JP6585944B2 - 吸音膜材 - Google Patents

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本発明は屋内競技場、体育館、屋内プール、イベントホール、公会堂、冠婚葬祭式場、駅舎、空港、ショッピングモールなどの天井に設置される天井面積構成膜材(膜天井)兼吸音膜材、または天井付帯物(空中膜)として建築基準法に準じる不燃性を具備し、膜材強度に優れることは勿論、震災に備え万が一、天井が崩落した場合にも深刻な人的被害を生じる可能性の低い軽量性とフレキシブル性とを有し、特に反響抑止及び吸音効果に優れ、天井用途以外に、間仕切り、ブラインド、日除けテントなどにも応用可能な吸音性の膜材に関する。
特許文献1に音波吸収を可能とする繊維撚物として、被覆された糸を織ることによって形成され、音波を捕捉できる開口部を有する透かし編み繊維撚物が開示され、開口部として「平行」開口部と「交差」開口部の、形状と角度方向を互いに異にする2種類の開口部を具備することで、入射の方向や角度が様々な音波の吸収に効果的としている。しかし特許文献1には「平行」開口部及び「交差」開口部の具体的な形状、サイズ、深さ、分布密度、角度などは記載されておらず、公知の2/2斜子織が例示されているのみである。また、特許文献1には繊維撚物の用途や用法の開示もないが、日本国内で用いる建築材料には消防法に定める防炎性、もしくは建築基準法に準じる不燃性(ASTM-E1354:コーンカロリーメーター燃焼試験法合格)を必要とするものが多い。しかし、従って特許文献1の繊維撚物では多数の開口部を有することで、火災時に炎や煙が漏れ抜け易く、避難誘導の安全性確保が出来ない問題を有している。現在国内では軽量性とフレキシブル性とを有する天井材用の膜材料で、吸音効果を有し、しかも不燃性の織物が求められている。
特表2014−518338号公報
本発明は、建築物の天井に設置される天井面積構成膜材(膜天井)兼吸音膜材、または天井付帯物(空中膜)として建築基準法に準じる不燃性を具備し、震災に備え万が一、天井が崩落した場合にも深刻な人的被害を生じる可能性の低い軽量性とフレキシブル性とを有し、特に反響抑止及び吸音効果に優れ、さらに照明や映像投影による演出も可能とすることで、屋内競技場、体育館、屋内プール、イベントホール、公会堂、冠婚葬祭式場、駅舎、空港、ショッピングモールなどの膜天井構築用、光天井膜構築用に使用でき、さらには間仕切り、ブラインド、日除けテントなどにも応用可能とする不燃性の吸音膜材の提供を課題とする。
上記課題を解決するために、樹脂コーティング糸条(A)及び樹脂コーティング糸条(B)を織編要素に含む空隙率5%以下の織物において、樹脂コーティング糸条(A)の比重を樹脂コーティング糸条(B)の比重よりも大きいものとし、かつ両者糸条の占有体積比(A):(B)を特定範囲とすること、特に単層織物、または二重織物、または三重織物の態様とすること、更に樹脂コーティング糸条の断面を扁平とすること、更に樹脂コーティング糸条を熱膨張性のものとすることで、得られた天井面積構成膜材(膜天井)、または天井面積構成部材付帯物としての織物膜材が、膜天井として十分な強度を有し、震災に備え万が一、天井が崩落した場合にも深刻な人的被害を生じる可能性の低い軽量性とフレキシブル性とを有し、さらに照明や映像投影による演出効果、反響抑止及び吸音効果に優れた膜材が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の吸音膜材は、樹脂コーティング糸条(A)及び樹脂コーティング糸条(B)を用いて製織された空隙率5%以下の織物からなる吸音膜材であって、前記樹脂コーティング糸条(A)及び樹脂コーティング糸条(B)が、各々マルチフィラメント糸条と樹脂被覆層とで構成されたもので、前記樹脂コーティング糸条(A)の比重が前記樹脂コーティング糸条(B)の比重よりも0.25以上大きく、かつ前記織物に対する糸条(A):(B)の占有体積比が2:1〜1:2であること好ましい。互いに異なる比重を有する糸条を特定の占有体積比率で用いることによって製織された織物には織目単位で異なる比重の糸条が露出したり、隠れたり立体交差することで本発明の吸音膜材全面に音響吸収性の異なる織目単位、すなわち樹脂コーティング糸条(A)部分と樹脂コーティング糸条(B)部分とがランダムまたは規則的に点在する微小単位の構成において、樹脂コーティング糸条(A)と樹脂コーティング糸条(B)との対比では、樹脂コーティング糸条(B)は樹脂コーティング糸条(A)よりも高い周波数領域の音を吸収し、樹脂コーティング糸条(A)は樹脂コーティング糸条(B)よりも低い周波数領域の音を吸収することで、これらの糸条(A)と糸条(B)との比重差が大きいほど相乗効果を高いものとして、より広い周波数の音に対する優れた吸音効果を発現する。本発明において、樹脂コーティング糸条(A)と樹脂コーティング糸条(B)は、互いの比重差に応じて共通する周波数領域での吸音効果を有していてもよい。例えば比重差が小さいほど共通する周波数領域が増大し、比重差が大きいほど共通する周波数領域が減少する。従って、本発明の吸音膜材の効果をより高いものとするには、樹脂コーティング糸条(A)と樹脂コーティング糸条(B)の、互いの吸音周波数領域を異にするほど好ましいが、これに限るものではない。また、樹脂コーティング糸条を含むことによって膜天井としての十分な強度、引裂強度、軽量性、フレキシブル性を兼備するものとする。
本発明の吸音膜材は、前記織編要素が、1)経糸条群及び緯糸条群、または2)経糸条群及び左斜上・右斜上バイアス糸条群で、かつ前記織物が単層織物、二重織物、及び三重織物、から選ばれた何れか1種であることが好ましい。互いに異なる比重を有する糸条によって製織されたこれら織物には織目単位で異なる比重の糸条が露出したり、隠れたり複雑に立体交差することで本発明の吸音膜材全面に音響吸収性の異なる織目単位(ランダム配置、または規則的配置)が複雑に点在することによって、特に樹脂コーティング糸条(B)は樹脂コーティング糸条(A)よりも高い周波数領域の音を吸収し、樹脂コーティング糸条(A)は樹脂コーティング糸条(B)よりも低い周波数領域の音を吸収することで、これらの糸条(A)と糸条(B)との比重差が大きいほど、より広い周波数の音に対しての優れた吸音効果を発現すると同時に、膜天井としての十分な強度、軽量性、フレキシブル性を兼備するものとする。
本発明の吸音膜材は、前記樹脂コーティング糸条(A)、及び前記樹脂コーティング糸条(B)の少なくとも一方が扁平楕円断面を有し、その扁平楕円断面における高さ:幅の比が3:4〜1:4であることが好ましい。これによって吸音効果をより向上することができる。
本発明の吸音膜材は、前記樹脂コーティング糸条(A)、及び前記樹脂コーティング糸条(B)の少なくとも一方が、マルチフィラメント糸条と樹脂被覆層とで構成され、前記樹脂被覆層が、熱膨張性を有し、熱膨張後の前記空隙率を1%以下に閉塞することが好ましい。これによって吸音効果を向上させると同時に、火災による火炎熱(模擬的にはコーンカロリーメーター試験(ASTM-E1354)により吸音膜材に50kW/mの輻射熱を照射した時)で樹脂コーティング糸条の被覆部分が体積膨張して、織物の目詰まりを促し、吸音膜材の空隙率を0〜1%に閉塞する作用で火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出を遮断することで建築基準法に準じる不燃性を具備する吸音膜材とする。
本発明の吸音膜材は、前記樹脂被覆層が、塩化ビニル系樹脂、層状無機化合物、及びモリブデン化合物粒子を主体に含むことが好ましい。層状無機化合物を含むことによって吸音効果を向上させると同時に、火災による火炎熱(模擬的にはコーンカロリーメーター試験(ASTM-E1354)により吸音膜材に50kW/mの輻射熱を照射した時)で樹脂コーティング糸条の被覆部分が体積膨張して、織物の目詰まりを促し、吸音膜材の空隙率を0〜1%に閉塞する作用で火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出を遮断し、モリブデン化合物粒子の作用で燃焼炭化物を強固とする残滓層(塩素―モリブデン複合酸化物)を形成することで、火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出などの遮断を長時間持続させることで建築基準法に準じる不燃性を具備する吸音膜材とする。
本発明の吸音膜材は、前記織物の片面に密度0.35〜0.75g/cmの気泡含有樹脂層が形成されて織物組織内に前記気泡含有樹脂層の一部が浸入し、その深さが前記織物の厚さに対して1〜35%であることが好ましい。これによってより吸音性を向上させることができる。
本発明の吸音膜材は、前記気泡含有樹脂層が、塩化ビニル系樹脂、層状無機化合物、及びモリブデン化合物粒子を主体に含むことが好ましい。これによって吸音効果を向上させると同時に、火災時の火炎熱により層状無機化合物が体積膨張することで火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出を遮断し、モリブデン化合物粒子の作用で燃焼炭化物を強固とする残滓層(塩素―モリブデン複合酸化物)を形成することで、火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出などの遮断率を高めることで建築基準法に準じる不燃性を具備する吸音膜材とすることができる。
