JP2013032436A - ポリマー組成物 - Google Patents

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敬二 田中
Yoshihisa Fujii
義久 藤井
Hirofumi Tsuruta
博文 鶴田
Yoshito Otake
義人 大武
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Abstract

【課題】 各種の用途に適用できるようにポリマーを改質する新しい技術を提供する。
【解決手段】ポリマー組成物は、アルコキシシランと酸触媒と有機溶媒と水とを含みゾルゲル反応の進行したゾルゲル反応溶液と、ゴムの溶液または非晶性ポリマーの溶液とを混合して成る。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機化合物と無機化合物から形成される有機・無機ハイブリッド材料の技術分野に属し、特に各種の用途に好適な、表面が改質されたポリマー材料に関する。
高分子材料(有機化合物)は、軽量・安価・高成形性という点で優れた材料である。しかし、無機材料(無機化合物)と比較して、一般に、力学的強度が低く、また光や熱などに曝されると劣化しやすいという欠点を有している。特に高分子材料全体の特性は、その表面における物性と密接に関連していることから、高分子材料の表面特性を改善すること(改質)は、非常に重要である。
現在のところ、高分子材料の表面を改質する方法としては、コロナ処理、スパッタ成膜処理、真空蒸着などが用いられている。しかし、これらの方法は、大型装置を用いて多段階の工程を必要とすることから、コストや環境に与える負荷が大きいという問題がある。
このような中、高分子材料と無機材料の特性を組み合わせた有機・無機ハイブリッド材料を得るためのポリマー組成物が、様々な角度から研究されている。有機・無機ハイブリッド材料は、高分子材料に無機化合物の性質を含むことから、高分子材料のみの場合と比較して、機能性(例えば、耐摩耗性や耐候性)や強度(例えば、弾性率や疲労強度)などの諸物性が優れているという特徴がある。
有機・無機ハイブリッド材料を得るためのポリマー組成物としては、ゾルゲル反応を利用したものも案出されている。例えば、テトラエトキシシランやメチルトリエトキシシラン等のケイ素化合物と、ポリアミドと、溶媒および加水分解用触媒とを調製して得られるものがある(特許文献1)。また、フッ素含有オリゴマーと、テトラアルコキシシランとを反応させて得られるものもある(特許文献2)。
特開平6−1953号公報 特開2003−73521号公報
しかし、如上の従来の技術は、ポリマーを改質するための確立した手段を提供するものではない。
本発明の目的は、各種の用途に適用できるようにポリマーを改質する新しい技術を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ポリマーの表面に無機化合物が十分に濃縮され、その結果ポリマーの性質を改善し得る技術を見出して、この技術に基づいて、上記の目的を達成したものである。
かくして、本発明に従えば、アルコキシシランと酸触媒と有機溶媒と水とを含みゾルゲル反応の進行したゾルゲル反応溶液と、ゴム状ポリマーの溶液または非晶性ポリマーの溶
液とを混合して成るポリマー組成物が提供される。
核磁気共鳴(NMR)測定結果に基づく反応率の算出方法に関する説明図を示す。 本発明に係るテトラエトキシシラン(TEOS)のゾルゲル反応に関する反応時間と反応率の結果を示す。 本発明に係る(ポリイソプレン(PI)/TEOS)膜表面のX線光電子分光(XPS)測定に基づく炭素(C1S)スペクトル測定の結果および表面濃縮の結果を示す。 本発明に係る(PI/TEOS)膜の表面弾性率の測定結果および模式図を示す。 本発明に係る(PI/TEOS)膜のプラズマ照射前後における膜表面の形態変化のAFM観察による測定結果を示す。 本発明に係る(PI/TEOS)膜の紫外線(UV)照射時間と膜厚変化量のAFM観察による解析結果および可視光透過性の評価結果を示す。 本発明に係る(PS/TEOS)膜のシリコン(Si)/C積分強度比の深さ依存性およびCに対するSiの組成比n(x)と深さ(x)との解析結果を示す。
ケイ素を含有するアルコキシドが触媒により重合し架橋しながらケイ素酸化物重合体を生成してゲル化することはよく知られている。本発明はこのようなゾルゲル反応の進行したゾルゲル反応溶液を予め作成しておいた後、ポリマー(ゴム状または非晶性)の溶液と混合してポリマー組成物を得ることを特徴としている。
