JP5979373B2 - 低温靭性に優れる電縫鋼管の製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1に開示された、電縫溶接部を熱処理して靭性を向上する方法は、溶接部を加熱してオーステナイト化し、強制加速冷却し、その後、焼き戻しを行うことで、フェライト結晶粒の微細化と硬度の低下を図り、靭性を向上させようとする技術である。しかし、靭性を低下させる要因であるペネトレータが溶接部に残留した状態で溶接部に熱処理を施しても、低温靭性の向上代には限界がある。
まず、本発明の電縫鋼管の素材となる鋼帯は、その成分組成がC:0.03〜0.15mass%、Si:0.5mass%以下、Mn:0.5〜2.0mass%、P:0.03mass%以下、S:0.008mass%以下、sol.Al:0.01〜0.1mass%を含有し、さらに、Nb:0.1mass%以下、Ti:0.1mass%以下およびV:0.1mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するものであることが必要である。
Cは、鋼管強度を確保するために必要な元素であり、0.03mass%未満では十分な強度が得られなくなる。一方、0.15mass%を超えると、焼き入れを施した際に、溶接部にマルテンサイトが生成し、靱性が低下するので好ましくない。よって、Cは0.03〜0.15mass%の範囲とする。好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。
Siは、脱酸元素として添加されると共に、鋼管強度の確保に有効な成分である。しかし、0.5mass%を超えると、ペネトレータが生成し易くなり、靱性の低下を引き起こすようになるため、0.5mass%以下とする。好ましくは0.3mass%以下である。
Mnは、焼き入れ性を高めて強度を上昇させる作用があるが、その含有量が0.5mass%未満では充分な焼き入れ性が得られない。一方、2.0mass%を超えると、ペネトレータが生成しやすくなって靱性を確保することが難しくなる。よって、Mnは0.5〜2.0mass%の範囲とする。好ましくは0.7〜1.8mass%の範囲である。
Pは、鋼中に混入してくる不純物成分であり、鋼中で偏析して材質を劣化させる有害元素である。しかし、その含有量が0.03mass%以下であれば、実用上、その影響を不都合を来たさない程度に軽減することができる。好ましくは0.02mass%以下である。
Sは、Pと同様、不可避的な不純物であり、鋼の靱性低下を招くため、上限は0.008mass%とする。好ましくは0.005mass%以下である。
Alは、脱酸剤として添加される成分であり、結晶粒の細粒化による靭性向上効果が期待できるため、sol.Alで0.01mass%以上含有させることが必要である。しかし、0.1mass%を超えると、鋼の清浄性が損なわれるようになる。よって、Alは0.01〜0.1mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.05mass%の範囲である。
Nb、TiおよびVは、いずれも炭窒化物の微細析出と組織の微細粒化により、鋼の強度と靭性を向上させる。しかし、0.1mass%を超えると、硬化した第二相が増加し、母材部や溶接部の靭性低下が著しくなる。よって、添加する場合は、それぞれ、0.1mass%以下とする。なお、上記成分の好ましい添加範囲は、Nb:0.01〜0.1mass%、Ti:0.005〜0.1mass%およびV:0.02〜0.1mass%範囲である。また、Nb,TiおよびVの合計含有量は、0.15mass%以下に制限するのが望ましい。
Mo:0.5mass%以下、Cu:0.5mass%以下
MoおよびCuは、焼き入れ性および焼き戻し軟化抵抗を向上させる効果があり、鋼の強度を向上させるのにも有効な元素である。しかし、多量に添加すると、第二相が生成しやすくなって、母材や溶接部の靭性を低下させる。よって、添加する場合は、それぞれ0.5mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは、それぞれ0.05〜0.5mass%の範囲である。
Caは、水素誘起割れの起点となり易い伸長したMnSの形態を制御するのに必要な元素である。しかし、その添加量が0.005mass%を超えると、過剰なCa酸化物や硫化物が生成し、靭性が劣化する。よって添加する場合は、0.005mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.001〜0.005mass%の範囲である。
本発明の電縫鋼管の製造方法は、上述した成分組成を有する鋼帯を、管形のオープン管に成形し、そのオープン管の両エッジを電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、予めオープン管の両エッジにテーパを付与した後、鋼帯厚さの40〜75%のアプセット量を加えて電縫溶接し、溶接完了後、溶接部外表面を960〜1250℃に加熱した後、880℃以上の温度から200〜450℃の温度までを冷却速度:10〜50℃/secで冷却し、その後、溶接部外表面を500〜780℃に再加熱して焼き戻す一連の熱処理を施すことを特徴とするものである。
