JP2017066568A - 消臭性織物 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜天井、空中膜、間仕切りなどの内装材として、産業環境における悪臭成分、及びVOC成分、生活環境における臭気成分全般に対してバランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に感知限界濃度に低減する消臭性、かつ吸音性(必要に応じて不燃性)のシート状織物を提供。【解決手段】樹脂被覆された糸条を織編要素に含むシート状織物において、樹脂被覆を酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域とで構成し、その領域面積比を3:2〜2:3とし、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、及び〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体から選ばれた1種以上の塩基性固体粒子を含み、かつ塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、二酸化珪素、酸化チタン、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体、及び〔酸化チタン/アルミナ〕複合体から選ばれた1種以上の酸性固体粒子を含むものとする。【選択図】図1

Description

本発明は臭気吸着による減臭効果を有するシート状織物に関し、詳しくは、屋内競技場施設、体育館、屋内プール、イベントホール、公会堂、冠婚葬祭式場、駅舎、空港、ショッピングモールなどの天井に設置される天井面積構成膜材(膜天井)、天井付帯物(空中膜)、懸垂幕、横断幕として、また食品工場、化学品工場、畜産農業施設、水産施設、ゴミ処理施設などにおける、空間仕切り、壁掛け、敷物、空中膜として、さらに住居関連では日除けテント、ブラインド、タペストリー、押入・下駄箱用、トイレマット・タペストリー、キッチンマットなど、各種用途環境における悪臭成分、及びVOC成分などの臭気成分全般に対してバランス良く濃度を効果的に減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に低減する消臭効果を発現し、用途によって吸音性を発現可能な消臭性織物に関する。
先に本出願人は粗目織物と、粗目織物を被覆する熱可塑性樹脂層とで構成された、特定の充実率と単位表面積とを有する可撓性メッシュシートの熱可塑性樹脂層に、臭気分子に対して、物理的吸着性を有する無機多孔性物質、化学反応性を有する無機酸化・還元性物質、及び無機分解反応触媒物質などの臭気分子不活性化粒子を任意に用いることにより、体臭、ペット臭、調理臭、ゴミ臭、カビ臭などの生活臭全般を低減させる機能を付帯させたメッシュシート(特許文献1)を提案した。また特許文献2には、四大悪臭成分(アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルカプタン)をはじめとする塩基性、硫黄系、酸性の各悪臭成分及び、アルデヒド化合物に対して消臭効果を発揮する消臭性繊維製品の製造方法として、(A)二酸化ケイ素と酸化亜鉛との複合物、(B)非晶質シリカ及び/又はシリカアルミナとフィロケイ酸塩及び/又はアルミニウムフィロケイ酸塩との複合物、(C)ポリヒドラジド化合物、並びに、(D)ポリカルボン酸及び/又はポリカルボン酸の塩を含有する分散液を、繊維素材に付与する方法が開示されている。これら特許文献1及び2では多種類の臭気分子に対応させるためには、酸性の悪臭成分、塩基性の悪臭成分に相性の良い化学物質や吸着性物質などを複数併用することを必須とし、実施例の個別臭気毎の試験では各々好成績を示すものの、生活臭のような複合臭気に対する減臭効果や消臭効果の検証はなされていない。ところで特性の異なる化学物質や吸着性物質の併用種を多くするほど、これらの存在が互いに邪魔し合うことがある。例えば酸性の悪臭成分に結合した化学物質が先に存在すると、塩基性の悪臭成分に結合する化学物質の作用を鈍くすることで塩基性の悪臭成分の除去を不十分なものとしたり、吸着した悪臭成分の放出を促したりするなど、他の消臭成分や吸着性物質の作用を阻害して、結果的に意図したような生活臭(複合臭)に対する減臭効果や消臭効果が持続して得られない実態が垣間見えている。そこで引用文献3では、複数種類の悪臭に対して1回のガス通過による消臭効果を高めるハニカム形フィルタとして、塩基性ガス吸着シートと酸性ガス吸着シートを接着配置した一体型シートから波形シートと平板シートを作り、波形シートと平板シートを交互に積層したハニカム構造が開示されているが、このハニカム構造は積層断面を利用面とすることから自ずと図5のような箱型となり、天井材、壁材、間仕切りなど、生活空間での使用は嵩張りが大きくスペースや外観に影響するなどの不自由なものである。
特開2013−212238号公報 特開2006−336176号公報 特開2007−068912号公報
本発明は、膜天井、空中膜、間仕切りなどの内装材として、産業環境における悪臭成分、及びVOC成分、生活環境における臭気成分全般に対してバランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に低減する消臭性、かつ吸音性(必要に応じて不燃性)のシート状織物を提供しようとするものである。
上記課題を解決するために、樹脂被覆された糸条を織編要素に含むシート状織物において、樹脂被覆が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域によって特定比率の領域面積比で形成され、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域が、特定の塩基性固体粒子を含み、かつ塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、特定の酸性固体粒子を含むことで、産業環境における悪臭成分、及びVOC成分、産業環境における臭気成分全般に対してバランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に低減する消臭効果を発現可能であることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の消臭性織物は、樹脂被覆された糸条を織編要素に含むシート状織物であって、前記樹脂被覆が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域とで構成され、その領域面積比を3:2〜2:3とし、前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、及び〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体から選ばれた1種以上の塩基性固体粒子を含み、かつ前記塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、二酸化珪素、酸化チタン、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体、及び〔酸化チタン/アルミナ〕複合体から選ばれた1種以上の酸性固体粒子を含むことが好ましい。これによって、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭(消臭)効果を有する酸性臭吸着性樹脂被覆層領域と、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭(消臭)効果を有する塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を同一糸条に配備することにより、各々の領域が酸性悪臭と塩基性悪臭とを選択的に、互いに阻害し合うことなく不活性化する役割を担うことができ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、及び〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体などの塩基性固体粒子群と、二酸化珪素、酸化チタン、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体、及び〔酸化チタン/アルミナ〕複合体などの酸性固体粒子群とが別個の領域に分かれて存在し、それらが織物内で共存することで、酸性悪臭と塩基性悪臭の同時減臭(消臭)を阻害し合うという従来問題を解決し、産業環境における悪臭成分、及びVOC成分、産業環境における臭気成分全般に対してバランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に低減する消臭効果を発現可能とする。
本発明の消臭性織物は、前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域の少なくとも一方が、ゼオライト粒子を含むことが好ましい。これによってシンナーやトルエンなどの有機溶剤、ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質臭などに対する吸着性も附帯するので、より臭気成分全般(VOC含む)に対して長期間バランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に引き下げる消臭効果を発現させることができる。
本発明の消臭性織物は、前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、さらにスメクタイト系粘土鉱物、合成スメクタイト、セリサイト、フッ素雲母、及び膨張黒鉛から選ばれた1種以上の層状無機化合物を含むことが好ましい。これによって火災時の火炎熱(模擬的にはコーンカロリーメーター試験:ASTM-E1354)により層状無機化合物が体積膨張することで、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を体積膨張させ、その結果、樹脂被覆糸条の径を太らせることで織物の空隙部を閉塞させ、空隙部からの火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出を遮断させることで建築基準法に準じる不燃性を備えるシート状織物を得ることができる。
