以下に、本発明に係る圧着端子の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態]
本発明に係る圧着端子の実施形態の1つを図1から図34に基づいて説明する。
図1から図4の符号1は、本実施形態の圧着端子を示す。この圧着端子1は、電線50に対して電気的に接続され、この電線50と一体になった状態のままで相手側端子(図示略)に対して電気的に接続されるものである。ここで、電線50は、その端部において、芯線51を所定の長さ露出させるべく、その長さ分だけ被覆52を剥いて取り除いている。芯線51は、複数本の素線の集合体であってもよく、同軸ケーブルの如き単線であってもよい。圧着端子1は、電線50に対して電気的に接続させるために、この電線50の端部に圧着させることで、露出している先端の芯線(以下、単に「先端の芯線」という。)51との間で電気的に接続される。
具体的に、圧着端子1は、端子金具10と、止水部材20と、を備える。
端子金具10は、圧着端子1における主体部分であり、相手側端子や電線50との接続が可能な所定の形状へと導電性の金属の板材(例えば銅板)によって成形される。この端子金具10は、図5及び図6に示すように、相手側端子に対して電気的に接続される端子接続部11と、電線50に対して電気的に接続される電線接続部12と、を有する。端子接続部11と電線接続部12は、これらの間に介在させた連結部13によって連結されている。
端子金具10は、雄端子であってもよく、雌端子であってもよい。端子接続部11は、端子金具10が雄端子の場合、雄型に成形され、端子金具10が雌端子の場合、雌型に成形される。本実施形態では、雌端子を例として挙げている。
ここで、この圧着端子1においては、相手側端子との間の接続方向(挿入方向)を長手方向としての第1方向Lと定義する。また、この圧着端子1の後述する並列配置方向については、圧着端子1の幅方向としての第2方向Wと定義する。また、この圧着端子1においては、その第1方向Lと第2方向Wとに各々直交する方向を高さ方向としての第3方向Hと定義する。
電線接続部12は、先ずは1枚の板状に成形されており(図5及び図6)、後述する所定の加工を施した上で、電線50との接続直前の状態としてのU字状に成形される(図1及び図7)。そして、この電線接続部12は、電線50の端部が載せ置かれた状態で当該電線50に巻き付けることによって、この電線50の端部に圧着され、先端の芯線51に接触する。
この電線接続部12は、底部14の領域と第1バレル片部15の領域と第2バレル片部16の領域とに区画することができる。底部14は、U字状の電線接続部12の底壁となる部位であり、圧着加工の際に電線50の端部が載置される。第1及び第2のバレル片部15,16は、U字状の電線接続部12の側壁となる部位であり、底部14における第2方向Wの両端に各々延在させている。U字状の電線接続部12においては、底部14の両端から電線50の端部を囲うように第1及び第2のバレル片部15,16が延在している。
第1バレル片部15と第2バレル片部16は、底部14側の根元から先端15a,16aの端面までの距離が一方に対して他方が長くなるように形成されている。このため、第1及び第2のバレル片部15,16におけるそれぞれの先端15a,16aは、U字状の電線接続部12において、一方よりも他方が第3方向Hで突出している。この例示では、第2バレル片部16が第1バレル片部15よりも底部14から長く延在させられている(図1及び図7)。このため、この電線接続部12においては、圧着加工の完了後(以下、「圧着完了後」という。)に、第1バレル片部15と第2バレル片部16とが重なり合っている領域(以下、「オーバラップ領域」という。)が形成される(図8−図10)。オーバラップ領域とは、具体的に、圧着完了後に第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面とが互いに対向している領域のことである。つまり、この電線接続部12においては、第1バレル片部15が内側で電線50の端部に巻き付けられるバレル片部となり、第2バレル片部16が外側で電線50の端部に巻き付けられるバレル片部となる。従って、圧着加工の際には、第1バレル片部15が電線50の端部の外周面に巻き付けられ、この状態の電線50の端部と第1バレル片部15とを外周面側から覆うように第2バレル片部16が巻き付けられる。電線接続部12においては、このようにして第1バレル片部15と第2バレル片部16が電線50の端部に加締められる。
ここで、電線50の端部は、電線接続部12のU字の開口側(それぞれの先端15a,16aの端面間に形成されている開口)からU字状の内側の空間に挿入される。このため、電線接続部12は、電線50の端部が挿入されやすくなるように、底部14側から開口側(先端15a,16a側)に向かうにつれて第1バレル片部15と第2バレル片部16の間隔が広くなっている。
更に、この電線接続部12は、芯線圧着部12Aの領域と被覆圧着部12Bの領域と連結圧着部12Cの領域とに区画することができる(図2、図4−図6)。芯線圧着部12Aは、先端の芯線51に対して圧着させる部位であり、連結部13に連接している。被覆圧着部12Bは、先端の芯線51の露出部分における根元に連なる被覆52に対して圧着させる部位である。連結圧着部12Cは、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとを連結させると共に電線50の端部に圧着させる部位である。
電線接続部12には、その内壁面(電線50を覆う側の壁面)に、圧着した先端の芯線51を保持するための芯線保持領域(以下、「セレーション領域」という。)17が設けられている(図11)。そのセレーション領域17は、電線接続部12の内壁面の内、先端の芯線51に対して巻き付ける部分に少なくとも配置する。この例示のセレーション領域17は、先端の芯線51を全体的に覆うように形成する。このため、セレーション領域17の第1方向Lは、内壁面に載置された先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側と被覆52が載置される部分との間に形成する。また、セレーション領域17の第2方向Wは、第1バレル片部15の先端15a側と第2バレル片部16における圧着完了後に少なくとも先端の芯線51に接触する部分との間に形成する。この例示では、その先端の芯線51に接触する部分より先端16a側にもセレーション領域17を設けている。具体的に、本実施形態のセレーション領域17とは、複数の凹部、複数の凸部又は複数の凹部と凸部の組み合わせが矩形状に並べられたものであり、凹部や凸部によって電線接続部12と先端の芯線51との間の接触面積を増やし、この間の密着強度を高めるものである。この例示では、複数の凹部17aによって矩形状のセレーション領域17が形成されている。
ここで、電線接続部12と先端の芯線51は、その相互間で電気的に接続されている必要がある。このため、その間への水の浸入は、耐久性を低下させてしまう可能性があるので好ましくない。例えば、電線接続部12と芯線51とがイオン化傾向の大小異なる異種金属材料(銅とアルミニウム等)で成形されている場合、その間においては、水の浸入によって、殊にアルミニウム側が腐食してしまう可能性がある。そこで、この圧着端子1には、電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑えるための止水部材20が設けられている(図12及び図13)。その止水部材20は、変性アクリル系粘着剤等の粘着剤を主とするシート状に形成されたものである。例えば、止水部材20としては、シート状の不織布に粘着剤を染み込ませて、シートの両面に粘着効果を有するものを用いる。
止水部材20は、圧着完了後に第1から第3の止水領域21,22,23を形成する(図8−図10)。これら第1から第3の止水領域21,22,23の配置を具現化すべく、止水部材20は、所定形状に形成した上で、図6に示す平板状の電線接続部12の内壁面に貼り付ける。
第1止水領域21とは、少なくとも圧着完了後の第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面との間(つまりオーバラップ領域)に止水部材20を介在させた領域であり(図8−図10)、その間からの電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑える領域である。このために、この第1止水領域21は、先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側と先端の芯線51の根元よりも被覆52側との間に延在させている。この第1止水領域21は、止水部材20の第1止水部24によって形成される(図13)。
第1止水部24は、第2バレル片部16における先端16a側と底部14側との間にて、先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側と先端の芯線51の根元よりも被覆52側との間に渡って配置する。この第1止水部24の底部14側は、セレーション領域17の第2バレル片部16側を覆い隠す位置まで延在させている。このため、この例示の第1止水領域21は、オーバラップ領域だけでなく、第2バレル片部16と先端の芯線51との電気的な接続を阻害しない範囲内で、第2バレル片部16の内壁面と先端の芯線51との間にも形成される(図9)。
