JP2017145278A - ポリヒドロキシウレタン樹脂及びこれを用いたガスバリア性コーティング剤及びこれを用いたガスバリア性フィルム - Google Patents

ポリヒドロキシウレタン樹脂及びこれを用いたガスバリア性コーティング剤及びこれを用いたガスバリア性フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】二酸化炭素を原料の一つとして合成することもできる、水酸基によってガスバリア性を発現するポリヒドロキシウレタン樹脂を改質し、ガスバリア性を低下させることなく機械的特性及び熱的特性を向上させたガスバリア素材の提供。【解決手段】紫外線又は電子線により硬化させて架橋樹脂皮膜を形成するためのポリヒドロキシウレタン樹脂であって、一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、該一般式(1)中に一般式(3)で示される構造を有し、少なくとも、その主鎖骨格に不飽和基をもつ不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリヒドロキシウレタン樹脂、これを用いたガスバリア性コーティング剤及びこれを用いたフィルムに関する。さらに詳しくは、本発明を特徴づけるポリヒドロキシウレタン樹脂は、紫外線又は電子線を照射することで形成される架橋樹脂皮膜層が、高湿度下においても高いガスバリア性を示す架橋塗膜となる有用なものであり、また、二酸化炭素を、前記樹脂の形成原料とし、その化学構造中に二酸化炭素を組み込むことができることから、高度な環境対応製品の提供が可能になる技術に関する。
ガスバリア性を有するフィルムは、主に内容物を保護する目的で使用されており、食品用や医薬品用などの包装材料としての使用を中心に、工業材料分野においても幅広く使用されている。ガスバリア性を有するフィルム(以下、「ガスバリア性フィルム」という)用の、ガスバリア層の形成材料には、形成した皮膜がガスバリア性を示す樹脂が使用されている。代表的な樹脂としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(以下、EVOHと略記)や、塩化ビニリデン樹脂(以下、PVDCと略記)が挙げられる。これらのガスバリア性を有する樹脂は、単独でも使用可能である。一般的には、下記に述べるように、他の樹脂材料を用いて多層フィルムを構成し、その中のガスバリア層の形成材料に使用されている。
例えば、EVOHは、ポリプロピレン(以下、PPと略記)などの樹脂と共押出し成形などを行うことで、複合フィルムに使用されているが、EVOHは、有機溶剤への溶解性に劣るため、コーティング法によるフィルムや塗膜の作製には不向きである。一方、PVDCは、コーティング法による成形が可能であり、各種基材に塗布することができるため、コートフィルムとして食品包装用などに使用されている。しかしながら、PVDCは、塩素の含有率が高いため、廃棄(焼却)する際にダイオキシンが発生するといった別の問題点が指摘されている。
一方、近年、地球温暖化が問題とされており、石油由来の材料の使用を削減し、バイオマス由来材料をポリマーの原材料に使用する検討が進んでいる。例えば、包装材料に使用されるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記)では、バイオマス由来成分による製造方法がほぼ確立されるに至っており、また、ポリエチレンやPPにおいても、バイオマス由来成分を使用する検討が行われている。しかしながら、前述したバリア層の形成材料として広く使用されているEVOHやPVDCのような樹脂については、化学構造上の問題からバイオマス由来成分への置き換えが難しく、検討が進んでいないのが現状である。
その一方で、上記したEVOHやPVDCとは化学構造が全く異なる新規な環境対応型のバリア性材料として、二酸化炭素を原料に用いて合成されるポリヒドロキシウレタン樹脂をガスバリア層の形成材料に使用することが提案されている(特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂は、二酸化炭素由来の−O−CO−結合を樹脂の化学構造中に有する点で、環境問題に対応しうる樹脂である。さらに、この樹脂は、ウレタン結合の近接部位に水酸基を有する化学構造に特徴があり、この水酸基を有する化学構造部位によって、従来のポリウレタン樹脂にはないガスバリア性が発現されることが特許文献1に明示されている。
また、ポリヒドロキシウレタン樹脂に関する使用技術として、形成した皮膜の熱的特性の向上を目的として、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基を修飾して不飽和基を導入する方法が知られている(非特許文献1)。
また一方で、ポリヒドロキシウレタン樹脂に関する技術として、1級アミノ基との2級アミノ基の反応性の違いを利用し、主鎖中に2級アミノ基を存在させる方法が知られており、非特許文献2では、2級アミノ基と反応性を示す化合物を架橋剤として用いる例が示されている。
特開2012−172144号公報
J.Polym.Sci.PartA 45 3400 2007 J.Polym.Sci.PartA 43 5899 2005
しかしながら、本発明者らの検討によれば、ポリヒドロキシウレタン樹脂の機械的特性や熱的特性を向上させるためには、ポリヒドロキシウレタン樹脂の持つ水酸基を、不飽和基を有する化合物などで化学修飾したり、水酸基と反応性を示す架橋剤を用いたりする方法を用いることができるが、その場合、水酸基の水素結合により発現されるガスバリア性そのものが低下するという二律背反状態となってしまうという課題がある。
一方で、上記したポリヒドロキシウレタン樹脂に2級アミノ基を導入し、その反応性を利用し架橋させたことを記載した非特許文献2の技術は、特殊な化合物と反応を例にし、その他の化合物の使用可能性を示すにとどまっており、形成皮膜におけるガスバリア性の検討や、これを用いたガスバリア性フィルムの利用については全く検討されていない。
したがって、本発明の目的は、水酸基によってガスバリア性を発現するポリヒドロキシウレタン樹脂を用いたガスバリア性コーティング剤及びこれを用いたガスバリア性フィルムでありながら、特に、ガスバリア性の低下の問題が改善され、機械的特性や熱的特性を向上し、従来のEVOHやPVDCといった素材を用いた場合と同様のガスバリア性を実現でき、コーティング法によるフィルムの作製ができ、PVDCのような従来の材料における、廃棄(焼却)する際の塩素に起因した問題もない、実用性の高い素材を提供することにある。
本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来技術ではガスバリア性を低下させてしまう原因となっていた、ポリヒドロキシウレタン樹脂への置換基の導入において、ガスバリア性を低下させることなく、むしろ向上させながら、その機械的特性及び熱的特性を向上させる方法を見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記の課題は、下記の本発明によって達成される。本発明は、[1]紫外線又は電子線により硬化させて架橋樹脂皮膜を形成するための不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂であり、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、該一般式(1)中のYが下記一般式(2)で示され、該一般式(2)中のAが、下記一般式(3)で示される不飽和基を有する基であり、少なくとも該Aをその主鎖骨格にもつことを特徴とする不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂を提供する。
Figure 2017145278
[一般式(1)中、Xは、直接結合か、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜40の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜40の芳香族炭化水素基のいずれかであり、該構造中には、エーテル結合、アミノ結合、スルホニル結合、エステル結合、水酸基、ハロゲン原子及び繰り返し単位1〜30の炭素数2〜6からなるポリアルキレングリコール鎖を含んでもよい。また、一般式(1)中、Yは下記一般式(2)を示し、該式(2)中のAは、下記一般式(3)を示し、且つ、前記繰り返し単位間において、異なる構成のYが混在してもよい。また、一般式(1)中、Zは、下記一般式(4)〜(7)を示し、且つ、前記繰り返し単位内及び繰り返し単位間のいずれにおいても、これらの一般式の群から選ばれる1種又は2種以上が混在してもよい。]