本発明の消臭性織物は、前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル及びモリブデン化合物粒子を含む軟質塩化ビニル樹脂組成物で構成されることが好ましい。これによって塩化ビニル樹脂とモリブデン化合物粒子の作用により燃焼炭化物を強固とする残滓層(塩素−モリブデン複合酸化物)を形成することで、織物の空隙部からの火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出などの遮断効果を長時間持続させることで建築基準法に準じる不燃性を備えるシート状織物とすることができる。また生活空間用途では、内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の疑いのあるフタル酸エステル系可塑剤を使用せず、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を含有することで、特に乳幼児の経口摂取や経気摂取、母体から胎児への間接摂取によるホルモン作用異常のリスクを回避することができる。
本発明の消臭性織物は、前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、気泡痕を1〜25体積%含むことが好ましい。これによって織物の表面積をより大きいものとする効果、及び通気度を高くする効果で、臭気分子の吸着及び捕集効率を向上させることを可能とする。
本発明の消臭性織物は、前記織編要素が、1)経糸条群及び緯糸条群、または2)経糸条群及び左斜上・右斜上バイアス糸条群、または3)経糸条群、緯糸条群、及び左斜上・右斜上バイアス糸条群で、かつ前記シート状織物が単層織物、二重織物、及び三重織物、から選ばれた何れか1種であることが好ましい。特に2)の織編要素は三軸織物、3)の織編要素は四軸織物とすることで織物の表面積を大きくして臭気分子の吸着及び捕集効率を向上させると同時に織編要素を複雑とすることで吸音効果を向上させ、また特に二重織物、三重織物とすることで織物の表面積を増大して臭気分子の吸着及び捕集効率をより向上させると同時に、織編要素を立体複雑化することで吸音効果をより向上させる。上記織物において、糸条断面の上(下)半分が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域で形成され、糸条の下(上)半分が塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域で形成されたもので、これら織物において、糸条の織編配置は、同一領域面が同一方向に規則的配置されたもの、或いはランダム方向に無秩序配置されたものの何れの態様であってもよい。
本発明の消臭性織物は、前記織編要素の製織交点が熱融着していることが好ましい。これによって得られるシート状織物にフレキシブル性かつ形態安定性を付与し、外力による変形や破壊(裂け、穴開き)の事故に対する抵抗力を増すことができる。
本発明の消臭性織物は、前記シート状織物の通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒であり、吸音性を有することが好ましい。通気度5〜100cc/cm2/秒の空隙部はガス交換を促すことにより消臭効果をより高いのもとするのみならず、この通気度範囲において優れた吸音(反響防止)効果を発現する。
本発明の消臭性織物は、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭(消臭)効果を有する酸性臭吸着性樹脂被覆層領域と、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭(消臭)効果を有する塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域とを同一糸条に配備することにより、各々の領域が酸性悪臭と塩基性悪臭とを選択的に、互いに阻害し合うことなく不活性化する役割を担うことができ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、及び〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体などの塩基性固体粒子群と、二酸化珪素、酸化チタン、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体、及び〔酸化チタン/アルミナ〕複合体などの酸性固体粒子群とが別個の領域に分かれて存在し、それらが織物内で共存することで、酸性悪臭と塩基性悪臭の同時減臭(消臭)を阻害し合うという従来問題を解決し、産業環境における悪臭成分、及びVOC成分、産業環境における臭気成分全般に対してバランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に低減する消臭効果を発現可能とする。特に通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒の空隙部によりガス交換を促すことで消臭効果を効率化するのみならず、この通気度範囲において吸音(反響防止)効果を発現するので、屋内競技場施設、体育館、屋内プール、イベントホール、公会堂、冠婚葬祭式場、駅舎、空港、ショッピングモールなどの天井に設置される天井面積構成膜材(膜天井)、天井付帯物(空中膜)、懸垂幕、横断幕として、また食品工場、化学品工場、畜産農業施設、水産施設、ゴミ処理施設などにおける、空間仕切り、壁掛け、敷物、空中膜として、さらに住居関連では日除けテント、ブラインド、タペストリー、押入・下駄箱用、トイレマット・タペストリー、キッチンマットなどに適して用いることができる。上記用途において、本発明の消臭性織物には写真や画像・イラストレーション・文字などのデザインや広告効果を附帯させることもできるので産業上の利用に極めて有用である。
本発明の消臭性織物の断面(規則性配置)の一部を拡大して示した図 本発明の消臭性織物の断面(ランダム配置)の一部を拡大して示した図
本発明の消臭性織物は、樹脂被覆された糸条を織編要素に含むシート状織物であって、樹脂被覆が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域により、特定の領域面積比で形成され、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域が、特定の塩基性固体粒子を含み、かつ塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、特定の酸性固体粒子を含むこと、また酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、気泡痕を含み、織編要素が、1)経糸条群及び緯糸条群、または2)経糸条群及び左斜上・右斜上バイアス糸条群で、かつ前記シート状織物が単層織物、二重織物、及び三重織物の何れかとし、織編要素の製織交点を熱融着し、これらにより得られたシート状織物が特定の通気度を有するものである。
本発明の消臭性織物において、樹脂被覆された糸条、すなわち酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域に用いる樹脂は、製織交点における熱融着性を付与するために、熱可塑性樹脂が好ましく、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域と塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域は、互いに同種の熱可塑性樹脂であることが製織交点における熱融着性、及び交点融着強度保持のために好ましい。熱可塑性樹脂は、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、などが使用でき、これらは単独もしくは、2種以上の併用としてもよい。芯糸を被覆する樹脂被覆層の厚さは0.03mm〜0.6mm、特に0.05mm〜0.3mmが好ましい。本発明において特に好ましい熱可塑性樹脂は、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質〜半硬質塩化ビニル樹脂を包含する)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、およびフッ素系共重合体樹脂である。これらの熱可塑性樹脂を被覆した糸条は、芯糸をコーティングダイスに芯通しした押出成型機を用い、特定配合の熱可塑性樹脂をホットメルト状態(150〜300℃)で二層コーティングダイスノズル孔から二層(酸性臭吸着性樹脂被覆層、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層)で押出すと同時に、芯糸を引き取り冷却することで得られる。また芯糸は塩化ビニル樹脂ペーストゾルのような粘重液状物(特定配合)、有機溶剤に可溶化した熱可塑性樹脂溶液(特定配合)、エマルジョンやラテックスのような水性熱可塑性樹脂(特定配合)に芯糸をディッピングし、芯糸全体に含浸、もしくは部分的に含浸させ、これを熱処理乾燥して得た下地樹脂処理糸条を芯糸に用いてもよい。酸性臭吸着性樹脂被覆層領域と塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域は必要に応じて顔料、可塑剤、安定剤、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化劣化防止剤、接着剤、防炎剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤など公知の添加剤を含むことができる。特に酸性臭吸着性樹脂被覆層領域と塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域との着色を互いに異にすること、または複数色の糸条を使用し、さらに織編組織をコントロールすることで織物の折柄模様を発色的にデザインしてもよい。着色剤はアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、染付けレーキ顔料、アントラキノン系顔料類、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料などの有機顔料、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、三酸化アンチモン、酸化鉄、酸化鉛、酸化クロム、酸化ジルコニウム、スピネル構造酸化物、ルチル型酸化物などの無機顔料の他、パール顔料、アルミ粉顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、染料などを自由に使用でき、その組み合わせに制限は無い。
