JP2017091744A - 蓄電デバイス用セパレータ捲回体 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
巻き芯と、前記巻き芯に捲回された蓄電デバイス用セパレータとを備える蓄電デバイス用セパレータ捲回体であって、
前記セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜と、該ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層と、を有し、
前記熱可塑性ポリマー被膜層は、フィラーを含まず、かつ
前記セパレータを前記捲回体から5mm/秒の速度で巻き戻した際の巻き戻し力が、10mN/10mm以上かつ750mN/10mm以下である、
前記蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
[2]
前記巻き戻し力が、10mN/10mm以上かつ500mN/10mm以下である、[1]に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
[3]
前記ポリオレフィン微多孔膜の平均厚みが、1μm以上かつ10μm以下である、[1]又は[2]に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
[4]
前記ポリオレフィン微多孔膜の平均厚みが、1μm以上かつ6μm以下である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
[5]
前記熱可塑性ポリマー被膜層に含まれる粒状熱可塑性ポリマーの平均粒子径が、500nm以上かつ3000nm未満である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
[6]
前記粒状熱可塑性ポリマーの平均粒子径が、1000nm以上かつ2000nm未満である、[5]に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
[7]
前記粒状熱可塑性ポリマーが(メタ)アクリレートモノマーを重合して成るモノマー単位を含むポリマーである、[5]又は[6]に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
[8]
前記粒状熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも一つが、示差走査熱量測定法により測定されたときに、20℃未満の領域に存在する、[5]〜[7]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
[9]
前記巻き芯の外径が127mm〜381mmである、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
[10]
[1]〜[9]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体から巻き戻したセパレータを用いて成るリチウムイオン二次電池。
本実施の形態では、巻き芯に蓄電デバイス用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう)が捲回される。セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜(以下、単に「微多孔膜」ともいう)、及び微多孔膜の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆している熱可塑性ポリマー被膜層を有する。本実施の形態では、熱可塑性ポリマー被膜層は、無機フィラー又は有機フィラー(以下、単に「フィラー」ともいう)を含まない。
熱可塑性ポリマー被膜層の材料としては、ジエン系ポリマー、アクリル系ポリマー又はフッ素系ポリマーが好ましいと考えられる。
また、微多孔膜上に、熱可塑性ポリマーを塗工した後、後述する走査型電子顕微鏡(SEMとも言う)を用いた観察法にて観察した際、熱可塑性ポリマーの形状が粒状であり、粒状熱可塑性ポリマーの平均粒子径が、500nm以上3000nm未満であることが好ましく、1000nm以上2000nm未満であることがより好ましいと考えられる。ここで、「粒状」とは、SEMの測定にて、個々の熱可塑性ポリマーが輪郭を持った状態のことを指し、細長形状であっても、球状であっても、多角形状等であってもよい。
ポリオレフィン微多孔膜の平均厚みの下限値は、ラミネート型蓄電デバイスの曲げ耐性の観点から、1μm以上、1.5μm以上、又は2μm以上であることが好ましい。
本実施の形態では、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層は、フィラーを含まないが、熱可塑性ポリマーを含む。
これらの中でも、セパレータと電極の密着性及び、ラミネート型電池曲げ応力両立の観点から、アクリル系ポリマーが好ましい。
ジエン系ポリマーは、特に限定されないが、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役の二重結合を2つ有する共役ジエンを重合して成るモノマー単位を含むポリマーである。共役ジエンモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。これらは単独で重合しても共重合してもよい。
アクリル系ポリマーは、特に限定されないが、好ましくは(メタ)アクリレートモノマーを重合して成るモノマー単位を含むポリマーである。
フッ素系ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマー、これと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。フッ素系ポリマーは、電気化学的安定性の観点から好ましい。
具体的には、DSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の変曲点における接線との交点により決定される。より詳細には、実施例に記載の方法を参照することができる。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+‥‥+Wi/Tgi+‥‥Wn/Tgn (1)
(式(1)中において、Tg(K)は、コポリマーのTg、Tgi(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTg、Wiは、各モノマーの質量分率を各々示す。)