本発明によれば、建築物の天井に設置される天井面積構成膜材(膜天井)兼吸音膜材、または天井面積構成部材付帯物として建築基準法に準じる不燃性膜材を具備し、膜材強度にも優れ、本発明による膜材は震災に備え万が一、天井が崩落した場合にも深刻な人的被害を生じる可能性の低い軽量性とフレキシブル性とを有し、特に互いに異なる比重を有する糸条で製織された織物を用いることによって、織目単位で異なる比重の糸条が露出したり、隠れたり立体交差することで本発明の吸音膜材全面に音響吸収性の異なる織目単位がランダム、あるいは規則的に点在するような微小単位を構成して吸音効果に優れ、さらに照明や映像投影による演出も可能とするので、屋内競技場、体育館、屋内プール、イベントホール、公会堂、冠婚葬祭式場、駅舎、空港、ショッピングモールなどの膜天井構築用、光天井膜構築用などは勿論、さらには間仕切り、ブラインド、日除けテントなどにも応用することができる。
本発明の吸音膜材の織編要素の一例を模式的に示す図 本発明の吸音膜材の織編要素の一例を模式的に示す図 本発明の吸音膜材の断面の一例を模式的に示す図 本発明の吸音膜材の断面の一例を模式的に示す図
本発明の吸音膜材は、樹脂コーティング糸条(A)及び樹脂コーティング糸条(B)を織編要素に含む空隙率5%以下の織物であって、前記樹脂コーティング糸条(A)の比重が前記樹脂コーティング糸条(B)の比重よりも0.25以上大きく、かつ前記織物に対する糸条(A):(B)の占有体積比を2:1〜1:2とする、単層織物、または二重織物、または三重織物である。このように異なる比重を有する2種の糸条を特定の占有体積比率で用いることによって製織された織物には織目単位で異なる比重の糸条が露出したり、隠れたり、複雑に立体交絡することで吸音膜材全面に音響吸収性の異なる織目単位が点在する微小構成、すなわち樹脂コーティング糸条(A)部分と樹脂コーティング糸条(B)部分とがランダムまたは規則的に点在する微小単位の構成において、樹脂コーティング糸条(A)と樹脂コーティング糸条(B)との対比では、樹脂コーティング糸条(B)は樹脂コーティング糸条(A)よりも高い周波数領域の音を吸収し、樹脂コーティング糸条(A)は樹脂コーティング糸条(B)よりも低い周波数領域の音を吸収することで、これらの糸条(A)と糸条(B)との比重差が大きいほど相乗効果を高いものとして、より広い周波数の音に対する優れた吸音効果を発現する。この効果は、JIS A1405(垂直入射法)によるNoise Reduction Coefficient(NRC値)によって評価される。(NRC値は、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hzの各吸音率の算術平均値)本発明において、樹脂コーティング糸条(A)と樹脂コーティング糸条(B)は、互いの比重差に応じて共通する周波数領域での吸音効果を有していてもよい。例えば比重差が小さいほど共通する周波数領域が増大し、比重差が大きいほど共通する周波数領域が減少する。従って、本発明の吸音膜材の効果をより高いものとするには、樹脂コーティング糸条(A)と樹脂コーティング糸条(B)の、互いの吸音周波数領域を異にするほど好ましいが、これに限るものではない。また、樹脂コーティング糸条を含む織編要素によって膜材の破壊強度、引裂強度を強靭なものとする。樹脂コーティング糸条(A)及び(B)は、各々マルチフィラメント糸条全面に樹脂被覆層を設けたもので、マルチフィラメント糸条全体に樹脂含浸したもの、あるいはマルチフィラメント糸条の一部に樹脂含浸したものの態様を包含する。樹脂コーティング糸条及びマルチフィラメント糸条(A)及び(B)は、本発明の吸音膜材の不燃性を十分なものとするために、ガラス繊維(比重2.49〜2.55)、シリカ繊維(比重2.15〜2.2)、アルミナ繊維(比重3.0〜3.6)、シリカアルミナ繊維(比重2.5〜3.0)、バサルト繊維(比重2.6〜2.8)、炭素繊維(比重1.73〜1.8)などの無機繊維、及びステンレス繊維(比重4.6)などの金属繊維、などの不燃性繊維から選択しての糸条(A)(B)併用が好ましいが、糸条(A)、(B)の一方をポリpフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリpベンズアミド繊維、pフェニレン3,4オキシジフェニレンテレフタルアミド共重合繊維などのアラミド繊維(比重1.3〜1.45)、ポリpフェニレンベンゾイミダゾール繊維(比重1.3〜1.45)、ポリpフェニレンベンゾオキサゾール繊維(比重1.5〜1.6)、ポリpフェニレンベンズチアゾール繊維(比重比重1.5〜1.6)、ポリエーテルエーテルケトン繊維(比重1.69)、ポリスルホン繊維(比重1.24)などの耐熱性繊維から選択使用した併用してもよい。同様に糸条(A)、(B)の組み合わせに、上述の不燃性繊維、または耐熱性繊維などを糸条(A)または(B)として、ポリプロピレン繊維(比重0.9)、ポリエチレン繊維(比重0.92)、ポリエステル繊維(比重1.38)、ナイロン繊維(比重1.14)、ビニロン繊維(比重1.27)などの合成繊維を併用してもよい。また、セルロースの水酸基を、ホウ酸エステル化、またはリン酸エステル化、またはケイ酸エステル化した不燃化綿(比重1.6前後)、不燃化ケナフ(比重1.5前後)などの短繊維紡績糸を併用、または上述の不燃性繊維、耐熱性繊維、及び合成繊維などによる短繊維紡績糸と混紡した糸条も有効である。
樹脂コーティング糸条において、マルチフィラメント糸条は、フィラメント直径3〜10μm、繊度69〜2223dtex、特に138〜1112dtexの糸条で、フィラメント数50〜500本、特に100〜300本を集束して無撚糸、または撚糸に束ね、その断面形状を円形、楕円形、及び扁平(横長に潰れた楕円形)とする糸条であり、本発明の吸音膜材においては特に扁平楕円断面のマルチフィラメント糸条が好ましい。扁平楕円断面のマルチフィラメント糸条を芯糸に用いた樹脂コーティング糸条も同様に扁平楕円断面を有し、樹脂コーティング糸条の扁平楕円断面における高さ:幅の比が3:4〜1:4、特に2:3〜2:5の扁平楕円であることが、JIS A1405(垂直入射法)による吸音性向上のために好ましく、同時に扁平楕円断面の樹脂コーティング糸条を含むことによって得られる膜材の破壊強度、引裂強度をより向上させる。また芯糸に用いるマルチフィラメント糸条は、フィラメント数50〜500本を収束する隙間を含むものであってもよく、これらはフィラメント同士が隙間を持って絡み合ったタスラン加工糸、インターレース加工糸、ウーリー加工糸などで具体的には、マルチフィラメント糸条の製造時に、フィラメントの開繊(解繊)混繊をタスランノズルによるエアージェット交絡により行ない、乱過流の渦中で巻き込みと絡みを強制することでランダムルーズに絡め、ループ、渦巻きコイル、や結び目を多数形成することで嵩高化したバルキー糸条である。あるいは縮れ性(芯鞘)フィラメント、または縮れ加工された(芯鞘)フィラメント同士を交絡して得た(芯鞘)バルキー糸条であってもよい。これらバルキー糸条のように、繊維質で連続空間をもつ材料(表面積が大きい材料)に音が入射すると、音はその小さな空間内で乱反射を起し、フィラメントとの摩擦や抵抗、フィラメントの振動などによって、音エネルギーの一部が熱エネルギーとして消費される。樹脂コーティング糸条の比重は、マルチフィラメント(バルキー)糸条の比重とその体積、樹脂(含浸)被覆層の比重とその体積から算出可能であるが、樹脂コーティング糸条から直接測定した比重が最も適切である。樹脂コーティング糸条(B)は樹脂コーティング糸条(A)よりも高い周波数領域の音を吸収し、樹脂コーティング糸条(A)は樹脂コーティング糸条(B)よりも低い周波数領域の音を吸収することで、これら糸条(A)と糸条(B)との比重差が大きいほど、より広い周波数の音の吸収効果を発現するので、樹脂コーティング糸条(A)の比重は、樹脂コーティング糸条(B)の比重よりも0.25以上大きく、特に0.4〜2.0程度大きいものに設定するのが好ましい。
樹脂コーティング糸条(A)または(B)の芯糸が、特にガラス繊維によるマルチフィラメント糸条の場合、ガラス繊維はE(無アルカリ)ガラス、C(アルカリ含)ガラス、Gガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、DEガラスなど何れのガラス組成であってもよく、シランカップリング剤による表面改質処理がガラス繊維に施されていることが樹脂コーティング糸条を構成する樹脂被覆層との密着性向上の観点において好ましい。シランカップリング剤は具体的に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどから選ばれた1種以上、の他、有機チタネート化合物を使用してもよい。
樹脂コーティング糸条(A)及び/または(B)の樹脂被覆層は熱膨張性を有し、火災による火炎熱(模擬的にはコーンカロリーメーター試験(ASTM-E1354)により吸音膜材に50kW/mの輻射熱を照射した時)で体積膨張し、吸音膜材の空隙率を0〜1%までに閉塞する作用で火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出を遮断することで建築基準法に準じる不燃性を具備する吸音膜材とする。樹脂コーティング糸条の樹脂被覆層を熱膨張性とするためには、樹脂被覆層に層状無機化合物を1.5〜10質量%含み、層状無機化合物には、スメクタイト系粘土鉱物、合成スメクタイト、セリサイト、フッ素雲母、及び膨張黒鉛から選ばれた1種以上を使用する。このような樹脂被覆層は熱可塑性樹脂をベースに層状無機化合物を主体に含み、樹脂被覆層の比重1.3〜2.5とする。樹脂コーティング糸条を構成する樹脂被覆層に用いる熱可塑性樹脂成分は、塩化ビニル系樹脂(可塑剤を塩化ビニル系樹脂100質量部に対して30〜100質量部含有する軟質組成物)、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)、フッ素系共重合体樹脂などが使用でき、樹脂コーティング糸条(A)及び(B)以外の樹脂コーティング糸条を併用することもできる。
