JP2017113801A - 鋼管の製造方法 - Google Patents
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本実施形態の鋼管の製造方法は、鋼管を準備する工程(準備工程:S1)と、焼入れ及び焼戻しを実施する工程(焼入れ及び焼戻し工程:S2)と、焼入れ焼戻し後の鋼管を再び加熱する工程(加熱工程:S3)と、拡径又は縮径加工する工程(管端加工工程:S4)とを備える。以下、各工程について詳述する。
初めに、鋼管を準備する。鋼管の化学組成は、質量%で、C:0.25〜0.35%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.10〜1.50%、Cr:0.40〜1.50%、Mo:0.10〜2.00%、Ti:0.002〜0.050%、Al:0.005〜0.10%、B:0〜0.0035%、Ca:0〜0.005%、V:0〜0.25%、及び、Nb:0〜0.04%、を含有し、残部はFe及び不純物からなり、前記不純物のうち、P、S、及びNはそれぞれ、P:0.020%以下、S:0.010%以下、N:0.007%以下、である。このような化学組成を有する鋼管は、耐サワー性に優れるため油井管に適する。以下に各成分元素の詳細について述べる。以下の説明で、化学組成の「%」は「質量%」を意味する。
炭素(C)は、鋼の強度を高める。C含有量が0.25%未満では、油井管に適する強度が得られない。一方、Cの含有量が0.35%を超えると応力腐食割れが発生する。したがって、C含有量は0.25〜0.35%である。
シリコン(Si)は、鋼を脱酸し、焼戻し軟化抵抗を高める。Si含有量が0.05%未満では、脱酸効果が得られない。一方、Si含有量が0.50%を超えると、軟化相であるフェライト相の析出を促進し靱性や耐硫化物応力割れ性(耐食性)が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜0.50%である。
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を確保する。Mn含有量が0.10%未満では、焼入れ性が低下する。一方、Mn含有量が1.50%を超えると、燐(P)、硫黄(S)等の不純物元素とともに粒界に偏析し、靱性や耐食性が低下する。したがって、Mn含有量は0.10〜1.50%である。
クロム(Cr)は,鋼の焼入れ性を高める。Cr含有量が0.40%未満では、鋼の焼入れ性が低下する。一方、Cr含有量が1.50%を超えると、鋼の転位密度が増加して、耐食性が低下する。したがって、Cr含有量は0.40〜1.50%である。
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を高めるとともに、焼戻し時に微細炭化物を形成し、水素の拡散係数を低減させて耐食性を高める。Mo含有量が0.10%未満では、これらの効果が得られない。一方、Mo含有量が2.00%を超えると、これらの効果は飽和し、製鋼コストが嵩む。したがって、Mo含有量は0.10〜2.00%である。
チタン(Ti)は、鋼中の不純物である窒素(N)を窒化物として固定する。さらに、Nの固定に必要な量よりも多いTiを含む場合、余ったTiが炭化物として微細に析出し、ピン止め作用によって結晶粒を微細化する。また、焼入れ性向上のためにボロン(B)を含有させる場合、NをTiにより固定しBがBNとなるのを抑制する。Ti含有量が0.002%未満では、これらの効果が得られない。一方、Ti含有量が0.050%を超えると、結晶粒を微細化する効果は飽和し、製鋼コストが嵩む。さらに、鋼の靱性も低下する。したがって、Ti含有量は0.002〜0.050%である。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Al含有量が0.005%未満では、この効果が得られない。一方、Al含有量が0.10%を超えると、アルミナ系介在物が生成され、鋼の靱性が低下する。したがって、Al含有量は0.005〜0.10%である。
ボロン(B)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Bは鋼の焼入れ性を高める。しかしながら、B含有量が0.0035%を超えると、上記効果が飽和する。さらに、粒界に粗大な炭化物であるCr23(C、B)6が形成され、耐食性が低下する。したがって、B含有量は0〜0.0035%である。上記効果をより有効に得るためのB含有量の好ましい下限は0.0001%である。
カルシウム(Ca)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caは鋼中のSと結合して硫化物の形態を制御し、耐食性を高める。しかしながら、Ca含有量が0.005%を超えると、上記効果が飽和する。さらに、粗大なCa系介在物が生成され、却って耐食性及び靱性が低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.005%である。上記効果をより有効に得るためのCa含有量の好ましい下限は0.0001%である。
