次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。図2は、ロボットトラクタ1の平面図である。図3は、第1実施形態におけるロボットトラクタ1の制御系の主要な構成を示すブロック図である。
初めに、本発明に係る農業用作業車両の実施の一形態であるロボットトラクタ(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)1について説明する。トラクタ1は、圃場を自走する車体部としての走行機体2を備える。走行機体2には、図1及び図2において鎖線で示す作業機3が着脱可能に備えられる。当該作業機3は農作業に用いられる。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して走行機体2に装着することができる。走行機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
トラクタ1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。トラクタ1の車体部である走行機体2は、図1に示すように、その前部が左右1対の前輪7,7で支持され、その後部が左右1対の後輪8,8で支持されている。
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内にはトラクタ1の駆動源であるエンジン10が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成しても良い。
ボンネット9の後方には、オペレータが搭乗するためのキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、オペレータが操向操作するためのハンドル12と、オペレータが座る座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、農業用作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
上記の操作装置としては、図2に示すモニタ装置14、スロットルレバー15、シフトレバー、昇降レバー、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、及び複数の油圧変速レバー16等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、又はハンドル12の近傍に配置されている。モニタ装置14は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー15は、エンジン10の回転速度を設定するためのものである。前記シフトレバーは、トランスミッション22の変速比を変更操作するためのものである。昇降レバーは、走行機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するためのものである。PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出した図略のPTO軸(動力取出軸)への動力の伝達/遮断を切替操作するためのものである。すなわち、PTOスイッチ17がON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチ17がOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止される。PTO変速レバー18は、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うものである。油圧変速レバー16は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作することができる。
図1に示すように、走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
図3に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)並びに作業機3の動作(昇降、駆動、及び停止等)を制御するための制御部として、制御装置4を備える。制御装置4には、ガバナ装置41、変速装置42、及び昇降アクチュエータ44等がそれぞれ電気的に接続されている。
ガバナ装置41は、エンジン10の回転数を調整するものである。ガバナ装置41を制御装置4により制御してラック位置を適宜に調整することにより、エンジン10の回転数を所望の回転数にすることができる。
変速装置42は、具体的には例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置であり、トランスミッション22に備えられている。変速装置42を制御装置4により制御して図略の前記斜板の角度を適宜に調整することにより、トランスミッション22の変速比を所望の変速比にすることができる。
昇降アクチュエータ44は、例えば作業機3を走行機体2に連結している3点リンク機構を動作させることにより、作業機3を退避位置(農作業を行わない位置)又は作業位置(農作業を行う位置)の何れかに上げ下げするものである。昇降アクチュエータ44を制御装置4により制御して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、例えば圃場領域の所望の高さで作業機3により農作業を行うことができる。
上述のような制御装置4を備えるトラクタ1は、オペレータがキャビン11内に搭乗して各種操作をすることにより、当該制御装置4によりトラクタ1の各部(走行機体2、作業機3等)を制御して、圃場内を走行しながら農作業を行うことができるように構成されている。加えて、本実施形態のトラクタ1は、オペレータがトラクタ1に搭乗しなくても、図1及び図3に示す遠隔操作装置46により前進、後進、旋回等を指示して走行させたり、トラクタ1に自律走行させたりすることも可能となっている。
具体的には、図3に示すように、このトラクタ1は自律走行を可能とするための各種の構成を制御装置4内に備えている。更に、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(の車体部)の位置情報を取得するために必要な測位用アンテナ6等の各種の構成を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場上を自律走行することが可能となっている。
次に、自律走行を可能にするためにトラクタ1が備える構成について詳細に説明する。具体的には、トラクタ1は、図1及び図3に示すように、操舵アクチュエータ43、測位用アンテナ6、及び無線通信用アンテナ48等を備える。