Figure 2017145278
[一般式(2)中、Y1及びY2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜15の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基であり、該構造中には、エーテル結合、スルホニル結合、水酸基及びハロゲン原子を含んでもよい。Aは、下記一般式(3)を示す。]
Figure 2017145278
[一般式(3)中、Dは、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜40の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜40の芳香族炭化水素基のいずれかであり、該構造中には、エーテル結合、エステル結合、水酸基、ハロゲン原子及び繰り返し単位1〜30の炭素数2〜6からなるポリアルキレングリコール鎖を含んでもよい。また、R1は、水素原子又はメチル基である。]
Figure 2017145278
[一般式(4)〜(7)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、右側の結合手は、酸素原子と結合し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合するか、該Xが直接結合の場合は他方のZと結合する。]
本発明の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂の好ましい形態としては、下記の[2]〜[4]のものが挙げられる。
[2]前記一般式(3)で示される不飽和基を有する基が、下記一般式(8)〜(10)である上記[1]に記載の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂。
Figure 2017145278
[式(8)〜(10)中、R1は、水素原子又はメチル基である。R2は、炭素数1〜10の炭化水素基である。]
[3]その不飽和基含有量が、0.2meq/g〜2.0meq/gの範囲内であり、且つ、その水酸基価が10mgKOH/g〜350mgKOH/gの範囲内である上記[1]又は[2]に記載の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂。
[4]原材料の1つに二酸化炭素を用いて合成された1分子中に2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物と、1分子中に2つのアミノ基を有する化合物との重付加反応により得られた重合物であり、該重合物によって皮膜層を形成した場合に、該皮膜層の質量のうちの1〜30質量%を、上記二酸化炭素由来の−O−CO−結合が占める上記[1]〜[3]のいずれかに記載の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂。
また、本発明は、別の実施形態として、[5]紫外線又は電子線により硬化させて架橋樹脂皮膜を形成するためのガスバリア性コーティング剤であって、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂を含んでなることを特徴とするガスバリア性コーティング剤を提供する。
また、本発明は、別の実施形態として、[6]フィルムが単独層或いは多層からなり、該フィルムを構成する少なくとも1つの層がガスバリア性を有する層であるガスバリア性フィルムであって、前記ガスバリア性を有する層が、上記[5]に記載のガスバリア性コーティング剤に、紫外線又は電子線を照射することで形成された架橋樹脂皮膜層であることを特徴とするガスバリア性フィルムを提供する。
本発明の上記[6]のガスバリア性フィルムの好ましい形態としては、前記ガスバリア性を有する層の厚みが0.1〜100μmであり、且つ、フィルムの酸素透過率が、23℃相対湿度65%恒温恒湿度及び40℃相対湿度65%のいずれの環境下においても、50ml/m2・24h・atm以下であることが挙げられる。
上記において、「原材料の1つに二酸化炭素を用いて合成された1分子中に2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物と、1分子中に2つのアミノ基を有する化合物との重付加反応により得られた重合物であり」とした規定には、下記に述べる通り、その物を構造又は特性により直接特定することが不可能又は非実際的であるという事情がある。まず、本発明の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂は、1分子中に2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物と、1分子中に2つのアミノ基を有する化合物との重付加反応によって得ることができるが、この重付加反応により得られる高分子樹脂は、複雑で多種多様な構造を有するポリマーであり、その物を構造又は特性により直接特定することが不可能又は非実際的であるという事情がある。そして、後述するように、重付加反応に用いる五員環環状カーボネート構造を有する化合物の原材料に二酸化炭素を用いた場合、二酸化炭素は、この複雑で多種多様なポリマーの構造中に組み込まれることになるが、この複雑なポリマー構造中に組み込まれた状態の二酸化炭素を規定する場合、上記したプロセスによって規定する以外、特定することは不可能である。
本発明によれば、基本的には、環境問題に対応した有用な樹脂である、二酸化炭素を原料の一つとして合成することができる水酸基によってガスバリア性を発現するポリヒドロキシウレタン樹脂を利用しているにもかかわらず、特に、高湿度下におけるガスバリア性の低下の問題を改善でき、従来のEVOHやPVDCといった素材を用いた場合と同程度のガスバリア性を実現でき、コーティング法によるフィルムの作製が可能であり、また、従来の材料におけるような、廃棄(焼却)する際の塩素に起因する問題もない、実用性の高い優れた素材が提供される。より具体的には、本発明によれば、ガスバリア性、機械強度及び透明性に優れた素材である不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂が提供でき、また、二酸化炭素を原料の一つに用いた場合には、この点からも環境負荷の低減に資する素材の提供が可能になる。さらに、本発明によれば、構造中の水酸基を、不飽和基を導入した特有の基で化学修飾してなる上記のポリヒドロキシウレタン樹脂を含有した本発明のコーティング剤をコーティングした後、紫外線・電子線の照射を行うことで硬化させて形成した架橋樹脂皮膜は、上記機能を発現する皮膜層となるので、優れたガスバリア性フィルムを容易に提供できる。ガスバリアフィルムは、医薬品や食品の容器に使用するため、ガスバリア性以外に機械強度も求められるが、本発明では、破断点強度などの機械強度を向上させる効果を得ることもでき、その広範な利用が期待される。
実施例1の架橋塗膜のIRスペクトル 実施例5の架橋塗膜のIRスペクトル 実施例6の架橋塗膜のIRスペクトル
次に、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のガスバリア性コーティング剤は、特有の置換基が導入された本発明の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂を含んでなる、紫外線又は電子線により硬化させて機能性に優れる架橋樹脂皮膜を形成するためのものである。本発明の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂の特徴は、前記一般式(3)で示される、不飽和基を有する構造の特有の基が主鎖骨格に導入された、前記一般式(1)で示される繰り返し単位を有することにある。すなわち、本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂は、その主鎖骨格構造中に特定の不飽和基を有し、その不飽和基の全部又は一部が紫外線・電子線の照射によって重合することにより、高温度下においても十分なガスバリア性を有する架橋樹脂皮膜層の形成を可能にできる。該架橋樹脂皮膜層は、機械強度及び透明性にも優れるものであるので、広範な利用が期待でき、その実用価値は極めて高い。以下、本発明の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂について詳細に説明する。
