JP2017115179A - 有価物の回収方法 - Google Patents

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征治 上原子
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耕一 増田
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Abstract

【課題】例えばCo、Ni、Mn等の有価物を生産効率良く回収することのできる、有価物の回収方法を提供する。
【解決手段】有価物の回収方法は、廃リチウムイオン電池の粉砕物及び/又はリチウムイオン電池用の正極材を含む有価物回収対象物と、酸性溶液と、を混合することによって、前記有価物回収対象物中の少なくとも正極材料構成金属成分を前記酸性溶液中に溶解させて浸出液を得る酸浸出工程と、前記酸浸出工程で得られた浸出液に塩基性カルシウム化合物を添加してなる添加液のpHをpH4.6〜pH4.9の範囲に調整すると共に添加液の酸化還元電位を200mV〜600mVの範囲に調整することによって沈殿物を生じせしめる沈殿工程と、を含む方法とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、廃リチウムイオン電池及び/又はリチウムイオン電池用の正極材等から、例えばCo、Ni、Mn等の有価物を回収する方法に関する。
本明細書及び特許請求の範囲において、「正極材料構成金属成分」の語は、廃リチウムイオン電池として、
・正極活物質にCo−Ni−Mn三元系材料が使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には、Co、Ni及びMnを意味し、
・正極活物質にコバルト系材料(LiCoO2)が使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には、Coを意味し、
・正極活物質にニッケル系材料(LiNiO2)が使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には、Niを意味し、
・上記3つのタイプの廃リチウムイオン電池を区別なく混合されたものを用いた場合には、Co、Ni及びMnを意味し、
その他の場合(有価物回収対象物としてリチウムイオン電池用の正極材を用いた場合等)においても上記に準ずるものである。
リチウムイオン電池は、軽量にもかかわらず、高電圧、高容量であることから、その用途は、従来の携帯電子機器用のみならず、自動車搭載用、定置電源用と拡大しており、電池の大きさも従来の小型から大型化しつつあり、今後、需要量はさらに増大していくものと見込まれている。
リチウムイオン電池は、ケース、正極、負極、電解液、セパレーター等で構成されている。ケースは、鉄またはアルミニウム等で形成されている。正極は、例えば、アルミニウム箔に、バインダー樹脂を含む正極活物質が塗布されており、前記正極活物質としては、コバルト系材料(LiCoO2等)、ニッケル系材料(LiNiO2等)、三元系材料(LiCoxNiyMnz2等)などが挙げられる。負極は、例えば、銅箔に、バインダー樹脂を含むカーボン系材料が塗布されたものが用いられている。
上記リチウムイオン電池に含まれるCo、Ni、Mn等の各種有価物を効率的に分離回収することができれば、以前は廃棄物として廃棄するしかなかった使用済みリチウムイオン電池が貴重な材料資源となり、これらのリサイクル利用が促進されると期待される。例えば、Co、Ni、Mn等を分離回収できれば、これらをリチウムイオン電池の正極活物質材料等として再利用することができる。
このような廃リチウムイオン電池からCo、Ni、Mnを分離回収する方法としては、Co、Ni及びMnの少なくとも二種からなる金属群Aと不純物とを含有する廃電池、廃正極材又はこれらの混合物から金属群Aを回収する方法であって、廃電池、廃正極材又はこれらの混合物から不純物を除去した後、金属群Aを金属塩の混合物として回収することを含む方法であり、前記不純物として、C、P及びFの少なくとも一種からなる不純物元素群Bと、Fe、Cr、Al及びCuの少なくとも一種からなる不純物元素群Cとが含まれ、第1工程〜第7工程を以下の条件に従って実施する回収方法が公知である(特許文献1参照)。
第1工程:廃電池、廃正極材又はこれらの混合物に対して硫酸浸出し、浸出液を得る工程、
第2工程:不純物元素群B中にPが含まれる場合、浸出液にFe3+供給源を添加して燐酸鉄を沈澱させる工程、
第3工程:不純物元素群C中にFe及びCrの少なくとも一種が含まれる場合、塩基性中和剤を添加し、浸出液のpHを5〜6の範囲に調整して当該金属の中和物を沈殿させる工程、
第4工程:不純物元素群B中にAl及びCuが含まれる場合、浸出液から溶媒抽出によってCu及びAlを溶媒側に分離する工程、
第5工程:不純物元素群B中にFが含まれる場合、浸出液にカルシウム化合物を添加し、pHを5〜8の範囲に調整することでフッ化カルシウムを沈殿させる工程、
第6工程:第2〜5工程の内、少なくとも最後の工程を実施した後に、固液分離することにより不純物元素群Bを浸出液から分離する工程、
第7工程:第6工程で得られた分離液から金属群Aを、金属塩の混合物として回収する工程。
特開2014−156649号公報(請求項5等)
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、少なくともFe、Al、P、Fの不純物元素群を除去する場合には、これら元素群を除去するのに4工程を必要とするものであり、即ちPを除去する第2工程、Feを除去する第3工程、Alを溶媒抽出により分離除去する第4工程、Fをフッ化カルシウムとして沈殿除去する第5工程の合計4工程を要するものであり、生産効率が悪いという問題があった。
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、例えばCo、Ni、Mn等の有価物を生産効率良く回収することのできる、リチウムイオン電池等からの有価物の回収方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]廃リチウムイオン電池の粉砕物及び/又はリチウムイオン電池用の正極材を含む有価物回収対象物と、酸性溶液と、を混合することによって、前記有価物回収対象物中の少なくとも正極材料構成金属成分を前記酸性溶液中に溶解させて浸出液を得る酸浸出工程と、
前記酸浸出工程で得られた浸出液に塩基性カルシウム化合物を添加してなる添加液のpHをpH4.6〜pH4.9の範囲に調整するとともに前記添加液の酸化還元電位を200mV〜600mVの範囲に調整することによって沈殿物を生じせしめる沈殿工程と、を含むことを特徴とする有価物の回収方法。
[2]前記塩基性カルシウム化合物が、炭酸カルシウムである前項1に記載の有価物の回収方法。
[3]前記添加液に、酸素の供給および/または過酸化水素の添加を行うことによって、前記添加液の酸化還元電位を200mV〜600mVの範囲に調整する前項1または2に記載の有価物の回収方法。
[4]前記沈殿工程において、前記添加液の温度を30℃〜60℃の範囲に調整する前項1〜3のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
[5]前記酸浸出工程において、前記酸性溶液として、硫酸水溶液を用いる前項1〜4のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
[6]前記酸浸出工程において、前記有価物回収対象物と、前記酸性溶液と、さらに酸化剤と、を混合することによって、前記浸出液を得る前項1〜5のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
