JP7498416B1 - Cr-Ni合金管 - Google Patents

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Abstract

Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力YSLTおよび圧縮降伏応力YSLC、ならびに、Cr-Ni合金管の肉厚中央位置から、長手方向が前記管軸方向と平行になるように採取され、高周波誘導加熱および急冷後の試験片の引張降伏応力YSHTが、[0.80≦YSLC/YSLT<0.95]、[YSHT-0.24×YSLT≧50.0]および[YSLT≧443×YSLT/YSLC+2.28×YSHT-350]を満足する、Cr-Ni合金管。

Description

本発明は、Cr-Ni合金管に関する。
近年、原油、天然ガス等の油井およびガス井(以下、油井およびガス井を総称して、単に「油井」という。)の採掘条件は過酷になってきている。そのため、油井に利用される油井管には、CrおよびNiを含有し、優れた耐食性を有するオーステナイト系合金管(以下、「Cr-Ni合金管」ともいう。)が用いられる場合がある。
また、油井管には、優れた耐食性に加えて高い強度も要求される。油井管の強度グレードは一般的に、管軸方向の引張降伏応力で定義される。油井管の需要者は、掘削の対象となる井戸の環境(地層圧力、生産流体の温度および圧力)を試掘および地質調査から割り出し、耐用可能な強度グレードの油井管を選択する。
しかしながら、冷間加工された耐食性合金管において、管軸方向の圧縮降伏強度が、管軸方向の引張降伏応力よりも小さくなることが知られている。上述のとおり、油井管の強度グレードは一般的に、引張降伏強度で応力されている。したがって、圧縮降伏応力と引張降伏応力との差は小さい方が好ましい。
特許文献1には、降伏強度の異方性が小さいため、使用環境によって異なる応力分布が負荷されても、耐用し得るオーステナイト系合金管が開示されている。
国際公開第2012/128258号
ところで、油井管としてのCr-Ni合金管は、他の合金管または鋼管と溶接接合して使用される場合がある。この際、Cr-Ni合金管の溶接部においては、溶接熱によって軟化が生じる。そのため、溶接部における軟化も考慮した上で、対象となる油井環境で耐用可能な強度グレードの油井管を選択する必要がある。
溶接部において軟化が生じた場合であっても、高い強度を維持するためには、冷間加工度を高めることが考えられるが、圧縮降伏応力が引張降伏応力に比べて著しく低下する結果となるため好ましくない。
本発明は、上記の問題を解決し、圧縮降伏応力と引張降伏応力との差を最小限に抑えつつ、高い強度を有するCr-Ni合金管を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のCr-Ni合金管を要旨とする。
(1)Cr-Ni合金管であって、
前記Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力YSLTおよび圧縮降伏応力YSLC、ならびに、
前記Cr-Ni合金管の肉厚中央位置から、長手方向が前記管軸方向と平行になるように採取され、高周波誘導加熱装置を用いて、室温から1150℃まで100℃/sの加熱速度で加熱し、続いて1200℃まで25℃/sの加熱速度で加熱した後、1200℃で180s保持し、その後、Arガスを吹き付けることで、1200℃から800℃までの温度範囲における冷却速度が50℃/sとなる条件で室温まで急冷することで得られる試験片の引張降伏応力YSHTが、
下記(i)式~(iii)式を満足する、
Cr-Ni合金管。
0.80≦YSLC/YSLT<0.95 ・・・(i)
YSHT-0.24×YSLT≧50.0 ・・・(ii)
YSLT≧443×YSLT/YSLC+2.28×YSHT-350 ・・・(iii)
但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
YSLC:管軸方向における圧縮降伏応力(MPa)
YSLT:管軸方向における引張降伏応力(MPa)
YSHT:高周波誘導加熱および急冷後の試験片の引張降伏応力(MPa)
(2)前記Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力YSLTが780MPa以上である、
上記(1)に記載のCr-Ni合金管。
(3)化学組成が、質量%で、
C:0.030%以下、
Si:0.50%以下、
Mn:1.00%以下、
P:0.030%以下、
S:0.0050%以下、
Cr:19.00~32.00%、
Ni:29.50~55.00%、
Mo:2.50~12.00%、
Cu:3.00%以下、
V:0.01~0.50%、
Nb+Ti:0.002~1.000%、
Al:0.001~0.500%、
N:0.005~0.400%、
W:0~1.00%、
Co:0~1.00%、
Sn:0~0.010%、
As:0~0.010%、
Zn:0~0.010%、
Pb:0~0.010%、
Sb:0~0.010%、
B:0~0.0050%、
Ca:0~0.0200%、
Mg:0~0.0200%、
REM:0~0.100%、
残部:Feおよび不純物である、
上記(1)または(2)に記載のCr-Ni合金管。
(4)前記化学組成が、質量%で、
W:0.01~1.00%、
Co:0.01~1.00%、
Sn:0.001~0.010%、
As:0.001~0.010%、
Zn:0.001~0.010%、
Pb:0.0005~0.010%、
Sb:0.0005~0.010%、