ここで、粒状熱可塑性ポリマーの面積は、後記の実施例に記載の通り、セパレータの最表面のSEMによる観察(倍率30000倍)によって測定される。
熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度(倍)=(Wa−Wb)÷Wb
ゲル分率は、重合するモノマー成分及び各モノマーの投入比、重合条件を変更することにより調整することができる。
熱可塑性ポリマーの含有量は、塗工する液のポリマー濃度又はポリマー溶液の塗布量を変更することにより調整することができる。
本実施の形態におけるポリオレフィン微多孔膜としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンを含有するポリオレフィン樹脂組成物から構成される多孔膜が挙げられ、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔膜であることが好ましい。本実施の形態におけるポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂の含有量は特に限定されないが、蓄電デバイス用セパレータとして用いた場合のシャットダウン性能等の点から、多孔膜を構成する全成分の質量分率の50%以上100%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物から成る多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂が占める割合は60%以上100%以下がより好ましく、70%以上100%以下であることが更に好ましい。
本実施の形態におけるポリオレフィン微多孔膜の突刺強度は、特に限定されないが、好ましくは200g/20μm以上、より好ましくは300g/20μm以上であり、好ましくは2000g/20μm以下、より好ましくは1000g/20μm以下である。突刺強度が200g/20μm以上であることは、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制する観点から好ましい。また、充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念を抑制する観点からも好ましい。一方、2000g/20μm以下とすることは、加熱時の配向緩和による幅収縮を低減できる観点から好ましい。ここで、突刺強度は、後記の実施例の記載の方法により測定される。
なお、上記突刺強度は、延伸倍率、延伸温度を調整する等により調節可能である。
なお、気孔率は、延伸倍率の変更等により調節可能である。
なお、上記透気度は、延伸温度、延伸倍率の変更等により調節可能である。
本実施の形態におけるポリオレフィン微多孔膜を製造する方法は、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とを溶融混練してシート状に成形後、場合により延伸した後、可塑剤を抽出することにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法等が挙げられる。
本実施の形態では、蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜と熱可塑性ポリマー被覆層に加えて、無機フィラー又は有機フィラーと樹脂製バインダを含む多孔層を備えていてもよい。多孔層の位置は、ポリオレフィン微多孔膜表面の少なくとも一部、熱可塑性ポリマー被覆層表面の少なくとも一部、及び/又はポリオレフィン微多孔膜と熱可塑性ポリマー被覆層との間が挙げられる。前記多孔層はポリオレフィン微多孔膜の片面であっても両面に備えていてもよい。
(無機フィラー)
多孔層に使用する無機フィラーとしては、特に限定されないが、200℃以上の融点を持ち、電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
中でも、架橋ポリアクリル酸、架橋ポリアクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸、架橋ポリメタクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸メチル、および架橋ポリシリコーン(ポリメチルシルセスキオキサン等)、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミドから成る群より選ばれる1種以上の樹脂であることが好ましい。
樹脂製バインダの種類としては、特に限定されないが、本実施の形態において蓄電デバイス用セパレータをリチウムイオン二次電池用セパレータとして使用する場合には、リチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
本実施の形態では、セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面の少なくとも一部に熱可塑性ポリマーを有する。
ポリオレフィン微多孔膜上に熱可塑性ポリマーを形成する方法は、特に限定されず、例えば熱可塑性ポリマーを含有する塗布液をポリオレフィン微多孔膜に塗布する方法が挙げられる。
本実施の形態に係る積層体は、上記セパレータと電極とが積層したものである。本実施の形態のセパレータは、電極と接着することにより積層体として用いることができる。ここで、「接着」とは、セパレータと電極との上記加熱剥離強度が、好ましくは10gf/cm以上、より好ましくは15gf/cm以上、さらに好ましくは20gf/cm以上であることをいう。
本実施の形態のセパレータは、電池、コンデンサー、キャパシタ等におけるセパレータ、又は物質の分離に用いることができる。特に、非水電解液電池用セパレータとして用いた場合に、電極への密着性と優れた電池性能を付与することが可能である。
本実施の形態のセパレータを用いて非水電解液二次電池を製造する場合、正極、負極、非水電解液に限定はなく、公知のものを用いることができる。
正極材料は、特に限定されないが、例えば、LiCoO2、LiNiO2、スピネル型LiMnO4、オリビン型LiFePO4等のリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
<粘度平均分子量(以下、「Mv」ともいう。)>
ASRM−D4020に基づき、デカリン溶剤における135℃での極限粘度[η]を求め、ポリエチレンのMvは次式により算出した。