[7]前記酸化剤が過酸化水素である前項6に記載の有価物の回収方法。
[8]前記沈殿物を除去した後の添加液から、溶媒抽出法により銅を有機相に抽出して分離する溶媒抽出工程をさらに含む前項1〜7のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
[9]前記沈殿物を除去した後の添加液と、アルカリ水溶液とを混合することにより、前記添加液中に溶解している正極材料構成金属成分を金属水酸化物として沈殿させて回収する回収工程をさらに含む前項1〜8のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
[10]前記正極材料構成金属成分が、Co、Ni及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である前項1〜9のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
なお、前記「正極材」の語は、正極材の端材も包含する。即ち、本願[1]〜[10]の発明は、前記有価物回収対象物が、正極材の端材のみからなる構成(回収方法)も包含する。
[1]の発明では、廃リチウムイオン電池の粉砕物及び/又はリチウムイオン電池用の正極材を含む有価物回収対象物と、酸性溶液と、を混合するので、有価物回収対象物中の少なくとも正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)を酸性溶液中に溶解させて浸出液を得ることができる。こうして得られた浸出液に塩基性カルシウム化合物を添加した添加液のpHをpH4.6〜pH4.9の範囲に調整するとともに前記添加液の酸化還元電位を200mV〜600mVに調整するので、前記浸出液中に溶解しているFe、Al、P、F等を沈殿物として沈殿させて分離することができる(沈殿工程)。前記有価物回収対象物が少なくともFe、Al、P、Fを含有している場合には、これらFe、Al、P、Fをこの沈殿工程で同時に沈殿させることができるので、有価物回収の生産効率が良い。また、この時、有価物回収対象物中にカーボン(C)が含まれている場合にはカーボン(C)は酸性溶液に溶解せず残留するので、前記沈殿工程でこれらFe、Al、P、F、C等を固形分として分離することができる(固液分離することができる)。沈殿していない溶液側に正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)が溶解しているので、この溶液側から正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)を回収できる。即ち、正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)と、それ以外の成分(Fe、Al、P、F、C等)と、を分離することができる(図2参照)。
[2]の発明では、塩基性カルシウム化合物として炭酸カルシウムを用いるので、前記浸出液中に溶解しているFe、Al、P、F等を沈殿物として十分に沈殿させることができる。従って、沈殿していない溶液側から高純度の正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)を回収できる(図2参照)。
[3]の発明では、前記添加液の酸化還元電位を200mV〜600mVの範囲に調整するのを、酸素の供給および/または過酸化水素の添加により行うので、この過酸化水素を添加した場合にはその残留成分が「水」であるため、酸素の供給および/または過酸化水素の添加により不純物となるものが新たに生じることがなく、従って後の工程に影響を及ぼさないという利点がある。
[4]の発明では、添加液の温度を30℃〜60℃の範囲に調整した状態で沈殿を行わせるので、前記有価物回収対象物が少なくともCo及びNiを含有した構成である場合には、CoとNiの共沈現象を十分に抑制でき、これにより正極材料構成金属成分(CoとNi、或いは、CoとNiとMn等)を高い回収率でもって回収できる。
[5]の発明では、酸性溶液として硫酸水溶液を用いるので、他の酸性溶液を使用する場合と比較してコストを抑制できる。
[6]の発明では、酸浸出工程において、さらに酸化剤も混合することによって浸出液を得るので、有価物回収対象物中の正極材料構成金属成分をこの酸性溶液中に十分に溶解せしめることができ、これにより正極材料構成金属成分をより高い回収率でもって回収できる。
[7]の発明では、酸化剤が過酸化水素であるから、この過酸化水素を混合した場合にはその残留成分が「水」であるため、不純物となるものが新たに生じることがなく、従って後の工程に影響を及ぼさないという利点がある。
[8]の発明では、沈殿物を除去した後の添加液(ろ液)から、溶媒抽出法により銅を有機相に抽出して分離する溶媒抽出工程をさらに設けているから、正極材料構成金属成分をより高い純度で回収できる。
[9]の発明では、正極材料構成金属成分をさらに高い回収率でもって回収できる。
なお、本明細書で記載されている三元系材料「LiCoxNiyMnz2」において、x、y及びzは、それぞれ、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1を充足する値である。
廃リチウムイオン電池に行う前処理の一例を示すフローチャート図である。 本発明に係る有価物の回収方法の一例を示すフローチャート図である。
本発明に係る有価物の回収方法について説明する。この回収方法は、酸浸出工程と、沈殿工程と、を含む。本実施形態では、さらに濃縮工程、溶媒抽出工程、回収工程を含む(図2参照)。
本発明の回収方法において用いる有価物回収対象物(回収方法の適用対象となる有価物回収対象物)は、廃リチウムイオン電池の粉砕物及び/又はリチウムイオン電池用の正極材を含む有価物回収対象物である。即ち、前記有価物回収対象物としては、例えば、廃リチウムイオン電池の粉砕物が使用されてもよいし、リチウムイオン電池用の正極材が使用されてもよいし、或いは、廃リチウムイオン電池の粉砕物及びリチウムイオン電池用の正極材が使用されてもよい。前記リチウムイオン電池用の正極材は、そのまま使用してもよいし、切断、粉砕などにより大きさを小さくして使用してもよい。なお、前記廃リチウムイオン電池は、Co、Ni及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含有する。また、前記リチウムイオン電池用の正極材は、Co、Ni及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含有するものである。
前記廃リチウムイオン電池としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池ケースと、該電池ケース内に収容されたリチウムイオン電池本体部と、を含む構成を例示できる。前記電池ケースとしては、例えば、アルミニウム箔及び樹脂フィルムを含む積層体からなる電池ケースの他、アルミニウム製、鉄製等の金属製電池ケースなどが挙げられる。前記廃リチウムイオン電池としては、その使用用途、大きさ、形状等に制限はなく、例えば、車載用リチウムイオン電池、携帯電子機器用リチウムイオン電池等の各種リチウムイオン電池を使用できる。また、前記廃リチウムイオン電池としては、例えば、使用済みのリチウムイオン電池、製造工程における検査等で不良品とされたリチウムイオン電池、使用されていないが使用期限切れになったリチウムイオン電池等が挙げられる。また、前記廃リチウムイオン電池としては、リチウムイオン電池本体部のみが使用されてもよいし、電池の製造工程等で生じる正極集電体端材、正極材(正極活物質)端材、或いは正極活物質を製造する過程で生じる端材等の端材を含ませてもよい。
また、前記有価物回収対象物として、リチウムイオン電池用の正極材(正極活物質)端材のみを使用してもよい。前記正極材端材としては、特に限定されるものではないが、例えば、製造工程等で出る正極材端材等が挙げられる。
