JP2017147050A - 蓄電デバイス用セパレータ - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも片面に配置された熱可塑性層とを含む蓄電デバイス用セパレータであって、
前記熱可塑性層は、熱可塑性ポリマーを含み、かつ
原子間力顕微鏡を用い、ばね定数0.4N/mでカンチレバー探針を前記熱可塑性層に接触させて、押し付け力に基づくフォースカーブを作成したときに、前記フォースカーブから算出されたカンチレバーのたわみ量が、3.8nm〜10.0nmである、
前記蓄電デバイス用セパレータ。
[2]
前記熱可塑性ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエン共重合体、及びアクリル樹脂から成る群から選択される少なくとも1つである、[1]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[3]
前記熱可塑性ポリマーは、前記スチレン−ブタジエン共重合体又は前記アクリル樹脂である、[2]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[4]
前記熱可塑性ポリマーは、前記アクリル樹脂である、[2]又は[3]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[5]
前記熱可塑性ポリマーは、粒子状熱可塑性ポリマーである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[6]
前記粒子状熱可塑性ポリマーについてボロノイ分割を行って得られるボロノイ多角形の面積(Si)を用いて下記数式:
により定義される分散(σ2)が、0.01以上0.7以下である、[5]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[7]
前記たわみ量は、4.8nm〜10.0nmである、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[8]
前記たわみ量は、7.2nm〜10.0nmである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[9]
[1]〜[8]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータと、
正極と、
負極と、
から成る積層体。
[10]
[9]に記載の積層体が捲回されている捲回体。
[11]
[9]に記載の積層体又は[10]に記載の捲回体と電解液とを含む二次電池。
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータ(以下「セパレータ」という)は、多孔性基材、及び多孔性基材の少なくとも片面に配置された熱可塑性層を含む。このセパレータは、多孔性基材及び熱可塑性層のみから成っていてもよいし、その他の層を有していてもよい。その他の層は、多孔性基材の片面若しくは両面に、又は積層された多孔性基材層の中間層として、配置される。その他の層を有する面に熱可塑性層を配置する場合、これらの相互位置関係は任意であるが、セパレータと電極の接着性の観点から、熱可塑性層の少なくとも一部を露出させることが好ましい。所望により、セパレータは、無機フィラー及び樹脂製バインダを含むフィラー多孔層をさらに含んでよい。
本実施形態に係るセパレータの熱可塑性層に含まれる熱可塑性ポリマーの硬度(又は柔らかさ若しくは柔軟さ)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の1種である原子間力顕微鏡(AFM)を用い、カンチレバー先端の探針を、熱可塑性層と対応するセパレータ表面に接触させて、ばね定数として0.4N/mの押し付け力によりフォースカーブ(「フォースディスタンスカーブ」とも呼ばれる)を作成し、フォースカーブから算出されたカンチレバーのたわみ量により確認されることができる。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
本実施形態に用いる基材は、それ自体が、従来セパレータとして用いられていたものであってもよい。基材は、電子伝導性がなくイオン伝導性があり、有機溶媒の耐性が高く、かつ微細な孔径有する多孔質膜であると好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物中の総ポリオレフィンに対するポリプロピレンの割合は、特に限定されないが、耐熱性と良好なシャットダウン機能の両立の観点から、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%、更に好ましくは4〜10質量%である。
また、重合触媒も特に制限はなく、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒及びメタロセン系触媒が挙げられる。
この場合、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、限定されるものではなく、例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のオレフィン炭化水素のホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。具体的には、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
ポリエチレン:[η]=6.77×10−4Mv0.67(Chiangの式)
ポリプロピレン:[η]=1.10×10−4Mv0.80
これらの添加剤の合計含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量%以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