本発明ではアルコキシシランのゾルゲル反応が進行したゾルゲル反応溶液を使用するが、この「ゾルゲル反応が進行した」という用語は、(ゴム状または非晶性)のポリマーの溶液と混合する前に、当該反応溶液中でゾルゲル反応が既に進行している状態であり、定量的にはアルコキシシランの反応率(後述する)を用いて示すことができる。例えば、後述する実施例のアルコキシシラン(TEOS):有機溶媒(エタノール):水:酸触媒(塩酸)=1:1:1:0.05のモル比で混合したゾルゲル反応溶液の場合には、約1時間経過後に反応率が約74モル%になるようにゾルゲル反応が進行したゾルゲル反応溶液を用いている。
(A)ゾルゲル反応溶液
ゾルゲル反応溶液は、ゾルゲル反応が進行するような当初のゾルが形成されるように、少なくとも、無機材料シリカの前駆体であるアルコキシシラン、該前駆体からゾルゲル反応によりケイ素酸化物を生成するための酸触媒、および水が含まれなければならない。但し、これだけではゾルゲル反応系の溶解性が充分でない場合には、それらの前駆体、触媒、水を溶解し得るような溶媒を使用してもよい。さらに、混合を円滑にするため、有機低分子とゾルゲル反応溶液とを溶解し得る有機溶媒を用いる。
−1)アルコキシシラン(ケイ素酸化物の前駆体)
アルコキシシランは、ケイ素酸化物を与えるゾルゲル反応の前駆体(出発物質)である。ゾルゲル反応の進行過程におけるケイ素酸化物の表面電荷は溶液のpHによって変化するため、ポリマーのゲルの表面に静電的に付着しやすいようにpHが選定される必要がある。
本発明で用いることができるアルコキシシランとしては、ゾルゲル反応の進行に伴って生じるアルコール類の安全性から、テトラエトキシシラン(TEOS)が好ましいが、この他、テトラメトキシシラン(TMOS)、トリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラクロロシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニル
トリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、およびジフェニルジメトキシシランなどを使用することもできる。
−2)有機溶媒
上記の有機溶媒としては、取扱いの容易性から、エタノールが好ましいが、この他、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール(TBA)、ブタンジオール、エチルヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジグライム、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン(DIBK)、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(DAA)等のケトン系溶媒;塩化メチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、ブロモプロパン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル系溶媒等が挙げられる。
−3)酸触媒
上記アルコキシシランをゾルゲル反応させる際の酸触媒としては、取扱い時の安全性が高いことから、塩酸を使用することが好ましいが、この他、硝酸や硫酸等の酸性溶液を使用することもできる。
−4)水
上記のゾルゲル反応で用いられる水は、アルコキシシランに対して1〜2当量を添加することが好ましく、特に好ましくは、1当量の量を添加することである。
(B)ゴム状ポリマーまたは非晶性ポリマー
本発明で用いることができるポリマー(ゴム状または非晶性)としては、例えば、常温でゴム状態のポリイソプレンまたはガラス状態(非晶性)のポリスチレンを使用することができるが、この他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、スチレンアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ノルボルネン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニルなどを使用することもできる。
(C)ポリマーの溶媒
本発明で用いるポリマー(ゴム状または非晶性)を溶解させる溶媒としては、取扱いの容易性から、テトラヒドロフラン(THF)が好ましいが、この他、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、コハク酸メチルトリグリコールジエステル、アセトン、アセトニトリル、酢酸等の極性溶媒が挙げられる。
<ゾルゲル反応の進行したゾルゲル反応溶液>
