JP2017037748A - リチウムイオン二次電池用負極及びそれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
現在市販されているリチウムイオン二次電池は、一部を除き負極活物質に黒鉛が用いられている製品が多い。しかしながら、リチウムイオン二次電池の負極は、既に黒鉛の理論容量である372mAh/gに極めて近い利用率で電池設計がされており、更なる高容量化には、黒鉛に代わる新規な負極活物質が必要とされる。
黒鉛に代わる新規な負極活物質として、錫合金、珪素合金、珪素酸化物、リチウム窒化物、リチウム金属等が検討されており、例えば、Si(以下、珪素ともよぶ)の超微粒子がSiO2のマトリクス中に分散した構造を持つSiOxが注目されている。
例えば、特許文献1及び特許文献2に記載のリチウムイオン二次電池の負極では、エネルギー密度の向上を目的として、負極活物質に黒鉛及びSiOx(0.5≦x≦1.5)を用い、負極活物質にリチウムをプレドープする技術が示されている。
<1>珪素酸化物及び炭素材料を有する負極合剤を集電箔に塗工したリチウムイオン二次電池用負極であって、
前記負極集電箔は一面に複数の貫通孔を有し、
前記リチウムイオン二次電池用負極は5時間率の電流値以下で放電した時の放電終止電圧が2.4V〜2.7Vであり、かつ、前記放電終止電圧時における前記リチウムイオン二次電池用負極の電位は、金属リチウム基準(vs Li/Li+)で0.1V〜0.8Vとなるリチウムイオン二次電池用負極。
<2>前記負極集電箔の貫通孔の各面積が9×10−11m2〜8×10−7m2であり、かつ前記貫通孔の開口率が前記負極集電箔の面積に対して10%〜50%である<1>記載のリチウムイオン二次電池用負極。
<3>前記負極集電箔は銅箔である<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
<4><1>〜<3>いずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本実施の形態の負極(負極板)は、集電箔及びその少なくとも上部に形成された負極合剤層よりなる。負極合剤層は、負極活物質、結着剤、及び必要に応じて導電剤、増粘剤等を含む層である。
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な材料であって、炭素材料及び珪素酸化物を含む。
前記炭素材料としては、放電容量及び充放電サイクル特性の観点から、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等の黒鉛が好ましい。
前記炭素材料の平均粒子径は、電池特性の観点から1μm〜200μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましく、10μm〜50μmであることが更に好ましい。
前記珪素酸化物としては、Siの超微粒子(超微粒子は直径が1μm以下である粒子を指す)がSiO2のマトリクス中に分散した構造を持つSiOxが好ましい。ここで、Siに対するOの原子比xは、0.5≦x≦1.5であることが好ましい。SiOxは、不均化反応によって、SiとSiを覆うSiO2とに分解したSiOxからなる。
珪素酸化物は、Liと反応するSiが超微粒子であるために充放電がスムーズに行われる。また、SiがSiO2中に分散した構造を有するSiOx粒子自体は表面積が小さいため、集電箔への負極合剤層の塗工性、負極合剤層と集電等箔との接着性が良好となる。
また、炭素材料と珪素酸化物の含有割合は、炭素材料:珪素酸化物=99:1〜50:50が好ましく、97:3〜70:30がより好ましく、95:5〜85:15であることが更に好ましい。この範囲であれば、負極の容量を高めつつ、所定のサイクル特性を得ることができる。
SiOXにおけるxは、0.5≦x≦1.5であることが好ましく、xが下限値未満であるとSiの比率が高いため充放電時の体積変化が大きくなりすぎ、サイクル特性が低下する傾向にあり、Xが上限値より大きくなると、Si比率が低下し、エネルギー密度が低下する傾向にある。
これらの中でも、負極合剤層に使用する結着剤としては、耐酸化性を向上させる観点からフッ素を含む結着剤を使用することが好ましい。
結着剤の中でもアクリル系ポリマーを用いることが好ましく、特に水分散のアクリル系ポリマー粒子を用いることが好ましい。
また、上記アクリル系ポリマーは、上述した各構造単位を含んでいればよく、各構造単位の結合順序については特に制限はない。特定共重合体は、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよく、ランダム共重合体であることが好ましい。
上記アクリル系ポリマーは、例えば、単量体である(メタ)アクリロニトリル由来の構造単位と、2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、「架橋剤」ともいう)由来の構造単位とを含むことが好ましい。
