JP2011025311A - 電縫溶接部の耐サワー特性に優れた高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定組成の帯鋼(管素材1)を連続的に払い出しつつ管状にロール成形し、両端部を衝合し電縫溶接するにあたり、払い出し後から電縫溶接前までの途上で、管素材の被衝合端部を塑性変形させて被衝合端部の開先形状を、管内面側では開先角度θ1=5〜50°、開先深さt1=(1/10〜49/100)×板厚、管外面側では開先角度θ2=5〜50°、開先深さt2=(1/10〜49/100)×板厚、の範囲内とすることにより、電縫溶接部における、溶接シーム面内の長辺最大長さ:50μm以下、溶接シーム面に垂直な方向の厚さ:3μm以下、長辺最大長さと厚さの比であるアスペクト比:5以上の酸化物の存在面積率を20%以下とする。
【選択図】図1
Description
(1)質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.005〜0.9%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の帯鋼を管素材に用い、これを連続的に払い出しつつ管状にロール成形し、形成したVシェイプの縁をなす管素材両端部を衝合し電縫溶接するにあたり、前記払い出し後から前記電縫溶接前までの途上で、前記管素材の被衝合端部を塑性変形させて該被衝合端部の開先形状を、管内面側では開先角度θ1=5〜50°、開先深さt1=(1/10〜49/100)×板厚、管外面側では開先角度θ2=5〜50°、開先深さt2=(1/10〜49/100)×板厚、の範囲内とすることにより、電縫溶接部における、溶接シーム面内の長辺最大長さ:50μm以下、前記溶接シーム面に垂直な方向の厚さ:3μm以下、前記長辺最大長さと前記厚さの比であるアスペクト比:5以上の酸化物の存在面積率を20%以下とすることを特徴とする、電縫溶接部の耐サワー特性に優れた高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の製造方法。
(3)前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下の中から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の電縫溶接部の耐サワー特性に優れた高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の製造方法。
(5)前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の電縫溶接部の耐サワー特性に優れた高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の製造方法。
[基本製造プロセス]
本発明に係る電縫鋼管は、基本的に、初期形状が帯板状である管素材を管状に成形し、形成したVシェイプの縁(帯幅端部に相当)同士を衝合して電縫溶接するというプロセスで製造される。この基本製造プロセスで製造された電縫鋼管の電縫溶接部(以下、単に、溶接部ともいう)の清浄度は、一般に0.5%以下であり、ラインパイプとして必要な強度、靭性を確保するのを阻害しないレベルである。
d={n/(p×f)}×100
ここに、d:清浄度(%)、n:f個の視野における全介在物によって占められた格子点中心の数、p:視野内のガラス板上の総格子点数、f:視野数
[電縫溶接部の酸化物分散状態の適正化]
本発明者らは、強度がAPI規格X65グレード以上の高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の耐サワー特性向上の観点から、電縫溶接部において酸化物の分散状態を種々変化させ、母材部の化学成分も同様に変更した電縫鋼管を実験的に作製した。この作製実験において、図1に示す管素材1の衝合端部形状(開先形状)パラメータt1(管内面側の開先深さ)、θ1(管内面側の開先角度)、t2(管外面側の開先深さ)、θ2(管外面側の開先角度)を種々変化させることで、溶接部における酸化物の分散状態を変化させうることを見出した。作製した電縫鋼管の溶接部から試験片を採取し、後述の実施例に示すHIC試験により耐サワー特性を評価するとともに、後述の実施例に示す酸化物調査方法で溶接部における酸化物の分散状態(形状、サイズ、面積率)を調査し、両者の関係を求めた。
酸化物の長辺最大長さが50μm以下であると、その酸化物にH原子が集積して分子状気体へ変態した場合、亀裂伝播が起こり易いが、前記酸化物の長辺最大長さが50μmを超えると、その酸化物上で水素分子が安定して亀裂伝播が起こり難い。
また、酸化物のアスペクト比(=長辺最大長さ/厚さ)が5以上と大きい場合、結果として酸化物端部における応力集中が厳しくなり、割れの起点となる。
なお、窒化物、硫化物についても同様の調査を行ったが、それらの分散状態と耐サワー特性との間には明瞭な相関関係は認められなかった。
そこで、本発明では、耐サワー特性確保、すなわち水素誘起割れ防止の観点から、溶接シーム面内の長辺最大長さ:50μm以下、前記溶接シーム面に垂直な方向の厚さ:3μm以下、前記長辺最大長さと前記厚さの比であるアスペクト比:5以上の酸化物の存在面積率が20%以下となる適正な酸化物分散状態の実現を目指した。
[開先形状の付与]
さらに、上記実験の結果から分ったことに、前記払い出し後から前記電縫溶接前までの途上で、前記管素材の被衝合端部を塑性変形させて該被衝合端部の開先形状を、管内面側では開先角度θ1=5〜50°、開先深さt1=(1/10〜49/100)×板厚t、管外面側では開先角度θ2=5〜50°、開先深さt2=(1/10〜49/100)×板厚t、の範囲内とする(図1参照)ことにより、上述の適正な酸化物分散状態を実現することができる。
開先角度θ1、θ2が5°未満では、コーナ効果により端面のコーナ部が過加熱され、端面中央部の温度が相対的に低くなり、端面中央部の溶鋼生成・排出が抑制され、結果として端面中央部に酸化物が残存し、溶接部の耐サワー特性が確保できない。開先角度θ1、θ2が50°を超えると、端面開先部(成形面)の温度上昇が不十分となり、溶鋼生成が抑制され、成形面の酸化物の排出が抑制されるため、やはり溶接部の耐サワー特性が確保できない。