電縫溶接ままの溶接部は、アプセットによる塑性加工と、その後のオーステナイトの再結晶、さらには、それらに引続いて起こるフェライト変態などにより微細な組織となっているが、一部に粗大なセメンタイトや島状マルテンサイトなどの靭性に有害な組織を含んでいることがある。そこで、これらを消去するためには、まず、電縫溶接部の全肉厚および一定幅をAc3変態点以上に加熱してオーステナイト組織とする必要がある。通常、この加熱では、溶接部の局所加熱を行うシームアニールにより、溶接残留応力を除去すると同時に整細粒の生成を行っている。しかし、オープン管の両エッジ部にテーパを付与した場合、電縫溶接時の入電量の増大による熱影響部の拡大に伴い、硬度が上昇し延性が低下する脆性域も拡大する。そのため、これらの拡大した脆性域を十分にオーステナイト化するためには、加熱温度を高めに設定する必要がある。溶接部外表面の加熱温度が960℃未満では、溶接部の全肉厚を完全にオーステナイト化することができない。一方、加熱温度の上昇に伴って結晶粒が粗大化するが、1250℃を超えると、急激に粗大化して靭性が低下する。よって、加熱温度は960〜1250℃の範囲とする。好ましくは960〜1050℃の範囲である。なお、上記温度に加熱保持する時間は2〜10秒の範囲が好ましい。
上記Ac3変態点以上の加熱後におけるオーステナイト組織からの冷却は、オーステナイト粒の成長を抑制し、析出するフェライトを微細化すると共に、ベイナイト主体の組織とするため、冷却速度を10〜50℃/secの範囲とする必要がある。10℃/sec未満では、結晶粒を十分に微細化できず、所望の靭性を確保することができない。一方、50℃/secを超えると、マルテンサイトの生成による硬度上昇により、次工程の短時間の焼き戻し処理では、焼き戻し効果が不十分となり、良好な靭性を得ることが難しくなる。好ましくは10〜40℃/secの範囲である。
また、急速冷却の停止温度は、溶接部外表面で200〜450℃とする。急速冷却の停止温度が溶接部外表面で200℃未満では、焼き入れが過度に進行して靭性が著しく低下する。一方、溶接部外表面温度で450℃より高い温度では、未変態のオーステナイトがベイナイト組織とならず、粗大なセメンタイトや島状マルテンサイトなどの靭性に有害な組織となるため、所望の靭性を確保することが難しくなるためである。なお、管内面への効果を十分に得るため、好ましくは250〜380℃である。
鋼管溶接部は、上記のように急速冷却したままでは、硬度が高く靭性が低下しているので、焼き戻し処理を施す必要がある。なお、従来の製造ライン上で行われている誘導加熱による溶接部の局所加熱では、焼き戻し温度の保持時間が十分に確保できないおそれがある。また、焼き戻し処理する領域は、上述したオーステナイト域への加熱と同じように広い領域とする必要がある。
引張試験は、JIS Z2241に準じて行い、「溶接部強度≧母材部強度−10MPa」の場合を○、「溶接部強度<母材部強度−10MPa」の場合を×と評価した。
また、シャルピー衝撃試験は、0℃〜−120℃の温度範囲で試験を行い、得られたシャルピー遷移曲線から破面遷移温度(vTrs50)と−40℃における吸収エネルギー(J)を求め、vTrs50が−50℃以下、吸収エネルギーが120J以上を本発明の範囲と判定した。
2:エッジ切削装置
3:ロールフォーミング装置
4:オープン管
4a,4b:オープン管エッジ
5:溶接機
5a,5b:開先
6:スクイズロール
7:誘導加熱装置
8:水冷装置
9:誘導加熱装置
Claims (4)
- C:0.03〜0.15mass%、Si:0.5mass%以下、Mn:0.5〜2.0mass%、P:0.03mass%以下、S:0.008mass%以下、sol.Al:0.01〜0.1mass%を含有し、さらに、Nb:0.1mass%以下、Ti:0.1mass%以下およびV:0.1mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼帯を管形のオープン管に成形した後、そのオープン管の両エッジを突き合わせて電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、
上記オープン管の両エッジの外表面側および内表面側の双方に、傾斜面と鋼帯垂直端面とのなす角度が15〜50°で、傾斜面の鋼帯表面からの厚さ方向長さが鋼帯厚さの10〜45%のテーパを付与した後、
鋼帯厚さの40〜75%のアプセット量で電縫溶接し、その後、
電縫溶接後の溶接部外表面を960〜1250℃に加熱し、880℃以上の温度から200〜450℃の温度までを冷却速度10〜50℃/secで冷却した後、溶接部外表面を500〜780℃に再加熱して焼き戻す一連の熱処理を施すことを特徴とする電縫鋼管の製造方法。 - 上記鋼帯は、上記成分組成に加えてさらに、Mo:0.5mass%以下およびCu:0.5mass%以下のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管の製造方法。
- 上記鋼帯は、上記成分組成に加えてさらに、Ca:0.005mass%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電縫鋼管の製造方法。
- 上記オープン管の両エッジへのテーパの付与を、エッジ切削装置、ロールフォーミング装置および孔型ロールのうちのいずれかを用いて行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電縫鋼管の製造方法。
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