JP5979373B2 - 低温靭性に優れる電縫鋼管の製造方法 - Google Patents

低温靭性に優れる電縫鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶接部の低温靭性に優れる電縫鋼管の製造方法に関するものである。
1990年代以降、極寒の地においても、油田やガス田の開発が行われるようになり、寒冷地向けの石油やガスを輸送するラインパイプ用鋼管の需要が増加する傾向にある。従来、ラインパイプ用鋼管としては、UOE鋼管やシームレス鋼管等が主に用いられてきたが、これらの鋼管は、品質面では優れているが、高価である。そこで、低温靭性に優れると共に、安価で寸法精度にも優れる電縫鋼管を、ラインパイプ用途に使用することが次第に増加しつつある。
電縫鋼管をラインパイプに使用する場合、低温度下における靭性を保証する必要があり、例えば、−50℃でも靭性に優れることが求められようになってきている。低温靭性に優れた電縫鋼管を製造するに際して、母材については、鋼成分の制御や制御圧延技術の向上により比較的容易に優れた低温靭性と高強度を実現することができる。しかし、溶接部については、シームアニーラと呼ばれる誘導加熱装置を用いて、溶接直後の溶接部を連続的に熱処理する方法で靭性の向上を図っているものの、この方法だけでは、溶接後の急冷に伴う硬質化や、溶接部の粗大化した結晶組織を完全に消去することは難しい。
上記問題点に対応する技術としては、例えば、特許文献1には、電縫溶接直後の鋼管の溶接部をAc変態点以上の温度に加熱した後、800℃以上から500℃以下までを15〜30℃/secの冷却速度で冷却し、続いて、再度、前記溶接部を500〜800℃に再加熱して焼き戻し処理を施すことで、電縫鋼管の溶接部の靭性を向上させる方法が開示されている。
また、電縫溶接部の低温靭性の低下をもたらす他の要因としては、溶接部に生成された酸化物が、溶接時に溶鋼と共に排出されずに溶接接合面内に残留した「ペネトレータ」と呼ばれる欠陥がある。このペネトレータは、低温での溶接部のシャルピー吸収エネルギーの著しい低下を引き起こすため、所望の低温靭性を得ることをより難しくしている。
電縫溶接部へのペネトレータの残留を抑制する技術としては、例えば、特許文献2には、フィンパス成形後における溶接前のオープン部分のスケールを洗浄除去すると共に、溶接部を不活性ガス等でガスシールドし、酸素濃度を低下させた状態で電縫溶接を行う方法(シールド溶接)が提案されている。
また、特許文献3には、ペネトレータを含む溶鋼の排出性を向上させることを目的に、電縫溶接前のオープン管の両エッジ部にテーパを付与する方法が提案されている。
特開昭59−43827号公報 特開平4−178281号公報 特開2007−160381号公報
しかしながら、上述したような従来技術によって溶接部の低温靭性に優れた電縫鋼管を製造するには、以下に説明するような問題があり、更なる改善が必要であった。
例えば、特許文献1に開示された、電縫溶接部を熱処理して靭性を向上する方法は、溶接部を加熱してオーステナイト化し、強制加速冷却し、その後、焼き戻しを行うことで、フェライト結晶粒の微細化と硬度の低下を図り、靭性を向上させようとする技術である。しかし、靭性を低下させる要因であるペネトレータが溶接部に残留した状態で溶接部に熱処理を施しても、低温靭性の向上代には限界がある。
また、特許文献2に開示された、フィンパス成形後、溶接前において、オープン部分のスケールを洗浄除去すると共に、溶接部を不活性ガス等でガスシールドして電縫溶接を行う方法は、外径が165mmφ以下の小径管では実用化されているが、管径が大きくなるに従って不活性ガスによる置換領域が拡大し、不活性ガス量も増大するため、シールドを十分に行った状態で電縫溶接を行うことが難しくなる。
また、特許文献3に開示された、電縫溶接前のオープン管の両エッジ部にテーパを付与し、ペネトレータを含む溶鋼の排出を促進させる方法だけでは、溶接部の良好な靭性を確保することができない。特に、過酷な低温環境下で使用されるラインパイプなど、溶接部に高い低温靭性を要求される用途においては十分ではない。また、オープン管の両エッジ部にテーパを付与して電縫溶接を行う場合、テーパを付与しない場合よりもエッジ部の表面積が大きくなるため、電縫溶接に必要な入電量(入熱量)が増大する。