前記リチウムイオン電池本体部としては、特に限定されるものではないが、例えば、正極、負極、セパレーター、電解液(電解質及び有機溶剤を含有)を含む構成等が挙げられる。
前記正極としては、例えば、アルミニウム箔からなる集電体と、該集電体に塗布された正極材(正極活物質)と、を含む構成である。前記正極材としては、有価物を含むものであればよく、例えば、有価物を含有する複合酸化物と、バインダー樹脂(フッ素樹脂等)と、を含む正極材などが挙げられる。前記有価物としては、特に限定されるものではないが、例えば、Co、Ni、Mn等が挙げられる。前記複合酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、コバルト系材料(LiCoO2等)、ニッケル系材料(LiNiO2等)、三元系材料(LiCoxNiyMnz2等)などが挙げられる。
前記負極としては、例えば、銅箔からなる集電体と、該集電体に塗布された負極材(負極活物質)と、を含む構成である。前記負極材としては、例えば、炭素系材料と、バインダー樹脂(フッ素樹脂等)と、を含む負極材などが挙げられる。前記炭素系材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラファイト、ハードカーボン、黒鉛等が挙げられる。
前記電解液としては、例えば、電解質である六フッ化リン酸リチウムおよび炭酸エステル系溶剤を含有する電解液等が挙げられる。
まず、上記酸浸出工程の前に、廃リチウムイオン電池等の有価物回収対象物に対して次のような前処理を行うのが好ましい(図1参照)。有価物回収対象物として廃リチウムイオン電池を使用した場合を例に説明する。
まず、廃リチウムイオン電池を焼成する(焼成工程)。このような焼成を行うことにより、廃リチウムイオン電池に含まれる樹脂分(セパレーター、バインダー樹脂等)などを分解して除去することができる。前記焼成の際の焼成温度は、500℃〜1000℃に設定するのが好ましい。500℃以上に設定することで樹脂分等を十分に分解除去できると共に1000℃以下に設定することで焼成コストを低減できると共に焼成炉への負担を軽減できる。
次に、前記焼成工程を経た廃リチウムイオン電池を粉砕する(粉砕工程)。この粉砕工程では、前記焼成工程で除去されずに残存した材料を粉砕して粉砕物を得る。前記粉砕は、打撃粉砕機または剪断粉砕機を用いて行うのが好ましい。前記打撃粉砕機としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハンマーミルを例示できる。また、前記剪断粉砕機としては、特に限定されるものではないが、例えば、カッターミルを例示できる。
前記打撃粉砕機または前記剪断粉砕機において使用するメッシュスクリーンの開口孔のサイズは5mm〜20mmであるのが好ましい。前記メッシュスクリーンの開口孔の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、円形、矩形などが挙げられる。
次に、前記粉砕工程で得られた粉砕物を篩にかけることにより、前記篩の上に残った銅、アルミニウムと、前記篩を通過して落下した篩下物と、を分離する(篩分離工程)。前記篩の上に残ったCuは、負極集電体由来のCuであり、篩の上に残ったAlは、正極集電体由来のAlである。前記篩下物は、正極活物質由来のCo、Ni及びMnと、負極活物質由来のカーボン(C)とを含む篩下物である。リチウムイオン電池において、正極活物質材料(Co、Ni、Mn等)は粉粒体であるのに対し、集電体としての銅材、アルミニウム材は、いずれもシート状であるので、上記粉砕処理を行うと、粉砕物は互いにサイズが異なったものになるので、このような篩により分離することができる。
前記篩分離工程において、前記篩としては、特に限定されるものではないが、篩機を用いるのが好ましい。前記篩機としては、特に限定されないが、例えば、振動式篩機、風力式篩機等が挙げられる。中でも、振動式篩機を用いるのが好ましい。前記篩の目開きは0.8mm〜3.0mmであるのが好ましい。0.8mm未満では、篩の上に正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)が残りやすくなり、3.0mmを超えると、銅粉砕物が篩の下に落下しやくなるので、好ましくない。篩上物(Cu等)と、篩を落下する篩下物(Co、Ni、Mn等)との分離性を向上させる観点から、篩の目開きは0.8mm〜3.0mmに設定するのが好ましい。
次に、前記篩分離工程で得られた篩下物に対して磁力選別を行うことにより、非磁着物と磁着物とを分離する(磁選工程)。例えば、図1に示すように、負極活物質由来のカーボンを含む非磁着物と、Co、Ni及びMnを含む磁着物と、を分離することができる。例えば、正極活物質に三元系材料(LiCoxNiyMnz2)が使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には「Co、Ni及びMnを含む磁着物」が得られるが、正極活物質にコバルト系材料(LiCoO2)が使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には「Coを含む磁着物」が得られ、正極活物質にニッケル系材料(LiNiO2)が使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には「Niを含む磁着物」が得られる。また、上記3つのタイプの廃リチウムイオン電池を区別なく混合されたものを焼成工程に供給した場合には、「Co、Ni及びMnを含む磁着物」が得られる。
また、負極活物質としてチタン酸リチウムが使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には、前記非磁着物として、「チタン化合物を含む非磁着物」が得られる。
前記磁力選別を行うための磁力選別機としては、特に限定されるものではないが、例えば、ドラム型磁力選別機、吊り下げ型磁力選別機等が挙げられる。
このようにして焼成工程、粉砕工程、篩分離工程、磁選工程をこの順に適用することによって、図1に示すように、廃リチウムイオン電池から、例えば「Al」、「Cu」、「C(カーボン)」、「Co、Ni、Mn」をそれぞれ分離して回収することができる。即ち、上述した前処理を行うことによって、正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)と、それ以外の他の成分(Cu、Al、C)とを粗分離することができる。
なお、図1において、磁着物、非磁着物、篩上物等として具体的に記載した物質(括弧内等に記載した物質名)は、前記廃リチウムイオン電池として、「正極は、アルミニウム箔からなる集電体に正極活物質のCo−Ni−Mn三元系材料(LiCoxNiyMnz2)が塗布された構成であり、負極は、銅箔からなる集電体に負極活物質のカーボンが塗布された構成であり、電解液としてLiPF6を含むものを用いた構成である廃リチウムイオン電池」を用いた場合における具体的回収物を例示したものに過ぎず、特にこのような場合に限定されるものではなく、上述したとおり、廃リチウムイオン電池の電池本体部の構成(使用材料)等によって具体的回収物質は異なる。
次に、上記磁選工程で得られた磁着物(電池粉砕物)と、酸性溶液と、を混合して撹拌を行うことによって、前記粉砕物中の少なくとも正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)を酸性溶液中に溶解させて浸出液を得る(酸浸出工程)(図2参照)。なお、この酸浸出工程において、上記磁選工程で得られた磁着物に代えて、例えば、廃リチウムイオン電池を単に粉砕して得た粉砕物(上述した一連の前処理がなされることなく単に粉砕して得られた電池粉砕物)を使用してもよいし、或いは、前記リチウムイオン電池用の正極材(正極材端材を含む)を使用してもよい(正極材は、そのまま使用してもよいし、切断、粉砕等により大きさを小さくして使用してもよい)。以下、上記磁着物(電池粉砕物)を使用した場合を例にして説明する。
