JP2004107773A - 耐食性に優れたラインパイプ用ステンレス鋼管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.02%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.80%、P:0.03以下、S:0.005 %以下、Cr:14.0〜18.0%、Ni:5.0 〜9.0 %、Mo:1.5 〜3.5 %、Al:0.05%以下、V:0.20%以下、N:0.03%未満、O:0.006 %以下を含有し、かつCr+0.65Ni+0.6 Mo+0.55Cu−20C ≧18.0、Cr+Mo+0.3Si −43.5C −0.4Mn −Ni−0.3Cu −9N ≦11、およびC+N≦0.04(ここで、Cr、Ni、Mo、Cu、C 、Si、Mn、N :各元素の含有量 (質量%))を満足する組成とする。さらに、Cu、Nb、Ti、Zr、B、W、あるいはCaのうちの1種以上を含有してもよい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、原油あるいは天然ガスの輸送用として好適なラインパイプ用鋼管に係り、とくに炭酸ガス(CO2)、塩素イオン(Cl− )等を含み極めて腐食性の強い原油あるいは天然ガスの輸送用として優れた耐食性と耐硫化物応力腐食割れ性を有するラインパイプ用ステンレス鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、原油価格の高騰や、近い将来に予想される石油資源の枯渇化を目前にして、従来、省みられなかったような深層油田や、開発が一旦は放棄されていた腐食性の強いサワーガス田等に対する開発が、世界的規模で盛んになっている。このような油田、ガス田は一般に深度が極めて深く、またその雰囲気も高温でかつ、CO2 、Cl− 等を含む厳しい腐食環境となっている。したがって、このような油田、ガス田で生産される原油、ガスの輸送に使用されるラインパイプ用鋼管としては、高強度で高靭性、しかも優れた耐食性を兼ね備えた鋼管が要求される。また、海洋における油田開発も活発になってきており、敷設コストを低減するという観点から溶接性にも優れた鋼管が要求されている。
【0003】
一般に、CO2 、Cl− を含む環境下では、ラインパイプ用鋼管として、溶接性の観点から炭素鋼管を使用し、防食の観点からインヒビターを使用するのが通常であった。なお、一部のパイプラインでは、ラインパイプ用鋼管として、二相ステンレス鋼管が使用されている。
しかし、インヒビターは、高温での防食効果が充分でなく、また環境汚染を引き起こすという問題もあり、インヒビターの使用を制限する動きがある。一方、二相ステンレス鋼管は合金元素量が多く耐食性に優れるという利点があるが、熱間加工性に劣り特殊な熱間加工法で製造しているため、高価であるという問題があり、その使用は限定されている。
【0004】
また、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3には、ラインパイプ用鋼管として、溶接性に優れた11Crあるいは12Crマルテンサイト系ステンレス鋼管(改良型12%Cr系ステンレス鋼管)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−316611 号公報
【特許文献2】
特開平9−291344 号公報
【特許文献3】
特開平8−41599号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1〜特許文献3に記載された改良型12%Cr系ステンレス鋼管は、いずれも150 ℃を超える高温環境下では必ずしも耐食性が充分ではなく、さらにH2S 分圧が高い環境下では硫化物応力腐食割れが発生するという問題があった。このため、さらに耐食性、耐硫化物応力腐食割れを向上させたラインパイプ用鋼管が強く要望されている。
【0007】
この発明は、かかる従来技術における事情に鑑みて成されたものであり、CO2 、Cl− 等を含む150 ℃以上の苛酷な腐食環境下においても優れた耐CO2 腐食性を示し、さらに高硫化水素(H2S )環境下においても優れた耐硫化物応力腐食割れ性を示し、かつ優れた低温靭性および優れた溶接性を兼ね備えたラインパイプ用ステンレス鋼管を提供することを目的とする。すなわち、この発明が目的とするラインパイプ用ステンレス鋼管は、優れた溶接性を維持したまま、150 ℃以上200 ℃までの温度においても、優れた耐食性、優れた耐硫化物応力腐食割れ性を保持できる鋼管である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、代表的なマルテンサイト系ステンレス鋼である、12%Cr鋼組成をベースに、CO2 、Cl− を含む、150 ℃を超える高温での腐食環境下における耐食性、高硫化水素圧の環境下における耐硫化物応力腐食割れ性に及ぼす合金元素量の影響について鋭意研究した。
【0009】
その結果、C、Nを従来より著しく低減し、さらにCr、Ni、Moを適正量含有させ、合金元素含有量を、次 (1) 式、( 2) 式および(3)式
Cr+0.65Ni+0.6Mo +0.55Cu−20C ≧18.0 ………(1)