層状無機化合物としては、スメクタイト系粘土鉱物、合成スメクタイト、セリサイト、フッ素雲母、及び膨張黒鉛などが挙げられ、何れも熱で体積膨張する特性を有していて、これら層状無機化合物は樹脂被覆層に対して1.5〜10質量%含むことが好ましい。スメクタイト系粘土鉱物としては、2:1型スメクタイトで、ケイ素と酸素からなる層(シリカ四面体層)が、アルミニウムと酸素からなる層(アルミニウム八面体層)を挟んだ、「シリカ四面体層/アルミニウム八面体層/シリカ四面体層」構造層を一単位とし、この構造層が積重したものである。2八面体型スメクタイトの具体例として、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイトなど、3八面体型スメクタイトの具体例として、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スティーブンサイトなどが挙げられる。合成スメクタイトは、シリカ四面体(四配位)層とアルミニウム八面体(六配位)層が交互に積重した構造で、シリカ/アルミが2:1の質量比率が好ましい。セリサイト(絹雲母)は白雲母の微細なもので平均粒子径1〜20μmのものである。またフッ素雲母はNa四珪素雲母を有機交換処理した平均粒子径1〜20μmのフッ素四珪素雲母が使用できる。また、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイトなど)の層間に四級アンモニウム化合物を置換変性したインターカレーション型の層状化合物なども使用できる。膨張黒鉛は、天然黒鉛を濃硫酸、硝酸、セレン酸などと、濃硝酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩などによる処理品が使用でき、これらはグラファイト状層構造を有する結晶質化合物のため、熱による発生ガスで膨張することで不燃性の炭化層を形成する。
また特に樹脂コーティング糸条(A)及び/または(B)の樹脂被覆層は、塩化ビニル系樹脂、層状無機化合物、及びモリブデン化合物粒子を主体に含むことが好ましく、塩化ビニル系樹脂(可塑剤を塩化ビニル樹脂100質量部に対して30〜100質量部含有する軟質組成物)100質量部に対して層状無機化合物を1.5〜10質量部、モリブデン化合物粒子を1.5〜10質量部を含むことが好ましい。モリブデン化合物粒子として、三酸化モリブデン、モリブデン酸、リンモリブデン酸、二硫化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、七モリブデン酸六アンモニウム、モリブデン酸二アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸炭酸カルシウムなどが挙げられ、特に塩素含有樹脂(塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリエチレン)などとの併用により、これら塩素含有樹脂の燃焼炭化物を強固とする残滓層(塩素−モリブデン複合酸化物)を形成することで火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出などの遮断率を高めることで建築基準法に準じる不燃性を具備することができる。
また樹脂被覆層には難燃剤粒子を併用することができ、難燃剤粒子は、a).金属リン酸塩、金属有機リン酸塩、リン酸誘導体、ポリリン酸アンモニウム、及びポリリン酸アンモニウム誘導体(メラミン変性体など)などのリン原子含有化合物、b).(イソ)シアヌレート系化合物、(イソ)シアヌル酸系化合物、グアニジン系化合物(ジシアンジアミドなど)、尿素系化合物(ジメチロール尿素など)、及び、これらの誘導体化合物(例えばメラミンシアヌレート)などの窒素原子含有化合物、c).金属水酸化物(水酸化アルムニウムなど)、金属酸化物(酸化アンチモンなど)、金属炭酸塩化合物(塩基性炭酸マグネシウムなど)、金属硫酸塩化合物(硫酸バリウムなど)、ホウ酸化合物(ホウ酸亜鉛など)、及び無機系化合物複合体(ハイドロタルサイトなど)などの無機系化合物、d).臭素置換有機化合物、塩素置換有機化合物から選ばれた1種以上である。
樹脂コーティング糸条(A)及び/または(B)において、樹脂被覆層の厚さは0.03mm〜0.5mm、特に0.05mm〜0.3mmが好ましい。一方、樹脂コーティング糸条はマルチフィラメント芯糸全面に樹脂被覆層を設けたもので、マルチフィラメント芯糸全体に樹脂含浸したもの、あるいはマルチフィラメント芯糸の一部に樹脂含浸したものの態様を包含する。この態様において、マルチフィラメント芯糸と樹脂被覆層との質量比は3:1〜1:2、好ましくは3:2〜2:3である。特に本発明において好ましい樹脂被覆層は、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤、難燃剤などを配合した軟質〜半硬質塩化ビニル樹脂を包含する)、スチレン系共重合体樹脂(難燃剤などを配合)、ウレタン系共重合体樹脂(難燃剤などを配合)、およびフッ素系共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂である。これらの熱可塑性樹脂はマルチフィラメント糸条をコーティングダイス口金に芯通しした押出成型機に用い、熱可塑性樹脂をホットメルト状態としてコーティングダイスの口金ノズル孔から押出すと同時に、繊維糸条を引き取ることでマルチフィラメント芯糸の表面に樹脂被覆層を連続的に被覆することで樹脂コーティング糸条を得る。また塩化ビニル樹脂ペーストゾルのような粘重液状物、有機溶剤に可溶化した難燃性樹脂溶液、エマルジョンやラテックスのような水性樹脂ベースの難燃剤組成物にマルチフィラメント芯糸をディッピングし、これを熱処理乾燥することで樹脂コーティング糸条を得てもよい。これらの樹脂被覆層には必要に応じて有機顔料、無機顔料、パール粉顔料、アルミ粉顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、充填剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、接着剤、防黴剤、抗菌剤、防虫剤、帯電防止剤、香料など公知の添加剤を含むことができる。
本発明の吸音膜材の織編要素の例として、1)経糸条群及び緯糸条群、または2)経糸条群及び左斜上・右斜上バイアス糸条群で、かつ前記織物が単層織物、二重織物、及び三重織物、から選ばれた何れか1種の態様である。織編要素が1)経糸条群及び緯糸条群の場合、双方の群に樹脂コーティング糸条(A)、及び樹脂コーティング糸条(B)を規則的交互配置またはランダム配置で含む態様、或いは樹脂コーティング糸条(A)を経糸条群に、樹脂コーティング糸条(B)を緯糸条群に使い分けた態様、またはこの反対の使い分け態様が例示でき、これらは各々、単層織物、二重織物、及び三重織物の何れかの態様である。また三軸織物として織編要素が2)経糸条群及び左斜上・右斜上バイアス糸条群の場合も同様に、双方の群に樹脂コーティング糸条(A)、及び樹脂コーティング糸条(B)を規則的交互配置またはランダム配置で含む態様、或いは樹脂コーティング糸条(A)を経糸条群に、樹脂コーティング糸条(B)をバイアス糸条群に使い分けた態様、またはこの反対の使い分け態様が例示でき、これらは各々、単層織物、二重織物、及び三重織物の何れかの態様で、織編要素1)及び2)の織編交点の孔状隙間の総和を空隙率と定義した時の値は5%以下が好ましい。孔状隙間に音が入射すると、特定の周波数において共鳴振動が生じ、孔状隙間で空気が振動し、音エネルギーを減衰させるので、孔状隙間の孔径は直径0.05〜1.0mmの範囲で、好ましくは0.05〜0.5mmと特に小さく、孔状隙間数が(タテ8個×ヨコ8個)〜(タテ60個×ヨコ60個)/25.4mmの範囲で、特に(タテ12個×ヨコ12個)〜(タテ33個×ヨコ33個)/25.4mmをピークに吸音効果を高いものとする。この孔状隙間と、互いに異なる比重を有する糸条による織編要素によって、織目単位で異なる比重の糸条が露出したり、隠れたり立体交差することで本発明の吸音膜材全面に音響吸収性の異なる織目単位がランダム、あるいは規則的に点在するような微小単位を構成し、すなわち樹脂コーティング糸条(B)は樹脂コーティング糸条(A)よりも高い周波数領域の音を吸収し、樹脂コーティング糸条(A)は樹脂コーティング糸条(B)よりも低い周波数領域の音を吸収することで、これらの糸条(A)と糸条(B)との比重差が大きいほど、より広い周波数音の吸収効果を発現する