第2止水領域22とは、少なくとも圧着完了後の電線接続部12の内方における先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側に止水部材20が充填された領域であり(図8)、その端子接続部11側からの電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑える領域である。この第2止水領域22は、主に止水部材20の第2止水部25によって形成される(図13)。
第2止水部25は、第1バレル片部15の先端15a側と第1止水部24との間にて、先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側と先端の芯線51の先端部分側との間に渡って配置する。この例示の第2止水部25は、先端の芯線51の先端部分にかかるように配置している。このため、この例示の第2止水領域22は、その芯線51の先端部分についても止水部材20(第2止水部25)で覆われる。また、この例示の第2止水部25は、第1止水部24に連接させている。このため、この例示の第2止水領域22は、第2止水部25と、第1止水部24における第2止水部25との連接部分(オーバラップ領域よりも底部14側)と、によって形成されている。
第3止水領域23とは、少なくとも圧着完了後の電線接続部12(具体的には被覆圧着部12B)の内壁面と被覆52との間に止水部材20を介在させた領域であり(図10)、その間からの電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑える領域である。この第3止水領域23は、主に止水部材20の第3止水部26によって形成される(図13)。
第3止水部26は、第1バレル片部15の先端15a側と第1止水部24との間で、かつ、電線接続部12における被覆52に巻き付ける部分に配置する。この例示の第3止水部26は、第1止水部24に連接させている。このため、この例示の第3止水領域23は、第3止水部26と、第1止水部24における第3止水部26との連接部分(オーバラップ領域よりも底部14側)と、によって形成されている。
この止水部材20は、このような形状のものを電線接続部12の内壁面に配置することによって、圧着完了後に連接状態の第1から第3の止水領域21,22,23として形成される。その第1から第3の止水領域21,22,23は、電線接続部12において、電線50の端部と外部との連通を遮断させるものとなる。よって、この止水部材20は、電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑えることができる。
以上示した端子金具10は、1枚の金属の板材に対するプレス工程を経て、図6に示す平板状の電線接続部12を有する形態に加工され、その後の止水部材貼付工程において、その平板状の電線接続部12に止水部材20が貼付される。しかる後、この端子金具10は、折り曲げ工程において、端子接続部11が形成され、かつ、U字状の電線接続部12が形成される。
上述した工程を経た圧着端子1は、複数個並べられた連鎖体(以下、「端子連鎖体」という。)30として形成されている(図14)。端子連鎖体30とは、各々が同一方向を向いた状態で並列に等間隔で配置され且つ連鎖状に繋がれた複数の圧着端子1の集合体のことをいう。端子連鎖体30においては、全ての圧着端子1における一方の端部が連結片31によって繋がれている。連結片31は、例えば矩形の板状に成形され、全ての圧着端子1の電線接続部12に対して所定の間隔を空けて配置される。その電線接続部12の底部14と連結片31は、圧着端子1毎に例えば矩形の板状の繋ぎ部32を介して繋がれている。連結片31には、端子連鎖体30を端子圧着装置100の圧着位置まで送るための貫通孔(以下、「端子送り孔」という。)31aが端子連鎖体30の送り方向に沿って等間隔に形成されている。このように形成された端子連鎖体30は、リール状に巻き取られた状態で端子圧着装置100に配置される(図示略)。そして、圧着端子1は、電線50に圧着された後、端子連鎖体30から切り離される。
端子圧着装置100について説明する。
端子圧着装置100は、図15に示すように、所定の圧着位置まで圧着端子1を供給する端子供給装置101と、その圧着位置で圧着端子1を電線50に圧着する圧着装置102と、端子供給装置101及び圧着装置102を動作させるための駆動装置103と、を備える。端子供給装置101と圧着装置102は、この技術分野においてアプリケータと称される装置である。
端子供給装置101は、リール状に巻き取られている端子連鎖体30の外周側における先頭の圧着端子1を引き出して、順次圧着位置まで供給する。この端子供給装置101は、その先頭の圧着端子1の電線50への圧着と端子連鎖体30からの切断とを終えた後、新たに先頭となった圧着端子1を圧着位置まで供給する。この端子供給装置101では、その動作が圧着加工と切断加工を行う度に順次繰り返される。
この端子供給装置101は、この技術分野において周知の構成を有しており、連結片31の端子送り孔31aに挿入される端子送り部材101aと、駆動装置103の動力によって端子送り部材101aを駆動させる動力伝達機構101bと、を備える。動力伝達機構101bは、圧着装置102の圧着動作(後述するラム114A等の上下動)に連動するリンク機構として構成する。この例示の端子供給装置101は、圧着装置102の圧着動作に連動して、端子送り部材101aを上下方向及び左右方向に駆動させることによって、圧着端子1を圧着位置まで供給する。
圧着装置102は、供給された圧着端子1の電線50への圧着と、この圧着端子1の端子連鎖体30からの切り離しと、を行う。このため、この圧着装置102は、圧着機110と端子切断機120とを備える。
圧着機110は、圧着位置まで供給された圧着端子1を電線50の端部に加締めることによって、この圧着端子1を電線50に圧着させる装置である。この例示の圧着機110は、圧着端子1における第1バレル片部15と第2バレル片部16とを電線50における先端の芯線51と被覆52とに各々加締めることによって、この圧着端子1を電線50に圧着させる。この圧着機110は、フレーム111と、互いに対を成す第1金型112及び第2金型113と、動力伝達機構114と、を備える。
フレーム111は、基台111Aと、アンビル支持体111Bと、動力伝達機構114の支持体(以下、「伝達部支持体」という。)111Cと、を備える。基台111Aは、例えば、端子圧着装置100を載せ置く載置台(図示略)の上に固定される。アンビル支持体111Bと伝達部支持体111Cは、基台111Aの上に固定される。伝達部支持体111Cは、アンビル支持体111Bに対して後方(図15の紙面右方)かつ上方(図15の紙面上方)に配置する。具体的に、この伝達部支持体111Cは、アンビル支持体111Bの後方で基台111Aから上方に向けて立設された立設部111C1と、この立設部111C1の上部に保持されたラム支持部111C2と、を有する。ラム支持部111C2は、後述するラム114Aを支持する支持部であり、アンビル支持体111Bの上方に所定の間隔を空けて配置する。
第1金型112と第2金型113は、上下方向に間隔を空けて配置され、その間に配置された圧着端子1と電線50の端部とを挟み込んでいくことで圧着端子1を電線50の端部に圧着させる圧着成形型である(図16)。第1金型112は、2つの下型が形成されたものであり、その下型として第1アンビル112Aと第2アンビル112Bとを有する。第2金型113は、2つの上型が形成されたものであり、その上型として第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bとを有する。第1アンビル112Aと第1クリンパ113Aは、上下方向で互いに対向させて配置されており、その相互間の間隔を狭めていくことによって、U字状の芯線圧着部12Aを先端の芯線51に圧着させる。また、第2アンビル112Bと第2クリンパ113Bは、上下方向で互いに対向させて配置されており、その相互間の間隔を狭めていくことによって、U字状の被覆圧着部12Bを被覆52に圧着させる。
駆動装置103は、その動力を動力伝達機構114に伝えることによって、そのような圧着加工時に第1アンビル112Aと第1クリンパ113Aとの間及び第2アンビル112Bと第2クリンパ113Bとの間を狭め、圧着加工後に第1アンビル112Aと第1クリンパ113Aとの間及び第2アンビル112Bと第2クリンパ113Bとの間を広げる。この例示では、第2金型113を第1金型112に対して上下動させることによって、第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bを同時に第1アンビル112Aと第2アンビル112Bに対して上下動させる。但し、第1アンビル112Aと第2アンビル112Bと第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bは個別に成形された成形体であってもよく、この場合、駆動装置103と動力伝達機構114は、第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bを別々に上下動させるように構成してもよい。この例示では、第1アンビル112Aと第1クリンパ113Aにより芯線圧着部12Aの圧着が始まった後に、第2アンビル112Bと第2クリンパ113Bによる被覆圧着部12Bの圧着が始まる。