B:0.0001~0.0050%、
Ca:0.0005~0.0200%、
Mg:0.0001~0.0200%、および、
REM:0.001~0.100%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(3)に記載のCr-Ni合金管。
(5)前記化学組成が、さらに下記(iv)式および(v)式を満足する、
上記(3)または(4)に記載のCr-Ni合金管。
9Mo+100N≧45.0 ・・・(iv)
Ni+1.4Cu+Mo-0.9Cr-2Si-1.2Mn-5.7C+20N+90(0.15Nb+0.27V+0.3Ti)≦42.0 ・・・(v)
但し、上記式中の元素記号は、合金管中の各元素の含有量(質量%)を意味し、含有されない場合はゼロを代入する。
(6)前記化学組成が、さらに下記(vi)式を満足する、
上記(3)から(5)までのいずれかに記載のCr-Ni合金管。
0.001×YSLT-0.820<N<0.001×YSLT-0.740 ・・・(vi)
但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
YSLC:管軸方向における圧縮降伏応力(MPa)
N:合金管中のN含有量(質量%)
本発明によれば、圧縮降伏応力と引張降伏応力との差を最小限に抑えつつ、高い強度を有するCr-Ni合金管を得ることができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.機械的特性
本実施形態に係るCr-Ni合金管の機械的特性について説明する。本実施形態のCr-Ni合金管は、下記(i)式~(iii)式を満足する機械的特性を有する。なお、本発明において、Cr-Ni合金管とは、Cr:19.00~32.00%およびNi:29.50~55.00%を含有するオーステナイト系合金管を意味する。
<強度の異方性>
本実施形態に係るCr-Ni合金管は、冷間加工による加工硬化によって強度を向上させるが、その後に高温での熱処理を施すと強度が低下し、使用環境で必要な強度を維持できない。すなわち、本実施形態に係るCr-Ni合金管は、冷間加工まま、または冷間加工後に低温での熱処理が施された状態である。そのため、必然的に、Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力の方が、管軸方向における圧縮降伏応力より高くなる。
しかし、管軸方向における圧縮降伏応力と引張降伏応力との差が過剰であると、仮に引張降伏応力が十分であったとしても、圧縮降伏応力が不足し、油井管として使用することができなくなる。そのため、管軸方向における圧縮降伏応力および引張降伏応力が下記(i)式を満足する必要がある。
0.80≦YSLC/YSLT<0.95 ・・・(i)
但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
YSLC:管軸方向における圧縮降伏応力(MPa)
YSLT:管軸方向における引張降伏応力(MPa)
YSLC/YSLTの値は0.82以上であるのが好ましく、0.84以上であるのがより好ましく、0.86以上であるのがさらに好ましい。また、YSLC/YSLTの値は0.94以下としてもよい。
なお、管軸方向における引張降伏応力YSLTについて、特に制限を設ける必要はないが、上述のように、本実施形態に係るCr-Ni合金管は、冷間加工まま、または冷間加工後に低温での熱処理が施された状態であるため、780MPa以上となる。管軸方向における引張降伏応力YSLTは、800MPa以上であるのが好ましく、820MPa以上であるのがより好ましく、840MPa以上であるのがさらに好ましく、850MPa以上であるのがさらに好ましい。
具体的に、管軸方向における圧縮降伏応力は以下の方法により求める。ASTM E9(2019)に準拠した方法で、圧縮試験を行う。Cr-Ni合金管の肉厚中央位置から、圧縮試験用の円柱試験片を作製する。円柱試験片の大きさは、例えば、平行部直径4mm、長さ8mmである。なお、円柱試験片の長手方向は、Cr-Ni合金管の管軸方向と平行である。円柱試験片を用いて、常温(25℃)大気中において、圧縮試験を実施し、得られた0.2%オフセット耐力を管軸方向の圧縮降伏応力YSLC(MPa)と定義する。
同様に、管軸方向における引張降伏応力は以下の方法により求める。ASTM E8/E8M(2021)に準拠した方法で、引張試験を行う。Cr-Ni合金管の肉厚中央位置から、引張試験用の丸棒試験片を作製する。丸棒試験片の大きさは、例えば、平行部直径4mm、標点距離20mmである。なお、丸棒試験片の長手方向は、Cr-Ni合金管の管軸方向と平行である。丸棒試験片を用いて、常温(25℃)、大気中で引張試験を実施して、得られた0.2%オフセット耐力を引張降伏応力YSLT(MPa)と定義する。
<ベース強度>
上述のように、Cr-Ni合金管の強度は冷間加工により向上させることができるが、過度な加工は異方性の増大を招く。そのため、過度な加工を避けるため、冷間加工前の強度、すなわち、加工硬化の効果がない状態での強度(以下、「ベース強度」ともいう。)を十分に確保する必要がある。本発明者らの検討の結果、高周波誘導加熱および急冷によって加工硬化の影響を排除した試験片の引張降伏応力と、Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力とから、ベース強度の指標が得られることを見出した。
具体的には、下記(ii)式を満足することによって、油井管として使用するのに十分なベース強度を有する。
YSHT-0.24×YSLT≧50.0 ・・・(ii)