操舵アクチュエータ43は、例えば、ハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部に設けられ、ハンドル12の回転角度(操舵角)を調整するものである。操舵アクチュエータ43を制御装置4により制御して適宜に動作させることにより、ハンドル12の操舵角を所望の値にして、操舵輪である前輪7を旋回させて、トラクタ1を所望の旋回半径で旋回操作することができる。
測位用アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。図1に示すように、測位用アンテナ6は、トラクタ1のキャビン11のルーフ92の上面に配置されている。測位用アンテナ6で受信された信号は、図3に示す位置情報算出部49に入力されて、当該位置情報算出部49でトラクタ1(厳密には、測位用アンテナ6)の位置情報が、例えば緯度・経度情報として算出される。当該位置情報算出部49で算出された位置情報は、制御装置4の位置情報取得部81により取得されて、トラクタ1の制御に利用される。
ここで、測位システムの具体例としては、GPS技術(GPS衛星)を活用した衛星測位システムが挙げられるが、これに代えて、準天頂衛星、グロナス衛星等の他の衛星を用いたシステムを利用することも可能である。また、GPS技術を活用した測位システムとしては、単独測位、相対測位、DGPS測位、RTK−GPS測位等を採用することができる。
無線通信用アンテナ48は、遠隔操作装置46からの信号を受信したり、遠隔操作装置46への信号を送信したりするものである。図1に示すように、無線通信用アンテナ48は、トラクタ1のキャビン11のルーフ92の上面に配置されている。無線通信用アンテナ48で受信した遠隔操作装置46からの信号は、図3に示す送受信処理部91で信号処理された後、制御装置4に入力される。また、制御装置4から遠隔操作装置46に送信する信号は、送受信処理部91で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて、遠隔操作装置46で受信される。
遠隔操作装置46は、具体的には、タッチパネルを備えるタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。オペレータは、遠隔操作装置46のディスプレイに表示された情報(例えば、自律走行を行うときに必要な圃場の情報等)を参照して確認することができる。また、オペレータは、遠隔操作装置46を操作して、トラクタ1の制御装置4に、トラクタ1を制御するための制御信号を送信することができる。なお、本実施形態の遠隔操作装置46はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、有人のトラクタ(図略)を無人のトラクタ1に付随して走行させる場合、有人側のトラクタに搭載されるモニタ装置を遠隔操作装置とすることもできる。
図3に示す制御装置4は、トラクタ1が自律走行するように制御するための各部を備えており、これと併せて測位用アンテナ6等の各種構成をトラクタに設けることにより、既存のトラクタを無人のトラクタ1として利用することが可能となる。制御装置4は、CPU、ROM、RAM等を有する小型のコンピュータとして構成されており、上記のROMには、オペレーションプログラムやアプリケーションプログラムや各種データが記憶されている。上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、制御装置4を、位置情報取得部81、領域情報記憶部51、作業情報記憶部52、輪郭登録点記憶部61、領域形状取得部62、経路作成部70、及び表示用データ作成部80等として動作させることができる。
このように構成されたトラクタ1は、遠隔操作装置46を用いるオペレータの指示に基づいて、圃場領域での作業経路を経路作成部70によって算出し、当該作業経路に沿って自律走行しつつ、作業機3による農作業を行うことができる。このように、トラクタ1が自律走行する圃場領域上の経路を、以下の説明において「作業経路」と称する場合がある。また、圃場領域においてトラクタ1の作業機3による農作業の対象となる領域を「作業領域」と称する場合がある。この作業領域は、圃場領域の全体から枕地及び余裕代を除いた領域として定められ、オペレータ等により後述の登録点の登録作業が行われることにより設定される。
次に、自律走行を可能とするために制御装置4に備えられている各部について、図3を参照して個別に説明する。
位置情報取得部81は、測位用アンテナ6により取得された測位システムからの測位信号に基づいて、位置情報算出部49で算出されたトラクタ1の位置情報(具体的には、例えば、緯度・経度情報等)を取得するものである。
領域情報記憶部51は、トラクタ1で自律走行による農作業を行う対象となる圃場等の領域に関する様々な情報を記憶するものである。圃場に関する情報としては、具体的には、圃場の位置及び形状、圃場において作業機3による農作業が行われる領域である作業領域の位置及び形状、圃場で作業機3による農作業が開始される地点である作業開始点、農作業が終了される地点である作業終了点等を挙げることができる。ここで、圃場の位置及び形状は、画像処理等により畦等の場所を把握することにより取得することができる。また、作業領域の位置及び形状は、後述するように領域形状取得部62により取得される。また、その他の情報は、例えば、オペレータが遠隔操作装置46のタッチパネルを操作すること等により設定することができる。
作業情報記憶部52は、トラクタ1に装着した作業機3により行われる作業の種類、作業幅、及びオーバーラップ幅等を、作業情報として記憶する。本実施形態では、これらの情報は、オペレータが遠隔操作装置46のタッチパネルを操作することにより設定することができる。作業の種類としては、例えば耕耘作業、播種作業等である。作業幅は、作業機3により作業が行われる有効幅を意味し、例えば3メートルである。オーバーラップ幅は、隣り合う作業経路をトラクタ1がそれぞれ走行する場合に、作業機3による上記の作業幅が重複する(重複が許容される)幅を意味し、例えば30センチメートルである。
輪郭登録点記憶部61は、圃場領域C内の作業領域Eの輪郭を構成する角部E1,E2,E3,E4等の複数の地点にトラクタ1を配置させたときの測位用アンテナ6の位置情報を登録する作業をオペレータが行ったときに、当該位置情報を記憶するものである。本実施形態において、輪郭登録点記憶部61は、それぞれの角部E1,E2,E3,E4における測位用アンテナ6の位置情報を、その登録された順番とともに記憶する。
領域形状取得部62は、輪郭登録点記憶部61から読み出した作業領域Eの角部E1,E2,E3,E4等の複数の登録点の位置に基づいて作業領域Eの形状を取得する。具体的には、登録点同士を結ぶ線分が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した多角形(本実施形態では、四角形)を、作業領域Eの形状として取得する。
経路作成部70は、作業情報記憶部52から読み出した作業情報、及び領域情報記憶部51から読み出した作業領域情報に基づいて、前記作業経路を計算により作成する。作業経路は、農作業が行われる直線状又は折れ線状の経路である農作業経路と、旋回操作(方向転換)が行われる旋回経路と、を交互に繋いだ一連の経路として生成される。
