以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。まず、本実施形態に係るキャップの構成を詳細に説明する。図1は本実施形態に係るキャップ1の一例が示された平面図であり、図2は図1のキャップ1の側面図であり、図3は図1のキャップ1の底面図であり、図4は図1のIV−IV線断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2における後述するキャップ本体10の注出口としてのノズル11側を上とし、胴部14側を下とし、キャップ本体10側を前とし、後述する蓋部30側を後とし、紙面に対して手前側を左とし、奥側を右とする。また、図1におけるIV−IV線は、キャップ1の左右方向の中心を通り、前後方向に延びる直線であり、図4はキャップ1の左右中央の鉛直断面図である。
図1〜図4に示されるように、本実施形態に係るキャップ1は、キャップ本体10、蓋部30、ヒンジ構造50等から構成され、後述する規制板22を除いて、IV−IV線を基準として左右対称形状である。キャップ本体10は、注出口としてのノズル11を有し、平面視において略円形の基板12と、基板12の外縁に沿って内表面13から垂設される略円筒状の胴部14等を有する有頂円筒状である。一方、蓋部30は、平面視において略円形の閉塞板31と、閉塞板31の外縁に沿って内表面32から垂設される略円筒状の側部33等を有する有頂円筒状である。そして、蓋部30は、側部33の開放した端が上方に位置した状態でヒンジ構造50を介してキャップ本体10に連結されている。
なお、詳細については後述するが、キャップ1は、キャップ本体10が後述する容器に取り付けられ、容器に収容される内容物が注出口としてのノズル11の先端から注出される構成である。また、キャップ1は、ヒンジ構造50によって蓋部30がキャップ本体10に対して揺動自在な構成であり、キャップ本体10を上方から覆うように蓋部30を被せ、蓋部30をキャップ本体10に嵌合させることにより、注出口としてのノズル11が蓋部30によって閉塞され、注出口を閉じることができる。つまり、ヒンジ構造50は、蓋部30をキャップ本体10に対して、ノズル11が蓋部30によって覆われた閉蓋状態と、ノズル11が開放された開蓋状態との間で揺動自在に連結させている。
ここで、基板12と胴部14を有する有頂円筒状のキャップ本体10の構成について詳述する。基板12は、平面視において、その中心がIV−IV線上に位置する略円形の板状部材である。基板12には、外縁に沿って内表面13から下方へ向けて略円筒状の胴部14が垂設される。ここで、有頂円筒状のキャップ本体10の前側には、内方へ窪む凹部15が形成されている。凹部15は、前側の基板12と胴部14の上部に亘って形成され、基板12の外表面16側から下方へ(胴部14の筒軸方向へ)向かって延設される。この凹部15によって、胴部14の外周面には、鉛直かつ左右方向に延びる平坦な面が形成されている。そして、基板12は平面視において前側が切り欠かれた左右対称の略円形であり、キャップ本体10は左右対称の有頂円筒状である。なお、胴部14の外径は、蓋部30の側部33の外径と略同一の略円形である。
基板12は、外縁の全周に亘って外表面16から内表面13に向かって窪む段差部17を有する。段差部17の底面は水平面である。段差部17の径方向の幅と上下方向の深さは、周方向に略一定である。また、基板12は、段差部17の内周側の縁の全周に亘って、外表面16から上方かつ径方向外方に突出する環状の係止リブ18を備える。係止リブ18の外周側の上部には、外方に突出する環状の係止突起部19が形成されている。ここで、係止リブ18は、後述する蓋部30が有する係合リブ39を係止するものである。係合リブ39が係止リブ18に係止されることで、蓋部30がキャップ本体10に係止される。また、詳細については後述するが、係止突起部19の最外端における周面は、後述する蓋部30の側部33の内周面に対応しており、蓋部30がキャップ本体10に嵌合された閉蓋状態において、側部33の内周面と当接する。
基板12と胴部14の後側であって、基板12の外縁端部及び胴部14の上端部には、ヒンジ構造50の一端が連設される。ヒンジ構造50の他端には、蓋部30が連設され、蓋部30はヒンジ構造50を介してキャップ本体10に揺動自在に連結されている。
ノズル11は筒状であり、基板12の外表面16から上方に向かって縮径して円錐台状に構成される下筒部20と、下筒部20の上端に連設される円筒状の上筒部21とから構成される。ノズル11は、平面視において、基板12の中心から所定の距離だけ前側に偏心した位置に配設されている。ノズル11の内部は、基板12を貫通し、胴部14の内部と連通している。そして、注出口としてのノズル11の先端から内容物を注出することができる。なお、ノズル11の上筒部21の内周面には、内方へ突出する5つの規制板22が形成されている。規制板22は、内方に向かって先細りであり、平面において略三角形の板状部材である。5つの規制板22は、周方向に略等間隔で配置されている。ここで、規制板22は、ノズル11から液状や粘体状の内容物を注出する際の注出量等の注出具合を調節するためのものであり、内容物が通過するノズル11の内部を部分的に閉塞するように構成されている。内容物の粘性等に応じて規制板22のサイズを変更するだけ、内容物に適した注出具合に調節することができ、汎用性が高い。