但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
YSLT:管軸方向における引張降伏応力(MPa)
YSHT:高周波誘導加熱および急冷後の試験片の引張降伏応力(MPa)
なお、高周波誘導加熱および急冷後の試験片は、以下の手順によって得られる。まず、Cr-Ni合金管の肉厚中央位置から、長手方向が管軸方向と平行になるように試験片を採取する。当該試験片は、ASTM E8/E8M(2021)に準拠して作製する。具体的には、合金管の肉厚が6mm以上の場合には、直径が6mm、標点距離が30mmの円柱試験片を用いる。また、合金管の肉厚が6mm未満の場合には、厚さが合金管の肉厚と同じで、標点距離が50mmの円弧状試験片を用いる。
続いて、上記の円柱試験片に対して、高周波誘導加熱装置を用いて、室温から1150℃まで100℃/sの加熱速度で加熱し、続いて1200℃まで25℃/sの加熱速度で加熱する。この際、高周波誘導加熱装置による加熱領域は、試験片の長手方向における中央から両端側にそれぞれ3.5mmの、長手方向に7.0mmの領域とする。また、試験片の温度は、試験片の長手方向における中央部に設置した熱電対を用いて測定する。
その後、試験片を1200℃で180s保持する。保持後直ちに、Arガスを吹き付けることで、1200℃から800℃までの温度範囲における冷却速度が50℃/sとなる条件で室温まで急冷する。そして、高周波誘導加熱および急冷後の試験片を用いて、JIS Z 2241(2011)に準拠して、常温(25℃)大気中において、引張試験を実施し、得られた0.2%オフセット耐力を高周波誘導加熱および急冷後の試験片の引張降伏応力YSHT(MPa)と定義する。
<加工硬化能>
異方性の増大を抑制しつつ、冷間加工によって強度を向上させるためには、少ない加工度でも効率的に加工硬化させることができる優れた加工硬化能が必要である。本発明者らが鋭意研究を行った結果、異方性の指標であるYSLC/YSLTの逆数、すなわちYSLT/YSLCが加工度の指標ともなることを見出した。そして、Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力と、加工度の指標であるYSLT/YSLCと、高周波誘導加熱および急冷によって加工硬化の影響を排除した試験片の引張降伏応力YSHTとの関係式が、加工硬化能の指標となることを見出すに至った。
具体的には、下記(iii)式を満足することによって、油井管として使用するのに十分な加工硬化能を有する。
YSLT≧443×YSLT/YSLC+2.28×YSHT-350 ・・・(iii)
但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
YSLC:管軸方向における圧縮降伏応力(MPa)
YSLT:管軸方向における引張降伏応力(MPa)
YSHT:高周波誘導加熱および急冷後の試験片の引張降伏応力(MPa)
以上のとおり、Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力および圧縮降伏応力、ならびに高周波誘導加熱および急冷後の試験片の引張降伏応力の3つの機械的特性値から、溶接部において軟化が生じた場合であっても、高い強度を維持することができ、信頼性の高い油井管の素材となるCr-Ni合金管を選択することが可能となる。
2.化学組成
本実施形態に係るCr-Ni合金管の化学組成については、所定量のCrおよびNiを含み、かつ上述した機械的特性を有する限りにおいて特に制限されない。本実施形態に係るCr-Ni合金管は、例えば、以下に示す化学組成を有することが好ましい。各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.030%以下
炭素(C)は、合金の強度を高める効果を有する元素である。しかしながら、Cが過剰に含有されれば、結晶粒界にCr炭化物を形成する。Cr炭化物は、粒界での応力腐食割れ(SCC)感受性を増大する。したがって、C含有量は0.030%以下である。好ましいC含有量は、0.030%未満であり、より好ましくは0.025%であり、さらに好ましくは0.020%以下である。好ましいC含有量の下限は、0.001%であり、より好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。
Si:0.50%以下
シリコン(Si)は、合金を脱酸する作用を有する元素である。しかしながら、Siが過剰に含有されれば、合金の熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は0.50%以下である。好ましいSi含有量は、0.50%未満である。好ましいSi含有量の上限は、0.45%であり、より好ましくは、0.40%である。好ましいSi含有量の下限は、0.05%であり、より好ましくは、0.10%である。
Mn:1.00%以下
マンガン(Mn)は、合金を脱酸する作用を有する元素である。Mnはまた、オーステナイト形成元素であり、オーステナイト相を安定化させる。しかしながら、Mnが過剰に含有されれば、合金の熱間加工性が低下する。したがって、Mn含有量は1.00%以下である。好ましいMn含有量は、1.00%未満である。好ましいMn含有量の上限は、0.90%であり、より好ましくは、0.80%である。好ましいMn含有量の下限は、0.10%であり、より好ましくは、0.30%である。
P:0.030%以下
リン(P)は不純物元素である。Pは、硫化水素環境下において、合金の応力腐食割れ感受性を高める。したがって、P含有量は少ない方が好ましく、0.030%以下である。好ましいP含有量は、0.025%以下であり、より好ましくは、0.020%以下である。
