JP6520465B2 - マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
図1は、13Cr鋼及び炭素鋼の加熱温度と変形抵抗との関係を示す図である。図1は次の方法により得られた。表1に示す化学組成を有する13Cr鋼材と、JISG4051(2009)に規定されたS45Cに相当する化学組成を有する炭素鋼材とを準備した。
本発明者らは、13Cr鋼を1200℃以上でアップセット加工した場合であってもδフェライトの生成が低減される方法について検討した。その結果、次の知見を得た。
上述の知見に基づく本実施形態のマルテンサイト系ステンレス鋼管(13Cr鋼管)の製造方法は、次のとおりである。
初めに、マルテンサイト系ステンレス鋼管を準備し、加熱する。本実施形態のマルテンサイト系ステンレス鋼管は、10.0〜14.0質量%のCrを含有する。以下、10.0〜14.0質量%のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼管を、「13Cr鋼管」という。
炭素(C)は不可避に含有される。Cは鋼の強度を高める。しかしながら、C含有量が高すぎれば、Cr炭化物が過剰に析出し、応力腐食割れが発生する。したがって、C含有量は0.05%以下である。鋼の強度をさらに有効に高めるための好ましいC含有量の下限は、0.001%である。
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Siはさらに、鋼の耐食性を高める。しかしながら、Si含有量が高すぎれば、鋼の靭性及び加工性が低下する。また、Siはフェライト形成元素であるため、Si含有量が高すぎればδフェライトが生成され、鋼の靱性が低下する。そのため、Si含有量は1.0%以下にする。鋼の耐食性をさらに有効に高めるための好ましいSi含有量の下限は、0.05%である。
マンガン(Mn)は、鋼を脱酸する。Mn含有量が高すぎれば、鋼の延性が低下する。したがって、Mn含有量は1.0%以下である。また、Mnはオーステナイト形成元素であり、組織のマルテンサイト化に寄与する。したがって、その効果を得るための好ましいMn含有量の下限は0.1%である。
燐(P)は不純物である。Pは、フェライト形成元素であるため、δフェライトを生成し、鋼の靱性が低下する。したがって、P含有量は0.04%以下である。
硫黄(S)は不純物である。Sは、フェライト形成元素であるため、δフェライトを生成し、鋼の靱性が低下する。したがって、S含有量は0.005%以下である。
クロム(Cr)は、使用環境下での鋼の耐食性を高める。Crはさらに、炭化物を生成して鋼の強度を高める。Cr含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、焼戻し後の組織をマルテンサイトにするのを妨げる。さらに、Crはフェライト生成元素であるためCr含有量が高すぎれば、δフェライトを生成し、鋼の靱性が低下する。したがって、Cr含有量は10.0〜14.0%である。
モリブデン(Mo)は、鋼の耐食性を高め、かつ、鋼の強度を高める。Mo含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、製造コストが高くなる。したがって、Mo含有量は0.5〜7.0%である。
ニッケル(Ni)は、オーステナイト形成元素であり、組織のマルテンサイト化に寄与する。Ni含有量が低すぎれば、焼戻し後の組織に多くのフェライトが析出する。一方、Ni含有量が高すぎれば、焼戻し後の組織が主としてオーステナイトとなる。したがって、Ni含有量は4.0〜8.0%である。
アルミニウム(Al)は、Siと同様に鋼を脱酸する。Al含有量が高すぎれば、鋼中に多くの介在物が生成され、耐食性が低下する。一方、Al含有量が低すぎれば、鋼の脱酸効果が得られない。したがって、Al含有量は0.001〜0.1%である。本実施形態においてAl含有量は、酸可溶Al(sol.Al)の含有量を意味する。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Tiは鋼中に固溶し、炭窒化物として析出して、鋼の強度を高める。Tiが少しでも含有されると、この効果がある程度得られる。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、炭窒化物が多量に析出し、延性が低下する。したがって、Ti含有量は0〜0.75%である。鋼の強度をさらに有効に高めるための好ましいTi含有量の下限は、4×C(%)である。
ジルコニウム(Zr)は任意元素である、含有されなくてもよい。含有される場合、ZrはTi同様に、鋼中に固溶し、炭窒化物として析出して、鋼の強度を高める。しかしながら、Zr含有量が高すぎれば、炭窒化物が多量に析出し、延性が低下する。したがって、Zr含有量は0〜2.0%である。鋼の強度をさらに有効に高めるための好ましいZr含有量の下限は、10×C(%)である。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caは鋼の熱間加工性を高める。Caが少しでも含有されると、この効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、Caが酸素(O)と結合して鋼の清浄性が低下し、熱間加工性がかえって低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.05%である。鋼の熱間加工性をさらに有効に高めるための好ましいCa含有量の下限は、0.001%である。
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、MgはCaと同様に、鋼の熱間加工性を高める。Mgが少しでも含有されると、この効果がある程度得られる。しかしながら、Mg含有量が高すぎれば、MgがOと結合して、鋼の清浄性が低下し、かえって鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Mg含有量は0〜0.05%である。鋼の熱間加工性をさらに有効に高めるための好ましいMg含有量の下限は、0.001%である。