[化学組成]
本発明に係る電縫鋼管において、化学組成(略して組成)は、敷設時の総合的な低コスト化を考慮し、特に鋼管の輸送費低下を重要視している顧客の要求を考慮し、高強度(API規格X65級以上)を達成可能な組成を基本として設計された。個々の成分についての限定理由を以下に述べる。組成の各成分含有量単位は質量%であり、%と略記される。母材部の組成は、管素材の溶製段階で調整される。溶接部の組成は、電縫溶接プロセスが合金元素の添加を伴わないものであるから、母材部の組成とほとんど変わらない。
(Mn:0.2〜2.0%) Mnは強度、靭性を確保するため添加するが、0.2%未満ではその効果が十分でなく、一方、2.0%を超えると第二相分率が増加し、ラインパイプとして必要な優れた耐サワー特性を確保し難いため、Mn:0.2〜2.0%とする。なお、好ましくは、Mn:0.6〜1.8%である。
(S:0.01%以下) Sは一般的には鋼中においてはMnS介在物となり、HICの起点となるため少ないほどよい。しかし、0.01%以下であれば問題ないため、S含有量の上限を0.01%とする。
また、ラインパイプ向け電縫鋼管の強度や靭性をさらに改善する目的で、前記成分に加えてさらに、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下の中から選ばれる1種または2種、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下の中から選ばれる1種または2種、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の中から選ばれる1種または2種以上、Ca:0.005%以下、を選択して含有できる。
(Ni:0.5%以下) Niは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、多く添加すると硬化第二相が生成し易くなり素材靭性の低下、耐サワー特性の劣化につながるため、添加する場合は0.5%を上限とする。
(Mo:2.0%以下) MoはMn,Crと同様に低Cでも十分な強度を得るために有効な元素であるが、多く添加すると第二相が生成しやすくなり素材靭性を低下させ、耐サワー特性を劣化させるため、添加する場合は2.0%を上限とする。
(V:0.1%以下) VもNbと同様に炭窒化物の微細析出により強度上昇に寄与する。しかし、0.1%を超えるとNbと同様に硬化した第二相分率が増加し、耐サワー特性を劣化させるため、V含有量は0.1%以下とする。
(Ca:0.005%以下) Caは、HICの起点となり易い伸長したMnSの形態制御に必要な元素である。しかし0.005%を超えて添加すると過剰なCa酸化物、硫化物が生成し、逆に耐サワー特性を劣化させるため、Ca含有量は0.005%以下とする。
いずれの帯鋼も、鋼片を熱間圧延にて所定の板厚に圧延したのち、巻き取ってホットコイルにするという方法で製造された。
[HIC試験]
(試験片採取位置) 電縫溶接部中心位置(溶接シーム面)からの管周方向角度で、母材部は180°の位置、溶接部は0°の位置とした。
(試験片) 全厚、幅20mm、長さ(管長方向)100mmのHIC試験片を10本ずつ採取した。
(試験方法) NACEのSol.A浸漬試験を行い、CTRを測定した。
[酸化物調査方法]
(1) 溶接部を含む管厚さ方向3箇所において管厚さ方向直交断面を被観察面として、SEM(走査電子顕微鏡)で、倍率を100〜1000倍、視野数を10視野以上にとって観察し、存在した酸化物の個々の長辺最大長さ、厚さ、アスペクト比、面積を測定する。
(3) 溶接シーム面を被観察面として、SEMで、倍率を100〜1000倍、視野数を10視野以上にとって観察し、存在した酸化物の個々の長辺最大長さ、面積を測定する。
それらの結果を表3に示す。なお、表3には、前記酸化物調査方法の(1)で測定した長辺最大長さ、厚さ、アスペクト比の測定データの平均値も参考のため記した。本発明例はいずれも優れた耐サワー特性を示して合格であるのに対し、比較例はいずれも、組成、開先形状(開先形状は特に溶接部における酸化物分散状態に影響する)のいずれかの点で本発明を逸脱し、不合格であった。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.005〜0.9%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の帯鋼を管素材に用い、これを連続的に払い出しつつ管状にロール成形し、形成したVシェイプの縁をなす管素材両端部を衝合し電縫溶接するにあたり、前記払い出し後から前記電縫溶接前までの途上で、前記管素材の被衝合端部を塑性変形させて該被衝合端部の開先形状を、管内面側では開先角度θ1=5〜50°、開先深さt1=(1/10〜49/100)×板厚、管外面側では開先角度θ2=5〜50°、開先深さt2=(1/10〜49/100)×板厚、の範囲内とすることにより、電縫溶接部における、溶接シーム面内の長辺最大長さ:50μm以下、前記溶接シーム面に垂直な方向の厚さ:3μm以下、前記長辺最大長さと前記厚さの比であるアスペクト比:5以上の酸化物の存在面積率を20%以下とすることを特徴とする、電縫溶接部の耐サワー特性に優れた高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下の中から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の電縫溶接部の耐サワー特性に優れた高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下の中から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電縫溶接部の耐サワー特性に優れた高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電縫溶接部の耐サワー特性に優れた高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電縫溶接部の耐サワー特性に優れた高強度厚肉ラインパイプ向け電縫鋼管の製造方法。
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