本実施形態の動力伝達機構114は、駆動装置103から出力された動力を第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bに伝えるものであり、図15に示すように、ラム114Aと、ラムボルト114Bと、シャンク114Cと、を備える。
ラム114Aは、ラム支持部111C2に対して上下動自在に支持された可動部材である。このラム114Aには、第2金型113が固定されている。このため、第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bは、ラム114Aと一体になってラム支持部111C2に対して上下動することができる。例えば、このラム114Aは、方体状に成形している。このラム114Aには、雌螺子部(図示略)が形成されている。その雌螺子部は、ラム114Aの内方から上端面に向けて形成された上下方向の穴の内周面に形成する。
ラムボルト114Bは、ラム114Aの雌螺子部に螺合される雄螺子部(図示略)を有する。このため、このラムボルト114Bは、ラム114Aと一体になってラム支持部111C2に対して上下動することができる。また、このラムボルト114Bは、その雄螺子部の上方に配置されたボルト頭部114B1を有する。そのボルト頭部114B1には、雌螺子部(図示略)が形成されている。その雌螺子部は、ボルト頭部114B1の内方から上端面に向けて形成された上下方向の穴の内周面に形成する。
シャンク114Cは、円柱状の中空部材であり、それぞれの端部に雄螺子部114C1と接続部(図示略)とを有する。このシャンク114Cの雄螺子部114C1は、中空部材の下側に形成されており、ラムボルト114Bのボルト頭部114B1の雌螺子部に螺合される。このため、シャンク114Cは、ラム114Aやラムボルト114Bと一体になってラム支持部111C2に対して上下動することができる。接続部は、駆動装置103に接続される。
駆動装置103は、駆動源(図示略)と、駆動源の駆動力を上下方向の動力に変換する動力変換機構(図示略)と、を有する。シャンク114Cの接続部は、その動力変換機構の出力軸に連結されている。このため、第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bは、駆動装置103の出力(動力変換機構の出力)によって、ラム114Aとラムボルト114Bとシャンク114Cと一体になってラム支持部111C2に対して上下動する。駆動源としては、電動機などの電動アクチュエータ、油圧シリンダなどの油圧アクチュエータ、エアシリンダなどの空気圧アクチュエータ等が適用可能である。
ここで、第1アンビル112Aに対する第1クリンパ113Aの上下方向における相対位置と第2アンビル112Bに対する第2クリンパ113Bの上下方向における相対位置は、ボルト頭部114B1の雌螺子部とシャンク114Cの雄螺子部114C1のねじ込み量を調整することによって、変化させることができる。ナット114Dは、ラムボルト114Bの上方でシャンク114Cの雄螺子部114C1に螺合させており、ボルト頭部114B1の雌螺子部と共に所謂ロックナットの機能を成す。このため、このナット114Dは、上記の相対位置の調整完了後にラムボルト114B側へと締め付けることによって、その相対位置に第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bを固定することができる。
第1アンビル112Aと第2アンビル112Bは、それぞれの上側の先端に、下方に向けて凹ませた凹状面112A1,112B1が形成されている(図16)。それぞれの凹状面112A1,112B1は、U字状の芯線圧着部12AとU字状の被覆圧着部12Bのそれぞれの底部14の形状に合わせて弧状に形成される。この圧着機110においては、そのそれぞれの凹状面112A1,112B1が圧着位置となる。底部14を下側にして供給されてきた圧着端子1は、芯線圧着部12Aの底部14が第1アンビル112Aの上端の凹状面112A1に載置され、被覆圧着部12Bの底部14が第2アンビル112Bの上端の凹状面112B1に載置される。第1金型112は、それぞれに凹状面112A1,112B1を上方に露出させた状態でアンビル支持体111Bに支持される。
第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bには、それぞれに、上方に向けて凹ませた凹状部113A1,113B1が形成されている(図16及び図17)。各凹状部113A1,113B1は、第1アンビル112Aと第2アンビル112Bのそれぞれの凹状面112A1,112B1に対して上下方向で対向させて配置されている。各凹状部113A1,113B1は、互いに対向する第1及び第2の壁面115,116と、第1及び第2の壁面115,116の上端を繋ぐ第3壁面117と、を有する。各凹状部113A1,113B1は、第1から第3の壁面115,116,117を第1バレル片部15と第2バレル片部16に接触させつつ、第1バレル片部15と第2バレル片部16を電線50の端部に巻き付けながら加締めていく。各凹状部113A1,113B1は、このような加締め動作を行えるように形成する。
第1バレル片部15と最初に接する第1壁面115は、受け部115aと巻き込み部115bとを有する。
受け部115aは、第1バレル片部15に最初に接触させる壁面であり、第2金型113の下降と共に第1バレル片部15の先端15aが当接する。この受け部115aは、第1アンビル112Aと第2アンビル112Bの凹状面112A1,112B1から離れるにつれて(つまり上方に向かうにつれて)、第2壁面116に徐々に近づいていくように傾斜させている。これにより、第1バレル片部15は、第2金型113が下降するにつれて、受け部115a上を摺動しながら、先端15a側から順に電線50側へと押し動かされていく。
巻き込み部115bは、受け部115aによって押し動かされた第1バレル片部15を電線50の端部側に巻き込ませていくための壁面である。この巻き込み部115bは、受け部115aとの境界部分から上方に延在させた平面状の垂設面115b1と、この垂設面115b1に連接され、この垂設面115b1に沿って摺動してきた第1バレル片部15を先端15a側から電線50の端部側に巻き込んでいく弧状面115b2と、を有する。垂設面115b1は、第2金型113の移動方向に沿う平面である。弧状面115b2は、垂設面115b1に対して滑らかに繋げられた面であり、第2壁面116側に向けた弧を描いている。この例示では第3壁面117が設けられているので、弧状面115b2は、垂設面115b1と第3壁面117とを滑らかに繋ぐように形成されている。このような巻き込み部115bによって、第1バレル片部15は、第2金型113が下降するにつれて、巻き込み部115b上を摺動しながら弧状面115b2に到達したときに、先端15a側から順に電線50側へと巻き込まれていく。
第2バレル片部16と最初に接する第2壁面116は、第1壁面115と同じように、受け部116aと巻き込み部116bとを有する。
受け部116aは、第2バレル片部16に最初に接触させる壁面であり、第2金型113の下降と共に第2バレル片部16の先端16aが当接する。この受け部116aは、第1アンビル112Aと第2アンビル112Bの凹状面112A1,112B1から離れるにつれて(上方に向かうにつれて)、第1壁面115に徐々に近づいていくように傾斜させている。これにより、第2バレル片部16は、第2金型113が下降するにつれて、受け部116a上を摺動しながら、先端16a側から順に電線50側へと押し動かされていく。
巻き込み部116bは、受け部116aによって押し動かされた第2バレル片部16を電線50の端部側に巻き込ませていくための壁面である。この巻き込み部116bは、受け部116aとの境界部分から上方に延在させた平面状の垂設面116b1と、この垂設面116b1に連接され、この垂設面116b1に沿って摺動してきた第2バレル片部16を先端16a側から電線50の端部側に巻き込んでいく弧状面116b2と、を有する。垂設面116b1は、第2金型113の移動方向に沿う平面である。弧状面116b2は、垂設面116b1に対して滑らかに繋げられた面であり、第1壁面115側に向けた弧を描いている。この例示では第3壁面117が設けられているので、弧状面116b2は、垂設面116b1と第3壁面117とを滑らかに繋ぐように形成されている。このような巻き込み部116bによって、第2バレル片部16は、第2金型113が下降するにつれて、巻き込み部116b上を摺動しながら弧状面116b2に到達したときに、先端16a側から順に電線50側へと巻き込まれていく。