[η]=0.00068×Mv0.67
また、ポリプロピレンのMvは次式より算出した。
[η]=1.10×Mv0.80
10cm×10cm角の試料をポリオレフィン微多孔膜から切り取り、(株)島津製作所製の電子天秤AEL−200を用いて重量を測定した。得られた重量を100倍することで1m2当りの膜の目付け(g/m2)を算出した。
10cm×10cm角の試料をポリオレフィン微多孔膜から切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、膜密度を0.95(g/cm3)として次式を用いて計算した。
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
JIS P−8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計G−B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度とした。
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーでポリオレフィン微多孔膜を固定した。次に固定されたポリオレフィン微多孔膜の中央部を、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで、25℃雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として突刺強度(g)を得た。
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
Rgas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101325))
Rliq=透水度/100
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
(1)ポリオレフィン微多孔膜及び蓄電デバイス用セパレータの膜厚(μm)
ポリオレフィン微多孔膜及び蓄電デバイス用セパレータから、各々、10cm×10cmのサンプルを切り出し、格子状に9箇所(3点×3点)を選んで、膜厚を微小測厚器(東洋精機製作所(株) タイプKBM)を用いて室温23±2℃で測定した。各々、9箇所の測定値の平均値を、ポリオレフィン微多孔膜、蓄電デバイス用セパレータの膜厚(μm)とした。
熱可塑性ポリマー被覆層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用い、セパレータの断面観察により測定した。サンプルのセパレータを1.5mm×2.0mm程度に切り取り、ルテニウム染色した。ゼラチンカプセル内に染色サンプルとエタノールを入れ、液体窒素により凍結させた後、ハンマーでサンプルを割断した。サンプルをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、30000倍にて観察し、熱可塑性ポリマー層の厚みを算出した。なお、SEM画像にてポリオレフィン微多孔膜断面の多孔構造が見えない最表面領域を熱可塑性ポリマー被覆層の領域とした。
蓄電デバイス用セパレータの膜厚からポリオレフィン微多孔膜の膜厚及び熱可塑性ポリマー被覆層の厚みを引くか、又は蓄電デバイス用セパレータの膜厚からポリオレフィン微多孔膜の膜厚を引くことにより、フィラー多孔層の厚みを算出した。
熱可塑性ポリマーの塗工液(不揮発分=38〜42%、pH=9.0)を、アルミ皿に適量取り、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後の乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)にて窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。なお測定条件は下記の通りとした。
(1段目昇温プログラム)
70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
(2段目降温プログラム)
110℃から毎分40℃の割合で降温。−50℃に到達後5分間維持。
(3段目昇温プログラム)
−50℃から毎分15℃の割合で130℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。
テフロン(登録商標)板上に、熱可塑性ポリマーの塗工液(不揮発分=38〜42%、pH=9.0の)をスポイトで滴下し(直径5mm以下)、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後、乾燥皮膜を約0.5g精秤(a)し、それを50mLポリエチレン容器に取り、そこに30mLのトルエンを注ぎ入れ3時間室温で振とうした。その後、内容物を325メッシュでろ過し、メッシュ上に残ったトルエン不溶分をメッシュごと、130℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させた。なお、ここで使用する325メッシュはあらかじめその乾燥重量を量っておいた。
熱可塑性ポリマーのゲル分率(トルエン不溶分)=(b)/(a)×100 [%]
粒状熱可塑性ポリマーの平均粒径は、オスミウム蒸着した蓄電デバイス用セパレータを、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S−4800、HITACHI社製」を用いて、加速電圧1.0kV、30000倍にて観察することにより測定した。粒状熱可塑性ポリマーの一番径が大きい部分を粒径とし、20個の平均値を平均粒径とした。
熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを分散させた溶液を130℃のオーブン中に1時間静置した後、乾燥させた熱可塑性ポリマーを0.5gになるように切り取り、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒10gと一緒に50mLのバイアル瓶に入れ、3時間浸透させた後、サンプルを取り出し、上記混合溶媒にて洗浄し、重量(Wa)を測定した。その後、150℃のオーブン中に1時間静置したあと重量(Wb)を測定し、以下の式より熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度を測定した。
熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度(倍)=(Wa−Wb)÷(Wb)
<セパレータと電極の密着性>
セパレータと電極との密着性は、以下の手順で評価した。
負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエンコポリマーラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、負極の活物質塗布量は106g/m2、活物質嵩密度は1.35g/cm3になるようにした。
上記方法により得られた負極を幅20mm、長さ40mmにカットした。この電極上にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを2:3の比率(体積比)にて混合した電解液(富山薬品工業製)を負極が浸る程度にたらし、この上にセパレータを重ねた。この積層体をアルミジップに入れ、80℃、10MPaの条件下で、2分間プレスを行った後、積層体を取り出し、セパレータを電極から剥がした。
(評価基準)
○:セパレータの30%以上の面積に負極活物質が付着した場合。
△:セパレータの10%以上30%未満の面積に負極活物質が付着した場合。
×:セパレータの10%未満の面積に負極活物質が付着した場合。
セパレータ捲回体の巻戻し力の測定は、JIS−Z0237に基づき下記のようにして測定した。捲回体の巻戻し力測定には、後述される電池初期不良率の評価において作製された捲回体を使用した。引張試験機(Model5544、インストロン製)を用い、捲回体を巻き戻し固定具に固定し、10−50mm幅のセパレータを5mm/秒の速度で、200mm以上巻き戻すことにより測定した。なお、測定は、23℃×50%RHの環境下で、巻戻すセパレータと捲回体の面との角度が垂直になるように巻戻しを行い、試験回数n=5以上で測定した。実施例及び比較例の巻戻し力(mN/10mm)を表5〜9に記載した。
(電池の作製)
本評価では、下記の通り、円筒型リチウムイオン電池を作製し、それを用いて評価を行った。
正極については、厚み15μmのアルミニウム箔集電体に、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極合剤をほぼ均等に塗工し、これを幅51mm、長さ約750mmの帯状に切断した。
負極については、厚み10μmの銅箔集電体に、負極活物質としてリチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出可能な黒鉛等から成る炭素粉末材料を含む負極合剤をほぼ均等に塗工し、これを幅54mm、長さ約800mmの帯状に切断した。これら帯状にした正極および負極には、捲回後に所定の位置に導電リードが来るように、電極端部の電極合剤を塗っていない集電体に電流を流すための導電リードを超音波溶接機で取り付けた。
実施例及び比較例のセパレータを、幅57mm、長さ約900mmの帯状に切断して用いた。
(電池初期不良率の評価)
実施例又は比較例で得られたセパレータを用いて上記のように電池を5個作製し、初期充放電効率から下記の基準で不良率を評価した。
電池の不良率(%)=[初期充放電効率が85%以下の電池の個数]/評価電池(5個)×100
電池の不良率は下記基準で評価した。評価結果を表5〜9に記載した。
○:電池の不良率が0%以上20%未満
△:電池の不良率が20%以上40%未満
×:電池の不良率が40%以上
本評価は、下記の通りラミネート型電池(以下、ラミセルともいう)を作製し、それを用いて評価を行った。
正極活物質としてコバルト酸リチウムLCO(LiCoO2)(粒子径:12μm)100部と、正極導電材としてアセチレンブラック(AB35,電気化学工業社製デンカブラック粉状品:粒子径35nm、比表面積68m2/g)2.0部と、正極用結着剤のフッ素含有重合体として混合ポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製KYNAR HSV900とKYNAR720との1:1混合物)1.6部およびニトリル基含有アクリル重合体として重合体B1−1を固形分相当量で0.4部と、適量のNMPとをプラネタリーミキサーにて攪拌し、正極用スラリー組成物を調製した。
負極活物質として球状人造黒鉛(粒子径:12μm)90部とSiOx(粒子径:10μm)10部、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(粒子径:180nm、ガラス転移温度:−40℃)1部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1部と適量の水とをプラネタリーミキサーにて攪拌し、負極用スラリー組成物を調製した。
得られたシート状正極およびシート状負極を、実施例及び比較例のセパレータを介在させて直径20mmの芯を用いて捲回し、捲回体を得た。捲回体は、10mm/秒のスピードで厚さ4.5mmになるまで一方向から圧縮した。前記略楕円の短径に対する長径の比は7.7であった。
曲げ試験機(島津製作所製AG−10FD)を用いて、前記ラミネート型電池の曲げ応力の測定を行った。曲げ試験は、支点間隔を10cmで前記ラミネート型電池を支持し、支点間隔の中心を上から押し、その押し速度を1mm/分で行った。
曲げ応力は下記基準で評価した。評価結果を表5〜9に記載した。
○:曲げ応力が100MPa以上
△:曲げ応力が75MPa以上100MPa未満
×:曲げ応力が75MPa未満
粘度平均分子量が70万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、Mvが30万であり、ホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、粘度平均分子量が40万であるホモポリマーのポリプロピレンと粘度平均分子量が15万であるホモポリマーのポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリオレフィン混合物99質量部に酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10−5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量部となるように、すなわち、ポリマー濃度が35質量部となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
