以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の生タイヤモデルの作成方法(以下、単に「作成方法」ということがある)は、ビードコア及びカーカスプライを含む生タイヤの数値解析用の生タイヤモデルを、コンピュータを用いて作成するための方法である。
図1は、本実施形態の作成方法を実行するコンピュータ1の一例を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dが含まれる。この本体1aには、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリー、磁気ディスクなどの記憶装置及びディスクドライブ装置1a1、1a2などが設けられている。なお、記憶装置には、本実施形態の作成方法を実行するための処理手順(プログラム)が予め記憶されている。
図2は、生タイヤ2の一例を示す断面図である。本実施形態の生タイヤ2は、ビードコア5と、カーカスプライ6と、ベルトプライ7と、ゴム部材11とを含んでいる。
ビードコア5は、例えば、スチール製のビードワイヤを螺旋巻きにしたものを、ゴム被覆することによって形成される。本実施形態のビードコア5は、断面矩形状に形成されている。
本実施形態のカーカスプライ6は、タイヤ赤道Cにおいて、タイヤ半径方向内側に配置される内側カーカスプライ6Aと、内側カーカスプライ6Aのタイヤ半径方向外側に配置される外側カーカスプライ6Bとを含んで構成されている。
内側カーカスプライ6A及び外側カーカスプライ6Bは、トレッド部2aからサイドウォール部2bを経てビード部2cのビードコア5に至る本体部6Aa、6Baと、この本体部6Aa、6Baに連なりビードコア5の廻りを軸方向内側から外側に折り返された折返し部6Ab、6Bbとをそれぞれ含んでいる。内側カーカスプライ6A及び外側カーカスプライ6Bは、タイヤ赤道Cに対して、例えば75〜90度の角度で配列されたカーカスコード(図示省略)を有している。カーカスコードは、トッピングゴム(図示省略)で被覆されている。
本実施形態のベルトプライ7は、タイヤ赤道Cにおいて、タイヤ半径方向内側に配置される内側ベルトプライ7Aと、内側ベルトプライ7Aのタイヤ半径方向外側に配置される外側ベルトプライ7Bとを含んで構成されている。
内側ベルトプライ7A及び外側ベルトプライ7Bは、内側カーカスプライ6A及び外側カーカスプライ6Bのタイヤ半径方向外側、かつ、トレッド部2aの内部に配されている。内側ベルトプライ7A及び外側ベルトプライ7Bは、タイヤ周方向に対して、例えば10〜40度の角度で傾斜して配列されたベルトコード(図示省略)が設けられている。ベルトコードは、トッピングゴム(図示省略)で被覆されている。内側ベルトプライ7A及び外側ベルトプライ7Bは、ベルトコードが互いに交差する向きに重ね合されている。
ゴム部材11は、トレッドゴム11a、サイドウォールゴム11b、クリンチゴム11c、ビードエーペックスゴム11d、インナーライナーゴム11e、チェファーゴム11f、及び、サイド補強ゴム11gを含んで構成されている。
トレッドゴム11aは、トレッド部2aにおいて外側ベルトプライ7Bのタイヤ半径方向外側に配されている。サイドウォールゴム11bは、サイドウォール部2bにおいてカーカスプライ6A、6Bの軸方向外側に配されている。クリンチゴム11cは、ビード部2cの軸方向の外側に配されている。
ビードエーペックスゴム11dは、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびている。インナーライナーゴム11eは、内側カーカスプライ6Aの内面に配置されている。チェファーゴム11fは、ビード部2cの半径方向内面に配置されている。サイド補強ゴム11gは、サイドウォール部2bにおいて、内側カーカスプライ6A及びインナーライナーゴム11eの軸方向内側に配置されている。
次に、生タイヤ2の成形方法(以下、単に、「成形方法」ということがある。)について説明する。図3(a)、(b)は、ケーシング13を成形する工程を説明する断面図である。図4は、ケーシング13とトレッドリング14とを接合する工程を説明する断面図である。
図3(a)に示されるように、本実施形態の成形方法では、従来の成形方法と同様に、先ず、第1軸心を有する円筒状のドラム(図示省略)に、第1接合体13A、第2接合体13B及び第3接合体13Cが、第1軸心回りで巻回されて、互いに接合される。これにより、図3(b)に示されるように、円筒状のケーシング13が形成される。
第1接合体13Aは、図2に示した未加硫のインナーライナーゴム11eと、未加硫のチェファーゴム11fと、内側カーカスプライ6Aと、外側カーカスプライ6Bと、サイド補強ゴム11gとを接合したものである。第2接合体13Bは、ビードコア5と未加硫のビードエーペックスゴム11dとを接合したものである。第3接合体13Cは、未加硫のクリンチゴム11cと未加硫のサイドウォールゴム11bとを接合したものである。
図3(a)に示されるように、ケーシング13を形成する工程では、先ず、第1接合体13Aの外側カーカスプライ6Bの半径方向外側に、第2接合体13Bのビードコア5が固定される。次に、ビードコア5よりも軸方向内側に配置されたサイド補強ゴム11g、インナーライナーゴム11e、内側カーカスプライ6A、及び、外側カーカスプライ6Bが、ビードコア5よりもタイヤ半径方向外側に盛り上がるように、ビードコア5が軸方向内側に移動される。そして、各カーカスプライ6A、6Bの折返し部6Ab、6Bbが、図示しないブラダー等によって、ビードコア5の廻りで巻き上げられる。これにより、図3(b)に示されるように、第1接合体13Aと第2接合体13Bとが接合される。
第1接合体13Aのチェファーゴム11fは、各カーカスプライ6A、6Bの折返し部6Ab、6Bbとともに巻き上げられる。また、第2接合体13Bのビードエーペックスゴム11dは、各カーカスプライ6A、6Bの折返し部6Ab、6Bbの巻き上げによって外側カーカスプライ6B側に押し倒され、外側カーカスプライ6Bの本体部6Baに接合される。
次に、ケーシングを形成する工程では、第1接合体13A及び第2接合体13Bの一体物に、第3接合体13Cが接合される。この工程では、カーカスプライ6A、6Bの折返し部6Ab、6Bbの半径方向外側に、第3接合体13Cが接合される。これにより、円筒状のケーシング13が形成される。
次に、本実施形態の成形方法では、図4に示されるように、例えば、ケーシング13を形成するドラムよりも大きな径を有するドラム(図示省略)に、未加硫のトレッドゴム11a、内側ベルトプライ7A、及び、外側ベルトプライ7Bが互いに接合されて巻回される。これにより、円筒状のトレッドリング14が形成される。
次に、本実施形態の成形方法では、ビードコア5を把持するビード保持部15によって、ビードコア5、5の軸方向距離を減じながら、ケーシング13がトロイド状に膨出(シェーピング)される。ケーシング13の膨出は、例えば、ケーシング13の内腔面を形成するインナーライナーゴム11e側に、内圧P1を直接付与することによって実現される。
