JP4529269B2 - 耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石油・天然ガスを輸送するラインパイプ用として好適な高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管に係り、とくに耐食性、溶接性の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、原油価格の高騰や、近い将来に予想される石油・天然ガス資源の枯渇という観点から、従来省みられなかったような深層油田や、腐食性の強い油田・ガス田等の開発が盛んになっている。このような油田・ガス田は、概して高深度で、海上や極寒地といったいわゆる辺境地に位置し、また炭酸ガスCO2 、塩素イオンCl- 等を含む厳しい腐食環境となっているところが多くなっている。
【0003】
このような腐食性の強い湿潤炭酸ガス環境下では、油井管やラインパイプの材料として炭素鋼を使用すると、著しく腐食される。このため、油井管やラインパイプの防食手段として、採掘された原油・ガス中にインヒビタを添加することが行われてきた。しかしながら、インヒビタの添加は、インヒビタが高価であることからコスト高となることや、インヒビタの添加効果は高温では不十分となることなどから、最近ではインヒビタの添加に代えて、油井管やラインパイプの材料として耐食性材料を使用する傾向となっている。
【0004】
このような耐食性材料として、油井管ではCrを13%含有するマルテンサイト系ステンレス鋼が広く使用されてきた。
また、最近、少量の硫化水素を含む腐食環境に適合させるため、例えば、特開昭60-174859 号公報には、Crを13%含有するマルテンサイト系ステンレス鋼にNi、Mo等添加し、耐SSC 性を改善した油井管が提案されている。しかしながら、特開昭60-174859 号公報に記載された油井管は、溶接性に対する配慮が全くなされておらず、予熱および後熱なしで溶接すると、溶接割れが発生するという問題があった。
【0005】
一方、ラインパイプ用材料としては、API規格に、C含有量を低減した12%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管が規定されている。しかし、この種鋼管は、溶接性が低いため、溶接時には予熱および後熱を必要とし溶接施工の能率が低下しコスト高となるうえ、溶接部靱性が低いという欠点があり、使用実績はほとんどなかった。この種材料に代わり、ラインパイプ用材料としては、溶接性および耐食性に優れた二相ステンレス鋼が用いられてきた。しかし、二相ステンレス鋼は、合金元素量が多く、さらに使用場所によっては過剰な性能を有することになり、経済的に高価となる場合があった。
【0006】
また、さらにラインパイプでは高温の気体・流体が流れるため、使用時のラインパイプの強度(高温強度)を高く保つ必要がある。使用時のラインパイプの強度(高温強度)を高くするためには、ラインパイプの常温強度を高め高温強度を高くするか、あるいはラインパイプの肉厚を増加するといった対策が採られるのが通例である。しかし、ラインパイプの常温強度を高めると、溶接性が劣化する恐れがあり、またラインパイプの肉厚を増加すると、材料費の高騰を招くという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を有利に解決し、炭酸ガスを含む腐食環境下において十分な耐全面腐食性、耐孔食性を有し、また、硫化水素を含む環境下において優れた耐SSC 性を示し、さらに優れた溶接熱影響部靱性を有する、耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管およびその製造方法を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の、炭酸ガスを含む腐食環境下での耐食性、および溶接割れ、溶接熱影響部の靱性におよぼす各種要因について、鋭意研究した。その結果、(1)C、N量を適正含有量とすること、(2)Ni、Moを含有すること、(3)5%以上のオーステナイトを含む組織とすること、これら(1)〜(3)を組合せることにより、はじめて炭酸ガスを含む腐食環境下でも優れた耐食性、および溶接性を具備するマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管とすることができることを知見した。これによりとくに、耐SSC 性、溶接熱影響部靱性に優れた継目無鋼管となるということも見いだした。
【0009】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加え完成されたものである。