本発明の消臭性織物において、糸条の一部に形成される酸性臭吸着性樹脂被覆層領域は、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、及び〔酸化マグネシウム/アルミナ(AlO)〕複合体から選ばれた1種以上の、平均粒子径0.1μm〜5μm程度の塩基性固体粒子を含み、その含有率は酸性臭吸着性樹脂被覆層領域の質量に対して1〜25質量%、好ましくは3〜15質量%で、酸性臭とは具体的に、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどである。〔酸化亜鉛/アルミナ(AlO)〕複合体は、水溶性亜鉛塩と、水溶性アルミニウム塩、または水溶性アルミン酸塩とを水媒体中で(加熱)複分解・熟成させることで得られ具体的に、塩化亜鉛と塩化アルミニウムとの複分解・熟成によって得ることができる。同様に〔酸化マグネシウム/アルミナ(AlO)〕複合体は、水溶性マグネシウム塩として、塩化マグネシウムを用いることで得られる。また糸条の一部に形成される塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域は、二酸化珪素、酸化チタン、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体、〔酸化チタン/アルミナ〕複合体から選ばれた1種以上の、平均粒子径0.1μm〜5μm程度の酸性固体粒子を含み、その含有率は塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域の質量に対して1〜25質量%、好ましくは3〜15質量%で、塩基性臭とは具体的に、アンモニア、トリメチルアミンなどである。〔二酸化珪素/アルミナ(AlO)〕複合体は、ケイ酸ナトリウム(水酸化ナトリウム存在下)と、水溶性アルミニウム塩、または水溶性アルミン酸塩とを水媒体中で(加熱)複分解・熟成することで得られ具体的に、ケイ酸ナトリウムと塩化アルミニウムとの反応・熟成によって得ることができる。〔酸化チタン/アルミナ(AlO)〕複合体は、具体的に、塩化チタンと塩化アルミニウムとの複分解・熟成によって得ることができる。
酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域の少なくとも一方、好ましくは双方が、ゼオライト粒子を含むことが、酸性臭吸着性促進、及び塩基性臭吸着性促進、さらにはシンナーやトルエンなどの有機溶剤、ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質臭などに対する吸着性も促進するので、より臭気成分全般(VOC含む)に対してバランス良く濃度を減少させることを可能とする。ゼオライトは天然及び合成ゼオライトの何れでも使用でき、平均粒子径1μm〜10μmのものが使用できる。ゼオライトはA型、X型、LSX型、L型、Y型、ベータ型、フェリライト型、モルデナイト型など、三次元骨格構造を有し、一般式M2/nO・NaO・AlO・2.5SiO・xHOで表される(一般式中のxは結晶水の数を表す整数で、Mは陽イオン、nは陽イオンの原子価を示す)。陽イオンは、アルカリ金属(Naイオン、Kイオン、Liイオン)、アルカリ土類金属(Caイオン、Mgイオン)、NHイオンなどである。
また酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域には必要に応じて、活性炭、添着活性炭、白竹炭、活性白土、ベントナイト、セピオライト、アルミノ珪酸金属塩、珪酸銅、シラス、シリカ−マグネシア、モレキュラーシーブ、電気石(トルマリン鉱石)、金属フタロシアニン錯体、金属フタロシアニン錯体テトラカルボン酸、(これらの錯体形成金属として、銅、鉄、コバルト、マンガンなど)などを各々の樹脂被覆層の質量に対して0.1〜5質量%程度併用していてもよく、さらにヒドラジン化合物、スチレン−マレイン酸加水分解物、シクロデキストリン、ポリフェノール類、テルペノイド類、フラボノイド類などを補助的に0.1〜3質量%程度併用してもよい。
また酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域には、スメクタイト系粘土鉱物、合成スメクタイト、セリサイト、フッ素雲母、及び膨張黒鉛から選ばれた1種以上の層状無機化合物を、各々の樹脂被覆層の質量に対して1〜15質量%、特に3〜10質量%含むことがシート状織物に対する不燃性付与の観点において好ましい。火災時の火炎熱(模擬的にはコーンカロリーメーター試験:ASTM-E1354)により層状無機化合物が体積膨張することで、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を体積膨張させ、その結果、糸条の径を太らせることで織物の空隙部を閉塞させ、空隙部からの火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出を遮断させることで建築基準法に準じる不燃性を備えるシート状織物を得る。
スメクタイト系粘土鉱物は、2:1型スメクタイトで、ケイ素と酸素からなる層(シリカ四面体層)が、アルミニウムと酸素からなる層(アルミニウム八面体層)を挟んだ、「シリカ四面体層/アルミニウム八面体層/シリカ四面体層」構造層を一単位とし、この構造層が積重したものである。2八面体型スメクタイトの具体例として、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイトなど、3八面体型スメクタイトの具体例として、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スティーブンサイトなどが挙げられる。合成スメクタイトは、シリカ四面体(四配位)層とアルミニウム八面体(六配位)層が交互に積重した構造で、シリカ/アルミが2:1の質量比率が好ましい。セリサイト(絹雲母)は白雲母の微細なもので平均粒子径1〜20μmのものである。またフッ素雲母はNa四珪素雲母を有機交換処理した平均粒子径1〜20μmのフッ素四珪素雲母が使用できる。また、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイトなど)の層間に四級アンモニウム化合物を置換変性したインターカレーション型の層状化合物なども使用できる。膨張黒鉛は、天然黒鉛を濃硫酸、硝酸、セレン酸などと、濃硝酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩などによる処理品が使用でき、これらはグラファイト状層構造を有する結晶質化合物のため、熱による発生ガスで膨張することで不燃性の炭化層を形成する。
酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域は、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを樹脂被覆層の質量に対して20〜50質量%、及びモリブデン化合物粒子を樹脂被覆層の質量に対して0.1〜5質量%含む軟質塩化ビニル樹脂組成物で構成されることが好ましい。これによって塩化ビニル樹脂とモリブデン化合物粒子の作用により燃焼炭化物を強固とする残滓層(塩素−モリブデン複合酸化物)を形成することで、織物の空隙部からの火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出などの遮断効果を長時間持続させることで建築基準法に準じる不燃性を備えるシート状織物とすることができる。また生活空間用途では、内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の疑いのあるフタル酸エステル系可塑剤を使用せず、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル化合物を含有することで、特に乳幼児の経口摂取や経気摂取、母体から胎児への間接摂取によるホルモン作用異常のリスクを回避することができる。シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた1種以上の化合物を含む。ジアルキルエステルにおいてアルキル基は個々に同一または異なって、炭素(C)数4〜13の脂肪族一価の基、例えば直鎖状アルキル基、分岐鎖状のアルキル基、脂環族基などであるが、具体的にシクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393)、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)が特に好ましい。これらはシクロヘキサン環に対するジカルボン酸ジアルキルエステルの結合位置が、オルト位(1,2−位)、メタ位(1,3−位)、パラ位(1,4−位)の3態様の何れであってもよい。モリブデン化合物粒子は、三酸化モリブデン、モリブデン酸、リンモリブデン酸、二硫化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、七モリブデン酸六アンモニウム、モリブデン酸二アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸炭酸カルシウムなどが挙げられ、特に塩素含有樹脂(塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリエチレン)などとの併用により、これら塩素含有樹脂の燃焼炭化物を強固とする残滓層(塩素−モリブデン複合酸化物)を形成する。
また酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域には難燃剤粒子を併用することができ、難燃剤粒子は、a).金属リン酸塩、金属有機リン酸塩、リン酸誘導体、ポリリン酸アンモニウム、及びポリリン酸アンモニウム誘導体(メラミン変性体など)などのリン原子含有化合物、b).(イソ)シアヌレート系化合物、(イソ)シアヌル酸系化合物、グアニジン系化合物(ジシアンジアミドなど)、尿素系化合物(ジメチロール尿素など)、及び、これらの誘導体化合物(例えばメラミンシアヌレート)などの窒素原子含有化合物、c).金属水酸化物(水酸化アルムニウムなど)、金属酸化物(酸化アンチモンなど)、金属炭酸塩化合物(塩基性炭酸マグネシウムなど)、金属硫酸塩化合物(硫酸バリウムなど)、ホウ酸化合物(ホウ酸亜鉛など)、及び無機系化合物複合体(ハイドロタルサイトなど)などの無機系化合物、d).臭素置換有機化合物、塩素置換有機化合物から選ばれた1種以上である。