膨出したケーシング13の外周面には、その半径方向外側に予め待機させたトレッドリング14の内周面が貼り付けられる。そして、トレッドリング14の外周面14oに、ステッチングローラ(図示省略)が押し付けられることにより、ケーシング13の外周面とトレッドリング14の内周面とが密着される。これにより、図2に示した生タイヤ2が成形される。この生タイヤ2が、加硫金型(図示省略)に投入されて加硫成形されることにより、タイヤ(図示省略)が製造される。
図5は、本実施形態の作成方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態の作成方法で作成される生タイヤモデルは、図2に示した生タイヤ2の子午線断面について、タイヤ赤道面Csの一方側のみがモデル化される。また、本実施形態の生タイヤモデルは、タイヤ周方向に厚さを有する三次元モデルである場合が例示される。なお、生タイヤモデルの厚さについては適宜設定することができ、また、実際の生タイヤ2(図2に示す)に基づいて、タイヤ周方向に連続するものでもよい。
本実施形態の作成方法は、先ず、コンピュータ1に、生タイヤ2の各構成部材を、有限個の要素F(i)(i=1、2、…)でモデル化した生タイヤモデルの構成部材モデルを定義する(構成部材モデル定義工程S1)。図6は、本実施形態の構成部材モデル定義工程S1の処理手順の一例を示すフローチャートである。図7は、ケーシングモデル及びトレッドリングの構成部材モデルを部分的に示す図である。
本実施形態の構成部材モデル定義工程S1では、先ず、コンピュータ1に、第1軸心回り(図示省略)で円筒状に巻回されたシート状のゴム部材11(図3又は図4に示す)の第1軸心を含む断面形状に基づいて、有限個の要素F(i)でモデル化したゴム部材モデル31を定義する(工程S11)。本実施形態のゴム部材11は、図3及び図4に示されるように、トレッドゴム11a、サイドウォールゴム11b、クリンチゴム11c、ビードエーペックスゴム11d、インナーライナーゴム11e、チェファーゴム11f、及び、サイド補強ゴム11gを含んでいる。工程S11では、これらのゴム部材11(11a〜11g)がそれぞれモデル化される。
工程S11では、ドラム(図示省略)に巻回されたシート状のゴム部材11(11a〜11g(図3及び図4に示す))の設計データ(例えば、CADデータ)が、コンピュータ1に入力される。この設計データには、例えば、各ゴム部材11(11a〜11g)の輪郭に関する数値データ等が含まれている。そして、本実施形態の工程S11では、各ゴム部材11(11a〜11g)の設計データに基づいて、有限個の要素F(i)でモデル化(離散化)した二次元モデルが、予め定められた角度ピッチでタイヤ周方向に複写されて、三次元に展開される。これにより、三次元のトレッドゴムモデル31a、サイドウォールゴムモデル31b、クリンチゴムモデル31c、ビードエーペックスゴムモデル31d、インナーライナーゴムモデル31e、チェファーゴムモデル31f、及び、サイド補強ゴムモデル31gが設定される。
要素F(i)は、数値解析法により取り扱い可能なものである。数値解析法としては、例えば、有限要素法、有限体積法、差分法、又は、境界要素法を適宜採用することができる。本実施形態では、有限要素法が採用されている。
三次元に展開された要素F(i)としては、三次元のソリッド要素又はビーム要素等として定義されている。また、各要素F(i)には、要素番号、節点23の番号、節点23の座標値、及び、材料特性(例えば、密度、引張剛性、圧縮剛性、せん断剛性、曲げ剛性、又は、捩り剛性など)等の数値データが定義される。
なお、未加硫ゴムの材料特性としては、例えば、文献(針間浩、「未加硫ゴムの一定伸長速度下での大変形挙動」、日本レオロジー学会誌、社団法人日本レオロジー学会、1976年、Vol.4、p.3−9)や、文献(戸崎近雄、外3名、「グリーンストレングス指標、降伏応力の粘弾性的取扱い」、日本ゴム協会誌、一般社団法人日本ゴム協会、1969年、第42巻、第6号、p.433−438)等に開示されている。本実施形態では、これらの文献に基づいて、未加硫ゴムの材料特性が定義される。各ゴム部材モデル31(31a〜31g)は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の構成部材モデル定義工程S1では、コンピュータ1に、第1軸心回り(図示省略)で円筒状に巻回されたシート状のカーカスプライ6(本実施形態では、図2に示した内側カーカスプライ6A、及び、外側カーカスプライ6B)の第1軸心を含む断面形状に基づいて、有限個の要素F(i)でモデル化したカーカスプライモデル26を定義する(工程S12)。
工程S12では、例えば、ドラム(図示省略)に巻回されたシート状の内側カーカスプライ6A、及び、外側カーカスプライ6B(図3(a)に示す)の設計データ(例えば、CADデータ)が、コンピュータ1に入力される。この設計データには、例えば、カーカスコード(図示省略)の配列や、カーカスコードを被覆するトッピングゴム(図示省略)の輪郭に関する数値データが含まれている。そして、工程S12では、内側カーカスプライ6A及び外側カーカスプライ6Bの設計データに基づいて、有限個の要素F(i)でモデル化(離散化)した二次元モデルが、予め定められた角度ピッチでタイヤ周方向に複写されて、三次元に展開される。これにより、三次元の内側カーカスプライモデル26A及び外側カーカスプライモデル26Bがそれぞれ設定される。
三次元に展開された要素F(i)は、各ゴム部材モデル31(31a〜31g)の要素F(i)と同様のものが採用されうる。この要素F(i)には、節点23の座標値、並びに、図2に示した内側カーカスプライ6A及び外側カーカスプライ6Bの材料特性(上記した未加硫ゴムの材料特性を含む)等を含む数値データが定義される。内側カーカスプライモデル26A及び外側カーカスプライモデル26Bは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の構成部材モデル定義工程S1では、コンピュータ1に、カーカスプライ6A、6Bの半径方向外側に固定(巻回)されたビードコア5(図2に示す)の第1軸心を含む断面形状に基づいて、有限個の要素F(i)でモデル化したビードコアモデル25を定義する(工程S13)。
工程S13では、例えば、ビードコア5(図2に示す)の設計データ(例えば、CADデータ)が、コンピュータ1に入力される。この設計データには、例えば、ビードコア5の輪郭に関する数値データ等が含まれている。そして、工程S13では、ビードコア5の設計データに基づいて、有限個の要素F(i)でモデル化(離散化)した二次元モデルが、予め定められた角度ピッチでタイヤ周方向に複写されて、三次元に展開される。これにより、断面矩形状に形成された三次元のビードコアモデル25が設定される。
