JPH11343519A - 低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造方法 - Google Patents

低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造方法

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JPH11343519A
JPH11343519A JP15101698A JP15101698A JPH11343519A JP H11343519 A JPH11343519 A JP H11343519A JP 15101698 A JP15101698 A JP 15101698A JP 15101698 A JP15101698 A JP 15101698A JP H11343519 A JPH11343519 A JP H11343519A
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steel
welded
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JP15101698A
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Tomohiko Omura
朋彦 大村
Takahiro Kushida
隆弘 櫛田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】溶接部と母材部の耐SSC性が継目無鋼管の耐
SSC性と同等の低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼
溶接管を確実に得ることができる製造方法を提供する。 【解決手段】所定の化学組成を有する熱延鋼板に焼鈍熱
処理を施し、その熱延鋼板を管状に成形して突き合わせ
溶接製管した後、850 〜1250℃の温度域で加熱保持する
後熱処理を施して製品とする際、鋼中のMo含有量をMo、
焼鈍熱処理温度をT1、焼鈍熱処理時間をt1、後熱処理温
度をT2、後熱処理時間をt2とした時、少なくとも前記の
後熱処理を式「2000・Mo+T2(20+logt2)≧T1(20+log
t1)」を満たす条件で施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラインパイプや油
井管または油井化工機用配管として用いて好適な低炭素
マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼
は、油井用材料として近年開発の進められている鋼種
で、2相ステンレス鋼に比べてCr以外の高価な元素の
含有量が少ないために安価である。この低炭素マルテン
サイト系ステンレス鋼は、炭酸ガスのみ、または炭酸ガ
スと微量の硫化水素ガスとの混合ガスを含む湿潤環境中
で、良好な耐食性を示す。また、低炭素であるために溶
接性が良好で、ガス・タングステン・アーク溶接(GT
AW)やサブマージ・アーク溶接(SMAW)による周
溶接継ぎ手を前提とするラインパイプ用途に好適であ
る。
【0003】上記低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼
製の鋼管は、従来、継目無鋼管として製造されてきた。
しかし、近年、継目無鋼管では製造が困難な肉厚10m
m以下の薄肉管の需要が高まっている。
【0004】低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼製の
溶接管は、従来はあまり実用化例がないが、例えば特開
平4−191319号公報や特開平4−191320号
公報には、素材帯鋼を管状に成形し、その突き合わせ部
を電縫溶接(ERW)によって溶接製管する方法が示さ
れている。また、小径管では、GTAWまたはプラズマ
溶接(PAW)による突き合わせ溶接製管も検討されて
いる。
【0005】また、近年開発の進められている新溶接法
として、レーザ溶接製管法があり、特開昭63−278
688号公報にはオーステナイト系ステンレス鋼、同6
3−278689号公報にはフェライト系ステンレス
鋼、同63−278690号公報にはMo含有合金鋼の
一般的な小径管を製造対象とした方法が示されており、
レーザ溶接製管後、溶接シーム部に対して後熱処理を施
せば、溶接金属の機械的性質が回復し、良好な性能が得
られるとしている。
