多角形の面積(Si)を用いて下記数式:
    {式中、Siは、ボロノイ多角形の面積の実測値であり、mは、ボロノイ多角形の面積の実測値の平均値であり、かつnは、ボロノイ多角形の総数である}
    により定義される分散(σ)が、0.01以上0.7以下である、請求項5に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  7. 前記たわみ量は、4.8nm〜10.0nmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  8. 前記たわみ量は、7.2nm〜10.0nmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータと、
    正極と、
    負極と、
    から成る積層体。
  10. 請求項9に記載の積層体が捲回されている捲回体。
  11. 請求項9に記載の積層体又は請求項10に記載の捲回体と電解液とを含む二次電池。
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