また、キャップ本体10は、基板12の内表面13から下方へ(胴部14の筒軸方向へ)向かって垂設される円筒状の取り付け部23を有する。取り付け部23は胴部14の筒軸と同心の位置に形成され、取り付け部23の内部はノズル11の内部と連通する。取り付け部23の内周面には螺子構造24が形成されている。
ここで、取り付け部23は、後述する容器の円筒状の口部に螺合されるものであり、取り付け部23が容器の口部に螺合されることで、キャップ本体10が容器に取り付けられる。そして、容器の内部に収容される内容物は、口部から注出口としてのノズル11の内部を通過し、ノズル11の先端から注出される。
また、キャップ本体10は、取り付け部23の外周面から外方に突出し、基板12の内表面13から下方へ延設される6つの補強リブ25を有する。6つの補強リブ25は、周方向に略等間隔で配置されている。この6つの補強リブ25によって、円筒状の取り付け部23の剛性が向上されている。なお、補強リブ25は上述の構成に限定されるものではない。例えば、補強リブ25は、取り付け部23の外周面から胴部14の内周まで延びる板状に形成されても良い。
また、キャップ本体10は、ヒンジ構造50が連結される部位に対応する後側において、基板12の内表面13と胴部14の内周面との接合部に内方へ突出する厚肉部26を有する。この厚肉部26によって、キャップ本体10のヒンジ構造50が連結される部位の剛性が向上されている。
また、キャップ本体10の基板12の外表面16であって、ノズル11の後側のIV−IV線上には、キャップ1が射出成形によって作製される際の溶融樹脂の流入口(ゲート)において、付随的に形成された固化した部分が付着する。なお、図1〜図4にはその部分が切り取られた後の形態が示されている。また、このゲートは、取り付け部23に対応した箇所に位置している。
次に、閉塞板31と側部33を有する有頂円筒状の蓋部30の構成について詳述する。閉塞板31は、平面視において、その中心がIV−IV線上に位置する略円形の板状部材である。なお、閉塞板31は、外表面34から内表面32へ向かって内表面32側が突出するように凸状に湾曲している。一方で、閉塞板31の外表面34の外縁付近の環状部分は、内表面32の側には湾曲しておらず、平坦な面に形成される。また、閉塞板31には、外縁に沿って内表面32から上方へ向けて略円筒状の側部33が垂設される。ここで、有頂円筒状の蓋部30の側部33の後側には、内方へ窪む凹部35が形成されている。凹部35は、後側の側部33の上端から下端に亘って形成されている。この凹部35によって、側部33の外周面には、鉛直かつ左右方向に延びる平坦な面が形成されている。また凹部35が形成された後側において、閉塞板31が側部33の外方に突出した突出部36が形成されている。なお、蓋部30の凹部35は、キャップ本体10の凹部15に対応しており、蓋部30の側部33の外径は、キャップ本体10の胴部14の外径と略同一である。したがって、蓋部30は左右対称の有頂円筒状であり、キャップ本体10に対応する形状である。
蓋部30は、閉塞板31の内表面32から上方へ向けて突出する環状の第1閉塞リブ37を有する。第1閉塞リブ37は、キャップ本体10のノズル11に対応しており、閉塞板31の中心から所定の距離だけ後側に偏心した位置に形成されている。第1閉塞リブ37の内径はノズル11の上筒部21の外径と略同一である。また、蓋部30は、第1閉塞リブ37と同様に、閉塞板31の内表面32から上方へ向けて突出する環状の第2閉塞リブ38を有する。第2閉塞リブ38は、第1閉塞リブ37と同心の位置に形成され、キャップ本体10のノズル11に対応している。第2閉塞リブ38の外径はノズル11の上筒部21の内径と略同一である。第2閉塞リブ38の上方への突出高さは、第1閉塞リブ37の上方への突出高さよりも低い。なお、詳細については後述するが、蓋部30がキャップ本体10に嵌合される際に、第2閉塞リブ38はノズル11の上筒部21の内部に挿入され、ノズル11の上筒部21は第1閉塞リブ37の内部に挿入される。つまり、ノズル11の上筒部21は、第1閉塞リブ37と第2閉塞リブ38との間に形成される環状の間隙に嵌め込まれ、ノズル11の先端が閉塞される。
また、凹部35に対応する側部33の後側には、内周面から内方に突出する係合リブ39が形成されている。係合リブ39は、側部33の上端に沿って左右方向に延設されている。ここで、係合リブ39は、キャップ本体10の係止リブ18と対応している。そして、蓋部30がキャップ本体10に嵌合される際に、係合リブ39と係止リブ18が係合し、蓋部30がキャップ本体10に係止される。
