JP6686803B2 - 口絞り方法及び二相ステンレス鋼管の製造方法 - Google Patents

口絞り方法及び二相ステンレス鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、冷間引抜加工によって二相ステンレス鋼管を製造するための口絞り方法及びその口絞り方法を用いた二相ステンレス鋼管の製造方法に関する。
鋼管を所定の寸法に加工する方法として、引抜加工がある。一般的な引抜加工は次のとおりである。初めに、引抜加工される鋼管の一端部を加熱する。加熱された鋼管の一端部を圧下して細くし、把持しやすい形状にする。鋼管の一端部を圧下して細くする加工は「口絞り加工」と称される。また、口絞り加工により細くされた一端部は「口絞り部」と称される。口絞り部は、ダイスに通される。口絞り部はグリッパと呼ばれる把持機構で把持される。グリッパで口絞り部を把持した後、グリッパを引抜方向に移動して、鋼管を引き抜く。以上の工程により、引抜加工が実施される。引抜加工の後、口絞り部を切断して製品とされる。
近年、深井戸の油井や天然ガス井の開発に伴い、高強度及び耐食性に優れた油井管の需要が増加している。そのため、油井管にはフェライト相及びオーステナイト相を有する二相ステンレス鋼管等が用いられる。
二相ステンレス鋼管等の鋼管を所定の温度範囲に加熱すると、σ相が析出することがある。σ相が析出すると鋼管のじん性が低下する。σ相が析出した鋼管を口絞り加工すると、割れが発生することがある。また、口絞り加工で割れが発生しなくても、引抜加工で割れが発生することがある。そのため、引抜加工前に口絞り加工された鋼管のσ相を除去するために溶体化処理が実施される。溶体化処理はたとえば、鋼管を所定の温度まで再加熱し、急冷する。これにより、二相ステンレス鋼管等の高強度の鋼管を口絞り加工及び引抜加工しても、割れを抑制できる。
割れを抑制した口絞り方法はたとえば、特開2011−194469号公報(特許文献1)に開示されている。
特許文献1に開示された口絞り方法では、引張強度が980MPa以上の高強度の電縫鋼管を用いる。この電縫鋼管は炭素鋼からなる。特許文献1に開示された口絞り方法では、口絞り加工前に、口絞り部を450〜550℃に加熱する。加熱された電縫鋼管をダイスにより口絞り加工する。これにより、電縫鋼管のシーム部の割れを抑制できる、と特許文献1には記載されている。
特開2011−194469号公報
しかしながら、特許文献1の口絞り方法は、σ相が析出しにくい炭素鋼からなる電縫鋼管を対象とする。そのため、特許文献1口絞り方法を二相ステンレス鋼管に単純に適用することはできない。また、電縫鋼管は、鋼板を円形にし、鋼板の端部同士を溶接により接合する。そのため、特許文献1の炭素鋼を二相ステンレス鋼に代えても、溶接熱によりσ相が発生しやすい。すなわち、特許文献1の口絞り方法により加工された素管に対しては溶体化処理が必須となる。また、溶体化処理を実施すれば、作業工程が1つ増えるため生産効率が低い。
本発明の目的は、溶体化処理をしなくても割れを抑制した二相ステンレス鋼管の口絞り方法を提供することである。また、本発明の目的は、溶体化処理をしなくても割れを抑制した二相ステンレス鋼管の製造方法を提供することである。
本発明の実施形態による口絞り方法は、冷間引抜加工によって二相ステンレス鋼管を製造するために二相ステンレス鋼の素管の端部を細くする。二相ステンレス鋼は、質量%で、C:0.008〜0.03%、Si:0〜1%、Mn:0.1〜2%、Cr:20〜35%、Ni:3〜10%、Mo:0〜5%、W:0〜6%、Cu:0〜3%、及び、N:0.15〜0.40%、を含有し、残部はFe及び不純物からなる。口絞り方法は、加熱ステップと、口絞り加工ステップと、を含む。加熱ステップでは、素管の端部を加熱する。口絞り加工ステップでは、加熱された端部に口絞り加工を施す。加熱ステップでは、口絞り加工中及び加工直後の素管全域の温度が二相ステンレス鋼のσ相析出温度域を下回る温度に端部を加熱する。