単層織物は、平織物、2/2ななこ(バスケット)織物、2/2畝織物、綾織物:2/1綾織物、2/2綾織物、3/1斜文(四枚綾)、3/1破れ斜文(四枚綾)、3/2斜文(五枚綾)、4/1斜文(五枚綾)、5/1斜文(六枚綾)、4/2斜文(六枚綾)、1・3/1・1斜文(六枚綾)など、朱子織物:2飛び4/1朱子(五枚朱子)、3飛び4/1朱子(五枚朱子)、2飛び3/2朱子(五枚朱子)、3飛び3/2朱子(五枚朱子)など、及びこれらの変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物など、さらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、ラッセル編物などが使用でき、これらは質量0.2〜1.2kg/m、空隙率5%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)、好ましくは2.5%以下、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒、好ましくは10〜25cc/cm2/秒を満たすものが例示される。
二重織物は、表経・裏経の経糸条及び表緯・裏緯の緯糸条を用いて上下2枚に重なり合った織物で、上部の織物が表経糸条と表緯糸条とで空隙率10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)を成し、下部の織物が裏経糸条と裏緯糸条とで空隙率10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)を成し、質量0.4〜2.4kg/m、共有空隙率5%以下(積重した織物に生じる孔状隙間の重なり部分の総和の占有率)、好ましくは2.5%以下、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒、好ましくは10〜25cc/cm2/秒を満たすものが例示される。同様に表経・裏経の経糸条及び表斜・裏斜のバイアス糸条を用いて上下2枚に重なり合った織物で、上部の織物が表経糸条と表斜糸条とで空隙率10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)を成し、下部の織物が裏経糸条と裏斜糸条とで空隙率10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)を成し、質量0.4〜2.4kg/m、共有空隙率5%以下(積重した織物に生じる孔状隙間の重なり部分の総和の占有率)、好ましくは2.5%以下、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒、好ましくは10〜25cc/cm2/秒を満たすものが例示される。通気度が3cc/cm2/秒未満だと反響抑止効果を悪くすることがあり、50cc/cm2/秒を超えると吸音効果を悪くすることがある。共有空隙率は吸音膜材を水平に置き、これを垂直方向から観察したときに上部の織物の空隙部と下部の織物の空隙部とが互いに重なり合って、2枚の織物を貫通する共有空隙部の総和の単位面積当たりの占有率である。すなわち上部の織物の糸条が下部の織物の空隙部に重なって配置され、あるいは下部の織物の糸条が上部の織物の空隙部に重なって配置されることで共有空隙率は小さい値となり、重なり具合によっては見掛け0となる。経二重織物は1組の緯糸条に表経と裏経が組織して一重の織物の裏にも1つ余分の経糸条が織付いたもので表経と裏経の配列は1:1、2:1、3:1などである。緯二重織物は1組の経糸条に表緯と裏緯が組織して一重の織物に別の緯糸条が織付いたもので表緯と裏緯の配列は1:1、2:1、3:1などである。経緯二重織物は2枚の織物を同一織機で織り、その織糸条で上下2枚の織物(各々質量0.4〜1.2kg/m)を接結したものである。
同様に三重織物は、表経・中経・裏経の経糸条及び表緯・中緯・裏緯の緯糸条を用いて上中下の織物3枚が積重した織物で、上部織物、中部織物、下部織物、各々が、空隙10%以下(織編交点に生じる孔状隙間の総和の占有率)、かつ質量0.2〜1.0kg/mで成り、質量0.6〜3.0kg/m共有空隙率5%以下(積重した織物に生じる孔状隙間の重なり部分の総和の占有率)、好ましくは2.5%以下、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒、好ましくは10〜25cc/cm2/秒を満たすもので、同様に経三重織物(1組の緯糸条に表経・中経・裏経が組織)、緯三重織物(1組の経糸条に表緯・中緯・裏緯が組織)、経緯三重織物:a)3枚の織物を同一織機で織り、その織糸条で下部織物から中部織物に接結し、中部織物から上部織物に接結したもの、b)上部織物から中部織物に接結し、中部織物から下部織物に接結したもの、c)上部織物から中部織物に接結し、下部織物から中部織物に接結したもの、d)上中下3枚の織物の耳部だけを接結したものが例示できる。通気度が3cc/cm2/秒未満だと反響抑止効果を悪くすることがあり、50cc/cm2/秒を超えると吸音効果を悪くすることがある。
二重織物は具体的にフライシャットル織機、エアージェット織機、スルーザー織機、レピア織機、ウォータージェット織機などを用い、経樹脂コーティング糸条及び緯マルチフィラメント糸条からなる右上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する上部織物と、経樹脂コーティング糸条及び緯マルチフィラメントからなる左上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する下部織物とを、下部織物の経樹脂コーティング糸条が所定本数おきに上部織物の緯マルチフィラメント糸条に浮くようにして接結点で繋ぎ合わせ、同時に下部織物の緯マルチフィラメントが所定本数おきに上部織物の経樹脂コーティング糸条に浮くようにして接結点で繋ぎ合わせた二重織物で、上部織物と下部織物との接結点は1平方インチ面積当たり8〜50ヶ所設けることが好ましい。このような二重織物を用いた吸音膜材においては、織布を右上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する上部織物と、左上がりの2/1斜文(綾)織の組織を有する下部織物とからなる二重織物とすることで、上部織物と下部織物の斜文(綾)織の組織が交差してそれぞれの織物の空隙部同士が完全に重なることがないので共有空隙率5%以下を満たす。この二重織物は共有空隙率5%以下(好ましくは2.5%以下)で、特に見掛け0%であっても通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒を満たすことができる。これは上部織物と下部織物との界面の隙間が通気部として機能し、上部織物と下部織物との空隙部を立体的に連結する作用による。このような立体的な連続通気部は音響の拡散吸収に効果的に寄与する。また、経樹脂コーティング糸条と緯樹脂コーティング糸条との織交点は熱癒着により互いに固定されたものは吸音膜材の形態安定性に優れ、特に織り交点に熱溶融固定が一切なされないか、熱癒着が軽微なものは吸音膜材を柔軟とする。織交点の熱癒着による固定は、二重織物全体に及んでいてもよく、また上下左右に等間隔、もしくはランダムな部分的な織り交点の熱癒着であってもよい。
同様に三重織物では、各織物の斜文線が隣接する織物の斜文線と交差するものは各織物の斜文線が隣接する織物の斜文線と交差するため、それぞれの織物の空隙部同士が完全に重なることがないので共有空隙率5%以下(好ましくは2.5%以下)を満たす。このような三重織物は共有空隙率5%以下で、特に見掛け0%であっても通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒を満たすことができる。これは上部織物と中部織物の界面、中部織物と下部織物との界面の2つの界面の隙間が通気部として機能し、上部織物、中部織物、下部織物の各々の空隙部を立体的に連結する作用による。このような立体的な連続通気部は音響の拡散吸収に効果的に寄与する。また二重織物、及び三重織物構は、右上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する上部織物と、左上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する下部織物とからなる二重織物(M=2〜5の整数,N=1)または(M=1,N=2〜5の整数)、また、右上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する上部織物及び下部織物と、左上がりのM/N斜文(綾)織の組織を有する中部織物とからなる三重織物(M=2〜5の整数,N=1)または(M=1,N=2〜5の整数)などである。同様に本発明の吸音膜材は四重織物、五重織物などであっても相応の吸音効果を得る。