Cr+Mo+0.3Si −43.5C −0.4Mn −Ni−0.3Cu −9N ≦11 ………(2)
C+N≦0.04 ………(3)
(ここで、 Cr、Ni、Mo、Cu、C 、Si、Mn、N :各元素の含有量 (質量%))
を満足するように調整することにより、苛酷な腐食環境下での優れた耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性と、さらに良好な熱間加工性と、優れた溶接性と溶接部靱性とがともに確保できることを見出した。
【0010】
この発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、この発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)質量%で、C:0.02%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.80%、P:0.03以下、S:0.005 %以下、Cr:14.0〜18.0%、Ni:5.0 〜9.0 %、Mo:1.5 〜3.5 %、Al:0.05%以下、V:0.20%以下、N:0.03%未満、O:0.006 %以下を含有し、かつ次(1)式、(2)式および(3)式
Cr+0.65Ni+0.6 Mo+0.55Cu−20C ≧18.0 ………(1)
Cr+Mo+0.3Si −43.5C −0.4Mn −Ni−0.3Cu −9N ≦11 ………(2)
C+N≦0.04 ………(3)
(ここで、Cr、Ni、Mo、Cu、C 、Si、Mn、N :各元素の含有量 (質量%))
を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐食性に優れたラインパイプ用ステンレス鋼管。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5 〜3.5 %を含有することを特徴とするラインパイプ用ステンレス鋼管。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.20%以下を含有することを特徴とするラインパイプ用ステンレス鋼管。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.01%以下、W:3.0 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とするラインパイプ用ステンレス鋼管。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有することを特徴とするラインパイプ用ステンレス鋼管。
(6)質量%で、C:0.02%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.80%、P:0.03以下、S:0.005 %以下、Cr:14.0〜18.0%、Ni:5.0 〜9.0 %、Mo:1.5 〜3.5 %、Al:0.05%以下、V:0.20%以下、N:0.03%未満、O:0.006 %以下を含有し、かつ次(1)式、(2)式および(3)式
Cr+0.65Ni+0.6 Mo+0.55Cu−20C ≧18.0 ………(1)
Cr+Mo+0.3Si −43.5C −0.4Mn −Ni−0.3Cu −9N ≦11 ………(2)
C+N≦0.04 ………(3)
(ここで、Cr、Ni、Mo、Cu、C 、Si、Mn、N :各元素の含有量 (質量%))
を満足する組成を有する鋼管素材を熱間加工により造管したのち、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却し、あるいはさらにAc3変態点以上に加熱し続いて空冷以上の冷却速度で室温まで冷却し、ついでAc1変態点以下の温度で焼戻しすることを特徴とする耐食性に優れたラインパイプ用ステンレス継目無鋼管の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、この発明鋼管における成分限定理由について説明する。以下、質量%は単に%と記す。
C:0.02%以下
Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼の強度に関係する重要な元素であるが、多量に含有すると、Ni含有による焼戻し時の鋭敏化が増大し、また、溶接割れ発生の危険性が増大する。また、耐食性の観点からも、できるだけも少ないほうが好ましい。このようなことから、この発明では、Cは0.02%以下に限定した。なお、好ましくは0.01%以下の範囲である。
【0012】
Si:0.50%以下
Siは、通常の製鋼過程では脱酸剤として作用するとともに、固溶して強度を増加させる元素であり、この発明では0.05%以上含有することが好ましい。一方、0.50%を超える含有は、耐CO2 腐食性を低下させ、さらには熱間加工性をも低下させる。このため、Siは0.50%以下に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.35%である。
【0013】
Mn:0.10〜1.80%
Mnは、強度を増加させる元素であり、この発明における所望の強度を確保するために0.10%以上含有する必要があるが、1.80%を超えて含有すると靱性に悪影響を及ぼす。このため、Mnは0.10〜1.80%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.10〜0.80%である。