延伸温度と緩和率の調整をしたこと以外は、製造例1−1と同様の操作により、ポリオレフィン微多孔膜2A〜8A及び17Aを得た。得られたポリオレフィン微多孔膜2A〜8A及び17Aを製造例1と同様に上記方法により評価した。
水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)を96.0質量部とアクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)4.0質量部、及びポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部を100質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製し、ポリオレフィン樹脂多孔膜4Aの表面にマイクログラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、塗工層1Bを2μmの厚さで形成して、微多孔膜9Aを得た。得られた微多孔膜を製造例1と同様に上記方法により評価した。
ポリオレフィン微多孔膜4Aの一方の表面に製造例9Aと同様の方法で塗工層2Bを3μmの厚さで形成して、微多孔膜10Aを得た。得られた微多孔膜を製造例1と同様に上記方法により評価した。
ポリオレフィン微多孔膜4Aの一方の表面に製造例9Aと同様の方法で塗工層3Bを4μmの厚さで形成して、微多孔膜11Aを得た。得られた微多孔膜を製造例1と同様に上記方法により評価した。
ポリオレフィン微多孔膜4Aの一方の表面に製造例9Aと同様の方法で塗工層4Bを7μmの厚さで形成して、微多孔膜12Aを得た。得られた微多孔膜を製造例1と同様に上記方法により評価した。
焼成カオリン(カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)を主成分とする湿式カオリンを高温焼成処理したもの、平均粒径1.8μm)を95.0質量部とアクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径220nm、最低成膜温度0℃以下)5.0質量部、及びポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)0.5質量部を180質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製し、ポリオレフィン微多孔膜4Aの表面にマイクログラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、塗工層5Bを6μmの厚さで形成して、微多孔膜13Aを得た。得られた微多孔膜を製造例1と同様に上記方法により評価した。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂(VdF−HFP樹脂)(以下、樹脂Aとする)である、フッ化ビニリデン/ヘキサフロロプロピレン(99/1mol%、重量平均分子量35万)と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(VdF−HFP樹脂)(以下、樹脂Bとする)である、フッ化ビニリデン/ヘキサフロロプロピレン共重合体(95.2/4.8mol%、重量平均分子量27万)とを、樹脂A/樹脂B=60/40(質量比)で混合して、混合樹脂を得た。
得られた塗工液をポリオレフィン微多孔膜4Aの両面に等量かつ12μmの厚さで塗工した。次いで、ポリエチレン微多孔膜を、水/ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=57/30/13(質量比)の凝固液(40℃)に浸漬することで、VdF樹脂及びVdF−HFP樹脂を固化させ、微多孔膜14Aを得た。得られた微多孔膜を製造例1と同様に上記方法により評価した。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂としてフッ化ビニリデン/ヘキサフロロプロピレン共重合体(モル比98.9/1.1、重量平均分子量195万)を用意した。
前記樹脂を濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミドとトリプロピレングリコールの混合溶媒(ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=7/3[質量比])に溶解し、架橋メタクリル酸メチル系樹脂フィラー(体積平均粒子径1.8μm、D90−D10が1.3μm)を分散させて、塗工液を作製した。この塗工液において、フィラーの含有量を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とフィラーの合計量に対し5質量%とした。
この塗工液をポリオレフィン微多孔膜4Aの両面に等量かつ3μmの厚さで塗工し、40℃の凝固液(水/ジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール=57/30/13[質量比])に浸漬して固化させ、微多孔膜15Aを得た。得られた微多孔膜を製造例1と同様に上記方法により評価した。
ポリフッ化ビニリデン(PVdF)系樹脂から成る微粒子を含む水系エマルション(水系分散物)であるVINYCOAT PVDF AQ360(東日本塗料社製)を用い、これを希釈して微粒子濃度が3.7質量%である塗工液を調製した。ポリフッ化ビニリデン系樹脂から成る微粒子の平均粒子径は250nm(0.25μm)であり、樹脂はフッ化ビニリデン/アクリル酸共重合体(フッ化ビニリデン:70mol%)である。この塗工液と水酸化マグネシウムを混合して、得られた混合物をポリオレフィン微多孔膜4Aの両面に、#6バーコータを使用して等量塗工し、60℃で乾燥させることで、塗工層8Bを5μmの厚さで形成して、微多孔膜16Aを得た。得られた微多孔膜を製造例1と同様に上記方法により評価した。
(熱可塑性ポリマー被覆層用原料ポリマー1C〜8Cの製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液)0.5質量部と、を投入し、反応容器内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)を7.5質量部添加した。