第3壁面117は、第2金型113の移動方向(上下方向)に対する直交平面、又は、それぞれの巻き込み部115b,116bの弧状面115b2,116b2を滑らかに繋ぐ弧状面に形成する。
第2バレル片部16は、第1バレル片部15よりも長い。このため、第2バレル片部16の先端16aは、第2金型113が下降するにつれて、第2壁面116を摺り動きながら第3壁面117に移り、第3壁面117を摺り動きながら第1壁面115に移る。第2バレル片部16は、その第2金型113側の摺接面の移り変わりによって、電線50側に巻き込まれながら、第1バレル片部15と電線50に巻き付いていく。その際、第2バレル片部16は、その内壁面で第1バレル片部15を電線50側に押し動かし、第1バレル片部15の電線50側への巻き込みを補助する。このため、第1バレル片部15は、弧状面115b2で電線50側に巻き込まれた後、その巻き込みが第2バレル片部16からの力によって継続され、電線50に巻き付いていく。
このようにして圧着機110で圧着加工された圧着端子1は、端子切断機120によって連結片31から切り離される。端子切断機120は、圧着位置まで供給された圧着端子1の繋ぎ部32を2つの端子切断部で挟み込んで切断するものであり、その切り離しを圧着工程の進行と同時に行う。端子切断機120は、第2アンビル112Bよりも前側(図15の紙面左側)に配置する。
端子切断機120は、この技術分野において周知のものであり、例えば端子切断体121と押下部材122と弾性部材123とを備える。端子切断体121は、第2アンビル112Bの前面に沿って上下方向に摺動し得るように配置される。この端子切断機120では、端子切断体121と第2アンビル112Bとに各々端子切断部が形成されている。押下部材122は、ラム114Aに固定されており、ラム114Aと一体になって上下動する。この押下部材122は、端子切断体121の上方に配置され、下降していって端子切断体121を押し下げる。弾性部材123は、端子切断体121に対して上方への付勢力を加えるものであり、バネ部材等から成る。この弾性部材123は、押下部材122からの押下力が解除されたときに、端子切断体121を上下方向における初期位置に戻す。この端子切断機120においては、圧着加工時の第2金型113の下降と共に押下部材122が下降し、端子切断体121を押し下げることによって、それぞれの端子切断部で繋ぎ部32を切断し、圧着端子1を端子連鎖体30から切り離す。
圧着対象となる電線50は、端子切断体121と押下部材122との間における所定の位置に配置される。その所定の位置とは、圧着加工前の電線50の端部を平板状の電線接続部12の底部14の上方に存在させ、圧着加工の開始と共に押し下げられた先端の芯線51の先端位置が芯線圧着部12Aから食み出さないように、この芯線51を芯線圧着部12Aの底部14に載置させることが可能な位置のことである。先端の芯線51の先端位置は、圧着加工に伴い、載置されている位置よりも軸線方向に伸びることがある。所定の位置は、その伸びも考慮に入れて決めることが望ましい。この圧着端子1においては、そのような位置に圧着加工中の先端の芯線51の先端位置が載置されているので、その芯線51の第2止水領域22からの突出を防ぐことができる。よって、この圧着端子1は、第2止水領域22による止水性を確保することができる。
ところで、圧着加工中に第1バレル片部15と第2バレル片部16とを初めて当接させる際には、それぞれの先端15a,16aの端面同士がぶつからないようにすることが望ましい。そのような端面同士の接触は、第1バレル片部15や第2バレル片部16の無用な変形を引き起こしたり、第2バレル片部16が第1バレル片部15と電線50との間に入り込んだりして、所望の圧着加工が行われない可能性があるからである。
そこで、本実施形態の圧着端子1においては、U字状の電線接続部12における第1バレル片部15の先端15aを第2バレル片部16側に折り曲げて(図7)、下降してきた第2金型113(第1クリンパ113Aと第2クリンパ113B)における第1バレル片部15との摺接面(具体的には第1壁面115の巻き込み部115bにおける垂設面115b1)と先端15aとの間に隙間を設ける。本実施形態の圧着端子1は、このように第1バレル片部15の先端15aを形成することによって、圧着過程での先端15a,16aの端面同士の接触の可能性を減らし、第2バレル片部16を第1バレル片部15と第1壁面115との間に入り込ませることができる(図18−図20)。図18は、図4のY1−Y1線で切った部位(先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側)の圧着過程を示す図である。図19は、図4のY2−Y2線で切った部位(先端の芯線51に対する圧着部位)の圧着過程を示す図である。図20は、図4のY3−Y3線で切った部位(被覆52に対する圧着部位)の圧着過程を示す図である。図18−図20においては、図示の便宜上、第1及び第2の金型112,113を省略している。
この圧着端子1は、そのような第1バレル片部15の先端15aの形状によって、先端15a,16aの端面同士の接触に伴う第1バレル片部15や第2バレル片部16の無用な変形、電線接続部12の位置ズレ等を抑えることができるので、所望の圧着加工の実施が可能になり、止水部材20による止水性の向上も可能になる。ここで、この圧着端子1においては、圧着完了後の第1バレル片部15の先端15aの外壁面を第2バレル片部16の内壁面の止水部材20で覆うことができるように、第2バレル片部16の内壁面に対する止水部材20の貼付領域を設定することが望ましい。これにより、この圧着端子1においては、その先端15aの外壁面と第2バレル片部16の内壁面との間にも第1止水領域21が形成されるようになるので、その間における止水性を向上させることができる。また、先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側においては、先端15aが内壁面側も外壁面側も止水部材20で覆われるので、かかる第2止水領域22における止水性を向上させることができる。
具体的に、第1バレル片部15は、摺接面と先端15aとの間の隙間が少なくとも第2バレル片部16の先端16aの板厚よりも大きくなるように先端15aを折り曲げる。また、第2バレル片部16の先端16aにまで止水部材20が貼付されている場合、第1バレル片部15は、摺接面と先端15aとの間の隙間が少なくとも第2バレル片部16の先端16aの板厚と止水部材20の板厚の和よりも大きくなるように先端15aを折り曲げる。例えば、本実施形態の第1バレル片部15は、第2金型113の下降と共に垂設面115b1まで到達した際に、その先端15aと垂設面115b1の間隔が少なくとも第2バレル片部16の先端16aの板厚(先端16aにまで止水部材20が貼付されている場合には先端16aの板厚と止水部材20の板厚の和)よりも大きくなるように、先端15aを第2バレル片部16側に折り曲げておく。換言するならば、第1バレル片部15は、その主体部分の外壁面を含む仮想平面と先端15aの端面との間隔が少なくとも第2バレル片部16の先端16aの板厚(先端16aにまで止水部材20が貼付されている場合には先端16aの板厚と止水部材20の板厚の和)よりも大きくなるように、先端15aを第2バレル片部16側に折り曲げる。これにより、この圧着端子1は、圧着過程での先端15a,16aの端面同士の接触を抑え、第2バレル片部16を第1バレル片部15と第1壁面115との間に入り込ませることができる。
折り曲げられた先端15aは、圧着加工中に、第1バレル片部15と第2バレル片部16との間に電線50の端部が挿入可能であり、かつ、その挿入時に先端15aが電線50の端部に当接しないように、その形状(主に先端15aの折り曲げの角度や折り曲げの開始位置(換言するならば折り曲げ部分の長さ))を決めることが望ましい。これにより、本実施形態の圧着端子1は、折り曲げた先端15aによって圧着加工が阻害されるという事態を回避することができる。また、その先端15aの折り曲げ形状は、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとで異なるものとしてもよい。例えば、被覆圧着部12Bにおける先端15aの折り曲げ形状は、先端15aにおける先端面が被覆52に当接しないように形成することが望ましい。これにより、この圧着端子1は、先端15aによる被覆52の破れ等の発生を抑えることができる。
更に、それぞれの先端15a,16aの外壁面側には、底部14側から先端15a,16aの端面側に向かうにつれて先端15a,16aの板厚を薄くするテーパ面15a1,16a1を設けることが望ましい(図18−図20)。そのテーパ面15a1,16a1は、電線接続部12のプレス工程で形成すればよい。本実施形態の圧着端子1は、そのようなテーパ状の先端15a,16aによって、先端15aと第1壁面115との間隔を増やすことができ、かつ、その間に挿入させる先端16aの端面側を薄くすることができるので、圧着過程での先端15a,16aの端面同士の接触を抑え、第1バレル片部15と第1壁面115との間に第2バレル片部16が挿入されやすくなる。よって、この圧着端子1は、所望の圧着加工の実施が可能になり、止水部材20による止水性の向上も可能になる。