表示用データ作成部80は、領域形状取得部62で取得して領域情報記憶部51に記憶された作業領域Eの形状(外形)を、その輪郭上の複数の登録点(本実施形態では、角部E1,E2,E3,E4)が登録された順番とともに、遠隔操作装置46のディスプレイ上に表示させるための表示用データを作成する。表示用データ作成部80で作成された表示用データは、送受信処理部91を介して遠隔操作装置46で受信され、当該遠隔操作装置46のディスプレイ上に画像として表示される。
次に、作業領域Eの形状を取得するために制御装置4により行われる制御について、図4のフローチャートを参照して説明する。図4は、作業領域Eの形状を取得するために制御装置4が行う処理を示すフローチャートである。
まず、オペレータは遠隔操作装置46の適宜のメニュー画面から作業領域形状登録を指示し、図5に示すように、作業領域Eの輪郭を構成する角部E1,E2,E3,E4を含む当該作業領域Eの輪郭上の複数の地点にトラクタ1を順次移動させ、それぞれの地点(登録点)について、遠隔操作装置46により地点登録を指示する。この指示を受けた制御装置4は、地点登録の指示に応じて測位用アンテナ6の位置情報(具体的には、緯度及び経度等の情報)を計算し、輪郭登録点記憶部61に記憶させる(図4のステップS101)。角部等の登録点と、その次に登録する他の角部等の登録点と、の間でトラクタ1を移動させる経路は任意で良く、登録点の順番(角部等を登録する順番)も任意であるが、今回の説明では、図5における丸付き数字の順番に、破線矢印の経路に従って移動させたものとする。本実施形態では、このようにして登録した測位用アンテナ6の位置情報を輪郭上の登録点の位置情報として取り扱う。
次に、制御装置4の領域形状取得部62は、図6に示すように、輪郭登録点記憶部61から読み出した角部等の登録点の位置(厳密には、測位用アンテナ6の位置)を、隣り合う登録点同士を結ぶ各線分が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した多角形を、作業領域Eの形状として取得する(図4のステップS102)。このように、作業領域Eを単純な多角形として記憶することで、作業領域Eの形状に関する登録作業を簡素化することができる。制御装置4は、取得された作業領域Eの形状を作業情報記憶部52に記憶する。
次に、制御装置4の表示用データ作成部80は、領域形状取得部62が取得した作業領域Eの形状を作業情報記憶部52から取得し、得られた作業領域Eの形状を、輪郭登録点記憶部61から読み出した角部E1,E2,E3,E4等の登録点の登録順とともに表示するための表示用データを作成する(ステップS103)。この表示用データは、送受信処理部91にて信号処理がされた後、無線通信用アンテナ48から送信される。これを受信した遠隔操作装置46では、受信した表示用データに基づいて、作業領域Eの形状と角部等の登録点の登録順を示す画像を作成し、図7に示すように、この画像が遠隔操作装置46のディスプレイ上に表示される。これにより、オペレータは、作業領域Eの形状(それぞれの登録点)が正確に取得されているか否かを容易に確認することができる。また、図7に示すように角部等の登録点の登録順(丸付き数字)もディスプレイに併せて表示される。従って、例えばディスプレイに表示される作業領域Eの形状が実際にオペレータが意図している作業領域の形状と異なっている場合に、角部等の登録点の位置が正確に登録されなかった登録作業をオペレータが容易に把握し、再登録作業等のために活用することができる。
その後、オペレータは遠隔操作装置46を操作し、上記の作業開始点及び作業終了点を設定する。すると、経路作成部70は、作業開始点から作業終了点に至る作業経路を作成する。当該作業経路が遠隔操作装置46のディスプレイに表示され、それを確認したオペレータが遠隔操作装置46から作業開始を指示すると、制御装置4はガバナ装置41、変速装置42、操舵アクチュエータ43、及び昇降アクチュエータ44等を適宜制御し、これにより、トラクタ1は上記の作業経路に従って自律走行し、作業機3による作業を自動的に行うことができる。なお、作業経路の作成については、後述の別の実施形態で詳述する。
以上に説明したように、本実施形態のトラクタ1は、測位システムからの測位信号を受信する測位用アンテナ6を備え、当該測位用アンテナ6により受信した信号に基づいて自らの位置情報を取得可能である。制御装置4は、当該トラクタ1が農作業を行う作業領域Eの形状を取得する。この制御装置4は、輪郭登録点記憶部61と、領域形状取得部62と、を備える。輪郭登録点記憶部61は、作業領域Eの輪郭を構成する角部E1,E2,E3,E4に測位用アンテナ6を配置させたときの当該測位用アンテナ6の位置情報を記憶する。領域形状取得部62は、輪郭登録点記憶部61から読み出した角部E1,E2,E3,E4の位置(厳密には、トラクタ1を角部に配置したときの測位用アンテナ6の位置)を直線で結んだ形状を作業領域Eの形状として取得する。
これにより、従来のように作業領域の輪郭に沿ってトラクタを実際に走らせて、このトラクタが走行した連続的な走行軌跡を圃場の形状として取得する場合と比べて、角部E1,E2,E3,E4の位置情報(厳密には、トラクタ1を角部に配置したときの測位用アンテナ6の位置情報)だけを登録すればよいので、作業領域Eの形状を簡単に取得することができる。また、作業領域Eの角部を任意の順番に登録(記憶)することができるので、角部の登録作業に柔軟性を持たせることができ、利便性に優れる。
また、本実施形態のトラクタ1は、表示用データ作成部80を更に備える。表示用データ作成部80は、オペレータが参照する遠隔操作装置46のディスプレイに、輪郭登録点記憶部61から読み出した角部E1,E2,E3,E4の輪郭上での位置を、輪郭登録点記憶部61で記憶された順番(登録作業が行われた順番)とともに表示するためのデータを作成する。
これにより、オペレータが表示用データ作成部80で作成されたデータを遠隔操作装置46のディスプレイ上で参照することにより、実際の登録作業と、その登録作業によって輪郭登録点記憶部61に記憶された角部E1,E2,E3,E4の位置と、の対応関係が分かり易くなり、操作性が向上する。
次に、第2実施形態に係る制御装置53について説明する。図8は、制御装置53の主要な構成を示すブロック図である。図9は、第2実施形態において、補正値記憶部64が記憶する補正値を説明する平面図である。図10は、第2実施形態において、作業領域Eの形状(輪郭)を取得するために制御装置53が行う処理を示すフローチャートである。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