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、REMはSとの親和力が強く、鋼の熱間加工性を高める。REMが少しでも含有されると、この効果がある程度得られる。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、REMがOと結合して、鋼の清浄性が低下し、かえって鋼の熱間加工性が低下する。したがって、REM含有量は0〜0.05%である。鋼の熱間加工性をさらに有効に高めるための好ましいREM含有量の下限は、0.001%である。なお、「REM」とは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種又は2種以上の元素の合計含有量を指す。また、REMについては一般的にミッシュメタルに含有される。このため、たとえば、ミッシュメタルの形で添加して、REMの量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
窒素(N)は不純物である。Nは、鋼中に固溶し、微細な窒化物を形成して、鋼の強度を高める。N含有量が高すぎれば、鋼中に窒化物が多く析出され、熱間加工性が低下する。したがって、N含有量は0.05%以下である。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、CuはNiと同様にオーステナイト形成元素であり、組織のマルテンサイト化に寄与する。また、Cuは鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を高める。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、焼戻し後の組織が主としてオーステナイトとなる。また、Cu含有量が3.5%を超えれば、CuSが粒界に析出し熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜3.5%である。鋼の組織のマルテンサイト化をさらに有効に高めるための好ましいCu含有量の下限は、0.2%である。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Vは炭化物を形成し鋼の強度、靱性を高める。しかしながら、V含有量が0.12%を超えれば、鋼の靱性が低下する。したがって、V含有量は0〜0.12%である。鋼の強度をさらに有効に高めるための好ましいV含有量の下限は、0.05%である。
アップセット加工工程では、加熱された13Cr鋼管の管端部に対してアップセット加工を実施する。
13Cr鋼管を1200℃以上でアップセット加工すれば、アンダーフィルの発生が抑制されるものの、δフェライトが生成する。そこで、本実施形態では、アップセット加工後の13Cr鋼管に対して、焼入れ及び焼戻しを実施する。
本発明例では、加熱工程(S1)、アップセット加工工程(S2)、加熱工程(S1)、アップセット加工工程(S2)、焼入れ及び焼戻し工程(S3)の順に各工程を実施し複数の13Cr鋼管を製造した。製造された各鋼管は、加熱工程(S1)での加熱温度が異なるだけで、その他の条件は全ての鋼管の製造において同じとした。
参考例では、、加熱工程(S1)、アップセット加工工程(S2)、加熱工程(S1)、アップセット加工工程(S2)の順に各工程を実施し複数の13Cr鋼管を製造した。すなわち、参考例では、アップセット加工後に焼入れ及び焼戻し工程(S3)を実施しなかった。参考例でも、本発明例と同様に、製造された各鋼管は、加熱工程(S1)での加熱温度が異なるだけで、その他の条件は全ての鋼管の製造において同じとした。
本発明例及び参考例の製造方法によって製造された各鋼管を上述と同様の方法でミクロ組織観察を行い、δフェライト率を求めた。その結果を表2及び表3に示す。表2は、本発明例の結果を示す。表3は、参考例の結果を示す。
2 マンドレルバー
3 ダイス
Claims (3)
- Crを10.0〜14.0質量%、Cを0.05質量%以下含有するマルテンサイト系ステンレス鋼管の管端部を1200〜1300℃未満の温度に加熱する工程と、
加熱された前記管端部をアップセット加工する工程と、
アップセット加工された前記管端部に対して焼入れ及び焼戻しを実施する工程とを備える、マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。 - 請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であって、
前記焼入れ及び焼戻しする工程の前に、1回以上の前記加熱する工程と、複数回の前記アップセット加工する工程とを備える、マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であって、
前記マルテンサイト系ステンレス鋼管は、質量%で、
C:0.05%以下、
Si:1.0%以下、
Mn:1.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.005%以下、
Cr:10.0〜14.0%、
Mo:0.5〜7.0%、
Ni:4.0〜8.0%、
Al:0.001〜0.1%、
Ti:0〜0.75%、
Zr:0〜2.0%、
Ca:0〜0.05%、
Mg:0〜0.05%、
希土類元素:0〜0.05%、及び、
N:0.05%以下、
Cu:0〜3.5%、
V:0〜0.12%、を含有し、残部はFe及び不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
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