JP6994476B2 - ガスバリア性フィルム及びポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物 - Google Patents
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[1]ポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物を含んで形成されたガスバリア性に優れたフィルムであり、前記組成物が、(A)成分の下記一般式(1)の繰り返し単位を有するポリヒドロキシウレタン樹脂と(B)成分の澱粉系化合物と、これらの成分に架橋し得る(C)成分の金属キレート化合物を含んでなり、且つ、前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分が10質量部~300質量部の割合で含まれており、フィルムが10質量%以上のバイオマス由来成分を含有することを特徴とするガスバリア性フィルム。
[一般式(1)中、Xは、直接結合か、ビスエポキシ化合物残基を示し、Yは、ジアミンの残基を示す。Zは、下記一般式(2)~(5)のいずれかを示し、ポリヒドロキシウレタン樹脂の分子中にこれらの群から選ばれる2種以上が混在していてもよい。]
[一般式(2)~(5)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合し、Xが直接結合の場合は他方のZと結合し、右側の結合手は酸素原子と結合する。]
[2](A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂が、重量平均分子量が10000~100000の範囲であり、且つ、その水酸基価が150mgKOH/g~300mgKOH/gの範囲である上記[1]のガスバリア性フィルム。
[7]ガスバリア性に優れたフィルムの形成用であり、(A)成分の下記一般式(1)の繰り返し単位を有するポリヒドロキシウレタン樹脂と、(B)成分の澱粉系化合物と、これらの成分に架橋し得る(C)成分の金属キレート化合物とを含んでなり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分を10質量部~300質量部の割合で含むことを特徴とするポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物。
[一般式(1)中、Xは、直接結合か、ビスエポキシ化合物残基を示し、Yは、ジアミンの残基を示す。Zは、下記一般式(2)~(5)のいずれかを示し、ポリヒドロキシウレタン樹脂の分子中にこれらの群から選ばれる2種以上が混在していてもよい。]
[一般式(2)~(5)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合し、Xが直接結合の場合は他方のZと結合し、右側の結合手は酸素原子と結合する。]
[8](A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂の、重量平均分子量が10000~100000の範囲内であり、且つ、その水酸基価が150mgKOH/g~300mgKOH/gの範囲である上記[7]のポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物。
[ポリヒドロキシウレタン樹脂]
本発明のガスバリア性フィルムを構成する一つの要素である(A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂は、下記一般式(1)の繰り返し単位を有する。
[一般式(1)中、Xは、直接結合か、ビスエポキシ化合物残基を示し、Yは、ジアミンの残基を示す。Zは、下記一般式(2)~(5)のいずれかを示し、ポリヒドロキシウレタン樹脂の分子中にこれらの群から選ばれる2種以上が混在していてもよい。]
[一般式(2)~(5)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合し、Xが直接結合の場合は他方のZと結合し、右側の結合手は酸素原子と結合する。]
[但し、式(1)~(4)中のX、Yは、そのモノマー単位由来の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素または芳香族炭化水素からなる化学構造を示し、該構造中には、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子を含んでいてもよい。]
上記したポリヒドロキシウレタン樹脂は、例えば、2つ以上の五員環環状カーボネート基を有する化合物と、1つ以上のアミノ基を有するアミン化合物から得られる。ここで使用する環状カーボネート化合物は、エポキシ化合物と二酸化炭素との反応によって得られたものであることが好ましい。すなわち、本発明を構成するポリヒドロキシウレタン樹脂は、下記の反応で得られる環状カーボネート化合物を原料として用いたものであることが好ましい。下記の反応は、例えば、原材料であるエポキシ化合物を、触媒の存在下、0℃~160℃の温度にて、大気圧~1MPa程度に加圧した二酸化炭素雰囲気下で4~24時間反応させればよい。この結果、原料に用いた二酸化炭素をエステル部位に固定化した環状カーボネート化合物を得ることができる。
ポリヒドロキシウレタン樹脂の製造において、上記に列挙したような環状カーボネート化合物との反応に好適に使用される、1分子中に2つ以上のアミノ基を有する化合物には、従来公知のいずれのものも使用できる。好ましいものとして、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノへキサン(ヘキサメチレンジアミン)、1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イミノビスプロピルアミン、テトラエチレンペンタミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロピレンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ブチレンジアミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,6-シクロヘキサンジアミン、ピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、2,5-ジアミノピリジンなどの環状脂肪族ポリアミン、キシリレンジアミンなどの芳香環を持つ脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。