前記酸浸出工程において酸性溶液を加温して酸浸出を行うのが好ましい。中でも、酸浸出工程において酸性溶液の温度を60℃〜90℃の範囲に設定するのがより好ましい。60℃以上とすることで電池粉砕物中の正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)を酸性溶液中に十分に溶解させた浸出液を得ることができると共に、90℃以下とすることで加温による酸性溶液の揮散(蒸発)を抑制できる。また、90℃を超えると、酸浸出に使用可能な耐酸性容器の種類も限定される。前記酸浸出工程において酸性溶液の温度を70℃〜80℃の範囲に設定するのがより一層好ましい。
前記酸性溶液としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液等が挙げられる。中でも、前記酸性溶液としては硫酸水溶液を用いるのが好ましい。
前記酸性溶液における酸(例えば硫酸、塩酸、硝酸等)の濃度は、2モル/L〜6モル/Lに設定するのが好ましい。濃度が2モル/L以上であることで、正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)を酸性溶液中に十分に溶解させることができると共に、濃度が6モル/L以下であることで、酸性溶液中に浸出した正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)が放冷時に析出してくるのを防止できる。前記酸性溶液として硫酸水溶液を用いる場合には、この硫酸水溶液における硫酸濃度は3.0モル/L〜5.0モル/Lに設定するのが好ましい。
前記酸浸出工程において、電池粉砕物と酸性溶液とを混合する際の固液比は5.0%〜20%に設定するのが好ましい。固液比を5.0%以上にすることで正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)の浸出の効率を向上させることができると共に固液比を20%以下にすることで酸性溶液中に浸出した正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)が放冷時に析出してくるのを防止できる。なお、前記固液比は、電池粉砕物の質量を「E」とし、酸性溶液の質量を「G」としたとき、
固液比(%)=(E/G)×100
上記計算式で算出される値(比)である。
前記酸浸出工程において、電池粉砕物(上記磁選工程で得られた磁着物等)と、酸性溶液と、酸化剤と、を混合して撹拌を行うようにしてもよい。酸化剤を添加することにより、電池粉砕物中の正極材料構成金属成分を酸性溶液中により十分に溶解せしめることができる。前記酸化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素等が挙げられる。中でも、分解後に水や酸素になり、その後の工程に与える影響の少ない過酸化水素を用いるのが好ましい。
次に、前記酸浸出工程で得られた浸出液に塩基性カルシウム化合物を添加してなる添加液を、該添加液のpHをpH4.6〜pH4.9の範囲に調整するとともに前記添加液の酸化還元電位を200mV〜600mVに調整した状態で、撹拌することによって沈殿物を生じせしめる(沈殿工程)。前記添加液のpHをpH4.6〜pH4.9の範囲に調整するのに前記塩基性カルシウム化合物の添加だけでpH調整してもよいし、或いは、前記塩基性カルシウム化合物に加えて更にアルカリ水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液等)を添加してpH調整するようにしてもよい。
上記沈殿工程では、浸出液に塩基性カルシウム化合物を添加した添加液を、pH4.6〜pH4.9の状態で、かつ酸化還元電位を200mV〜600mVに調整した状態で、撹拌を行うので、前記浸出液中に溶解しているFe、Al、P、F等を沈殿物として沈殿させて分離することができる。即ち、前記電池粉砕物が少なくともFe、Al、P、Fを含有している場合には、これらFe、Al、P、Fをこの沈殿工程で同時に沈殿させることができるので、有価物回収の生産効率が良い。また、この時、電池粉砕物中にカーボン(C)が含まれている場合にはカーボン(C)は酸性溶液中に溶解せず残留するので、前記沈殿工程においてこれらFe、Al、P、F、C等を固形分として分離することができる(固液分離することができる)(図2参照)。なお、沈殿していない溶液(回収ろ液)中に正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)が溶解している。
前記塩基性カルシウム化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。中でも、前記塩基性カルシウム化合物としては、pH調整が容易でかつ低コストである点で、炭酸カルシウムを用いるのが、好ましい。なお、炭酸カルシウムを添加する場合には、炭酸カルシウムの粉末を添加してもよいが、pH調整をより容易化できる点で、炭酸カルシウムをスラリーとして添加するのが好ましい。炭酸カルシウムをスラリーとして添加する場合において、添加液中の炭酸カルシウム濃度は19w/v%〜21w/v%に設定するのが好ましい。
前記沈殿工程において添加液のpHをpH4.6〜pH4.9の範囲に調整した状態で撹拌を行う。pH4.6〜pH4.9の範囲に調整することで、Fe、Al、P、F等を共沈殿させることができる(Fe、Al、P、F等の共沈殿物を得ることができる)(図2参照)。前記添加液のpHがpH4.6より低いと、Fe、Al、P等の共沈殿物の回収率が低下して、溶液中にFe、Al、P等の不純物が残留する量が増える(後述する比較例1参照)。また、前記添加液のpHがpH4.9より高いと、Co、Ni、Mn等の共沈現象が生じやすく、このために溶液(ろ液)側での正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)の回収率が低下する(後述する比較例2参照)。中でも、前記沈殿工程において添加液のpHをpH4.7〜pH4.8の範囲に調整するのが好ましい。
前記沈殿工程において、前記添加液の酸化還元電位を200mV〜600mV(vs. 銀−塩化銀電極)に調整した状態で撹拌を行う。200mV未満になると、Fe、P等の共沈殿物の回収率が低下して、溶液中にFe、P等の不純物が残留する量が増える(後述する比較例3参照)。また、600mVを超えると、正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)の回収率が低下する(後述する比較例4参照)。中でも、前記添加液の酸化還元電位を205mV〜550mV(vs. 銀−塩化銀電極)の範囲に調整した状態で撹拌を行うのが好ましく、さらに210mV〜500mV(vs. 銀−塩化銀電極)の範囲に調整した状態で撹拌を行うのがより好ましい。
このような添加液の酸化還元電位の調整は、前記添加液に、例えば、酸素の供給および/または過酸化水素の添加を行うことによって行うことができるが、特にこのような手法に限定されるものではない。前記酸素の供給は、前記添加液中に空気の供給を行うことで酸素供給するようにしてもよい。また、前記過酸化水素の添加は、例えば、前記添加液に過酸化水素水を混合することにより行う。
前記沈殿工程において、前記添加液の温度を30℃〜60℃の範囲に調整した状態で前記撹拌を行うのが好ましい。このような温度範囲に設定することにより、Co、Ni、Mn等の共沈を防止できて、溶液(ろ液)側でのCo、Ni、Mn等の回収率を向上させることができる。中でも、前記添加液の温度を35℃〜55℃の範囲に調整した状態で前記撹拌を行うのがより好ましく、40℃〜50℃の範囲に調整するのが特に好ましい。また、前記添加液の撹拌は、0.5時間〜3時間行うのが好ましい。