ところで、如何に先端15aの折り曲げ加工等を施したとしても、圧着加工中の電線接続部12が第1及び第2の金型112,113に対して正しい姿勢を保っていなければ、第2バレル片部16は、先端16aの端面が先端15aの端面に接触したり、第1バレル片部15と電線50との間に入り込んだりしてしまう可能性がある。正しい姿勢とは、電線接続部12における底部14を最下端に配置して凹状面112A1,112B1に載せ置き、第1バレル片部15と第2バレル片部16の間の開口を第1及び第2のクリンパ113A,113Bに対向させた状態のことである。例えば、圧着端子1は、電線接続部12における弧状の底部14が弧状の凹状面112A1,112B1に載置されており、更に第1バレル片部15と第2バレル片部16の長さが異なるので、第1クリンパ113Aから第1バレル片部15への力の掛かり方や第2クリンパ113Bから第2バレル片部16への力の掛かり方次第で、凹状面112A1,112B1の周方向に沿って電線接続部12が回転してしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、下記に示す複数の方策の内の少なくとも1つを採用することで、圧着加工中の電線接続部12の回転を抑えることが望ましい。
例えば、電線接続部12の回転を抑えるためには、電線接続部12の両端に配置されている端子接続部11と連結片31及び繋ぎ部32の内の少なくとも一方を圧着加工中に保持しておけばよい。
端子接続部11を保持するためには、圧着位置で載置されている圧着端子1の端子接続部11の回転を抑える回転抑止体119を端子圧着装置100に設ければよい(図21)。この例示の回転抑止体119は、端子接続部11を第2方向Wの両側面から保持するものであり、端子接続部11が挿入される方体状の空間(保持部)119aを有している。この回転抑止体119は、例えば、ラム114Aに固定して、第2金型113と一体になって上下動させる。回転抑止体119は、第2金型113と共に下降していくことによって、保持部119a内に端子接続部11を挿入する。保持部119a内への端子接続部11の挿入タイミングは、第1クリンパ113Aや第2クリンパ113Bが第1バレル片部15や第2バレル片部16に当接する前に設定する。これにより、本実施形態の端子圧着装置100は、圧着加工が実際に始まる前から端子接続部11の回転を抑え、圧着加工中の電線接続部12を正しい姿勢に保つことができる。このため、この端子圧着装置100は、圧着過程での先端15a,16aの端面同士の接触を抑え、第2バレル片部16を第1バレル片部15と第1壁面115との間に入り込ませることができるので、第1バレル片部15や第2バレル片部16の無用な変形等を抑えて、所望の圧着加工を行うことができる。
ここで、端子接続部11や連結片31を保持したとしても、電線接続部12は、第2金型113から第1バレル片部15に力が加わるタイミング(換言するならば第2金型113が第1バレル片部15に当接するタイミング)と、第2金型113から第2バレル片部16に力が加わるタイミング(換言するならば第2金型113が第2バレル片部16に当接するタイミング)と、にズレがある場合、端子接続部11等が保持されたまま回転してしまう虞がある。従って、第2金型113は、下降と共に、第1壁面115と第2壁面116を第1バレル片部15と第2バレル片部16に対して略同時に当接させるように形成する(図22)。芯線圧着部12Aから順に被覆圧着部12B側へと圧着が行われる場合には、第1クリンパ113Aが第2クリンパ113Bよりも先に電線接続部12に接触するので、第1クリンパ113Aの第1壁面115と第2壁面116を第1バレル片部15と第2バレル片部16に対して略同時に当接させるように形成する。また、被覆圧着部12Bから順に芯線圧着部12A側へと圧着が行われる場合には、第2クリンパ113Bが第1クリンパ113Aよりも先に電線接続部12に接触するので、第2クリンパ113Bの第1壁面115と第2壁面116を第1バレル片部15と第2バレル片部16に対して略同時に当接させるように形成する。また、連結圧着部12Cから芯線圧着部12A側と被覆圧着部12B側とに圧着が行われる場合には、第1クリンパ113Aと第2クリンパ113Bの内の何れか一方が連結圧着部12Cにおける第1バレル片部15や第2バレル片部16に最初に接触するので、その接触するものの第1壁面115と第2壁面116を第1バレル片部15と第2バレル片部16に対して略同時に当接させるように形成する。
その対象となる第1クリンパ113Aや第2クリンパ113Bの第1壁面115と第2壁面116は、第1バレル片部15と第2バレル片部16に対して略同時に当接できるように、受け部115a,116aの形状を設定する。例えば、受け部115a,116aの傾斜角度の絶対値が同じ場合には、受け部115aと巻き込み部115bの境界よりも、受け部116aと巻き込み部116bの境界の方が上方に配置されるように、第1壁面115と第2壁面116を形成する。これにより、その受け部115a,116aは、自らの下降と共に、第1バレル片部15と第2バレル片部16に対して略同時に当接し、第1バレル片部15と第2バレル片部16に対して略同時に略均等に力を加えることができる。従って、電線接続部12は、第2金型113をそのまま下降し続けていったとしても、圧着加工が終わるまで回転が抑えられる。よって、本実施形態の端子圧着装置100は、圧着加工中の電線接続部12を正しい姿勢に保つことができる。このため、この端子圧着装置100は、圧着過程での先端15a,16aの端面同士の接触を抑え、第2バレル片部16を第1バレル片部15と第1壁面115との間に入り込ませることができるので、より適切に所望の圧着加工を行うことができる。
また、本実施形態の端子圧着装置100は、第1金型112で圧着加工中の電線接続部12の回転を抑えてもよい。例えば、この例示の電線接続部12の底部14には、プレス工程において、外壁面側から内壁面側に向けて凹ませた凹部19Aを形成する(図7及び図11等)。そして、第1金型112の先端には、その凹部19Aに対向させた位置に当該凹部19Aに向けて突出させた凸部112bを形成する(図16)。凸部112bは、第1アンビル112Aと第2アンビル112Bの凹状面112A1,112B1の内の何れか一方又は双方に形成すればよい。その凹部19Aと凸部112bは、例えば、凸部112bが凹部19Aに嵌め込まれるように互いの形状を設定する。これにより、圧着位置まで供給されてきた圧着端子1は、凹部19Aに凸部112bが嵌め込まれることによって、第1金型112に対する相対移動が規制され、圧着加工中の電線接続部12を正しい姿勢に保つことができる。更に、その凹部19Aと凸部112bは、供給されてきた圧着端子1の圧着位置における位置決めの機能も有している。よって、本実施形態の圧着端子1及び端子圧着装置100は、圧着過程での先端15a,16aの端面同士の接触を抑え、第2バレル片部16を第1バレル片部15と第1壁面115との間に入り込ませることができるので、所望の圧着加工を行うことができる。
ここで、電線接続部12の内壁面側には、凹部19Aのプレス加工に伴い凸部19Bが形成される。その凹部19A及び凸部19Bを芯線圧着部12Aにおける底部14に形成した場合には、その凸部19Bを圧着加工後に至るまで維持することで、先端の芯線51の電線接続部12に対する接触面積が増加し、先端の芯線51と電線接続部12との間の密着強度が高まるので、その間の電気的な接続が強固なものとなる。そこで、本実施形態では、少なくとも芯線圧着部12Aにおける底部14に凹部19A及び凸部19Bを形成し、圧着加工時に凹部19Aに挿入される凸部112bを第1アンビル112Aの凹状面112A1に形成する。この例示では、連結圧着部12Cにも凹部19Aと凸部19Bを形成している。凹部19A及び凸部19Bと凸部112bは、先端の芯線51の長手方向(第1方向L)に延在させる。そして、凹部19A及び凸部19Bと凸部112bは、圧着加工によって先端の芯線51が凸部19Bを押し潰したとしても、底部14の内壁面から凸部19Bが突出されているように、それぞれの形状を設定する。これにより、本実施形態の圧着端子1及び端子圧着装置100は、残存している凸部19Bによって、先端の芯線51の電線接続部12に対する接触面積を増加させることができ、先端の芯線51と電線接続部12との間の密着強度が高まるので、その間の電気的な接続を強固なものにすることができる。更に、本実施形態の圧着端子1及び端子圧着装置100は、圧着工程中に凸部112bを凹部19Aに挿入することで、この圧着工程と同時に凸部19Bを残存させることができる。従って、この圧着端子1及び端子圧着装置100は、生産性を高めつつ電線接続部12と芯線51との間の密着強度を確保することができる。また更に、この例示の凹部19Aと凸部19Bは、セレーション領域17に形成されている。このため、先端の芯線51は、残存している凸部19Bとセレーション領域17とによって、先端の芯線51と電線接続部12との間の密着強度がより高まるので、より強固に電線接続部12に対して電気的に接続される。