そのため、テーパを付与しない場合と比較して熱影響部が拡大し、溶接部近傍の硬度上昇域および延性低下域が拡大するという問題もある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温靭性に優れた電縫鋼管を、安定的に量産する有利な方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、電縫溶接部におけるペネトレータの残留を低減させる方法としてガスシールド溶接を適用するのではなく、電縫溶接前のオープン管の両エッジ部にテーパを付与することにより、溶接部のペネトレータを含む溶鋼を効率的に排出させること、また、これと同時に、溶接時におけるエッジ端部への入熱集中による過加熱を抑制し、肉厚方向の温度分布を均一にして酸化物生成の増大を抑制すること、適切な量のアプセットを溶接部に加えて溶接部のペネトレータを含む溶鋼を効率的に排出させるとともに、溶接熱影響部に十分な熱間加工を加えてオーステナイト結晶粒を微細にすること、さらには、溶接部を適切な温度でオーステナイト化後、焼き入れ・焼き戻し処理することによって結晶粒の微細化と硬度の低下を図ることの4つの技術を適切に組み合わせることで初めて、低温靭性に優れた電縫鋼管を安定的に量産することができることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.03〜0.15mass%、Si:0.5mass%以下、Mn:0.5〜2.0mass%、P:0.03mass%以下、S:0.008mass%以下、sol.Al:0.01〜0.1mass%を含有し、さらに、Nb:0.1mass%以下、Ti:0.1mass%以下およびV:0.1mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼帯を管形のオープン管に成形した後、そのオープン管の両エッジを突き合わせて電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、上記オープン管の両エッジの外表面側および内表面側の双方に、傾斜面と鋼帯垂直端面とのなす角度が15〜50°で、傾斜面の鋼帯表面からの厚さ方向長さが鋼帯厚さの10〜45%のテーパを付与した後、鋼帯厚さの40〜75%のアプセット量で電縫溶接し、その後、電縫溶接後の溶接部外表面を960〜1250℃に加熱し、880℃以上の温度から200〜450℃の温度までを冷却速度10〜50℃/secで冷却した後、溶接部外表面を500〜780℃に再加熱して焼き戻す一連の熱処理を施すことを特徴とする電縫鋼管の製造方法を提案する。
本発明の電縫鋼管の製造方法に用いる鋼帯は、上記成分組成に加えてさらに、Mo:0.5mass%以下およびCu:0.5mass%以下のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする。
また、本発明の電縫鋼管の製造方法に用いる鋼帯は、上記成分組成に加えてさらに、Ca:0.005mass%以下を含有することを特徴とする。
また、本発明の電縫鋼管の製造方法は、上記オープン管の両エッジへのテーパの付与を、エッジ切削装置、ロールフォーミング装置および孔型ロールのうちのいずれかを用いて行うことを特徴とする。
本発明によれば、電縫溶接前の鋼帯エッジ部にテーパを付与すること、適切な量のアプセットを加えて溶接すること、および、溶接後、溶接部に適切な熱処理を施すことにより、従来の電縫溶接部に比べて、溶接部の品質が大幅に改善され、所望の低温靭性を安定的に確保することができるので、生産性を阻害することなく安定的に低温靭性に優れた電縫鋼管を安定して製造することができる。したがって、本発明によれば、寒冷地におけるラインパイプへの電縫鋼管の適用範囲の拡大に大いに寄与することができる。
本発明の電縫鋼管の製造方法に適合する製造ラインの一例を示す図である。 電縫溶接前のオープン管のエッジ形状を説明する図である。
本発明の電縫鋼管の成分組成を限定する理由について説明する。
まず、本発明の電縫鋼管の素材となる鋼帯は、その成分組成がC:0.03〜0.15mass%、Si:0.5mass%以下、Mn:0.5〜2.0mass%、P:0.03mass%以下、S:0.008mass%以下、sol.Al:0.01〜0.1mass%を含有し、さらに、Nb:0.1mass%以下、Ti:0.1mass%以下およびV:0.1mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するものであることが必要である。
C:0.03〜0.15mass%
Cは、鋼管強度を確保するために必要な元素であり、0.03mass%未満では十分な強度が得られなくなる。一方、0.15mass%を超えると、焼き入れを施した際に、溶接部にマルテンサイトが生成し、靱性が低下するので好ましくない。よって、Cは0.03〜0.15mass%の範囲とする。好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。