上記アクリル系ポリマーにおいて、(メタ)アクリロニトリル由来の構造単位を含む場合の含有率は、エネルギーデバイス電極における集電体と合剤層との密着性に優れるという観点から、アクリル系ポリマーの単量体由来の総構造単位数を基準(100モル%)として、20モル%〜70モル%であることが好ましく、密着性及び電極合剤スラリーの保存安定性に優れるという観点から、30モル%〜60モル%であることがより好ましく、35モル%〜45モル%であることが更に好ましい。
R2で示されるn価の有機基としては、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素からn個の水素原子を取り除いて構成される炭素数が2〜20であるn価の脂肪族炭化水素基;炭素数2〜4のアルキレングリコールが2以上エーテル結合してなるポリアルキレングリコールの両末端からヒドロキシ基を取り除いて構成されるポリアルキレンオキシアルキレン基;グリセリン、ジグリセリン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の炭素数3〜20の多価アルコール又はそのヒドロキシアルキル化物からn個のヒドロキシ基を取り除いて構成されるn価の有機基;イソシアヌル酸又はそのヒドロキシアルキル化物からn個のヒドロキシ基を取り除いて構成されるn価の有機基;などを挙げることができる。
これらの2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物は1種単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
また、アクリル系ポリマーにおける2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物由来の構造単位の含有率をモル%で規定した場合、アクリル系ポリマーにおける単量体由来の総構造単位数(100モル%)に対して、0.001〜1.0モル%であることが好ましく、0.005〜0.5モル%であることがより好ましく、0.02〜0.2モル%であることが更に好ましい。
R22における炭素数3〜20のアルキル基としては、分岐鎖のアルキル基であっても、直鎖のアルキル基であってもよく、直鎖のアルキル基であることが好ましい。R22で示されるアルキル基の炭素数は、3〜12であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。
一般式(II)で表される単量体由来の構造単位の総含有率は、エネルギーデバイス電極における集電体と合剤層との密着性に優れるという観点から、特定共重合体における単量体由来の総構造単位量を基準(100モル%)として、30〜80モル%であることが好ましく、密着性及び電極合剤スラリーの保存安定性に優れるという観点から、40〜70モル%であることがより好ましく、55〜65モル%であることが更に好ましい。
ここで粒子径は、平均粒子径であり、市販の動的光散乱法による測定装置を用いて測定することができる。
負極合剤層の厚みは、1μm〜150μmが好ましく、5μm〜130μmがより好ましく、10μm〜120μmが更に好ましい。
ここで、5時間率すなわち0.2Cの電流値以下とは、10時間率すなわち0.1Cの電流値も含む。
また、負極の電位が上記範囲内であると、放電反応に際するSiOXのリチウム放出に対する内部抵抗を低くすることができる。SiOxは黒鉛より貴な電位でリチウムイオンを放出する。負極の作動電位が低下すると、負極放電容量に占める黒鉛からの放電容量の割合と、SiOXからの放電容量の割合とでは、相対的に黒鉛からの放電容量の割合が高くなるため、容量維持率が優れる傾向にある。放電終止電圧及び負極の電位が上記範囲内であることによって、エネルギー密度の向上とサイクル特性の向上を図ることができる。
放電終止電圧が2.4V〜2.7Vの範囲であるとき、負極の終止電位は、金属リチウム基準(vs Li/Li+)で0.1V〜0.8Vである。容量向上の観点からは、0.2V〜0.7Vであることが好ましく、0.3V〜0.6Vであることがより好ましい。
また、前記貫通孔の形状は、特に制限はなく、円形、楕円形、四角形、三角形、多角形等が挙げられる。
前記1つの貫通孔の開口部の面積は、充放電サイクル特性の観点から、9×10−11m2〜8×10−7m2であることが好ましく、1×10−10m2〜3×10−8m2であることがより好ましく、4×10−10m2〜1×10−8m2であることが更に好ましい。
また、集電箔の貫通孔による開口率は、充放電サイクル特性及び負極集電箔の強度の観点から、5%〜50%であることが好ましく、10%〜45%であることがより好ましく、15%〜40%であることが更に好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極以外は従来のリチウムイオン二次電池と同様の構成を採ることができる。
本実施の形態の正極(正極板)は、集電箔及びその少なくとも上部に形成された正極合剤層よりなる。正極合剤層は、正極活物質、結着剤、及び必要に応じて導電剤、増粘剤等を含む層である。
ここで、異種元素としては、例えば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、Mn、Al、Co、Ni、Mg等が好ましい。異種元素は1種でもよく又は2種以上でもよい。これらの中でも、リチウム含有複合金属酸化物を好ましく使用できる。
