JPH09164425A - 低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造方法 - Google Patents

低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造方法

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JPH09164425A
JPH09164425A JP7328450A JP32845095A JPH09164425A JP H09164425 A JPH09164425 A JP H09164425A JP 7328450 A JP7328450 A JP 7328450A JP 32845095 A JP32845095 A JP 32845095A JP H09164425 A JPH09164425 A JP H09164425A
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朋彦 大村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐硫化物応力割れ性に優れる低炭素マルテンサ
イト系ステンレス鋼溶接管のレーザー溶接による製造方
法の提供。 【解決手段】(1)重量%で、C:0.05%以下、C
r:10〜14%を含む帯鋼を管状に加工後、常温〜1
000℃にある突き合わせた両エッヂ部を下記の、
によりレーザー溶接し、850〜1000℃に加熱し、
20℃/s以上にて300℃以下まで冷却後600〜7
00℃に加熱し、20℃/s以下にて常温まで冷却する
低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造法。 P≧15kW、 0.4≦P・{exp(a・
T)}/(V・t)≦2 ただし P:レーザー出力(kW)、a:定数(=0.
0006)、T:溶接前温度(℃)、V:溶接速度(m
/min)、t:帯鋼の肉厚(mm) (2)前記(1)により製管溶接した鋼管を700〜9
00℃に加熱後、20℃/s以下にて常温まで冷却する
低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラインパイプ、油
井管および化工機用配管等に好適な耐硫化物応力割れ性
等に優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼管の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼
は、NiやMo等の高価な元素の含有量が少ないため、
オーステナイト系ステンレス鋼や2相ステンレス鋼より
も比較的安価で、かつ良好な機械的性質および耐食性を
有する。さらに、低炭素であることは、Cr炭化物の析
出量を減少させ、かつ溶接したときの硬度上昇も低下さ
せるので、一般のマルテンサイト系ステンレス鋼に比べ
て耐食性および溶接性の向上をもたらす。そのため、低
炭素マルテンサイト系ステンレス鋼は、ラインパイプ、
油井管および化工機用等の材料に広く用いられている。
【0003】従来、上記の低炭素マルテンサイト系ステ
ンレス鋼からなる溶接管は、素材である帯鋼を連続的に
成形ロール群に通し管状に成形して帯鋼エッヂ部を突き
合わせ、この突き合わせ部を溶接して製造されていた。
溶接方法としては、電縫溶接法(以下、ERW法とい
う)や、ガス・タングステン・アーク溶接法(以下GT
AW法という)あるいはサブマージ・アーク溶接法(以
下、SAW法という)が用いられる。例えば、特開平4
−191319号公報および特開平4−191320号
公報には、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼からな
る帯鋼を用いたERW法によるラインパイプおよび油井
管の製造方法が提示されている。
【0004】ERW法や、GTAW法およびSAW法等
のアーク溶接法によって低炭素マルテンサイト系ステン