三次元に展開された要素F(i)は、各ゴム部材モデル31(31a〜31g)、又は、各カーカスプライモデル26A、26Bの要素F(i)と同様のものが採用されうる。この要素F(i)には、節点23の座標値、並びに、図2に示したビードコアの材料特性等を含む数値データが定義される。ビードコアモデル25は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の構成部材モデル定義工程S1では、コンピュータ1に、第1軸心回りで(図示省略)で円筒状に巻回されたシート状のベルトプライ(本実施形態では、図4に示した内側ベルトプライ7A、及び、外側ベルトプライ7B)の第1軸心を含む断面形状に基づいて、有限個の要素F(i)でモデル化したベルトプライモデル27を定義する(工程S14)。
工程S14では、例えば、ドラム(図示省略)に巻回されたシート状の内側ベルトプライ7A、及び、外側ベルトプライ7B(図4に示す)の設計データ(例えば、CADデータ)が、コンピュータ1に入力される。この設計データには、例えば、ベルトコード(図示省略)の配列や、ベルトコードを被覆するトッピングゴム(図示省略)の輪郭に関する数値データが含まれている。そして、工程S14では、内側ベルトプライ7A及び外側ベルトプライ7Bの設計データに基づいて、有限個の要素F(i)でモデル化(離散化)した二次元モデルを、予め定められた角度ピッチでタイヤ周方向に複写して、三次元に展開される。これにより、内側ベルトプライモデル27A及び外側ベルトプライモデル27Bがそれぞれ設定される。
三次元に展開された要素F(i)は、各ゴム部材モデル31(31a〜31g)、各カーカスプライモデル26A、26B、又は、ビードコアモデル25の要素F(i)と同様のものが採用されうる。この要素F(i)には、節点23の座標値、並びに、内側ベルトプライ7A及び外側ベルトプライ7Bの材料特性(上記した未加硫ゴムの材料特性を含む)等を含む数値データが定義される。内側ベルトプライモデル27A及び外側ベルトプライモデル27Bは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の作成方法は、コンピュータ1が、各構成部材モデル(本実施形態では、ビードコアモデル25等)を結合して、生タイヤモデル22を作成する(生タイヤモデル定義工程S2)。図8は、本実施形態の生タイヤモデル定義工程S2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の生タイヤモデル定義工程S2では、先ず、円筒状のケーシング13(図3(b)に示す)をモデル化したケーシングモデルを設定する(ケーシングモデル定義工程S21)。図9は、ケーシングモデル定義工程S21の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のケーシングモデル定義工程S21では、先ず、ケーシングモデルを構成する構成部材モデルの外面が壁となるように、接触を定義した境界条件がそれぞれ設定される(工程S211)。ケーシングモデルを構成する構成部材モデルとしては、図7に示したビードコアモデル25、内側カーカスプライモデル26A、外側カーカスプライモデル26B、サイドウォールゴムモデル31b、クリンチゴムモデル31c、ビードエーペックスゴムモデル31d、インナーライナーゴムモデル31e、チェファーゴムモデル31f、及び、サイド補強ゴムモデル31gである。また、接触を定義した境界条件とは、各モデルが接触しても、互いにすり抜けるのを防ぐためのものである。境界条件は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態のケーシングモデル定義工程S21では、第1接合体13A(図3(a)に示す)をモデル化した第1接合体モデル43Aを設定する(工程S212)。
図7に示されるように、本実施形態の工程S212では、例えば、第1接合体13A(図3(a)に示す)の設計データに基づいて、内側カーカスプライモデル26A、外側カーカスプライモデル26B、インナーライナーゴムモデル31e、チェファーゴムモデル31f、及び、サイド補強ゴムモデル31gが配置される。そして、工程S212では、内側カーカスプライモデル26A、外側カーカスプライモデル26B、インナーライナーゴムモデル31e、チェファーゴムモデル31f、及び、サイド補強ゴムモデル31gの各接合面において、各モデル間の要素F(i)の節点23が互いに共有するように、要素F(i)が再定義される。これにより、各モデルを隙間なく一体に結合した第1接合体モデル43Aが設定される。第1接合体モデル43Aは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態のケーシングモデル定義工程S21では、第2接合体13B(図3(a)に示す)をモデル化した第2接合体モデル43Bを設定する(工程S213)。
本実施形態の工程S213では、例えば、第2接合体13B(図3(a)に示す)の設計データに基づいて、ビードコアモデル25及びビードエーペックスゴムモデル31dが配置される。そして、工程S213では、ビードコアモデル25及びビードエーペックスゴムモデル31dとの接合面において、各要素F(i)の節点23が互いに共有するように、要素F(i)が再定義される。これにより、ビードコアモデル25及びビードエーペックスゴムモデル31dを隙間なく一体に結合した第2接合体モデル43Bが設定される。第2接合体モデル43Bは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態のケーシングモデル定義工程S21では、第3接合体13C(図3(a)に示す)をモデル化した第3接合体モデル43Cを設定する(工程S214)。
本実施形態の工程S214では、例えば、第3接合体13C(図3(a)に示す)の設計データに基づいて、サイドウォールゴムモデル31b及びクリンチゴムモデル31cが配置される。そして、工程S214では、サイドウォールゴムモデル31b及びクリンチゴムモデル31cの接合面において、各要素F(i)の節点23が互いに共有するように、要素F(i)が再定義される。これにより、サイドウォールゴムモデル31b及びクリンチゴムモデル31cを隙間なく一体に接合した第3接合体モデル43Cが設定される。第3接合体モデル43Cは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態のケーシングモデル定義工程S21では、第2接合体モデル43Bを、第1接合体モデル43Aに固定する(第2接合体モデル固定工程S215)。図10は、第2接合体モデル固定工程S215の処理手順の一例を示すフローチャートである。