すなわち、第1の本発明は、質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0 %以下、Mn:0.5 〜3.0 %、P:0.05%以下、S:0.005 %以下、Cr:10〜14%、Ni:0.2 〜7.0 %、Mo:1.39 〜3.0 %、Al:0.1 %以下、N:0.07%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、マルテンサイト相を主相とし、面積率で5%以上のオーステナイト相を含む組織を有することを特徴とする耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管である。また、第1の本発明では、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.15%以下、Nb:0.2 %以下、Zr:0.15%以下、V:0.2 %以下、Ta:0.15%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することが好ましく、また、第1の本発明では、前記各組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.006 %以下を含有することが好ましい。
【0010】
また、第2の本発明は、質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0 %以下、Mn:0.5 〜3.0 %、P:0.05%以下、S:0.005 %以下、Cr:10〜14%、Ni:0.2 〜7.0 %、Mo:1.39 〜3.0 %、Al:0.1 %以下、N:0.07%以下を含み、あるいはさらに、Ti:0.15%以下、Nb:0.2 %以下、Zr:0.15%以下、V:0.2 %以下、Ta:0.15%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含み、好ましくは残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を用いて、造管し所定の寸法の鋼管としたのち、該鋼管を、Ac3変態点以上の温度に加熱し、ついで冷却して焼入れ組織としたのち、520 ℃以上の温度で焼戻しを行い、オーステナイト相を析出させ、マルテンサイト相を主相とし、面積率で5%以上のオーステナイト相を含む組織とすることを特徴とする耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法であり、また、第2の本発明では、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.006 %以下を含有することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、本発明鋼管の組成限定理由について説明する。なお、以下、質量%は単に%で記す。
C:0.02%以下
Cは、母材強度を増加させるが、溶接熱影響部の硬さを増加し溶接割れ感受性を高め、溶接熱影響部の靱性を低下させる元素であり、本発明では、できるだけ低減するのが望ましい。また、炭酸ガスを含む腐食環境下での耐孔食性等の耐食性を向上させるためには、Cは低いほうが望ましい。本発明では、予熱なしで溶接可能とするために、Cは0.02%以下とする。なお、好ましくは0.01%以下である。
【0012】
Si:1.0 %以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、強度を増加させる作用を有している。このような効果を得るためには、0.1 %以上含有するのが望ましい。なお、Siはフェライト生成元素であり、多量に含有すると、フェライトが生成し、母材および溶接熱影響部の靱性が劣化する。このため、Siは1.0 %以下に限定した。なお、好ましくは0.1 〜0.5 %である。
【0013】
Mn:0.5 〜3.0 %
Mnは、脱酸剤として作用するとともに、強度を増加させる元素である。また、Mnはオーステナイト生成元素でありフェライトの生成を抑制し、母材および溶接熱影響部の靱性を向上させる。このような効果は、0.5 %以上の含有で認められるが、3.0 %を超えて含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Mnは0.5 〜3.0 %の範囲に限定した。
【0014】
P:0.05%以下
Pは、強度を増加させるが、延性、靱性を低下させ、さらに、耐食性を劣化させる。とくに粒界に偏析して粒界強度を低下させ、耐SSC 性に悪影響を及ぼす。このため、Pはできるだけ低減するのが望ましい。しかし、極端な低減は製造コストの高騰を招く。このようなことから、本発明では、工業的に比較的安価に実施可能でかつ、靱性、耐食性を極端に劣化させない範囲の0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.03%以下である。
【0015】
S:0.005 %以下