【0014】
P:0.03%以下
Pは、耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性をともに劣化させる元素であり、この発明では可及的に低減することが望ましいが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。工業的に比較的安価に実施可能でかつ耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性をともに劣化させない範囲として、Pは0.03%以下に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。
【0015】
S:0.005 %以下
Sは、パイプ製造過程において熱間加工性を著しく劣化させる元素であり、可及的に少ないことが望ましいが、0.005 %以下に低減すれば通常工程によるパイプ製造が可能となることから、Sは0.005 %以下に限定した。なお、好ましくは0.003 %以下である。
【0016】
Cr:14.0〜18.0%
Crは、保護被膜を形成して耐食性を向上させる元素であり、とくに耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性の向上に寄与する元素である。この発明では特に、高温における耐食性向上の観点から、14.0%以上の含有を必要とする。一方、18.0%を超える含有は熱間加工性を劣化させる。このため、この発明では、Crは14.0〜18.0%の範囲に限定した。
【0017】
Ni:5.0 〜8.0 %
Niは、保護被膜を強固にして、耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を高める作用を有し、さらに固溶強化により鋼の強度を増加させる元素である。このような効果は5.0 %以上の含有で認められるが、8.0 %を超えて含有すると、マルテンサイト組織の安定性が低下し、強度が低下する。このため、Niは5.0 〜8.0 %の範囲に限定した。
【0018】
Mo:1.5 〜3.5 %
Moは、Clー による孔食に対する抵抗性を増加させる元素であり、この発明では1.5 %以上の含有を必要とする。1.5 %未満では、高温の苛酷な腐食環境下での耐食性が充分とはいえない。一方、3.5 %を超える含有は、δフェライトの発生を招き、熱間加工性および耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性が低下するとともに、高価となる。このため、Moは1.5 〜3.5 %の範囲に限定した。
【0019】
Al:0.05%以下
Alは、強力な脱酸作用を有する元素であるが、0.05%を超える含有は、靱性に悪影響を及ぼす。このため、Alは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。
V:0.20%以下
Vは、強度を上昇させるとともに、耐応力腐食割れ性を改善する効果を有する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で顕著となるが、0.20%を超えて含有すると、靱性が劣化する。このため、Vは0.20%以下に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.10%である。
【0020】
N:0.03%未満
Nは、溶接性を劣化させる元素であり、この発明ではできるだけ低減することが好ましい。0.03%以上含有すると、鋼管の円周溶接時に割れを発生させる危険性が増大する。このため、Nは0.03%未満に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。
【0021】
O:0.006 %以下
Oは、鋼中では酸化物として存在し、各種特性に悪影響を及ぼすため、できるだけ低減することが好ましい。とくに、O含有量が0.006 %を超えて多くなると、各種酸化物を形成して、熱間加工性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性および靱性を著しく低下させる。このため、この発明ではOは0.006 %以下に限定した。
【0022】
この発明では、上記した基本組成に加えて、さらにCu:0.5 〜3.5 %、および/またはNb:0.20%以下を含有できる。
Cu:0.5 〜3.5 %
Cuは、保護被膜を強固にして、鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を高める元素であり、0.5 %以上の含有でその効果が発揮されるが、3.5 %を超える含有は、CuS の粒界析出を招き、熱間加工性が低下する。このため、Cuは0.5 〜3.5 %の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.5 〜 2.0%である。
【0023】
Nb:0.20%以下
Nbは、靭性を向上させ、さらに強度を増加させる作用を有する。このような効果は0.02%以上の含有で顕著となるが、0.20%を超えての含有は逆に靱性を劣化させる。このため、Nbは0.20%以下に限定することが好ましい。