により求めることができる。例えば、ポリエチレンから成るポリオレフィン多孔性基材の場合には、膜密度を0.95(g/cm3)と仮定して気孔率を計算することができる。気孔率は、ポリオレフィン多孔性基材の延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施形態では、熱可塑性層は、熱可塑性ポリマーを含む層であり、かつ多孔性基材の少なくとも1つの面に配置される。熱可塑性層は、多孔性基材の少なくとも片面の少なくとも一部の領域に形成されていればよい。本明細書では、用語「熱可塑性ポリマー」は、セパレータと電極を接着するためのバインダ類として通常使用される熱可塑性ポリマー、又は電解液中で熱プレスされることによりゲル化して接着性を発現するポリマーを含むものとする。
1)共役ジエン系ポリマー、
2)アクリル系ポリマー、
3)ポリビニルアルコール系樹脂、及び
4)含フッ素樹脂。
また、共役ジエン系ポリマーは、後述する(メタ)アクリル系化合物又は他のモノマーをモノマー単位として含んでいてもよい。具体的には、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物等である。
このような化合物としては、例えば、下記式(P1)で表される化合物が挙げられる。
CH2=CRY1−COO−RY2 (P1)
式(P1)中、RY1は水素原子又はメチル基を示し、RY2は水素原子又は1価の炭化水素基を示す。RY2が1価の炭化水素基の場合は、置換基を有していてもよくかつ鎖内にヘテロ原子を有していてもよい。1価の炭化水素基としては、例えば、直鎖であっても分岐していてもよい鎖状アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基が挙げられる。また、置換基としては、例えば、ヒドロキシル基及びフェニル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えばハロゲン原子、酸素原子等が挙げられる。(メタ)アクリル系化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
このような(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリル酸、鎖状アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、フェニル基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
そのようなRY2を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の、芳香環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
そのようなシクロアルキル基を有するモノマーとしては、より具体的には、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。シクロアルキル基の脂環を構成する炭素原子の数は、4〜8が好ましく、6及び7がより好ましく、6が特に好ましい。また、シクロアルキル基は置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、例えば、メチル基及びt−ブチル基が挙げられる。これらの中では、シクロヘキシルアクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が、アクリル系ポリマー調製時の重合安定性が良好である点で好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。上記多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、及び4官能(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、上記と同様の観点から、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
メチロール基を有するモノマーとしては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
上記アルコキシメチル基を有するモノマーとしては、アルコキシメチル基を有するエチレン性不飽和モノマーが好ましく、具体的には例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
上記加水分解性シリル基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
更に、スルホン酸基、リン酸基等の官能基を有する各種のビニル系モノマー、及び酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等も必要に応じて使用できる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記他のモノマーは、上記各モノマーのうち2種以上に同時に属するものであってもよい。
シアノ基を有するモノマーとしては、シアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーが好ましく、具体的には、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記界面活性剤は、モノマー組成物100質量部に対して0.1〜5質量部用いることが好ましい。界面活性剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ラジカル重合開始剤は、モノマー組成物100質量部に対して、好ましくは0.05〜2質量部用いることができる。ラジカル重合開始剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶剤系ポリマーとしては、上記熱可塑性ポリマーの中でも、有機溶媒中での溶解性を有するポリマー及び/又は有機溶媒中での分散性を有するポリマーを使用してよい。