S:0.0050%以下
硫黄(S)は不純物元素である。Sは、合金の熱間加工性を低下する。したがって、S含有量は少ない方が好ましく、0.0050%以下である。好ましいS含有量は、0.0030%以下であり、より好ましくは、0.0010%以下である。
Cr:19.00~32.00%
クロム(Cr)は、Niとの共存下において、合金の耐応力腐食割れ性(耐SCC性)を高める効果を有する元素である。Crはさらに、固溶強化により合金の強度を高める。一方、Crが過剰に含有されれば、その効果は飽和し、さらに、合金の熱間加工性が低下する。したがって、Cr含有量は19.00~32.00%である。好ましいCr含有量の下限は、21.00%であり、より好ましくは、23.00%である。好ましいCr含有量の上限は、30.00%であり、より好ましくは、28.00%である。
Ni:29.50~55.00%
ニッケル(Ni)は、オーステナイト形成元素であり、オーステナイト相を安定化させる効果を有する元素である。Niはさらに、耐SCC性を高める。しかしながら、Niが過剰に含有されれば、その効果は飽和する。したがって、Ni含有量は29.50~55.00%である。好ましいNi含有量の下限は、34.00%であり、より好ましくは、40.00%である。好ましいNi含有量の上限は、53.00%であり、より好ましくは50.00%である。
Mo:2.50~12.00%
モリブデン(Mo)は、CrおよびNiとの共存下において、合金の耐SCC性を高める効果を有する元素である。Moはさらに、固溶強化により合金の強度を高める。しかしながら、Moが過剰に含有されれば、その効果は飽和し、さらに、合金の熱間加工性が低下する。したがって、Mo含有量は2.50~12.00%である。好ましいMo含有量の下限は3.50%であり、より好ましくは、5.00%である。好ましいMo含有量の上限は、10.00%であり、より好ましくは8.00%である。
Cu:3.00%以下
銅(Cu)は、不働態皮膜の安定化に効果があり、耐孔食性および耐全面腐食性を向上させるのに有効な元素である。しかしながら、Cuが過剰に含有されれば、その効果は飽和し、さらに、熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は3.00%以下である。好ましいCu含有量は2.00%以下であり、より好ましくは、1.20%以下である。好ましいCu含有量の下限は、0.10%であり、より好ましくは、0.50%である。
V:0.01~0.50%
バナジウム(V)は、炭化物、窒化物または炭窒化物として粒内に微細に析出することで合金の強度を高める効果を有する元素である。また、結晶粒界をピン止めすることによって結晶粒を細粒化させる効果も有する。Vはさらに、Nの合金中への溶解度を高めることで、合金の強度を高めるためにN含有量を多くしたときに、表面近傍にピンホールが発生するのを抑制する。しかしながら、Vが過剰に含有されれば、析出物の量が過剰となり、靱性が低下するだけでなく、熱影響部における溶接割れのリスクが増大する。したがって、V含有量は0.01~0.50%である。好ましいV含有量の下限は0.02%であり、より好ましくは、0.03%である。好ましいV含有量の上限は、0.35%であり、より好ましくは0.20%である。
Nb+Ti:0.002~1.000%
ニオブ(Nb)およびチタン(Ti)は、炭化物、窒化物または炭窒化物として粒内に微細に析出することで合金の強度を高める効果を有する元素である。また、結晶粒界をピン止めすることによって結晶粒を細粒化させる効果も有する。NbおよびTiはさらに、Nの合金中への溶解度を高めることで、合金の強度を高めるためにN含有量を多くしたときに、表面近傍にピンホールが発生するのを抑制する。しかしながら、Nbおよび/またはTiが過剰に含有されれば、析出物の量が過剰となり、靱性が低下するだけでなく、熱影響部における溶接割れのリスクが増大する。したがって、NbおよびTiの一方または両方を含有し、その合計含有量は0.002~1.000%である。好ましい合計含有量の下限は0.010%であり、より好ましくは、0.030%である。好ましい合計含有量の上限は、0.500%であり、より好ましくは0.300%である。
Al:0.001~0.500%
アルミニウム(Al)は、合金を脱酸する作用を有する元素である。しかしながら、Alが過剰に含有されれば、清浄度を害し、加工性および延性が劣化する。したがって、Al含有量は0.001~0.500%である。好ましいAl含有量の下限は、0.005%であり、より好ましくは、0.010%である。好ましいAl含有量の上限は、0.300%であり、より好ましくは、0.100%である。なお、本発明において、Al含有量とは、酸可溶Al(所謂「sol.Al」)の含有量を指す。
N:0.005~0.400%
窒素(N)は、固溶強化により合金の強度を高める。Nを含有して固溶化熱処理を実施すれば、高強度を有する合金管が得られる。高強度を有する合金管を利用すれば、低加工度の冷間加工であっても、冷間加工後の合金管に所望の強度が得られる。しかしながら、Nが過剰に含有されれば、合金の凝固時に表面近傍にピンホールが発生しやすくなる。さらに、Nは合金の熱間加工性を低下する。したがって、N含有量は、0.005~0.400%である。好ましいN含有量の下限は、0.010%であり、より好ましくは、0.030%であり、さらに好ましくは、0.060%である。好ましいN含有量の上限は、0.350%であり、より好ましくは、0.300%である。