特に酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、粒径0.03mm〜0.8mm程度の気泡痕を1〜25体積%、特に5〜15体積%程度含むことで見掛け表面積以上の実質的に有効な表面積を設けることで臭気分子との接触面積を増し、通気性とガス交換性を促す効果によって減臭(消臭)効果を著しく向上させると同時に、吸音効果を得ることができる。これらの気泡痕は連続気泡化することでガス交換性及び通気性に優れた構造、または部分的に連続気泡化したガス交換通気性の構成とするものである。これらの気泡痕は液状粘性体の熱可塑性樹脂組成物の機械攪拌による強制的な気泡巻込ムースの塗工と熱処理による気泡痕形成、液状粘性体の熱可塑性樹脂組成物(アルコール、トルエン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤含有、または水分)の塗工と熱処理蒸散による揮発痕形成、公知の化学発泡剤(アゾジカルボアミド、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、ベンゼンスルフォニルヒドラジド、p−トルエンスルフォニルヒドラジド、ジアゾアミノベンゼン、アゾビスイソブチロニトリルなど熱分解温度が180〜250℃のもの)を含有する熱可塑性樹脂組成物層を熱処理して化学発泡剤を強制的に熱分解させての揮発性ガス生成による気泡痕形成、砂糖粒や塩粒などの水溶性粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物層の水洗処理による砂糖粒や塩粒の溶出による空洞痕形成など、何れの方法によって形成された気泡痕であってもよい。
本発明の消臭性織物において、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域を最外層に有する糸条(A)及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を最外層に有する糸条(B)の芯糸は、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、バサルト繊維、炭素繊維などの無機マルチフィラメント、及びステンレス繊維などの金属マルチフィラメント、ポリpフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリpベンズアミド繊維、pフェニレン3,4オキシジフェニレンテレフタルアミド共重合繊維などのアラミド繊維、ポリpフェニレンベンゾイミダゾール繊維、ポリpフェニレンベンゾオキサゾール繊維、ポリpフェニレンベンズチアゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリスルホン繊維などの耐熱マルチフィラメントまたは短繊維紡績糸、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成マルチフィラメントまたは短繊維紡績糸、セルロースの水酸基を、ホウ酸エステル化、またはリン酸エステル化、またはケイ酸エステル化した不燃化綿、不燃化ケナフなどの短繊維紡績糸などが使用できる。これらの繊維は、撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などの薬剤処理を施した形態で用いてもよい。
芯糸はマルチフィラメント糸条が好ましく、フィラメント直径3〜10μm、繊度69〜2223dtex、特に138〜1112dtexのマルチフィラメント糸条で、フィラメント数50〜500本、特に100〜300本を集束して無撚糸、または撚糸に束ね、その断面形状を円形、楕円形、及び扁平(横長に潰れた楕円形)とする糸条であり、本発明の消臭性織物においては特に扁平楕円断面のマルチフィラメント糸条が好ましい。扁平楕円断面のマルチフィラメント糸条を芯糸に用いた樹脂被覆糸条(酸性臭吸着性樹脂被覆層領域及び、塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を有する)も同様に扁平楕円断面を有することが好ましい。この樹脂被覆糸条の扁平楕円断面における高さ:幅の比が3:4〜1:4、特に2:3〜2:5の扁平楕円であることが、得られる織物の表面積を大きくする効果により、臭気分子の吸着及び捕集効率を向上させると同時に織物の引裂強度を向上させる。またマルチフィラメント糸条はフィラメント間にルーズ隙間を含む嵩高糸であってもよく、これらはフィラメント同士が隙間を持って絡み合ったタスラン加工糸、インターレース加工糸、ウーリー加工糸などである。これら嵩高糸のように、繊維質で連続空間をもつ材料(表面積が大きい材料)に音が入射すると、音はその小さな空間内で乱反射を起し、フィラメントとの摩擦や抵抗、フィラメントの振動などによって、音エネルギーの一部が熱エネルギーとして消費され易くなる。
本発明の消臭性織物は、樹脂被覆された糸条を織編要素に含むシート状織物であって、樹脂被覆が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域により、その領域面積比3:2〜2:3、好ましくは4:3〜3:4、特に1:1で形成された製織交点を有する織物で、糸条断面の上(下)半分が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域で形成され、糸条の下(上)半分が塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域で形成されたものであることが好ましい。織編要素の例として、1)経糸条群及び緯糸条群(二軸織物)、または2)経糸条群及び左斜上・右斜上バイアス糸条群(三軸織物)、または3)経糸条群、緯糸条群、及び左斜上・右斜上バイアス糸条群(四軸織物)で、かつ前記織物が単層織物、二重織物、及び三重織物、から選ばれた何れか1種の態様である。これら織物において、糸条の織編配置は、同一領域面が同一方向に規則的配置されたもの、或いはランダム方向に無秩序配置されたものの何れの態様であってもよい。本発明の消臭性織物では樹脂被覆されていない糸条を織編要素に含む織物を基材として、その表裏面の全体に、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を形成した態様も、「樹脂被覆された糸条を織編要素に含むシート状織物で、樹脂被覆が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域とにより構成され、その領域面積比3:2〜2:3とするもの」であれば本発明の態様内に含まれる。例えば「酸性臭吸着性樹脂被覆を施した層(表または裏)/樹脂被覆されていない糸条を織編要素に含む単層織物/塩基性臭吸着性樹脂被覆を施した層(裏または表)」が例示できる。織編要素1)及び2)の織編交点の孔状隙間の総和を空隙率と定義した時の値は5%以下が好ましい。孔状隙間に音が入射すると、特定の周波数において共鳴振動が生じ、孔状隙間で空気が振動し、音エネルギーを減衰させるので、孔状隙間の孔径は直径0.05〜1.0mmの範囲で、好ましくは0.05〜0.5mmと特に小さく、孔状隙間数が(タテ8個×ヨコ8個)〜(タテ60個×ヨコ60個)/25.4mmの範囲で、特に(タテ12個×ヨコ12個)〜(タテ33個×ヨコ33個)/25.4mmをピークに吸音効果を高いものとする。この孔状隙間を抜ける空気量は、(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒、特に10〜50cc/cm2/秒が吸音効果の発現及び消臭効果発現のためのガス交換性に優れ好ましい。
単層織物は、平織物、2/2ななこ(バスケット)織物、2/2畝織物、綾織物:2/1綾織物、2/2綾織物、3/1斜文(四枚綾)、3/1破れ斜文(四枚綾)、3/2斜文(五枚綾)、4/1斜文(五枚綾)、5/1斜文(六枚綾)、4/2斜文(六枚綾)、1・3/1・1斜文(六枚綾)など、朱子織物:2飛び4/1朱子(五枚朱子)、3飛び4/1朱子(五枚朱子)、2飛び3/2朱子(五枚朱子)、3飛び3/2朱子(五枚朱子)など、及びこれらの変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物など、さらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、ラッセル編物などが使用でき、これらは質量0.2〜1.2kg/m、空隙率5%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒を満たすものが例示され、この通気度により吸音効果の発現及び消臭効果発現のためのガス交換性に優れる。
二重織物は、表経・裏経の経糸条及び表緯・裏緯の緯糸条を用いて上下2枚に重なり合った織物で、上部の織物が表経糸条と表緯糸条とで空隙率10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)を成し、下部の織物が裏経糸条と裏緯糸条とで空隙率10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)を成し、質量0.4〜2.4kg/m、共有空隙率5%以下(積重した織物に生じる孔状隙間の重なり部分の総和の占有率)、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒を満たすものが例示される。同様に表経・裏経の経糸条及び表斜・裏斜のバイアス糸条を用いて上下2枚に重なり合った織物で、上部の織物が表経糸条と表斜糸条とで空隙率10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)を成し、下部の織物が裏経糸条と裏斜糸条とで空隙率10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)を成し、質量0.4〜2.4kg/m、共有空隙率5%以下(積重した織物に生じる孔状隙間の重なり部分の総和の占有率)、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒を満たすものが例示される。通気度が5cc/cm2/秒未満だと臭気分子の吸着及び捕集効率を低くすると同時に吸音効果を悪くすることがある。共有空隙率は吸音膜材を水平に置き、これを垂直方向から観察したときに上部の織物の空隙部と下部の織物の空隙部とが互いに重なり合って、2枚の織物を貫通する共有空隙部の総和の単位面積当たりの占有率である。すなわち上部の織物の糸条が下部の織物の空隙部に重なって配置され、あるいは下部の織物の糸条が上部の織物の空隙部に重なって配置されることで共有空隙率は小さい値となり、重なり具合によっては見掛け0となる。経二重織物は1組の緯糸条に表経と裏経が組織して一重の織物の裏にも1つ余分の経糸条が織付いたもので表経と裏経の配列は1:1、2:1、3:1などである。緯二重織物は1組の経糸条に表緯と裏緯が組織して一重の織物に別の緯糸条が織付いたもので表緯と裏緯の配列は1:1、2:1、3:1などである。経緯二重織物は2枚の織物を同一織機で織り、その織糸条で上下2枚の織物(各々質量0.4〜1.2kg/m)を接結したものである。