〔不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂〕
本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂は、前記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものであるが、その主鎖骨格構造中に、前記一般式(3)で示される不飽和基を有する構造の特有の基が導入されていることを特徴とする。より具体的には、本発明で必須とする前記一般式(3)で示される基としては、例えば、下記の一般式(8)〜(10)の基が挙げられる。以下、本発明の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂を、不飽和基を持つポリマー(A)と呼ぶ場合がある。
Figure 2017145278
[式(8)〜(10)中、R1は、水素原子又はメチル基である。R2は、炭素数1〜10の炭化水素基である。]
<不飽和基を持つポリマー(A)の製造方法>
本発明の不飽和基を持つポリマー(A)は、下記のようにして製造することができる。例えば、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂に、反応性基として、エポキシ基を有する(メタ)アクリル化合物、もしくはエポキシ基を有するアリル化合物を、2級アミノ基に対して0.01〜1.0当量反応せしめることで、前記一般式(3)で示される不飽和基を高分子主鎖の繰り返し単位に有するポリヒドロキシウレタン樹脂を得ることができる。
(不飽和基の導入)
上記において、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂に不飽和基を導入するためのエポキシ基を有する(メタ)アクリル化合物としては、以下のようなものが例示できる。
Figure 2017145278
上記において、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂に不飽和基を導入するためのエポキシ基を有するアリル化合物としては、以下のようなものが例示できる。
Figure 2017145278
2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂と、上記したような不飽和基を導入するためのエポキシ基を有する化合物との反応は、特に限定されないが、例えば、下記のような方法によって得ることができる。すなわち、有機溶剤の存在下或いは溶剤を非存在下で、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂と、不飽和基を導入するためのエポキシ基を有する化合物とを混合し、30〜200℃の温度で4〜24時間反応させることで得ることができる。
上記で使用する有機溶剤としては、エポキシ基に対して不活性な有機溶剤、或いは、エポキシ基に対して反応成分よりも低活性な有機溶剤を用いることができる。このような有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール(商品名、コスモ石油社製)及びソルベッソ(商品名、エクソン化学社製)などの芳香族系炭化水素溶剤;n−ヘキサンなどの脂肪族系炭化水素溶剤;ジオキサン及びテトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル及び酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート及びエチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム系溶剤などを挙げることができる。
上記の反応は、必要に応じて、反応時に不飽和結合の重合を抑制するための重合禁止剤の存在下で行うこともできる。重合禁止剤として使用できる化合物は特に制限はなく、p−メトキシフェノールなどのフェノール系重合禁止剤、ベンゾキノンなどのキノン系重合禁止剤、2,2’−メチレン−ビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)などのヒンダートフェノール系重合禁止剤、フェンチアジンなどの芳香族アミン系重合禁止剤、ジフェニルチオ尿素などの硫黄系重合禁止剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどの安定ラジカル化合物が挙げられ、これらのいずれも使用可能である。
本発明の不飽和基を持つポリマー(A)の原料となる、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂は、1分子中に2つの5員環環状カーボネート基を有する化合物(以下、環状カーボネート化合物と呼ぶ)と、1分子中に2つのアミノ基を有する化合物(以下、ジアミン化合物と呼ぶ)及び1分子中に2つの1級アミノ基と1つ以上の2級アミノ基を有する化合物(以下、ポリアミン化合物と呼ぶ)の重付加反応を利用して合成することができる。
本発明においては、上記重付加反応の際に使用される環状カーボネート化合物が、下記式に示すように、エポキシ化合物と二酸化炭素の反応により合成された重合物であることが好ましい。下記式の反応条件としては、例えば、原材料であるエポキシ化合物を、触媒の存在下、0℃〜160℃の温度にて、大気圧〜1MPa程度に加圧した二酸化炭素雰囲気下で、4〜24時間程度反応させることが挙げられる。この結果、二酸化炭素をエステル部位に固定化した環状カーボネート化合物を得ることができる。
Figure 2017145278
上記のようにして二酸化炭素を原料として合成された環状カーボネート化合物を使用することによって、前記一般式(1)中のウレタン結合の−O−CO−は、二酸化炭素を原材料として構成されたものとなる。この結果、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)を用いてなる、後述する本発明のガスバリア性コーティング剤、及びこれを用いて形成したガスバリア性フィルムは、環境問題へ対応できる製品としても価値あるものとなる。上記のようにして二酸化炭素を原料として用いた場合、二酸化炭素に由来する前記した一般式(1)中の−O−CO−結合は、二酸化炭素の含有量としてポリヒドロキシウレタン樹脂の全質量のうち1〜30質量%を占める量となる。この量はできるだけ多い方が環境対応性の点からは好ましい。
上記した2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂の原料となる、1分子中に2つの5員環環状カーボネート基を有する化合物を二酸化炭素から合成する際に使用できる1分子中に2つのエポキシ基を有する化合物は、従来公知のいずれのものも使用できる。本発明において使用できる好ましい化合物を以下に例示する。
例えば、1分子中にエポキシ基を2つ持つもので、ベンゼン骨格、芳香族多環骨格を持つものとしては、以下の化合物に例示される。下記のいずれかの式中にあるRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。
Figure 2017145278
Figure 2017145278

Figure 2017145278
また、例えば、1分子中にエポキシ基を2つ持つもので、脂肪族や脂環式骨格を持つ化合物としては、以下の化合物に例示される。下記のいずれかの式中にあるRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。
Figure 2017145278

Figure 2017145278

Figure 2017145278