【0006】さらに、近年、大出力のレーザ熱源を用い
た突き合わせ溶接製管法も開発されており、特開平9−
164425号公報には突き合わせレーザ溶接製管後、
溶接部近傍に適正な後熱処理を施すことによって耐食性
の良好な溶接部を有する溶接鋼管を得る方法が示されて
いる。
【0007】炭酸ガス環境で低炭素マルテンサイト系ス
テンレス鋼鋼管を用いる場合には、溶接鋼管でも良好な
耐食性を有することが上記の特開平4−191319号
公報および特開平4−191320号公報に示されてい
る。その理由は、耐炭酸ガス腐食性は、一般に、母材鋼
中のCrの絶対含有量だけで決定され、マルテンサイト
系ステンレス鋼の場合、Crの絶対含有量が多く、溶接
部についても耐炭酸ガス腐食性が劣る要因がもともと少
ないためである。
【0008】一方、油井環境では、炭酸ガスと微量の硫
化水素ガスとの混合ガスを含む湿潤環境中での耐食性と
して、耐硫化物応力割れ性(以下、耐SSC性という)
も要求されることが多い。
【0009】耐SSC性は、母材鋼中のMoの含有量に
大きく依存し、Moの含有量が多いほど孔食が起こった
際に不働態皮膜の修復作用が強くなり、耐SSC性は大
きく改善される。しかし、MoはCrに比べて高価であ
る。このため、経済性の観点から、低炭素マルテンサイ
ト系ステンレス鋼は、腐食環境に応じてMoの含有量に
よってグレード分けされることが多い。また、耐SSC
性は、低合金鋼の場合と同様に、結晶粒径や硬度、析出
相の有無などの金属組織因子の影響も強く受け、一般
に、様々な熱影響を受ける溶接部の信頼性は低い。
【0010】例えば、ERW法では、溶接部に酸化物欠
陥や圧接によるメタルフローの立ち上がりが発生し、こ
れらが機械的性質の低下や耐SSC性の低下を引き起こ
す。また、GTAW法やプラズマ溶接法では、溶接金属
の冷却速度が遅いために溶接金属に隣接して熱影響部
(以下、HAZという)が生じる。このHAZでは、δ
フェライト相と呼ばれる軟化相が多量に析出し、応力集
中を起こしてSSCの起点となり、耐SSC性を低下さ
せることがある。
【0011】高級な合金系のフィラーワイヤを用いる場
合には、溶接金属の耐食性の確保は可能であるが、フィ
ラーワイヤの固溶しないHAZの性能確保は困難であ
る。また、溶接後の後熱処理によってもδフェライト相
は残留することが多く、このHAZの性能は完全には回
復しない。
【0012】これに対して、特開平9−164425号
公報に示されるレーザ溶接法による場合には、GTAW
法などの従来のアーク溶接法に比べて溶接金属の冷却速
度が速いことからHAZが生じず、その後適正な後熱処
理と組み合わせることにより溶接部の良好な耐SSC性
が得られる。
【0013】しかし、特開平9−164425号公報に
示される方法では、母材部の耐SSC性が継目無鋼管に
比べて低下することが多いという問題があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、溶接
部の耐SSC性が良好であるとともに、母材部の耐SS
C性が継目無鋼管と同等の低炭素マルテンサイト系ステ
ンレス鋼溶接管を確実に得ることができる製造方法を提
供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記の
低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造方法
にある。
【0016】重量%で、C:0.05%以下、Si:
1.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.04%以
下、S:0.01%以下、Cr:10.0〜15.0
%、Mo:0.1〜3.0%、Al:0.1%以下、T
i:0.10%以下および下記の式を満たすNiを含
有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる化学組成
の熱延鋼板に焼鈍熱処理を施し、その熱延鋼板を管状に
成形して突き合わせ溶接製管した後、850〜1250
℃の温度域で加熱保持する後熱処理を施して製品とする
際、少なくとも前記の後熱処理を下記の式を満たす条
件で施すことを特徴とする低炭素マルテンサイト系ステ
ンレス鋼溶接管の製造方法。
【0017】 3.0−0.5×Mn≦Ni≦8.0−0.5×Mn … ここで、元素記号は鋼中のそれぞれの元素の含有量(重
量%)を表す。