レス鋼溶接管を製管溶接する場合、溶接シーム部の溶接
金属に隣接して熱影響部(以下、HAZという)を生じ
る。HAZでは、程度の差はあるが、たとえ低炭素であ
っても炭素の固溶による硬化や、元素分配の不均一化に
よる耐食性の劣化が起こる。これは、Crを含んだ不動
態皮膜の密着性などが劣化するためである。このような
不動態皮膜の劣化および硬度上昇は、ただちに耐硫化物
応力割れ性の劣化の原因となる。したがって、なにも対
策をとらずに溶接ままの鋼管を硫化水素を含む環境中で
用いると、HAZの硫化物応力割れが発生する。このた
め上記の溶接法ではHAZを含む溶接部の性能改善のた
め、溶接時にフィラーワイヤを用いて所定の合金成分を
溶接金属中に添加し組織を改善するか、または製管溶接
後に硬さ低減などを目的に管全体または溶接部に後熱処
理を施していた。
【0005】しかし、後熱処理で改善を図ろうとして
も、HAZの耐食性は完全には回復せず、母材に比べて
HAZを含む溶接部の耐硫化物応力割れ性は劣る。例え
ば局部加熱可能な環状の誘導加熱コイルあるいはコンタ
クトチップを用いた高周波加熱による後熱処理を施した
だけでは、HAZの耐食性は劣化したままである。
【0006】また、管全体の後熱処理を電気炉中で行え
ばHAZの硬度および耐食性は母材のそれに近づくが、
連続製管した長尺のパイプを切断し、個々に後熱処理を
施すことは製造コスト上望ましくない。
【0007】また、最近では、生産性の向上および溶接
部の美麗さから製管溶接へのレーザー溶接法の適用も増
えている。オーステナイト系ステンレス鋼(特開昭63
−278688号公報)、フェライト系ステンレス鋼
(特開昭63−278689号公報)および含Mo合金
(特開昭63−278690号公報)を素材として、レ
ーザー溶接した管の溶接部の機械的性質を改善する方法
が提示されている。それによれば、溶接シーム部を構成
する溶接金属に対して後熱処理を施して溶接金属の機械
的性質の回復を図ることが必要であると記されている。
【0008】しかし、短時間の後熱処理では硬化したH
AZを完全には軟化することはできず、HAZの耐硫化
物応力割れ性が母材と比べて劣化するという事態は避け
られなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐硫化物応
力割れ性に優れた、美麗な溶接部をもつ低炭素マルテン
サイト系ステンレス鋼溶接管を、レーザー溶接により生
産性良く製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】突き合わせた両エッヂ部
の接合にレーザー溶接法を用いれば、ERW等の従来の
溶接法に比べ溶接金属の加熱速度および冷却速度を大き
くでき、したがってHAZの硬化幅を狭くでき、かつ元
素分配の不均一化を防ぐことができる。しかし、HAZ
の硬度上昇は従来の溶接法より大きくなる。この原因
は、従来の溶接法によるHAZでは炭素の固溶による硬
化はあるが、溶接時に投入された熱量により冷却時に焼
鈍されるため、HAZのマルテンサイト中の転位密度が
減少するのに対して、レーザー溶接法の場合、HAZで
は炭素の固溶によるマルテンサイトの硬化に加え、溶接
時に投入される熱量が小さいために焼鈍が不足し、マル
テンサイト中に転位が高密度で残留することにある。
【0011】本研究者らは上記のレーザー溶接における
HAZの硬さを低減する方法を、実験により検討し、レ
ーザー出力を大きくすればHAZの硬化が抑えられるこ
とを確認した。特に15kW以上の出力下でレーザー溶
接した後さらに後熱処理を行えば、HAZの硬化がほと
んど無くなることを確認した。また、硬化の問題がこの
ように解決されれば、レーザー溶接法特有の溶接金属で
の大きな冷却速度は、そのこと自体、皮膜の耐食性能の
劣化を小さくする利点をもたらす。
【0012】これらの方法に加えて、両エッヂ部に対し
溶接前に加熱(予熱)を行えば、さらに効果的に製品で
のHAZの硬さは低減される。
【0013】本発明法では、上記したレーザー出力P