第2実施形態に係る制御装置53は、測位用アンテナ6を搭載したトラクタ1を作業領域Eの輪郭上の登録点に配置させて、そのときの測位用アンテナ6の位置情報を登録する点においては第1実施形態に係る制御装置4と同じである。一方、トラクタ1は一定の大きさを有しておりトラクタ1における測位用アンテナ6の位置によっては測位用アンテナ6の位置と実際の作業領域Eの角部(隅)等の位置との間に位置ずれが発生する可能性がある。そこで第2実施形態では、トラクタ1における測位アンテナ6の位置に応じて、測位アンテナ6の位置座標に対して補正を行う点等において、第1実施形態の制御装置4とは異なっている。
制御装置53は、図8に示すように、輪郭登録点記憶部63、補正値記憶部64、輪郭登録点補正部65、及び領域形状取得部66等を備えて構成される。
輪郭登録点記憶部63は、作業領域Eの輪郭上の角部E1,E2,E3,E4等の登録点にトラクタ1を順次配置してそのときの測位用アンテナ6の位置情報を登録しながら、トラクタ1を作業領域Eの輪郭に沿って周回(1回り)させる作業をオペレータが行ったときに、登録された測位用アンテナ6の位置情報を記憶する。即ち、輪郭登録点記憶部63は、角部E1,E2,E3,E4等の複数の登録点の位置情報としての測位用アンテナ6の位置情報を作業領域Eの形状に沿って順に記憶する。本実施形態の輪郭登録点記憶部63は、測位用アンテナ6の位置情報をその登録された順番とともに記憶する。なお、本実施形態の輪郭登録点記憶部63は、各登録点での走行機体2の鉛直方向に対する傾斜角度を、各登録点の位置情報とともに記憶している。なお、走行機体2の鉛直方向に対する傾斜角度は、例えば走行機体2に備えられるセンサの検出値により取得することができる。
補正値記憶部64は、輪郭登録点記憶部63から読み出した角部E1,E2,E3,E4等の複数の登録点の位置情報(厳密には、測位用アンテナ6の位置情報)に対して、測位用アンテナ6が配置される位置からトラクタ1の端までの距離に相当する分だけ、当該位置情報を作業領域Eの輪郭の角部に近づけるための補正値を記憶する。
具体的には、補正値記憶部64は、図9に示す距離の情報、即ち、トラクタ1の車幅方向における測位用アンテナ6からトラクタ1の作業機3の左端までに相当する距離L、及び測位用アンテナ6から作業機3の右端までに相当する距離Rを記憶する。更に、補正値記憶部64は、トラクタ1の車長方向における測位用アンテナ6からトラクタ1の前端までに相当する距離F、及び測位用アンテナ6から作業機3の後端までに相当する距離Bを記憶する。
これらの距離L,R,F,Bは、例えばオペレータが実際に距離を測定して遠隔操作装置46に入力すること等により、補正値記憶部64に記憶させることができる。ただし、これらの距離L,R,F,B等を取得する方法はこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、オペレータが作業機3の種類を遠隔操作装置46に入力することにより、距離L,R,F,B等が自動で算出(推定)されるものとしてもよい。
輪郭登録点補正部65は、輪郭登録点記憶部63で読み出したそれぞれの角部E1,E2,E3,E4等の登録点の位置情報(厳密には、測位用アンテナ6の位置情報)を、前記の補正値記憶部64から読み出した補正値に基づいて、各登録点での走行機体2の鉛直方向に対する傾斜角度も考慮に入れた上で補正して、補正後の位置情報を算出するものである。これにより、測位用アンテナ6の取付位置からトラクタ1の端までに距離があることや、トラクタ1が鉛直方向に対して傾斜していること等に起因する、補正前の位置情報の実際の角部等の登録点の位置に対するズレを、適切に補正することができる。
領域形状取得部66は、輪郭登録点補正部65で算出した補正後の角部E1,E2,E3,E4等の登録点の位置を直線で結んで形成される多角形(本実施形態では、四角形)の形状を、作業領域Eの形状として取得する。具体的には、領域形状取得部66は、補正後の登録点同士を結ぶ線分が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した多角形を、作業領域Eの形状として取得するものとすることができる。あるいは、各登録点が登録された順番に、補正後の登録点を順次結んで形成される多角形を、作業領域Eの形状として取得するものとすることもできる。
次に、作業領域Eの形状を取得するために第2実施形態に係る制御装置53により行われる制御について、図10のフローチャートを参照して説明する。図10は、作業領域Eの形状を取得するために制御装置53が行う処理を示すフローチャートである。
まず、オペレータは遠隔操作装置46の適宜のメニュー画面から作業領域形状登録を指示し、図11に示すように、作業領域Eの輪郭に沿って作業領域Eを1回りするようにトラクタ1を走行させ、それぞれの角部E1,E2,E3,E4等の登録点にトラクタ1が到達した時点で、遠隔操作装置46により角部等の登録点の登録を指示する。この指示を受けた制御装置53は、登録点の登録の指示に応じて測位用アンテナ6の位置情報(具体的には、緯度及び経度等)を位置情報取得部81により取得し、輪郭登録点記憶部61に記憶させる(図10のステップS201)。なお、このときオペレータは、トラクタ1の切返し操作等を用いて、当該トラクタ1の前端、後端、左端、右端、左前端、右前端、左後端、及び右後端のうち何れかを、作業領域Eの角部E1,E2,E3,E4にできるだけ一致させるようにし、トラクタ1の前端、後端、左端、右端、左前端、右前端、左後端、及び右後端の何れを作業領域Eの角部E1,E2,E3,E4に合わせたかを示す情報(以下、登録点合わせ情報と呼ぶことがある。)を、遠隔操作装置46から入力することにより記憶させる。ステップS201において、輪郭登録点記憶部63は、登録された順番とともに、測位用アンテナ6の位置情報と、上記の登録点合わせ情報と、トラクタ1の登録時のトラクタ1の向きと、を記憶する。なお、登録時のトラクタ1の向きは、図示しない方位取得部(例えば、方位センサ)を用いて取得することができる。あるいは、角部等の登録点の登録時の、当該登録点に到達する直前の測位用アンテナ6の位置情報の変化からトラクタ1の向きを計算により取得するようにしても良い。このときの測位用アンテナ6の位置情報は、補正前の角部E1,E2,E3,E4等の登録点の位置情報に相当する。
次に、制御装置53は、ステップS201で記憶した各位置情報に対して、当該位置情報を作業領域Eの輪郭の角部に近づけるための補正値を補正値記憶部64から読み出す(ステップS202)。この補正値は、具体的には図9に示すように、測位用アンテナ6とトラクタ1の前端、後端、左端、右端、左前端、右前端、左後端、及び右後端との相対的な位置関係を示す距離L,R,B,Fに基づいて定められる値である。あるいは、トラクタ1の鉛直方向に対する傾きも考慮に入れて、トラクタ1の前端、後端、左端、右端、左前端、右前端、左後端、及び右後端が配置される作業領域Eの端の位置と、測位用アンテナ6の位置と、の相対的な位置関係を示す距離L,R,B,Fに適宜修正を加え、これを補正値とするものとしても良い。