同様に、平織物、模紗織、五枚朱子織(2飛び4/1朱子、3飛び4/1朱子、2飛び3/2朱子、3飛び3/2朱子)による重ね織物の場合は織物(上部/下部、または上部/中部/下部)の組織ズレ部分が互いに同一部分に重ならないように織組織の組織ズレ部分を表組織と裏組織で相反する場所に上下左右に1完全組織ずらした織物とする。真正面からは隙間がずれているため共有空隙率5%以下(好ましくは2.5%以下)を満たすが、特に見掛け0%であっても通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒を満たすことができる。これは織物(上部/下部、または上部/中部/下部)の1つまたは2つの界面の隙間が通気部として機能し、各々の織物の空隙部を立体的に連結する作用による。このような立体的な連続通気部は音響の拡散吸収に効果的に寄与する。また、経糸条及び左斜上・右斜上バイアス糸条を用いた織物2枚または3枚が重なり合った三軸重ね織物で、各部の織物の空隙率10%以下で成り、質量0.8〜3.0kg/m、共有空隙率5%以下(好ましくは2.5%以下)、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒、好ましくは10〜25cc/cm2/秒を満たす三軸平織物、または三軸バスケット織物または三軸模紗織物など、さらに経糸条、緯糸条及び左斜上・右斜上バイアス糸条を用いた織物を2枚または3枚が重なり合った四軸重ね織物で、各部の織物の空隙率10%以下で成り、質量0.8〜3.0kg/m、共有空隙率5%以下、かつ通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒、好ましくは10〜25cc/cm2/秒を満たす四軸平織物、または四軸バスケット織物または四軸模紗織物などであってもよい。上述した織物において樹脂コーティング糸条同士の織交点は熱癒着により互いに固定されたものは吸音膜材の形態安定性に優れ、織り交点に熱溶融固定が一切なされないものや熱癒着が軽微なものは吸音膜材のフレキシブル性をより柔軟とする。織交点の熱癒着による固定は、織物全体に及んでいてもよく、また上下左右に等間隔、もしくはランダムな部分的な織り交点の熱癒着であってもよい。
本発明の吸音膜材の態様には、織物の片面に密度0.35〜0.75g/cmの気泡含有樹脂層が形成されて織物組織内に気泡含有樹脂層の一部が浸入し、その深さが織物の厚さに対して1〜35%であることが好ましい。気泡含有樹脂層はフォーム状組成物のコーティング、及び固化処理により形成され、それによって織物組織内にも気泡含有樹脂層の一部が浸入することで通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒、好ましくは10〜25cc/cm2/秒を有し、より反響減衰効果を向上させる。音の入射による空気振動が気泡含有樹脂層に含む気泡部分に伝播して乱反射や振動して生じる粘性摩擦により、音エネルギーが熱エネルギーに変換消費されることで吸音効果を発現する。例えばフォーム状組成物は、2液型シリコーンエラストマーペースト(有機溶剤を粘度調整剤に含むことができる)、シリコーン樹脂エマルジョンによる樹脂組成物(塗料)、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を主体とするペーストゾル(整泡剤としてシリコーンオイルを1〜5質量部含有する)、などを用い、これらを攪拌機(ステンレスや金属を数本組み合わせて茶筅形にしたブレードを装着)により機械攪拌して気泡を強制的に巻き込んだホイップを、そのまま織物の片面にナイフコーティングし、それを固化させることで織物への含浸と被覆を同時に成し、これによって形成された気泡含有樹脂層はその一部が織物内に含浸部を有し、この含浸部の最大深さを織物の厚さに対して1〜35%とすることで織物内部にも実質的に気泡を含有する構成を成すことで反響減衰効果による吸音特性をより向上させる。気泡含有樹脂層の密度が0.75g/cmを超えると反響減衰効果による吸音特性が不十分となることがあり、密度が0.35g/cmより小さいと気泡含有樹脂層の摩耗強度を悪くすることがある。
本発明において気泡含有樹脂層は、その一部である含浸部が化学発泡剤含有組成物のコーティング、180〜220℃の加熱により化学発泡剤を熱分解ガス化させ、ガス発生痕として生成した気泡を含み、密度0.35〜0.75g/cmに形成された通気度(JIS L1096:フラジール法)3〜50cc/cm2/秒を有する気泡含有樹脂層がより反響減衰効果を向上させる手段として好ましい。化学発泡剤含有組成物は可塑剤を含む軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾルに化学発泡剤として、アゾジカルボアミド、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、ベンゼンスルフォニルヒドラジド、p−トルエンスルフォニルヒドラジド、ジアゾアミノベンゼン、アゾビスイソブチロニトリルなどから選ばれた1種以上を1〜10質量部含有する粘重なペーストゾル組成物を織物の片面にナイフコーティングすることで織物への含浸と被覆を同時に成し、これによって形成された気泡含有樹脂層はその一部が織物内に含浸部を有し、この含浸部の最大深さを織物の厚さに対して1〜35%とする。そして180〜220℃の加熱により化学発泡剤を熱分解ガス化させ、ガス発生痕として生成した気泡を気泡含有樹脂層と含浸部に含み、気泡含有樹脂層の密度を0.35〜0.75g/cmとする。また気泡含有樹脂層は軟質塩化ビニル樹脂、またはスチレン系共重合体樹脂に、上記化学発泡剤を1〜10質量部含有する組成物をカレンダー成型したフィルムとして織物上に150〜175℃で熱溶融積層して形成し、180〜220℃の加熱により化学発泡剤を熱分解ガス化させ、ガス発生痕として生成した気泡を気泡含有樹脂層と含浸部に含み、気泡含有樹脂層の密度を0.35〜0.75g/cmとすることもできる。
特に気泡含有樹脂層は、塩化ビニル系樹脂、層状無機化合物、及びモリブデン化合物粒子を主体に含むものが好ましく、塩化ビニル系樹脂(可塑剤を塩化ビニル樹脂100質量部に対して30〜100質量部含有する軟質組成物)100質量部に対して層状無機化合物を1.5〜10質量部、モリブデン化合物粒子を1.5〜10質量部を含むことが好ましい。層状無機化合物は段落〔0019〕に記載のものが使用でき、同様にモリブデン化合物粒子は段落〔0020〕に記載のものが使用できる。これによって吸音効果を向上させると同時に、火災時の火炎熱により層状無機化合物が体積膨張することで火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出を遮断し、モリブデン化合物粒子の作用で燃焼炭化物を強固とする残滓層(塩素―モリブデン複合酸化物)を形成することで、火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出などの遮断率を高めることで建築基準法に準じる不燃性を具備することができる。
本発明の吸音膜材の施工は、幅1m〜3mの任意、長さ1m〜50mの任意の規格シートを自在に組み合わせ、吸音膜材の織物面側を音響の入射面として装着する。特に1).1枚が幅1m〜3m程度、長さ1m〜5m程度の吸音膜材は、四角形、長方形、三角形、菱形、などの形態でアルミフレーム(押材)により吸音膜材全周を固定したパネル同士の組み合わせで、天井梁システムに固定することや、吊り下げることでフラット天井や幾何学立体天井に使用でき、2).また1枚が幅1m〜3m程度、長さ1m〜10m程度の長尺吸音膜材は、幅方向の2辺を天井梁やアルミ押材に固定し、張力を掛けずに吸音膜材を自重で弛んだ半円弧状態に懸垂し、多数の吸音膜材で半円弧の並びを表現したデザインアート天井に使用でき、3).また1枚が幅1m〜3m程度、長さ1m〜5m程度の吸音膜材は、四角形、長方形、三角形、菱形、などの形態で吸音膜材の外周のポイント毎にハトメ、ターンバックル、取付金具、ジョイントナットなどを設け、ロープやバネを用いて天井梁システムにサスペンジョン固定することで張力をコントロールして得たドレープを利用するデザインアート天井に使用することができる。4).上記施工を応用し、天井以外の用途、例えば間仕切り、ブラインド、日除けテントなどに使用し、相応の吸音効果を確保することもできる。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。先ずは本発明の吸音膜材の評価方法を述べる。
〈吸音率〉
膜材の織物面側を音響の入射面として、JIS A1405(垂直入射法)によるNoise Reduction Coefficient(NRC値)を250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hzの各吸音率の算術平均値を求めた。
〈含浸部深さ〉
膜材の幅なりに均等6分割する5つのポイントでの埋没部(含浸部)を膜材断面の拡大画像から求め、膜材の厚さに対する百分率で求めた。
〈共有空隙率〉
吸音膜材を水平に置き、これを垂直方向から観察したときに上部の織物の空隙部と下部の織物の空隙部とが互いに重なり合って、2枚または3枚の織物を貫通する共有空隙部の総和の単位面積当たりの占有率とし、デジタル顕微鏡観察のモニター画像より光線透過部を共有空隙率と見做しコンピュータで計算した。
〈通気度〉
JIS L1096 8.27.1 A法に定めるフラジール形法により求めた。
〈不燃試験〉(ASTM-E1354:コーンカロリーメーター試験法)
輻射電気ヒーターによる50kW/mの輻射熱を膜材面に20分間照射し、この発熱性試験において、20分間の総発熱量と発熱速度を測定し、試験後の膜材外観を観察した。
(a)総発熱量:8MJ/m以下のものを適合とした。
(b)発熱速度:10秒以上継続して200kW/mを超えないものを適合とした。
(c)外観観察:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕の発生がないものを適合と
した。
〔実施例1〕
〈樹脂コーティング糸条(A)−1〉