Si:0.5mass%以下
Siは、脱酸元素として添加されると共に、鋼管強度の確保に有効な成分である。しかし、0.5mass%を超えると、ペネトレータが生成し易くなり、靱性の低下を引き起こすようになるため、0.5mass%以下とする。好ましくは0.3mass%以下である。
Mn:0.5〜2.0mass%
Mnは、焼き入れ性を高めて強度を上昇させる作用があるが、その含有量が0.5mass%未満では充分な焼き入れ性が得られない。一方、2.0mass%を超えると、ペネトレータが生成しやすくなって靱性を確保することが難しくなる。よって、Mnは0.5〜2.0mass%の範囲とする。好ましくは0.7〜1.8mass%の範囲である。
P:0.03mass%以下
Pは、鋼中に混入してくる不純物成分であり、鋼中で偏析して材質を劣化させる有害元素である。しかし、その含有量が0.03mass%以下であれば、実用上、その影響を不都合を来たさない程度に軽減することができる。好ましくは0.02mass%以下である。
S:0.008mass%以下
Sは、Pと同様、不可避的な不純物であり、鋼の靱性低下を招くため、上限は0.008mass%とする。好ましくは0.005mass%以下である。
sol.Al:0.01〜0.1mass%
Alは、脱酸剤として添加される成分であり、結晶粒の細粒化による靭性向上効果が期待できるため、sol.Alで0.01mass%以上含有させることが必要である。しかし、0.1mass%を超えると、鋼の清浄性が損なわれるようになる。よって、Alは0.01〜0.1mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.05mass%の範囲である。
本発明の電縫鋼管の素材となる鋼帯は、上記成分に加えて、Nb:0.1mass%以下、Ti:0.1mass%以下およびV:0.1mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する必要がある。
Nb、TiおよびVは、いずれも炭窒化物の微細析出と組織の微細粒化により、鋼の強度と靭性を向上させる。しかし、0.1mass%を超えると、硬化した第二相が増加し、母材部や溶接部の靭性低下が著しくなる。よって、添加する場合は、それぞれ、0.1mass%以下とする。なお、上記成分の好ましい添加範囲は、Nb:0.01〜0.1mass%、Ti:0.005〜0.1mass%およびV:0.02〜0.1mass%範囲である。また、Nb,TiおよびVの合計含有量は、0.15mass%以下に制限するのが望ましい。
本発明の電縫鋼管の素材となる鋼帯は、上記必須とする成分に加えてさらに、Mo,CuおよびCaを下記の範囲で添加することができる。
Mo:0.5mass%以下、Cu:0.5mass%以下
MoおよびCuは、焼き入れ性および焼き戻し軟化抵抗を向上させる効果があり、鋼の強度を向上させるのにも有効な元素である。しかし、多量に添加すると、第二相が生成しやすくなって、母材や溶接部の靭性を低下させる。よって、添加する場合は、それぞれ0.5mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは、それぞれ0.05〜0.5mass%の範囲である。
Ca:0.005mass%以下
Caは、水素誘起割れの起点となり易い伸長したMnSの形態を制御するのに必要な元素である。しかし、その添加量が0.005mass%を超えると、過剰なCa酸化物や硫化物が生成し、靭性が劣化する。よって添加する場合は、0.005mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.001〜0.005mass%の範囲である。
本発明の電縫鋼管の素材(鋼帯)は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の効果を害さない範囲であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではない。
次に、本発明の電縫鋼管の製造方法について説明する。
本発明の電縫鋼管の製造方法は、上述した成分組成を有する鋼帯を、管形のオープン管に成形し、そのオープン管の両エッジを電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、予めオープン管の両エッジにテーパを付与した後、鋼帯厚さの40〜75%のアプセット量を加えて電縫溶接し、溶接完了後、溶接部外表面を960〜1250℃に加熱した後、880℃以上の温度から200〜450℃の温度までを冷却速度:10〜50℃/secで冷却し、その後、溶接部外表面を500〜780℃に再加熱して焼き戻す一連の熱処理を施すことを特徴とするものである。