次に、輪郭登録点補正部65は、輪郭登録点記憶部63で読み出した補正前の角部E1,E2,E3,E4の位置情報を、ステップS202で読み出した補正値に基づいて補正する(ステップS203)。具体的には、本実施形態において輪郭登録点補正部65は、当該角部E1,E2,E3,E4等の登録点におけるトラクタ1の向きを輪郭登録点記憶部63から読み出した上で、当該向きと、角部E1,E2,E3,E4等における上記の登録点合わせ情報と、を考慮して、測位用アンテナ6の位置(緯度・経度情報等)をにしてトラクタ1の前端、後端、左端、右端、左前端、右前端、左後端、又は右後端の位置(緯度・経度情報等)を計算することにより、補正後の角部E1,E2,E3,E4等の複数の登録点の位置情報を求める。なお、この補正は幾何学的関係により簡単に行うことができるので、詳細な説明は省略する。
次に、領域形状取得部66は、ステップS203で算出した補正後の角部E1,E2,E3,E4等の複数の登録点の位置情報を、隣り合う登録点を結ぶ各線分が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した多角形を作業領域Eの形状として取得する(ステップS204)。取得された作業領域Eの形状は、領域情報記憶部51に記憶される。
次に、制御装置53の表示用データ作成部80は、領域形状取得部66で取得した作業領域Eの形状を領域情報記憶部51から読み出して、遠隔操作装置46のディスプレイに表示するための表示用データを作成する(ステップS205)。この表示用データに基づく画像が遠隔操作装置46の制御装置で作成され、ディスプレイ上に表示される。
本実施形態では、上記のようにそれぞれの角部E1,E2,E3,E4等の登録点の位置を補正した上で作業領域Eの形状を求めるので、平面視で測位用アンテナ6を走行機体2の中央に配置しなければならない場合でも、実際に即した作業領域Eの形状を取得することができる。図11には特に示していないが、第2実施形態において取得される作業領域Eの形状は、第1実施形態(図6)の場合と比較して広げられ、実際の形状をより反映したものとなっている。
以上に説明したように、本実施形態のトラクタ1の制御装置53は、輪郭登録点記憶部63と、補正値記憶部64と、輪郭登録点補正部65と、領域形状取得部66と、を備える。輪郭登録点記憶部63は、作業領域Eの角部E1,E2,E3,E4にトラクタ1を順次配置して、測位用アンテナ6の位置情報を登録しながら作業領域Eの形状に沿って周回させたときの、角部E1,E2,E3,E4の位置情報としての測位用アンテナ6の位置情報を記憶する。補正値記憶部64は、輪郭登録点記憶部63から読み出した角部E1,E2,E3,E4の位置情報のそれぞれに対して、測位用アンテナ6が搭載される位置からトラクタ1の端までの距離F,B,L,Rに基づく補正値を記憶する。輪郭登録点補正部65は、輪郭登録点記憶部63から読み出したそれぞれの位置情報を前記補正値に基づいて補正する。領域形状取得部66は、輪郭登録点補正部65により補正された角部E1,E2,E3,E4の位置情報を、隣り合う登録点を結ぶ各線分が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した形状を作業領域Eの形状として取得する。
これにより、測位用アンテナ6の搭載位置からトラクタ1の端までの距離F,B,L,Rを用いた補正値に基づいて測位用アンテナ6の位置情報を補正することで、補正後の位置情報が実際の角部の位置に近づくので、より実際に則した作業領域Eの形状を取得することができる。
また、トラクタ1の制御装置53においては、補正値記憶部64には、オペレータが入力する補正値が記憶される。
これにより、例えばトラクタ等によってアンテナの設置位置が異なる場合でも、オペレータが適切な補正値を入力することにより、柔軟に対応することができる。
次に、第3実施形態に係るトラクタ1に備えられる制御装置54について説明する。図12は、第3実施形態に係る制御装置54の主要な構成を示すブロック図である。図13は、第3実施形態において、ポータブル測位装置30の構成を示す斜視図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
第3実施形態に係る制御装置54は、作業領域Eの輪郭上の角部等の登録点を登録することにより作業領域Eの形状を取得する点においては制御装置4と同じであるが、トラクタ1に搭載した測位用アンテナ6ではなく、トラクタ1とは独立して移動させることが可能な(オペレータやサービスマンが持運び可能な)ポータブル測位装置30を用いて作業領域Eの輪郭上の角部等の登録点の登録をする点等が制御装置4とは異なっている。
図12に示すように、第3実施形態の制御装置54は、トラクタ1とは独立して移動させることが可能なポータブル測位装置30が出力する位置情報を位置情報取得部81により取得可能に構成されている。
ポータブル測位装置30は、図13に示すように、棒体31、アンテナ本体32、アンテナ取付部33、グリップ34、測位ボタン35、尖状部36、突入抵抗体37、センサモジュール38及び位置情報算出部39等を備えて構成される。
ポータブル測位装置30は、棒体31を主たる構造体としたスティック型のアンテナを備えており、棒体31の寸法はオペレータが容易に持運び可能な程度の寸法とされる。棒体31の上端部には、アンテナ取付部33を介してアンテナ本体32が取り付けられる。アンテナ本体32は、測位システムからの測位信号を受信するものであり、測位用アンテナ6と同様の機能を持つものである。棒体31のアンテナ取付部33の下方にはグリップ34が設けられており、このグリップ34をオペレータが握って操作できるようになっている。
棒体31の下端部には先端が尖った尖状部36が設けられており、その若干上方には円板状の突入抵抗体37が設けられている。位置情報を取得したい地点において地面に尖状部36を突き刺して、突入抵抗体37が地面と接触する位置まで尖状部36を地面に埋め込むことができるようになっている。このように尖状部36を地面に埋め込んだ状態でオペレータがグリップ34に設けられている測位ボタン35を押すことで、その位置で測位システムからの測位信号をアンテナ本体32で受信し、位置情報を取得することができるようになっている。
なお、グリップ34の内部には、センサモジュール38、位置情報算出部39、及び、図略のバッテリーが搭載されている。センサモジュール38は磁気センサ等で構成されており、方位角と、鉛直方向に対する棒体31の傾斜角度と、を検出することができる。位置情報算出部39は、センサモジュール38の出力結果に基づいて、尖状部36が突き刺された地面の位置と、アンテナ本体32の位置との間のズレを補正した値を位置情報として算出する。
ポータブル測位装置30の位置情報算出部39は、当該ポータブル測位装置30の位置情報を、例えば緯度・経度情報として算出する。当該位置情報算出部39で算出された位置情報は、制御装置54に入力されて、作業領域Eの形状の取得に用いられる。