水系ポリマーは、水及び水中に分散した粒状ポリマーを含む水分散体(以下「ラテックス」という)の形態であるか、又はポリマー自体が水との親和性の高い部位を有している形態でよい。
中でも、ポリマーの塗工性又は蓄電デバイスの電気特性の観点から、水系ポリマーが好ましく、ラテックスがより好ましい。ラテックスは、例えば、上記熱可塑性ポリマーを乳化重合により得るときに形成されることができる。
含フッ素樹脂の電解液中での剛性を向上させるために、含フッ素樹脂においてヘキサフルオロプロピレンの共重合割合は、例えば、0.5モル%〜15モル%の範囲内であることが好ましく、1モル%〜10モル%の範囲内であることがより好ましい。含フッ素樹脂の分子量を増加させることも好ましく、含フッ素樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、10万以上が好ましく、30万以上がより好ましく、50万以上がさらに好ましい。含フッ素樹脂の結晶化度は、高いほど好ましく、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、特に好ましくは25%以上である。
また、「ガラス転移」はDSCにおいて試験片であるポリマーの状態変化に伴う熱量変化が吸熱側に生じたものを指す。このような熱量変化はDSC曲線において階段状変化の形状として観測される。「階段状変化」とは、DSC曲線において、曲線がそれまでの低温側のベースラインから離れ新たな高温側のベースラインに移行するまでの部分を示す。なお、階段状変化とピークとが組み合わされたものも階段状変化に含まれることとする。
更に、「変曲点」とは、DSC曲線の階段状変化部分のこう配が最大になるような点を示す。また、階段状変化部分において、上側を発熱側とした場合に、上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点と表現することもできる。「ピーク」とは、DSC曲線において、曲線が低温側のベースラインから離れてから再度同じベースラインに戻るまでの部分を示す。「ベースライン」とは、試験片に転移及び反応を生じない温度領域のDSC曲線のことを示す。
また、ポリマーのTgはFOXの式(下記式(2))より概算することができる。なお、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度としては、上記DSCを用いた方法により測定したものを採用する。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+‥‥+Wi/Tgi+‥‥Wn/Tgn (2)
{式中、Tg(K)は、コポリマーのTgを示し、Tgi(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTgを示し、Wiは、各モノマーの質量分率を示す}。
特に、ポリマーブレンド及びコアシェル構造において、ガラス転移温度の高いポリマーと低いポリマーとを組み合せることにより、熱可塑性ポリマー全体のガラス転移温度を制御できる。また、熱可塑性ポリマー全体に複数の機能を付与できる。
なお、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーのシェルのガラス転移温度は、特に限定されないが、20℃未満が好ましく、15℃以下がより好ましく、−30℃以上15℃以下が更に好ましい。また、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーのコアのガラス転移温度は、特に限定されないが、20℃以上が好ましく、20℃以上120℃以下がより好ましく、50℃以上120℃以下が更に好ましい。
熱可塑性ポリマーが粒状であるとき、「粒状」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)の測定において、個々のポリマーが輪郭を持った状態のことを指す。したがって、粒状熱可塑性ポリマーは、例えば、扁平形状であっても、球状であっても、多角形状等であってもよい。
ボロノイ多角形の面積(si)の分散(σ2)とは、下記式:
により算出される値である。観察視野においてボロノイ分割を行なった時に、閉じられていない領域は、上記式の計算対象としないものとする。閉じられていない領域としては、例えば、観察視野の境界に粒子が存在し、その粒子の全体が観察されていない時に、その粒子に対してボロノイ分割を行なうことによって得られる領域が挙げられる。
従って、セパレータ表面の少なくとも一部の領域を撮影して得られた画像において、その画像の端に位置する粒子については、その粒子全体が観察されているか否かを確認することが好ましい。
但し、熱可塑性ポリマー粒子の分布は、観測視野によって変化することがある。従って、面積密度及び分散(σ2)としては、好ましくは複数の観察視野についてそれぞれ算出された値の平均値を採用することが好ましい。この視野数としては、3以上とすることが好ましい。
i)各測定視野:走査電子顕微鏡で撮像した画像
ii)視野の設定方法:
a)起点の視野を設定し、
b)前記起点の視野に対して横方向に順次に隣接する領域からなる視野の9個と、縦方向に順次に隣接する領域からなる視野の9個と、前記起点の視野と、からなる19視野を設定し、
c)前記19視野によって規定される領域を起点の区画として設定し、
d)前記起点の区画に対して10mm間隔で一軸方向に順次に隣接する領域からなる区画を4個設定し、
e)前記4個の区画について、前記起点の区画における19視野と相似の位置に各19視野を設定し、そして
f)前記4個の区画及び前記起点の区画における全95視野(19視野×5区画)を測定視野として設定する。