無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条(フィラメント径9μm、400本フィラメント:75番手:687dtex)の扁平糸を芯糸とし、下記配合1の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂被覆層を形成して、糸条断面における高さ:幅の比が3:5の扁平楕円断面を有し、見掛比重2.30の樹脂コーティング糸条(A)−1を得た。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 70質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合化合物(安定剤) 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤:比重5.7) 30質量部
層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm) 10質量部
モリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子) 5質量部
シランカップリング剤 2質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
〈樹脂コーティング糸条(B)−1〉
無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条(フィラメント径9μm、400本フィラメント:75番手:687dtex)の扁平糸を芯糸とし、下記配合2の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂被覆層を形成して、糸条断面における高さ:幅の比が3:5の扁平楕円断面を有し、見掛比重1.87の樹脂コーティング糸条(B)−1を得た。
〔配合2〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 70質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合化合物(安定剤) 2質量部
層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm) 10質量部
モリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子) 5質量部
シランカップリング剤 2質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
〈織物(1)〉
経糸条群及び緯糸条群ともに〔樹脂コーティング糸条(A)−1を2本、樹脂コーティング糸条(B)−1を2本〕nを繰り返し単位とする2/2ななこ(バスケット)織物による単層織物で、経糸群は1インチ間28本(うち樹脂コーティング糸条(A)−1の本数は14本)の織密度、また緯糸群は1インチ間30本(うち樹脂コーティング糸条(A)−1の本数は15本)の織密度とする空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量860g/mの〔織物1〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−1との比重差は0.43、これら糸条の占有体積比は14:15であった。
〔実施例2〕
〈織物(2)〉
経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が42本/インチ、緯糸群として樹脂コーティング糸条(B)−1の打ち込み密度が36本/インチである二重織物を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、共有空隙率1.2%、通気度16cc/cm2/秒、質量1160g/mの〔織物2〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−1との比重差は0.43、これら糸条の占有体積比は13:14であった。
〔実施例3〕
〈織物(3)〉
経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が28本/インチ、左斜上・右斜上バイアス糸群として樹脂コーティング糸条(B)−1の打ち込み密度が20本/インチである上層三軸織物と、経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が28本/インチ、左斜上・右斜上バイアス糸群として樹脂コーティング糸条(B)−1の打ち込み密度が20本/インチである下層三軸織物とを、下層三軸織物の樹脂コーティング糸条(A)−1が5本跨ぎの結線で上層三軸織物の樹脂コーティング糸条(B)−1に結接し、また下層三軸織物の樹脂コーティング糸条(B)−1が5本跨ぎの結線で上層三軸織物の樹脂コーティング糸条(A)−1に結接して製織した三軸二重織物であって、共有空隙率0.5%、通気度6cc/cm2/秒、質量2020g/mの〔織物3〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−1との比重差は0.43、これら糸条の占有体積比は7:10であった。
〔実施例4〕
〈織物(4)〉
樹脂コーティング糸条(A)−1及び樹脂コーティング糸条(B)−1を用い、経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が60本/インチ、経糸群として樹脂コーティング糸条(B)−1の打ち込み本数が45本/インチである三重織物を、上層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、中層織物組織を左上がりの3/1の斜文織、下層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、上層織物と中層織物とを5本跨ぎの結線で結接し、中層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、共有空隙率0.1%、通気度2cc/cm2/秒、質量1555g/mの〔織物4〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−1との比重差は0.43、これら糸条の占有体積比は4:3であった。
〔実施例5〕
〈樹脂コーティング糸条(B−2)〉
樹脂コーティング糸条(B)−1の芯糸を、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(アラミド繊維:フィラメント径12μm、843dtex)の扁平糸に変更し、配合2の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂被覆層を形成して、糸条断面における高さ:幅の比が2:5の扁平楕円断面を有し、見掛比重1.41の樹脂コーティング糸条(B)−2を得た。
〈織物(5)〉
経糸条群及び緯糸条群ともに〔樹脂コーティング糸条(A)−1を2本、樹脂コーティング糸条(B)−2を2本〕nを繰り返し単位とする2/2ななこ(バスケット)織物による単層織物で、経糸群は1インチ間28本(うち樹脂コーティング糸条(A)−1の本数は14本)の織密度、また緯糸群は1インチ間30本(うち樹脂コーティング糸条(A)−2の本数は15本)の織密度とする空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量780g/mの〔織物5〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−2との比重差は0.89、これら糸条の占有体積比は1:1であった。
〔実施例6〕
〈織物(6)〉
経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が42本/インチ、緯糸群として樹脂コーティング糸条(B)−2の打ち込み密度が36本/インチである二重織物を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、共有空隙率1.2%、通気度16cc/cm2/秒、質量1050g/mの〔織物6〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−2との比重差は0.89、これら糸条の占有体積比は1:1であった。
〔実施例7〕
〈織物(7)〉
経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が28本/インチ、左斜上・右斜上バイアス糸群として樹脂コーティング糸条(B)−2の打ち込み密度が20本/インチである上層三軸織物と、経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が28本/インチ、左斜上・右斜上バイアス糸群として樹脂コーティング糸条(B)−2の打ち込み密度が20本/インチである下層三軸織物とを、下層三軸織物の樹脂コーティング糸条(A)−1が5本跨ぎの結線で上層三軸織物の樹脂コーティング糸条(B)−2に結接し、また下層三軸織物の樹脂コーティング糸条(B)−2が5本跨ぎの結線で上層三軸織物の樹脂コーティング糸条(A)−1に結接して製織した三軸二重織物であって、共有空隙率0.5%、通気度6cc/cm2/秒、質量1820g/mの〔織物7〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−2との比重差は0.89、これら糸条の占有体積比は7:8であった。
〔実施例8〕
〈織物(8)〉