図12に示すように、制御装置54は、輪郭登録点記憶部67、領域形状取得部68、領域情報記憶部51、作業情報記憶部52、基準点取得部71、経路作成部70、及び表示用データ作成部80等を備えて構成される。
輪郭登録点記憶部67は、作業領域Eの輪郭上の、当該輪郭を構成する角部E1,E2,E3,E4,E5等の複数の登録点にポータブル測位装置30を配置させた場合に、それぞれの角部E1,E2,E3,E4,E5において当該ポータブル測位装置30から取得した位置情報を記憶するものである。なお、図15には、ポータブル測位装置30を角部E5に配置した様子が示されている。本実施形態の輪郭登録点記憶部67は、ポータブル測位装置30から取得した角部E1,E2,E3,E4,E5等の登録点の位置情報を、その登録された順番とともに記憶する。
領域形状取得部68は、輪郭登録点記憶部67から読み出した登録された作業領域Eの角部E1,E2,E3,E4,E5等の登録点の位置を、各点を結ぶ線分が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した多角形を、作業領域Eの形状として取得するものである。領域形状取得部68において取得された作業領域Eの形状は、領域情報記憶部51に記憶される。
基準点取得部71は、領域情報記憶部51に記憶されている作業領域Eの輪郭上の登録点(即ち、前記角部E1,E2,E3,E4,E5等)から、隣り合う2つの登録点(例えば、角部)をオペレータが選択した場合に、当該角部の情報を取得するものである。詳細には、作業領域内におけるトラクタ1の直進方向をオペレータに設定させるために、領域情報記憶部51に記憶されている作業領域Eの形状及び登録点の位置を表示する表示用データが表示用データ作成部80で作成され、この表示用データに基づいて画像が作成されて遠隔操作装置46のディスプレイ上に表示される。この表示を見たオペレータは遠隔操作装置46を操作し、5つの角部E1,E2,E3,E4,E5等の登録点のうち2つの登録点(例えば、角部E1,E2)を選択する。これにより、当該角部E1,E2が選択された旨の情報が遠隔操作装置46から制御装置54に送信される。基準点取得部71は、選択された登録点(本実施形態の場合は、角部E1及びE2)を、基準点として取得する。
経路作成部70は、基準点取得部71において取得した基準点(隣り合う2つの角部E1,E2)を通る直線と平行な直線状の農作業経路を、領域情報記憶部51から読み出した作業領域Eの内側に、複数並べて作成するものである。詳細には、経路作成部70は、上記の作業領域Eの情報を領域情報記憶部51から読み出す。また、経路作成部70は、作業情報記憶部52から読み出した作業幅Xから、同じく作業情報記憶部52から読み出したオーバーラップ幅Yを減算した値を、隣り合う農作業経路の間の間隔(以下、「農作業経路間隔」と称する場合がある。)として求める。そして、経路作成部70は、作業領域Eにおいて、上記の農作業経路間隔を空けて農作業経路が並ぶように農作業経路を作成する。それぞれの直線状の農作業経路は、上記の基準点(角部E1,E2)を通る直線と平行となるように配置される。更に、経路作成部70は、平行に並べて作成された農作業経路同士を繋ぐように旋回経路を作成する。以上により、農作業経路と旋回経路からなる一連の作業経路を作成することができる。なお、経路作成部70が作業経路を作成するに際しては、作業情報記憶部52に記憶されているトラクタ1の設定された旋回半径(例えば、理論的に求まる最小旋回半径)等が考慮される。
次に、作業領域Eの形状を取得するために制御装置54により行われる制御について、図14のフローチャートを参照して説明する。図14は、第3実施形態において、作業領域Eの形状を取得するために制御装置54が行う制御を示すフローチャートである。
まず、オペレータは遠隔操作装置46の適宜のメニュー画面から作業領域形状登録を指示し、図15に示すように、作業領域Eの輪郭を構成する角部E1,E2,E3,E4を含む、当該作業領域Eの輪郭上の複数の登録点にポータブル測位装置30を順次移動させ、それぞれの角部等の登録点について、遠隔操作装置46により登録点の登録を指示する。この指示を受けた制御装置54は、登録点の登録の指示に応じてポータブル測位装置30の位置情報(具体的には、緯度及び経度等)を計算し、輪郭登録点記憶部67に記憶させる(図14のステップS301)。
次に、制御装置54の領域形状取得部68は、輪郭登録点記憶部67から読み出した角部等の複数の登録点の位置を、各点を結ぶ線分が交わらないようにいわゆる閉路グラフにより特定した形状を、作業領域Eの形状として取得する(ステップS302)。このように、算出される作業領域Eの形状は、角部E1,E2,E3,E4,E5等の輪郭上の複数の登録点と、隣り合う角部E1,E2,E3,E4,E5等の登録点を結ぶ直線(辺)とにより構成される。
続いて、制御装置54の表示用データ作成部80は、領域形状取得部68で算出された作業領域Eの形状を、その輪郭上の角部等の各登録点が登録された順番とともに表示するための表示用データを作成する(ステップS303)。この表示用データは、上述の実施形態と同様に、作業領域Eの形状を遠隔操作装置46のディスプレイ上に例えば図17のように表示するために用いられる。
次に、図18を主に参照して、トラクタ1に作業領域E内を走行させる作業経路を作成する処理について説明する。図18は、第3実施形態において、作業経路を作成するために制御装置54が行う処理を示すフローチャートである。図19は、第3実施形態において、オペレータが遠隔操作装置46で2つの基準点を指定する様子を示す図である。図20は、第3実施形態において作成される作業経路の例を示す平面図である。
制御装置54は、領域情報記憶部51に記憶された作業領域Eの情報を読み出して、表示用データ作成部80により作業領域Eの形状を遠隔操作装置46のディスプレイに表示させるための表示用データを作成し、これを当該ディスプレイに表示する(図18のステップS401)。なお、この作業領域Eは、オペレータが、枕地や余裕代を考慮した上で、圃場領域Cの形状からある程度内側となるように登録点の登録作業を行うことにより設定する。次に、オペレータは、登録した作業領域Eにおけるトラクタ1の直進方向を、多角形状の作業領域Eが有する辺のうち何れに対して平行に向けるかを選択し、選択した辺の両端に位置する端点(互いに隣接する2つの登録点、例えば角部E1,E2)を、基準点として指定する。基準点取得部71は、オペレータにより選択された角部E1,E2の情報を、基準点の情報として取得する(ステップS402)。
次に、経路作成部70は図20に示すように、指定された基準点を通る直線に沿って(即ち、多角形状の作業領域Eの辺のうちオペレータが選択した特定の辺E1E2に対して平行となるように)、複数の農作業経路を作成する(図18のステップS403)。このとき、経路作成部70は、作業情報記憶部52により読み出した、作業機3の作業幅X、オーバーラップ幅Y、及びトラクタ1の設定された旋回半径等を考慮に入れて、農作業経路を作成する。