凸部112bは、圧着加工に伴い凹部19Aに食い込んで、凸部19Bを芯線51側に押し出すことができるように、凹部19Aの内部空間の体格よりも体格を大きく形成してもよい。換言するならば、凹部19Aは、圧着加工に伴い凸部112bが食い込んで、凸部19Bを芯線51側に押し出すことができるように、内部空間の体格を凸部112bの体格よりも小さく形成してもよい。例えば、凹状面112A1からの凸部112bの高さは、電線接続部12の外壁面からの凹部19Aの深さよりも高くする。このように凸部112bを凹部19Aよりも大きくすることで、この圧着端子1においては、圧着加工が進むにつれて、第1アンビル112Aの凸部112bが凹部19Aに食い込みながら凸部19Bが電線50側に拡大され、その拡大と共に凸部19Bと先端の芯線51との間に凝着摩耗を生じさせる。従って、この圧着端子1及び端子圧着装置100は、その凹部19A及び凸部19Bと凸部112bによって、先端の芯線51の電線接続部12に対する接触面積を更に増加させることができ、先端の芯線51と電線接続部12との間の密着強度が更に高まるので、その間の電気的な接続を更に強固なものにすることができる。
このように、本実施形態の圧着端子1及び端子圧着装置100は、その凹部19A及び凸部19Bと凸部112bによって、位置決めや姿勢の維持だけでなく、圧着加工後の先端の芯線51と電線接続部12との間の電気的な接続を強固なものにすることができる。更に、この圧着端子1及び端子圧着装置100は、芯線51にアルミニウムを使用している場合、凸部19Bによる凝着摩耗によって芯線51の表面の酸化皮膜を取り除くことができるので、この構成における先端の芯線51と電線接続部12との間の電気的な接続を強固なものにすることができる。尚、凹部19A及び凸部19Bは、本実施形態のように1つの凹みと突起だけで構成されたものであってもよく、複数の凹みと突起によって構成されたものであってもよい。そして、凸部112bは、凹部19Aの凹みの数と位置に応じた突起を有するものとして形成する。
第1バレル片部15と第2バレル片部16は、第2バレル片部16の先端16aが第1バレル片部15と第1壁面115との間に入り込んだ後、第1バレル片部15の外壁面側と第2バレル片部16の内壁面側との間で互いに摺動しながら加締められていく。このため、第2バレル片部16側の止水部材20は、先端16a側から底部14側に沿った所定範囲で、第1バレル片部15によって刮げ取られてしまう虞がある。その所定範囲とは、第1バレル片部15と止水部材20との間の摺動範囲27aのことであり(図23及び図24)、前述したオーバラップ領域に対応している。止水部材20が刮げ取られてしまった場合には、連接状態にある第1から第3の止水領域21,22,23が適切に形成されず、止水性が低下してしまう可能性がある。尚、図23及び図24のハッチングは、止水部材20における第1バレル片部15との間の摺動範囲27aと、止水部材20における第1バレル片部15との摺動が起こらない残存範囲27bと、を表す便宜上のものである。
ここで、止水部材20は、前述したように、第1止水部24をオーバラップ領域(摺動範囲27a)よりも底部14側まで延在させている(図23及び図24)。このため、圧着端子1においては、圧着完了後に、少なくとも摺動範囲27aよりも底部14側の第1止水部24と第2及び第3の止水部25,26とによって、第1止水領域21と第2及び第3の止水領域22,23とが互いに連なった状態で形成される。つまり、圧着完了後、電線接続部12における少なくともオーバラップ領域よりも内方には、止水部材20が充填されている。このため、この圧着端子1は、摺動範囲27aの止水部材20が刮げ取られてしまったとしても、電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑えることができる。
また、本実施形態の圧着端子1では、前述したように、第1バレル片部15の先端15aに折り曲げ加工を施している。このため、この圧着端子1は、先端15aの端面のエッジ等による止水部材20の剥がれの発生を抑えることができる。更に、本実施形態の圧着端子1では、その折り曲げ加工によって摺動範囲27aが狭まる。つまり、本実施形態の圧着端子1においては、その折り曲げ加工によって、連接状態の第1から第3の止水領域21,22,23が形成されやすくなる。よって、この圧着端子1は、先端15aの折り曲げ加工によって、止水性を向上させることができる。
ところで、止水部材20は、圧着過程において、第1バレル片部15や電線50の端部との間で摺り動かされて、変形しながら第1から第3の止水領域21,22,23を形成する。圧着端子1においては、その止水部材20の変形動作が常に一定ではないので、第1から第3の止水領域21,22,23が画一的に形成されるとは限らない。このため、この圧着端子1は、止水性を向上させる余地がある。
本実施形態では、圧着加工時の変形に伴う止水部材20の位置ズレ等が生じたとしても、第1から第3の止水領域21,22,23が形成されるように構成する。そのために、本実施形態では、電線接続部12の内壁面における止水部材20が貼り付けられる部分に、貼付された止水部材20の一部が充填される溝(以下、「収容溝」という。)18を形成し(図24)、この収容溝18の内部と周辺に圧着加工後も止水部材20を留まらせる。その収容溝18に止水部材20の一部を充填させるために、止水部材20を電線接続部12に貼り付ける際には、止水部材20に対して電線接続部12に向けた圧力を加える。本実施形態では、止水部材20の一部を収容溝18に押し込ませることができる大きさに圧力を設定すると共に、その圧力によって止水部材20の一部が入り込めるだけの大きさに収容溝18の溝幅を設定する。これにより、圧着加工後には、少なくとも収容溝18の内部に止水部材20を留めることができる。
収容溝18は、止水部材20の形状に沿って形成されたものであり、第1止水部24が貼り付けられる部分に当該第1止水部24の延在方向(第1方向L)に沿って形成した第1溝部18Aと、第2止水部25が貼り付けられる部分に当該第2止水部25の延在方向(第2方向W)に沿って形成した第2溝部18Bと、第3止水部26が貼り付けられる部分に当該第3止水部26の延在方向(第2方向W)に沿って形成した第3溝部18Cと、を有する。第1止水領域21は、少なくとも第1溝部18Aの内部に留まっている止水部材20によって形成される。第2止水領域22は、少なくとも第2溝部18Bの内部に留まっている止水部材20によって形成される。第3止水領域23は、少なくとも第3溝部18Cの内部に留まっている止水部材20によって形成される。
第1溝部18Aは、第2バレル片部16の内壁面におけるオーバラップ領域(摺動範囲27aに対応する部分)に形成する。これにより、この圧着端子1においては、摺動範囲27aの第1止水部24が第1バレル片部15によって刮げ取られたとしても、摺動範囲27aにおける第1溝部18Aの内部に第1止水部24の一部を留めておくことができる。ここで、この例示では、第2溝部18Bと第3溝部18Cについても、その一部がオーバラップ領域(摺動範囲27aに対応する部分)に形成されている。このため、この圧着端子1においては、摺動範囲27aの第1止水部24が第1バレル片部15によって刮げ取られたとしても、第1止水部24の一部が第2溝部18Bと第3溝部18Cの一部にも留められている。オーバラップ領域においては、収容溝18の内部に留められている止水部材20の一部によって、先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側と被覆52側との間に渡って延在している止水領域が形成される。オーバラップ領域においては、その止水領域によって、圧着完了後の第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面との間からの電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑えることができる。そのオーバラップ領域の収容溝18による止水領域は、その両端において止水部材20の残存範囲27bによって形成された止水領域に連接しており、この残存範囲27bの止水領域と共に、第1止水領域21を構成する。
尚、圧着完了後の圧着端子1は、先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側が第2止水領域22で覆われ、電線接続部12と被覆52との間が第3止水領域23で覆われており、その双方における止水性が確保されている。このため、オーバラップ領域の収容溝18は、第2バレル片部16の内壁面における少なくとも先端の芯線51に巻き付く部分に形成されていればよい。このように構成したとしても、圧着端子1は、圧着完了後に、電線接続部12と先端の芯線51との間の止水性を向上させることができる。