Sは、MnS 等の硫化物系介在物を形成し、熱間加工性を著しく劣化させる元素であり、生産性向上のためにもできるだけ低減するのが望ましい。しかし、極端な低減は製造コストの高騰を招く。Sを0.005 %以下に低減すれば、通常の工程で製造が可能であることから、本発明では、Sは0.005 %以下に限定した。なお、好ましくは0.003 %以下である。
【0016】
Cr:10〜14%
Crは、マルテンサイト組織を形成し強度を高めるとともに、保護被膜を形成し炭酸ガスを含む腐食環境下での耐孔食性等の耐食性を増加させる元素である。このような効果を得るためには、Crは10%以上の含有を必要とする。一方、14%を超えて含有するとフェライトの生成傾向が強くなり、マルテンサイト組織を安定して確保するためには多量のオーステナイト生成元素の含有を必要とするため高価となり、経済的に不利となる。このため、本発明ではCrは10〜14%の範囲に限定した。
【0017】
Ni:0.2 〜7.0 %
Niは、オーステナイト生成元素であり、強度および靱性を増加させ、C、Nの低減による強度低下、靱性低下を抑制する作用を有する。また、Niは、保護被膜を強化し、炭酸ガスを含む腐食環境における耐孔食性等の耐食性を増加させる。さらに、Niは高温でのδ−フェライトの発生を抑制するという作用を有しMo含有鋼の熱間加工性を高める。このような効果を得るためには、0.2 %以上の含有を必要とするが、7.0 %を超える含有は、高価なNiを多量添加するため、経済的に不利となる。このため、本発明では、Niは0.2 %〜7.0 %の範囲に限定した。なお、好ましくは0.5 〜5.5 %である。
【0018】
Mo:1.39 〜3.0 %
Moは、焼入れ性を向上させ、強度を増加させる元素であり、また、耐SSC 性を向上させる作用も有している。このような効果を得るためには、1.39 %以上の含有を必要とするが、3.0 %を超えて含有すると、フェライトの生成が容易となり、強度靱性が低下し、さらに耐SSC 性の向上効果が低下する。このため、Moは1.39 〜3.0 %に限定した。
【0019】
Al:0.1 %以下
Alは、脱酸剤として作用するが、0.1 %を超えて含有すると靱性の低下を招くため、本発明では、Alは0.1 %以下に限定した。なお、好ましくは0.05%以下である。
N:0.07%以下
Nは、Cと同様に、鋼中に固溶し母材強度を増加させるとともに、溶接熱影響部の硬さを増加し溶接割れ感受性を高め、溶接熱影響部の靱性を低下させる元素であり、本発明では、できるだけ低減するのが望ましい。溶接割れの観点から、0.07%までは許容できることから、本発明では、Nは0.07%以下に限定した。なお、好ましくは0.03%以下である。
【0020】
Ti:0.15%以下、Nb:0.2 %以下、Zr:0.15%以下、V:0.2 %以下、Ta:0.15%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Ti、Nb、Zr、V、Taは、いずれも炭窒化物を形成し、母材の強度靱性および溶接熱影響部の靱性を向上させる作用を有し、必要に応じ選択して含有できる。また、Ti、Nb、Zr、V、Taは、Cr炭化物をこれら元素の炭化物に置換することにより、耐孔食性に対する有効Cr量を増加させ、耐孔食性を向上させる。Ti:0.15%、Nb:0.2 %、Zr:0.15%、V:0.2 %、Ta:0.15%を超えて含有すると、溶接割れ感受性が高くなり溶接割れの危険性が増加するとともに、さらに母材および溶接熱影響部の靱性を劣化させるため、これらの値をそれぞれ各元素の上限とするのが好ましい。なお、より好ましくは、Ti:0.01〜0.1 %、Nb:0.01〜0.1 %、Zr:0.01〜0.1 %、V:0.01〜0.1 %、Ta::0.01〜0.1 %である。
【0021】
Ca:0.006 %以下
Caは、硫化物CaS を形成し、溶解しやすいMnS の生成を抑制して、耐食性を向上させる作用を有している。しかし多量の含有はクラスター状の介在物を生成させ、母材靱性を低下させる。このため、Caは0.006 %以下に限定するのが好ましい。
【0022】
残部Feおよび不可避的不純物
上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、O:0.01%以下が許容できる。
また、本発明鋼管の組織は、マルテンサイト相を主相とし、面積率で5%以上のオーステナイト相を含む組織とする。本発明でいう主相とは、面積率で50%以上を占める相をいうものとする。主相であるマルテンサイト中にオーステナイトを5%以上含むことにより、Crの析出物、Moの析出物等が減少し耐食性が向上するとともに、短時間熱処理で鋼管の強度を低くできる。一方、オーステナイト相が5%未満では、Cr、Mo析出物が多いため、耐食性が低下する。なお、オーステナイト相は多ければ多いほど耐食性の観点から好ましいが、しかし35%を超えると、所定の強度が得にくくなるという問題がある。このため、オーステナイト相は5%以上、好ましくは35%以下とする。