(kW)に対する条件に加えて、溶接速度V(m/m
in)、素材の帯鋼厚さt(mm)および溶接前の両エ
ッヂ部の温度T(℃)に対して下記のの条件を満たす
必要がある。
【0014】 P≧15kW 0.4≦P・{exp(a・T)}/(V・t)≦
2 ただし a:定数(=0.0006) さらに、溶接ままでは溶接金属自身は粗大な焼入マルテ
ンサイト組織であるため、耐硫化物応力割れ性が不足す
る場合があるので、下記の(a) または(b) の後熱処理の
うちいずれかを行う必要がある。
【0015】(a) 850〜1000℃(850℃以上1
000℃以下、以下同じ意味とする)の温度域に加熱
後、20℃/s以上の冷却速度で300℃以下まで冷却
し、その後600〜700℃の温度域に加熱し、20℃
/s以下の冷却速度で常温まで冷却する。
【0016】(b) 700〜900℃の温度域に加熱後、
20℃/s以下の冷却速度で常温まで冷却する。
【0017】上記のレーザー溶接を施す帯鋼は、低炭素
マルテンサイト系ステンレス鋼である。その鋼のCとC
rの含有量は、それぞれ所定の範囲でなければならな
い。しかし、他の合金成分の種類と含有量はマルテンサ
イト系ステンレス鋼の範疇を出ないように任意に選択す
ればよい。安価で優れた耐食性をもつ帯鋼として次に例
示する化学組成が望ましい。
【0018】重量%で、C:0.05%以下、Cr:1
0〜14%、Si:1%以下、Mn:0.5%以下、
P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ni:8
%以下、Mo:7%以下、Al:0.1%以下、Ti:
0.75%以下およびV:2%以下を含み残部Feおよ
び不可避的不純物からなる。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明における各条件の限定理由
は下記の通りである。以下の説明において、「%」は、
いずれも「重量%」を表示するものとする。
【0020】1.帯鋼の化学組成 本発明で用いる素材の帯鋼は、炭素含有量が0.05重
量%以下で、Crを10〜14重量%含有するステンレ
ス鋼帯である。以下の説明において、C量およびCr量
以外の、他の化学組成の限定は望ましい範囲である。
【0021】C:C量は低いことが望ましい。ただし、
C量をむやみに減らすことは著しいコスト上昇を伴うの
で、コスト上昇と性能劣化の許容できる範囲内で低くす
る。0.05%を超えると、Cr炭化物を析出し耐食性
劣化およびHAZの著しい硬化をもたらすので、0.0
5%を許容上限とする。
【0022】Cr:Crは、10%未満では、母材およ
び溶接部の表面に耐食性を備えた皮膜が形成されないた
め、炭酸ガスや硫化水素を含む環境中で、油井用鋼管と
して使用した場合、硫化物応力割れを発生しやすい。一
方、14%を超えるとフェライト相が一定限度を超え、
マルテンサイト相とフェライト相の間で元素分配が強く
生じて、皮膜の耐食性能が劣化する。Cr量が14%を
超えてなおフェライト相を一定限度以下に抑制するに
は、オーステナイト生成元素である高価なNiを増やす
必要があり、マルテンサイト系ステンレス鋼の経済性が
損なわれる。したがってCr量は10〜14%とする。
【0023】Si:Siは添加しなくてもよい。しか
し、Siは脱酸剤として有効な元素なので、強力な脱酸
元素であるAlの歩留まりを高める場合、またはAl酸
化物による鋼の清浄性劣化を避ける場合には添加する。
しかし、1%を超えるとSi酸化物自体による鋼の清浄
性劣化をきたし、硫化物応力割れを誘引するので、添加
することがあっても1%以下とする。
【0024】Mn:Mnは添加しなくてもよい。しか
し、Mnはフェライト相の生成を抑制する効果があるの
で、高強度化を一層はかる場合には添加する。しかし、
0.5%を超えると硫化物応力割れを助長するので、添
加する場合でも0.5%以下とする。
【0025】P:Pは硫化物応力割れを助長するので、
出来るだけ低くするのがよい。しかし、P量の低減には
必ずコスト上昇を伴うので、性能上許容できる範囲以下