更に、経路作成部70は、上記の農作業経路の端同士を繋ぐ旋回経路を作成する(図18のステップS404)。以上により、トラクタ1を自律走行させるための一連の作業経路を作成することができる。
本実施形態では、上記の構成により、直線状の農作業経路を含む作業経路を、当該農作業経路が作業領域Eの形状に精度良く沿うように作成することができる。従って、農作業の仕上がりを向上でき、作業効率を高めることができる。
以上に説明したように、本実施形態のトラクタ1に備えられる制御装置54は、輪郭登録点記憶部67と、領域形状取得部68と、を備える。輪郭登録点記憶部67は、トラクタ1とは独立して移動させることが可能なポータブル測位装置30のアンテナを、作業領域Eの輪郭を構成する角部E1,E2,E3,E4,E5等の、当該輪郭上の複数の登録点に配置させたときの当該アンテナの位置情報を記憶する。領域形状取得部68は、輪郭登録点記憶部67から読み出した、角部E1,E2,E3,E4,E5等の登録点の位置を直線で結んだ形状を作業領域Eの形状として取得する。
これにより、例えば小型で携帯可能なポータブル測位装置30を持った作業者が作業領域Eの角部E1,E2,E3,E4,E5等に移動して、作業領域Eの輪郭の角部E1,E2,E3,E4,E5等の、当該輪郭上の複数の登録点の位置情報を登録することができる。この場合、ポータブル測位装置30のアンテナを正確に作業領域Eの角部(隅)E1,E2,E3,E4,E5等に配置することができ、作業領域Eの形状を精度良く取得することができる。また、トラクタ1に測位用アンテナ6を搭載してトラクタ1ごと移動させながら角部等の輪郭上の登録点の位置情報を登録するよりも、簡単な作業で角部E1,E2,E3,E4,E5等の登録点を登録することができ、制御装置4が作業領域Eの形状を取得するための準備作業が簡便となる。
また、本実施形態のトラクタ1の制御装置54は、基準点取得部71と、経路作成部70と、を更に備える。基準点取得部71は、領域形状取得部68で取得された作業領域Eの形状において、その輪郭上で隣り合う2つの角部E1,E2の位置情報を取得する。経路作成部70は、基準点取得部71において取得した2つの角部E1,E2の位置を通る直線と平行な直線状の農作業経路(図20において実線矢印で示した経路)を、複数並べて作業領域Eの内部に作成する。
これにより、作業領域Eに配置される隣接する角部E1,E2を結ぶ直線に対して平行な農作業経路を、図20のように作業領域Eの内部に精度良く作成することができる。よって、作業領域Eに対し整然と農作業を行うことができる。
また、本実施形態のトラクタ1の制御装置54においては、経路作成部70は、トラクタ1に装着した作業機3の作業幅Xから、隣り合う前記農作業経路の作業幅Xにおいてオーバーラップさせる幅(オーバーラップ幅Y)を差し引いた農作業経路間隔を算出し、この農作業経路間隔をあけて前記農作業経路が並ぶように当該農作業経路を作成する。
これにより、好適なオーバーラップ幅Yを保った農作業経路を作成することができるので、作業領域Eに形成された農作業経路に対して農作業を好適に行うことができる。
また、本実施形態のトラクタ1の制御装置54においては、輪郭登録点記憶部67から読み出した角部E1,E2,E3,E4,E5の輪郭上での位置を、輪郭登録点記憶部67で記憶された順番(図17における丸付き数字)と併せて、オペレータが参照するディスプレイに表示するためのデータを作成する、表示用データ作成部80を更に備える。
これにより、表示用データ作成部80で作成されたデータをオペレータが遠隔操作装置46のディスプレイ上で参照することにより、実際の登録作業と、その登録作業によって輪郭登録点記憶部67に記憶された角部E1,E2,E3,E4,E5の位置と、の対応関係が分かり易くなり、操作性が向上する。
次に、第3実施形態の変形例に係るトラクタ1の制御装置について、図21から図23までを参照して説明する。図21は、第3実施形態の変形例において、作業経路を作成するために制御装置が行う処理を示すフローチャートである。図22は、第3実施形態の変形例において、オペレータが遠隔操作装置46で3つの基準点を指定する様子を示す図である。図23は、第3実施形態の変形例において作成される作業経路の例を示す平面図である。
本変形例において、作業領域Eにおけるトラクタ1の直進方向を指定するための基準点は2つではなく3つ指定され、この結果、作業領域Eにおいてトラクタ1は折れ線状に走行する。
具体的な処理を説明すると、最初に、制御装置は、領域情報記憶部51に記憶された作業領域Eの情報を読み出して、表示用データ作成部80により作業領域Eの形状を遠隔操作装置46のディスプレイに表示させるための表示用データを作成し、これを当該ディスプレイする(図21のステップS501)。次に、オペレータは、登録した作業領域Eにおけるトラクタ1の直進方向を、多角形状の作業領域Eが有する辺のうち何れに対して平行にするかを選択し、互いに隣接する2つの辺のそれぞれの両端に位置する端点(作業領域Eの輪郭上で連続して並ぶ3つの角部E2,E3,E4)を、図22のように基準点として指定する。基準点取得部71は、オペレータにより選択された角部E2,E3,E4の情報を、基準点の情報として取得する(図21のステップS502)。
次に、経路作成部70は図23に示すように、指定された基準点を通る折れ線(指定された基準点に基づいて把握される線形状)に沿って(即ち、例えば、多角形状の作業領域Eの輪郭をなす辺のうちオペレータが選択した特定の2つの辺に対して平行となるように)、複数の農作業経路を作成する(図21のステップS503)。その後、経路作成部70は、農作業経路同士を繋ぐように旋回経路を作成する(ステップS504)。
本変形例では、上記の構成により、折れ線状の農作業経路を含む作業経路を、当該農作業経路が作業領域Eの形状に精度良く沿うように作成することができる。従って、農作業の仕上がりを向上でき、作業効率を高めることができる。
以上に説明したように、本変形例に係るトラクタ1の制御装置において、基準点取得部71は、領域形状取得部68で取得された作業領域Eの形状において、その輪郭上で並んだ順番が連続する3つ以上の角部E2,E3,E4の位置情報を取得する。経路作成部70は、基準点取得部71において取得した3つ以上の角部E2,E3,E4の位置を順次通る折れ線に沿った折れ線状の農作業経路を、複数並べて作業領域Eの内部に作成する。
これにより、作業領域Eの輪郭をなす折れ線(例えば、隣接する2つの辺E2E3,E3E4)に沿った農作業経路を、図23のように作業領域Eの内部に精度良く作成することができる。従って、複雑な形状の作業領域Eに対しても整然と農作業を行うことができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、輪郭登録点記憶部61,63,67は、作業領域Eの全ての角部の位置情報を登録するものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えば2つの角部が非常に近接する位置に配置されているような場合には、近接する角部のうちの何れか1つについてのみ角部の登録をすることとしてもよい。