第2接合体モデル固定工程S215では、先ず、カーカスプライモデルの半径方向外側の予め定められた位置に、ビードコアモデル25を固定する(工程S31)。図11は、ビードコアモデル25を固定する工程を説明する図である。工程S31では、先ず、未加硫のケーシング13(図3(a)に示す)の設計データに基づいて、第1接合体モデル43Aの外側カーカスプライモデル26Bの半径方向外側に、第2接合体モデル43Bのビードコアモデル25が配置される。そして、工程S31では、外側カーカスプライモデル26Bと、ビードコアモデル25とが接する接触領域50に、固定条件を含む境界条件が設定される。これにより、内側カーカスプライモデル26A及び外側カーカスプライモデル26Bは、ビードコアモデル25とタイヤ赤道C(図示省略)との間に配置された本体部26Aa、26Ba、及び、ビードコアモデル25よりも軸方向外側に配置された折返し部26Ab、26Bbに区分される。
固定条件は、実際の生タイヤ2(図2に示す)の各部材間の接着力に基づいて定義されている。また、外側カーカスプライモデル26Bとビードコアモデル25との接触領域50は、各要素F(i)の節点23(図7に示す)が共有されていない。従って、実際の生タイヤ2の外側カーカスプライ6B及びビードコア5と同様に、後述する巻上工程S33において、外側カーカスプライ6B(第1接合体モデル43A)とビードコア5(第2接合体モデル43B)との相対移動が許容される。
次に、本実施形態の第2接合体モデル固定工程S215では、カーカスプライモデル26A、26Bの巻き上げに先立ち、サイド補強ゴムモデル31g、並びに、ビードコアモデル25よりも軸方向内側に配置されたインナーライナーゴムモデル31e、内側カーカスプライモデル26A及び外側カーカスプライモデル26Bが、タイヤ半径方向外側に盛り上がるように、ビードコアモデル25をタイヤ軸方向内側に移動させる(工程S32)。図12は、ビードコアモデル25をタイヤ軸方向内側に移動させる工程を説明する図である。
工程S32では、ビードコアモデル25と、外側カーカスプライモデル26Bとの固定を維持したまま、ビードコアモデル25がタイヤ軸方向内側に移動される。これにより、サイド補強ゴムモデル31g、インナーライナーゴムモデル31e、及び、各カーカスプライモデル26A、26Bの変形が計算される。これらの変形計算により、第1接合体モデル43Aの形状を、図3(a)に示した各カーカスプライ6A、6Bの折返し部6Ab、6Bbを巻き上げる直前の第1接合体13Aの形状に近似させることができる。
サイド補強ゴムモデル31g等の構成部材モデルの変形計算は、図7に示した各要素F(i)の形状及び材料特性などに基づいて、微小時間(単位時間Tx(x=0、1、…))ごとに実施される。このような変形計算は、例えば、JSOL社製のLS-DYNAなどの市販の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算することができる。
次に、本実施形態の第2接合体モデル固定工程S215では、各カーカスプライモデル26A、26Bの折返し部26Ab、26Bbを、ビードコアモデル25の廻りで巻き上げる(巻上工程S33)。本実施形態の巻上工程S33では、折返し部26Ab、26Bbとともに、内側カーカスプライモデル26Aの折返し部26Abに固定されているチェファーゴムモデル31fも巻き上げられる。
また、本実施形態の巻上工程S33では、実際の生タイヤ2の折返し部6Ab、6Bbの巻き上げ工程とは異なり、各カーカスプライモデル26A、26Bの折返し部26Ab、26Bbを、外側カーカスプライモデル26Bの本体部26Baに当接させることなく、折返し部26Ab、26Bbの巻き上げが終了される。これにより、外側カーカスプライモデル26Bのタイヤ軸方向の外端26Boでの頂点(図示省略)が、本体部26Baに減り込むような通常発生し得ない状態が計算されるのを防ぐことができる。図13は、本実施形態の巻上工程S33の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の巻上工程S33では、先ず、ビードコアモデル25とカーカスプライモデル26(本実施形態では、外側カーカスプライモデル26B)とが接する接触領域50のタイヤ軸方向外端の第1位置45A(図12に示す)を中心として、各カーカスプライモデル26A、26Bの折返し部26Ab、26Bbを回転させる(第1回転工程S331)。図14は、第1回転工程S331の処理手順の一例を示すフローチャートである。図15(a)、(b)は、第1回転工程S331を説明する図である。
第1位置45Aは、図4に示されるように、折返し部6Ab、6Bbが巻き上げられた生タイヤ2において、ビードコア5に接する折返し部6Bbの半径方向の内端8に相当する。この折返し部6Bbの内端8は、各カーカスプライ6A、6Bを巻き上げる際の支点となる。このような第1位置45Aを中心として、各折返し部26Ab、26Bbが回転されることにより、ビードコアモデル25に接する折返し部26Bbを、ビードコアモデル25の外面に沿って当接させることができる。従って、本実施形態の作成方法では、ビードコアモデル25の廻りで、各折返し部26Ab、26Bbを精度よく巻き上げることできる。
ところで、ビードコアモデル25は、ビードコア5の材料特性に基づいて、剛体としてモデル化されている。このため、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbがビードコアモデル25のタイヤ軸方向の外側面25oに当接した後は、第1位置45Aを中心とした各折返し部26Ab、26Bbの回転を継続できない。従って、第1回転工程S331では、折返し部26Ab、26Bbの巻き上げ開始から巻き上げ終了までの全区間のうち、巻き上げ開始から、折返し部26Bbがビードコアモデル25の外側面25oに最初に当接するまでの第1区間48Aにおいて、各折返し部26Ab、26Bbを回転させている。
また、本実施形態の第1回転工程S331では、第1位置45Aと、カーカスプライモデルの折返し部のタイヤ軸方向の外端との間の第1距離L1を一定に維持しつつ、各折返し部26Ab、26Bbを、ビードコアモデル25の廻りで巻き上げている。これにより、第1回転工程S331では、図3(a)に示した折返し部6Ab、6Bbの巻き上げに用いられるブラダー等(図示省略)をモデル化しなくても、各折返し部26Ab、26Bbの弛みを防ぎつつ、精度よく巻き上げることできる。なお、本実施形態のカーカスプライモデルの折返し部の外端は、内側カーカスプライモデル26A及び外側カーカスプライモデル26Bが設定されている場合、各カーカスプライモデル26A、26Bの各折返し部26Ab、26Bbにおいて、タイヤ軸方向で最も外側に配置される外端(本実施形態では、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Bo)である。
本実施形態の第1回転工程S331は、先ず、第1位置45Aを中心とし、かつ、第1距離L1を半径とする第1円弧47Aを定義する(工程S41)。第1円弧47Aは、後述の工程S42において、各カーカスプライモデル26A、26Bの折返し部26Ab、26Bbを巻き上げる際に、カーカスプライモデルの折返し部の外端(本実施形態では、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Bo)の軌道の基準として用いられる。