また、前記した2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂の合成原料となる、1分子中に2つのアミノ基を有する化合物としては、従来公知のいずれのものも使用できる。好適なものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノへキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン及び1,12−ジアミノドデカンなどの鎖状脂肪族ジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン及びピペラジンなどの環状脂肪族ジアミン、キシレンジアミンなどの芳香環を持つ脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。
また、前記した2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂の合成原料となる、1分子中に2つの1級アミノ基と1つ以上の2級アミノ基とを含む化合物としては、従来公知のいずれのものも使用できる。好適なものとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イミノビスプロピルアミン、N,N’−ビスアミノプロピル−1,3−プロピルジアミン及びN,N’−ビスアミノプロピル−1,3−ブチレンジアミンなどの鎖状脂肪族ジアミンが挙げられる。
上記2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記のような方法によって得ることができる。すなわち、有機溶剤の存在下或いは溶剤の非存在下で、前記したような環状カーボネート化合物とジアミン化合物及びポリアミン化合物を混合し、40〜200℃の温度で4〜24時間反応させることで得ることができる。
上記した2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂の製造に使用可能な溶剤としては、使用する原料及び得られたポリヒドロキシウレタン樹脂に対して不活性な有機溶剤であれば、いずれも使用可能である。好ましいものを例示すると、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、パークロルエチレン、トリクロルエチレン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
本発明に使用される2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂の製造は、上記したように特に触媒を使用せずに行うことができるが、反応を促進させるために、下記に挙げるような触媒の存在下で行うことも可能である。この際には、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミン(DABCO)及びピリジンなどの塩基性触媒や、テトラブチル錫及びジブチル錫ジラウリレートなどのルイス酸触媒などが使用できる。これらの触媒の好ましい使用量は、使用するカーボネート化合物とジアミン化合物及びポリアミン化合物の総量(100質量部)に対して、0.01〜10質量部程度である。
<不飽和基を持つポリマー(A)の特性>
本発明の不飽和基を持つポリマー(A)は、紫外線又は電子線により硬化させて架橋樹脂皮膜を形成するための、本発明のガスバリア性コーティング剤を構成するものである。コーティング剤に利用した場合における塗工性を考慮すると、本発明のポリマー(A)は、その重量平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。また、本発明者らの検討によれば、コーティング剤の構成材料とすることを考慮すると、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)における好適な不飽和基の含有量は、0.2meq/g〜2.0meq/gである。さらに、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)における水酸基量を示す水酸基価(JIS K1557−1)は、10mgKOH/g〜350mgKOH/gである。本発明者らの検討によれば、上記した範囲とすることで、コーティング剤に利用した場合、原料であるポリヒドロキシウレタン樹脂が有する水酸基の一部が化学修飾されて、好適な量の不飽和基が樹脂中に導入され、この結果、水酸基に化学修飾することで生じるガスバリア性の低下を抑えながら、高湿度下でのガスバリア性を向上させるという、本発明の効果をより安定して得ることができるようになる。
また、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)の二酸化炭素に由来する一般式(1)中の−O−CO−結合は、二酸化炭素の含有量として、化合物の全質量のうち1〜30質量%を占める量となる。
上記した本発明の不飽和基を持つポリマー(A)中の、不飽和基の含有量、水酸基価、二酸化炭素の含有量は、原材料として使用する環状カーボネート化合物、ジアミン化合物、ポリアミン化合物、及び不飽和基を有するエポキシ化合物の分子量及び配合比によって決定される。したがって、上述した使用可能な化合物の中から適切な組み合わせを選定することによって、これらの値は調整可能である。
〔コーティング剤〕
本発明の不飽和基を持つポリマー(A)を含有してなる本発明のガスバリア性コーティング剤には、塗工性や、塗膜或いは皮膜強度の調整を目的として、さらに、下記に挙げるような反応性モノマー単位を希釈剤成分として含有させることができる。このような目的で併有させる好ましい反応性モノマー単位を例示すると、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのラジカル重合性化合物や、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物などのカチオン重合性化合物が挙げられる。これらのモノマーは、本発明のガスバリア性コーティング剤の構成成分として、いずれも使用できる。また、これらの成分は、その分子中の重合性基が単官能でも多官能でも特に制限なく使用することができる。
本発明のガスバリア性コーティング剤には、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)と上記に挙げたような反応性モノマー単位のほかに、ガスバリア層に付与しようとする物性に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤の具体例としては、耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤及び着色材などを挙げることができる。なお、耐候性改善剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤などを、光硬化性を阻害しない範囲で使用することができる。
〔ガスバリアフィルム〕
次に、上記で説明した本発明のガスバリア性コーティング剤を用いて得られる本発明のガスバリア性フィルムについて説明する。本発明のガスバリア性フィルムは、フィルムが単独層或いは多層からなり、該フィルムを構成する少なくとも1つの層がガスバリア性を有する層であり、該ガスバリア性を有する層が、本発明のガスバリア性コーティング剤に、紫外線又は電子線を照射して硬化することで形成されてなる架橋樹脂皮膜層であることを特徴とする。すなわち、本発明のガスバリア性フィルムを特徴づける架橋樹脂皮膜層は、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)からなる層であり、且つ、ポリマー(A)の持つ不飽和基の全部又は一部が紫外線・電子線の照射により重合したことにより形成されている。先に説明したように、本発明のガスバリア性コーティング剤を構成する本発明の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂は、その分子鎖中に特有の構造の不飽和基を有する基が導入されており、これに紫外線又は電子線を照射することで、UV硬化或いはEB硬化して架橋樹脂皮膜層の形成を実現できる。そして、形成される架橋樹脂皮膜層は、水酸基の水素結合によってガスバリア性を発現する樹脂からなるものでありながら、高湿度下においてガスバリア性が低下する、という従来技術の課題が解決されたものとなる。
本発明のガスバリア性コーティング剤を用いることで形成される架橋樹脂皮膜層を有する本発明のガスバリア性フィルムは、上記したように、不飽和基を持つポリマー(A)をUV硬化システムないしEB硬化システムを使用して硬化させることにより得られる。上記硬化の際に用いるUV硬化システム及びEB硬化システムは、熱硬化システムと比較して硬化温度が低く、また、処理時間も短い点、さらには硬化時に揮発成分が出ないことなど、環境負荷が低い硬化システムである。