同様に三重織物は、表経・中経・裏経の経糸条及び表緯・中緯・裏緯の緯糸条を用いて上中下の織物3枚が積重した織物で、上部織物、中部織物、下部織物、各々が、空隙10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)、かつ質量0.2〜1.0kg/mで成り、質量0.6〜3.0kg/m共有空隙率5%以下(積重した織物に生じる孔状隙間の重なり部分の総和の占有率)、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒を満たすもので、同様に経三重織物(1組の緯糸条に表経・中経・裏経が組織)、緯三重織物(1組の経糸条に表緯・中緯・裏緯が組織)、経緯三重織物:a)3枚の織物を同一織機で織り、その織糸条で下部織物から中部織物に接結し、中部織物から上部織物に接結したもの、b)上部織物から中部織物に接結し、中部織物から下部織物に接結したもの、c)上部織物から中部織物に接結し、下部織物から中部織物に接結したもの、d)上中下3枚の織物の耳部だけを接結したものが例示できる。通気度が5cc/cm2/秒未満だと臭気分子の吸着及び捕集効率を低くすると同時に吸音効果を悪くすることがある。
二重織物は具体的にフライシャットル織機、エアージェット織機、スルーザー織機、レピア織機、ウォータージェット織機などを用い、経糸条及び緯糸条からなる右上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する上部織物と、経糸条及び緯糸条からなる左上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する下部織物とを、下部織物の経糸条が所定本数おきに上部織物の緯糸条に浮くようにして接結点で繋ぎ合わせ、同時に下部織物の緯糸条が所定本数おきに上部織物の経糸条に浮くようにして接結点で繋ぎ合わせた二重織物で、上部織物と下部織物との接結点は1平方インチ面積当たり8〜50ヶ所設けることが好ましい。このような二重織物を用いた吸音膜材においては、織布を右上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する上部織物と、左上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する下部織物とからなる二重織物とすることで、上部織物と下部織物の斜文(綾)織の組織が交差してそれぞれの織物の空隙部同士が完全に重なることがないので共有空隙率5%以下を満たす。この二重織物は共有空隙率5%以下で、特に見掛け0%であっても通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒を満たすことができる。これは上部織物と下部織物との界面の隙間が通気部(消臭効果のためのガス交換作用、及び吸音効果に作用)として機能し、上部織物と下部織物との空隙部を立体的に連結する作用による。このような立体的な連続通気部は音響の拡散吸収に効果的に寄与する。また、経糸条と緯糸条との織交点は熱癒着により互いに固定されたものはシート状織物の形態安定性に優れ、特に織り交点に熱溶融固定が部分的なもの、熱癒着が軽微なものはシート状織物をより柔軟とする。織交点の熱癒着による固定は、二重織物全体に及んでいてもよく、また上下左右に等間隔、もしくはランダムな部分的な織り交点の熱癒着であってもよい。
同様に三重織物では、各織物の斜文線が隣接する織物の斜文線と交差するものは各織物の斜文線が隣接する織物の斜文線と交差するため、それぞれの織物の空隙部同士が完全に重なることがないので共有空隙率5%以下を満たす。このような三重織物は共有空隙率5%以下で、特に見掛け0%であっても通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒を満たすことができる。これは上部織物と中部織物の界面、中部織物と下部織物との界面の2つの界面の隙間が通気部(消臭効果のためのガス交換作用、及び吸音効果に作用する)として機能し、上部織物、中部織物、下部織物の各々の空隙部を立体的に連結する作用による。このような立体的な連続通気部は消臭効果のためのガス交換作用と、音響の拡散吸収に効果的に寄与する。また二重織物、及び三重織物構は、右上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する上部織物と、左上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する下部織物とからなる二重織物(M=2〜5の整数,N=1)または(M=1,N=2〜5の整数)、また、右上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する上部織物及び下部織物と、左上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する中部織物とからなる三重織物(M=2〜5の整数,N=1)または(M=1,N=2〜5の整数)などである。同様に本発明の吸音膜材は四重織物、五重織物などであっても相応の消臭効果及び吸音効果を得る。
同様に、平織物、模紗織、五枚朱子織(2飛び4/1朱子、3飛び4/1朱子、2飛び3/2朱子、3飛び3/2朱子)による重ね織物の場合は織物(上部/下部、または上部/中部/下部)の組織ズレ部分が互いに同一部分に重ならないように織組織の組織ズレ部分を表組織と裏組織で相反する場所に上下左右に1完全組織ずらした織物とする。真正面からは隙間がずれているため共有空隙率5%以下を満たすが、特に見掛け0%であっても通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒を満たすことができる。これは織物(上部/下部、または上部/中部/下部)の1つまたは2つの界面の隙間が通気部(消臭効果のためのガス交換作用、及び吸音効果に作用する)として機能し、各々の織物の空隙部を立体的に連結する作用による。このような立体的な連続通気部は消臭効果のためのガス交換作用と、音響の拡散吸収に効果的に寄与する。また、経糸条及び左斜上・右斜上バイアス糸条を用いた織物2枚または3枚が重なり合った三軸重ね織物で、各部の織物の空隙率10%以下で成り、質量0.8〜3.0kg/m、共有空隙率5%以下、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒を満たす三軸平織物、または三軸バスケット織物または三軸模紗織物など、さらに経糸条、緯糸条及び左斜上・右斜上バイアス糸条を用いた織物を2枚または3枚が重なり合った四軸重ね織物で、各部の織物の空隙率10%以下で成り、質量0.8〜3.0kg/m、共有空隙率5%以下、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒を満たす四軸平織物、または四軸バスケット織物または四軸模紗織物などであってもよい。
上述した織物個々において糸条同士の織交点は熱癒着により互いに固定されたものはシート状織物の形態安定性に優れ、織り交点に熱溶融固定が一切なされないものや熱癒着が軽微なものは消臭性織物のフレキシブル性をより柔軟とする。織交点の熱癒着による固定は、織物全体に及んでいてもよく、また上下左右に等間隔、もしくはランダムな部分的な織り交点の熱癒着であってもよい。熱癒着は、樹脂被覆層の軟化温度以上の加熱を施し、製織交点を溶融癒着させる手段、例えば150〜300℃の熱風セット、150〜230℃の熱ロールによる織物全面ニップ、または部分的ニップ、熱板による織物全面プレス、または部分的プレスなどが例示できる。
本発明の消臭性織物の施工は、屋内競技場、体育館、屋内プール、イベントホール、公会堂、冠婚葬祭式場、駅舎、空港、ショッピングモールなどの天井に設置される天井面積構成膜材(膜天井)、天井付帯物(空中膜)、懸垂幕、横断幕として、さらに、食品工場、化学品工場、畜産施設、水産施設、ゴミ処理施設などにおける、空間仕切り、壁掛け、敷物、空中膜の施工として、幅1m〜3mの任意、長さ1m〜50mの任意の規格シートを自在に組み合わせ、織物面側を音響の入射面として装着する。特に1).1枚が幅1m〜3m程度、長さ1m〜5m程度の織物は、四角形、長方形、三角形、菱形、などの形態でアルミフレーム(押材)により織物全周を固定したパネル同士の組み合わせで、天井梁システムに固定することや、吊り下げることでフラット天井や幾何学立体天井に使用でき、2).また1枚が幅1m〜3m程度、長さ1m〜10m程度の長尺織物は、幅方向の2辺を天井梁やアルミ押材に固定し、張力を掛けずに織物を自重で弛んだ半円弧状態に懸垂し、多数の織物で半円弧の並びを表現したデザインアート天井に使用でき、3).また1枚が幅1m〜3m程度、長さ1m〜5m程度の織物は、四角形、長方形、三角形、菱形、などの形態で織物の外周のポイント毎にハトメ、ターンバックル、取付金具、ジョイントナットなどを設け、ロープやバネを用いて天井梁システムにサスペンジョン固定することで張力をコントロールして得たドレープを利用するデザインアート天井に使用することができる。4). また、家屋、店舗、オフィスビル、商業施設、各種公共施設などの居住空間においては、間仕切として目隠し効果を目的とする衝立使用ができる。また、本発明の消臭性織物は幅(緯糸方向)が100cm以下、長さ方向(経糸方向)100cm以下のサイズで用いることもでき、例えば、トイレ壁掛けタペストリー、トイレ・浴室の敷物、下駄箱や押入れの敷物、ペット用ケージ内敷物、介護ベッド用敷物などの形態で使用でき、A4サイズ以下での使用例としては靴の中敷(下駄箱収納時)も可能である。本発明の消臭性織物は任意の着色が可能であり、公知の印刷技術の応用により、メッシュシート片面または両面に写真画像・イラストレーション・文字などをプリントして、装飾効果や広告効果を附帯させることもできる。