i)撮像画像としては、上記のとおり、倍率1万倍の走査電子顕微鏡で撮像した画像を採用することが好ましい。例えば図5に示す画像である。図5は、倍率1万倍の走査電子顕微鏡で撮像した、基材上の熱可塑性ポリマー粒子の画像の一部をモデル的に示した図である。
この図5の画像において、先ず、起点の視野(10)を設定する。1視野は倍率1万倍の走査電子顕微鏡で撮像した画像により構成されるため、その1視野のスケールは10μm×10μm程度であり、熱可塑性ポリマー粒子を基準としたボロノイ分割評価に適した視野を構成する。次に、前記起点の視野(10)に対して横方向(X軸方向)に順次に隣接する9個の視野(1〜9)を設定する。これらの視野(1〜9)は、それぞれ、起点の視野(10)と同じ倍率の撮像画像からなり、隣接する領域と一辺を共通にして一方向に順次に設定される。次に、前記起点の視野(10)に対して縦方向に順次に隣接する9個の視野(11〜19)を設定する。これらの視野(11〜19)は、それぞれ、起点の視野(10)と同じ領域からなり、隣接する領域と一辺を共通にして一方向に順次に設定される。
本実施態様においては、更にセパレータ表面の状態を正確に評価すべく、上記1区画と同等の区画を5区画設けて評価を実施する。具体的には、図6を参照する。図6は、図5に示した基材上の熱可塑性ポリマー粒子の画像の全体像である。該図6において、前記起点の区画(I)に対して、10mm間隔で一軸方向に順次に隣接する4個の区画(II〜V)を設定する。これら4個の区画は、それぞれ、起点の区画(I)と同じ領域から成る。
次いで、これら4個の区画(II〜V)について、前記起点の区画(I)における19視野と相似の位置に各19視野を設定する。そして、前記4個の区画(II〜V)及び前記起点の視野(I)における全95視野(19視野×5区画)を、基材上における熱可塑性ポリマー粒子の観察視野として設定する。
上記評価方法から理解されるとおり、95視野を観察対象とする場合、長さ約40mmのセパレータ片を測定対象とするため、セパレータ表面における熱可塑性ポリマーの分散状態を正確に評価することができる。
本実施形態におけるセパレータは、基材上に形成されたポリマー層中の熱可塑性ポリマー粒子が、実質的に重なり合うことがないように配置されたうえで、上記の面積密度、及び分散(σ2)が、それぞれ、上記した範囲に調整されることが好ましい。
セパレータの製造方法の一態様は、上記で説明された熱可塑性ポリマーを含む塗工液を多孔性基材上に塗工する工程を含む。
フィラー多孔層は、無機フィラー及び樹脂バインダを含む。
(無機フィラー)
フィラー多孔層に使用する無機フィラーとしては、特に限定されないが、200℃以上の融点を持ち、電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
アルミナ、水酸化酸化アルミニウム等の酸化アルミニウム化合物;及び
カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト等の、イオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物が好ましい。
イオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物としては、安価で入手も容易なため、主としてカオリン鉱物から構成されているカオリンがより好ましい。カオリンには、湿式カオリン及びこれを焼成処理して成る焼成カオリンが知られている。本発明においては、焼成カオリンが特に好ましい。焼成カオリンは、焼成処理の際に、結晶水が放出されており、更に不純物も除去されていることから、電気化学的安定性の点で特に好ましい。
フィラー多孔層に含有される樹脂バインダの種類としては、特に限定されないが、リチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲において電気化学的に安定な樹脂バインダを用いることが好ましい。
このような樹脂バインダの具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂;フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム;スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の、融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂等が挙げられる。
樹脂バインダの平均粒径は、重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pHなどを調整することで制御することが可能である。
フィラー多孔層の層密度は、0.5〜3.0g/cm3であることが好ましく、0.7〜2.0cm3であることがより好ましい。フィラー多孔層の層密度が0.5g/cm3以上であると、高温での熱収縮率が良好となる傾向にあり、3.0g/cm3以下であると、透気度が低下する傾向にある。
塗工液を基材に塗工する方法は、必要とする層厚及び塗工面積を実現できる限り特に限定されない。樹脂バインダを含んだフィラー原料と、ポリマー基材原料と、を共押出法により積層して押出してもよいし、基材とフィラー多孔膜とを個別に作製した後に貼り合せてもよい。
セパレータは、多孔性基材上に熱可塑性層を備えることにより、電極活物質との接着性に優れる。
本実施形態に係るセパレータを電極と接着することにより、セパレータと電極とが積層している積層体を得ることができる。
[粘度平均分子量Mv]
ASRM−D4020に準拠して、デカリン溶剤中、135℃における極限粘度[η]を求めた。この[η]値を用いて、下記数式の関係から粘度平均分子量Mvを算出した。
ポリエチレンの場合:[η]=0.00068×Mv0.67
ポリプロピレンの場合:[η]=1.10×Mv0.80
ポリオレフィン多孔性基材から10cm×10cm角のサンプルを切り取り、その体積(cm3)及び質量(g)を求めた。これらの値を用い、該多孔性基材の密度を0.95(g/cm3)として、気孔率を下記数式:
気孔率(%)=(1−質量/体積/0.95)×100
により計算した。
JIS P−8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計G−B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度とした。
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーでポリオレフィン多孔性基材を固定した。次に、固定された多孔性基材の中央部を、先端の曲率半径0.5mmの針を用いて、突刺速度2mm/秒で、25℃雰囲気下において突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として突刺強度(g)を得た。
ポリオレフィン微多孔膜の平均孔径は、下記方法で測定した。
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さいときはポアズイユの流れに従うことが知られているので、ポリオレフィン微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、またポリオレフィン微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
平均孔径d(μm)は、空気の透過速度定数Rgas(m3/(m2・秒・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m3/(m2・秒・Pa))、空気の分子速度ν(m/秒)、水の粘度η(Pa・秒)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
ここで、Rgasは、上記で説明した方法により得られた透気度から次式を用いて求められた。
Rgas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm3/(cm2・秒・Pa))から次式を用いて求められた。
Rliq=透水度/100
なお、透水度は、直径41mmのステンレス製の透液セルに、予めエタノールに浸しておいたポリオレフィン微多孔膜をセットし、膜のエタノールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120秒間経過した際の透水量(cm3)を測定することにより、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量として計算された。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10−2kg/mol)から次式を用いて求められた。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
熱可塑性ポリマーを試料として、下記の方法によってガラス転移温度を測定した。なお、シェル部のガラス転移温度は、シードポリマーを使用しない他は、後述される項目「シェルの製造」と同じ操作を行って、シェル部と同一の組成を有するポリマー粒子を得て、該粒子を試料として、下記の方法によって測定した。
1段目昇温プログラム:70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
2段目降温プログラム:110℃から毎分40℃の割合で降温。−50℃に到達後5分間維持。
3段目昇温プログラム:−50℃から毎分15℃の割合で130℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。
ベースライン(得られたDSC曲線におけるベースラインを高温側に延長した直線)と、変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)における接線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は、粒子径測定装置(日機装株式会社製、Microtrac UPA150)を使用し、測定した。測定条件としては、ローディングインデックス=0.15〜0.3、測定時間300秒とし、得られたデータにおける50%粒子径の数値を粒子径として記載した。
実施例又は比較例で得られたセパレータの熱可塑性層の表面状態(但し、熱可塑性ポリマーが粒子状である場合、熱可塑性ポリマー粒子の頂点の状態)について、原子間力顕微鏡(AFM)のフォースカーブ測定により確認した。このフォースカーブ測定は、極微小部分の針による圧縮試験であり、押し付け力による変形度合いを測定するため、硬さの指標となる。
原子間力顕微鏡:Dimension Icon(Bruker社製、商品名)
測定モード:Peak Force QNM
カンチレバー:Scan Asyst−Air
[Scan Asyst−Airの詳細]
(形態、共振周波数、長さ及び幅)
形態:三角形(Triangular)
共振周波数:70kHz(通常)
45kHz(最少)
95kHz(最大)
バネ定数:0.4N/m(通常、測定時)
0.2N/m(最少)
0.8N/m(最大)
長さ:115μm(通常)
100μm(最少)
130μm(最大)
幅:25μm(通常)
20μm(最少)
30μm(最大)
(チップ(探針)仕様)
Geometry:Rotated(Symmetric)
Tip Height(h):2.5〜8.0μm
Front Angle(FA):15±2.5°
Back Angle(BA):25±2.5°
Side Angle(SA):17.5±2.5°
Tip Radius(Nom):2nm
Tip Radius(Max):12nm
Tip SetBack(TSB)(Nom):5μm
Tip Set Back(TSB)(RNG):3〜7μm
(カンチレバー仕様)
Material:窒化ケイ素(Silicon Nitride)
Geometry:三角形(Triangular)
Cantilevers Number:1