ゾルゲル反応は、複雑であり、詳細なメカニズムは未だ解明されていないが、一般に以下の反応式に示すように、酸触媒によるゲルの形成の加水分解段階(式1)と、生成したゲルが脱アルコール反応により(重)縮合していく(重)縮合段階(式2)から成るということはよく知られている。
(Rはアルキル基;nは1〜4の整数)
(Rはアルキル基;nは1〜4の整数)
本発明の重要な特徴は、アルコキシシランのゾルゲル反応が進行したゾルゲル反応溶液を用いることであり、より好ましくはアルコキシシランの反応率が経時的に一定となるまでゾルゲル反応が進行したゾルゲル反応溶液を用いることである。これによって、所望の表面改質されたポリマーが得られる。
上記の「アルコキシシランの反応率」とは、アルコキシシランがゾルゲル反応によってアルコールを生成する反応における反応率(mol%)を意味する。従って、反応率(mol%)は、アルコキシシランのゾルゲル反応において、最初に加えたアルコキシシランに対する、生成されたエタノールの割合(モル比)によって示すことができる。具体的には、アルコキシシランのゾルゲル反応前後のゾルゲル反応溶液に対して、各々NMR測定を行い、得られる水素原子ピークの積分強度を比較することで得られる。
上記の「アルコキシシランの反応率が経時的に一定となる」とは、上記のアルコキシシランの反応率が、ある時間を経過後に増加も減少もしなくなり、実質的に、一定値を維持する状態(平衡状態)となることを意味する。
このように、アルコキシシランのゾルゲル反応が進行したゾルゲル反応溶液によって、表面にアルコキシシラン由来の分子鎖が97%以上にまで及ぶような、表面にアルコキシシランが高濃度に濃縮されたポリマー組成物を得ることができる(後述の実施例参照)。このような効果が得られる理由の1つとしては、ゾルゲル反応をある程度進行させておくことによって、ポリマー(ゴム状または非晶性)とアルコキシシランが相互侵入網目構造を形成すること(アルコキシシランが膜表面に濃縮できなくなる原因となり得る)が抑制されるためと推察される。さらに、ゾルゲル反応の進行したゾルゲル反応溶液を用いることによって、−O−Si−O−結合に3次元的な広がりが得られ、該ポリマー組成物が剛直な構造を有するものと推察される(高い表面弾性率を示すことが後述の実施例で示されている)。
このようにゾルゲル反応の進行したゾルゲル反応溶液を用いることで、アルコキシシランが膜表面に濃縮されるという効果は、従来のようにアルコキシシランをそのまま原料に用いて形成されるポリマー組成物では得られないものである。
以上のようにして得られたポリマー組成物は、それ自体で、例えば、成形加工によって形成されたものを使用することもできるが、スピンコート等を用いた塗布、またはスプレー等を用いた噴霧によって、被膜対象物質を被膜して使用することもできる。いずれの使用方法であっても、本発明のポリマー組成物は、ポリマーの表面にアルコキシシラン由来のケイ素酸化物(無機材料)が濃縮されることによって改質されていることから、機能性(例えば、耐摩耗性や耐候性)や強度(例えば、弾性率や疲労強度)などの諸物性の高い材料として、様々な分野で利用可能となる。
本発明のポリマー組成物の被膜対象としては、疎水性や親水性など特に制限されず、例えば、ガラス、シリコン基板、プラスチック基板、ゴム(ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン、スチレン−イソプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−エチレン−プロピレンゴム等)等の樹脂;鉄、チタン、ステンレススチール、アルミニウム等の金属;酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物;に適用することも可能である。
本発明のポリマー組成物は、その用途の一例として、浄水場の配管に使われるゴムを被膜することができる。
現在、浄水場の浄水処理の最終工程では塩素を用いて殺菌が行われているが、浄水処理
の過程で、塩素は水中に存在する有機物と反応して毒性のある塩素添加副産物(例えば、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、クロロジブロモメタンおよびブロモホルム等のトリハロメタン類)を生成してしまうこと等の問題があり、浄水処理の殺菌には、オゾンが塩素に代替されつつある。しかし、現在のインフラでは配管にゴムが使われていることから、配管に使われているゴムがオゾン処理した水によって酸化して劣化してしまうといった課題がある。このようなゴムに対して、本発明に係るポリマー組成物を被膜することによって、オゾンを用いた浄水処理において、オゾンによるゴムの酸化を抑制することが可能となる。