本実施形態に係るCr-Ni合金管には、上記の元素に加えてさらに、W、Co、Sn、As、Zn、Pb、Sb、B、Ca、MgおよびREMから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。なお、いずれの元素の含有量にも下限を設ける必要はなく、0%であってもよい。
W:0~1.00%
タングステン(W)は選択元素である。したがって、Wは含有されなくてもよい。Wは、耐SCC性を高める効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Wが過剰に含有されれば、その効果は飽和し、さらに、熱間加工性が低下する。したがって、W含有量は1.00%以下である。好ましいW含有量は0.50%以下であり、より好ましくは、0.30%以下である。好ましいW含有量の下限は、0.01%であり、より好ましくは、0.05%である。
Co:0~1.00%
コバルト(Co)は選択元素である。したがって、Coは含有されなくてもよい。Coは、Niと同様、オーステナイト相の安定性を高める効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため含有量が多くなるとコストの上昇を招く。したがって、Co含有量は1.00%以下である。好ましいCo含有量は0.50%以下であり、より好ましくは、0.30%以下である。好ましいCo含有量の下限は、0.01%であり、より好ましくは、0.05%である。
Sn:0~0.010%
スズ(Sn)は選択元素である。したがって、Snは含有されなくてもよい。Snは、溶接中の溶融池の対流に影響を与え、溶け込み深さを大きくし、溶接性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Snが過剰に含有されれば、溶接割れ感受性を高めるだけでなく、耐食性の低下を招く。したがって、Sn含有量は0.010%以下である。好ましいSn含有量は0.008%以下であり、より好ましくは、0.006%以下である。好ましいSn含有量の下限は、0.001%であり、より好ましくは、0.002%である。
As:0~0.010%
ヒ素(As)は選択元素である。したがって、Asは含有されなくてもよい。Asは、溶接中の溶融池の対流に影響を与え、溶け込み深さを大きくし、溶接性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Asが過剰に含有されれば、溶接割れ感受性を高めるだけでなく、耐食性の低下を招く。したがって、As含有量は0.010%以下である。好ましいAs含有量は0.008%以下であり、より好ましくは、0.006%以下である。好ましいAs含有量の下限は、0.001%であり、より好ましくは、0.002%である。
Zn:0~0.010%
亜鉛(Zn)は選択元素である。したがって、Znは含有されなくてもよい。Znは、溶接中の溶融池の対流に影響を与え、溶け込み深さを大きくし、溶接性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Znが過剰に含有されれば、溶接割れ感受性を高めるだけでなく、耐食性の低下を招く。したがって、Zn含有量は0.010%以下である。好ましいZn含有量は0.008%以下であり、より好ましくは、0.006%以下である。好ましいZn含有量の下限は、0.001%であり、より好ましくは、0.002%である。
Pb:0~0.010%
鉛(Pb)は選択元素である。したがって、Pbは含有されなくてもよい。Pbは、溶接中の溶融池の対流に影響を与え、溶け込み深さを大きくし、溶接性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Pbが過剰に含有されれば、溶接割れ感受性を高めるだけでなく、耐食性の低下を招く。したがって、Pb含有量は0.010%以下である。好ましいPb含有量は0.008%以下であり、より好ましくは、0.006%以下である。好ましいPb含有量の下限は、0.0005%であり、より好ましくは、0.001%である。
Sb:0~0.010%
アンチモン(Sb)は選択元素である。したがって、Sbは含有されなくてもよい。Sbは、溶接中の溶融池の対流に影響を与え、溶け込み深さを大きくし、溶接性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Sbが過剰に含有されれば、溶接割れ感受性を高めるだけでなく、耐食性の低下を招く。したがって、Sb含有量は0.010%以下である。好ましいSb含有量は0.008%以下であり、より好ましくは、0.006%以下である。好ましいSb含有量の下限は、0.0005%であり、より好ましくは、0.001%である。
B:0~0.0050%
ホウ素(B)は選択元素である。したがって、Bは含有されなくてもよい。Bは、粒界強化に寄与する元素であり熱間加工性を向上させるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bが過剰に含有されれば、その効果は飽和し、さらに、溶接時に熱影響部の粒界で液化割れを生じてしまう。したがって、B含有量は0.0050%以下である。好ましいB含有量は0.0030%以下であり、より好ましくは、0.0015%以下である。好ましいB含有量の下限は、0.0001%であり、より好ましくは、0.0003%である。
Ca:0~0.0200%