単独層として該ガスバリア性フィルムを得る方法としては、下記に挙げるような方法がある。例えば、離型紙上に、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)溶液をコーティングし、乾燥工程を経て、UV硬化システムないしEB硬化システムにて硬化させて得る方法や、離型紙上に、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)をホットメルトコーティングし、UV硬化システムないしEB硬化システムにて硬化させて得る方法がある。
該ガスバリア性フィルムを含む多層フィルムを得る方法としては、共押出し法、コーティング法、ラミネート法が挙げられる。共押出し法としては、例えば、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)を原料の一つとして用いることで多層フィルムを形成し、その後、UV硬化システムないしEB硬化システムにて硬化させることで該ガスバリア性フィルムを含む多層フィルムを得ることができる。
コーティング法としては、例えば、基材の上に本発明の不飽和基を持つポリマー(A)の溶液を塗工し、乾燥工程を経て、UVないしEB硬化システムにて架橋樹脂皮膜層を形成させる方法や、基材上に、溶剤を含まない形態の本発明の不飽和基を持つポリマー(A)をホットメルトコーティングし、UV硬化システムないしEB硬化システムにて硬化させる方法が挙げられる。
ラミネート法としては、基材と単独層として作製したガスバリア性フィルムに接着剤を介して貼りあわせる方法が挙げられる。
上記で使用する基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルイミドなどが挙げられる。塗布に先立って、基材の塗布面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理及びアルカリ処理などの易接着処理を行ってもよい。また、必要に応じて、塗工液中に、充填剤、着色剤、可塑剤及び帯電防止剤などの添加剤を加えてもよい。
UV硬化システムないしEV硬化システムを使用し、不飽和基を持つポリマー(A)の不飽和基の全部又は一部が硬化するために適用されるUVの波長としては、200〜450nmが用いられ、電子線の加速電圧は50〜300kVが使用される。本発明のガスバリア性フィルムの製造において、UV照射ないしEB照射は、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)を有する層中の不飽和基の全部又は一部が硬化するために必要な露光量と時間の条件が採用される。具体的には、UV積算露光量としては500〜5000mJ/cm2、EB積算露光量としては10〜1000kGyを挙げることができる。また、酸素が存在すると、酸素がラジカル重合反応を阻害するため、照射雰囲気としては窒素中で行うことが好ましい。
UV硬化システムを使用し、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)の不飽和基の全部又は一部を硬化させる際には、予めフィルム成形前に、光重合開始剤を樹脂分に対して0.1〜10%程度添加させることが好ましく、このようにすることで、塗膜を形成後、UV硬化システムを使用することで容易に硬化処理される。なお、EV硬化システムを使用し、本発明の不飽和基を持つポリマー(A)の不飽和基の全部又は一部を硬化させる場合には、光重合開始剤を含有させなくてもよい場合もある。
本発明の不飽和基を持つポリマー(A)の不飽和基の全部又は一部の硬化には、光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤のいずれについても使用可能である。この際に用いられる光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤及びチタノセン系光重合開始剤などが挙げられる。また、光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリアリールスルフォニウム塩やジアリールヨードニウム塩などが挙げられる。なお、これらは、1種又は2種以上を混合して使用することができ、公知の硬化促進剤を併用しても構わない。
次に、具体的な製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
[製造例1:環状カーボネート含有化合物(C−I)の合成]
エポキシ当量187のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトート YD−128、新日鐵住金化学社製)100部と、ヨウ化ナトリウム(和光純薬工業社製、以下同様)20部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、撹拌装置及び大気解放口のある還流器を備えた反応容器内に仕込んだ。次いで、撹拌しながら二酸化炭素を連続して吹き込み、100℃にて10時間の反応を行った。そして、反応終了後の溶液に300部の水を加え、生成物を析出させ、ろ別した。得られた白色粉末をトルエンにて再結晶を行い、白色の粉末52部(収率42%)を得た。
上記で得られた化合物をIR(島津製作所社製、IRAffinty−1、以下同様)にて分析したところ、910cm-1付近の原材料のエポキシ基由来の吸収(ピーク)は消失しており、1800cm-1付近に原材料には存在しないカーボネート基のカルボニル基由来の吸収(ピーク)が確認された。また、HPLC(日本分光社製、LC−2000;カラムFinePakSIL C18−T5;移動相 アセトニトリル+水)による分析の結果、原材料のピークは消失し、高極性側に新たなピークが出現し、その純度は98%であった。また、DSC測定(示差走査熱量測定)の結果、融点は178℃であり、融点の範囲は±5℃であった。以上のことから、この粉末は、エポキシ基と二酸化炭素の反応により環状カーボネート基が導入された、下記式で表される構造の化合物と確認された。これを化合物(C−I)と呼ぶ。得られた化合物(C−I)中に占める二酸化炭素由来の成分の割合は、20.6%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。
Figure 2017145278
[製造例2:環状カーボネート含有化合物(C−II)の合成]
エポキシ当量116のヘキサンジオールポリグリシジルエーテル(商品名:エポゴーセ−HD(D)、四日市合成社製)100部と、ヨウ化ナトリウム20部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、撹拌装置及び大気解放口のある還流器を備えた反応容器内に仕込んだ。次いで、撹拌しながら二酸化炭素を連続して吹き込み、100℃にて10時間の反応を行った。そして、反応終了後の溶液に、酢酸エチル400部及び水800部を加え、1時間撹拌した。その後、酢酸エチル相を回収し、エバポレーターにて溶剤の除去を行い、オイル状の化合物127部(収率92.1%)を得た。
上記で得られた化合物をIRにて分析したところ、910cm-1付近の原材料のエポキシ基由来の吸収(ピーク)は消失しており、一方、1800cm-1付近に、原材料には存在しないカーボネート基のカルボニル基由来の吸収(ピーク)が確認された。また、DMF(ジメチルホルムアミド)を移動相としたGPCの測定の結果、得られた物質の重量平均分子量は318(ポリエチレンオキサイド換算)であった。以上のことから、この物質は、エポキシ基と二酸化炭素の反応により5員環環状カーボネート基が導入された下記式で表される構造の化合物と確認された。これを(C−II)と呼ぶ。この化合物(C−II)中に占める二酸化炭素由来の成分の割合は、27.5%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。
Figure 2017145278