樹脂コーティング糸条(A)−1及び樹脂コーティング糸条(B)−2を用い、経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が60本/インチ、経糸群として樹脂コーティング糸条(B)−2の打ち込み本数が45本/インチである三重織物を、上層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、中層織物組織を左上がりの3/1の斜文織、下層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、上層織物と中層織物とを5本跨ぎの結線で結接し、中層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、共有空隙率0.1%、通気度2cc/cm2/秒、質量1400g/mの〔織物8〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−2との比重差は0.89、これら糸条の占有体積比は10:7であった。
〔実施例9〕
〈樹脂コーティング糸条(B−3)〉
樹脂コーティング糸条(B)−1の芯糸を、炭素繊維(フィラメント径10μm、660dtex)の扁平糸に変更し、配合2の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂被覆層を形成して、糸条断面における高さ:幅の比が2:5の扁平楕円断面を有し、見掛比重1.65の樹脂コーティング糸条(B)−3を得た。
〈織物(9)〉
経糸条群及び緯糸条群ともに〔樹脂コーティング糸条(A)−1を2本、樹脂コーティング糸条(B)−3を2本〕nを繰り返し単位とする2/2ななこ(バスケット)織物による単層織物で、経糸群は1インチ間30本(うち樹脂コーティング糸条(A)−1の本数は15本)の織密度、また緯糸群は1インチ間32本(うち樹脂コーティング糸条(A)−3の本数は16本)の織密度とする空隙率2.5%、通気度52cc/cm2/秒、質量820g/mの〔織物9〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−3との比重差は0.65、これら糸条の占有体積比は1:1であった。
〔実施例10〕
〈織物(10)〉
経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が42本/インチ、緯糸群として樹脂コーティング糸条(B)−3の打ち込み密度が36本/インチである二重織物を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、共有空隙率1.4%、通気度18cc/cm2/秒、質量1100g/mの〔織物10〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−3との比重差は0.65、これら糸条の占有体積比は1:1であった。
〔実施例11〕
〈織物(11)〉
経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が28本/インチ、左斜上・右斜上バイアス糸群として樹脂コーティング糸条(B)−3の打ち込み密度が20本/インチである上層三軸織物と、経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が28本/インチ、左斜上・右斜上バイアス糸群として樹脂コーティング糸条(B)−3の打ち込み密度が20本/インチである下層三軸織物とを、下層三軸織物の樹脂コーティング糸条(A)−1が5本跨ぎの結線で上層三軸織物の樹脂コーティング糸条(B)−3に結接し、また下層三軸織物の樹脂コーティング糸条(B)−3が5本跨ぎの結線で上層三軸織物の樹脂コーティング糸条(A)−1に結接して製織した三軸二重織物であって、共有空隙率0.8%、通気度8cc/cm2/秒、質量1920g/mの〔織物11〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−3との比重差は0.65、これら糸条の占有体積比は7:10であった。
〔実施例12〕
〈織物(12)〉
樹脂コーティング糸条(A)−1及び樹脂コーティング糸条(B)−3を用い、経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が60本/インチ、経糸群として樹脂コーティング糸条(B)−3の打ち込み本数が48本/インチである三重織物を、上層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、中層織物組織を左上がりの3/1の斜文織、下層織物組織を右上がりの3/1の斜文織、上層織物と中層織物とを5本跨ぎの結線で結接し、中層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、共有空隙率0.1%、通気度2cc/cm2/秒、質量1480g/mの〔織物12〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−3との比重差は0.65、これら糸条の占有体積比は1:1であった。
〔実施例13〜24〕
〈気泡含有樹脂層の形成〉
下記配合3の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を攪拌機(ステンレス線を8本組み合わせて茶筅形にしたブレードを装着)により機械攪拌して気泡を強制的に巻き込ませて形態保持したホイップ(2倍発泡)を、実施例1〜12で得た織物1〜12の12種類の織物の片面側にクリアランスコーティングし、ペーストによる濡塗膜フォームを均一に形成し、180℃×3分間電気炉加熱してゲル化処理及び織物との接着処理を行い、織物1〜12の片面に気泡含有樹脂層(密度0.5g/cm)が225g/m設けられ、織物組織内に気泡含有樹脂層の一部が浸入し、その深さが織物の厚さに対して15〜30%である実施例13〜24の膜材を得た。
〔配合3〕軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物
乳化重合塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 65質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合化合物(安定剤) 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm) 10質量部
モリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子) 5質量部
シランカップリング剤 2質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
ジメチルシリコーンオイル(整泡剤) 2質量部
実施例1〜12の織物1〜12はいずれも天井用膜材に使用可能な膜材強度を有し、震災に備え万が一崩落した場合にも深刻な人的被害を生じる可能性の低い軽量性とフレキシブル性とを有し、特に樹脂コーティング糸条(B)は樹脂コーティング糸条(A)よりも高い周波数領域の音を吸収し、樹脂コーティング糸条(A)は樹脂コーティング糸条(B)よりも低い周波数領域の音を吸収することで、これらの糸条(A)と糸条(B)との比重差が大きいほど、より広い周波数の音の吸収効果(JIS A1405:垂直入射法によるNRC値向上)を発現し、これらの糸条(A)と糸条(B)との比重差が大きいほど、より広い周波数の音を吸収することの実証となり、比較例との対比においてもNRC値が向上していた。また空隙率1〜5%目開きの織物であれば、本発明の効果によりASTM-E1354:コーンカロリーメーター試験の熱で、織物の糸条が体積膨張し、それによって織物の空隙率を0〜1%に閉塞させるので、建築基準法に準じる不燃性の吸音膜材を得ることが可能となった。また、織物1〜12の片面に気泡含有樹脂層(密度0.5g/cm)を形成した実施例13〜24の織物13〜24においては、各々織物1〜12よりも吸音効果(NRC値)が更に0.9〜1.3向上した。
〔比較例1〕
〈織物(25)〉
実施例1の織物1の織組織を変更し、経糸条群及び緯糸条群ともに、〔樹脂コーティング糸条(A)−1を2本、樹脂コーティング糸条(B)−1を2本〕nを繰り返し単位とする2/2ななこ(バスケット)織物による単層織物で、経糸群は1インチ間20本(うち樹脂コーティング糸条(A)−1の本数は10本)の織密度、また緯糸群は1インチ間22本(うち樹脂コーティング糸条(A)−1の本数は11本)の織密度とする空隙率12%、通気度270cc/cm2/秒、質量565g/mの〔織物25〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−1と樹脂コーティング糸条(B)−1との比重差は0.43、これら糸条の占有体積比は1:1であったが、空隙率が5%を超えて大きくしたことで吸音効果を低下させたものとなった。
〔比較例2〕
実施例2の織物2の織編要素を変更し、経糸群として樹脂コーティング糸条(A)−1の打ち込み密度が42本/インチ、緯糸群も同じ樹脂コーティング糸条(A)−1による打ち込み密度が36本/インチである二重織物を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、共有空隙率0.6%、通気度8cc/cm2/秒、質量1770g/mの〔織物26〕を得た。織編要素を同種として糸条同士の比重差が0のため、実施例2の織物2よりも吸音効果に劣るものとなった。
〔比較例3〕