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
(1)ポリマー組成物(PI/TEOS)の作成
テトラエトキシシラン(TEOS)に、有機触媒としてエタノール(CH3CH2OH)、水(H2O)、酸触媒として塩酸(HCl)を混合し、333Kで2時間攪拌してゾルゲル反応を進行させた。ゾルゲル反応溶液の原料組成に関して、PIとTEOSの混合比率について(PI/TEOS)=(95/5 (wt/wt))と(50/50(wt/wt))、TEOSと水の比率についてTEOS:H2O=1:1とTEOS:H2O=1:2の計4ケースを実施した。該TEOSのゾルゲル反応溶液を、2.0wt%のPI[リビングアニオン重合により合成した数平均分子量(Mn)392,000の単分散ポリイソプレン]のテトラヒドロフラン(THF)溶液に加えることで(PI/TEOS)溶液を調製した。
約1.5×1.5cm2のサイズにカットしたシリコン基板を3mol%フッ化水素酸に2分間浸漬することで、シリコン基板の疎水化を行った。このフッ化水素酸処理を施したシリコン基板をスピンコータの回転台に設置し、基板上にポリマー組成物(PI/TEOS)の溶液を滴下後、1000rpmで60秒回転させてポリマー組成物(PI/TEOS)から形成される膜を調製した。この膜は、大気中、333Kで24時間熱処理を行った。
また、対照例として、PI膜(TEOSを含有しないもの)を作成した。すなわち、PIの2wt%THF溶液を調製し、ブレンド膜と同様にスピンコート法に基づきフッ酸処理を施したシリコン基板上に製膜した。
(2)ゾルゲル反応時間の評価
上記で得られたポリマー組成物(PI/TEOS)に対して、ゾルゲル反応を進行させた場合と、ゾルゲル反応を進行させない場合を比較し、評価を行なった結果を以下に示す。
(2−1)ゾルゲル反応時間と反応率
アルコキシシランであるTEOSの反応率(mol%)は、ゾルゲル反応前後(TEOSを加える前と加えた後)のゾルゲル反応溶液のNMRを各々測定し、該測定で得られた水素原子ピーク[下記ゾルゲル反応中の水素原子(a、b)のピーク]の積分強度に基づいて算出した。
図1に例示するNMR測定結果(水素原子ピークcは、ピーク比較のために内部標準として使用したアセトン由来)に基づいて、上記水素原子(a、b)のピーク積分強度を用いて、反応率(mol%)を以下の式から算出した。
上記の反応率(mol%)の式において、(lb2−lb1)は、TEOSのゾルゲル反応によって生成したエタノールであり、la2は、未反応のTEOS(反応後に残存するTEOSのOCH2CH3由来の水素原子)を示している。すなわち、反応率(mol%)は、最初に加えたTEOSと、TEOSのゾルゲル反応によって生成したエタノールとの割合で示されるものである。
TEOSのゾルゲル反応に関して、反応時間と反応率との結果を図2に示す。測定したサンプルは、(PI/TEOS)=(95/5 (wt/wt))、TEOS:H2O=1:1と、TEOS:H2O=1:2の溶液の2ケースとした。同図から、約1時間で反応率が経時的に一定(70%以上)な状態に達することが分かった。このことから、本実験条件では、TEOSのゾルゲル反応を進行させるのに、約1時間以上であれば好ましく、例えば、2時間と設定してもよい。
(2−2)ゾルゲル反応時間と無機材料の表面濃縮
TEOSのゾルゲル反応に関して、(PI/TEOS)膜の表面における化学組成を評価する目的で実施したX線光電子分光(XPS,PHI5800ESCAsystem、Physical Electronics Inc.)の結果を図3に示す。(PI/TEOS)=(95/5 (wt/wt))、TEOS:H2O=1:1のサンプルに対して、XPS測定を行った。シリコン基板上に製膜した(PI/TEOS)膜を光電子放出角を変えて測定を行い、深さ方向(横軸sinθで示される)における化学組成分布(Cに対するSiの積分強度比;IC1SおよびISi2pは、C1SおよびSi2pのスペクトルの積分強度を示す)を評価した。チャージアップに起因する結合エネルギーのシフトは、中性炭素の結合エネルギーを285.0eVとすることにより補正した。この結果から、ゾルゲル反応時間が2時間を経過したケースでは、sinθが小さくなるほど、すなわち、分析深さが浅くなるほど、Cに対するSiの組成比が増加していることがわかった。すなわち、(PI/TEOS)膜表面は、TEOSが選択的に濃縮していることが明らかとなった。(PI/TEOS)膜表面は、ゾルゲル反応により形成された無機層に覆われているものと推察される。
これに対して、ゾルゲル反応が進行していないケース(ゾルゲル反応時間が0時間のケース)では、(PI/TEOS)膜表面は、TEOSが濃縮されず、均一に分散されていることがわかった。