次に、キャップ本体10に対して蓋部30を揺動自在に連結させるヒンジ構造50の構成について詳述する。図5は図1のヒンジ構造50が示された拡大図であり、図6は図5のVI−VI線断面図であり、図7は図5のVII−VII線断面図であり、図8は図5のVIII−VIII線断面図であり、図9は図5のIX−IX線断面が模式的に示された断面図である。ここで、図5において、キャップ本体10は上側に位置し、蓋部30は下側に位置している。また、図5におけるVI−VIは、図1におけるIV−IV線と同一の箇所を通る直線であり、VII−VII線は、後述するサイドヒンジ部54aのブロック部51a側の端に沿って前後方向に延びる直線であり、VIII−VIII線は、サイドヒンジ部54aの外縁に沿って前後方向に延びる直線であり、IX−IX線は、ヒンジ構造50の前後方向の中心を通って左右方向に延びる直線である。また、図9は、後述するヒンジ部52がその厚み方向に拡大されて模式的に示された断面図である。
図5〜図9に示されるように、ヒンジ構造50は、有頂円筒状のキャップ本体10の後側と有頂円筒状の蓋部30の前側との間に形成され、一対のブロック部51a、51bと、キャップ本体10と蓋部30を連結させる薄膜状のヒンジ部52とを備え、VI−VI線を基準に左右対称の構造である。
ブロック部51aは、キャップ本体10の後側の胴部14の外周面から蓋部30の側である後方に向けて突出し、側面視において略台形に形成されている。ブロック部51aの上面は、平坦な面であって、キャップ本体10の段差部17と同一面上に位置し、平面視において略長方形である。ブロック部51bは、ブロック部51aと前後対称形状であり、蓋部30の前側の外周面からキャップ本体10の側である前方に向けて突出し、側面視において略台形に形成されている。ブロック部51bの上面は、平坦な面であって、蓋部30の側部33の上端面と同一面上に位置し、平面視において略長方形である。そして、ブロック部51a、51bは、キャップ本体10の胴部14の外周面と蓋部30の側部33の外周面からそれぞれ対向して連結方向である前後方向に突出して対をなすように構成されている。
薄膜状のヒンジ部52は、一対のブロック部51a、51bの前後方向の間に形成されるセンターヒンジ部53と、一対のブロック部51a、51bの右側及び左側に形成される一対のサイドヒンジ部54a、54bとから構成されている。なお、センターヒンジ部53と一対のサイドヒンジ部54a、54bは、一つの薄膜状になるように一体的に形成されている。
センターヒンジ部53は、一端がブロック部51aの後端に連結され、他端がブロック部51bの前端に連結され、左右方向の幅がブロック部51a、51bの幅と同一であり、平面視において長方形である。センターヒンジ部53は水平方向に延びており、その上面は、一対のブロック部51a、51bの上面よりも下方に位置している。すなわち、一対のブロック部51a、51bの間には下方へ向けて窪んだ凹部55が形成されている。
サイドヒンジ部54aは、一対のブロック部51a、51b及びセンターヒンジ部53の左側に形成され、平面視において略等脚台形である。サイドヒンジ部54aは、前端がキャップ本体10の段差部17に連結され、後端が蓋部30の側部33に連結され、右側端は一対のブロック部51a、51bの左側及びセンターヒンジ部53の左側端に連結される。
また、サイドヒンジ部54bは、一対のブロック部51a、51b及びセンターヒンジ部53の右側に形成され、平面視において略等脚台形であり、サイドヒンジ部54aと左右対称形状である。サイドヒンジ部54bは、前端がキャップ本体10の段差部17に連結され、後端が蓋部30の側部33に連結され、左側端は一対のブロック部51a、51bの右側及びセンターヒンジ部53の右側端に連結される。
ここで、キャップ本体10の段差部17には、ブロック部51aの右側及び左側からそれぞれ段差部17の外縁に沿って周方向に延設される連結段差部56a、56bが形成されている。連結段差部56a、56bは、段差部17の底面から下方に向かう窪みである。連結段差部56a、56bの底面は、それぞれブロック部51aから周方向(延設方向)に向かって下方へ傾斜している。そして、サイドヒンジ部54aの前端は、連結段差部56aの底面にその外縁に沿って連結されている。また、サイドヒンジ部54bの前端は、連結段差部56bの底面にその外縁に沿って連結されている。
また、蓋部30の側部33の上端面には、ブロック部51bの右側及び左側からそれぞれ側部33の外縁に沿って周方向に延設される連結段差部57a、57bが形成されている。連結段差部57a、57bは、連結段差部56a、56bと同様の窪みであり、側部33の上端面から下方に向かう窪みである。連結段差部57a、57bの底面は、それぞれブロック部51bから周方向(延設方向)に向かって下方へ傾斜している。そして、サイドヒンジ部54aの後端は、連結段差部57aの底面にその外縁に沿って連結されている。また、サイドヒンジ部54bの後端は、連結段差部57bの底面にその外縁に沿って連結されている。