バナジウム(V)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、VはMoと同様に、焼戻し時に微細炭化物を形成し、水素の拡散係数を低減させて耐食性を高める。しかしながら、V含有量が0.25%を超えると、この効果は飽和し、製鋼コストが嵩む。したがって、V含有量は0〜0.25%である。上記効果をより有効に得るためのV含有量の好ましい下限は0.05%である。
ニオブ(Nb)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、NbはCと結合して炭化物を形成し、ピン止め作用によって結晶粒を微細化する。しかしながら、Nbの含有量が0.04%を超えると、この効果は飽和する。さらに、NbC析出物が増加して耐食性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.04%である。上記効果をより有効に得るためのNb含有量の好ましい下限は0.002%である。
燐(P)は不純物である。Pは粒界に偏析し、靱性及び耐食性を低下させる。特に、P含有量が0.020%を超えると、靱性及び耐食性が著しく低下する。したがって、P含有量は0.020%以下である。
硫黄(S)は不純物である。SもPと同様に粒界に偏析し、靱性及び耐食性を低下させる。特に、S含有量が0.010%を超えると、靱性及び耐食性が著しく低下する。したがって、S含有量は0.010%以下である。
窒素(N)は不純物である。Nは不純物として鋼中に存在し、粒界に偏析して耐食性を低下させる。N含有量が0.007%を超えると、Tiを添加しても、Nを完全には固定できなくなり、フリーのNが存在する。フリーのNが粒界に偏析すると耐食性が低下する。また、フリーのNがBと結合してBNを形成すればBの焼入れ性を高める効果が十分には得られないため、耐食性や靱性が低下する。したがって、N含有量は0.007%以下である。
酸素(O)は不純物である。OもNと同様に鋼中に存在し、その含有量が多くなると粗大な酸化物を形成する。これにより、靱性や耐食性が低下する。特に、O含有量が0.006%を超えると、靱性や耐食性が著しく低下する。したがって、O含有量は0.006%以下である。
ニッケル(Ni)は不純物である。NiもNと同様に鋼中に存在し、靱性及び耐食性を低下させる。特に、Ni含有量が0.10%を超えると、靱性及び耐食性が著しく低下する。したがって、Niの含有量は0.10%以下である。
銅(Cu)は不純物である。CuもNと同様に鋼中に存在し、靱性及び耐食性を低下させる。特に、Cu含有量が0.10%を超えると、靱性及び耐食性が著しく低下する。したがって、Cu含有量は0.10%以下である。
上述の鋼管に対し焼入れ及び焼戻しを実施する。焼入れでは、鋼管をA3変態点以上の焼入れ温度に加熱する。焼入れ温度はたとえば、900〜1000℃である。鋼管を焼入れ温度で所定時間保持した後、鋼管を急冷する。焼入れ後、鋼管に対し焼戻しを実施する。焼戻しでは、鋼管の硬さや靱性等を調整し、素管を製造する。焼戻し温度は、A1変態点未満であり、要求される鋼管の強度や靱性により、適当な条件を設定すればよい。
焼入れ及び焼戻し後、管端加工を行うために鋼管を加熱する。鋼管はたとえば、高周波誘導加熱炉で加熱される。加熱温度の上限は、焼戻し温度未満である。鋼管を焼戻し温度以上で加熱すると、焼戻しによって調整された強度及び硬さが変わるからである。加熱温度の好ましい上限は、焼戻し温度−55℃以下であり、さらに好ましくは、焼戻し温度−100℃以下である。
加熱された鋼管に対して、管端加工を実施する。拡径加工を実施する場合、プラグを有する拡径装置を利用する。具体的には、鋼管をチャック等により拡径装置に固定する。このとき、固定された鋼管の軸心をプラグの軸心に合わせる。プラグを金属管の端部から所定の距離まで軸方向に押し込む。プラグはシリンダにより鋼管に押し込まれる。これにより、管端部は拡径される。拡径加工では、鋼管の温度を測定する熱電対は管端部の外面に取り付けられる。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.25〜0.35%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.10〜1.50%、
Cr:0.40〜1.50%、
Mo:0.10〜2.00%、
Ti:0.002〜0.050%、
Al:0.005〜0.10%、
B:0〜0.0035%、
Ca:0〜0.005%、
V:0〜0.25%、及び、
Nb:0〜0.04%、を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
前記不純物のうち、P、S、及びNはそれぞれ、
P:0.020%以下、
S:0.010%以下、
N:0.007%以下、である化学組成を有する鋼管を準備する工程と、
前記鋼管に対し焼入れ及び焼戻しを実施する工程と、
前記焼入れ及び焼戻し後、前記鋼管を焼戻し温度未満に加熱する工程と、
プラグ又はダイスを用いて、焼戻し温度未満に加熱された前記鋼管の管端部を拡径又は縮径加工する管端加工工程とを備え、
前記管端加工工程は、加熱された前記プラグ又は前記ダイスを用い、前記管端加工終了時の前記鋼管の前記管端部の温度は600℃以上である、鋼管の製造方法。 - 請求項1に記載の鋼管の製造方法であって、
前記加熱する工程では、前記鋼管の前記管端部のみを前記焼戻し温度未満の温度に加熱する、鋼管の製造方法。
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