本発明の構成要素である(B)成分の澱粉系化合物は、水酸基価が30mgKOH/g~1500mgKOH/gの範囲であることが好ましい。例えば、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、デキストリン及びこれらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉が挙げられる。本発明では、これらの群から選択される一種または二種以上を用いることができる。澱粉は、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子であり、水酸基を有するため、(A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂の構造中の水酸基と同様、本発明を構成する(C)成分の金属キレートで架橋するので、(A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂と(B)成分の澱粉系化合物とが良好な状態に複合化する。
本発明を構成する(C)成分の金属キレート化合物は、架橋剤として機能するものであり、例えば、チタンやジルコニアやアルミニウムなどの金属キレート化合物が好適に使用できる。特に好ましい化合物としては、チタンアセチルアセトネート錯体が挙げられる。(C)成分の金属キレート化合物(以下、架橋剤と呼ぶ場合がある)による、(A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂のもつ水酸基の架橋や、場合によって起こる(B)成分の澱粉系化合物の水酸基の架橋は、架橋間の距離が短く、特にポリヒドロキシウレタン樹脂の結晶性を阻害しないことから、ガスバリア性を低下させずに架橋反応を行うことができる。本発明における架橋とは、架橋剤の金属キレート化合物と、本発明の構成要素である(A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂或いは(B)成分の澱粉系化合物との間の単独の架橋及び(A)成分と(B)成分のそれぞれの分子間と架橋剤の金属キレート化合物との架橋のいずれも含んだものである。
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、構成要素であるポリヒドロキシウレタン樹脂、澱粉系化合物、架橋剤を溶液中に配合した組成物(塗工液)を塗布することで簡便に得ることができる。塗工液に使用可能な溶剤は、全成分が溶解するものであればすべて使用可能である。また、塗工液の塗布方法についても特に限定はされず、一般的なコーティング方法が適用可能である。
エポキシ当量187のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトート YD-128、新日鉄住金化学社製)100部と、ヨウ化ナトリウム(和光純薬工業社製)20部と、N-メチル-2-ピロリドン150部とを、撹拌装置及び大気解放口のある還流器を備えた反応容器内に仕込んだ。次いで、撹拌しながら二酸化炭素を連続して吹き込み、100℃にて10時間の反応を行った。そして、反応終了後の溶液に300部の水を加え、生成物を析出させ、ろ別した。得られた白色粉末をトルエンにて再結晶を行い、白色の粉末52部(収率42%)を得た。
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート含有化合物(C-I)を42.8部、ヘキサメチレンジアミン(旭化成ケミカルズ社製)11.6部、さらに、反応溶媒としてテトラヒドロフランを81.6部加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析した。その結果、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることが確認できた。得られた溶液は、ポリヒドロキシウレタンAの樹脂溶液(固形分40%)であった。
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート含有化合物(C-I)を42.8部、メタキシレンジアミン(三菱ガス化学社製)13.0部、さらに、反応溶媒としてテトラヒドロフランを83.7部加え、60℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析した。その結果、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることが確認でき、得られた溶液は、ポリヒドロキシウレタンBの樹脂溶液(固形分40%)であった。
(A)成分として、製造例2で得たポリヒドロキシウレタンAの樹脂溶液を固形分換算で100部に対し、(B)成分として難消化性グルカン(日本食品化工社製、商品名「フィットファイバー#80」)を100部添加し、さらに、(C)成分として、キレート化合物であるTC401(商品名、マツモトファインケミカル社製)を15部添加した。そして、総固形分が30%になるようにN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で希釈して、ポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物である塗工液を調製した。
(A)成分として、製造例2で得たポリヒドロキシウレタンAの樹脂溶液を固形分換算で100部に対して、(B)成分として、実施例1で使用したと同様の難消化性グルカンを50部添加し、さらに、(C)成分として、実施例1で使用したと同様のTC401を15部添加した。そして、総固形分が30%になるようにDMFで希釈して、ポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物である塗工液を調製した。
(A)成分として、製造例3で得たポリヒドロキシウレタンBの樹脂溶液を固形分換算で100部に対して、(B)成分として、実施例1で使用したと同様の難消化性グルカン100部添加し、さらに、(C)成分として、実施例1で使用したと同様のTC401を15部添加した。そして、総固形分が30%になるようにDMFで希釈して、ポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物である塗工液を調製した。
製造例2で得たポリヒドロキシウレタンAの樹脂溶液を固形分換算で100部に対して、実施例1で(B)成分として使用したと同様の難消化性グルカンを100部添加し、総固形分が30%になるようにDMFで希釈して比較用の塗工液を調製した。本塗工液は、本発明の組成物の必須成分である(C)成分を含まないものである。
製造例2で得たポリヒドロキシウレタンAの樹脂溶液を固形分換算で100部に対して、実施例1で(C)成分として使用したと同様のTC401を15部添加し、総固形分が30%になるようにDMFで希釈して比較用の塗工液を調製した。本塗工液は、本発明の組成物の必須成分である(B)成分を含まないものである。
製造例3で得たポリヒドロキシウレタンBの樹脂溶液を固形分換算で100部に対して、粘土鉱物であるモンモリロナイトのクニピアF(商品名、クニミネ工業社製)100部添加し、さらに、実施例1で(C)成分として使用したと同様のTC401を15部添加し、総固形分が30%になるようにDMFで希釈して塗工液を調製した。本塗工液は、本発明の組成物の必須成分である(B)成分に替えて粘土鉱物を含むものである。