[実施例1]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート含有化合物(C−I)を42.8部、イミノビスプロピルアミン(広栄化学工業社製)を13.1部、さらに、反応溶媒としてテトラヒドロフランを105.2部加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することにより、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認した。次いで、上記の反応後の溶液に、グリシジルメタクリレート(商品名:アクリエステルG、三菱レイヨン社製)14.2部及び重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.01部を加え、60℃の温度で撹拌しながら5時間反応を行った。そして、再び反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することにより、915cm-1付近のエポキシ基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認し、本発明で規定する構造の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。
上記で得られた樹脂の重量平均分子量は、27000(ポリスチレン換算)であった。重量平均分子量は、N,N−ジメチルホルムアミドを移動相としたGPC測定(東ソー製、GPC−8220;カラムSuperAW2500+AW3000+AW4000+AW5000)により測定した。以下の例でも、樹脂の重量平均分子量は、同様の方法で測定した。また、水酸基価を測定したところ、樹脂分に対して240mgKOH/gであった。また、不飽和基の含有量は1.4meq/gであり、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は12.5%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。
上記で得た樹脂溶液100部に対して、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.8部添加し、これをテトロヒドロフランにて総固形分が40%になるように希釈して塗工液(ガスバリア性コーティング剤)を調製した。そして、基材としての厚み25μmのコロナ処理PETフィルムに、乾燥膜厚が20μmとなるように、上記で調製した塗工液をバーコート法で均一に塗布し、40℃で5分間乾燥を行った後、窒素雰囲気下で80W/cmのメタルハライドランプにて、積算光量1200mJ/cm2で硬化して架橋塗膜(架橋樹脂皮膜)を形成した。形成された架橋塗膜のIRをATR法(島津製作所社製、MIRacle 10、以下同様)にて測定した結果、1637cm-1付近の二重結合に由来する吸収はほとんどないことを確認した。図1に架橋塗膜のIRスペクトルを示した。上記で得た基材上に架橋塗膜が形成されたものを評価試料とし、後述する評価を行った。
[実施例2]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート含有化合物(C−I)を42.8部、イミノビスプロピルアミンを6.6部、及びヘキサメチレンジアミン(旭化成ケミカルズ社製)を5.8部、さらに、反応溶媒としてテトラヒドロフランを93.5部加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することにより、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認した。次いで、上記の反応後の溶液に、グリシジルメタクリレートを7.1部及び重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.01部を加え、60℃の温度で撹拌しながら5時間反応を行った。そして、再び反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することにより、915cm-1付近のエポキシ基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認し、本発明で規定する構造の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。
上記で得られた樹脂の重量平均分子量は、27000であった。また、水酸基価を測定したところ、樹脂分に対して225mgKOH/gであった。また、不飽和基の含有量は0.8meq/gであり、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は14.1%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。そして、得られた樹脂溶液を用いて、実施例1と同様にして塗工液(ガスバリア性コーティング剤)を調製した後、実施例1と同様にして、基材上に架橋塗膜が形成された評価試料を作製した。
[実施例3]
実施例2で用いたイミノビスプロピルアミンの量を1.3部、ヘキサメチレンジアミンの量を10.4部、テトラヒドロフランの量を83.9部、グリシジルメタクリレートの量を1.4部に替えた以外は、実施例2と同様にして、本発明で規定する構造の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、29000であった。また、水酸基価は、樹脂分に対して210mgKOH/gであった。このときの不飽和基の含有量は0.2meq/g、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は15.7%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。そして、得られた樹脂溶液を用いて、実施例1と同様にして塗工液(ガスバリア性コーティング剤)を調製した後、実施例1と同様にして、基材上に架橋塗膜が形成された評価試料を作製した。
[実施例4]
実施例2で用いたテトラヒドロフランの量を97.8部、グリシジルメタクリレートの代わりに4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(商品名:4HBAGE、日本化成社製)を10.0部に替えた以外は、実施例2と同様にして、本発明で規定する構造のポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、29000であった。また、水酸基価は、樹脂分に対して215mgKOH/gであった。このときの不飽和基の含有量は0.8meq/g、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は13.5%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。そして、得られた樹脂溶液を用いて、実施例1と同様にして塗工液(ガスバリア性コーティング剤)を調製した後、実施例1と同様にして、基材上に架橋塗膜が形成された評価試料を作製した。
[実施例5]
実施例2で用いたテトラヒドロフランの量を91.4部、グリシジルメタクリレートの替わりに、アリルグリシジルエーテル(商品名:ネオアリルG、ダイソー社製)5.7部に替えた以外は、実施例2と同様にして、本発明で規定する構造のポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、26000であった。また、水酸基価は、樹脂分に対して230mgKOH/gであった。このときの不飽和基の含有量は0.8meq/g、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は14.5%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。
上記で得た樹脂溶液100部に対して、光重合開始剤(商品名:イルガキュア250、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を0.8部添加し、これをテトロヒドロフランにて総固形分が40%になるように希釈して塗工液(ガスバリア性コーティング剤)を調製した。そして、基材としての厚み25μmのコロナ処理PETフィルムに、乾燥膜厚が20μmとなるように、上記で調製した塗工液をバーコート法で均一に塗布し、40℃で5分間乾燥を行った後、窒素雰囲気下で80W/cmのメタルハライドランプにて、積算光量1200mJ/cm2で硬化して架橋塗膜(架橋樹脂皮膜)を形成した。形成された架橋塗膜のIRをATR法にて測定した結果、1637cm-1付近の二重結合に由来する吸収はほとんどないことを確認した。図2に、架橋塗膜のIRスペクトルを示した。上記で得た基材上に架橋塗膜が形成されたものを評価試料とし、後述する評価を行った。