リチウム含有複合金属酸化物の具体例としては、例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4、LiMPO4、Li2MPO4F(前記各式中、MはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3である。)等が挙げられる。
ここで、リチウムのモル比を示すx値は、充放電により増減する。また、オリビン型リチウム塩としては、例えば、LiFePO4等が挙げられる。カルコゲン化合物としては、例えば、二硫化チタン、二硫化モリブデン等が挙げられる。正極活物質は1種を単独又は2種以上を併用できる。
これらの中でも、正極合剤層の耐酸化性を向上させること等を考慮すると、フッ素を含む結着剤が好ましい。結着剤は1種を単独で使用でき又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
湿式法では、正極活物質、結着剤、及び必要に応じて用いられる導電剤、増粘剤等の他の材料を分散溶媒に溶解又は分散させてスラリーとし、これを集電箔に塗布し、乾燥する。分散溶媒には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等を使用できる。
3.<セパレータ>
樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられ、非水系電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等を用いることが好ましい。
無機物としては、アルミナや二酸化珪素等の酸化物類、窒化アルミニウムや窒化珪素等の窒化物類、硫酸バリウム等の硫酸塩類等が用いられる。繊維形状又は粒子形状の上記無機物を、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状の基材に付着させたものをセパレータとして用いることができる。薄膜形状の基材としては、孔径が0.01μm〜1μm、厚さが5μm〜50μmのものが好適に用いられる。
4.<電解液>
電解質は、リチウムイオン二次電池用の非水電解液の電解質として使用可能なリチウム塩であれば特に制限されない。電解質としては、この分野で常用されるものを使用でき、以下に示す無機リチウム塩、含フッ素有機リチウム塩、オキサラボレート塩等のリチウム塩が挙げられる。これらのリチウム塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非水溶媒に対する溶解性、二次電池とした場合の充放電特性、出力特性、サイクル特性等を総合的に判断すると、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を電解質として含むことが好ましい。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1(A)は、本発明の非水電解液電池の実施の形態であるリチウムイオン二次電池の内部を透視状態で示した概略図であり、図1(B)は、図1(A)のIB−IBの断面図である。このリチウムイオン二次電池1は、正極リード端子3aを備える正極板3と、負極リード端子5aを備える負極板5と、正極板3と負極板5との間に配置されたセパレータ7とを備える。正極板3、負極板5及びセパレータ7は、積層されて積層体9を構成する。このリチウムイオン二次電池1は、この積層体9が正極リード端子3a及び負極リード端子5aが外部に接続可能な状態でケース11内に配置された構造になっている。
(実施例1)
(1)<正極の作製>
正極板の作製は、以下のように行った。リチウムコバルト酸化物(LCO)(正極活物質、日亜化学(株)製)95重量部に、導電剤としてアセチレンブラック(導電剤、商品名:HS−100、平均粒子径48nm(電気化学工業社カタログ値)、電気化学工業(株)製)2.5重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン2.5重量部及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を充分に混合して正極合剤を調製した。この正極合剤を正極集電箔の片面に塗布した。80℃で乾燥後圧延して、正極板の厚みが約200μmになるよう形成し、正極板を作製した。
その後、正極板は乾燥処理を施し、所定密度までプレスにより圧密化した。正極合剤密度は3.7g/cm3とし、正極合剤塗布量は、正負極の容量比を同一にするため、プレドープを実施しない電池に使用する正極板への塗工量は、284g/m2とし、プレドープを実施する電池に使用する正極板への塗工量は、256g/m2とした。アルミニウム箔は、短辺(幅)が350mmの矩形状であり、片側の長辺に沿って50mmの幅の未塗布部を残した。その後、乾燥処理を施し、所定密度までプレスにより圧密化した。次いで、裁断により、幅350mmの正極板を得た。この際、上記未塗布部に切り欠きを入れ、切り欠き残部をリード片とした。リード片の幅は10mm、隣り合うリード片の間隔は20mmとした。