第2溝部18Bは、芯線圧着部12Aの内壁面における先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側で、かつ、セレーション領域17よりも端子接続部11側に、第1バレル片部15の先端15a側と第2バレル片部16の先端16a側とに渡って延在させる。この例示では、その延在方向に沿う直線状の第2溝部18Bを形成している。第2溝部18Bの内部に充填された第2止水部25の一部は、第2止水領域22の構成要素の一部となり、先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側からの電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑えることができる。
収容溝18においては、第1溝部18Aと第2溝部18Bとを連通させることが望ましい。これに依れば、その第1溝部18Aと第2溝部18Bは、第1止水領域21と第2止水領域22を連接させ、第1止水領域21と第2止水領域22との間の隙間の発生を抑えることができるので、止水性を向上させることができる。尚、この第2溝部18Bは、主に第2止水部25によって第2止水領域22の一部を形成するものであるが、第1止水部24によって第1止水領域21の一部も形成する。
ここで、電線接続部12には、先端の芯線51の先端位置やセレーション領域17よりも端子接続部11側に、内壁面から突出させた突出部19Cを設けている。突出部19Cは、方体状に形成され、第2方向Wに沿って配置される。この突出部19Cは、電線接続部12の剛性を高めるためのものである。この例示の電線接続部12においては、止水部材20を突出部19Cの頂面に重ね合わせて貼り付けている。このため、本実施形態の圧着端子1においては、突出部19Cが無い場合と比較して、圧着過程で止水部材20が突出部19Cによって圧縮されやすくなっているので、第2止水領域22における第2止水部25の充填効率が高くなり、第2止水領域22による止水性を向上させることができる。一方、止水部材20は、突出部19Cに重ね合わせることで、突出部19Cの近傍が平板状の電線接続部12の内壁面から浮き上がってしまい、貼付位置がズレてしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態の圧着端子1においては、その内壁面に収容溝18(第1溝部18A、第2溝部18B、第3溝部18C)が形成されており、止水部材20の貼付時に、その収容溝18の内部へと止水部材20の一部を入れ込むことができるので、止水部材20の貼付位置が突出部19Cの位置に重なっていたとしても、止水部材20の位置ズレを抑えることができる。また、この圧着端子1においては、セレーション領域17と突出部19Cとの間(換言するならば先端の芯線51の先端位置と突出部19Cとの間)に第2溝部18Bを配置しており、止水部材20の浮き上がり領域を減らすことができるので、この点からも第2止水領域22における第2止水部25の充填効率を高めることができる。
第3溝部18Cは、被覆圧着部12Bの内壁面に、第1バレル片部15の先端15a側と第2バレル片部16の先端16a側とに渡って延在させる。この例示では、その延在方向に沿う直線状の第3溝部18Cを形成している。この第3溝部18Cの内部に充填された第3止水部26の一部は、被覆圧着部12Bの内壁面と被覆52との間に環状の止水領域を形成する。この圧着端子1においては、その止水領域によって、その間からの電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑えることができる。その止水領域は、周囲の第3止水部26による被覆圧着部12Bの内壁面と被覆52との間の環状の止水領域と共に、第3止水領域23を構成する。
収容溝18においては、第1溝部18Aと第3溝部18Cとを連通させることが望ましい。これに依れば、その第1溝部18Aと第3溝部18Cは、第1止水領域21と第3止水領域23を連接させ、第1止水領域21と第3止水領域23との間の隙間の発生を抑えることができるので、止水性を向上させることができる。尚、この第3溝部18Cの内部の止水部材20は、主に第3止水部26によって第3止水領域23を形成するものであるが、第1止水部24によって第1止水領域21の一部も形成する。
この第3溝部18Cは、複数本設けておくことが望ましい。これにより、この圧着端子1は、例えば、被覆52の剥ぎ取り長さにズレが生じて、被覆52を載せ置く位置がズレてしまった場合でも、その内の少なくとも1本の第3溝部18Cによって、電線接続部12と被覆52との間の環状の空間に第3止水領域23を形成することができる。この例示では、互いに間隔を空けて3本の第3溝部18Cを形成している。3本の第3溝部18Cは、先端16a側で1本に集約される。その集約部分は、第1溝部18Aに連結されている。
本実施形態の圧着端子1は、このように、第1溝部18Aと第2溝部18Bと第3溝部18Cとによって、各々が対応する部位においての止水性を向上させ、電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入を抑えることができる。このため、この圧着端子1は、自らの耐久性を向上させることができると共に、電線50の耐久性も向上させることができる。特に、この圧着端子1は、端子金具10と芯線51とが前述したような異種金属材料で成形されていた場合に、水の浸入の抑制効果によって、これらの間の電食の発生を抑えることができる。更に、この例示の第1溝部18Aは、第2溝部18Bと第3溝部18Cに各々連通させている。つまり、この例示の収容溝18は、セレーション領域17をコの字状に囲うように形成されている(図24)。従って、本実施形態の圧着端子1は、第1止水領域21を第2止水領域22と第3止水領域23とに各々連接させ、これらの各止水領域間の隙間を無くすことができるので、更なる止水性の向上が可能になり、電線接続部12と先端の芯線51との間への水の浸入をより抑えることができる。よって、この場合には、圧着端子1と電線50の更なる耐久性の向上が可能になる。
ここで、圧着加工時には、第1バレル片部15が第2バレル片部16の内壁面に沿って摺動する際に、第1バレル片部15の先端15aと第1溝部18Aの形状如何で、その先端15aが第1溝部18Aに引っ掛かってしまう虞がある。そして、そのような引っ掛かりは、第1バレル片部15や第2バレル片部16の無用な変形を引き起こし、所望の圧着加工を行えなくなる可能性がある。このため、第1溝部18Aは、圧着加工時に第1バレル片部15が引っ掛からない形状に形成することが望ましい。このような第1溝部18Aの形状は、主として第1バレル片部15の先端15aの形状に依存するものであるので、この先端15aの形状に基づいて適宜決める必要がある。下記においては、第1溝部18Aの形状の例を幾つか挙げている。
例えば、図24の例示の第1溝部18Aは、その延在方向において、山と谷が交互に連なる波状に形成している。また、第1溝部18Aは、図25に示すように、その延在方向において、中間部分を底部14側に凹ませた弧状に形成してもよい。また、第1溝部18Aは、図26に示すように、先端の芯線51の先端位置よりも端子接続部11側から被覆52側に向かうにつれて(換言するならば、その端子接続部11側における芯線圧着部12A側から被覆圧着部12B側に向かうにつれて)底部14側に徐々に傾けた直線状に形成してもよい。
また、第1溝部18Aは、図27から図29に示すように、第1延在部18A1、連結部18A2、第2延在部18A3の順に連なる溝によって構成してもよい。第1及び第2の延在部18A1,18A3は、長手方向(第1方向L)に延在させた溝である。連結部18A2は、第1延在部18A1と第2延在部18A3とを中間部分で繋ぐ溝である。この第1溝部18Aにおいては、第1延在部18A1が芯線圧着部12A側に配置され、第2延在部18A3が被覆圧着部12B側に配置されている。連結部18A2は、底部14側と第2バレル片部16の先端16a側(第2バレル片部16の底部14からの延在方向における端部側)との間に延在する連結溝であり、第1延在部18A1の被覆圧着部12B側の端部と第2延在部18A3の芯線圧着部12A側の端部とを連結させる。この例示の連結部18A2は、直線状の溝になっている。この第1溝部18Aにおいては、圧着加工時に第1バレル片部15が第1溝部18Aに引っ掛からないという観点に基づいて、第1延在部18A1と連結部18A2と第2延在部18A3の諸元(それぞれの長さや長手方向に対する角度等の形状)を設定する。
具体的に、図27及び図28に示す第1溝部18Aにおいて、第1延在部18A1と第2延在部18A3は、端子接続部11側から被覆52側に向かうにつれて底部14側に徐々に傾けた直線上の傾斜溝として形成している。図27に示す第1溝部18Aは、第1傾斜部18A1と第2傾斜部18A3の傾斜角を同等にしたものである。一方、図28に示す第1溝部18Aは、第1傾斜部18A1と第2傾斜部18A3の傾斜角を変えたものである。第1溝部18Aは、このように第1傾斜部18A1と第2傾斜部18A3の傾斜角を異なる角度に設定しておくことによって、圧着加工時における第2バレル片部16に対しての第1バレル片部15の先端15aの入り角度(換言するならば第2バレル片部16の内壁面に対する先端15aの摺動軌跡)に起因する第1溝部18Aへの引っ掛かりを更に抑えることができる。また、図29に示す第1溝部18Aでは、第1延在部18A1を図27及び図28に示す第1延在部18A1と同様の傾斜溝に形成する一方で、第2延在部18A3を長手方向に沿って延在させた直線溝に形成することによって、第1傾斜部18A1と第2傾斜部18A3の傾斜角を変えている。