この発明では、上記した各組成に加えて、さらに、Ti:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.01%、W:3.0 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することができる。
【0024】
Ti、Zr、B、Wはいずれも、強度を増加することに加えて、耐応力腐食割れ性を改善する作用を有する。しかし、Tiは0.3 %、Zrは0.2 %、Bは0.01%、Wは3.0 %をそれぞれ超えて含有すると、靱性を劣化させる。このため、Ti:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.01%以下、W:3.0 %以下に限定することが好ましい。なお、上記した効果を得るためにはTi:0.02%以上、Zr:0.02%以上、B:0.0005%以上、W:0.50%以上含有することがより好ましい。
【0025】
また、この発明では、上記した各組成に加えて、さらに、Ca:0.0005〜0.01%を含有できる。
Caは、SをCaS として固定し硫化物系介在物を球状化する作用を有し、これにより介在物周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、介在物の水素ストラップ能を低下させる効果を有する。このような効果は、0.0005%以上の含有で顕著となるが、0.01%を超える含有は、CaO の増加を招き、耐CO2 腐食性、耐孔食性が低下する。このため、Caは0.0005〜0.01%の範囲に限定することが好ましい。
【0026】
上記した各成分の範囲を満足したうえ、この発明ではさらに次 (1) 式、 (2) 式、および(3)式を満足することが必要となる。
Cr +0.65Ni+0.6Mo +0.55Cu−20C ≧18.0 ………(1)
Cr+Mo+0.3 Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N ≦11 ………(2)
C+N≦0.04 ………(3)
(ここで、Cr、Ni、Mo、Cu、C 、Si、Mn、N :各元素の含有量 (質量%))
なお、この発明では、(1)式、(2)式の計算に当たり、含有されない元素がある場合には、当該元素の含有量を零として計算するものとする。
【0027】
Cr、Ni、Mo、Cu、C含有量を、(1)式を満足するように調整することにより、200 ℃までの高温の、CO2 、Cl −を含む高温腐食環境下での耐食性が顕著に向上する。また、Cr、Mo、Si、C、Mn、Ni、Cu、N含有量を、(2) 式を満足するように調整することにより、熱間加工性が向上する。この発明では、熱間加工性を向上させるために、P、S、Oを著しく低減しているが、P、S、O、それぞれを低減するのみでは、マルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管を造管するために必要十分な熱間加工性を確保することができない。継目無鋼管を造管するために必要十分な熱間加工性を確保するには、P、S、Oを著しく低減したうえで、(2)式を満足するように、Cr、Mo、Si、C、Mn、Ni、Cu、N含有量を調整することが肝要となる。
【0028】
C、N含有量を(3)式を満足するように低減することにより、耐溶接割れ性が向上し、ラインパイプ用鋼管としての溶接性が確保できる。なお、(C+N)量は0.03%以下とすることが好ましい。
上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
次に、この発明鋼管の製造方法について、継目無鋼管を例として説明する。
【0029】
この発明では、鋼素材を上記した組成に調整することにより、通常の製造工程に何ら修正を加えることなく、所望の高強度と所望の優れた耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性を有する継目無鋼管を製造できる。
まず、上記した組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊−分塊圧延法等通常公知の鋳造方法でスラブ又はブルームを製造し、さらに熱間圧延にてビレット等の鋼管素材とすることが好ましい。なお、鋳造にて直接ビレットを製造しても良い。ついで、これら鋼管素材を加熱し、通常のマンネスマン−プラグミル方式、あるいはマンネスマンーマンドレルミル方式の製造工程を用いて熱間加工し造管して、所望の寸法の継目無鋼管とする。造管後継目無鋼管は、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却することが好ましい。
【0030】
なお、上記した造管後の空冷以上の冷却速度での冷却に続いて、さらにAc3変態点以上の温度に加熱したのち空冷以上の冷却速度で室温まで冷却する再加熱焼入れ処理を行なうことが、高靭性化の観点から好ましい。
焼入れ処理された継目無鋼管は、ついで、Ac1変態点以下の温度に加熱され焼戻し処理を施されることが好ましい。Ac1変態点以下好ましくは400 ℃以上の温度に加熱し、焼戻すことにより、主として組織は焼戻しマルテンサイト、オーステナイトとからなる組織となり、所望の高強度と所望の優れた耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性を有する継目無鋼管となる。