【0018】 2000×Mo+T2(20+logt2)≧T1(20+logt1)… ただし、 Mo:鋼中のMo含有量(重量%) T1 :焼鈍熱処理温度(℃) t1 :焼鈍熱処理時間(hr) T2 :後熱処理温度(℃) t2 :後熱処理時間(hr) 上記の本発明は、下記の知見を基に完成させた。すなわ
ち、本発明者らは、溶接管の母材部の耐SSC性が継目
無管に比べて劣る原因の究明とその解決手段の確立に努
めた。その結果、溶接管の母材部の耐SSC性が継目無
管に比べて劣る原因は、溶接管の素材である熱延鋼板が
熱延後にコイル焼鈍熱処理(以下、単に焼鈍処理とい
う)されるが、この焼鈍処理条件と溶接製管後に施す後
熱処理条件との関係が適切でない場合に、溶接管の母材
部の耐SSC性が劣ることをつきとめた。
【0019】すなわち、上記の焼鈍処理は、実用上、溶
接製管前の軟化目的で施されることが多い。これは、低
炭素マルテンサイト系ステンレス鋼の熱延鋼板は、低炭
素といえども熱延のままでは著しく硬化する。このた
め、軟化焼鈍を施さない場合には、熱延鋼板から管状に
成形する際の成形能率が悪く、生産性が低下する。ま
た、溶接製管設備、特に成形ロール群に大きな負荷がか
かり、成形ロールの消耗が著しくなる他、種々の設備故
障が多発するようになるためである。
【0020】上記の焼鈍処理は、2相域で施さないと効
果がないがために、通常、Ac1変態点を超える温度域
(600〜660℃)で施される。しかし、その間に相
分離を起こし、Mo濃度の低下した残留オーステナイト
相が多量に析出する。この残留オーステナイト相中に
は、Mo濃度の特に低い部分が存在し、この部分の耐S
SC性が悪いために、結果として母材部の耐SSC性が
低下する。また、Mo濃度の低下した残留オーステナイ
ト相は、通常の継目無管の熱間製管法において仕上げ圧
延後に施される900℃近傍の再加熱焼入れ処理(上記
の後熱処理に相当)を施してもそのまま残留し、Mo濃
度の特に低い部分がなくならず、耐SSC性は十分に回
復しない。
【0021】ところが、上記の焼鈍処理条件と鋼中のM
o含有量に応じて後熱処理条件を適切に設定すれば、焼
鈍処理時に析出したMo濃度の低い残留オーステナイト
相は残るものの、Mo濃度の特に低い部分が消滅し、母
材部の耐SSC性が継目無管と同等になることを知見し
た。
【0022】具体的には、鋼中のMo含有量(重量%)
をMo、焼鈍熱処理温度をT1 、焼鈍熱処理時間をt1
(hr)、後熱処理温度をT2 (℃)、後熱処理時間を
2(hr)とした時、T2 を850〜1250℃と
し、かつ式『2000×Mo+T2 (20+logt
2 )≧T1 (20+logt1 )』を満たす条件で後熱
処理を施せば、母材部の耐SSC性が継目無管と同等の
溶接管が得られることを知見した。
【0023】なお、式『2000×Mo+T2 (20+
logt2 )≧T1 (20+logt1 )』を満たす条
件で後熱処理を施すと、残留オーステナイト相中のMo
濃度の特に低い部分が消滅するのは、次の理由による。
すなわち、式『2000×Mo+T2 (20+logt
2 )≧T1 (20+logt1 )』を満たす温度T
2は、通常の継目無管の熱間製管法において仕上げ圧延
後に施される再加熱焼入れ処理時の温度(900℃近
傍)よりも高目である。その結果、焼鈍処理時に不均一
分布したMoが後熱処理時に拡散し、均一に分布するた
めである。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各要件について詳
しく説明する。なお。以下において、特にことわりのな
い限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0025】《鋼の化学組成について》 C:0.05%以下 Cは、その含有量が0.05%を超えると、溶接時にH
AZにおいて著しい硬化を起こし、耐SSC性を低下さ
せるので、その上限を0.05%とした。
【0026】なお、C含有量は、周溶接性の観点からは
低ければ低いほど好ましいが、0.001%までのC低
減はコスト上昇を招くので、経済性の観点から、その下
限は0.002%程度とするのが望ましい。
【0027】Si:1.0%以下 Siは、添加しなくてもよいが、添加すれば溶鋼の脱酸
に有効である。しかし、1.0%を超えて含有させると
粒界強度の低下を招いて耐SSC性が低下するので、そ
の上限を1.0%とした。
【0028】Mn:5.0%以下 Mnは、上記のSiと同様に、添加しなくてもよいが、
添加すれば母材中にフェライト相が析出するのを抑制し
てマルテンサイト率を高める効果がある。しかし、5.