製造例3で得たポリヒドロキシウレタンBの樹脂溶液を固形分換算で100部に対して、実施例1で(B)成分として使用したと同様の難消化性グルカンを100部添加し、総固形分が30%になるようにDMFで希釈して塗工液を調製した。本塗工液は、本発明の組成物の必須成分である(C)成分を含まないものである。
[酸素透過度]
上記で得た各評価用フィルムについて、JIS K7126に準拠して酸素の透過率を測定し、これをガスバリア性の評価とした。この値が低いほどガスバリア性に優れると判断できる。具体的には、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名「OX-TRAN2/21ML」)を使用して、各フィルム及び基材として使用したPETフィルムについて、23℃相対湿度65%における酸素透過率をそれぞれ測定した。なお、該ガスバリア層の酸素透過度は、測定値から基材の酸素透過度に相当する分を勘案し算出した値を記載している。また、単位は、ml/m2・day・atmであり、記載した値が小さいほど、ガスバリア性に優れた層であると評価できる。評価結果を表1に示した。
各フィルムにおいて、外観のヘイズについて目視観察して、下記の基準で3段階評価を行った。評価結果を表1に示した。
○:ヘイズの無い透明なフィルム
△:ヘイズがあるが透けて見えるフィルム
×:白濁し透けないフィルム
Claims (10)
- ポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物を含んで形成されたガスバリア性に優れたフィルムであり、前記組成物が、(A)成分の下記一般式(1)の繰り返し単位を有するポリヒドロキシウレタン樹脂と(B)成分の澱粉系化合物と、これらの成分に架橋し得る(C)成分の金属キレート化合物を含んでなり、且つ、前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分が10質量部~300質量部の割合で含まれており、フィルムが10質量%以上のバイオマス由来成分を含有することを特徴とするガスバリア性フィルム。
[一般式(1)中、Xは、直接結合か、ビスエポキシ化合物残基を示し、Yは、ジアミンの残基を示す。Zは、下記一般式(2)~(5)のいずれかを示し、ポリヒドロキシウレタン樹脂の分子中にこれらの群から選ばれる2種以上が混在していてもよい。]
[一般式(2)~(5)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合し、Xが直接結合の場合は他方のZと結合し、右側の結合手は酸素原子と結合する。] - (A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂が、重量平均分子量が10000~100000の範囲であり、且つ、その水酸基価が150mgKOH/g~300mgKOH/gの範囲である請求項1記載のガスバリア性フィルム。
- (A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂が、少なくともその一部に二酸化炭素を原料として用いて合成された五員環環状カーボネート構造を有する、少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物と、少なくとも2つのアミノ基を有する化合物の重付加反応により得られたものであり、全質量のうちの1~20質量%を、前記二酸化炭素由来の-O-CO-結合が占める請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
- (B)成分の澱粉系化合物が、水酸基価が30mgKOH/g~1500mgKOH/gの範囲である澱粉の分解物であるDE70~100の糖類を再縮合させた、難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物の少なくともいずれかである請求項1~3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
- (C)成分の金属キレート化合物が、チタンアセチルアセトネート錯体である請求項1~4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
- その厚みが0.1~100μmであり、且つ、その酸素透過率が、23℃、65%の恒温恒湿度下において、50mL/m2・day・atm以下である請求項1~5のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
- ガスバリア性に優れたフィルムの形成用であり、(A)成分の下記一般式(1)の繰り返し単位を有するポリヒドロキシウレタン樹脂と、(B)成分の澱粉系化合物と、これらの成分に架橋し得る(C)成分の金属キレート化合物とを含んでなり、前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分を10質量部~300質量部の割合で含むことを特徴とするポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物。
[一般式(1)中、Xは、直接結合か、ビスエポキシ化合物残基を示し、Yは、ジアミンの残基を示す。Zは、下記一般式(2)~(5)のいずれかを示し、ポリヒドロキシウレタン樹脂の分子中にこれらの群から選ばれる2種以上が混在していてもよい。]
[一般式(2)~(5)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合し、Xが直接結合の場合は他方のZと結合し、右側の結合手は酸素原子と結合する。] - (A)成分のポリヒドロキシウレタン樹脂の、重量平均分子量が10000~100000の範囲内であり、且つ、その水酸基価が150mgKOH/g~300mgKOH/gの範囲である請求項7記載のポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物。
- (B)成分の澱粉系化合物が、水酸基価が30mgKOH/g~1500mgKOH/gの範囲である澱粉の分解物であるDE70~100の糖類を再縮合させた、難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物の少なくともいずれかである請求項7または8に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物。
- (C)成分の金属キレート化合物が、チタンアセチルアセトネート錯体である請求項7~9のいずれか1項に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂-澱粉ハイブリッド組成物。
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