【0023】
本発明鋼管の組織は、上記したようにマルテンサイトを主相とし、オーステナイトを含み、さらに3%(面積率)以下の析出物を含む組織であるが、上記した相以外にδ- フェライトを3%(面積率)以下含有しても何ら問題はない。
つぎに、本発明のラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法について説明する。
【0024】
まず、上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは鋼塊−分塊圧延によりビレット等の鋼管素材とするのが好ましい。
これら鋼管素材を、通常の造管工程、すなわち加熱し、マンネスマン穿孔機で穿孔し、プラグミル方式、マンドレル方式等の傾斜圧延方式ミルを用いて熱間圧延し、所定寸法の継目無鋼管とする。
【0026】
上記した通常の造管工程により製造され、上記した組成を有する、所定寸法の鋼管は、Ac3変態点以上の温度に加熱され、ついで空冷以上の冷却速度で冷却され、焼入れ組織とされる。
鋼管の加熱温度がAc3変態点未満では、加熱温度が低すぎて完全なオーステナイト組織が得られず、十分な焼入れ組織が得られない。ここで、十分な焼入れ組織とは、面積率で95%以上の焼入れマルテンサイトを有する組織を意味する。一方、1050℃を超えると、オーステナイト粒が粗大化し靱性が劣化するため、1050℃を加熱温度の上限とするのが好ましい。
【0027】
また、鋼管を加熱後、空冷以上の焼入れ冷却速度で、室温まで冷却する。冷却は、空冷、ミスト冷却、水冷等がいずれも好適である。
焼入れ後、鋼管は520 ℃以上の温度で焼戻される。
焼戻し条件(温度、時間)は、オーステナイト相が5%以上生成する条件とするのが好ましい。焼戻し温度が520 ℃未満では、オーステナイト相を5%以上生成させるために、長時間の焼戻しを必要とし、生産性が阻害される。このため、焼戻し温度は520 ℃以上の温度で、より好ましくはAc1変態点以下の温度とするのが好ましい。なお、さらに好ましい焼戻し温度は、600 〜650 ℃である。
【0028】
【実施例】
表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、真空脱ガス処理を施して精錬したのち、連続鋳造法により鋼管素材(ビレット)とした。これらの鋼管素材を加熱して、マンネスマン−マンドレル方式のミルで造管し外径273 mm×肉厚12.7mmの継目無鋼管とした。ついで、これら鋼管に、表2に示す条件の熱処理(焼入れ−焼戻し)を施し、X80グレードの鋼管とした。
【0029】
これら鋼管から、試験片を採取し、組織調査、引張試験、衝撃試験、腐食試験を実施し、強度、靱性、耐食性を評価した。なお、焼入れままの状態で試験片を採取し、焼入れ組織を調査した。
(1)組織調査
各鋼管の長手方向に垂直な断面について、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡により組織を撮像し、画像解析装置を用いて各相の存在面積率を測定した。また、組織中のオーステナイト相(γ)量はX線回折法を用いて、γの(220 )からの回折強度と、αの(211 )からの回折強度との比から算出した。
(2)引張試験
各鋼管の長手方向から6mmφの丸棒試験片を採取し、引張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTS、伸びElを測定した。
(3)衝撃試験
各鋼管の長手方向からJIS 4 号試験片を採取し、試験温度:−40℃で衝撃試験を実施し、シャルピー吸収エネルギーvE-40 を測定した。
(4)腐食試験
▲1▼炭酸ガス腐食試験
各鋼管から採取した試験片(大きさ:3.0 ×25×50mm)を、オートクレーブで3.0MPaの炭酸ガスを飽和した25質量%NaCl水溶液(液温:100 ℃)中に7日間浸漬したのち引上げた。引上げた試験片について、腐食生成物を除去したのち、孔食の有無を目視により調査した。その後、腐食試験後の試験片重量を測定し板厚減少量に換算し、腐食速度(mm/y)を求めた。
【0030】
これらの結果から、孔食の発生したものは○、孔食の発生しなかったものは×として、耐孔食性を評価した。また、腐食速度:0.127mm/y を限界値とし、この限界値以上の腐食速度を示すものは×、限界値未満の腐食速度を示すものは○として、耐炭酸ガス腐食性を評価した。
▲2▼SSC試験
各鋼管から採取した試験片(サイズ:6.4mm φ)を用い、NACE-TM 0177 method A の規定に準じ、定荷重試験を実施し、耐SSC 性を評価した。試験液は、5質量%NaCl+0.5 質量%CH3COOH 水溶液とし、CH3COONaを添加しpH3.5 に調整した。また、試験液中に1%H2S +99%CO2 の混合ガスを吹込みながら試験を行った。なお、負荷応力は90%YSとし、試験時間は720 hとした。なお、YSはX80の規格下限の降伏応力(654MPa)を使用した。