上記の実施形態では、輪郭登録点記憶部61,63,67は、作業領域Eの角部の位置情報(位置座標)を登録点の情報として記憶するものとした。しかしながら、作業領域Eの角部の位置情報に代えて、圃場領域の角部の位置情報を登録点の情報として記憶することとしても良い。その場合、トラクタ1により圃場領域の形状を取得することが可能である。また、輪郭登録点記憶部61,63,67は、作業領域Eの角部の位置情報を登録するとともに、それとは別に圃場領域の角部の位置情報も登録するものとしても良い。
上記の実施形態で図に示した例では、輪郭登録点記憶部61,63,67は、作業領域Eの角部の位置情報のみを登録するものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えば、隣接する角部を結ぶ線分上に位置する任意の点(即ち、作業領域の輪郭上の任意の点)も、登録点とすることができる。
上記の第1実施形態において、測位用アンテナ6を平面視におけるトラクタ1のほぼ中央位置に設置することに代えて、例えばトラクタ1の左前端、右前端、左後端、及び右後端に設置しても良い。
上記の第1実施形態及び第2実施形態において、制御装置4及び制御装置53は、第3実施形態に示した基準点取得部71に相当する構成は備えていないものとした。しかしながら、これに限るものではなく、第1実施形態及び第2実施形態においても、基準点取得部71を備えることとし、当該基準点取得部71において取得した基準点に基づいて農作業経路を生成することとしても良い。
上記の第3実施形態では、スティックタイプのポータブル測位装置30により角部の登録作業が行われる。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えば作業者がポケット等に収容可能な小型の測位センサを携帯して作業領域Eの角部を登録して回ることとしてもよい。また、GNSS測位機能を遠隔操作装置46に備える構成とし、当該測位機能を用いて角部等の登録点を登録しても良い。更に、トラクタ1に備えられている測位用アンテナ6及び位置情報算出部49を当該トラクタ1から取外し可能に構成し、これらを持ち運んで作業領域Eの角部に設置し、位置情報を登録しても良い。
上記の第3実施形態の変形例では、作業経路を作成するための基準点として3点(E2,E3,E4)を基準点取得部71により取得するものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、4点以上の角部を基準点として取得することとしてもよい。
上記の第3実施形態及びその変形例では、経路作成部70は、作業領域Eの輪郭をなす辺に沿って平行となるように作業経路を形成するものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、作業領域Eの輪郭上の2つの登録点(又はトラクタ1の大きさや傾き等に基づいて設定される補正値により補正をした後の複数の登録点)に基づいて把握される線形状(例えば、2つの登録点を結ぶ直線)を基準に所定角度傾斜させた方向を、農作業が行われるときのトラクタ1の直進方向とし、この方向に沿うように(平行となるように)作業経路を作成することとしても良い。
上記の実施形態では、制御装置4,53,54は、走行機体2及び作業機3を構成する各部を統括的に制御するものとした。しかしながら、これに代えて、制御装置4,53,54が、走行機体2及び作業機3を構成する各部を個別に制御する制御装置の集合体であるものとしても良い。これにより、例えば自律走行に用いない構成を主として制御する制御装置を備える既存のトラクタに対して、自律走行に用いる構成を主として制御する新たな制御装置を追加することで、既存のトラクタを自律走行用トラクタ(ロボットトラクタ)として利用できるものとすることができる。
本発明は、上記の実施形態のような無人で走行するロボットトラクタ1に適用されることに限定されるものではなく、一般的な有人で走行するトラクタにも適用することができる。
本発明は、上記の実施形態のようにトラクタに適用されることに限定されず、例えば田植機に適用することもできる。その場合、植付部(植付装置)が作業機に相当することとなる。更に、本発明は、他の様々な農業用作業車両に適用することもできる。
以上で説明したように、上記で説明したトラクタ1は、以下の構成とされる。即ち、このトラクタ1は、位置情報記憶部としての輪郭登録点記憶部61と、領域の形状を取得する制御部としての領域形状取得部62と、を備える。輪郭登録点記憶部61は、測位用アンテナ6(又は独立して移動させることが可能なポータブル測位装置30)が受信した測位システムからの測位信号に基づく位置情報を記憶可能である。領域形状取得部62は、輪郭登録点記憶部61に記憶された複数の位置情報に基づいて形成される領域(例えば、作業領域E)の形状を特定する。
これにより、従来のように作業領域の輪郭に沿ってトラクタを実際に走らせて、このトラクタが走行した連続的な走行軌跡を作業領域の形状として取得する場合と比べて、測位用アンテナ6(又はポータブル測位装置30)が受信した複数の位置情報だけに基づいて領域(例えば、作業領域E)の形状を特定することができるので、領域の形状を簡単に取得することができる。
また、上記で説明したトラクタ1は、以下の構成とされる。即ち、このトラクタ1は、車体部としての走行機体2と、補正値記憶部64、を備える。走行機体2は、測位用アンテナ6を取付け可能である。補正値記憶部64は、走行機体2における測位用アンテナ6の位置と走行機体2の大きさとに基づいて設定される補正値を記憶可能である。領域形状取得部62は、前記補正値に基づいて前記複数の位置情報を補正し、補正された前記複数の位置情報に基づいて前記領域の形状を特定する。
これにより、測位用アンテナ6の位置を補正値に基づいて補正して、位置情報を実際の領域(例えば、作業領域E)の形状に近づけることができ、より実際に則した領域の形状を取得することができる。
また、上記で説明したトラクタ1は、以下の構成とされる。即ち、このトラクタ1は、農作業に用いられる作業機3を備える。領域形状取得部62は、前記領域の形状として、作業機3により作業が行われる作業領域Eの形状を特定する。
これにより、作業機3により作業が行われる作業領域Eの形状を簡単に特定することができる。
また、上記で説明したトラクタ1においては、制御部としての制御装置54の経路作成部70は、輪郭登録点記憶部67に記憶された前記複数の位置情報又は補正された前記位置情報のうち、2以上の位置情報に基づいて把握される線形状を基準にして、作業機3により農作業が行われる作業経路を作成可能である。
これにより、2以上の位置情報に基づいて把握される線形状を基準にした作業経路を作成することができ、複雑な形状の作業領域に対しても整然と農作業を行うことができる。