Cantilever Thickness(Nom):0.65μm
Cantilever Thickness(RNG):0.6〜0.7μm
Back Side Coating:反射アルミニウム
(Reflective Aluminum)
基材又は実施例若しくは比較例で得られたセパレータと、被着体としての正極集電体(冨士加工紙株式会社製アルミニウム箔、厚さ:20μm)とをそれぞれ30mm×150mmに切り取り、重ね合わせて積層体を得た。積層体をテフロン(登録商標)シート(ニチアス株式会社製ナフロン(商標)PTFEシート TOMBO−No.9000)で挟んでサンプルを得た。得られた各サンプルについて、温度110℃及び圧力1MPaの条件下で、5秒間に亘って積層方向にプレスを行うことによって試験用プレス体を得た。
a.電極組立体の製造
正極活物質としてLiCoO2、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び導電材としてカーボンブラックをそれぞれ使用して、正極活物質:バインダ:導電材の質量比が94:3:3になるように、活物質、バインダ及び導電材をミキサーでN−メチル−2−ピロリドンに分散させ、混合して、正極活物質コーティング組成物を製造した。ドクターブレードを用いて、厚さ14μmのアルミ箔の両面に、正極活物質コーティング組成物を厚さ94μmでコーティングして乾燥させた。その後、ロールプレスによるプレスを実施して、真空乾燥機でコーティング層内の水分を除去して正極を製造した。
負極活物質としてグラファイト、及びバインダとして、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)の混合物(SBR:CMCの質量比は、1:1である)を、それぞれ使用して、負極活物質:バインダの質量比が96:4となるように、活物質及びバインダをミキサーでN−メチル−2−ピロリドンに分散させ、混合して、負極活物質コーティング組成物を製造した。その後、厚さ8μmの銅箔の両面に負極活物質コーティング組成物を厚さ120μmでコーティングしたことを除いて、正極の製造と同様に負極を製造した。
得られた正極と負極を100cm×4.2cmでそれぞれ裁断し、さらに実施例又は比較例で得られたセパレータを100cm×4.4cmに裁断した後、正極と負極の間にセパレータを介在させて7cm(長さ方向)×4.4cm(幅方向)に巻取って、電極組立体(セル)を製造した。
製造された電極組立体(セル)を、9kgf/cm2(0.88MPa)の圧力及び80℃の温度で10秒間に亘って圧着した。その後、3点曲げ試験機(「万能試験機(UTM)」とも呼ばれる)を使用して、下記条件(i)〜(iii)を除いて、ASTM D790に記載された曲げ試験方法に従って、圧着された電極組立体の曲げ強度を測定した。
(i)支点間距離が60mmである。
(ii)電極組立体の長さ方向(MD方向)が、2つの支持台を結ぶ方向と平行になるように、圧着された電極組立体をUTMに配置する。
(iii)圧着された電極組立体に対して突き刺し冶具を2.8mm/分の速度で下降させる。
測定された曲げ強度を下記基準に従って評価した:
A(著しく良好):曲げ強度が、294.3×104N/m2以上(30kgf/cm2以上)である。
B(良好):曲げ強度が、196.2×104N/m2以上294.3×104N/m2未満(20kgf/cm2以上30kgf/cm2未満)である。
C(許容):曲げ強度が、98.1×104N/m2以上196.2×104N/m2未満(10kgf/cm2以上20kgf/cm2未満)である。
D(不良):曲げ強度が、98.1×104N/m2未満(10kgf/cm2未満)である。
a.正極の作製
正極活物質としてニッケル、マンガン、コバルト複合酸化物(NMC)(Ni:Mn:Co=1:1:1(元素比)、密度4.70g/cm3)を90.4質量%、導電助材としてグラファイト粉末(KS6)(密度2.26g/cm3、数平均粒子径6.5μm)を1.6質量%及びアセチレンブラック粉末(AB)(密度1.95g/cm3、数平均粒子径48nm)を3.8質量%、並びにバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(密度1.75g/cm3)を4.2質量%の比率で混合し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて塗布し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧縮成形することにより、正極を作製した。この時の正極活物質塗布量は109g/m2であった。
負極活物質としてグラファイト粉末A(密度2.23g/cm3、数平均粒子径12.7μm)を87.6質量%及びグラファイト粉末B(密度2.27g/cm3、数平均粒子径6.5μm)を9.7質量%、並びにバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)(固形分濃度1.83質量%水溶液)及びジエンゴム系ラテックス1.7質量%(固形分換算)(固形分濃度40質量%水溶液)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、負極を作製した。この時の負極活物質塗布量は5.2g/m2であった。
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより、非水電解液を調製した。
各実施例及び比較例で得られた蓄電素子用セパレータを24mmφ、正極及び負極をそれぞれ16mmφの円形に切り出した。正極と負極の活物質面とが対向するように、負極、セパレータ、正極の順に重ね、線圧2.3kg/cm、ロール速度2m/分、及び表5の記載のプレス温度にてロールプレスしたうえで、蓋付きステンレス金属製容器に収容した。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と、それぞれ接していた。この容器内に前記非水電解液を0.4ml注入して密閉することにより、電池を組み立てた。