図1は、本発明の電縫鋼管を製造するラインの一例を示したものである。通常の電縫鋼管の製造ラインと同様、所定の幅に圧延もしくは切断された鋼帯1のエッジ部をエッジ切削装置2により切削してテーパを付与した後、ロールフォーミング装置3によって連続的にロール成形を行い管形のオープン管4とし、そのオープン管4の両エッジ4aおよび4bに溶接電力発生装置(溶接機)5によって高周波電流を流し、それによって生じるジュール熱で両エッジ4a、4bを加熱・溶融し、その後、スクイズロール6によって両エッジを突き合わせて溶鋼を両エッジ間から排出するとともに、未溶融の両エッジ同士を強く押し付けて(アプセットして)、圧接し電縫鋼管を製造する。スクイズロール6によってアプセットされることにより管径は絞られ、溶接後の管の外周長は溶接前の鋼帯幅よりも短くなる。溶接前の鋼帯幅と溶接後の管の外周長の差は一般にアプセット量と呼ばれ、溶接部の品質を決定する重要な因子である。
ここで、本発明の電縫鋼管の製造方法は、上記のエッジ切削装置2、ロールフォーミング装置3あるいは図示されていない孔型ロールのいずれかを用いて、オープン管の両エッジ4a、4bの外表面側と内表面側のコーナー部にテーパを付与する加工を施すことによって、図2に示すような開先形状5a、5bを付与することに一つの特徴がある。
このテーパ形状(開先形状)は、図2に示したように、オープン管の外表面側、内表面側とも、傾斜面と鋼帯垂直端面とがなす角度(傾斜角度)を15〜50°の範囲とし、傾斜面の鋼帯表面からの厚さ方向長さを鋼帯厚さの10〜45%の範囲とする。ただし、外表面側、内表面側のテーパの形状は、上記した範囲内であれば必ずしも同じでなくてもよく、適宜設定することができる。このテーパ付与により、オープン管のエッジ内外面端部(オープン管エッジの管内面近傍部分および管外面近傍部分)への入電集中を回避し、酸化物の発生を抑制し、さらには、アプセット工程における溶鋼および酸化物の排出を促進することができる。上記傾斜角度が15°未満では、オープン管のエッジ内外面端部への入電集中の回避が不十分となり、一方、上記傾斜角度が50°を超えると、アプセット工程における溶鋼および酸化物の排出が困難となる。このため、上記傾斜角度は15〜50°の範囲とする。好ましくは20〜40°の範囲である。
また、傾斜面の鋼帯表面からの厚さ方向長さを鋼帯厚さの10〜45%の範囲とする理由は、上記傾斜面の鋼帯表面からの厚さ方向長さが鋼帯厚さの10%未満では、アプセット工程における溶鋼および酸化物の排出を促進する効果がほとんど期待できない。一方、傾斜面の鋼帯表面からの厚さ方向長さが鋼帯厚さの45%を超えると、鋼帯垂直端面の厚さ方向長さが短くなりすぎ、両エッジを突き合わせることが困難となり、ラップや目違いなどの溶接欠陥が発生しやすくなるからである。好ましくは20〜40%の範囲である。
電縫溶接におけるアプセット量は、鋼帯厚さの40〜75%の範囲とする。本発明では、オープン管の両エッジ部にテーパを付与して電縫溶接を行うため、テーパを付与しない形状よりもエッジ部の表面積が大きくなる。そのため、電縫溶接に必要な入電量(入熱量)が増大するため、テーパを付与しない場合と比較して、溶接部の熱影響部が拡大し、溶接部近傍の硬度上昇域および延性低下域が大きくなる。そこで、本発明においては、溶接部の靭性を確保するため、通常よりも大きいアプセット量として結晶粒の微細化を図り、靭性の向上を図る。すなわち、アプセット工程で、溶接熱影響部のオーステナイト域に加熱された領域に強い塑性加工を加えることによって、オーステナイト粒に多数の再結晶核を生成させる。なお、本発明では、オープン管の両エッジ部にテーパを付与しているため、突き合わされる面積が小さく、この部分に加えられる変形量はテーパの無い通常の電縫溶接よりも大きくなるが、このことも、強い塑性加工を加えるのに有利に作用する。
強い塑性加工を加えられたオーステナイト粒は、その後の再結晶によって微細なオーステナイト粒となる。しかし、アプセット量が、鋼帯厚さの40%未満では、上記結晶粒の微細化効果が小さく、溶接部の低温靭性を改善する効果が十分に得られない。一方、鋼帯厚さの75%を超えると、目違いやラップなどの溶接不良が発生し易くなる。アプセット量は、好ましくは鋼帯厚さの43〜72%の範囲である。
なお、熱影響部の結晶粒は、その後の熱処理工程でさらに微細化が図られるが、本発明のように電縫鋼管製造ラインで熱処理を施す場合には、熱処理時間が極めて短いので、熱処理前の組織を最終組織に引き継ぎ易くするため、熱処理前の組織を微細化しておくことが重要である。一般に、熱処理前の組織が細かいほど熱処理後の織も微細になるからである。