したがって、サイドヒンジ部54aの前端は、一対のブロック部51a、51bの側から外縁(左側)に向かって下方に傾斜した状態でキャップ本体10に連結されている。一方で、サイドヒンジ部54aの後端は、一対のブロック部51a、51bの側から外縁(左側)に向かって下方に傾斜した状態で蓋部30に連結されている。なお、サイドヒンジ部54aは、側面視において、上方に(上面側に)凸状に湾曲している。また、サイドヒンジ部54bは、サイドヒンジ部54aと同様に、前端が一対のブロック部51a、51bの側から外縁(右側)に向かって下方に傾斜した状態でキャップ本体10に連結され、後端が一対のブロック部51a、51bの側から外縁(右側)に向かって下方に傾斜した状態で蓋部30に連結されている。また、サイドヒンジ部54bは、側面視において上方に(上面側に)凸状に湾曲している。
ここで、図9に示すように、薄膜状のヒンジ部52の肉厚は一定ではなく、センターヒンジ部53の肉厚T1と一対のサイドヒンジ部54a、54bの肉厚T2は異なる。更に、サイドヒンジ部54a、54bは、それぞれの外縁側に、一対のブロック部51a、51bの側から外縁に向けて肉厚が徐々に厚くなるように形成されたテーパ部58a、58bを有する。テーパ部58a、58bは、サイドヒンジ部54a、54bが上面の側に厚みが増すように構成されている。なお、図9における直線L1は、テーパ部58a、58bの一対のブロック部51a、51bの側の端を通り、上下方向に延びる鉛直線である。また、直線L2は、センターヒンジ部53とサイドヒンジ部54a、54bとの接続部を起点としてサイドヒンジ部54a、54bの途中まで上面を通り、テーパ部58a、58bの部分を貫通する直線である。また、図9には、ヒンジ部52の左右方向の幅W1、センターヒンジ部53の左右方向の幅W2、サイドヒンジ部54a、54bの左右方向の幅W3、テーパ部58a、58bの左右方向の幅W4、センターヒンジ部53の肉厚T1、サイドヒンジ部54a、54bの肉厚T2、テーパ部58a、58bの外縁における肉厚の増加量Taが示される。なお、ここでの肉厚とは、上面と下面との最短の距離と定義される。また、テーパ部58a、58bの肉厚の増加量とは、直線L2と垂直な方向の肉厚の増加量であって、サイドヒンジ部54a、54bの厚さ方向の肉厚増加量と定義される。
上述のように構成されるヒンジ構造50は、ヒンジ部52は、一対のブロック部51a、51bの左右両側(サイドヒンジ部54a、54b)において、一対のブロック部51a、51bの側から外縁に向けて肉厚が徐々に厚くなるように形成されたテーパ部58a、58bを有するように構成されている。そして、このテーパ部58a、58bによって、ヒンジ部52の左右の外縁部であるサイドヒンジ部54a、54bの外縁部の強度が高められている。そして、ヒンジ構造50は、凹部55上方に位置し、ブロック部51a、51bの上面が位置する水平面上を通り、左右方向に延びる軸を揺動軸として、キャップ本体10に対して蓋部30を揺動自在に連結させるように構成されている。
次に、本実施形態に係るキャップ1の製造方法の一例を詳細に説明する。キャップ1は、上述したように、蓋部30がキャップ本体10にヒンジ構造50を介して揺動自在に連結された状態で一体に形成される。キャップ1は、熱可塑性樹脂から構成され、生産性の観点から射出成形機で製造される。図10は、キャップ1を製造するための射出成形装置70の一例が示された概略図である。射出成形装置70は、ホッパドライヤ71と、ホッパ72と、加熱シリンダ73と、金型74とを備える。
ホッパドライヤ71は、キャップ1の主原料となる例えばペレット形状の成形材料の投入口である。ホッパドライヤ71は、成形材料を乾燥した後にホッパ72に送り出すように構成される。ホッパドライヤ71は投入された成形材料を予め定められた水分率まで乾燥することができれば良く、例えば、熱風乾燥型や、除湿熱風乾燥型、減圧伝熱乾燥型であっても良い。
射出成形装置70は、ホッパ72に投入された成形材料が、加熱シリンダ73で溶融可塑化され、金型74に送り出されるように構成される。筒状の加熱シリンダ73は、外周に図示せぬヒータを備えるとともに、内部には、金型74への射出用の図示せぬスクリュを備える。加熱シリンダ73は、ヒータからの伝熱によって成形材料を例えば180℃〜300℃に加熱させるように構成される。
複数に分割されて構成される金型74には、成形品としてのキャップ1の形状に該当する空間部分であるキャビティ75が形成される。なお、キャビティ75は、本実施形態に係るキャップ1の特徴を有する形状に対応するように形成される。加熱シリンダ73から射出された成形材料はキャビティ75に注入されるように構成される。金型74には、金型74を加熱する図示せぬヒータと、金型74を冷却する図示せぬ冷却機とが設けられる。金型74は、ヒータによって加熱されたキャビティ75に溶融した成形材料が注入、及び加圧された後に冷却機によって冷却され、キャップ1が成形されるように構成される。