本発明の実施形態による二相ステンレス鋼管の製造方法は、準備工程と、加熱工程と、口絞り加工工程と、引抜加工工程と、を含む。準備工程では、質量%で、C:0.008〜0.03%、Si:0〜1%、Mn:0.1〜2%、Cr:20〜35%、Ni:3〜10%、Mo:0〜5%、W:0〜6%、Cu:0〜3%、及び、N:0.15〜0.40%、を含有し、残部はFe及び不純物からなる二相ステンレス鋼の素管を準備する。加熱工程では、素管の端部を加熱する。口絞り加工工程では、加熱された端部に口絞り加工を施して、端部を細くする。引抜加工工程では、口絞り加工が施された素管に冷間引抜加工を施す。加熱工程では、口絞り加工中及び加工直後の素管全域の温度が二相ステンレス鋼のσ相析出温度域を下回る温度に端部を加熱する。
本発明の実施形態による口絞り方法及び二相ステンレス鋼管の製造方法は、口絞り加工中に素管に割れが発生しにくく、かつ、溶体化処理を省略しても口絞り加工後の引抜加工中に素管に割れが発生しにくい。
図1は、二相ステンレス鋼のσ相に関するTTP線図である。 図2は、二相ステンレス鋼の加熱温度と降伏応力との関係を示す図である。 図3は、試験1についての口絞り加工前と口絞り加工後との素管の温度の関係を示す図である。 図4は、試験2についての口絞り加工前と口絞り加工後との素管の温度の関係を示す図である。 図5は、外径加工度と素管内面の加工発熱量との関係を示す図である。 図6は、指数αと素管外面の抜熱量との関係を示す図である。 図7は、口絞り加工ステップを示す断面図である。 図8は、引抜装置の全体構成図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
以下の説明において、「素管」とは引抜加工前の二相ステンレス鋼管を意味する。また、本実施形態の二相ステンレス鋼管は継目無鋼管を対象とする。
本発明者らは、口絞り加工及び引抜加工において二相ステンレス鋼管が割れる原因について調査した。その結果、次の知見を得た。
口絞り加工中及び加工直後の二相ステンレス鋼の温度がσ相析出温度域を下回れば、口絞り加工中に素管に割れが発生しにくい。また、口絞り加工中及び加工直後の二相ステンレス鋼の温度がσ相析出温度域を下回れば、溶体化処理を省略しても、引抜加工中に割れが発生しにくい。
本発明者らは、二相ステンレス鋼の相変態について調査した。
図1は、二相ステンレス鋼におけるσ相の析出に関する温度−時間曲線(TTP線図)である。図1の縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(s)を対数表示する。図1中の破線は、典型的な口絞り方法の場合の履歴を示す。図1中のハッチングされた領域Aは、σ相が析出する領域(σ相析出温度域)を示す。また、図1は後述する二相ステンレス鋼からなる素管を用いて試験した結果より求めたものである。
図1に示すように、素管を口絞り加工する前に、素管の端部を高温に加熱することがある。変形抵抗の高い二相ステンレス鋼の加工性を高くするためである。加熱温度はたとえば、1100℃である。この温度は二相ステンレス鋼のσ相析出温度域を上回る。口絞り加工後、冷間引抜加工のために、素管は冷却される。素管の温度が、口絞り加工中又は冷却中に図1中のσ相析出温度域Aに達すると、σ相が析出する。σ相は、鋼のじん性を低下させる。そのため、σ相を有する素管を引抜加工すると、割れやすい。
また、口絞り加工中、ダイス等の工具により素管は抜熱される。そのため、口絞り加工中に素管の温度がσ相析出温度域Aに達すると、σ相が析出する。この場合、引抜加工中に素管が割れやすい。したがって、引抜加工前にσ相の溶体化処理を実施し、σ相を低減する必要がある。
図1に示すように、二相ステンレス鋼のσ相析出温度域の下限は750℃である。すなわち、二相ステンレス鋼を750℃以上で長時間維持すると、σ相が析出する。そこで、本発明者らは、素管を低温で加工するため、口絞り加工前の加熱温度と素管の加工性について調査した。
図2は、二相ステンレス鋼の加熱温度と降伏応力との関係を示す図である。図2の縦軸は降伏応力(MPa)を示し、横軸は二相ステンレス鋼の温度(℃)を示す。図2に示す試験では、図1と同じ組成の二相ステンレス鋼からなる試験材(鋼管)を用いた。