本発明の消臭性織物は使用環境による程度差はあるが、1ヶ月程度経過したら下記処理のメンテナンスの何れか、または複数の処理を施すことで、本発明の消臭性織物の臭気吸着性能を、初期の50%以上に回復させることができ、定期的なメンテナンスを行うことで、消臭性織物として繰り返しの使用が可能である。1)消臭性織物全体に対して、水道水、工業用水、降雨、などによる水洗い・浸漬を10〜25℃で10〜60分間、または40〜80℃の温水による洗い・浸漬を5〜30分間行い、吸着した水溶性の臭気成分を溶出除去する。2)消臭性織物全体に対して、電気ヒーターによる直接加熱または熱風加熱を50℃以上100℃以内で10〜60分間行い、吸着した臭気成分を放出除去する。3)晴天時に屋外で、吊るし、2つ折り鞍掛け、地面置き、の何れかの状態で天日干しを1〜6時間行い、太陽光熱と紫外線による作用で吸着した臭気成分を放出除去する。特に、1)処理後に2)の処理を連続するメンテナンス、または1)処理後に3)の処理を連続するメンテナンスが回復効率的に優れ好ましい。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、試験シートの減臭性・消臭性、及び臭気吸着性能の回復効果は下記の試験方法により測定し、評価した。
〈減臭性・消臭性〉
容積5LのTedlar(登録商標)バッグを4個用意し、各々のバッグに濃度10ppm
に調整した個々の化学物質ガス、アンモニア、イソ吉草酸、硫化水素、トルエンを
各々3L封入し、10cm×10cmサイズの試験シートを、試験シートの表裏面
ともバッグ内壁に触れないようにアンモニアバッグ内に固定し、60分後のアンモ
ニアガス濃度を測定し、この試験シートを次にイソ吉草酸バッグ内に固定し60分
後のイソ吉草酸ガス濃度を測定し、この試験シートを次に硫化水素バッグ内に固定
し、60分後の硫化水素ガス濃度を測定し、この試験シートを次にトルエンバッグ
内に固定し、60分後のトルエンガス濃度を測定した。
〈臭気吸着性能の回復効果〉
2−1)10cm×10cmサイズの試験シートを容積5LのTedlar(登録商標)
バッグに入れ、試験シートの表裏面ともバッグ内壁に触れないようバッグ内に固定
し、濃度10ppmに調整したアンモニアガスを3L封入したバッグ内環境に60分
間晒し、10分毎にアンモニアガス濃度を検知管で測定し1回目の減臭曲線を描い
た。取出した試験シートを新たなTedlar (登録商標)バッグに入れ、1回目の試験
同様濃度10ppmに調整したアンモニアガスを3L封入したバッグ内環境に120
分間晒し、10分、30分、60分、120分毎にアンモニアガス濃度を検知管で
測定し2回目の減臭曲線を描いた。同様に3回目の試験を繰り返し3回目の減臭曲
線を描いた。
2−2)3回目の試験を終えた試験シートを5Lの水道水を入れたバット内に浸漬
した状態で20℃×60分間静置し水洗処理した。次に取出した試験シートを80
℃設定のギアーオーブン(電気ヒーター)内に吊るして30分間の熱風加熱処理を
行った。この水洗〜加熱処理を行った試験シートを、再度容積5LのTedlar(登録
商標)バッグに入れ、試験シートの表裏面ともバッグ内壁に触れないようバッグ内
に固定し、濃度10ppmに調整したアンモニアガスを3L封入したバッグ内環境に
120分間晒し、10分、30分、60分、120分毎にアンモニアガス濃度を検
知管で測定し4回目(再生処理後)の減臭曲線を描き、1〜3回目の減臭曲線と比
較した。
2−3)上記1)試験と同じ要領で、連続で4種のガスに対しての減臭試験を行い
、回復の処理を施した後(2−2処理後)の減臭曲線と、初回の減臭曲線との比較
を行った。
〈吸音率〉
織物面側を音響の入射面として、JIS A1405(垂直入射法)によるNoise Reduction Coefficient(NRC値)を250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hzの各吸音率の算術平均値を求めた。
〈通気度〉
JIS L1096 8.27.1 A法に定めるフラジール形法により求めた。
[実施例1]
酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を有する糸条
無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条(フィラメント径9μm、400本フィラメント:75番手:687dtex)の扁平糸を芯糸とし、コーティングダイスに芯通しした押出成型機を用い、下記配合1及び配合2の軟質塩化ビニル系樹脂配合組成物による着色ペレットを別個ホットメルト状態(190℃)で二色コートダイスノズル孔から二色(上半分が配合1、下半分が配合2)を1:1の体積比で押出すと同時に、樹脂被覆芯糸を引き取り冷却することで、上半分が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域(配合1:ピンク)、下半分が塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域(配合2:ライトブルー)とする上下の被覆領域面積率約1:1の樹脂被覆糸条を得た。
1)〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂組成物(酸性臭吸着性樹脂被覆層領域用)
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 50質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm) 15質量部
合成ゼオライト(平均粒子径2μm) 15質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 4質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm) 10質量部
モリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子) 5質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
キナクリドンレッド(赤顔料) 1質量部
2)〔配合2〕軟質塩化ビニル樹脂組成物(塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域用)
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 50質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm) 15質量部
合成ゼオライト(平均粒子径2μm) 15質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 4質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm) 10質量部
モリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子) 5質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
フタロシアニンブルー(青顔料) 1質量部
3)シート状織物1
酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を有する糸条を経糸条群及び緯糸条群として、各々2本揃とする2/2ななこ(バスケット)織物による単層織物で、経糸群は1インチ間28本の織密度、また緯糸群は1インチ間30本の織密度とする織物を得た。次にこの織物を200℃で2分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱癒着して接着して織り組織が固定された、空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量860g/m、両面とも外観がピンクとライトブルーの混在の2/2ななこ織柄の〔シート状織物1〕を得た。
[実施例2]
〈シート状織物(2)〉
実施例1の配合1に用いた〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部を〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部に置換え(配合3)、同様に配合2に用いた〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部を〔酸化チタン/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部に置換えた(配合4)以外は実施例1と同様にして、実施例1と同規格の〔シート状織物2〕(空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量860g/m)を得た。
[実施例3]
〈シート状織物(3)〉
実施例1の配合1に用いた〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部を酸化亜鉛(平均粒子径1μm)15質量部に置換え(配合5)、同様に配合2に用いた〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部を二酸化珪素(平均粒子径1μm)15質量部に置換えた(配合6)以外は実施例1と同様にして、実施例1と同規格の〔シート状織物3〕(空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量860g/m)を得た。
[実施例4]
〈シート状織物(4)〉
実施例1の配合1に用いた〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部を酸化亜鉛(平均粒子径1μm)7.5質量部、及びアルミナ(平均粒子径1μm)7.5質量部に置換え(配合7)、同様に配合2に用いた〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部を二酸化珪素(平均粒子径1μm)7.5質量部、及びアルミナ(平均粒子径1μm)7.5質量部に置換えた(配合8)以外は実施例1と同様にして、実施例1と同規格の〔シート状織物4〕(空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量860g/m)を得た。
[実施例5]
〈シート状織物(5)〉