このような射出成形装置70が用いられてキャップ1が製造される。まず、射出成形装置70のホッパドライヤ71で乾燥された上でホッパ72に投入された熱可塑性樹脂が加熱シリンダ73で溶融可塑化されて、金型74に射出される。熱可塑性樹脂が、加熱シリンダ73から金型74のキャビティ75に射出、及び加圧された後に冷却機によって冷却されることによってキャップ1が成形される。なお、金型74を構成する材料は、特に限定されるものではなく、キャップ1の原料や生産量等に応じて適宜設計するものであり、例えば、一般構造用鋼、機械構造用炭素鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、これらの鋼に焼き入れ焼き戻しを施した高硬度鋼やプリハードン鋼、非鉄金属のアルミニウム合金や銅合金等を用いることができる。また、金型74のキャビティ表面(金型表面)には、表面処理を施しても良く、例えば、硬質クロム等のメッキ処理、窒化処理、硼化処理、化学的蒸着や物理的蒸着等によるセラミックコーティング等の非金属被膜処理等が挙げられる。このような表面処理を施すことによって金型74の耐久性が向上される。
ここで、ヒンジ構造50は、上述したように一対のブロック部51a、51bと、キャップ本体10と蓋部30を連結させる薄膜状のヒンジ部52とから構成されている。ヒンジ部52は薄膜状であるため、キャビティ75のヒンジ部52に対応する部位は狭い空間である。したがって、射出成形装置70でキャップ1を成形する際に、溶融した熱可塑性樹脂の流れがキャビティ75の薄膜状のヒンジ部52に相当する箇所で悪くなりやすい。更に、ヒンジ部52の外縁部にはその肉厚が厚くなっているテーパ部58a、58bが形成されているので、キャビティ75のヒンジ部52に対応する部位は、左右方向において、その空間の上下方向の幅が一定ではない。しかしながら、テーパ部58a、58bは、左右方向において、内側から外側に向けて肉厚が徐々に厚くなるように構成されている。つまり、キャビティ75のヒンジ部52に対応する部位は、左右方向において、その空間の上下方向の幅が徐々に変化するように構成されている。したがって、キャビティ75のヒンジ部52に対応する部位は、溶融した熱可塑性樹脂の流路の断面が広い箇所と断面が狭い箇所とが明確に分離することがなく、成形不良が生じにくいように構成されている。したがって、射出成形装置70でキャップ1が成形される際の射出成形性が良好であり、キャップ1は量産性に優れる。
キャップ1の原料としての熱可塑性樹脂は、ヒンジ構造50が蓋部30をキャップ本体10に対して揺動可能とする十分な強度及び柔軟性を有し、内容物の品質に影響を与えず、内容物に接触しても衛生的に支障のないものであれば良く、その種類は特に限定されない。例えば、キャップ1の原料には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート等を用いることができる。
次に、蓋部30によるキャップ本体10の注出口の開閉方法について詳述する。図11は蓋部30がキャップ本体10に嵌合した状態の一例が示された断面図である。
本実施形態におけるキャップ1では、蓋部30によってキャップ本体10の注出口の開閉がなされる。まず、キャップ本体10の注出口を閉塞させる(キャップ1を閉蓋状態とする)方法について説明する。図1〜図4に示される蓋部30の側部33の開放した端が上方に位置した状態において、ヒンジ構造50を基点として蓋部30を上方かつ前方へ揺動させる。そして、キャップ本体10の基板12の外表面16と閉塞板31の内表面32とが対向するように蓋部30をキャップ本体10に上方から覆い被せ、キャップ本体10に嵌合させる。蓋部30をキャップ本体10に嵌合させることで、注出口としてのノズル11が蓋部30によって覆われ、キャップ1が閉蓋状態となる。
この蓋部30をキャップ本体10に嵌合させる際に、キャップ本体10の上部は蓋部30の内部に挿入され、蓋部30の側部33の開放された側の端面がキャップ本体10の段差部17の底面と当接する。つまり、キャップ本体10の段差部17の底面から上側の部位が蓋部30の内部に挿入される。ここで、段差部17の周面は蓋部30の側部33の内周面に対応しており、段差部17の周面と側部33の内周面との間には所定の間隙が形成されるように構成されている。なお、蓋部30は、ヒンジ構造50を介してキャップ本体10に揺動自在に連結されているため、キャップ本体10に対して直上から嵌合されるのではなく、斜め後方から嵌合される。しかしながら、段差部17の周面と側部33の内周面との間には所定の間隙が形成されるため、蓋部30をキャップ本体10に滑らかに嵌合させることができる。