0%を超えて含有させると粒界強度の低下を招いたり、
硫化水素中で活性溶解したりして耐SSC性が低下する
ので、その上限を5.0%とした。
【0029】P:0.04%以下 Pは、不純物として鋼中に不可避的に存在し、粒界に偏
析して耐SSC性を劣化させる。特に、その含有量が
0.04%を超えると耐SSC性の劣化が著しくなるの
で、その上限を0.04%とした。なお、耐SSC性を
高めるためには、その含有量はできるだけ低くすること
が望ましい。
【0030】S:0.01%以下 Sは、上記のPと同様に、不純物として鋼中に不可避的
にし、粒界に偏析するとともに、硫化物系の介在物を多
量に生成することによって耐SSC性を低下させる。特
に、その含有量が0.01%を超えると耐SSC性の低
下が著しくなるので、その上限を0.01%とした。な
お、耐SSC性を高めるためには、その含有量はできる
だけ低くすることが望ましい。
【0031】Cr:10.0〜15.0% Crは、炭酸ガスに対する耐食性を高める元素である。
この効果を得るためには、10.0%以上の含有量が必
要である。一方、過剰に含有させると、鋼のコスト上昇
を招いて経済性が損なわれる。また、フェライト相の析
出を助長し、母相中の有効Cr量を低め、かつフェライ
ト自身が軟化相であるためにSSCの起点となる。この
観点から、その上限は15.0%である。
【0032】Mo:0.1〜3.0% Moは、耐孔食性を高めることによって微量の硫化水素
環境中での耐SSC性を高める元素である。この効果を
得るためには、0.1%の含有量が必要である。一方、
過剰に含有させると、鋼のコスト上昇を招いて経済性が
損なわれる。また、フェライト相の析出を助長し、母相
中の有効Mo量を低め、かつフェライト自身が軟化相で
あるためにSSCの起点となることが多い。この観点か
ら、その上限は3.0%である。
【0033】Al:0.1%以下 Alは、添加しなくてもよいが、添加すれば溶鋼の脱酸
に有効である。しかし、0.1%を超えて含有させると
粗大なAl系介在物(Al23)が多くなって耐SSC
性が低下するので、その上限を0.1%とした。なお、
本明細書でいうAlとはいわゆる「sol.Al(酸可
溶Al)」のことである。
【0034】Ti:0.1%以下 Tiは、添加しなくてもよいが、添加すれば鋼中の不純
物であるNをTiNとして固定する効果がある。また、
Nの固定に必要とするよりも過剰なTiは、炭化物とな
ってCをトラップし、周溶接部のHAZに於ける硬化を
抑制する。しかし、0.1%を超えて含有させると加工
性を低下させたり、炭窒化物自身がSSCの起点となっ
たりするので、その上限を0.1%とした。
【0035】Ni:0.5×Mn+Niで3.0〜8.
0% Niは、Mnとともにフェライト相の析出を抑制し、マ
ルテンサイト率を高める効果がある。その効果は、0.