第1円弧47Aは、例えば、座標値の集合体として仮想的に設定される。本実施形態の第1円弧47Aは、各折返し部26Ab、26Bbの巻き上げ開始から巻き上げ終了までの全区間のうち、少なくとも第1区間48Aにおいて定義される。
次に、本実施形態の第1回転工程S331は、折返し部の外端の軌道を、第1円弧47Aに一致させて、各折返し部26Ab、26Bbを回転させる(工程S42)。図15(b)に示されるように、工程S42では、第1区間48Aにおいて、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boの軌道を、第1円弧47Aに一致させて、各折返し部26Ab、26Bbを回転させている。
各カーカスプライモデル26A、26Bの巻き上げは、各カーカスプライモデル26A、26Bに定義された材料特性を維持したまま、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boを、第1円弧47Aに沿って強制的に移動させることによって実施されている。従って、工程S42では、各カーカスプライモデル26A、26Bの巻き上げとともに、各カーカスプライモデル26A、26Bを含む各構成部材モデルの変形計算も同時に行われる。
上述したように、第1円弧47Aは、第1位置45Aを中心とし、かつ、第1距離L1(本実施形態では、第1位置45Aと、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boとの間の距離)を半径として定義したものである。このような第1円弧47Aに、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boの軌道を一致させることにより、第1距離L1を一定に維持しつつ、第1位置45Aを中心として、各カーカスプライモデル26A、26Bの折返し部26Ab、26Bbを、ビードコアモデル25の廻りで巻き上げることができる。これにより、第1回転工程S331では、図3(a)に示した折返し部6Ab、6Bbの巻き上げに用いられるブラダー等(図示省略)をモデル化しなくても、各折返し部26Ab、26Bbの弛みを防ぎつつ、精度よく巻き上げることできる。
第1回転工程S331では、巻き上げ開始から各折返し部26Ab、26Bbがビードコアモデル25の外側面25oに最初に当接するまでの第1区間48Aにおいて、各折返し部26Ab、26Bbを回転させている。このため、第1回転工程S331では、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbを、ビードコアモデル25に沿って、精度よく当接させることができる。この折返し部26Bbの当接により、ビードコアモデル25とカーカスプライモデル26(本実施形態では、外側カーカスプライモデル26B)との接触領域50が、タイヤ半径方向の外側に大きくなる。
次に、本実施形態の巻上工程S33は、接触領域50のうち、第1位置45Aよりもタイヤ半径方向外端の第2位置45Bを中心として、各カーカスプライモデル26A、26Bの折返し部26Ab、26Bbを回転させる(第2回転工程S332)。図16は、第2回転工程S332の処理手順の一例を示すフローチャートである。図17(a)、(b)は、第2回転工程S332を説明する図である。
本実施形態の第2回転工程S332は、各折返し部26Ab、26Bbの巻き上げ開始から巻き上げ終了までの全区間のうち、第1区間48A(図15に示す)後の第2区間48Bにおいて、各折返し部26Ab、26Bbを回転させている。
上述したように、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbがビードコアモデル25のタイヤ軸方向の外側面25o(図15(a)に示す)に当接した後は、第1位置45A(図15に示す)を中心とした各折返し部26Ab、26Bbの回転を継続できない。このため、第2回転工程S332では、図17(a)、(b)に示されるように、接触領域50のうち、第1位置45Aよりもタイヤ半径方向外端の第2位置45Bを中心として、各折返し部26Ab、26Bbを回転させている。これにより、ビードコアモデル25の廻りで、各折返し部26Ab、26Bbを精度よく巻き上げることできる。
また、ビードコアモデル25の半径方向外側には、ビードエーペックスゴムモデル31dが配置されている。このため、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbが、ビードエーペックスゴムモデル31dに当接した後は、第2位置45Bを中心とした各折返し部26Ab、26Bbの回転を継続できない。従って、本実施形態の第2区間48Bは、各折返し部26Ab、26Bbの巻き上げ開始から巻き上げ終了までの全区間のうち、第1区間48A(図15に示す)後から、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbが、ビードエーペックスゴムモデル31dに当接するまでの区間として定義される。
第2回転工程S332では、第2位置45Bと、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boとの間の第2距離L2を一定に維持しつつ、各折返し部26Ab、26Bbを、ビードコアモデル25の廻りで巻き上げている。これにより、第2回転工程S332では、図3(a)に示した折返し部6Ab、6Bbの巻き上げに用いられるブラダー等(図示省略)をモデル化しなくても、各折返し部26Ab、26Bbの弛みを防ぎつつ、精度よく巻き上げることできる。
本実施形態の第2回転工程S332は、先ず、第2位置45Bを中心とし、かつ、第2距離L2を半径とする第2円弧47Bを定義する(工程S51)。第2円弧47Bは、後述の工程S52において、各カーカスプライモデル26A、26Bの折返し部26Ab、26Bbを巻き上げる際に、カーカスプライモデルの折返し部の外端(本実施形態では、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Bo)の軌道の基準として用いられる。
第2円弧47Bは、例えば、座標値の集合体として仮想的に設定される。本実施形態の第2円弧47Bは、各折返し部26Ab、26Bbの巻き上げ開始から巻き上げ終了までの全区間のうち、少なくとも第2区間48Bにおいて定義される。
次に、本実施形態の第2回転工程S332は、折返し部の外端の軌道を、第2円弧47Bに一致させて、各折返し部26Ab、26Bbを回転させる(工程S52)。図17(b)に示されるように、工程S52では、第2区間48Bにおいて、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boの軌道を、第2円弧47Bに一致させて、各折返し部26Ab、26Bbを回転させている。