過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に、メタクリル酸メチル38.5質量部、アクリル酸n−ブチル19.6質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル31.9質量部、メタクリル酸0.1質量部、アクリル酸0.1質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2質量部、アクリルアミド5質量部、メタクリル酸グリシジル2.8質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学工業株式会社製)0.7質量部、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)3質量部、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液)3質量部、p−スチレンスルホン酸ナトリウム0.05質量部、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)7.5質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部、及びイオン交換水52質量部の混合物を、ホモミキサーにより5分間混合させて、乳化液を作製した。得られた乳化液を、滴下槽から反応容器に150分掛けて滴下した。
乳化液の滴下終了後、反応容器の内部温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却した。得られたエマルジョンを、水酸化アンモニウム水溶液(25%水溶液)でpH=9.0に調整し、濃度40%のアクリル系コポリマーラテックスを得た(原料ポリマー1C)。得られた原料ポリマー1Cについて、上記方法により評価した。得られた結果を表2に示す。
(注) 表2中の原材料名
MMA :メタクリル酸メチル
BA :アクリル酸n−ブチル
EHA :アクリル酸2−エチルヘキシル
MAA :メタクリル酸
AA :アクリル酸
HEMA :メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
AM :アクリルアミド
GMA :メタクリル酸グリシジル
NaSS :p−スチレンスルホン酸ナトリウム
A−TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
KH1025:アクアロンKH1025(登録商標、第一工業製薬株式会社製)
SR1025:アデカリアソープSR1025(登録商標、株式会社ADEKA製)
APS :過硫酸アンモニウム
(粒状熱可塑性ポリマー1C1〜8C4の製造方法)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、初期仕込みとして水65質量部、シード粒子16質量部、0.5質量部のKH1025、0.5質量部のSR1025、イオン交換水70.4質量部を投入し、反応容器中の温度を30℃に保ち、APS7.5質量部を添加した。
表5に記載の粒状熱可塑性ポリマー1C5を固形分で2.4質量部、計り取り、92.5質量部の水に均一に分散させて、熱可塑性ポリマーを含む塗工液を調製した。次いで、表1に記載の微多孔膜1Aの片面表面にグラビアコーターを用いて塗工液を塗布した。60℃にて乾燥して塗工液の水を除去した。さらに、もう片面も同様に塗工液を塗布し、再度乾燥させることにより、微多孔膜の両面に熱可塑性ポリマーを有する蓄電デバイス用セパレータを得た。得られたセパレータについて、上記方法により、評価した。得られた結果を表5に示す。
表5〜9のいずれかに記載した組み合わせで、熱可塑性ポリマーを含有する塗工液を、微多孔膜の両面に各種方法(スプレー、グラビア)により塗布したこと以外は実施例1と同様にして、蓄電デバイス用セパレータを作製した。得られたセパレータの物性及び評価結果を表5〜9のいずれかに示す。
Claims (10)
- 巻き芯と、前記巻き芯に捲回された蓄電デバイス用セパレータとを備える蓄電デバイス用セパレータ捲回体であって、
前記セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜と、該ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する熱可塑性ポリマー被覆層と、を有し、
前記熱可塑性ポリマー被膜層は、フィラーを含まず、かつ
前記セパレータを前記捲回体から5mm/秒の速度で巻き戻した際の巻き戻し力が、10mN/10mm以上かつ750mN/10mm以下である、
前記蓄電デバイス用セパレータ捲回体。 - 前記巻き戻し力が、10mN/10mm以上かつ500mN/10mm以下である、請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
- 前記ポリオレフィン微多孔膜の平均厚みが、1μm以上かつ10μm以下である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
- 前記ポリオレフィン微多孔膜の平均厚みが、1μm以上かつ6μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
- 前記熱可塑性ポリマー被膜層に含まれる粒状熱可塑性ポリマーの平均粒子径が、500nm以上かつ3000nm未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
- 前記粒状熱可塑性ポリマーの平均粒子径が、1000nm以上かつ2000nm未満である、請求項5に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
- 前記粒状熱可塑性ポリマーが(メタ)アクリレートモノマーを重合して成るモノマー単位を含むポリマーである、請求項5又は6に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
- 前記粒状熱可塑性ポリマーのガラス転移温度のうち少なくとも一つが、示差走査熱量測定法により測定されたときに、20℃未満の領域に存在する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
- 前記巻き芯の外径が127mm〜381mmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ捲回体から巻き戻したセパレータを用いて成るリチウムイオン二次電池。
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