上記a〜dのように組み立てた簡易電池を用いて、高温保存特定の評価を行った。
そして、BのAに対する比率を用いて、以下の基準により高温保存特性を評価した。
A(良好):放電容量Bの放電容量Aに対する比率が70%以上であった場合
B(許容):放電容量Bの放電容量Aに対する比率が70%未満であった場合
i)3視野を用いる評価
走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、ポリマー粒子の粒径に応じて倍率1万倍又は3万倍でセパレータ上のポリマー層表面を3つの視野で写真撮影した。これら3つの視野に含まれる粒状熱可塑性ポリマーについての面積密度、ボロノイ多角形の面積(si)の分散(σ2)、及び投影面積(ci)とボロノイ多角形の面積(si)との比(ci/si)を、それぞれ3つの視野の平均値として得た。ここで、面積密度、ボロノイ多角形の面積(si)の分散(σ2)、及び比(ci/si)は、画像処理ソフトウェア「A像くん」(登録商標;旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて自動的に算出された。また、観察視野においてボロノイ分割を行なった時に、閉じられていない領域は、ボロノイ多角形の面積を計算するための対象としなかった。
走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、ポリマー粒子の粒径に応じて倍率1万倍又は3万倍でセパレータ上の熱可塑性層の表面を写真撮影した。得られた画像を用いて、上述したように5区画95視野を設定した。これら95個の視野に含まれる粒状熱可塑性ポリマーについての面積密度、ボロノイ多角形の面積密度、ボロノイ多角形の面積(si)の分散(σ2)、及び投影面積(ci)とボロノイ多角形の面積(si)との比(ci/si)を、上記i)と同様にして、それぞれ95視野の平均値として得た。
(基材aの製造)
Mvが70万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、
Mvが30万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、
Mvが40万であるホモポリマーのポリプロピレン5質量部とを、
タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。
また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)96.0質量部、アクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)4.0質量部、及びポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部を100質量部の水に均一に分散させて塗工液を調製した。続いて、その塗工液を、基材aの表面にグラビアコーターで塗工した。その後、60℃において乾燥して水を除去して、ポリオレフィン樹脂多孔膜(基材a)上に水酸化アルミニウム(無機フィラーの多孔層)が厚さ2μmで形成されている基材bを得た。
得られた基材のそれぞれについて、上記方法により各種物性を測定した。測定結果を表1に示す。
[ポリマーA]
表2にポリマーAとして示される溶剤系PVDF樹脂(「KF8500」、クレハ社製、Tg:−30℃)を用意した。このPVDF樹脂を5質量%の濃度で、ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=7/3の質量比である混合溶媒に溶解して、熱可塑性ポリマーAを含有する塗工液を調製した。
表2にポリマーBとして示される水系PVDF(「Solef XPH−838」、Solvey社製、Tg:−30℃、50%平均粒径(以下、単に「平均粒径」とも言う):150nm)を用意した。
ポリマーBと、後述されるポリマーIとを、ポリマーBとポリマーIの合計質量に対するポリマーIの配合量が10質量%となるように混合して、混合液を得た。この混合液をポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーBを含む塗工液を調製した。
表2にポリマー1Cとして示されるスチレン−ブタジエン(SB)ラテックスA(Tg:−8℃、平均粒径:300nm)と、ポリマー2Cとして示されるSBラテックスB(Tg:33℃、平均粒径:300nm)を用意した。ポリマー1Cとポリマー2Cを、表2に記載の混合割合で混合し、ポリマー濃度10%で水に均一に分散させて、粒子状熱可塑性ポリマーCを含有する塗工液を調製した。
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を装着した反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.5質量部と、を投入し、反応容器の内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)を7.5質量部添加した。
表2に示されるポリマーDの使用原料をポリマーEの使用原料に置き換えたこと以外は原料ポリマーDと同条件下で、原料ポリマーE(Tg:60℃、平均粒径:120nm)を製造した。
(コアの製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を装着した反応容器に、初期仕込みとして、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.5質量部とを投入し、反応容器の内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)を7.5質量部添加した。
コアポリマー粒子1Fを含むエマルジョンをシードポリマーとして用い、シードポリマーの存在下で、以下のように2段目の重合を行ってシェル部を合成することにより、コア/シェル構造を有する熱可塑性ポリマー粒子を製造した。