上述したように、第2円弧47Bは、第2位置45Bを中心とし、かつ、第2距離L2(本実施形態では、第2位置45Bと、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boとの間の距離)を半径として定義されたものである。このような第2円弧47Bに、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boの軌道を一致させることにより、第2距離L2を一定に維持しつつ、第2位置45Bを中心として、各折返し部26Ab、26Bbを、ビードコアモデル25の廻りで巻き上げることができる。これにより、第2回転工程S332では、図3(a)に示した折返し部6Ab、6Bbの巻き上げに用いられるブラダー等(図示省略)をモデル化しなくても、各折返し部26Ab、26Bbの弛みを防ぎつつ、精度よく巻き上げることできる。
第2回転工程S332では、第1区間48A後から、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbが、ビードエーペックスゴムモデル31dに当接するまでの第2区間48Bにおいて、各折返し部26Ab、26Bbを回転させている。このため、第2回転工程S332では、各折返し部26Ab、26Bbを、ビードエーペックスゴムモデル31dに、精度よく当接させることができる。
次に、本実施形態の巻上工程S33は、ビードエーペックスゴムモデル31dを押し倒しながら、各カーカスプライモデル26A、26Bの折返し部26Ab、26Bbを回転させる(第3回転工程S333)。図18(a)、(b)は、第3回転工程S333を説明する図である。
第3回転工程S333では、各折返し部26Ab、26Bbの巻き上げ開始から巻き上げ終了までの全区間のうち、第2区間48B(図17に示す)後から巻き上げ終了までの第3区間48Cにおいて、各折返し部26Ab、26Bbを回転させている。
外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbが、ビードエーペックスゴムモデル31dに当接した後(即ち、第3区間48C)では、第2位置45Bと、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boとの間の距離(図17に示した第2距離L2)が、ビードエーペックスゴムモデル31dの大きさによって逐次変化する。従って、第3回転工程S333では、第2距離L2を一定に維持したまま、各折返し部26Ab、26Bbを、ビードコアモデル25の廻りで巻き上げることができない。
このため、第3回転工程S333では、ビードエーペックスゴムモデル31dの半径方向の外端32と、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boとの間において、折返し部26Bbの形状を維持したまま、各折返し部26Ab、26Bbを回転させている。これにより、第3回転工程S333では、図3(a)に示した折返し部6Ab、6Bbの巻き上げに用いられるブラダー等(図示省略)をモデル化しなくても、各折返し部26Ab、26Bbの弛みを防ぎつつ、精度よく巻き上げることできる。さらに、第3回転工程S333では、各折返し部26Ab、26Bbの巻き上げにより、ビードエーペックスゴムモデル31dが、外側カーカスプライモデル26Bの本体部26Baに押し倒される状態が計算される。
上述したように、各カーカスプライモデル26A、26Bの折返し部26Ab、26Bbを、外側カーカスプライモデル26Bの本体部26Baに当接させることなく、折返し部26Ab、26Bbの巻き上げが終了される。これにより、外側カーカスプライモデル26Bのタイヤ軸方向の外端26Boでの頂点(図示省略)が、本体部26Baに減り込むのを防ぐことができる。
なお、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbと本体部26Baとの当接は、後述の工程S34(図10に示す)において、各カーカスプライモデル26A、26Bの本体部26Aa、26Baを半径方向外側に膨出させることで実現させている。従って、折返し部26Ab、26Bbの巻き上げは、膨出した外側カーカスプライモデル26Bの本体部26Baに折返し部26Bbが沿う位置を予測して、終了されるのが望ましい。これにより、外側カーカスプライモデル26Bのタイヤ軸方向の外端26Boの頂点(図示省略)が、本体部26Baに減り込むのを効果的に防ぐことができる。
本実施形態の巻上工程S33では、第1位置45Aを中心として各折返し部26Ab、26Bbを回転させる第1回転工程S331(図15(a)、(b)に示す)、第2位置45Bを中心として各折返し部26Ab、26Bbを回転させる第2回転工程S332(図17(a)、(b)に示す)、及び、ビードエーペックスゴムモデル31dを押し倒しながら折返し部26Ab、26Bbを回転させる第3回転工程S333(図18(a)、(b)に示す)が逐次実施される態様が例示されたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、ビードコアモデル25の断面形状や、ビードエーペックスゴムモデル31dの配置位置に基づいて、適宜変更することができる。例えば、ビードコアモデル25の断面形状が六角形等の多角形である場合は、その断面形状に基づいて、第1位置45A(図15に示す)や、第2位置45B(図17に示す)だけでなく、第3位置(図示省略)よりも多くの基準(支点)を中心として、各折返し部26Ab、26Bbが逐次回転されるのが望ましい。
次に、図10に示されるように、本実施形態の第2接合体モデル固定工程S215では、カーカスプライモデルの折返し部(本実施形態では、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bb)を、カーカスプライモデルの本体部(本実施形態では、外側カーカスプライモデル26Bの本体部26Ba)、ビードエーペックスゴムモデル31d及びビードコアモデル25に固定する(工程S34)。図19(a)、(b)は、カーカスプライモデルの折返し部の固定する工程を説明する図である。
工程S34では、先ず、図19(a)に示されるように、インナーライナーゴムモデル31e及びサイド補強ゴムモデル31gの内面に、等分布荷重w1を定義する。これにより、図19(b)に示されるように、インナーライナーゴムモデル31e、サイド補強ゴムモデル31g、及び、各カーカスプライモデル26A、26Bの本体部26Aa、26Baを半径方向外側に膨出させて、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbを、外側カーカスプライモデル26Bの本体部26Baに当接させることができる。
次に、工程S34では、外側カーカスプライモデル26B及びチェファーゴムモデル31fの外面に、等分布荷重w2を定義する。これにより、外側カーカスプライモデル26Bの本体部26Ba、ビードエーペックスゴムモデル31d及びビードコアモデル25の外面に、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbを密着させて当接させることができる。