図2に示すように、二相ステンレス鋼の降伏応力は、温度が高いほど低下する。すなわち、温度が高いほど加工性が高い。本発明者らは、後述する実施例の結果より、二相ステンレス鋼管の温度が475℃未満であれば、加工性が低いため、口絞り加工が困難であると判断した。
図1及び図2より、二相ステンレス鋼管の温度が475℃以上、750℃以下であれば、σ相の析出を抑制して口絞り加工ができることが判明した。そこで、本発明者らは、素管の温度が475℃以上、750℃以下(以下、「適正温度域」ともいう。)に維持される口絞り方法について検討した。
具体的には、本発明者らは二相ステンレス鋼からなる試験材に対し、口絞り加工を実施した。すなわち、試験材の端部を加熱し、試験材の端部を口絞り加工して細くした。その際、口絞り加工による試験材の温度変化を調査した。
本発明者らが検討に用いた二相ステンレス鋼の試験材について説明する。試験材には、寸法の異なる2種類の二相ステンレス鋼管を用いた。以下の表1は、試験1及び試験2それぞれの試験条件を示す。表2は、試験1及び試験2で用いた素管の組成を示す。
Figure 0006686803

Figure 0006686803
表1中の口絞り径とは、口絞り加工後の素管の外径を意味する。外径加工度とは、以下の式(1)で表される。試験1及び試験2の端部の加熱方法は、直接加熱であった。直接加熱とは、インダクションヒータによって端部を直接加熱することを意味する。
(外径加工度(%))=(1−(口絞り加工後の素管の端部の外径)/(口絞り加工前の素管の端部の外径))×100 (1)
図3は、試験1についての口絞り加工前と口絞り加工後との素管の温度の関係を示す図である。図4は、試験2についての口絞り加工前と口絞り加工後との素管の温度の関係を示す図である。図3及び図4の縦軸は口絞り加工後の素管の端部の温度(℃)を示し、横軸は口絞り加工前の素管の端部の加熱温度(℃)を示す。図3及び図4中の白丸印は素管の内面の温度を示し、黒丸印は素管の外面の温度を示す。
図3及び図4に示すように、口絞り加工後の素管の内面の温度は、外面の温度よりも高い。また、口絞り加工後の素管の内面の温度は、加熱温度よりも高い。これより、口絞り加工前後で、素管の内面の温度は加工発熱により上昇することがわかる。他方、口絞り加工後の素管の外面の温度は、加熱温度よりも低い。これより、素管の外面の温度は工具の抜熱により低下することがわかる。これらのことから、口絞り加工では、素管の内面及び外面の双方の温度変化を考慮し、加熱温度を決定する必要がある。具体的には、素管の内面及び外面の双方の温度が、口絞り加工前、加工中及び加工後において475℃以上、750℃以下(適正温度域)に維持される必要がある。
図3及び図4のハッチングで示す領域Bは、口絞り加工中の素管の適正温度、すなわち、それは口絞り加工直後の素管の適正温度域で代表されると考えられるが、その口絞り加工直後の素管の適正温度域を示す。図3及び図4より、口絞り加工直後の素管の内面及び外面の双方が適正温度域に維持されるには、後述する加熱後の抜熱による温度低下および加工発熱による温度上昇を考慮して、口絞り加工前の加熱温度を調整すればよい。抜熱量や加工発熱量は、被加工材(素管)の材質や寸法、加工度等の加工条件および口絞り加工を行う圧下装置によって異なる。予め、対象材と同じ条件で試験を行い、後述する図5、図6に示すように加工発熱量や抜熱量を調査しておき、それに基づいて加熱温度を決定すればよい。例えば、図3、図4に示す例では、口絞り加工前の加熱温度は560℃以上、730℃以下であればよいことがわかる。
さらに、本発明者らは、口絞り加工される素管の大きさと温度変化との関係を調査した。具体的には、試験1及び試験2について、内面の発熱量及び外面の抜熱量を調査した。
図5は、外径加工度と素管内面の加工発熱量との関係を示す図である。図5の縦軸は、素管内面の加工発熱量(℃)を示す。加工発熱量は、口絞り加工前の素管内面の温度と口絞り加工後の素管内面の温度との差を意味する。図5の横軸は、外径加工度(%)を示す。図5中の白四角印は試験1の結果を示し、黒四角印は試験2の結果を示す。