前記沈殿工程で得られた固形物(Fe、Al、P、Fを含む沈殿物及び前記酸浸出工程で溶解せずに残留したカーボン(C)等を含む固形物)と、溶液(ろ液)との分離方法としては、例えば、フィルタープレス法、ドラムフィルター法、スクリューデカンタ法などが挙げられる。このような固液分離法により、Fe、Al、P、F、C等を含む固形物を速やかに捕捉することができる。また、固形物に吸着しているCo、Ni、Mn等は、例えば、純水を用いたデカンテーション又は純水を用いたリパルプ洗浄を行うことにより、溶液(ろ液)側に回収できる。
なお、前記沈殿工程で得られた固形物は、Fe、Al、P、F、C等を含む固形物であり、例えば、精製、分離等を経て各種材料として再利用できる。
前記沈殿工程を経て得た溶液(ろ液)中のCo、Ni、Mn等の濃度が希薄である場合には、以後の工程、処理を効率的に進めるために、次の溶媒抽出工程に移行する前に、回収ろ液の濃縮を行うのが好ましい(濃縮工程)(図2参照)。即ち、回収ろ液に対して、Co、Ni、Mn等の濃度を高めるための濃縮処理を行うのが好ましい。
濃縮の手法の一例を説明する。前記回収ろ液にアルカリ水溶液を添加し、pHをpH7〜pH10に調整して、沈殿物(Co、Ni、Mn等含有)を生じせしめ、この沈殿物をろ過により回収し、該沈殿物を純水で洗浄した後、沈殿物を酸性水溶液で再溶解させて濃縮液を得る方法を例示できる。酸性水溶液の量は、沈殿物を再溶解させるのに必要な量程度の少量にとどめるのがよい。また、純水で洗浄後の沈殿物を乾燥させてから再溶解させてもよい。前記アルカリ水溶液としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等が挙げられる。再溶解のための前記酸性水溶液としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液等が挙げられる。
なお、前記回収ろ液にアルカリ水溶液を添加し、pHをpH7〜pH10に調整して、沈殿物(Co、Ni、Mn等含有)を生じせしめてこの沈殿物をろ過により回収した際に、溶液側(ろ液中)にはLiを含有しているので、該溶液(ろ液)に対して精製、分離等を適用することによりLiを例えばリチウムイオン電池の正極活物質の材料等として再利用できる。また、前記濃縮工程において、沈殿物を純水で洗浄するが、この洗浄に使用した後の水の中にもLiを含有するので、この洗浄後の水も前記ろ液に混合して(又は単独で)、精製、分離等を適用することによりLiを例えばリチウムイオン電池の正極活物質の材料等として再利用できる。
なお、濃縮手法の他の例としては、例えば、前記回収ろ液から、少量の抽出剤(例えばリン酸系抽出剤等)を用いてCo、Ni、Mn等を溶媒抽出した後、該抽出剤液から少量の酸性水溶液を用いてCo、Ni、Mn等を水相に移行せしめる(剥離せしめる)ことによって濃縮液(水相液)を得る方法等が挙げられる。なお、前記回収ろ液から少量の抽出剤(有機相)でCo、Ni、Mn等を抽出した後の水相液中にはLiを含有するので、該水相液に対して精製、分離等を適用することによりLiを例えばリチウムイオン電池の正極活物質の材料等として再利用できる。
上記濃縮手法は、いずれも例示したものに過ぎず、特にこのような濃縮手法に限定されるものではない。
次に、前記濃縮液に対して溶媒抽出法を適用することにより、Cuを含む有機相と、Co、Ni、Mnを含む水相とを分離し、前記有機相からCu等を分離回収することができる(溶媒抽出工程)(図2参照)。例えば、前記濃縮液を2.0モル/L〜18モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH2.0〜pH3.0に調整し、回分式または連続式溶媒抽出法を用いて、Cuを含む有機相と、Co、Ni、Mnを含む水相と、に分離する。
前記溶媒抽出法で使用する抽出剤(有機相)としては、特に限定されるものではないが、例えば、9,9−ジメチルデカン酸(商品名「Versatic acid 10」;Shell社製)等のカルボン酸等が挙げられ、このような抽出剤を炭化水素系溶剤で予め希釈したもの等を使用することができる。前記炭化水素系溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エクソンモービル社製「アイソパーM(商品名)」、エクソンモービル社製「ソルベッソ150(商品名)」等が挙げられる。前記溶媒抽出における有機相の体積/水相の体積=1.0〜3.0に設定するのが好ましい。また、pH調整に関しては、2.0モル/L〜18モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液により平衡pH4.3〜pH5.0に調整するのが好ましい。平衡pH5.0以下にすることで、Co、Niが有機相に抽出される率を十分に低減できる(抽出ロスを少なくできる)と共に、平衡pH4.3以上にすることで、Cu、Fe、Alの有機相への抽出率を向上させることができる。前記溶媒抽出法での抽出回数は、残留するCu、Fe、Al濃度に応じて決めればよく、例えば、回分式であれば抽出回数を3回〜5回とするのがよく、連続式であれば4段〜6段とするのがよく、このような回数でCu、Fe、Al等を有機相に十分に回収することができる(図2参照)。
次に、前記溶媒抽出工程を経て得られた水相液(Co、Ni、Mn等を含む)から正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn等)を回収する(回収工程)。例えば、前記水相液(Co、NiおよびMnのうちいずれか少なくとも1種以上の金属を含む水相)に、目的とする沈殿物(水酸化物)の組成に応じて(即ち正極活物質の組成に応じて)、硫酸金属塩(硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸マンガン等)などの金属塩を所望のモル比率になるように溶解せしめ、公知のアルカリ沈殿法(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液等のアルカリ性水溶液を添加して沈殿させる等の手法)により、水酸化物(前駆物質)を沈殿生成せしめることにより、水酸化物(Co、Ni、Mn等を含む)を回収できる。
上記水酸化物から正極活物質を得ることができる。例えば、前記水酸化物と、炭酸リチウム又は水酸化リチウムとを混合し、700℃〜800℃の温度で熱処理することにより、リチウムイオン電池の正極活物質を得ることができる(正極活物質生成工程)。このようにして得られる正極活物質は、前駆物質である前記水酸化物の含有金属組成により異なる。例えば、水酸化物がCo、Ni、Mnを含む金属複合水酸化物である場合には、正極活物質としてLiCoxNiyMnz2が得られ、水酸化物がCoを含む場合には、正極活物質としてLiCoO2が得られ、水酸化物がNiを含む場合には、正極活物質としてLiNiO2が得られる。また、前駆物質である水酸化物に、炭酸リチウム又は水酸化リチウムと共に、他の金属(Co、Ni、Mn、Li以外の他の金属)を添加して熱処理を行って正極活物質を得てもよい。
換言すれば、本発明の回収方法の酸浸出工程において、例えば、廃リチウムイオン電池として、
・正極活物質に三元系材料(LiCoxNiyMnz2)が使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には、前記回収工程で「Co、Ni及びMnを含む金属複合水酸化物」が得られ、
・正極活物質にコバルト系材料(LiCoO2)が使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には、前記回収工程で「Coを含む水酸化物」が得られ、