さらに、ゾルゲル反応時間が2時間を経過したケースに対して、ゾルゲル反応溶液中の原料であるTEOSの重量分率を変化させた結果を図3(c)に示す。同図(c)の横軸はTEOSの重量分率であり、縦軸はXPS測定の実測値からモデルフィッティングによる補正によって、得られたCに対するSiの組成比n(x)である。この結果から、TEOSの重量分率が約5%の場合に、表面におけるSi/C組成比は一定に達することがわかった。
また、(PI/TEOS)膜のC1Sスペクトルを測定し、波形分離した結果を図3(d)に示す。この結果から、中性炭素およびエーテル炭素の積分強度比が1:0.85であ
ることがわかった。(PI/TEOS)膜表面にPIが存在せず、エトキシ基由来のC1Sスペクトルのみが観測される場合には、当該積分強度比は1:1となることから、この差をもとに(PI/TEOS)膜表面におけるPIとTEOSの組成比を算出した結果、膜表面は、約97%がTEOS由来の分子鎖で覆われていることがわかった。
(2−3)ゾルゲル反応時間と表面弾性率(表面硬度)
TEOSのゾルゲル反応に関して、(PI/TEOS)膜の表面弾性率の結果を図4に示す。測定したサンプルは、(PI/TEOS)=(95/5 (wt/wt))、TEOS:H2O=1:1とした。
原子間力顕微鏡(AFM,E−sweep,SII Nano Technology
Inc.)を用いて、大気中、常温で、図4(a)に示す探針侵入の模式図に従い、フォースカーブ測定を行なった。カンチレバーは、Si製、ばね定数12N/mのものを使用し、探針の掃引速度は、50nm/sとした。膜の一部を切削し、シリコン基板を露出させ、シリコン基板上でフォースカーブ測定を行なうことでDIF感度(カンチレバーのたわみ変位信号の検出感度)を算出した。図4(b)および(c)の横軸は、(PI/TEOS)膜の表面からの探針侵入の深さ(nm)であり、縦軸は、その探針侵入に要する力(nN)である。
一般的に、フォースカーブは、試料の固さに応じて、その形状が大きく異なる。特に、斥力が増加し始める領域のフォースカーブの傾きは、試料表面の弾性率に相当する。図4の結果から、TEOSのゾルゲル反応時間が2時間経過後の(PI/TEOS)膜は、表面弾性率が2.1GPaにまで達しており、TEOSのゾルゲル反応時間が0時間の(PI/TEOS)膜やPI膜と比較して約60倍に達した。このように、TEOSが(PI/TEOS)膜の表面に濃縮されたことによって、十分な表面硬度を得ることができることがわかった。
以上の結果から、本発明の特徴である、TEOSのゾルゲル反応を進行させたゾルゲル反応溶液を用いることによって、(PI/TEOS)膜の表面にTEOSが選択的に濃縮されることが示され、その結果として、高い表面硬度(表面弾性率)が得られたことがわかった。
このように、ゾルゲル反応を進行させたゾルゲル反応溶液を用いることによって、TEOSが表面濃縮される理由については、明確には解明されていないが、TEOSが低表面自由エネルギー成分であることによって、系全体の自由エネルギーの最小化や、表面に存在する分子鎖の形態エントロピーの損失の効果が一因として考えられる。
(3)耐久性評価
さらに、上記で作成した(PI/TEOS)膜について、耐久性評価を行った結果を以下に示す。
(3−1)プラズマ照射前後における形態変化観察
上記で作成した(PI/TEOS)膜について、プラズマ照射前後における膜表面の形態変化をAFMを用いて観察した。AFM観察により得られたPI膜および(PI/TEOS)膜におけるプラズマ照射前後の形態像(a,b,c)および断面プロファイル(d,e,f)を膜の粗さの指標となる二乗平均粗さ(RMS)とともに図5に示す。図中の破線はプラズマ照射前、実線はプラズマ照射後の断面プロファイルを示している。RMSの変化および断面プロファイルの結果から、PI膜はプラズマ照射により表面が著しく粗くなったのに対し、(PI/TEOS)膜は表面形態に大きな変化は生じなかった。すなわち、PI膜の粗さはプラズマ照射により表面が酸化したものと考えられるが、(PI/TEOS)膜はそのような酸化を受けなかったと考えられ、表面に形成した無機層により耐酸化性が向上したといえる。
(3−2)紫外線照射前後における膜厚変化観察
上記で作成した(PI/TEOS)膜について、紫外線(UV)照射時間と膜厚変化量の関係をAFM観察により解析した。膜厚変化量のUV照射時間依存性の測定結果を図6(a)に示す。波長254nmの紫外線を用いて、膜厚が50nm減少するまでの時間を耐久時間としたところ、(PI/TEOS)=(50/50 (wt/wt))膜が7時間であり、PI膜が3時間となった。この結果から、(PI/TEOS)膜は、表面に形成された無機層によって、紫外線に対する耐久性が向上したといえる。