なお、キャップ本体10には、段差部17の内周側の縁の全周に亘って、環状の係止リブ18が形成されている。係止リブ18の上部に形成された係止突起部19の最外端における周面は、側部33の内周面に対応しており、側部33の内周面と当接する。また、側部33には係合リブ39が形成されており、この係合リブ39と係止リブ18が係合し、蓋部30がキャップ本体10に係止される。したがって、キャップ本体10の係止リブ18と蓋部30の側部33と係合リブ39とによって、蓋部30をキャップ本体10に確実に係止させることができ、キャップ1を閉蓋状態に維持させることができ、注出口の閉塞性が高い。
なお、キャップ本体10による蓋部30の係止力は、係止リブ18と係合リブ39との係止代によって決まるものであり、適宜設計できる。また、係止リブ18と係合リブ39は、上述の構成に限定されるものではない。係止リブ18と係合リブ39とが係合して蓋部30をキャップ本体10に係止させ、注出口が閉塞された状態に維持することができれば良く、係合の構成やそれぞれの配設位置は適宜設計できる。例えば、係合リブ39は、蓋部30の側部33の上端部に複数配設されても良く、側部33の全周に亘って環状に形成されても良い。また、係止リブ18と係合リブ39は2つの突起同士が係合する構成であるが、突起が溝に係合する構成であっても良い。
また、この閉蓋状態において、蓋部30の第2閉塞リブ38はノズル11の上筒部21の内部に挿入され、上筒部21は蓋部30の第1閉塞リブ37の内部に挿入される。そして、ノズル11の上筒部21は、第1閉塞リブ37と第2閉塞リブ38との間に形成される環状の間隙に嵌め込まれ、蓋部30の閉塞板31によってノズル11の先端が閉塞される。したがって、ノズル11の先端は、第1閉塞リブ37と第2閉塞リブ38とによって、内外両側方向から全周が覆われた状態となるので、注出口の閉塞性が高い。
なお、ノズル11と第1閉塞リブ37と第2閉塞リブ38は、上述の構成に限定されるものではなく、注出口を閉塞することができる構成であれば良い。例えば、第1閉塞リブ37と第2閉塞リブ38のいずれかを備える構成であっても良く、第1閉塞リブ37の内周面が上筒部21の外周面に密着する構成であっても良く、第2閉塞リブ38の外周面が上筒部21の内周面に密着する構成であっても良い。
また、キャップ本体10が有する注出口は、上述のノズル11に限定されるものではなく、例えば、基板12の内表面13と外表面16との間を貫通する貫通孔としても良い。なお、このような構成の場合には、蓋部30は、第1閉塞リブ37と第2閉塞リブ38に替わって、この貫通孔に挿入され、貫通孔を閉塞する円柱状の突起を設ける構成としても良い。
次に、蓋部30をキャップ本体10から取り外して注出口を開放させる(キャップ1を開蓋状態とする)方法について説明する。図11に示される蓋部30がキャップ本体10に嵌合された状態において、蓋部30に形成された突出部36を下方から上方かつ後方へ向けて押し上げる。そして、係止リブ18と係合リブ39との係合が外れ、蓋部30がキャップ本体10から取り外される。更に、蓋部30を上方かつ後方へ向けて押し上げることで、蓋部30がヒンジ構造50を基点として揺動され、蓋部30によって覆われていた注出口としてのノズル11が露出され、キャップ1が開蓋状態となる。
ここで、突出部36は、ヒンジ構造50の反対側の位置に形成されているので、上方へ押し上げる力が蓋部30の揺動方向へ効果的に作用し、蓋部30のキャップ本体10からの取り外しが容易に行える。
また、キャップ本体10には、蓋部30の凹部35に対応する凹部15が形成されている。そして、閉蓋状態において、突出部36の下方には、凹部15と凹部35とによって空間が形成されるので、この空間に指を入れて突出部36を押し上げることができる。したがって、蓋部30への指のかかり代を十分に確保することができ、蓋部30の取り外しが容易に行える。また、凹部15と凹部35とによって、蓋部30のキャップ本体10からの取り外し性を維持しつつ、平面視において突出部36がキャップ本体10の胴部14の外方への突出しない形態とすることができ、キャップ1の外観を外方へ突出する部位が少ない良好なものすることができる。
なお、キャップ本体10の凹部15や蓋部30の凹部35や突出部36は、上述の構成に限定されるものではなく、蓋部30をキャップ本体10から取り外す際の蓋部30への指のかかり代が十分に確保される構成であれば良く、凹部15と凹部35の窪み量、突出部36の突出量、これらの位置等は適宜設計できる。例えば、キャップ本体10は凹部15を備えない構成であっても良く、蓋部30は凹部35を備えず、突出部36が側部33の外周面から外方へ突出するように構成されても良い。また、突出部36は、側部33の開放側の端部や側部33の筒軸方向の略中央に設けられる構成であっても良い。また、蓋部30は、突出部36に替わって、側部33の外周にすべり止めの用のシボやリブ等が形成される構成であっても良い。