実施例2の織物2の織編要素を変更し、経糸群をマルチフィラメント糸条(B)−1に変更し、その打ち込み密度を42本/インチ、緯糸群も同じマルチフィラメント糸条(B)−1による打ち込み密度が36本/インチである二重織物を、上層織物組織を右上がりの2/1の斜文織、下層織物組織を左上がりの2/1の斜文織、上層織物と下層織物とを5本跨ぎの結線で結接して製織し、共有空隙率1.2%、通気度16cc/cm2/秒、質量900g/mの〔織物27〕を得た。織編要素を同種として糸条同士の比重差が0のため、実施例2の織物2よりも吸音効果に劣るものとなった。
〔参考例1〕
〈樹脂コーティング糸条(A)−2〉
無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条(フィラメント径9μm、400本フィラメント:75番手:687dtex)を芯糸とし、配合1の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂被覆層を形成して、糸条断面における高さ:幅の比が1:1近似の円形断面を有し、見掛比重2.30の樹脂コーティング糸条(A)−2を得た。
〈樹脂コーティング糸条(B)−4〉
無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条(フィラメント径9μm、400本フィラメント:75番手:687dtex)を芯糸とし、配合1の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂被覆層を形成して、糸条断面における高さ:幅の比が1:1近似の円形断面を有し、見掛比重1.87の樹脂コーティング糸条(B)−4を得た。
〈織物(28)〉
経糸条群及び緯糸条群ともに〔樹脂コーティング糸条(A)−2を2本、マルチフィラメント糸条(B)−4を2本〕nを繰り返し単位とする2/2ななこ(バスケット)織物による単層織物で、経糸群は1インチ間28本(うち樹脂コーティング糸条(A)−2の本数は14本)の織密度、また緯糸群は1インチ間30本(うち樹脂コーティング糸条(A)−2の本数は15本)の織密度とする空隙率5%、通気度90cc/cm2/秒、質量860g/mの〔織物28〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−2と樹脂コーティング糸条(B)−4との比重差は0.43、これら糸条の占有体積比は1:1であったが、樹脂コーティング糸条の断面形状の違いによって空隙率を増し、それによって吸音効果が実施例1の織物1よりもやや低下する傾向となった。
〔参考例2〕
〈樹脂コーティング糸条(A)−3〉
無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条(フィラメント径9μm、400本フィラメント:75番手:687dtex)を芯糸とし、配合4の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂被覆層を形成して、糸条断面における高さ:幅の比が3:5の扁平楕円断面を有し、見掛比重2.32の樹脂コーティング糸条(A)−3を得た。
〔配合4〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 70質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合化合物(安定剤) 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 30質量部
シランカップリング剤 2質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
※〔配合1〕から層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm)10質量部
及びモリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子)5質量部を省略
〈樹脂コーティング糸条(B)−5〉
無アルカリガラスのマルチフィラメント糸条(フィラメント径9μm、400本フィラメント:75番手:687dtex)を芯糸とし、配合5の軟質塩化ビニル系樹脂によるペーストゾル組成物の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して樹脂被覆層を形成して、糸条断面における高さ:幅の比が3:5の扁平楕円断面を有し、見掛比重1.85の樹脂コーティング糸条(B)−5を得た。
〔配合5〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 70質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合化合物(安定剤) 2質量部
シランカップリング剤 2質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
※〔配合2〕から層状無機化合物(モンモリロナイト:平均粒子径8μm)10質量部
及びモリブデン酸カルシウム亜鉛(モリブデン化合物粒子)5質量部を省略
〈織物(29)〉
経糸条群及び緯糸条群ともに〔樹脂コーティング糸条(A)−3を2本、樹脂コーティング糸条(B)−5を2本〕nを繰り返し単位とする2/2ななこ(バスケット)織物による単層織物で、経糸群は1インチ間28本(うち樹脂コーティング糸条(A)−3の本数は14本)の織密度、また緯糸群は1インチ間30本(うち樹脂コーティング糸条(A)−3の本数は15本)の織密度とする空隙率2%、通気度45cc/cm2/秒、質量860g/mの〔織物29〕を得た。樹脂コーティング糸条(A)−3と樹脂コーティング糸条(B)−5との比重差は0.47、これら糸条の占有体積比は14:15であったが、ASTM-E1354:コーンカロリーメーター試験の熱で樹脂コーティング糸条(A)−3、及び(B)−5が体積膨張できずに、織物全体の空隙部がそのまま残り、火炎の突き抜けや有毒ガスの漏出を遮断することのできない建築基準法に適合できない膜材であった。
本発明によれば、建築物の天井に設置される天井面積構成膜材(膜天井)兼吸音膜材、または天井面積構成部材付帯物として建築基準法に準じる不燃性膜材を具備し、膜材強度にも優れ、本発明による膜材は震災に備え万が一、天井が崩落した場合にも深刻な人的被害を生じる可能性の低い軽量性とフレキシブル性とを有し、特に互いに異なる比重を有する糸条で製織された織物を用いることによって、織目単位で異なる比重の糸条が露出したり、隠れたり立体交差することで本発明の吸音膜材全面に音響吸収性の異なる織目単位がランダム、あるいは規則的に点在するような微小単位を構成して吸音効果に優れ、さらに照明や映像投影による演出も可能とするので、屋内競技場、体育館、屋内プール、イベントホール、公会堂、冠婚葬祭式場、駅舎、空港、ショッピングモールなどの膜天井構築用、光天井膜構築用などは勿論、さらには間仕切り、ブラインド、日除けテントなどにも応用することができ、天井用途以外に、間仕切り、ブラインド、日除けテントなどにも応用可能でそれによって相応の吸音効果を得ることができる。
1:吸音膜材
2:織物
2−1:単層織物
2−2:二重織物
2−3:三重織物
2−4:空隙部
3:糸条
3−1:樹脂コーティング糸条(A)
3−1−1:マルチフィラメント糸条(芯糸)
3−1−2:樹脂被覆層(コーティング)
3−2:樹脂コーティング糸条(B)
3−2−1:マルチフィラメント糸条(芯糸)
3−2−2:樹脂被覆層(コーティング)
4:気泡含有樹脂層
4−1:気泡

Claims (7)

  1. 樹脂コーティング糸条(A)及び樹脂コーティング糸条(B)を用いて製織された空隙率5%以下の織物からなる吸音膜材であって、前記樹脂コーティング糸条(A)及び樹脂コーティング糸条(B)が、各々マルチフィラメント糸条と樹脂被覆層とで構成されたもので、前記樹脂コーティング糸条(A)の比重が前記樹脂コーティング糸条(B)の比重よりも0.25以上大きく、かつ前記織物に対する糸条(A):(B)の占有体積比が2:1〜1:2であることを特徴とする吸音膜材。
  2. 前記織編要素が、1)経糸条群及び緯糸条群、または2)経糸条群及び左斜上・右斜上バイアス糸条群で、かつ前記織物が単層織物、二重織物、及び三重織物、から選ばれた何れか1種である請求項1に記載の吸音膜材。
  3. 前記樹脂コーティング糸条(A)、及び前記樹脂コーティング糸条(B)の少なくとも一方が扁平楕円断面を有し、その扁平楕円断面における高さ:幅の比が3:4〜1:4である請求項1または2に記載の吸音膜材。
  4. 前記樹脂コーティング糸条(A)、及び前記樹脂コーティング糸条(B)の少なくとも一方が、マルチフィラメント糸条と樹脂被覆層とで構成され、前記樹脂被覆層が、熱膨張性を有し、熱膨張後の前記空隙率を1%以下に閉塞する請求項1〜3の何れか1項に記載の吸音膜材。
  5. 前記樹脂被覆層が、塩化ビニル系樹脂、層状無機化合物、及びモリブデン化合物粒子を主体に含む請求項4に記載の吸音膜材。
  6. 前記織物の片面に密度0.35〜0.75g/cmの気泡含有樹脂層が形成されて織物組織内に前記気泡含有樹脂層の一部が浸入し、その深さが前記織物の厚さに対して1〜35%である請求項1〜5の何れか1項に記載の吸音膜材。
  7. 前記気泡含有樹脂層が、塩化ビニル系樹脂、層状無機化合物、及びモリブデン化合物粒子を主体に含む請求項6に記載の吸音膜材。
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