・正極活物質にニッケル系材料(LiNiO2)が使用された廃リチウムイオン電池を用いた場合には、前記回収工程で「Niを含む水酸化物」が得られ、
・上記3つのタイプの廃リチウムイオン電池を区別なく混合されたものを酸浸出工程で用いた場合には、前記回収工程で「Co、Ni及びMnを含む金属複合水酸化物」が得られる。なお、酸浸出工程において、有価物回収対象物として廃リチウムイオン電池に代えて「リチウムイオン電池用の正極材」を用いた場合にも上記と同様である。
なお、図2において、沈殿物、回収物等として具体的に記載した物質は、前記廃リチウムイオン電池として、「正極は、アルミニウム箔からなる集電体に正極活物質のCo−Ni−Mn三元系材料(LiCoxNiyMnz2)が塗布された構成であり、負極は、銅箔からなる集電体に負極活物質のカーボンが塗布された構成であり、電解液としてLiPF6を含むものを用いた構成である廃リチウムイオン電池」を用いた場合における具体的回収物を例示したものに過ぎず、特にこのような場合に限定されるものではなく、上述したとおり、廃リチウムイオン電池の電池本体部等の構成(使用材料)等によって具体的回収物質は異なる。また、有価物回収対象物として前記廃リチウムイオン電池に代えて「リチウムイオン電池用の正極材」を用いた場合においてもその正極材の構成(使用材料)等によって具体的回収物質は異なる。
なお、本発明の回収方法において、廃リチウムイオン電池として、上記3つのタイプの廃リチウムイオン電池(正極活物質がCo−Ni−Mn三元系材料、正極活物質がCo系材料、正極活物質がNi系材料の3つのタイプ)を区別なく混合されたものを酸浸出工程で使用する場合に、その混合比としては、いかなる混合比であってもよい。上記3つのタイプの廃リチウムイオン電池のうちのいずれか2つのタイプの廃リチウムイオン電池を混合したものを使用する場合においても、その混合比としては、いかなる混合比を採用してもよい。また、有価物回収対象物として廃リチウムイオン電池に代えて「リチウムイオン電池用の正極材」を用いた場合にも上記と同様である(混合比としては、いかなる混合比を採用してもよい)。
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<実施例1>
(前処理工程)
使用済みの廃リチウムイオン電池(車載用;縦11cm×横7.9cm×厚さ1.5cmの略直方体形状;最小対角線8.0cm;280g)の250個分70kgを、電気加熱炉内にて加熱温度800℃で30分間加熱処理を行うことによって、廃リチウムイオン電池中の樹脂製セパレーター、バインダー樹脂、電解液等を分解除去した。電気加熱炉内に残存した残存物51.9kgを次の粉砕工程に供給する。
なお、前記廃リチウムイオン電池は、正極は、アルミニウム箔からなる集電体に正極活物質のCo−Ni−Mn三元系材料(LiCo0.68Ni0.16Mn0.162)が塗布されたものであり、負極は、銅箔からなる集電体に負極活物質のカーボンが塗布されたものであり、電解液としてLiPF6を含むものを用い、これら正極、負極、電解液を含む電池本体部が、アルミニウム材を含む電池ケースで包装されてなる構成のものである。
前記残存物51.9kgをカッターミル(メッシュスクリーンの開口孔のサイズが13mm)を用いて粉砕することによって粉砕物を得た。次に、前記粉砕物を、篩の目開きが1.0mmの振動式分級装置(振動式篩機)で篩上物と篩下物とに分離した。篩上物は、Cu含有率が28.3質量%であり、精製等を経て銅製品材料として利用可能である。
次に、篩下物をドラム型磁力選別機を使用して非磁着物と磁着物とに分離した。非磁着物としては、カーボンの含有率が37.8質量%の非磁着粉が得られた。また、磁着物としては、Co含有率が12.2質量%、Ni含有率が3.2質量%、Mn含有率が2.3質量%の磁着粉が得られた。なお、前記非磁着粉は、精製などを経てカーボン製品材料として利用可能である。
上記磁着粉中の各含有成分の含有率(質量%)を表1に示す。なお、こうして得られた磁着粉(電池粉砕物)は、この実施例1で用いるのみならず、後述する実施例2〜11および比較例1〜4においても使用した。従って、後述する実施例2〜11および比較例1〜4で使用した磁着粉(電池粉砕物)の各含有成分の含有率(質量%)は、表1に示した数値である。なお、表1において、Co、Ni、Mn等の含有率の合計値が約32.8質量%であるが、残り67.2質量%は、O(酸素)、H(水素)、N(窒素)等由来であるものと推定される。
Figure 2017115179
(酸浸出工程)
上記前処理工程を経て得られた磁着粉(電池粉砕物)1.5kgを、80℃に加温された希硫酸水溶液5.0Lが入った浸出槽に投入した。この時、希硫酸水溶液を撹拌しながら、磁着粉(電池粉砕物)を徐々に投入した。次に、前記浸出槽内の水溶液に、濃度10モル/Lの過酸化水素水5.0Lを徐々に添加することによって、電池粉砕物、硫酸及び過酸化水素(酸化剤)を含有する酸性水溶液を得た。この酸性水溶液中の硫酸濃度は4.0モル/Lであり、過酸化水素濃度は1.2モル/Lであった。この酸性水溶液を80℃で5時間撹拌を行うことによって、前記電池粉砕物中の少なくとも正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn)を酸性水溶液中に溶解させて浸出液を得た。
(沈殿工程)
得られた浸出液10Lに、20w/v%の炭酸カルシウムスラリー液(水)を添加していくことによりpHをpH4.72〜pH4.78に調整して添加液を得、該添加液にさらに10モル/Lの過酸化水素水を添加していくことにより添加液の酸化還元電位を220mV(vs.Ag/AgCl)に調整し、前記添加液の温度を45℃に調整した状態で1時間撹拌を行うことによって沈殿物を生じせしめた。前記沈殿物は、アルミニウム水酸化物、鉄水酸化物、銅水酸化物、硫酸カルシウム、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、カルシウムフッ化物、カーボン等を含有する。前記沈殿物を含む添加液をブフナー漏斗を用いて吸引ろ過することにより、ろ液(溶液)と沈殿物(固形物)とを分離した。
次に、前記沈殿物(固形物;ケーキ)を純水を用いて複数回デカンテーション洗浄を行うことによって、前記ケーキ(沈殿物)に吸着しているCo、Ni、Mn等を液中に回収し、この洗浄回収液を前記ろ液と混合して、回収ろ液を得た。この沈殿工程において、前記沈殿物(ケーキ)を回収除去した。
前記回収ろ液中の各成分(各元素)の濃度(g/L)を表2に示す。この結果から、前記回収ろ液において、Al、Fe、P、Fを略完全に分離除去できていることがわかる。即ち、これらAl、Fe、P、F等を前記沈殿物(ケーキ)として分離除去できたことがわかる(図2参照)。
Figure 2017115179
(濃縮工程)
前記回収ろ液は、上記複数回のデカンテーション洗浄による洗浄回収液を前記ろ液と混合して得られたものであり、前記浸出液10Lに対して、回収ろ液は57Lの量に達していた。即ち、前記回収ろ液におけるCo、Ni、Mn等の含有濃度が低下している(希釈されている)。そこで、回収ろ液の濃縮を行った。まず、回収ろ液を槽に投入し撹拌を行いながら濃度9モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えていくことによって回収ろ液のpHをpH9.5に調整し、さらに撹拌を行うことによって、Co、Ni、Mn等を水酸化物として沈殿させ、この沈殿物(水酸化物)をブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行うことによって液と沈殿物(水酸化物)に分離した。分離した沈殿物(水酸化物)に対し純水を用いたデカンテーション洗浄を3回行った後、洗浄後の沈殿物(水酸化物)を105℃で乾燥せしめ水分を十分に除去した後、この乾燥沈殿物に、濃度9モル/Lの硫酸水溶液2.0Lおよび濃度10モル/Lの過酸化水素水溶液200mLを添加して沈殿物を全て溶解せしめて2.2Lの濃縮液を得た。得られた濃縮液中の各成分(各元素)の濃度(g/L)を表3に示す。表2と表3の対比から、濃縮液では、回収ろ液と比べて、Co、Ni、Mn等の濃度が大幅に増大していることがわかる。