上記の如く圧着加工された圧着端子1においては、第1バレル片部15と第2バレル片部16との間の剥がれが止水性の低下の要因となる。また、これらの剥がれは、電線接続部12と先端の芯線51との間の電気的な接続を弱めてしまう可能性がある。つまり、第1バレル片部15と第2バレル片部16との間の剥がれは、圧着端子1の耐久性を低下させる要因となり得る。そこで、本実施形態の圧着端子1には、圧着加工後に重なり合う第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面との間に、その重なり合った状態を保持させる係合構造40を設ける(図30及び図31)。その係合構造40は、圧着加工中に第1バレル片部15と第2バレル片部16とを係合させ、圧着加工後の第1バレル片部15と第2バレル片部16との間の剥がれの発生を抑えるものである。本実施形態の圧着端子1は、この係合構造40によって、第1バレル片部15と第2バレル片部16との間の剥がれを抑えることができる。このため、この圧着端子1は、係合構造40によって、止水性の低下を抑えることができ、また、電線接続部12と先端の芯線51との間の電気的な接続を維持することができるので、耐久性を向上させることができる。尚、止水部材20は、係合構造40が形成される位置を避けた形状に成形される。
図30に示す係合構造40Aは、第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面の内の少なくとも一方に形成された凹部41と、この凹部41に圧着加工後に対向する第1バレル片部15の外壁面又は第2バレル片部16の内壁面に形成され、凹部41に嵌合された凸部42と、を備えたものである。その凹部41と凸部42は、少なくとも一組設ける。この係合構造40Aは、その第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面の内、一方に凹部41を圧着加工前に形成し、他方に凸部42を圧着加工前に形成したものであってもよい。また、この係合構造40Aは、その第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面の内の一方に凹部41を圧着加工前に形成し、その外壁面と内壁面との間の圧着加工時の押圧力によって、凹部41に対向する第1バレル片部15の外壁面の一部又は第2バレル片部16の内壁面の一部が変形し、その変形した部分が凹部41に進入して凸部42を形成するものであってもよい。また、この係合構造40Aは、その第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面の内の一方に凸部42を圧着加工前に形成し、その外壁面と内壁面との間の圧着加工時の押圧力によって、他方に凹部41を形成させるものであってもよい。
この例示の凹部41は、圧着加工の実施前にプレス加工によって形成されたものである。この例示では、平板状の電線接続部12をプレス加工で形成する際に、第2バレル片部16の先端16aに凹部41も一緒に形成される(図5及び図6等)。この例示の凹部41は、長手方向を先端の芯線51の延在方向(第1方向L)に沿わせた方体状のものであり、その延在方向に沿って2つ並べて配置している。ここで、その凹部41をプレス加工した際には、底面よりも開口側の面積が広くなるよう側壁が傾斜してしまう可能性がある。このため、プレス加工時には、その凹部41に成形型を入れたまま先端16aを外壁面側から別の型で押圧し、凹部41の側壁の傾斜を無くす又は小さくすることが望ましい。第2バレル片部16の内壁面においては、プレス加工で形成された凹部41とその周辺が、加工硬化によって他の部位よりも硬度が増している。このため、圧着加工時には、第1クリンパ113Aで第2バレル片部16の先端16aを第1バレル片部15に押圧していくことによって、硬度の低い第1バレル片部15の外壁面の一部が、これよりも硬度の高い凹部41の中に入り込み、凸部42を形成する。本実施形態の係合構造40Aは、このようにして形成される。
この係合構造40Aは、圧着加工前の止水部材20とは異なる位置に配置する。換言するならば、凹部41は、止水部材20の貼付位置とは異なる場所に形成する。これにより、この圧着端子1においては、凹部41への止水部材20の進入を抑えることができるので、圧着加工中に凸部42を形成して、係合構造40Aを構築することができる。
ここで、凹部41は、第1止水部24よりも底部14側に形成することができる。しかしながら、底部14側の凹部41の周辺には、圧着加工によって止水領域が形成される。このため、凹部41には、圧着加工中に、第1バレル片部15の外壁面の一部よりも先に止水部材20が進入してしまう可能性がある。よって、この圧着端子1においては、第1止水部24よりも第2バレル片部16の先端16a側に凹部41を形成することが望ましい。これにより、この圧着端子1においては、圧着加工中に、凹部41への止水部材20の進入を抑え、第1止水領域21よりも第2バレル片部16の先端16a側に係合構造40Aを形成することができる。この圧着端子1は、圧着完了後のオーバラップ領域において、係合構造40Aよりも底部14側に第1溝部18Aが形成されている。そのような配置の係合構造40Aは、第1止水領域21の維持を可能にして、止水性を向上させることができる。係合構造40Aによる止水性の向上効果を高めるためには、第1溝部18Aの近傍に係合構造40Aを配置することが望ましい。ここでは、第1溝部18Aと係合構造40Aを隣設させている。
尚、その係合構造40Aは、長さが双方共に略同等の第1バレル片部15と第2バレル片部16であって、その第1バレル片部15と第2バレル片部16の内の一方が内側で電線50に巻き付けられ、これらに対して他方が外側から巻き付けられるオーバラップ領域を有するものに適用してもよく、この場合でも同等の効果を得ることができる。
図31に示す係合構造40Bは、圧着完了後のオーバラップ領域における第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面に、これら相互間の剥がれ方向にて互いに係止される鋸歯形状の係合部43,44を各々設けたものである。
次に、オーバラップ領域を設けない場合の係合構造40について説明する。図32に示す係合構造40Cは、長さが双方共に略同等の第1バレル片部15と第2バレル片部16であって、所謂Bクリンプと称される加締め加工(圧着加工)が行われるものに適用される。この種の加締め加工においては、第1バレル片部15と第2バレル片部16とが互いの先端15a,16a(具体的には先端15a,16aの外周面側)を突き合わせ、その突き合わせ部分が重なり合った状態で電線50に加締められる。この係合構造40Cは、その先端15a,16aの重なり合う部分の内の少なくとも一方に凹部45を設け、その重なり合う部分の内の凹部45と対向する部分に凸部46を設ける。この係合構造40Cにおいては、先端15a,16aの重なり合う部分における一方に凹部45(先に説明した凹部41と同等に加工硬化によって他の部位よりも硬度が増すもの)を設けた場合、その重なり合う部分の内の他方の一部が加締め加工と共に凹部45の内方に入り込んで凸部46を形成し、凹部45と凸部46とが嵌合された状態となって、先端15a,16a同士の係合状態を高める。また、この係合構造40Cにおいては、先端15a,16aの重なり合う部分における一方に凸部46を設けた場合、その重なり合う部分の内の他方の一部を加締め加工と共に凸部46が押し潰して凹部45を形成し、凹部45と凸部46とが嵌合された状態となって、先端15a,16a同士の係合状態を高める。つまり、この係合構造40Cは、圧着加工の完了後に重なり合う第1バレル片部15と第2バレル片部16との間において、その先端15a,16a同士の重なり合った状態を保持させるものである。この係合構造40Cは、そのような凹部45と凸部46によって、第1バレル片部15と第2バレル片部16との間の剥がれを抑えることができる。
尚、係合構造40は、オーバラップ領域を設けない場合には、次のように構成してもよい。例えば、図33に示す係合構造40Dは、第1バレル片部15の先端15aと第2バレル片部16の先端16aのそれぞれの先端面同士を圧着完了後に対向させ、互いに当接又は近接させるものに適用される。この係合構造40Dは、一方の先端面に設けた凹部47と、他方の先端面に設けた凸部48と、によって構成する。その凹部47と凸部48は、互いに嵌合し、第1バレル片部15と第2バレル片部16に剥がれ方向の力が作用したときに互いに係止されるものである。また、図34に示す係合構造40Eは、折り曲げた第1バレル片部15の先端15aと、この先端15aに対して圧着加工中に嵌合される第2バレル片部16の先端16aの凹部49と、によって構成される。その凹部49は、第2バレル片部16の先端16aの折り曲げ加工によって形成されたものである。