表1を参照して、試験1の外径加工度は32.0%であった。このときの加工発熱量は約30℃であった。他方、試験2の外径加工度は53.1%であった。このときの加工発熱量は約45℃であった。図5より、外径加工度が大きいほど素管内面の加工発熱量が大きいことがわかる。
図6は、指数αと素管外面の抜熱量との関係を示す図である。図6の縦軸は、素管外面の抜熱量(℃)を示す。抜熱量は、口絞り加工前の素管外面の温度と口絞り加工後の素管外面の温度との差を意味する。図6の横軸は、指数αを示す。指数αは以下の式(2)で表される。図6中の白四角印は試験1の結果を示し、黒四角印は試験2の結果を示す。
(指数α)=(素管の断面積)/(素管の内周長+外周長)×100 (2)
試験1の指数αは約70であった。試験1の外面抜熱量は約65℃であった。他方、試験2の指数αは約95であった。試験2の外面抜熱量は約41℃であった。図6より、指数αが小さいほど素管外面の抜熱量が大きいことがわかる。ここで、指数αは、抜熱のしやすさを意味する。指数αが小さければ、抜熱量が大きいことを意味する。指数αが大きければ、抜熱量が小さいことを意味する。
以上の知見に基づいて本発明は完成された。本実施形態による口絞り方法は、冷間引抜加工によって二相ステンレス鋼管を製造するために二相ステンレス鋼の素管の端部を細くする。二相ステンレス鋼は、質量%で、C:0.008〜0.03%、Si:0〜1%、Mn:0.1〜2%、Cr:20〜35%、Ni:3〜10%、Mo:0〜5%、W:0〜6%、Cu:0〜3%、及び、N:0.15〜0.40%、を含有し、残部はFe及び不純物からなる。口絞り方法は、加熱ステップと、口絞り加工ステップと、を含む。加熱ステップでは、素管の端部を加熱する。口絞り加工ステップでは、加熱された端部に口絞り加工を施す。加熱ステップでは、口絞り加工中及び加工直後の素管全域の温度が二相ステンレス鋼のσ相析出温度域を下回る温度に端部を加熱する。
本実施形態の口絞り方法では、二相ステンレス鋼のσ相析出温度域を下回る温度に加熱された素管を口絞り加工する。さらに、口絞り加工中及び加工後の素管全域の温度もσ相析出温度域を下回る。したがって、口絞り加工前、加工中及び加工後において、二相ステンレス鋼の素管にσ相が析出しにくい。そのため、引抜加工前に溶体化処理を実施する必要がない。これにより、二相ステンレス鋼管の生産効率が向上する。
上記の口絞り方法において、加熱ステップでは、端部を560℃以上、730℃以下に加熱するのが好ましい。
本実施形態の二相ステンレス鋼のσ相析出温度域の下限は、750℃である。本実施形態の二相ステンレス鋼の素管は、加工性の観点から、475℃以上で口絞り加工される。また、口絞り加工ステップでは、加工発熱及び工具抜熱等により素管の温度が変化する。口絞り加工ステップ後にσ相の析出を抑制するためには、これら(加工発熱及び工具抜熱等による素管の温度変化)を考慮して、加熱温度を決定する必要がある。加熱温度は、例えば、560℃以上、730℃以下とすることができる。
上記の口絞り方法において、口絞り加工ステップでは、端部の外径加工度を53%以下とするのが好ましい。
二相ステンレス鋼管の変形抵抗は高い。そのため、1回の口絞り加工ステップでの加工量が大きければ、割れが発生しやすい。したがって、1回の口絞り加工ステップでの外径加工度は53%以下であるのが好ましい。
上述の口絞り方法を用いれば、溶体化処理を省略して二相ステンレス鋼管を引抜加工により製造できる。
本実施形態の二相ステンレス鋼管の製造方法は、準備工程と、加熱工程と、口絞り加工工程と、引抜加工工程と、を含む。準備工程では、質量%で、C:0.008〜0.03%、Si:0〜1%、Mn:0.1〜2%、Cr:20〜35%、Ni:3〜10%、Mo:0〜5%、W:0〜6%、Cu:0〜3%、及び、N:0.15〜0.40%、を含有し、残部はFe及び不純物からなる二相ステンレス鋼の素管を準備する。加熱工程では、素管の端部を加熱する。口絞り加工工程では、加熱された端部に口絞り加工を施して、端部を細くする。引抜加工工程では、口絞り加工が施された素管に冷間引抜加工を施す。加熱工程では、口絞り加工中及び加工直後の素管全域の温度が二相ステンレス鋼のσ相析出温度域を下回る温度に端部を加熱する。