電縫溶接の加熱方法は、高周波通電加熱方式あるいは高周波誘導加熱方式であれば好適に用いることができるが、その他の加熱方式を用いてもよい。
上記のように得た電縫鋼管は、その後、電縫溶接部の外表面を、誘導加熱装置7によって溶接部外表面を960〜1250℃以下に加熱し、次いで、水冷装置8で鋼管外表面を880℃以上の温度から10〜50℃/secで200〜450℃の温度まで強制冷却した後、誘導加熱装置9によって、溶接部外表面を500〜780℃に再加熱して焼き戻しする一連の熱処理を施すことが必要である。以下、各条件について具体的に説明する。
溶接部表面の加熱温度
電縫溶接ままの溶接部は、アプセットによる塑性加工と、その後のオーステナイトの再結晶、さらには、それらに引続いて起こるフェライト変態などにより微細な組織となっているが、一部に粗大なセメンタイトや島状マルテンサイトなどの靭性に有害な組織を含んでいることがある。そこで、これらを消去するためには、まず、電縫溶接部の全肉厚および一定幅をAc変態点以上に加熱してオーステナイト組織とする必要がある。通常、この加熱では、溶接部の局所加熱を行うシームアニールにより、溶接残留応力を除去すると同時に整細粒の生成を行っている。しかし、オープン管の両エッジ部にテーパを付与した場合、電縫溶接時の入電量の増大による熱影響部の拡大に伴い、硬度が上昇し延性が低下する脆性域も拡大する。そのため、これらの拡大した脆性域を十分にオーステナイト化するためには、加熱温度を高めに設定する必要がある。溶接部外表面の加熱温度が960℃未満では、溶接部の全肉厚を完全にオーステナイト化することができない。一方、加熱温度の上昇に伴って結晶粒が粗大化するが、1250℃を超えると、急激に粗大化して靭性が低下する。よって、加熱温度は960〜1250℃の範囲とする。好ましくは960〜1050℃の範囲である。なお、上記温度に加熱保持する時間は2〜10秒の範囲が好ましい。
冷却条件
上記Ac変態点以上の加熱後におけるオーステナイト組織からの冷却は、オーステナイト粒の成長を抑制し、析出するフェライトを微細化すると共に、ベイナイト主体の組織とするため、冷却速度を10〜50℃/secの範囲とする必要がある。10℃/sec未満では、結晶粒を十分に微細化できず、所望の靭性を確保することができない。一方、50℃/secを超えると、マルテンサイトの生成による硬度上昇により、次工程の短時間の焼き戻し処理では、焼き戻し効果が不十分となり、良好な靭性を得ることが難しくなる。好ましくは10〜40℃/secの範囲である。
なお、上記Ac変態点以上の加熱温度からの冷却における冷却開始温度は、溶接部外表面で880℃以上とする必要がある。溶接部外表面で880℃より低いと、フェライトの析出が多くなるため、急冷による靭性向上を図ることができない。
また、急速冷却の停止温度は、溶接部外表面で200〜450℃とする。急速冷却の停止温度が溶接部外表面で200℃未満では、焼き入れが過度に進行して靭性が著しく低下する。一方、溶接部外表面温度で450℃より高い温度では、未変態のオーステナイトがベイナイト組織とならず、粗大なセメンタイトや島状マルテンサイトなどの靭性に有害な組織となるため、所望の靭性を確保することが難しくなるためである。なお、管内面への効果を十分に得るため、好ましくは250〜380℃である。
焼き戻し処理条件
鋼管溶接部は、上記のように急速冷却したままでは、硬度が高く靭性が低下しているので、焼き戻し処理を施す必要がある。なお、従来の製造ライン上で行われている誘導加熱による溶接部の局所加熱では、焼き戻し温度の保持時間が十分に確保できないおそれがある。また、焼き戻し処理する領域は、上述したオーステナイト域への加熱と同じように広い領域とする必要がある。
そこで、本発明においては、溶接部外表面を500〜780℃に再加熱して焼き戻しすることが必要である。焼き戻し温度が溶接部外表面温度で500℃未満では十分な軟化効果が得られない。一方、溶接部外表面温度で780℃を超えると鋼管外表面付近においてオーステナイトが析出し所望の靭性改善効果を得ることができなくなるからである。なお、溶接部の内表面側にも十分な焼き戻し効果を得るには、焼き戻し温度は550〜730℃の範囲とするのが好ましい。また、上記焼き戻し温度に保持する時間は、2〜20秒の範囲とするのが好ましい。