負極板の作製を以下のように行った。炭素材料として人造黒鉛(MAGE、平均粒子径20μm、日立化成(株)製)87重量部及び珪素化合物として炭素被覆SiO(平均粒子径10μm、日立化成(株)製)10重量部に、カルボキシメチルセルロース(増粘剤、商品名:CMC#2200、ダイセル化学(株)製)1重量部、結着剤としてアクリル系ポリマー2重量部を順次添加し、混合することにより負極材料の混合物を得た。さらに上記混合物に対し、分散溶媒である水を添加し、混練することにより負極合剤を作製した。この負極合剤を負極用の集電箔である銅箔の両面に実質的に均等かつ均質に塗布した。
銅箔は、貫通孔を有する電解銅箔(厚さ10μm、貫通孔径90.9μm、貫通孔面積6.4×10−9m2、開口率34.7%、日立化成(株)製、商品名:TH−2090)を用いた。その後、80℃で乾燥後圧密化し、負極合剤密度を1.8g/cm3とし、負極合剤の塗布量は両面に行い200g/m2とした。銅箔は、短辺(幅)が360mmの矩形状であり、片側の長辺に沿って150mmの幅の未塗布部を残した。その後、乾燥処理を施し、所定密度までプレスにより圧密化した。次いで、裁断により、幅360mmの負極板を得た。この際、上記未塗布部に切り欠きを入れ、切り欠き残部をリード片とした。リード片の幅は10mm、隣り合うリード片の間隔は20mmとした。
攪拌機、温度計、冷却管、送液ポンプを装着した0.5リットルの3つ口フラスコ内に、水335g、乳化剤としてカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製、商品名:CMC#2200)の2%水溶液21.46gを加え、アスピレーターで2.6kPa(20mmHg)に減圧後、窒素で常圧に戻す操作を3回繰り返し、溶存酸素を除去した。フラスコ内を窒素雰囲気に保ち、攪拌しながらオイルバスで60℃に加熱後、過硫酸カリウム0.26gを水8gに溶解して3つ口フラスコに加えた。
過硫酸カリウムを加えた後、アクリロニトリル(和光純薬工業(株)製)16.98g(総単量体量(100モル%)中に40モル%の割合)、一般式(II)で表される単量体(R21がメチル基、R22が炭素数4のブチル基であるブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)68.26g(総単量体量(100モル%)中に60モル%の割合)、一般式(I)で表される化合物(R1が水素原子、nが4、R2がエトキシ化ペンタエリスリトール基)であるエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:ATM−4E)0.34g(総単量体量(100モル%)に対して0.04モル%の割合)の混合物である単量体組成物を送液ポンプで2時間掛けて滴下して乳化重合を行った。単量体組成物の滴下終了後の単量体の反応転化率は51%であった。1時間攪拌を継続した後、80℃に昇温し、更に2時間攪拌を継続して、アクリル系ポリマー粒子の水分散液を得た。得られた水分散液をアルミパンに約1mL量り取り、160℃に加熱したホットプレート上で15分間乾燥させ、残渣重量から不揮発分を算出したところ15.3%(共重合体の収率98%)であった。
サイクル試験評価のため、上記手順で作製した正極を13.5cm2の角形に、負極を14.26cm2の角型に切断し、評価用電極を得た。ポリエチレン微多孔膜からなるセパレータ(商品名:ハイポア、旭化成(株)製)を正負極間にはさみ、積層体を作製した。
負極の電位を測定するため、前記積層体の側面にLi金属とNiタブを接触したものをアルミラミネート容器(商品名:アルミラミネートフィルム、大日本印刷(株)製)に入れ、電解液(1MのLiPF6を含むエチレンカーボネート/メチルエチルカーボネート=3/7混合溶液(体積比)に混合溶液全量に対してビニレンカーボネートを0.5モル%添加したもの、キシダ化学(株)製)を1mL添加し、アルミラミネート容器を熱溶着させ、電極評価用電池を作製した。
プレドープ(予備充電)を実施するため、負極集電箔に用いる穴あき銅箔については、サイクル試験の前に前記ラミネート型電池を用いてプレドープした。プレドープには、前記ラミネート電池の正極を金属リチウムとし、負極は貫通孔を有する銅箔に均一に塗工した電極を使用した。
ここで、負極活物質にLiイオンが挿入される方向を充電と定義し、プレドープの容量は、負極の不可逆容量分(67mAh/g)とした。充電後、ラミネート型電池を解体し、負極のみ取り出し正極(LCO)と組み合わせた。これ以降の操作は前記ラミネート型電池の作成と同様に実施した。
実施例1の放電終止電圧を2.4Vとした他は実施例1と同様にして電池試験を実施した。
実施例1の放電終止電圧を2.5Vとした他は実施例1と同様にして電池試験を実施した。
実施例2の負極集電箔を通常銅箔(日本電解(株)製)とした他は実施例2と同様にして電池試験を実施した。
実施例1の放電終止電圧を2.7Vとした他は実施例1と同様にして電池試験を実施した。
比較例1の放電終止電圧を3.1Vとした他は比較例1と同様にして電池試験を実施した。