(3−3)可視光透過性
(PI/TEOS)膜の透明性を評価するため、デジタルカメラを用いて膜を観察した。図6(b)は、CaF2基板(左側)と、CaF2基板上に製膜した(PI/TEOS 95/5 (wt/wt))膜(右側)の写真である。図6(c)は、(PI/TEOS
95/5 (wt/wt))膜(左側)および(PI/TEOS 50/50 (wt/wt))膜(右側)における可視光波長域の透過率である。この波長域の透過率の平均は、(PI/TEOS 95/5 (wt/wt))膜が99%であり、(PI/TEOS 50/50 (wt/wt))膜が87%であった。以上の結果から、作成した(PI/TEOS)膜は透明性に優れていることがわかった。このため、本発明に係るポリマー組成物は、高い透明性が要求されるコーティング剤等への応用も期待できると考えられる。
(実施例2)
(1)ポリマー組成物(PS/TEOS)の作成
上記では、ポリマーとしてポリイソプレン(PI)を使用したが、ポリマーの種類は特に限定されない。そこで、実施例2では、ポリマーにポリスチレン(PS)を使用して、上記の実施例1と同様の手順により、アルコキシシラン(TEOS):有機溶媒(エタノール):水:酸触媒(塩酸)=1:1:1:0.05のモル比で混合したゾルゲル反応溶液を使用して、ポリマー組成物(PS/TEOS 50/50 (wt/wt))膜を作成した。
(2)ポリマー組成物(PS/TEOS)の評価
図7(a)は、(PS/TEOS 50/50 (wt/wt))膜におけるSi/C積分強度比のsinθ依存性(深さ依存性)を示す。同図(b)は、モデルフィッティングによる補正によって、得られたCに対するSiの組成比n(x)と深さ(x)との関係を示す。この結果から、(PS/TEOS)膜は、上述の(PI/TEOS)膜と同様に、膜表面にTEOSが選択的に濃縮することがわかった。
以上の結果から、本発明に係るポリマー組成物は、常温でゴム状態のポリマー(一例としてポリイソプレン)およびガラス状態(一例としてポリスチレン)のポリマーの表面改質に適用できることが示され、ポリマーの種類に関わらず、TEOSの表面濃縮を達成できることが示された。特に、上記のようなポリイソプレン(ゴム状ポリマー)やポリスチレン(非晶性ポリマー)といった汎用性の高いポリマーを使用することができ、ハンドリングが容易である。
なお、上記実施例では、本発明に係るポリマー組成物を、疎水化したシリコン基板にスピンコートで被膜したが、この形態に限定されることはなく、親水性のシリコン基板に対しても被膜することができる。さらに、本発明に係るポリマー組成物は、それ自体で、例えば、成形加工によって形成されたものを使用することもでき、またはスプレー等を用いた噴霧によって、被膜対象物質を被膜して使用することもできる。いずれの使用方法であっても、本発明のポリマー組成物は、上記実施例で示されたように、ポリマーの表面にアルコキシシラン由来のケイ素酸化物(無機材料)が濃縮され、表面改質されていることから、機能性(例えば、耐摩耗性や耐候性)や強度(例えば、弾性率や疲労強度)などの諸物性の優れた材料として、様々な分野で利用可能となる。

Claims (6)

  1. アルコキシシランと酸触媒と有機溶媒と水とを含みゾルゲル反応の進行したゾルゲル反応溶液と、ゴム状ポリマーの溶液または非晶性ポリマーの溶液とを混合して成るポリマー組成物。
  2. 前記ゾルゲル反応溶液が、アルコキシシランの反応率が経時的に一定になるまでゾルゲル反応が進行しているものであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
  3. アルコキシシランがテトラエトキシシラン(TEOS)であり、
    酸触媒が塩酸であることを
    特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリマー組成物。
  4. ポリマーがゴムであるポリイソプレンであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポリマー組成物。
  5. ポリマーが非晶性ポリマーであるポリスチレンであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポリマー組成物。
  6. アルコキシシランの反応率が70モル%以上になるようにゾルゲル反応が進行している請求項1〜請求項5のいずれかに記載のポリマー組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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