カルシウム(Ca)は、選択元素である。したがって、Caは含有されなくてもよい。Caは、Sを硫化物として固着し、合金の熱間加工性を高める効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Caが過剰に含有されれば、粗大な酸化物が形成され、合金の熱間加工性がかえって低下する。したがって、Ca含有量は0.0200%以下である。好ましいCa含有量は0.0100%以下であり、より好ましくは、0.0050%以下である。好ましいCa含有量の下限は、0.0005%であり、より好ましくは、0.0010%である。
Mg:0~0.0200%
マグネシウム(Mg)は、選択元素である。したがって、Mgは含有されなくてもよい。Mgは、Caと同様に、Sを硫化物として固着して、合金の熱間加工性を高める効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mgが過剰に含有されれば、粗大な酸化物が形成され、合金の熱間加工性がかえって低下する。したがって、Mg含有量は0.0200%以下である。好ましいMg含有量は0.0100%以下であり、より好ましくは、0.0050%以下であり、さらに好ましくは、0.0020%以下である。好ましいMg含有量の下限は、0.0001%であり、より好ましくは、0.0005%である。
REM:0~0.100%
希土類元素(REM)は、選択元素である。したがって、REMは含有されなくてもよい。REMは、CaおよびMgと同様に、Sを硫化物として固着して、合金の熱間加工性を高める効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、REMが過剰に含有されれば、粗大な酸化物が形成され、合金の熱間加工性がかえって低下する。したがって、REM含有量は0.100%以下である。好ましいREM含有量は0.050%以下であり、より好ましくは、0.030%以下である。好ましいREM含有量の下限は、0.001%であり、より好ましくは、0.005%である。
本実施形態において「REM」とは、Sc、Y、およびランタノイドの合計17元素を指し、「REMの含有量」とは、REMが1種の場合はその含有量、2種以上の場合はそれらの合計含有量を指す。また、REMは一般的には複数種のREMの合金であるミッシュメタルとしても供給されている。このため、個別の元素を1種または2種以上添加して含有させてもよいし、例えば、ミッシュメタルの形で添加してもよい。
本実施形態に係るCr-Ni合金管は、上述の各元素を含有し、残部がFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、合金材料を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本実施形態に係るCr-Ni合金管の化学組成は、さらに下記(iv)式および(v)式を満足することが好ましい。
9Mo+100N≧45.0 ・・・(iv)
Ni+1.4Cu+Mo-0.9Cr-2Si-1.2Mn-5.7C+20N+90(0.15Nb+0.27V+0.3Ti)≦42.0 ・・・(v)
但し、上記式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味し、含有されない場合はゼロを代入する。
本発明者らが種々のCr-Ni合金管について、機械的特性と化学組成との関係を解析した結果、上記の化学組成においては、MoおよびNがベース強度に特に寄与することが明らかになった。そして、上記(iv)式を満足することによって、安定して高いベース強度が得られることが分かった。
なお、9Mo+100Nの値に上限を設ける必要はないが、熱間加工性の低下を抑制する観点からは、85.0以下であるのが好ましく、83.0以下であるのがより好ましい。
加えて、積層欠陥エネルギーに影響する元素に着目し、機械的特性と化学組成との関係を解析した結果、上記(v)式を満足することによって、安定して優れた加工硬化能が得られることが明らかになった。
(v)式左辺値に下限を設ける必要はなく、低ければ低いほど好ましいが、各元素の含有量の範囲から、実質的な下限値は1.2となる。
本実施形態に係るCr-Ni合金管の化学組成は、さらに下記(vi)式を満足することが好ましい。上述のように、冷間加工度が高い場合には異方性が大きくなる傾向にある。しかし、N含有量を、Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力との関係において、下記(vi)式を満足するように調整することで、900MPa以上の強度を有する場合においても、異方性の増大を抑制しやすくなる。
0.001×YSLT-0.820<N<0.001×YSLT-0.740 ・・・(vi)
YSLC:管軸方向における圧縮降伏応力(MPa)
N:合金管中のN含有量(質量%)
3.製造方法
本実施形態に係るCr-Ni合金管の製造方法の一例について説明する。
まず、オーステナイト系合金を溶製して溶湯を製造する。合金の溶製には、電気炉、Ar-O混合ガス底吹き脱炭炉(AOD炉)、真空脱炭炉(VOD炉)等を利用できる。
続いて、溶湯を用いて鋳造材を製造する。鋳造材は例えば、インゴット、スラブまたはブルームである。具体的には、造塊法によりインゴットを製造するか、または、連続鋳造法により、スラブもしくはブルームを製造する。
次に、鋳造材を熱間加工して丸ビレットを製造する。熱間加工は例えば、熱間圧延または熱間鍛造である。製造された丸ビレットを熱間加工して、素管を製造する。具体的には、ユジーンセジュルネ法に代表される押出製管法により、丸ビレットから素管を製造する。または、マンネスマン製管法により、丸ビレットから素管を製造する。