とする。
【0026】0.04%を超えると硫化物応力割れ感受
性がきわめて高くなるので、0.04%以下には制限し
なければならない。
【0027】S:Sは硫化物応力割れを促進するので、
0.005%以下にする。硫化水素などを含む環境の厳
しい場所で使用する場合には、さらに厳しく0.003
%以下にすることが望ましい。
【0028】Ni:Niは添加しなくてもよい。しか
し、耐食性をさらに高めるためにCr量を14%を超え
て増やした場合、フェライト相が一定限度を超え、皮膜
の耐食性能が劣化するので、フェライト生成量を一定限
度以下に抑制するために、Niを添加する。しかし、8
%を超えると熱間加工性が劣化し、かつ経済性も低下す
るので、添加する場合でも8%以下とする。
【0029】Mo:Moは添加しなくてもよい。しか
し、Moは、単独でもまたNiと共存しても耐食性を向
上させる作用があるので、この効果をさらに得ようとす
る場合には添加する。しかし、7%を超えると硫化物応
力割れを促進するので、添加する場合でも7%以下とす
る。
【0030】Al:Alは添加しなくてもよい。しか
し、Alは脱酸剤としてきわめて有効であるので、脱酸
を強力におこない、脱酸後の溶鋼中の酸素量を低いレベ
ルにする場合には添加する。しかし、0.1%を超える
と、鋼の清浄性が劣化し、耐硫化物応力割れ性が劣化す
るので、添加する場合でも0.1%以下とする。
【0031】Ti:Tiは添加しなくてもよい。しか
し、TiはCr炭化物の析出による硬度の異常上昇や耐
食性劣化を防止する効果があるので、これら効果を得よ
うとする場合には添加する。しかし、0.75%を超え
ると加工性を劣化させるので、添加する場合でも0.7
5%以下とする。
【0032】V:Vは添加しなくてもよい。しかし、V
はTiと同様に、Cr炭化物の析出に伴う硬度の異常上
昇および耐食性劣化を防止する作用があるので、この効
果を得ようとする場合には添加する。しかし、高価な元
素であるため、2%を超えると経済性を害するので、添
加する場合でも2%以下とする。
【0033】N(窒素)はとくに添加あるいは低減しな
くてもよいが、強度向上のために特別にN量を高めたマ
ルテンサイト系ステンレス鋼、あるいは加工性などを考
慮してN量を低くしたマルテンサイト系ステンレス鋼に
対しても本発明法を適用することはもちろん可能であ
る。
【0034】O(酸素)もとくに添加あるいは低減しな
くてよいが、酸化物を分散させるためにO量を特別に高
めたもの、あるいは疲労などの機械的性質を考慮してO
量を低くしたものに本発明法を適用することは全く差し
支えない。
【0035】上記のような化学組成を有する帯鋼に対し
て通常の焼入れ焼戻し処理を施すことにより、下記のマ
ルテンサイト相体積率に調整しておくことが望ましい。
【0036】マルテンサイト相:レーザー溶接前のマル
テンサイト系ステンレス鋼は、熱延後に焼入れ焼戻しを
行った後、マルテンサイト相の体積率がおよそ80%以
上であることが望ましい。マルテンサイト相が80%未
満のとき、すなわち残りの大部分のフェライト相および
残留オーステナイト相等を合わせた体積率が20%を超
えると、これらの相の間に元素分配を生じ、皮膜の耐食
性能が劣化する。
【0037】2.レーザー溶接条件 図1は、帯鋼から製品を製造する概要を表す図面であ
る。同図において、素材の帯鋼1は、成形ロール群11
によりオープンパイプ2へと連続的に成形され、さらに
帯鋼の両エッヂ相互をスクィズロール13によって突き
合わされ、突き合わせパイプ3とされる。ここで、「オ
ープンパイプ」とは、両エッヂが未だ突き合わされず離
れたままのパイプ状の中間加工品をいう。「突き合わせ
パイプ」とは、スクィズロールを通過直後の、両エッヂ
部は突き合わされているが溶接によって接合されていな
い中間加工品の過渡的な状態をさす。
【0038】溶接直前の上記両エッヂ部の温度は常温〜
1000℃としなければならない。
【0039】常温を超えた温度の状態にして溶接する場
合は、ERW法で用いられている局部加熱可能な環状の