また、キャップ本体10の胴部14の外径は、蓋部30の側部33の外径と略同一の略円形であるので、蓋部30がキャップ本体10に嵌合された際に、胴部14と側部33との間に段差が生じることがない。そして、閉蓋状態におけるキャップ1の外観は、一つの有頂円筒状となるので良好である。また、胴部14と側部33との間に段差がないため、この段差への他部材の引っ掛かりによる不用意な蓋部30のキャップ本体10からの外れによる注出口の開放を防止することができる。
なお、キャップ本体10や蓋部30は上述の構成に限定されるものではなく、有頂筒状であれば良く、筒状部分の断面が、楕円や四角形や多角形等であっても良い。また、胴部14の外径は側部33の外径より小さい相似形状であっても良く、キャップ本体10が段差部17を備えない構成であっても良い。
ここで、ヒンジ構造50を基点に蓋部30をキャップ本体10に対して揺動させる際に、蓋部30には薄膜状のヒンジ部52の弾性力が作用する。図1〜図4に示される開蓋状態から閉蓋状態となるように蓋部30を上方かつ前方へ向かって揺動させる場合、連結方向である前後方向において、サイドヒンジ部54a、54bのキャップ本体10との連結部と蓋部30の連結端部の距離は、揺動角度が所定の角度となるまで揺動角度に応じて徐々に長くなる。したがって、揺動角度に応じてサイドヒンジ部54a、54bは徐々に引き伸ばされる。そして、蓋部30には開蓋状態に戻すように(下方かつ後方に)サイドヒンジ部54a、54bの弾性力が作用するとともに、その弾性力は徐々に増加する。
キャップ本体10に対して蓋部30を更に揺動させ、揺動角度が所定の角度となると、上述のサイドヒンジ部54a、54bのキャップ本体10との連結部と蓋部30の連結端部の距離は最大となり、凸状に湾曲していたサイドヒンジ部54a、54bが略平坦となる。そして、蓋部30を更に揺動させると、サイドヒンジ部54a、54bのキャップ本体10との連結部と蓋部30の連結端部の距離は、揺動角度に応じて徐々に短くなり、サイドヒンジ部54a、54bは反転した方向に凸状となるように湾曲する。つまり、サイドヒンジ部54a、54bは、上面側に凸状に湾曲した状態から下面側に湾曲した状態となる。そして、蓋部30には閉蓋状態となるように(上方かつ前方に)サイドヒンジ部54a、54bの弾性力が作用する。
したがって、ヒンジ構造50は、蓋部30を開蓋状態から閉蓋状態となるように揺動させる際には、サイドヒンジ部54a、54bの弾性力は、揺動角度が所定の角度となるまでは開蓋状態となるように作用し、揺動角度が所定の角度以上となると閉蓋状態となるように作用するように構成されている。一方で、ヒンジ構造50は、蓋部30を閉蓋状態から開蓋状態となるように揺動させる際には、サイドヒンジ部54a、54bの弾性力は、揺動角度が所定の角度となるまでは閉蓋状態となるように作用し、揺動角度が所定の角度以上となると開蓋状態となるように作用するように構成されている。
つまり、サイドヒンジ部54a、54bによって、蓋部30には、蓋部30を閉蓋状態または開蓋状態に維持させるように力が作用するとともに、蓋部30を開閉させる際には、開閉動作をサポートするように力が作用する。したがって、蓋部30を開閉する際にクリック感やスナップ感が得られ、開閉動作が良好となる。
なお、サイドヒンジ部54a、54bは、蓋部30を揺動させる度に伸縮されて応力が生じる。この応力は、サイドヒンジ部54a、54bの一対のブロック部51a、51b側から外縁側に向かって大きくなる。ここで、サイドヒンジ部54a、54bには、一対のブロック部51a、51bの側から外縁に向けて肉厚が徐々に厚くなるように形成されたテーパ部58a、58bが形成されており、サイドヒンジ部54a、54bは外縁に向かって徐々に強度が向上されている。したがって、サイドヒンジ部54a、54bは、テーパ部58a、58bによって、蓋部30を開閉する際に生じる応力の分布に応じてその強度が効果的に向上されており、ヒンジ構造50は反復開閉に対する耐久性に優れる。
また、ヒンジ構造50は、薄膜状のヒンジ部52よりも剛性が高い一対のブロック部51a、51bと、一対のブロック部51a、51bの間に連結され、水平方向に延びる平坦な薄膜状のセンターヒンジ部53を有している。そして、これらの構成によって、蓋部30が揺動される際に、蓋部30が左右方向に捻じれたり、キャップ本体10に対して蓋部30が前後にずれたりすることが抑制されている。つまり、一対のブロック部51a、51bとセンターヒンジ部53とによって、蓋部30の揺動軸が上下や前後に傾いたりずれたりしにくい。
また、ブロック部51aの上面はキャップ本体10の段差部17と同一面上に位置し、ブロック部51bの上面は、蓋部30の側部33の上端面と同一面上に位置している。つまり、一対のブロック部51a、51bの上面は、閉蓋状態において互に当接するように構成されているので、蓋部30が揺動される際のキャップ本体10に対する蓋部30のずれが生じにくい。したがって、ヒンジ構造50は、蓋部30を揺動させる際に揺動軸がずれにくく、蓋部30の開閉性に優れる。