製造された素管に対して、冷間加工を実施する。冷間加工には、冷間引抜と、ピルガー圧延に代表される冷間圧延とがある。本発明においては、冷間引抜および冷間圧延のいずれを採用してもよい。冷間引抜は、冷間圧延と比較して、管軸方向に大きな引張ひずみを合金管に与える。冷間圧延は、素管の管軸方向だけでなく管周方向にも大きなひずみを与える。したがって、冷間圧延は、冷間引抜と比較して、素管の管周方向に大きな圧縮ひずみを与える。
冷間加工時の好ましい断面減少率は、15%以上である。ここで、断面減少率は、下記(I)式で定義される。好ましい断面減少率の下限は、20%である。一方、断面減少率が高すぎれば、合金管の真円度が低下するだけでなく、異方性が顕著になる。したがって、冷間加工時の好ましい断面減少率の上限は50%である。
断面減少率(%)=100×(冷間加工前の素管の断面積-冷間加工後の素管の断面積)/冷間加工前の素管の断面積 ・・・(I)
熱間加工と冷間加工との間に、他の処理が実施されてもよい。例えば、熱間加工された素管に対して、固溶化熱処理を実施してもよい。その場合、固溶化熱処理後の素管に対してデスケーリングを実施してスケールを除去した後に、冷間加工を実施する。さらに、冷間加工を複数回実施してもよい。冷間加工を複数回実施する場合、冷間加工と次の冷間加工との間に、軟化熱処理として固溶化熱処理を実施してもよい。
また、冷間加工後に、異方性の低減を目的として、傾斜ロール式矯正機による矯正加工および/または低温での熱処理を施してもよい。矯正加工と低温熱処理とはいずれを先に実施してもよい。ただし、熱処理温度が高すぎる場合、降伏応力が過度に低減し、使用環境で必要な強度を維持することができなくなる。そのため、低温熱処理を施す場合には、加熱温度は300~550℃とし、400~500℃とするのが好ましい。
以上の工程によって得られた合金管の寸法については特に制限はないが、使用環境で必要な強度を維持する観点からは、合金管の肉厚は4mm以上であるのが好ましく、6mm以上であるのがより好ましく、8mm以上であるのがさらに好ましく、10mm以上であるのがさらに好ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する合金を真空中で溶解、鋳造し、外径120mm、30kgのインゴットを得た。このインゴットに対して熱間鍛造を実施して、厚さ50mmの素材とした。熱間鍛造前のインゴットの温度は1200℃であった。さらに、素材に対して熱間圧延を実施した。この際、製品強度を変化させるべく、表2に示す冷間加工率を付与した後に、冷間圧延後の厚さが11.5mmに統一されるように逆算して、中間合金材(合金板)の板厚を決定した。その後、表2に示す温度で10分熱処理した後に水冷する軟化熱処理を施した。続いて、表2に示す冷間加工率を付与して11.5mm厚さに統一した。試験No.22、23については、冷間加工後にさらに表2に示す温度で10分熱処理した後に水冷する溶体化熱処理を施した。また、試験No.24については、冷間加工は行わなかった。なお、本実施例においては、実験の容易さの観点から合金管ではなく合金板を用いた。
Figure 0007498416000001
Figure 0007498416000002
続いて、上述の方法で、管軸方向の圧縮降伏応力YSLC(MPa)および引張降伏応力YSLT(MPa)を求めた。具体的には、各試験番号の合金板の板厚中央位置から、長手方向が圧延方向と平行になるように、圧縮試験用の円柱試験片、引張試験用の丸棒試験片を採取した。円柱試験片は、平行部直径4mm、長さ8mmであった。丸棒試験片は、平行部直径4mm、標点距離20mmであった。圧縮試験用の円柱試験片に対して、ASTM E9(2019)に準拠した方法で、常温(25℃)大気中において、圧縮試験を実施した。圧縮試験により得られた0.2%オフセット耐力を管軸方向の圧縮降伏応力YSLC(MPa)とした。さらに、引張試験用の丸棒試験片に対して、常温(25℃)、大気中でASTM E8/E8M(2013)に準拠した方法で、引張試験を実施した。引張試験により得られた0.2%オフセット耐力を管軸方向の引張降伏応力YSLT(MPa)とした。
さらに、上述の方法で、高周波誘導加熱および急冷後の試験片の引張降伏応力YSHT(MPa)を求めた。具体的には、各試験番号の合金板の板厚中央位置から、長手方向が圧延方向と平行になるように、高周波誘導加熱および急冷を施すための円柱試験片を採取した。なお、円柱試験片はASTM E8/E8M(2021)に準拠して作製し、直径が6mm、標点距離が30mmであった。高周波誘導加熱および急冷を施すための円柱試験片を、高周波誘導加熱装置を用いて、室温から1150℃まで100℃/sの加熱速度で加熱し、続いて1200℃まで25℃/sの加熱速度で加熱した。この際、高周波誘導加熱装置による加熱領域は、試験片の長手方向における中央から両端側にそれぞれ3.5mmの、長手方向に7.0mmの領域とした。また、試験片の温度は、試験片の長手方向における中央部に設置した熱電対を用いて測定した。
その後、試験片を1200℃で180s保持した。保持後直ちに、Arガスを吹き付けることで、1200℃から800℃までの温度範囲における冷却速度が50℃/sとなる条件で室温まで急冷した。そして、高周波誘導加熱および急冷後の試験片を用いて、JIS Z 2241(2011)に準拠して、常温(25℃)大気中において、引張試験を実施し、得られた0.2%オフセット耐力を高周波誘導加熱および急冷後の試験片の引張降伏応力YSHT(MPa)とした。
得られた結果を表2に併せて示す。表2に示されるように、本発明の規定を全て満足する合金材は、780MPa以上の高い引張降伏応力を有し、かつYSLC/YSLTを0.80以上とすることが可能である。