Figure 2017115179
(溶媒抽出工程)
前記濃縮液を回分式溶媒抽出槽に移した後、該濃縮液に濃度18モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりpHをpH2.8に調整した。pH2.8に調整された前記濃縮液2.3Lに対して、炭化水素系溶剤(商品名「アイソパーM」;エクソンモービル社製)で希釈された濃度1.0モル/Lの9,9−ジメチルデカン酸(商品名は「Versatic acid 10」)液4.6Lを加えることで、有機相/水相=2.0(体積比)に設定すると共に、平衡pH4.7になるように2.0モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加した。次に、撹拌速度400rpmで30分間撹拌を行った後、約5分間静置し、有機相と水相とに分離せしめ、有機相をフレッシュな(新品の)濃度1.0モル/Lの9,9−ジメチルデカン酸(商品名は「Versatic acid 10」)液に置換する、という一連の抽出操作を3回繰り返すことによって、有機相中に主にCuの他、Al、Fe等を抽出した後、上下に分かれたこの有機相(上相)と水相(下相)とを分離した。即ち、前記水相液は、Co、Ni、Mn等を含有しているので、このような溶媒抽出工程を経て、リチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収することができた。なお、2.4Lの水相液が得られた。
上述した一連の抽出操作を3回繰り返した後の水相液(正極材料用有価物含有水相液)中の各成分(各元素)の濃度(g/L)を表4に示す。表3と表4の対比から、正極材料用有価物含有水相液において、さらにCu、Al、Feを分離除去できていることがわかる。即ち、Co、Ni、Mnの正極材料用有価物を含有すると共に、Cu、Al、Fe等の不純物の含有がより低減された正極材料用有価物含有水相液が得られていることがわかる。
なお、上述した一連の抽出操作を3回繰り返した後の有機相に対し、剥離剤として濃度3.0モル/Lの硫酸水溶液を用いて有機相/水相=1.0(体積比)で撹拌速度400rpmで抽出を行うことによって前記有機相中の金属成分(Cu、Fe、Al等)を水相に移行せしめ(剥離せしめ)ることで、この有機相(9,9−ジメチルデカン酸)を抽出操作のための新たな有機相として再利用できる。
<実施例2>
沈殿工程において、20w/v%の炭酸カルシウムスラリー液(水)を添加していくことによりpHをpH4.62〜pH4.68に調整した添加液を得た以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<実施例3>
沈殿工程において、20w/v%の炭酸カルシウムスラリー液(水)を添加していくことによりpHをpH4.82〜pH4.88に調整した添加液を得た以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<比較例1>
沈殿工程において、20w/v%の炭酸カルシウムスラリー液(水)を添加していくことによりpHをpH4.47〜pH4.53に調整した添加液を得た以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<比較例2>
沈殿工程において、20w/v%の炭酸カルシウムスラリー液(水)を添加していくことによりpHをpH4.97〜pH5.03に調整した添加液を得た以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<実施例4>
沈殿工程において、添加液に10モル/Lの過酸化水素水を添加していくことにより添加液の酸化還元電位を250mV(vs.Ag/AgCl)に調整した状態で添加液の撹拌を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<実施例5>
沈殿工程において、添加液に10モル/Lの過酸化水素水を添加していくことにより添加液の酸化還元電位を300mV(vs.Ag/AgCl)に調整した状態で添加液の撹拌を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<実施例6>
沈殿工程において、添加液に10モル/Lの過酸化水素水を添加していくことにより添加液の酸化還元電位を470mV(vs.Ag/AgCl)に調整した状態で添加液の撹拌を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<比較例3>
沈殿工程において、添加液に10モル/Lの過酸化水素水を添加していくことにより添加液の酸化還元電位を180mV(vs.Ag/AgCl)に調整した状態で添加液の撹拌を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<比較例4>
沈殿工程において、添加液に10モル/Lの過酸化水素水を添加していくことにより添加液の酸化還元電位を750mV(vs.Ag/AgCl)に調整した状態で添加液の撹拌を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<実施例7>
沈殿工程において、添加液の温度を35℃に調整した状態で添加液の撹拌を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<実施例8>
沈殿工程において、添加液の温度を55℃に調整した状態で添加液の撹拌を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<実施例9>
添加する塩基性カルシウム化合物として、炭酸カルシウムに代えて、酸化カルシウムを使用した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<実施例10>
添加する塩基性カルシウム化合物として、炭酸カルシウムに代えて、水酸化カルシウムを使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。
<実施例11>
溶媒抽出工程を、回分式溶媒抽出法に代えて、4段のミキサーセトラー槽を用いた連続式溶媒抽出法で実施した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン電池の正極材料用有価物含有水相液を回収した。なお、溶媒抽出は、有機相/水相=2.0(体積比)に設定して実施した。
なお、上記実施例1〜11及び比較例1〜4において、添加液の酸化還元電位を調整する際の酸化還元電位の測定は、次のようにして行った。即ち、株式会社堀場製作所製の電位差測定装置の参照電極(銀/塩化銀電極)と作用電極(白金電極)を前記添加液中に配置して添加液の撹拌を行っている状態で添加液の酸化還元電位(mV)を測定した。
上記実施例1〜11および比較例1〜4における一連の抽出操作を行って得られた「正極材料用有価物含有水相液」中の各成分(各元素)の濃度(g/L)を表4にまとめて示した。なお、表4において、例えば、「<0.0001」の表記は、濃度が「0.0001(g/L)未満」であることを意味する。表2、3、5においても同様である。
上記実施例1〜11及び比較例1〜4で得られた各種液(回収ろ液、濃縮液、水相液)における各成分(各元素)の濃度(g/L)は、F、Cを除く他の成分(元素)は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いた分析により算出した値であり、Fはイオンクロマトグラフ法により算出した値であり、Cは全有機炭素計を用いた分析により算出した値である。