実施例1のプレドープを実施しなかった他は実施例1と同様にして電池試験を実施した。
実施例1の放電終止電圧を2.1Vとした他は実施例1と同様にして電池試験を実施した。
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られたリチウムイオン二次電池について、25℃での充放電容量を測定し、電池特性とした。まず、25℃の環境下において2.7〜4.2Vの電圧範囲で、0.1C(プレドープなし:9.41mA,プレドープあり:9.53mA)の電流値により充電を行った。さらに、4.2Vまで電池を充電後、0.01C(プレドープなし:0.941mA,プレドープあり:0.953mA)となる電流値まで充電を行った。
放電試験においては、10時間率すなわち0.1C(プレドープなし:9.41mA,プレドープあり:9.53mA)の電流値で終止電圧2.7Vの定電流放電による放電を行った。この試験後、電流値を5時間率すなわち0.2Cとして同様の条件で充放電試験を実施した。
ここで時間率は、放電終止電圧に達するまでの放電時間を表し、
時間率=容量(mA・h)/放電電流(mA)
で表される。
(容量維持率の評価)
1サイクル目は0.1C、2サイクル目以降は0.2Cでサイクル試験を行った。0.2Cの1サイクル目の容量を容量維持率100%として算出した。
(初回充放電効率)
初回充電容量と初回放電容量から、初回充放電効率を算出した。初回充放電効率は(初回放電容量/初回充電容量)×100(%)で表される。
1つ目は、(1)貫通孔を有する銅箔が充放電に伴って伸縮することで、SiOxの膨張収縮の際の応力を緩和する作用、(2)貫通孔を通じて負極活物質同士が接着する作用による。前記(1)(2)の作用により充放電中に負極合剤層が銅箔から剥離することを抑制できる効果が生じ、その結果、100サイクル後の容量が上昇したものと推測する。
2つ目は、5時間率の電流値以下で放電した時の放電終止電圧を2.4V〜2.7Vにしたとき、プレドープによって負極の作動電位が低下し、0.1V〜0.8Vの範囲となったためである。負極の作動電位が低下したことによって、正極活物質であるリチウムコバルト酸化物(LCO)の質量当たりの容量(mAh/g)が向上し、放電容量が向上する結果、充放電効率が向上する。また、SiOxは黒鉛より貴な電位でリチウムイオンを放出する。負極の作動電位が低下すると、負極放電容量に占める黒鉛からの放電容量の割合と、SiOXからの放電容量の割合とでは、相対的に黒鉛からの放電容量の割合が高くなるため、容量維持率が優れる結果となったと考えられる。放電にSiOXが寄与する割合が高くなると、SiOx粒子の膨張収縮による体積変化が生じるため導電性が低下する。その結果、容量及び容量維持率が低下する傾向にある。
前述したように、SiOxは黒鉛より貴な電位でリチウムイオンを放出する。負極の電位が0.6Vより高いと、放電時にSiOx粒子の膨張収縮による体積変化が生じる。すると、銅箔と負極合剤との密着性が弱くなり、導電性が低下するため容量及び容量維持率が低下したと考えられる。比較例3は、貫通孔を有する銅箔を使用しており、かつ、放電終止電圧が2.7Vであるものの、負極の電位が1.0Vであることから、比較例1と同様に放電時にSiOx粒子の膨張収縮による体積変化が生じて、容量が低下したものと考えられる。
放電終止電圧が3.1Vであり負極の放電終止電位が0.6Vであった比較例2では、負極の電位は0.1V〜0.8Vの範囲であるものの、正極の電位が高いため実施例に比べて容量及び容量維持率が低下した。
放電終止電圧を2.4V未満にした場合、比較例4のように、負極の電位が1.3Vと上昇し、サイクル特性が劣化することとなった。放電終止電圧が低く、かつ負極の電位が高いことによって、SiOxの膨張収縮作用が導電性の低下につながり、容量及び容量維持率が低下したものと推測する。
3正極板
5負極板
7セパレータ
9積層体
11ケース
Claims (4)
- 珪素酸化物及び炭素材料を有する負極合剤を集電箔に塗工したリチウムイオン二次電池用負極であって、
前記負極集電箔は一面に複数の貫通孔を有し、
前記リチウムイオン二次電池用負極は5時間率の電流値以下で放電した時の放電終止電圧が2.4V〜2.7Vであり、
かつ、前記放電終止電圧時における前記リチウムイオン二次電池用負極の電位は、金属リチウム基準(vs Li/Li+)で0.1V〜0.8Vとなるリチウムイオン二次電池用負極。 - 前記負極集電箔の貫通孔の各面積が9×10−11m2〜8×10−7m2であり、かつ前記貫通孔の開口率が前記負極集電箔の面積に対して10%〜50%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記負極集電箔は銅箔である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項1乃至請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用負極を備えるリチウムイオン二次電池。
Priority Applications (1)
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