次に、工程S34では、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbと本体部26Baとの間、折返し部26Bbとビードエーペックスゴムモデル31dとの間、及び、折返し部26Bbとビードコアモデル25との間に、固定条件を含む境界条件が設定される。これにより、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbを、外側カーカスプライモデル26Bの本体部26Ba、ビードエーペックスゴムモデル31d及びビードコアモデル25に固定することができるため、第2接合体モデル43Bを第1接合体モデル43Aに一体として定義することができる。固定条件は、実際の生タイヤ2(図2に示す)の各部材間の接着力に基づいて定義されている。
次に、図9に示されるように、本実施形態のケーシングモデル定義工程S21では、第1接合体モデル43A及び第2接合体モデル43Bに、第3接合体モデル43Cを固定する(工程S216)。図20は、第3接合体モデル43Cを固定する工程を説明する図である。工程S216では、先ず、未加硫のケーシング13(図3(b)に示す)の設計データに基づいて、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bb、及び、チェファーゴムモデル31fの外面の予め定められた位置に、第3接合体モデル43Cが配置される。次に、工程S216では、第3接合体モデル43Cの外面に、等分布荷重w3を定義される。これにより、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bb、及び、チェファーゴムモデル31fの外面に、第3接合体モデル43Cを当接させることができる。本実施形態では、ビードコアモデル25が、全方向(X軸、Y軸、Z軸)において固定されているため、例えば、インナーライナーゴムモデル31e及びサイド補強ゴムモデル31gの内面に、等分布荷重を定義されなくても、第3接合体モデル43Cを当接させることができる。
そして、工程S216では、第3接合体モデル43Cと外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbとの間、第3接合体モデル43Cとチェファーゴムモデル31fとの間に、固定条件を含む境界条件が設定される。これにより、第1接合体モデル43A及び第2接合体モデル43Bに、第3接合体モデル43Cを固定したケーシングモデル43が設定される。なお、固定条件は、実際の生タイヤ2(図2に示す)の各部材間の接着力に基づいて定義されている。ケーシングモデル43は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の生タイヤモデル定義工程S2は、円筒状のトレッドリング14をモデル化したトレッドリングモデルを設定する(トレッドリングモデル定義工程S22)。図21は、トレッドリングモデル定義工程S22の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のトレッドリングモデル定義工程S22では、先ず、トレッドリングモデルを構成する構成部材モデルの外面が壁となるように、接触を定義した境界条件がそれぞれ設定される(工程S221)。トレッドリングモデルを構成する構成部材モデルとしては、図7に示した内側ベルトプライモデル27A、外側ベルトプライモデル27b、及び、トレッドゴムモデル31aである。境界条件は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態のトレッドリングモデル定義工程S22では、トレッドリングモデルを構成する構成部材モデルを接合して、トレッドリングモデルを設定する(工程S222)。本実施形態の工程S222では、内側ベルトプライモデル27A、外側ベルトプライモデル27B、及び、トレッドゴムモデル31aを接合する。
工程S222では、先ず、図7に示されるように、未加硫のトレッドリング14(図4に示す)の設計データに基づいて、内側ベルトプライモデル27A、外側ベルトプライモデル27B、及び、トレッドゴムモデル31aが配置される。そして、本実施形態の工程S222では、内側ベルトプライモデル27Aと外側ベルトプライモデル27Bとの接合面、及び、外側ベルトプライモデル27Bとトレッドゴムモデル31aとの接合面において、各要素F(i)の節点23が共有するように、要素F(i)が再定義される。これにより、内側ベルトプライモデル27A、外側ベルトプライモデル27B、及び、トレッドゴムモデル31aを隙間なく一体に結合したトレッドリングモデル44が設定される。トレッドリングモデル44は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の生タイヤモデル定義工程S2は、ケーシングモデル43と、トレッドリングモデル44との接触を定義した境界条件が設定される(工程S23)。工程S23では、ケーシングモデル43のタイヤ半径方向の外面43o(図20に示す)と、トレッドリングモデル44のタイヤ半径方向の内面44iとが壁となるように、接触を定義した境界条件が設定される。境界条件は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の生タイヤモデル定義工程S2では、コンピュータ1が、ケーシングモデル43と、トレッドリングモデル44とを結合させて、生タイヤモデル22を定義する(シェーピング工程S24)。シェーピング工程S24では、ケーシングモデル43の外面43o(図20に示す)と、トレッドリングモデル44の内面44iとを結合させている。図22は、シェーピング工程S24の処理手順の一例を示すフローチャートである。図23は、ケーシングモデル43を膨出させる工程を説明する図である。
本実施形態のシェーピング工程S24では、先ず、ケーシングモデル43の外側に、トレッドリングモデル44を配置する(工程S241)。トレッドリングモデル44、及び、ケーシングモデル43の半径方向の位置は、図4に示した実際のトレッドリング14、及び、膨出前のケーシング13の半径方向の位置に基づいて設定される。
次に、本実施形態のシェーピング工程S24では、コンピュータ1が、ケーシングモデル43を半径方向外側に膨出させる変形計算を実施する(工程S242)
工程S242では、先ず、ケーシングモデル43の内面43iに等分布荷重w4が定義される。この等分布荷重w4は、図4に示したケーシング13を膨出させる高圧空気の圧力に相当するものである。なお、トレッドリングモデル44の各要素F(i)の節点23(図7に示す)は、移動不能に固定されている。
さらに、工程S242では、ケーシングモデル43のビード部43bをタイヤ軸方向内側に移動させる。ビード部43bとタイヤ赤道Cとのタイヤ軸方向距離は、図4に示した膨出したケーシング13のビード部13bとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離に基づいて設定される。これにより、工程S242では、ケーシングモデル43を半径方向外側に膨出させる変形計算を実施することができる。このケーシングモデル43の膨出により、ケーシングモデル43の外面43oと、トレッドリングモデル44の内面44iとを接触させることができる。