また、前記磁着粉における各成分(各元素)の含有率(質量%)については、F、Cを除く他の成分(元素)は、王水分解して高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いた分析、Fは王水分解して蒸留したものをイオンクロマトグラフ法により分析、Cは酸素気流中燃焼(高周波加熱炉方式)−赤外線吸収法による分析をそれぞれ行って算出したものである。
Figure 2017115179
表から明らかなように、本発明に係る実施例1〜11の回収方法によれば、正極材料構成金属成分(Co、Ni、Mn)と、Fe、Al、P、F、C等と、を分離して回収することができる。更に、沈殿工程においてFe、Al、P、F等を同時に沈殿させることができるので、即ち1つの工程の実施でFe、Al、P、F等を同時に沈殿させて分離できるので、本発明の回収方法は、有価物回収の生産効率が良い。
これに対し、沈殿工程での添加液のpH調整値が、本発明で規定する範囲より小さい比較例1では、得られた正極材料用有価物含有水相液におけるFe、Al、Pの不純物の含有率が増大する。また、沈殿工程での添加液のpH調整値が、本発明で規定する範囲より大きい比較例2では、得られた正極材料用有価物含有水相液での正極材料用有価物(Co、Ni、Mn)の回収率が低い。また、沈殿工程での添加液の酸化還元電位の調整値が、本発明で規定する範囲より小さい比較例3では、得られた正極材料用有価物含有水相液におけるFe、Pの不純物の含有率が増大する。また、沈殿工程での添加液の酸化還元電位の調整値が、本発明で規定する範囲より大きい比較例4では、得られた正極材料用有価物含有水相液での正極材料用有価物(Co、Ni、Mn)の回収率が低いものとなる。
[正極材料用有価物の回収例]
上記実施例1で溶媒抽出工程を経て得られた正極材料用有価物含有水相液(Co、Ni、Mn等を含有)におけるCo、Ni、Mnの比率が所望の比率(リチウムイオン電池の正極材料として再利用することを考慮した比率)になるように、該水相液に硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸マンガンを添加して濃度調整を行った後、該水相液に水酸化ナトリウム水溶液を添加することで水相液のpHをpH10.5に調整し、30分間撹拌を行うことによって水酸化物(コバルト水酸化物、ニッケル水酸化物、マンガン水酸化物等)の沈殿物を得た。この沈殿物(水酸化物)をブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行うことによって液と沈殿物(水酸化物)に分離した。分離した沈殿物(水酸化物)に対し、濃度1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いたデカンテーション洗浄を1回行い、次いで純水を用いたデカンテーション洗浄を3回行うことによって、沈殿物(ケーキ)に吸着しているナトリウム、硫黄を除去した。デカンテーション洗浄後の沈殿物(水酸化物)を110℃で乾燥せしめて水分を十分に除去して、リチウムイオン電池の正極材料用有価物を回収した(回収工程)。この回収物(乾燥された水酸化物沈殿物)中の各含有成分(各元素)の含有率(質量%)を表5に示す。なお、表5において、Co、Ni、Mn等の含有率の合計値が約63.3質量%であり、残り約36.7質量%の殆どは水酸基(OH)由来である。
Figure 2017115179
このようにして、使用済みの廃リチウムイオン電池から、Co、Ni、Mnの比率がリチウムイオン電池の正極材料として再利用することを考慮した比率になっている「リチウムイオン電池の正極材料用有価物」を回収することができた。
本発明に係る有価物の回収方法において、有価物回収対象物としての「廃リチウムイオン電池」としては、例えば、使用済みのリチウムイオン電池、製造工程における検査等で不良品とされたリチウムイオン電池、使用されていないが使用期限切れになったリチウムイオン電池等が挙げられるが、特にこれら例示のものに限定されるものではない。また、有価物回収対象物としての「リチウムイオン電池用の正極材」としては、特に限定されるものではないが、例えば、製造工程等で出る正極材端材等が挙げられる。
本発明に係る有価物の回収方法は、中でも、電池本体部がCoを含有した構成のリチウムイオン電池からの有価物の回収方法、電池本体部がNiを含有した構成のリチウムイオン電池からの有価物の回収方法、或いは電池本体部がCo、Ni及びMnを含有した構成のリチウムイオン電池からの有価物の回収方法として好適である。
本発明に係る有価物の回収方法を実施することによって分離回収された「Al」、「C(カーボン等)」、「Cu」、「Co」、「Ni」、「Co、Ni及びMnの混合物」等の有価物は、それぞれ、例えば、純度を高める等の処理を経て電池の材料として再利用することもできるし、精製して或いはそのまま他の製品の材料として再利用することもできる。

Claims (10)

  1. 廃リチウムイオン電池の粉砕物及び/又はリチウムイオン電池用の正極材を含む有価物回収対象物と、酸性溶液と、を混合することによって、前記有価物回収対象物中の少なくとも正極材料構成金属成分を前記酸性溶液中に溶解させて浸出液を得る酸浸出工程と、
    前記酸浸出工程で得られた浸出液に塩基性カルシウム化合物を添加してなる添加液のpHをpH4.6〜pH4.9の範囲に調整するとともに前記添加液の酸化還元電位を200mV〜600mVの範囲に調整することによって沈殿物を生じせしめる沈殿工程と、を含むことを特徴とする有価物の回収方法。
  2. 前記塩基性カルシウム化合物が、炭酸カルシウムである請求項1に記載の有価物の回収方法。
  3. 前記添加液に、酸素の供給および/または過酸化水素の添加を行うことによって、前記添加液の酸化還元電位を200mV〜600mVの範囲に調整する請求項1または2に記載の有価物の回収方法。
  4. 前記沈殿工程において、前記添加液の温度を30℃〜60℃の範囲に調整する請求項1〜3のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
  5. 前記酸浸出工程において、前記酸性溶液として、硫酸水溶液を用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
  6. 前記酸浸出工程において、前記有価物回収対象物と、前記酸性溶液と、さらに酸化剤と、を混合することによって、前記浸出液を得る請求項1〜5のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
  7. 前記酸化剤が過酸化水素である請求項6に記載の有価物の回収方法。
  8. 前記沈殿物を除去した後の添加液から、溶媒抽出法により銅を有機相に抽出して分離する溶媒抽出工程をさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
  9. 前記沈殿物を除去した後の添加液と、アルカリ水溶液とを混合することにより、前記添加液中に溶解している正極材料構成金属成分を金属水酸化物として沈殿させて回収する回収工程をさらに含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
  10. 前記正極材料構成金属成分が、Co、Ni及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である請求項1〜9のいずれか1項に記載の有価物の回収方法。
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