以下、本実施形態の口絞り方法について説明する。本実施形態の口絞り方法は、加熱ステップと、口絞り加工ステップと、を含む。
[加熱ステップ]
加熱ステップでは、素管の端部を加熱装置により加熱する。加熱装置はたとえば、インダクションヒータである。素管の端部は、素管の端面から所定の長さの領域を意味する。要するに、素管の端部は、口絞り部に相当する。素管の端部を加熱することにより、高強度の二相ステンレス鋼管であっても、口絞り加工できる。
上述したように、素管の端部の加熱温度がσ相析出温度域を下回っても、口絞り加工中又は加工後に素管の内面の温度がσ相析出温度域に達することがある。この場合、引抜加工前に素管に対しσ相の溶体化処理を実施する必要がある。したがって、加熱ステップでの、素管の端部の加熱温度は、口絞り加工中及び加工直後の素管全域の温度が二相ステンレス鋼のσ相析出温度域を下回る温度である。これにより、口絞り加工によって素管の温度が変化しても、σ相は析出しにくい。
本実施形態の二相ステンレス鋼の場合、加熱温度の下限は、560℃以上であるのが好ましい。加熱温度が560℃未満であれば、工具抜熱により素管の外面の温度が適正温度域の下限未満となる可能性があるからである。加熱温度の上限は、730℃以下であるのが好ましい。加熱温度が730℃よりも高ければ、加工発熱により素管の内面の温度が適正温度域の上限を上回る可能性があるからである。
[口絞り加工ステップ]
本実施形態の口絞り方法は、加熱ステップ後、口絞り加工ステップを実施する。口絞り加工ステップでは、加熱された素管の端部を圧下装置により口絞り加工する。これにより、素管の端部は細くなる。圧下装置はたとえば、スウェージングマシンである。
図7は、口絞り加工ステップを示す断面図である。図7は、素管の管軸方向に垂直な断面での図である。
素管2の端部をスウェージングマシン1に回転可能に固定する。スウェージングマシン1は複数のダイス3を有する。図7では、スウェージングマシン1が素管2の円周方向に等間隔に配置された8つのダイス3を有する場合を示す。しかしながら、ダイス3の数は8つに限定されない。ダイス3の数は、適宜設定されればよい。
素管2を管軸CA周りに回転させながら、ダイス3が素管2の径方向(図7中の矢印方向)に往復運動する。これにより、素管2の端部が口絞り加工され、細くなる。すなわち、口絞り部が成形される。なお、上述の説明と異なり、ダイス3が素管2の周方向に沿って移動して素管2の端部を口絞り加工してもよい。なお、口絞り部の断面形状は円形であってもよいし、円形でなくてもよい。要するに、引抜加工時にグリッパが把持できる形状であればよい。
口絞り加工ステップでは、1回の口絞り加工による素管の端部の外径加工度は53%以下であるのが好ましい。二相ステンレス鋼等の高強度の材料は、塑性変形しにくい。そのため、素管の外径加工度が53%よりも大きければ、口絞り加工により素管の端部に割れ等が発生しやすい。したがって、素管の外径加工度は53%以下であるのが好ましい。
[二相ステンレス鋼]
本実施形態の口絞り方法は、二相ステンレス鋼管に対して特に有効である。以下、本実施形態の二相ステンレス鋼について説明する。以下の説明において、各成分元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
C:0.008〜0.03%
炭素(C)は、鋼中のオーステナイト相を安定化する。一方、C含有量が高すぎれば、粗大な炭化物が析出しやすくなり、鋼の耐食性、特に耐SCC性が低下する。したがって、C含有量は0.008〜0.03%である。
Si:0〜1%
シリコン(Si)は、任意元素である。Siは、鋼を脱酸する。Siはさらに、鋼の耐食性を高める。Si含有量が高すぎれば、オーステナイト組織の安定性が低下し、かつ、延性が低下する。したがって、Si含有量は0〜1%である。
Mn:0.1〜2%
マンガン(Mn)は、鋼を脱酸するとともに、オーステナイト組織を安定化させる。また、Mnは、σ相の析出を抑制しつつ、鋼の強度を高める。一方、Mn含有量が高すぎれば、鋼の耐食性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.1〜2%である。