5×Mn+Niに依存し、0.5×Mn+Niの値が
3.0%未満のNi含有量ではフェライト相が多量に析
出し、耐SSC性が低下する。一方、0.5×Mn+N
iの値が8.0%を超えるNi含有量では残留オーステ
ナイト相が多量に析出し、耐SSC性が低下する。この
ため、Ni含有は、0.5Mn+Niで3.0〜8.0
%、すなわち「3.0−0.5×Mn≦Ni≦8.0−
0.5×Mn」とした。
【0036】《製造方法について》上記の化学組成を有
する鋼は、通常の方法で溶製した後、例えば連続鋳造法
によって熱延鋼板用の鋳片とし、所定の熱間圧延に供し
て熱延鋼板に成形する。
【0037】次いで、得られた熱延鋼板には、軟化のた
めの焼鈍処理を施す。その際の処理条件(温度T1 と保
持時間t1 )は、特に制限されない。しかし、焼鈍温度
1が低すぎると軟化の効果がなく、逆に高すぎると2
相域で一部再焼入れされ、強度がかえって上昇する。こ
のため、焼鈍温度T1 は、550〜670℃とするのが
好ましい。保持時間t1 については、処理対象の熱延鋼
板の板厚やコイル外径などに応じて調整されるが、10
〜30時間保持すれば十分である。
【0038】また、焼鈍後の冷却方法についても特に制
約はなく、炉冷または放冷で十分である。
【0039】焼鈍処理を施した熱延鋼板は、溶接製管工
程に供して管状に成形し、その突き合わ部を溶接して溶
接管とする。この時の溶接方法は、特に制限されない。
しかし、溶接部の耐SSC性を確保する観点からは、レ
ーザ溶接製管法を用いるのが最も望ましい。
【0040】なお、レーザ溶接製管法とは、熱延鋼板か
らなる素材の帯鋼を連続的に成形ロール群に通してオー
プンパイプ状に成形し、帯鋼幅方向の両端面相互をスク
イズロールによって突き合わせ、この突き合わせ部に、
例えば上方からレーザビームを照射して貫通溶融溶接す
るなどする方法である。この際においても、その溶接条
件に特別な制限はなく、要は安定して貫通溶融溶接でき
る条件で溶接を行えばよい。
【0041】また、上記のレーザ溶接製管法において
は、ERW法で用いられている高周波加熱手段(誘導加
熱コイルやコンタクトチップ)によりオープンパイプ状
に成形された帯鋼の幅方向両端部を予熱してからレーザ
溶接するようにしてもよい。この場合には、製管速度を
速くすることができ、生産性が向上する。
【0042】溶接製管後の溶接管には、後熱処理を施
す。その際の処理条件(温度T2 と保持時間t2 )のう
ち、温度T2 は、850〜1250℃とする必要があ
る。これは、後熱処理の温度T2 が850℃未満では、
温度が低すぎるために、後熱処理の効果がなく、焼鈍処
理時に析出した残留オーステナイト中のMo濃度の特に
低い部分が消滅せず、所望の耐SSC性が確保できな
い。また、1250℃超では、温度が高すぎるために、
組織が粗粒化して耐SSC性が著しく低下し、所望の耐
SSC性が確保できないためである。
【0043】これに対し、保持時間t2 は、特に制約す
る必要はないが、管全体を均質化する観点からは10分
以上とするのが望ましい。
【0044】ただし、上記の後熱処理条件の温度T2
保持時間t2 、なかでも温度T2 は、単に850〜12
50℃の範囲内であればよいのではなく、前述した式
『2000×Mo+T2 (20+logt2 )≧T1
(20+logt1 )』を満たす温度でなければならな
い。これは、前述したように、後熱処理条件の温度T2
と保持時間t2 、なかでも温度T2 が式『2000×M
o+T2 (20+logt2 )≧T1 (20+logt
1 )』を満たさない場合には、焼鈍処理時に不均一分布
したMoが後熱処理時に拡散せず、残留オーステナイト
相中にMo濃度の特に低い部分が残り、所望の耐SSC
性が確保できなくなるためである。
【0045】以上は、焼鈍処理条件(T1とt1)に応じ
て後熱処理条件(T2とt2)を設定する場合について説
明したが、後熱処理条件(T2とt2)に応じて焼鈍処理
条件(T1とt1)を設定するか、両者の処理条件(温度
と保持時間)を同時に変更設定するようにしてもよく、
これらの場合、焼鈍処理条件(T1とt1)は前述した望
ましい範囲外であってもよいことはいうまでもない。要
は、少なくとも後熱処理条件(T2とt2)が式『200
0×Mo+T2 (20+logt2 )≧T1 (20+l
ogt1 )』を満たせばよい。
【0046】なお、式『2000×Mo+T2 (20+
logt2 )≧T1 (20+logt1 )』は、焼鈍処
理時に析出した残留オーステナイト相中の特にMo濃度
の低い部分の耐SSC性に及ぼす影響が、鋼中のMo含
有量が多ければ多いほど小さく、逆にMo含有量が少な
ければ少ないほど大きいことを示している。
【0047】上記の後熱処理後の冷却方法については、
特に制約はなく、水冷による焼入れ処理、放冷による焼
きならし処理、さらには炉冷のいずれであってもよい。
また、後熱処理を施した後にさらなる細粒化を目的とす
る焼入れ処理や強度調整のため焼戻し処理を施してもよ
い。
【0048】
【実施例】表1に示す化学組成を有する24種類の鋼を
溶製し、そのうち鋼No. I〜Lを除く各鋼からなる素材
帯鋼を準備する一方、鋼No. I〜Lについて継目無管製
造用の中実丸ビレットを準備した。なお、表1中、鋼N
o. A〜Lは本発明で規定する範囲内の鋼であり、鋼No.