誘導加熱コイルあるいはコンタクトチップを用いた高周
波加熱装置12をスクィズロール13の前段に配置し、
その投入電力を制御して所定の温度域にすれば良い。こ
の加熱における最高到達温度(予熱温度)は1000℃
以下とする。予熱温度が1000℃を超えると予熱され
た部位が冷却後焼入硬化し、耐硫化物応力割れ性が劣化
するからである。なお、エッヂ部の予熱温度と溶接直前
温度とは差異が小さいので、本説明書では両者を区別せ
ずに、「予熱温度」または「溶接前の温度」という。
【0040】突き合わせ部に対して、レーザービーム溶
接機14により上方よりレーザービームを照射し溶接す
る。このとき、レーザー出力Pを15kW以上(条件
)とし、かつ下記の条件にてレーザー溶接を行う。
【0041】 0.4≦P・{exp(a・T)}/
(V・t)≦2 ここで、t(mm)は帯鋼の肉厚を、V(m/min)
は溶接速度を、T(℃)は帯鋼両エッヂ部の溶接前の温
度を、また、aは定数(=0.0006)を表す。
【0042】以下において、条件におけるP・{ex
p(a・T)}/(V・t)の値のことを、「加熱指
数」という場合がある。
【0043】レーザー出力Pが15kW未満のとき、H
AZの硬さが上昇して耐硫化物応力割れ性が劣化する。
また、加熱指数が2を超えると、炭化物の固溶によるH
AZの硬化および冷却速度の低下に伴う皮膜の耐食性能
の劣化が起こり、溶接部の耐硫化物応力割れ性が著しく
劣化する。一方、加熱指数が0.4未満であると、溶接
単位長さあたりの入熱量が不足するため、完全貫通溶接
が不可能になる。完全貫通溶接でない溶接は融合不良の
溶接であり、避けなければならない。
【0044】なお、レーザー出力Pの上限は特に定める
必要は無い。上記の加熱指数の表式(=P・{exp
(a・T)}/(V・t))から明かなように、加熱指
数を上記範囲内で一定にする場合、レーザー出力Pが大
きいほど溶接速度Vを大きくできるので、生産性の向上
を図るにはレーザー出力Pを大きくすることが望まし
い。
【0045】3.後熱処理条件 図2は、下記の後熱処理条件(a) および(b) を模式的に
表す図面である。
【0046】レーザー溶接後、上記の予熱と同様の設備
15で溶接部分に下記(a) または(b) の条件の後熱処理
を施して製品5とされる。
【0047】(a) 850〜1000℃の温度域に加熱
後、20℃/s以上の冷却速度で300℃以下まで冷却
し、その後600〜700℃の温度域に加熱後、20℃
/s以下の冷却速度で常温まで冷却する。
【0048】(b) 700〜900℃の温度域に加熱後、
20℃/s以下の速度で常温まで冷却する。
【0049】後熱条件がこれらの範囲外では、HAZを
軟化させられないか、または後熱された部位が焼入硬化
し、耐硫化物応力割れ性が劣化する。
【0050】後熱条件(a) において、最初の加熱温度が
850℃未満ではオーステナイト化が不十分で、後の冷
却(焼入れ)後にマルテンサイト相の体積率が不足する
ので850℃以上とする。一方、1000℃を超えると
粗大なマルテンサイト相となり耐硫化物応力割れ性が劣
化する。この後の冷却速度を20℃/s以上とするの
は、20℃/s未満では皮膜の耐食性能が劣化するから
である。冷却速度は大きいほど望ましく、とくに上限を
設けない。マルテンサイト相の体積率を必要量確保する
ため、冷却は300℃以下まで行う。その後600〜7
00℃に加熱するのは、焼戻しによりHAZを軟化させ
るためである。600℃未満では軟化が不十分で、耐硫
化物応力割れ性が劣化し、一方、700℃を超えると皮
膜の耐食性能が劣化するので、600〜700℃とす
る。その後の冷却速度を20℃/s以下とするのは、2
0℃/sを超えると冷却の不均一に伴う残留応力が大き
く生じるからである。残留応力を低くするためこの冷却
速度での冷却は常温まで行う。
【0051】また、ここでの冷却速度の下限はとくに設
けないが、作業能率の点から3℃/s以上の冷却速度と
することが望ましい。
【0052】後熱条件(b) において、最初の加熱温度が