実施例1で用いた酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を有する糸条を用い、経糸群の打ち込み密度42本/インチ、緯糸群の打ち込み密度36本/インチである二重織物を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、次にこの織物を200℃で2分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、二重織物の織り交点を熱癒着して接着して織り組織が固定された、空隙率1.2%、通気度16cc/cm2/秒、質量1160g/m、両面とも外観がピンクとライトブルーの混在の〔シート状織物5〕を得た。
〔実施例6〕
〈シート状織物(6)〉
実施例1で用いた酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を有する糸条を用い、経糸群の打ち込み密度28本/インチ、左斜上・右斜上バイアス糸群の打ち込み密度20本/インチである上層三軸織物と、経糸群の打ち込み密度28本/インチ、左斜上・右斜上バイアス糸群の打ち込み密度20本/インチである下層三軸織物とを、下層三軸織物の糸条が5本跨ぎの結線で上層三軸織物の糸条に結接し、また下層三軸織物の糸条が5本跨ぎの結線で上層三軸織物の糸条に結接して製織して得た三軸二重織物に200℃×2分間の熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、三軸二重織物の織り交点を熱癒着して接着して織り組織が固定された、共有空隙率0.5%、通気度6cc/cm2/秒、質量2020g/m、両面とも外観がピンクとライトブルーの混在の〔シート状織物6〕を得た。
〔実施例7〕
実施例1で用いた樹脂被覆された糸条の芯糸(無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条)をポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(アラミド繊維:フィラメント径12μm、843dtex)の扁平糸に変更した以外は実施例1と同様として、空隙率3%、通気度55cc/cm2/秒、質量825g/m、両面とも外観がピンクとライトブルーの混在の2/2ななこ織柄の〔シート状織物7〕を得た。
〔実施例8〕
〈シート状織物(8)〉
実施例1で用いた樹脂被覆された糸条の芯糸(無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条)を炭素繊維(フィラメント径10μm、660dtex)の扁平糸に変更した以外は実施例1と同様として、空隙率3.5%、通気度65cc/cm2/秒、質量810g/m、両面とも外観がピンクとライトブルーの混在の2/2ななこ織柄の〔シート状織物7〕を得た。
〔実施例9〕
ガラス織物(樹脂被覆がまだ成されていない織物基材)
無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条(フィラメント径9μm、400本フィラメント:75番手:687dtex)の扁平糸を経糸条群及び緯糸条群として、各々2本揃とする2/2ななこ(バスケット)織物による単層織物で、経糸群は1インチ間30本の織密度、また緯糸群は1インチ間32本の織密度とするガラス織物(1)を得た。
酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を有する織物
ガラス織物(1)の片面に下記配合9(ピンク)の軟質塩化ビニル系樹脂ペースト配合組成物による酸性臭吸着性樹脂被覆層領域を形成し、さらにもう片面に下記配合10(ライトブルー)の軟質塩化ビニル系樹脂ペースト配合組成物による塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を形成し、この織物を200℃で2分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱癒着して接着して織り組織が固定された、空隙率0.5%、通気度5cc/cm2/秒、質量930g/m、上下の被覆領域面積率約1:1、表面外観がピンク、裏面外観がライトブルーの2/2ななこ織柄の〔シート状織物9〕を得た。
1)〔配合9〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物(酸性臭吸着性樹脂被覆層領域用)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 65質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm) 15質量部
合成ゼオライト(平均粒子径2μm) 15質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 4質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm) 10質量部
モリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子) 5質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
キナクリドンレッド(赤顔料) 1質量部
2)〔配合10〕軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物(塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域用)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 65質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm) 15質量部
合成ゼオライト(平均粒子径2μm) 15質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 4質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm) 10質量部
モリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子) 5質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
フタロシアニンブルー(青顔料) 1質量部
〔実施例10〕
〈シート状織物(2)〉
実施例9の配合9に用いた〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部を〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部に置換え(配合11)、同様に配合10に用いた〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部を〔酸化チタン/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm)15質量部に置換えた(配合12)以外は実施例9と同様にして、実施例9と同規格の〔シート状織物10〕(空隙率0.5%、通気度5cc/cm2/秒、質量930g/m)を得た。
実施例1〜8のシート状織物1〜8は、樹脂被覆された糸条を織編要素に含むシート状織物であって、樹脂被覆が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域とで構成され、その領域面積比を約1:1とし、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域が塩基性固体粒子を含み、かつ塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が酸性固体粒子を含む、バスケット(ななこ)織物、二重織物、三軸二重織物などで、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域には、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体(実施例1,5〜9)、〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体(実施例2,10)、酸化亜鉛(実施例3)、酸化亜鉛とアルミナの混合物(実施例4)
の塩基性固体粒子を含み、塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域には、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体(実施例1,5〜9)、〔酸化チタン/アルミナ〕複合体(実施例2,10)、酸化珪素(実施例3)、酸化珪素とアルミナの混合物(実施例4)の酸性固体粒子を含むようにすることで、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭(消臭)効果を有する領域と、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭(消臭)効果を有する領域とを併備し、各々の領域が酸性悪臭と塩基性悪臭とを選択的に、互いに阻害し合うことなく不活性化する役割を担うことができ、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの塩基性固体粒子群と、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体、〔酸化チタン/アルミナ〕複合体、二酸化珪素、酸化チタンなどの酸性固体粒子群とが別個の領域に分かれて存在し、それらが同糸条(織物)に共存することで、酸性悪臭と塩基性悪臭の同時減臭(消臭)を阻害し合うこと無く、産業環境における悪臭成分、及びVOC成分、産業環境における臭気成分全般に対してバランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に低減する消臭効果を発現可能とした。また両者の樹脂コーティング糸条双方にゼオライト粒子を含有することでシンナーやトルエンなどの有機溶剤、ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質臭などに対して吸着性を有すること、さらに減臭効果が飽和状態となっても、(熱)水洗、ヒーター加熱、及び天日干し、の単独、または併用の処理によって臭気吸着率を初期の50%以上に容易に回復できることなどの特徴が確認された。また通気度(JIS L1096:フラジール法)0.5〜65cc/cm2/秒の空隙部は通気によるガス交換で消臭効果をより高いのもとするのみならず、この通気度範囲において優れた吸音(反響防止)効果を発現した。
[比較例1]