表2に示されるポリマー1Fの使用原料をポリマー1Gの使用原料に置き換え、かつ表3に示されるポリマー2Fの使用原料をポリマー2Gの使用原料に置き換えたこと以外はポリマーFと同条件下で、コア/シェル構造を有するポリマーG(Tg:60℃、平均粒径:500nm)を製造した。
(コアの製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を装着した反応容器に、初期仕込みとして、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製、25質量%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製、25質量%水溶液)0.5質量部とを投入し、反応容器の内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)を7.5質量部添加した。
コアポリマー粒子1Hを含むエマルジョンをシードポリマーとして用い、シードポリマーの存在下で、以下のように2段目の重合を行ってシェル部を合成することにより、コア/シェル構造を有する熱可塑性ポリマー粒子を製造した。
MMA :メタクリル酸メチル
BA :アクリル酸n−ブチル
CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル
EHA :アクリル酸2−エチルヘキシル
BMA :メタクリル酸ブチル
MAA :メタクリル酸
AA :アクリル酸
HEMA :メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
AM :アクリルアミド
GMA :メタクリル酸グリシジル
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
KH1025:アクアロンKH1025(登録商標、第一工業製薬株式会社製)
SR1025:アデカリアソープSR1025(登録商標、株式会社ADEKA製)
APS :過硫酸アンモニウム
なお、表2又は3中の各成分の配合量及び全成分の合計量は、質量部に基づく。
熱可塑性ポリマーAを含有する塗工液を基材aの両面に等量で塗工し、水/ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=57/30/13の質量比である凝固液(40℃)に浸漬することによって、樹脂を固化させた。固化物を水洗、乾燥することによって、複合膜の両表面にポリフッ化ビニリデン系樹脂から成る接着性多孔質層が合計1.0g/m2で形成されたセパレータを得た。
このセパレータを用いて、上述の通りにリチウムイオン二次電池を組み立てて、評価を行なった。
グラビアコーターを用いて、粒子状熱可塑性ポリマーBを含有する塗工液を基材aの片面上に、塗工面積比率60%及び塗工目付け0.5g/m2となるように全面に塗布した。次いで、塗工された基材を50℃で1分間加熱して乾燥することにより、基材上に熱可塑性ポリマー粒子層を形成して、セパレータを得た。
実施例2において、基材及び熱可塑性ポリマー粒子の種類、塗工方法、塗工形状、及び塗工目付けを、それぞれ表3に記載の通りに変更した他は実施例2と同様にして、セパレータを製造した。
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られたセパレータを用いて、上述の通りにリチウムイオン二次電池を組み立てて、評価した。評価結果を表4に示した。
Claims (11)
- 多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも片面に配置された熱可塑性層とを含む蓄電デバイス用セパレータであって、
前記熱可塑性層は、熱可塑性ポリマーを含み、かつ
原子間力顕微鏡を用い、ばね定数0.4N/mでカンチレバー探針を前記熱可塑性層に接触させて、押し付け力に基づくフォースカーブを作成したときに、前記フォースカーブから算出されたカンチレバーのたわみ量が、3.8nm〜10.0nmである、
前記蓄電デバイス用セパレータ。 - 前記熱可塑性ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエン共重合体、及びアクリル樹脂から成る群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 前記熱可塑性ポリマーは、前記スチレン−ブタジエン共重合体又は前記アクリル樹脂である、請求項2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 前記熱可塑性ポリマーは、前記アクリル樹脂である、請求項2又は3に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 前記熱可塑性ポリマーは、粒子状熱可塑性ポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 前記粒子状熱可塑性ポリマーについてボロノイ分割を行って得られるボロノイ多角形の面積(Si)を用いて下記数式:
により定義される分散(σ2)が、0.01以上0.7以下である、請求項5に記載の蓄電デバイス用セパレータ。 - 前記たわみ量は、4.8nm〜10.0nmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 前記たわみ量は、7.2nm〜10.0nmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータと、
正極と、
負極と、
から成る積層体。 - 請求項9に記載の積層体が捲回されている捲回体。
- 請求項9に記載の積層体又は請求項10に記載の捲回体と電解液とを含む二次電池。
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