次に、本実施形態のシェーピング工程S24では、ケーシングモデル43の外面43oと、トレッドリングモデル44の内面44iとが接触した後に、トレッドリングモデル44をケーシングモデル43側に変形させる(工程S243)。図24は、トレッドリングモデル44をケーシングモデル43側に変形させる工程を説明する図である。
図24に示されるように、工程S243では、トレッドリングモデル44の外面44oに、等分布荷重w5が定義される。この等分布荷重w5は、図4に示したトレッドリング14の外周面14oを押し付けるステッチングローラ(図示省略)の圧力に基づいて設定される。これにより、工程S243では、トレッドリングモデル44の内面44iが、ケーシングモデル43の外面43oに沿うように、トレッドリングモデル44の変形計算を実施することができる。
次に、本実施形態のシェーピング工程S24では、ケーシングモデル43の外面43oと、トレッドリングモデル44の内面44iとの接触面に、相対移動を防ぐ境界条件を設定する(工程S244)。このような境界条件は、各要素F(i)の節点23(図7に示す)の共有を考慮することなく、ケーシングモデル43及びトレッドリングモデル44を一体化することができる。境界条件が設定された後、ケーシングモデル43の内面43iに等分布荷重w4、及び、トレッドリングモデル44の外面44oに定義されていた等分布荷重w5が解除される。これらの等分布荷重w4、w5の解除により、ケーシングモデル43及びトレッドリングモデル44を結合した生タイヤモデル22が定義される。生タイヤモデル22は、コンピュータ1に入力される。このような生タイヤモデル22は、例えば、加硫金型をモデル化した金型モデル(図示省略)や、ブラダーをモデル化したブラダーモデル(図示省略)を用いて、加硫時の生タイヤモデル22の変形を評価するのに用いることができる。
このように、本実施形態の作成方法は、図3(a)、(b)及び図4に示した実際の生タイヤ2の成形工程に基づいて、生タイヤモデル22が作成される。従って、本実施形態の作成方法は、生タイヤモデル22を、実際の生タイヤ2の形状に近似させることができる。
また、本実施形態の巻上工程S33では、図15(a)、(b)に示されるように、ビードコアモデル25とカーカスプライモデル26(本実施形態では、外側カーカスプライモデル26B)との接触領域50の第1位置45Aを中心として、折返し部26Ab、26Bbが回転されるため、ビードコアモデル25の廻りで、折返し部26Ab、26Bbを精度よく巻き上げることできる。さらに、巻上工程S33では、第1距離L1(第1位置45Aと、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boとの間の距離)、及び、第2距離L2(第2位置45Bと、外側カーカスプライモデル26Bの折返し部26Bbの外端26Boとの間の距離)を一定に維持しつつ、折返し部26Ab、26Bbが、ビードコアモデル25の廻りで巻き上げられるため、折返し部26Ab、26Bbを弛ませることなく精度よく巻き上げることできる。これにより、生タイヤモデル22(図24に示す)の形状を、実際の生タイヤ2(図2に示す)の形状に効果的に近似させることができる。
図24に示した生タイヤモデル22において、ケーシングモデル43とトレッドリングモデル44との間、第1接合体モデル43Aと第2接合体モデル43Bとの間、第1接合体モデル43Aと第3接合体モデル43Cとの間、及び、第2接合体モデル43Bと第3接合体モデル43Cとの間には、隙間が形成されている。このような隙間を形成している各接合面において、各要素F(i)の節点23(図7に示す)が共有するように、要素F(i)が再定義されるのが望ましい。
これにより、生タイヤモデル22は、各構成部材モデル間の隙間をゼロにすることができるため、例えば、加硫時の変形シミュレーションに用いられた場合、各構成部材モデルに力が正しく伝達される。従って、生タイヤモデル22は、変形計算によって求められる物理量が、正確に計算されうる。また、接合面を介して隣り合う一方の構成部材モデルの要素F(i)が、他方の構成部材モデルの要素F(i)に突き抜けるのを防ぐことができるため、安定した変形を計算することができる。
本実施形態の作成方法では、生タイヤ2のタイヤ赤道面Csの一方側のみをモデル化した生タイヤモデル22が例示されたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、タイヤ赤道面Csの一方側の生タイヤモデル22を、タイヤ赤道面Csの他方側に複写してもよい。これにより、タイヤ赤道面Csに対して両側をモデル化した生タイヤモデル(図示省略)が作成されうる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図5、図6、図8〜図10に示した処理手順に従って、ケーシングモデル及びトレッドリングモデルを含む生タイヤモデルが作成された(実施例、比較例)。実施例、比較例では、カーカスプライモデルの折返し部を、ビードコアモデルの廻りで巻き上げる巻上工程が実施された。
実施例の巻上工程では、図13、図14及び図16に示した処理手順に従って、ビードコアモデルとカーカスプライモデルとが接する接触領域のタイヤ軸方向外端の第1位置を中心として、折返し部が回転された。さらに、実施例では、ビードコアモデルと、カーカスプライモデルのタイヤ軸方向の外端との間の第1距離を一定に維持しつつ、カーカスプライモデルをビードコアモデルの廻りで巻き上げられた。他方、比較例では、図25(a)、(b)に示されるように、カーカスプライモデルの折返し部に、等分布荷重w7を定義することにより、カーカスプライモデルがビードコアモデルの廻りで巻き上げられた。共通仕様は次のとおりである。
タイヤサイズ:275/30R20
シミュレーションソフトウェア:JSOL社製のLS-DYNA
テストの結果、実施例では、実際の生タイヤの成形工程に基づいて、カーカスプライモデルをビードコアモデルの廻りで巻き上げて生タイヤモデルが作成されるため、実際の生タイヤの形状に近似させることができた。さらに、実施例では、ビードコアモデルとカーカスプライモデルの外端との間の距離が一定に維持されるため、カーカスプライモデルを弛ませることなく、カーカスプライモデルを精度よく巻き上げることできた。
他方、比較例では、図25(a)、(b)に示されるように、カーカスプライモデルが弛んでしまい、カーカスプライモデルを所定の位置に巻き上げることができなかった。これは、カーカスプライモデルの折返し部の外端を拘束せずに、折返し部の外面に等分布荷重w7が与えられたため、折返し部の外端が自由に動いてしまったことが原因である。従って、実施例は、比較例に比べて、生タイヤモデルの形状を、実際の生タイヤの形状に効果的に近似させることができた。