本発明によれば、圧縮降伏応力と引張降伏応力との差を最小限に抑えつつ、高い強度を有するCr-Ni合金管を得ることができる。そのため、本発明に係るCr-Ni合金管を油井管の素材として選択することにより、溶接部において軟化が生じた場合であっても、高い強度を維持することが可能な、信頼性の高い油井管を得ることができる。

Claims (6)

  1. Cr-Ni合金管であって、
    前記Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力YSLTおよび圧縮降伏応力YSLC、ならびに、
    前記Cr-Ni合金管の肉厚中央位置から、長手方向が前記管軸方向と平行になるように採取され、高周波誘導加熱装置を用いて、室温から1150℃まで100℃/sの加熱速度で加熱し、続いて1200℃まで25℃/sの加熱速度で加熱した後、1200℃で180s保持し、その後、Arガスを吹き付けることで、1200℃から800℃までの温度範囲における冷却速度が50℃/sとなる条件で室温まで急冷することで得られる試験片の引張降伏応力YSHTが、
    下記(i)式~(iii)式を満足し、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.030%以下、
    Si:0.50%以下、
    Mn:1.00%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.0050%以下、
    Cr:19.00~32.00%、
    Ni:29.50~55.00%、
    Mo:2.50~12.00%、
    Cu:3.00%以下、
    V:0.01~0.50%、
    Nb+Ti:0.002~1.000%、
    Al:0.001~0.500%、
    N:0.005~0.400%、
    W:0~1.00%、
    Co:0~1.00%、
    Sn:0~0.010%、
    As:0~0.010%、
    Zn:0~0.010%、
    Pb:0~0.010%、
    Sb:0~0.010%、
    B:0~0.0050%、
    Ca:0~0.0200%、
    Mg:0~0.0200%、
    REM:0~0.100%、
    残部:Feおよび不純物である、
    Cr-Ni合金管。
    0.80≦YSLC/YSLT<0.95 ・・・(i)
    YSHT-0.24×YSLT≧50.0 ・・・(ii)
    YSLT≧443×YSLT/YSLC+2.28×YSHT-350 ・・・(iii)
    但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
    YSLC:管軸方向における圧縮降伏応力(MPa)
    YSLT:管軸方向における引張降伏応力(MPa)
    YSHT:高周波誘導加熱および急冷後の試験片の引張降伏応力(MPa)
  2. 前記Cr-Ni合金管の管軸方向における引張降伏応力YSLTが780MPa以上である、
    請求項1に記載のCr-Ni合金管。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    W:0.01~1.00%、
    Co:0.01~1.00%、
    Sn:0.001~0.010%、
    As:0.001~0.010%、
    Zn:0.001~0.010%、
    Pb:0.0005~0.010%、
    Sb:0.0005~0.010%、
    B:0.0001~0.0050%、
    Ca:0.0005~0.0200%、
    Mg:0.0001~0.0200%、および、
    REM:0.001~0.100%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1に記載のCr-Ni合金管。
  4. 前記化学組成が、さらに下記(iv)式および(v)式を満足する、
    請求項1から請求項3までのいずれかに記載のCr-Ni合金管。
    9Mo+100N≧45.0 ・・・(iv)
    Ni+1.4Cu+Mo-0.9Cr-2Si-1.2Mn-5.7C+20N+90(0.15Nb+0.27V+0.3Ti)≦42.0 ・・・(v)
    但し、上記式中の元素記号は、合金管中の各元素の含有量(質量%)を意味し、含有されない場合はゼロを代入する。
  5. 前記化学組成が、さらに下記(vi)式を満足する、
    請求項1から請求項3までのいずれかに記載のCr-Ni合金管。
    0.001×YSLT-0.820<N<0.001×YSLT-0.740 ・・・(vi)
    但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
    YS LT :管軸方向における引張降伏応力(MPa)
    N:合金管中のN含有量(質量%)
  6. 前記化学組成が、さらに下記(vi)式を満足する、
    請求項4に記載のCr-Ni合金管。
    0.001×YSLT-0.820<N<0.001×YSLT-0.740 ・・・(vi)
    但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
    YS LT :管軸方向における引張降伏応力(MPa)
    N:合金管中のN含有量(質量%)
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