Cr:20〜35%
クロム(Cr)は鋼の耐食性を高める。一方、Cr含有量が高すぎれば、σ相に代表される金属間化合物が顕著に析出し、鋼の熱間加工性を低下する。したがって、Cr含有量は20〜35%である。
Ni:3〜10%
ニッケル(Ni)はオーステナイト組織を安定化させる。Niはさらに、鋼の耐食性を高める。一方、Ni含有量が高すぎれば、二相ステンレス鋼中のフェライト相の割合が減少する。さらに、σ相に代表される金属間化合物が顕著に析出する。したがって、Ni含有量は3〜10%である。
Mo:0〜5%
モリブデン(Mo)は、任意元素である。Moは、鋼の耐食性及び強度を高める。一方、Mo含有量が高すぎれば、σ相に代表される金属間化合物が顕著に析出する。したがって、Mo含有量は0〜5%である。
W:0〜6%
タングステン(W)は、任意元素である。Wは、鋼の耐食性を高める。一方、W含有量が高すぎれば、σ相に代表される金属間化合物が顕著に析出する。したがって、W含有量は0〜6%である。
Cu:0〜3%
銅(Cu)は、任意元素である。Cuはオーステナイト組織を安定化させる。Cuはさらに、フェライト相及びオーステナイト相の境界におけるσ相の生成を抑制する。Cuはさらに、鋼の強度を高める。一方、Cu含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜3%である。
N:0.15〜0.40%
窒素(N)は、オーステナイト組織を安定化させる。Nは、二相ステンレス鋼の熱的安定性、強度及び耐食性を高める。一方、N含有量が高すぎれば、溶接欠陥であるブローホールが発生しやすくなる。さらに、溶接時の熱影響により粗大な窒化物が生成し、鋼の靭性及び耐食性が低下する。したがって、N含有量は0.15〜0.40%である。
本実施形態の二相ステンレス鋼の残部は、鉄(Fe)及び不純物からなる。ここでいう不純物は、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップ、又は製造過程の環境等から混入される元素をいう。不純物はたとえば、燐(P)、硫黄(S)、アルミニウム(Al)等である。
以上、本実施形態の口絞り方法を説明した。続いて、本実施形態の口絞り方法を用いた二相ステンレス鋼管の製造方法を説明する。本実施形態の二相ステンレス鋼管の製造方法は、準備工程と、加熱工程と、口絞り加工工程と、引抜加工工程とを含む。
[準備工程]
準備工程では、上述した二相ステンレス鋼の素管を準備する。素管は継目無鋼管である。マンネスマン製法、ユジーン製法等により製造された二相ステンレス鋼管を所定の長さに切断し、素管を得る。
[加熱工程]
加熱工程は、上述した本実施形態の口絞り方法の加熱ステップと同じである。そのため、詳細な説明は省略する。
[口絞り加工工程]
口絞り加工工程は、上述した本実施形態の口絞り方法の口絞り加工ステップと同じである。そのため、詳細な説明は省略する。すなわち、本実施形態の製造方法の加熱工程及び口絞り加工工程では、上述した口絞り加工を実施する。口絞り加工工程後、素管を常温まで冷却する。冷却方法はたとえば、常温での放冷である。
[引抜加工工程]
冷却された素管に対し冷間引抜加工を実施する。これにより、所定の寸法に縮径された二相ステンレス鋼管が得られる。
図8は、引抜装置の全体構成図である。引抜装置は、グリッパ4と、ダイス5と、キャリッジ6と、移動装置7とを備える。図8では、ダイス5は断面図を示す。
ダイス5は、引抜加工時に素管2を縮径して、素管2の真円度を高める。ダイス5は、入側(図8の左側)から出側(図8の右側)に向かって順に、アプローチ部5A、ベアリング部5Bを連続して備える。アプローチ部5Aでは、ダイス5の入側から出側に向かって内径が徐々に小さくなる。すなわち、アプローチ部5Aはテーパ形状を有する。ベアリング部5Bは円筒である。ベアリング部5Bの内径は一定で、製造される二相ステンレス鋼管の外径に相当する。