[実施例6]
実施例2で用いたイミノビスプロピルアミンの替わりに、ジエチレントリアミン(広栄化学工業社製)を5.2部、ヘキサメチレンジアミンの替わりに、メタキシレンジアミン(三菱瓦斯化学社製)を6.8部用い、テトラヒドロフランの量を92.9部に替えた以外は、実施例2と同様にして、本発明で規定する構造のポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、26000であった。また、水酸基価は、樹脂分に対して227mgKOH/gであった。このときの不飽和基の含有量は0.8meq/g、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は14.2%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。そして、得られた樹脂溶液を用いて、実施例1と同様にして塗工液(ガスバリア性コーティング剤)を調製した後、実施例1と同様にして、基材上に架橋塗膜が形成された評価試料を作製した。図3に、本実施例で形成した架橋塗膜のIRスペクトルを示した。
[実施例7]
実施例2で用いた環状カーボネート化合物(C−I)の替わりに、製造例2で得た環状カーボネート化合物(C−II)を32.0部、ヘキサメチレンジアミンの替わりに、メタキシレンジアミン(三菱瓦斯化学株式会社)を6.8部用い、テトラヒドロフランの量を76.7部に替えた以外は実施例2と同様にして、本発明で規定する構造のポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、23000であった。また、水酸基価は、樹脂分に対して267mgKOH/gであった。このときの不飽和基の含有量は1.0meq/g、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は16.8%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。そして、得られた樹脂溶液を用いて、実施例1と同様にして塗工液(ガスバリア性コーティング剤)を調製した後、実施例1と同様にして、基材上に架橋塗膜が形成された評価試料を作製した。
[比較例1]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート含有化合物(C−I)を42.8部、イミノビスプロピルアミン(広栄化学工業社製)を13.1部、さらに、反応溶媒としてテトラヒドロフランを105.2部加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することにより、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認し、不飽和基を含有しないポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、25000であった。また、水酸基価を測定したところ、樹脂分に対して201mgKOH/gであった。また、不飽和基の含有量は0.0meq/gであり、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は15.7%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。
上記で得た樹脂溶液をテトロヒドロフランにて総固形分が40%になるように希釈して塗工液を調製した。そして、基材としての厚み25μmのコロナ処理PETフィルムに、乾燥膜厚が20μmとなるように、上記で調製した比較用の塗工液をバーコート法で均一に塗布し、40℃で5分間乾燥を行って、基材上に乾燥塗膜が形成された比較用の評価試料を得た。
[比較例2]
実施例1で用いたテトラヒドロフランの量を103.4部とし、グリシジルメタクリレート14.2部の替わりに、ブチルグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製)13.0部を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、27000であった。また、水酸基価は樹脂分に対して244mgKOH/gであった。このときの不飽和基の含有量は0.0meq/g、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は12.8%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。
上記で得た樹脂溶液をテトロヒドロフランにて総固形分が40%になるように希釈して塗工液を調製した。そして、基材としての厚み25μmのコロナ処理PETフィルムに、乾燥膜厚が20μmとなるように、上記で調製した比較用の塗工液をバーコート法で均一に塗布し、40℃で5分間乾燥を行って、基材上に乾燥塗膜が形成された比較用の評価試料とした。
[参考例]
実施例1と同様に基材上に乾燥塗膜を形成させ、架橋工程が行われていない塗膜が形成されてなる参考例用の評価試料を得た。
[評価]
表1に、上記で得た実施例及び比較例のポリヒドロキシウレタン樹脂の原材料配合を物質量比(モル比)で記載し、また、表1中に、合成後の樹脂分についての水酸基価、合成後の樹脂構造から計算される不飽和基1つ当たりの質量、及び、二酸化炭素由来−O−CO−の樹脂分子量に占める割合をまとめて示した。なお、参考例では、表1中に示したように、実施例1のポリヒドロキシウレタン樹脂を使用したが、後述する膜の評価は、架橋していない試料について行った。
Figure 2017145278
〔測定方法〕
表1中に示した実施例及び比較例の各ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価、不飽和基含有量、CO2含有量は、以下のようにして測定した。
<水酸基価>
水酸基価は、JIS K1557−1の測定方法に従って測定した値を記載した。なお、単位はmgKOH/gである。
<不飽和基含有量>
不飽和基の含有量は、固形組成物単位質量あたりの不飽和基当量を算出し、記載した。なお、単位はmeq/gである。例えば、実施例1の場合、使用したエポキシ化合物であるグリシジルメタクリレートの不飽和基の含有量が1000÷142=7.0meq/gであり、これより、実施例1で得られる固形組成物中の不飽和基の含有量は7.0×14.2部÷(70.1全量)=1.4meq/gとなる。
<CO2含有量>
CO2の含有量は、二酸化炭素由来−O−CO−の化合物分子量に占める割合を算出し、記載した。具体的には、不飽和基を持つポリヒドロキシウレタン樹脂の合成反応に使用した化合物(C−I)又は(C−II)を合成する際に使用した、モノマーに対して含まれる二酸化炭素の理論量から算出した計算値を示した。例えば、実施例1の場合、使用した化合物(C−I)の二酸化炭素由来の成分は20.6%であり、これより実施例1で得られる溶液の固形組成物中の二酸化炭素濃度は(42.8部×20.6%)/70.1全量=12.5質量%となる。
〔形成した膜の評価試料についての評価方法〕
上記の実施例1〜7で得られた基材上に架橋塗膜が形成された各評価試料と、上記比較例1、2及び参考例で得られた、基材上に乾燥塗膜が形成された比較用及び参考用の各評価試料について、下記の評価方法で以下の項目を評価した。結果を表2及び表3にまとめて示した。なお、先にも述べたように、参考例では、実施例1のポリヒドロキシウレタン樹脂を使用しているが、架橋していない膜を評価試料とした。
<酸素透過度>
各フィルムについて、JIS K7126に準拠して酸素の透過率を測定し、これをガスバリア性の評価とした。この値が低いほど、ガスバリア性に優れると判断できる。具体的には、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN2/21ML)を使用して、各フィルム及び基材として使用したPETフィルムの酸素透過率を、23℃相対湿度65%(23℃酸素透過度)、及び、40℃相対湿度65%(40℃酸素透過度)の条件下で測定し、酸素透過率を測定した。なお、該ガスバリア層の酸素透過度は、測定値から基材の酸素透過度に相当する分を勘案し算出した値を記載している。また、単位は、ml/m2・day・atmであり、500ml/m2・day・atmを超える値については>500と記載した。記載した値が小さいほど、ガスバリア性に優れた塗膜層であると評価できる。