M〜Xは本発明で規定する範囲外の鋼である。
【0049】
【表1】
【0050】準備した素材帯鋼については、種々の温度
1 にt1 時間加熱保持した後に炉冷または放冷する焼
鈍処理を施した後、溶接製管工程に供してオープンパイ
プ状に成形し、帯鋼幅方向の両端面相互をスクイズロー
ルによって突き合わせ、この突き合わせ部に上方からレ
ーザビームを照射して溶接製管を行ってレーザ溶接管と
した。一方、準備した中実丸ビレットについては、12
50℃に加熱後、マンネスマン−マンドレルミル方式の
熱間継目無製管工程に供して継目無管とした。
【0051】その後、レーザ溶接管については、種々の
温度T2 にt2 時間加熱保持した後に水冷、放冷または
炉冷する後熱処理を施し、次いで種々の温度で焼戻し処
理を施して製品管を得た。一方、継目無管については、
製管後、焼入れ炉に装入して900℃(T2 に相当)に
0.67時間(t2 に相当)加熱保持した後、水冷する
後熱処理(焼入れ)を施し、次いで種々の温度で焼戻し
処理を施して製品管とした。
【0052】得られた各製品管から、母材部および溶接
部が幅方向の中央に位置する応力腐食試験片(厚さ2m
m、幅10mm、長さ75mmのノッチなし)を採取し
た。これらの試験片は、図1に示す4点曲げ付与治具1
にセットして素材帯鋼の降伏応力YSの100%の応力
を付加し、下記条件の応力腐食試験に供して割れの発生
の有無を調べた。評価は、割れの発生が認められなかっ
たものを耐SSC性が良好「○」、割れの発生が認めら
れたものを耐SSC性が不芳「×」とした。
【0053】《応力腐食試験条件》 雰 囲 気:0.01〜0.1atmH2 S−CO2 バラ
ンス、 試験溶液:5%NaCl水溶液、 溶液pH:3.5〜4.5、 溶液温度:25℃、 浸漬時間:336時間。
【0054】なお、試験は、下記の〜の4条件で行
うこととし、素材帯鋼のMo含有量が0.7%未満のも
のについてはの条件、0.7〜1.2%未満のものに
ついてはとの条件、1.2〜2%未満のものについ
ては〜の条件、2%以上のものについては〜の
条件で行った。
【0055】すなわち、硫化水素の分圧が高く、かつp
Hが低いほど、腐食環境としては厳しくなるが、一般
に、Mo含有量が0.1〜0.7%未満の場合はの条
件、0.7〜1.2%未満の場合はの条件、1.2〜
2%未満の場合はの条件、2%以上の場合はの条件
で硫化物応力割れ(SSC)が発生しなければ、充分な
耐SSC性を有しているとみなせるためである。
【0056】また、pHは酢酸と酢酸ナトリウムの混合
比を調整することにより変えた。
【0057】 0.01atmH2S−pH4.5、 0.01atmH2S−pH4、 0.1 atmH2S−pH4、 0.1 atmH2S−pH3.5。
【0058】試験結果を、表2〜表4に、素材帯鋼のM
o含有量、焼鈍条件および降伏応力YSと、後熱処理条
件並びに焼戻し温度とを併せて示した。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】表2〜表4に示す結果から明らかなよう
に、素材帯鋼の化学組成が本発明で規定する範囲内であ
り、その焼鈍条件、および後熱処理条件が本発明で規定
する条件を満たす条件で製造した試番1〜26のレーザ
溶接管は、そのMo含有量に応じ、試番27〜30の継
目無管と同等の良好な耐SSC性を有していた。
【0063】なお、試番27〜30の継目無管は、製管
前の素材丸ビレットに焼鈍処理を施さないので、式『2
000×Mo+T2 (20+logt2 )』で求められ
る値が正であれば、製管時に析出した残留オーステナイ
ト相中のMo濃度の特に低い部分は消滅する。
【0064】これに対し、素材帯鋼の化学組成は本発明
で規定する範囲内であるが、その焼鈍条件、および後熱