実施例1の樹脂被覆糸条の製造において、配合1及び配合2の軟質塩化ビニル系樹脂配合組成物による着色ペレットを別個ホットメルト状態(190℃)で二色コートダイスノズル孔から二色(上半分が配合1、下半分が配合2)を5:1の体積比で押出し、配合1による上側が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域(ピンク)、下側が塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域(ライトブルー)とする上下の被覆領域面積率約5:1の樹脂被覆糸条に変更した以外は実施例1と同様として、空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量860g/m、両面とも外観がピンクとライトブルーの混在(ピンク色部:ブルー色部の比が約5:1)の2/2ななこ織柄の〔シート状織物11〕を得た。シート状織物11では塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を酸性臭吸着性樹脂被覆層領域の20%としたことで経時的に、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭効果が失効し、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭効果のみが有効持続するという、実施例1のシート状織物1に比較して生活悪臭軽減効果のバランスに劣るものとなった。
[比較例2]
実施例1の樹脂被覆糸条の製造において、配合1及び配合2の軟質塩化ビニル系樹脂配合組成物による着色ペレットを別個ホットメルト状態(190℃)で二色コートダイスノズル孔から二色(上半分が配合1、下半分が配合2)を1:5の体積比で押出し、配合1による上側が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域(ピンク)、下側が塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域(ライトブルー)とする上下の被覆領域面積率約1:5の樹脂被覆糸条に変更した以外は実施例1と同様として、空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量860g/m、両面とも外観がピンクとライトブルーの混在(ピンク色部:ブルー色部の比が約1:5)の2/2ななこ織柄の〔シート状織物12〕を得た。シート状織物12では酸性臭吸着性樹脂被覆層領域を塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域の20%としたことで経時的に、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭効果が失効し、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭効果のみが有効持続するという、実施例1のシート状織物1に比較して生活悪臭軽減効果のバランスに劣るものとなった。
[比較例3]
実施例1の樹脂被覆糸条において、酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域を統合し、新たに臭気吸着性樹脂被覆層とした以外は実施例1と同様とし、空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量860g/m、外観が白色の2/2ななこ織柄の〔シート状織物13〕を得た。シート状織物13は、樹脂被覆層の中に酸性臭吸着性物質(〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体)と塩基性臭吸着性物質(〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体)が混在することによって、アンモニアのような塩基性悪臭を先に吸着すると、次にイソ吉草酸のような酸性悪臭の吸着能を阻害することで、実施例1と同等の減臭効果が得られず、同様にイソ吉草酸のような酸性悪臭を先に吸着すると、次にアンモニアのような塩基性悪臭の吸着能を阻害することで、実施例1と同等の減臭効果を得ることができないなど、生活臭全般に対する減臭効果や消臭効果が不十分なものであった。
〔配合13〕臭気吸着性樹脂被覆層組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 55質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm) 15質量部
〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体(平均粒子径1μm) 15質量部
合成ゼオライト(平均粒子径5μm) 10質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 4質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm) 10質量部
モリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子) 5質量部
酸化チタン(白顔料) 3質量部
本発明の消臭性織物は、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭(消臭)効果を有する酸性臭吸着性樹脂被覆層領域と、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭(消臭)効果を有する塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域とを同一糸条に配備することにより、各々の領域が酸性悪臭と塩基性悪臭とを選択的に、互いに阻害し合うことなく不活性化する役割を担うことができ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、及び〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体などの塩基性固体粒子群と、二酸化珪素、酸化チタン、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体、及び〔酸化チタン/アルミナ〕複合体などの酸性固体粒子群とが別個の領域に分かれて存在し、それらが織物内で共存することで、酸性悪臭と塩基性悪臭の同時減臭(消臭)を阻害し合うという従来問題を解決し、産業環境における悪臭成分、及びVOC成分、産業環境における臭気成分全般に対してバランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に低減する消臭効果を発現可能とする。特に通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒の空隙部によりガス交換を促すことで消臭効果を効率化するのみならず、この通気度範囲において吸音(反響防止)効果を発現するので、屋内競技場施設、体育館、屋内プール、イベントホール、公会堂、冠婚葬祭式場、駅舎、空港、ショッピングモールなどの天井に設置される天井面積構成膜材(膜天井)、天井付帯物(空中膜)、懸垂幕、横断幕として、また食品工場、化学品工場、畜産農業施設、水産施設、ゴミ処理施設などにおける、空間仕切り、壁掛け、敷物、空中膜として、さらに住居関連では日除けテント、ブラインド、タペストリー、押入・下駄箱用、トイレマット・タペストリー、キッチンマットなどに適して用いることができる。上記用途において、本発明の消臭性織物には写真や画像・イラストレーション・文字などのデザインや広告効果を附帯させることもできるので産業上の利用に極めて有用である。
1:消臭性織物
1−1:酸性臭吸着性樹脂被覆層領域
1−2:塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域

Claims (8)

  1. 樹脂被覆された糸条を織編要素に含むシート状織物であって、前記樹脂被覆が酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域とで構成され、その領域面積比を3:2〜2:3とし、前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、〔酸化亜鉛/アルミナ〕複合体、及び〔酸化マグネシウム/アルミナ〕複合体から選ばれた1種以上の塩基性固体粒子を含み、かつ前記塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、二酸化珪素、酸化チタン、〔二酸化珪素/アルミナ〕複合体、及び〔酸化チタン/アルミナ〕複合体から選ばれた1種以上の酸性固体粒子を含むことを特徴とする消臭性織物。
  2. 前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域の少なくとも一方が、ゼオライト粒子を含む請求項1に記載の消臭性織物。
  3. 前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、さらにスメクタイト系粘土鉱物、合成スメクタイト、セリサイト、フッ素雲母、及び膨張黒鉛から選ばれた1種以上の層状無機化合物を含む請求項1または2に記載の消臭性織物。
  4. 前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル及びモリブデン化合物粒子を含む軟質塩化ビニル樹脂組成物で構成される請求項1〜3の何れか1項に記載の消臭性織物。
  5. 前記酸性臭吸着性樹脂被覆層領域、及び塩基性臭吸着性樹脂被覆層領域が、気泡痕を1〜25体積%含む請求項1〜4の何れか1項に記載の消臭性織物。
  6. 前記織編要素が、1)経糸条群及び緯糸条群、または2)経糸条群及び左斜上・右斜上バイアス糸条群で、または3)経糸条群、緯糸条群、及び左斜上・右斜上バイアス糸条群で、かつ前記シート状織物が単層織物、二重織物、及び三重織物、から選ばれた何れか1種である請求項1〜5の何れか1項に記載の消臭性織物。
  7. 前記織編要素の製織交点が熱融着している請求項6に記載の消臭性織物。
  8. 前記シート状織物の通気度(JIS L1096:フラジール法)5〜100cc/cm2/秒であり、吸音性を有する請求項1〜7の何れか1項に記載の消臭性織物。
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