【0031】
また、同一種類の鋼管(長さ:0.5 m)を2本用意し、端部(V開先加工)同士を突き合わせて、GMAW溶接法を用い円周溶接し鋼管継手を作製した。作製した鋼管継手部について、溶接割れの発生の有無を調査した。
円周溶接の溶接条件は、入熱:19.5kJ/cm (電圧:14.5V、電流:157 A、溶接速度:7.0 cm/min)のGMAW溶接法とし、予熱、後熱はなしとした。
【0032】
また、溶接割れの調査は、溶接の断面観察によった。溶接割れの発生なしを○、割れ発生有りを×とし、溶接割れ性を評価した。
また、鋼管継手部の溶接熱影響部(HAZ)(ボンドから1mm)からシャルピー衝撃試験片(JIS 4 号試験片)を採取し、試験温度:−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE-40 を求めた。
【0033】
これらの結果を表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
本発明例は、いずれも優れた強度、靱性を有し、さらに予熱および後熱処理を行うことなく円周溶接でき、耐溶接割れ性、溶接熱影響部靱性ともに優れるうえ、炭酸ガスを含む腐食環境下でも耐孔食性、耐全面腐食性に優れ、さらに硫化水素を含む腐食環境下で耐SSC 性に優れた鋼管となっていることがわかる。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、上記した特性のいずれか一つ以上が劣化している。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、炭酸ガスを含む腐食環境、あるいは硫化水素を含む腐食環境においても耐食性に優れ、かつ予熱、後熱処理を必要とせず円周溶接が可能な、ラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス鋼管が、安価にしかも容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、石油・天然ガスを輸送するパイプラインが安価に製造できる。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.02%以下、 Si:1.0 %以下、
Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.05%以下、
S:0.005 %以下、 Cr:10〜14%、
Ni:0.2 〜7.0 %、 Mo:1.39 〜3.0 %、
Al:0.1 %以下、 N:0.07%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、マルテンサイト相を主相とし、面積率で5%以上のオーステナイト相を含む組織を有することを特徴とする耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.15%以下、Nb:0.2 %以下、Zr:0.15%以下、V:0.2 %以下、Ta:0.15%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.006 %以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管。
- 質量%で、
C:0.02%以下、 Si:1.0 %以下、
Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.05%以下、
S:0.005 %以下、 Cr:10〜14%、
Ni:0.2 〜7.0 %、 Mo:1.39 〜3.0 %、
Al:0.1 %以下、 N:0.07%以下
を含む組成を有する鋼素材を用いて造管し所定の寸法の鋼管としたのち、該鋼管を、Ac3変態点以上の温度に加熱し、ついで冷却して焼入れ組織としたのち、520 ℃以上の温度で焼戻しを行い、オーステナイト相を析出させ、マルテンサイト相を主相とし、面積率で5%以上のオーステナイト相を含む組織とすることを特徴とする耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.15%以下、Nb:0.2 %以下、Zr:0.15%以下、V:0.2 %以下、Ta:0.15%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載のラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.006 %以下を含有することを特徴とする請求項4または5に記載のラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス継目無鋼管の製造方法。
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