700℃未満では、HAZの軟化が不十分なため耐硫化
物応力割れ性が劣化する。一方、900℃を超えると後
熱処理(b) としてはオーステナイト化が中途半端に起こ
り、元素の分配が生じ、後で消えないので900℃以下
とする。その後の冷却速度を20℃/s以下とするの
は、過大な残留応力抑制のためである。この冷却速度範
囲での冷却は、常温まで行い、残留応力の発生を防止す
る。ここでの冷却速度も、作業能率の点から3℃/s以
上とすることが望ましい。
【0053】後熱条件(a) および(b) は、一般的に、性
能上差異を生じることはなく、本発明を適用するステン
レス鋼の材質あるいは使用可能な設備仕様に応じて、適
用しやすい方を用いればよい。
【0054】これらの後熱処理は、バッチ式の加熱炉に
て熱処理を行ってもよいし、高周波加熱装置などにより
行ってもよい。
【0055】(a) および(b) の各温度域への加熱に際し
て保持時間は特に制限する必要は無いが、生産性向上の
ため数秒間〜数十秒間程度の短時間であることが望まし
い。
【0056】
【実施例】表1は実験に供した帯鋼の化学組成を表す一
覧表である。同表に示すA〜Gの化学組成を有する帯鋼
を、900℃で15分間保持後水冷し、その後640℃
で30分間保持後空冷し、レーザー溶接用の素材とし
た。
【0057】表2および表3は、実施例についての溶接
条件、後熱処理条件およびそれらを適用した結果得られ
た溶接部特性をまとめた一覧表である。表2は比較例
を、また表3は本発明例を表す。各帯鋼を、これらの表
に示す外径のオープンパイプに成形し、同表に示す各条
件で突き合わせ部をレーザー溶接し、そののち後熱処理
を施して製品とした。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】溶接部特性は硫化物応力割れ試験および完
全貫通溶接か否かを目視観察し評価した。
【0062】図3は、硫化物応力割れ試験において4点
曲げによる応力を負荷した状態の断面を表す図面であ
る。各溶接管から溶接部が幅方向の中央に位置するよう
に硫化物応力割れ試験片(厚さ2mm×幅10mm×長
さ75mm−ノッチ無し)を採取した。これらの試験片
の中央部に4点曲げによって帯鋼の実降伏強さ(YS)
の100%の応力を付加した状態で、0.01atm
(1atm=0.1013MPa)H2 S−30atm
CO2 −5%NaClの25℃水溶液中に浸漬した。浸
漬して336時間経過後、割れ発生の有無を調査しHA
Zを含む溶接部特性を評価した。また、従来のGTAW
法によって製管溶接後に管全体を900℃に15分間保
持後水冷し、その後640℃で30分間保持し空冷する
後熱処理を施した溶接管についても調査した。さらに、
ERW法によって製管溶接後に高周波加熱により900
℃に30秒間保持後30℃/sの速度で300℃以下ま
で冷却し、その後640℃で30秒間保持後6℃/sの
速度で冷却した溶接管についても調査した。これらGT
AW法およびERW法による溶接管の結果を、従来法と
して表2に併記する。
【0063】表2および表3に示す結果から明かなよう
に、化学組成が本発明の範囲内である帯鋼A、B、Cお
よびDを用い、本発明の範囲内の条件で製管溶接した本
発明例(番号16〜番号36)では本試験条件で割れが
発生せず、母材同等の良好な特性を示した。
【0064】これに対し、本発明の範囲外の組成をもつ
帯鋼E、FおよびGを用いた比較例(番号10〜番号1
2)ではHAZの硬化または皮膜の耐食性能の劣化が起
こり、硫化物応力割れが発生した。
【0065】また、レーザー出力Pが15kW未満の比
較例(番号1〜番号5)ではHAZが著しく硬化し、硫
化物応力割れが発生した。同様に、レーザー出力Pが1
5kW以上であり、同時に加熱指数が2を超える比較例
(番号6)ではHAZの硬化および皮膜の耐食性能の劣
化が起こり、割れが発生した。また、レーザー出力Pは
15kW以上であるが、加熱指数が0.4未満である比
較例(番号7および番号8)では、入熱量が少なすぎる
ため、貫通溶接とならなかった(表2において「不可」