処理条件が本発明で規定する条件を満たさない条件で製
造した試番31〜42のレーザ溶接管は、鋼のMo含有
量に応じた耐SSC性を有しておらず、いずれも耐SS
C性が不芳であった。
【0065】また、素材帯鋼の焼鈍条件、および後熱処
理条件は本発明で規定する条件を満たすものの、素材帯
鋼の化学組成が本発明で規定する範囲を外れる鋼からな
る素材帯鋼を用いて製造した試番43〜54のレーザ溶
接管は、試番31〜42のレーザ溶接管の場合と同様
に、鋼のMo含有量に応じた耐SSC性を有しておら
ず、いずれも耐SSC性が不芳であった。
【0066】
【発明の効果】本発明の方法によれば、素材帯鋼の焼鈍
条件と溶接製管後に施す熱処理条件とを所定の関係式が
成立するように調整するという極めて簡単な手段によ
り、母材部の耐SSC性が継目無管のそれと同等の耐S
SC性に優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶
接管を確実に得ることができ、その工業的な価値は絶大
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】硫化物応力腐食割れ試験片に対する曲げ付与状
態を示す模式的正面図である。
【符号の説明】
1:曲げ付与治具。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C22C 38/00 302 C22C 38/00 302Z 38/58 38/58

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.05%以下、Si:
    1.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.04%以
    下、S:0.01%以下、Cr:10.0〜15.0
    %、Mo:0.1〜3.0%、Al:0.1%以下、T
    i:0.10%以下および下記の式を満たすNiを含
    有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる化学組成
    の熱延鋼板に焼鈍熱処理を施し、その熱延鋼板を管状に
    成形して突き合わせ溶接製管した後、850〜1250
    ℃の温度域で加熱保持する後熱処理を施して製品とする
    際、下記の式を満たす条件で少なくとも前記の後熱処
    理を施すことを特徴とする低炭素マルテンサイト系ステ
    ンレス鋼溶接管の製造方法。 3.0−0.5×Mn≦Ni≦8.0−0.5×Mn … ここで、元素記号は鋼中のそれぞれの元素の含有量(重
    量%)を表す。 2000×Mo+T2(20+logt2)≧T1(20+logt1)… ただし、 Mo:鋼中のMo含有量(重量%) T1 :焼鈍熱処理温度(℃) t1 :焼鈍熱処理時間(hr) T2 :後熱処理温度(℃) t2 :後熱処理時間(hr)
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002105604A (ja) * 2000-10-05 2002-04-10 Kawasaki Steel Corp 耐食性および溶接性に優れたラインパイプ用高Crマルテンサイト系ステンレス鋼管およびその製造方法
WO2004040297A1 (en) * 2002-10-30 2004-05-13 Grant Prideco Lp A method of establishing stress relieving procedures for minimizing sulfide stress cracking in cold worked metals

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