グリッパ4は、引抜加工中の素管2の口絞り部2Aを把持する。図8では、口絞り部2Aはグリッパ4で隠れているため破線で示す。グリッパ4はキャリッジ6に取り付けられる。キャリッジ6は移動装置7に取付けられる。移動装置7はたとえばチェーンであり、引抜加工時に、キャリッジ6及びグリッパ4を引抜方向Xに移動する。これにより、グリッパ4に把持された素管2が引き抜かれる。
本実施形態の口絞り方法の効果を確認するために、2種類の素管に対し口絞り加工を実施した。
[試験条件]
本実施例で用いた素管は、上述の表1及び表2に示す試験1及び試験2に用いられた素管であった。各素管に対し上述の口絞り加工を実施した。具体的には、口絞り方法の加熱ステップでの加熱温度を種々変更した。各加熱温度の素管に口絞り加工ステップを実施した。口絞り加工ステップ後の素管の割れの有無を目視で確認した。その結果を表3に示す。
[試験結果]
Figure 0006686803
表3中の白丸は、口絞り加工後の素管に割れが確認されなかったことを意味する。バツ印は、口絞り加工後の素管に割れが確認されたことを意味する。
表3より、試験1及び試験2ともに、加熱温度が500℃の場合、口絞り加工後の素管に割れが発生した。素管の外面の温度が工具抜熱により適正温度域を下回ったためと考えられる。また、加熱温度が750℃及び800℃の場合、口絞り加工後の素管に割れが発生した。素管の内面の温度が加工発熱により適正温度域を上回り、σ相が析出したためと考えられる。他方、加熱温度が550℃、600℃、650℃及び700℃の場合、口絞り加工後の素管に割れは発生しなかった。
以上、本発明の実施形態を説明した。しかしながら、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変更して実施することができる。
例えば、二相ステンレス鋼のσ相析出温度域は、組成に依存する。したがって、本実施形態の口絞り方法の素管の加熱温度は、上述の適正温度域に限定されるものではない。二相ステンレス鋼の組成が異なれば、適正温度域は上述した試験等により適宜決定される。
1 圧下装置
2 素管
3 圧下装置のダイス
4 グリッパ
5 引抜装置のダイス
5A アプローチ部
5B ベアリング部
6 キャリッジ
7 移動装置

Claims (4)

  1. 冷間引抜加工によって二相ステンレス鋼管を製造するために、質量%で、C:0.008〜0.03%、Si:0〜1%、Mn:0.1〜2%、Cr:20〜35%、Ni:3〜10%、Mo:0〜5%、W:0〜6%、Cu:0〜3%、及び、N:0.15〜0.40%、を含有し、残部はFe及び不純物からなる二相ステンレス鋼の素管の端部を細くする口絞り方法であって、
    前記素管の端部を加熱する加熱ステップと、
    加熱された前記端部に口絞り加工を施す口絞り加工ステップと、を含み、
    前記加熱ステップでは、前記口絞り加工中及び加工直後の前記素管全域の温度が前記二相ステンレス鋼のσ相析出温度域を下回る温度に前記端部を加熱する、口絞り方法。
  2. 請求項1に記載の口絞り方法であって、
    前記加熱ステップでは、前記端部を560℃以上、730℃以下に加熱する、口絞り方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の口絞り方法であって、
    前記口絞り加工ステップでは、前記端部の外径加工度を53%以下とする、口絞り方法。
  4. 質量%で、C:0.008〜0.03%、Si:0〜1%、Mn:0.1〜2%、Cr:20〜35%、Ni:3〜10%、Mo:0〜5%、W:0〜6%、Cu:0〜3%、及び、N:0.15〜0.40%、を含有し、残部はFe及び不純物からなる二相ステンレス鋼の素管を準備する準備工程と、
    前記素管の端部を加熱する加熱工程と、
    加熱された前記端部に口絞り加工を施して、前記端部を細くする口絞り加工工程と、
    前記口絞り加工が施された素管に冷間引抜加工を施す引抜加工工程と、を含み、
    前記加熱工程では、前記口絞り加工中及び加工直後の前記素管全域の温度が前記二相ステンレス鋼のσ相析出温度域を下回る温度に前記端部を加熱する、二相ステンレス鋼管の製造方法。


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