と表示)。さらに、レーザー出力Pおよび加熱指数は本
発明の範囲内であるが、予熱温度が1200℃(本発明
の制限「常温〜1000℃」の範囲外)である比較例
(番号9)では、予熱温度が高すぎて予熱を受けた部位
が著しく硬化し、割れが発生した。また、後熱処理条件
が本発明の範囲外の条件(表2の脚注の後熱条件(c) お
よび(d) )を適用した比較例(番号14および番号1
5)では、後熱処理を受けた部位の硬化が起こり割れが
発生した。
【0066】これらの実施例は本発明方法が溶接部にお
ける硫化物応力割れを防止するのにきわめて効果的であ
ることを明確に示すものである。
【0067】
【発明の効果】本発明方法によれば、耐硫化物割れ性等
に優れた、美麗な溶接部をもつ低炭素マルテンサイト系
ステンレス鋼溶接管を高い生産性の下、安価に製造する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、帯鋼から製品を製造する概要を表す図
面である。
【図2】図2(a)は後熱条件(a) を、また、図2
(b)は後熱条件(b) を模式的に表す図面である。
【図3】図3は、硫化物応力割れ試験において4点曲げ
による応力を負荷した状態の断面を表す図面である。
【符号の説明】
1…帯鋼(素材)、 2…オープンパイプ(中間加工品)、 3…突き合わせパイプ(スクィズロールを出た直後の両
エッヂ部を突き合わされた中間加工品の過渡的な状
態)、 4…溶接されたままのパイプ(中間製品)、 5…後熱処理されたパイプ(製品)、 11…成形ロール群、 12…高周波加熱装置、 13…スクィズロール、 14…レーザー溶接機、 15…高周波加熱装置またはバッチ式加熱炉、 21…硫化物応力割れ試験片、 22…外側支持棒、 23…内側支持棒
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/00 302 C22C 38/00 302Z 38/46 38/46

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素含有量が0.05重量%以下で、Cr
    を10〜14重量%含有するステンレス鋼帯を管状に加
    工した後、常温から1000℃までの温度域にある突き
    合わせた両エッヂ部を下記の条件およびによりレー
    ザー溶接し、その後、850〜1000℃の温度域に加
    熱し、20℃/s以上の冷却速度で300℃以下まで冷
    却し、その後600〜700℃の温度域に加熱し、20
    ℃/s以下の冷却速度で常温まで冷却することを特徴と
    する低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造
    方法。 P≧15kW 0.4≦P・{exp(a・T)}/(V・t)≦
    2 ただし P:製管溶接時のレーザー出力(kW) a:定数(=0.0006) T:溶接前の突き合わせ両エッヂ部の温度(℃) V:溶接速度(m/min) t:帯鋼の肉厚(mm)
  2. 【請求項2】炭素含有量が0.05重量%以下で、Cr
    を10〜14重量%含有するステンレス鋼帯を管状に加
    工した後、常温から1000℃までの温度域にある突き
    合わせた両エッヂ部を下記の条件およびによりレー
    ザー溶接し、その後、700〜900℃の温度域に加熱
    し、20℃/s以下の冷却速度で常温まで冷却すること
    を特徴とする低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼溶接
    管の製造方法。 P≧15kW 0.4≦P・{exp(a・T)}/(V・t)≦
    2 ただし P:製管溶接時のレーザー出力(kW) a:定数(=0.0006) T:溶接前の突き合わせ両エッヂ部の温度(℃) V:溶接速度(m/min) t:帯鋼の肉厚(mm)
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