<温度依存性>
温度依存性は、以下の計算方法にて数値化した。この値が小さいほど温度依存性が少なく、高温度下でのガスバリア性に優れると判断できる。本発明では、この湿度依存性の値が極めて0に近くなることを目的としている。
(温度依存性)
=(40℃相対湿度65%の酸素透過度)−(23℃相対湿度65%の酸素透過度)
<破断点強度>
各フィルムの機械強度を、破断点強度(引張試験)で評価した。破断点強度は、JIS K−7127に準拠して、オートグラフ(島津製作所社製、AGS−J)を使用した測定法によって、室温(25℃)での破断点強度を測定して評価した。
Figure 2017145278
Figure 2017145278
表3に示したように、不飽和基を有するエポキシ化合物を使用してポリヒドロキシウレタン樹脂に不飽和基を導入した、実施例1と同様の樹脂を用いたとしても、参考例に示したように、紫外線による硬化がされていない単なる乾燥塗膜の場合は、特に40℃の酸素透過度が悪く、温度依存性のない高いガスバリア性が実現できないことが確認された。また、不飽和基を有さないブチルグリシジルエーテルを使用してポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基を増やした樹脂を用いた比較例2の場合は、その乾燥塗膜は、23℃及び40℃の酸素透過度のいずれも悪く、高いガスバリア性を実現できなかった。
これに対し、不飽和基を有するエポキシ化合物を使用してポリヒドロキシウレタン樹脂に不飽和基を導入し、且つ、紫外線を用いて、この導入した不飽和基を重合して架橋塗膜を形成した実施例1〜7の評価試料の場合は、ポリヒドロキシウレタン樹脂に不飽和基を導入していない比較例1の樹脂を用いた場合と比べて、23℃酸素透過度と40℃酸素透過度の差が小さく、高いガスバリア性を維持できることを確認した。ガスバリアフィルムは、収納物の品質維持の要請が極めて高い、医薬品や食品の容器に使用されるため、実施例のフィルムに示されている、高いガスバリア性を、湿度依存性なく維持できたことは、これらの製品(容器)の性能向上において極めて大きな意味を持つ。
以上のように、本発明によれば、原材料として二酸化炭素を使用可能な樹脂であるポリヒドロキシウレタン樹脂を用いて、特に高温度下におけるガスバリア性の低下が少なく、強度においても優れたガスバリア性フィルムを得ることができ、その実用性がより向上したものとなり、地球環境保護の面からもその利用が期待される。

Claims (7)

  1. 紫外線又は電子線により硬化させて架橋樹脂皮膜を形成するための不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂であり、
    下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、該一般式(1)中のYが下記一般式(2)で示され、該一般式(2)中のAが、下記一般式(3)で示される不飽和基を有する基であり、少なくとも該Aをその主鎖骨格にもつことを特徴とする不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂。
    Figure 2017145278
    [一般式(1)中、Xは、直接結合か、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜40の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜40の芳香族炭化水素基のいずれかであり、該構造中には、エーテル結合、アミノ結合、スルホニル結合、エステル結合、水酸基、ハロゲン原子及び繰り返し単位1〜30の炭素数2〜6からなるポリアルキレングリコール鎖を含んでもよい。また、一般式(1)中、Yは下記一般式(2)を示し、該式(2)中のAは、下記一般式(3)を示し、且つ、前記繰り返し単位間において、異なる構成のYが混在してもよい。また、一般式(1)中、Zは、下記一般式(4)〜(7)を示し、且つ、前記繰り返し単位内及び繰り返し単位間のいずれにおいても、これらの一般式の群から選ばれる1種又は2種以上が混在してもよい。]
    Figure 2017145278
    [一般式(2)中、Y1及びY2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜15の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基であり、該構造中には、エーテル結合、スルホニル結合、水酸基及びハロゲン原子を含んでもよい。Aは、下記一般式(3)を示す。]
    Figure 2017145278
    [一般式(3)中、Dは、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜40の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜40の芳香族炭化水素基のいずれかであり、該構造中には、エーテル結合、エステル結合、水酸基、ハロゲン原子及び繰り返し単位1〜30の炭素数2〜6からなるポリアルキレングリコール鎖を含んでもよい。また、R1は、水素原子又はメチル基である。]
    Figure 2017145278
    [一般式(4)〜(7)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、右側の結合手は、酸素原子と結合し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合するか、該Xが直接結合の場合は他方のZと結合する。]
  2. 前記一般式(3)で示される不飽和基を有する基が、下記一般式(8)〜(10)である請求項1に記載の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂。
    Figure 2017145278
    [式(8)〜(10)中、R1は、水素原子又はメチル基である。R2は、炭素数1〜10の炭化水素基である。]
  3. その不飽和基含有量が、0.2meq/g〜2.0meq/gの範囲内であり、且つ、その水酸基価が10mgKOH/g〜350mgKOH/gの範囲内である請求項1又は2に記載の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂。
  4. 原材料の1つに二酸化炭素を用いて合成された1分子中に2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物と、1分子中に2つのアミノ基を有する化合物との重付加反応により得られた重合物であり、該重合物によって皮膜層を形成した場合に、該皮膜層の質量のうちの1〜30質量%を、上記二酸化炭素由来の−O−CO−結合が占める請求項1〜3のいずれか1項に記載の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂。
  5. 紫外線又は電子線により硬化させて架橋樹脂皮膜を形成するためのガスバリア性コーティング剤であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の不飽和基含有ポリヒドロキシウレタン樹脂を含んでなることを特徴とするガスバリア性コーティング剤。
  6. フィルムが単独層或いは多層からなり、該フィルムを構成する少なくとも1つの層がガスバリア性を有する層であるガスバリア性フィルムであって、前記ガスバリア性を有する層が、請求項5に記載のガスバリア性コーティング剤に、紫外線又は電子線を照射することで形成された架橋樹脂皮膜層であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  7. 前記ガスバリア性を有する層の厚みが0.1〜100μmであり、且つ、フィルムの酸素透過率が、23℃相対湿度65%恒温恒湿度及び40℃相対湿度65%のいずれの環境下においても、50ml/m2・24h・atm以下である請求項6に記載のガスバリア性フィルム。
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