【0031】
なお、継目無鋼管についてのみ説明したが、この発明鋼管はこれに限定されるものではない。上記した組成の鋼素材を用い、通常の製造工程にしたがい、たとえば、電縫鋼管、UOE鋼管とすることも可能である。
【0032】
【実施例】
次にこの発明を実施例に従いさらに詳細に説明する。
表1に示す組成の溶鋼を十分に脱ガスした後、100kgf鋼塊に鋳造し、モデルシームレス圧延機を用い熱間で造管し、造管後空冷して、外径3.3 in×肉厚0.5 inの継目無鋼管とした。
【0033】
得られた継目無鋼管について、造管ままで内外表面の割れ発生の有無を目視で調査し、熱間加工性を評価した。
また、得られた継目無鋼管について、表2に示す溶接材料を用い、表3に示す条件で鋼管端部同士を突き合わせて円周溶接し、溶接継手を作製した。
得られた溶接継手部について、溶接割れの有無をX線で全周にわたり調査し、溶接性を評価した。なお、評価の基準は、○を溶接割れがなしの場合、×を溶接割れがありの場合とした。
【0034】
また得られた溶接継手部から試験片を採取して、シャルピー衝撃試験、腐食試験および硫化物応力割れ試験をそれぞれ実施し、溶接部靭性、溶接部の耐食性および耐硫化物応力割れ性を調査した。
シャルピー衝撃試験は、溶接熱影響部にノッチを入れた試験片(Vノッチ試験片)を用い、JIS Z 2242の規定に準拠して、試験温度:−40℃で試験し吸収エネルギー( VE −40 )を求め、溶接部靭性を評価した。
【0035】
腐食試験は、溶接継手部から厚さ3mm×幅30mm×長さ40mmの腐食試験片を機械加工により作製し、オートクレーブ中に保持された試験液:20%NaCl水溶液(液温:200 ℃、30気圧のCO2 ガス雰囲気)中に腐食試験片を浸漬し、浸漬期間を2週間として実施した。腐食試験後の試験片について、重量を測定し、腐食試験前後の重量減から、腐食速度を算出した。また、試験後の腐食試験片について倍率:10倍のルーペを用いて試験片表面の孔食発生の有無を観察した。得られた腐食速度、孔食発生の有無で、溶接継手部の耐食性を評価した。
【0036】
硫化物応力割れ試験は、溶接継手部からNACE TM0177 Method A に規定された定荷重型試験片を機械加工によって作製し、5%NaCl水溶液(液温:25℃、0.005MPaのH2S 雰囲気)中で、付加応力を母材降伏応力の90%として、浸漬期間を720 時間とし、NACE TM0177 Method Aに準拠して実施した。なお、割れ発生無の場合を○、有の場合を×として評価した。
【0037】
得られた結果を表4に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
本発明例はいずれも、鋼管表面の割れ発生は認められず、また溶接部の割れ発生、靭性低下もなく、さらに溶接部の腐食速度も小さく、孔食の発生、溶接部の硫化物応力腐食割れの発生もなく、熱間加工性、耐溶接割れ性、および溶接部靭性に優れ、さらに高圧のCO2 を含み200 ℃という高温で苛酷な腐食環境下における溶接部の耐食性、および溶接部の耐硫化物応力割れ性に優れた鋼管となっている。
【0043】
これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、鋼管表面に割れ発生が認められ熱間加工性が低下しているか、あるいは溶接割れの発生が認められ耐溶接割れ性が低下しているか、あるいは溶接部靭性が低下しているか、あるいは腐食速度が大きいかあるいは孔食の発生が認められ溶接部の耐食性が低下しているか、あるいは硫化物応力腐食割れが発生して、溶接部の耐硫化物応力腐食割れ性が低下している。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、CO2 、Clー 、H2S を含む厳しい腐食環境下において充分な耐食性と、優れた低温靭性および優れた溶接性を兼ね備えたラインパイプ用ステンレス鋼管を、安価にしかも安定して製造でき、産業上格段の効果を奏する。
Claims (5)
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5 〜3.5 %を含有することを特徴とする請求項1に記載のラインパイプ用ステンレス鋼管。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.20%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のラインパイプ用ステンレス鋼管。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.01%以下、W:3.0 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のラインパイプ用ステンレス鋼管。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のラインパイプ用ステンレス鋼管。
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