表1に示した成分組成を有する鋼帯を、図1に概略を示した製造設備を用いて、連続的にオープン管に成型し、電縫溶接し、熱処理を施して電縫鋼管を製造した。なお、この際、オープン管の両エッジは、図1のロールフォーミング装置を用いてオープン管の両エッジの外表面と内表面のコーナー部に種々の開先形状(テーパ)を付与する場合と、付与しない矩形のままの場合とで製造を行った。表2に、製造した鋼管寸法、開先の有無、開先形状、アプセット量および溶接後の熱処理条件を示した。なお、アプセット量は、溶接前の鋼帯の幅と溶接後の鋼管の周長との差から求めた。
Figure 0005979373
Figure 0005979373
次いで、上記のようにして得た各電縫鋼管の溶接部から、引張試験片およびシャルピー衝撃試験片を切り出し、引張試験およびシャルピー衝撃試験片に供した。
引張試験は、JIS Z2241に準じて行い、「溶接部強度≧母材部強度−10MPa」の場合を○、「溶接部強度<母材部強度−10MPa」の場合を×と評価した。
また、シャルピー衝撃試験は、0℃〜−120℃の温度範囲で試験を行い、得られたシャルピー遷移曲線から破面遷移温度(vTrs50)と−40℃における吸収エネルギー(J)を求め、vTrs50が−50℃以下、吸収エネルギーが120J以上を本発明の範囲と判定した。
上記の結果を表2に併記した。この結果から、本発明例では何れの条件においても、引張試験およびシャルピー衝撃試験ともに良好な溶接部が得られている。これに対して、比較例のNo.8は開先にテーパを付与していないため、No.9はオーステナイト域への加熱温度が本発明の上限を超えているため、No.10はオーステナイト域への加熱温度が本発明の下限を下回っているため、No.11は焼き入れ・焼き戻しを実施していないため、No.12,13,15は開先にテーパを付与していないことに加えて、冷却速度と焼き戻し温度が本発明の範囲外であるため、No.14は開先のテーパ形状が本発明の範囲外であるため、また、No.16は開先にテーパを付与していないことに加えて、焼き入れ・焼き戻しを施していないため、また、No.17〜20はアプセット量が本発明の範囲外であるため、いずれも溶接部の引張試験およびシャルピー衝撃試験のいずれか1以上が劣っている。上記の結果から、本発明の電縫鋼管の製造方法によれば、電縫溶接部の強度と低温靭性がともに良好な電縫鋼管を製造することができることがわかる。
1:鋼帯(コイル)
2:エッジ切削装置
3:ロールフォーミング装置
4:オープン管
4a,4b:オープン管エッジ
5:溶接機
5a,5b:開先
6:スクイズロール
7:誘導加熱装置
8:水冷装置
9:誘導加熱装置

Claims (4)

  1. C:0.03〜0.15mass%、Si:0.5mass%以下、Mn:0.5〜2.0mass%、P:0.03mass%以下、S:0.008mass%以下、sol.Al:0.01〜0.1mass%を含有し、さらに、Nb:0.1mass%以下、Ti:0.1mass%以下およびV:0.1mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼帯を管形のオープン管に成形した後、そのオープン管の両エッジを突き合わせて電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、
    上記オープン管の両エッジの外表面側および内表面側の双方に、傾斜面と鋼帯垂直端面とのなす角度が15〜50°で、傾斜面の鋼帯表面からの厚さ方向長さが鋼帯厚さの10〜45%のテーパを付与した後、
    鋼帯厚さの40〜75%のアプセット量で電縫溶接し、その後、
    電縫溶接後の溶接部外表面を960〜1250℃に加熱し、880℃以上の温度から200〜450℃の温度までを冷却速度10〜50℃/secで冷却した後、溶接部外表面を500〜780℃に再加熱して焼き戻す一連の熱処理を施すことを特徴とする電縫鋼管の製造方法。
  2. 上記鋼帯は、上記成分組成に加えてさらに、Mo:0.5mass%以下およびCu:0.5mass%以下のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管の製造方法。
  3. 上記鋼帯は、上記成分組成に加えてさらに、Ca:0.005mass%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電縫鋼管の製造方法。
  4. 上記オープン管の両エッジへのテーパの付与を、エッジ切削装置、ロールフォーミング装置および孔型ロールのうちのいずれかを用いて行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電縫鋼管の製造方法。
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