また一対のブロック部51a、51bの間には下方へ向けて窪んだ凹部55が形成されている。したがって、蓋部30をキャップ本体10に嵌合させた際に、センターヒンジ部53は折り曲げられずに湾曲した状態となる。したがって、ヒンジ構造50は、反復開閉によってセンターヒンジ部53に割れ等の破損が生じにくく、反復開閉に対する耐久性に優れる。
なお、テーパ部58a、58bは、サイドヒンジ部54a、54bの上面の側に厚みが増すように構成されているが、一対のブロック部51a、51bの側から外縁に向けて肉厚が徐々に厚くなるように形成されていれば良い。例えば、テーパ部58a、58bは、サイドヒンジ部54a、54bの下面の側、または上面及び下面の両側に厚みが増すように構成されていても良い。
また、サイドヒンジ部54a、54bのキャップ本体10と蓋部30の連結部は、それぞれ胴部14の外周面(連結段差部56a、56bの外縁)と側部33の外周面(連結段差部57a、57bの外縁)に沿って湾曲しているが、このような構成に限定されるものではない。サイドヒンジ部54a、54bは、それぞれ胴部14の外周面と側部33の外周面に沿って連結されていれば良く、胴部14や側部33の形状に応じて、その連結部が直線状となる構成であっても良い。
また、ヒンジ構造50における蓋部30の反復開閉に対する耐久性を良好にするとともに、キャップ1の射出成形性を良好にするという観点から、テーパ部58a、58bの左右方向における肉厚勾配は、1度以下であることが好ましい。肉厚勾配が1度より大であると、サイドヒンジ部54a、54bの左右方向における肉厚の変化が急となる。したがって、キャップ1の射出成形において、キャビティ75のサイドヒンジ部54a、54bに対応する部位で、溶融した熱可塑性樹脂の流路の断面が広い箇所と断面が狭い箇所とが明確に分離しやすくなり、成形不良が生じやすくなって好ましくない。なお、この肉厚勾配とは、テーパ部58a、58bの上面と直線L2とのなす角によって定義することができる。なお、テーパ部58a、58bの肉厚勾配は、一定でなくても良い。例えば、ブロック部51a、51bの側の基点から滑らかに増加しても良く、テーパ部58a、58bの外縁に向かって滑らかに減少しても良い。
また、サイドヒンジ部54a、54bの幅W3に対するテーパ部58a、58bの幅W4の比W4/W3は、1/6以上、1/2以下であることが好ましい。テーパ部58a、58bの肉厚勾配が一定であると仮定した場合、比W4/W3が1/2より大であると、厚肉のテーパ部58a、58bの範囲が広く、サイドヒンジ部54a、54bが変形しにくくなって、蓋部30を開閉する際にクリック感やスナップ感が得られにくくなり、開閉性が低下して好ましくない。一方で、比W4/W3が1/6より小であると、テーパ部58a、58bによる反復開閉に対する耐久性を向上するという効果が得られにくくなる。
次に、キャップ1の容器への取り付け方法について説明する。図12は、キャップ1が取り付けられた容器100の一例が示された側面図である。なお、図12において、キャップ1はキャップ本体10に蓋部30が嵌合されて注出口が閉塞された閉蓋状態であり、キャップ1のみが鉛直断面にて示される。容器100は、頭部110と、頭部110に連なる筒状の収容胴部120とを有するチューブ容器であり、キャップ1は別体として形成される。
頭部110は、口部111と肩部112から構成され、熱可塑性樹脂からなる。なお、頭部110の原料としての熱可塑性樹脂は、内容物の品質に影響を与えず、内容物に接触しても衛生的に支障のないものであれば良く、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート等を用いることができる。
口部111は、円筒状であり、外周には螺子構造113を有する。肩部112は、上方が口部111に連なり、一方で、下方が収容胴部120に接合される。肩部112は、上方から下方に向かって拡径する略円錐台の筒状である。
収容胴部120は、積層シートから形成される。収容胴部120を形成する積層シートは、内側から順に、内層、バリア層、基材層、外層が積層されたものである。
内層は、内容物を保持するとともに、収容胴部120の形成時の接着の役割を果たすものであり、ヒートシール性を有する樹脂フィルムを用いることができ、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂フィルムを用いることができる。
バリア層は、酸素や水蒸気等に対するガスバリア性、太陽光等に対する遮光性、内容物に対する保香性等を積層シートに付与するものであり、例えば、アルミニウム箔、シリカやアルミニウム等の蒸着層が形成された二軸延伸ナイロンフィルム、シリカやアルミニウム等の蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。
基材層は、主強度材であり、強度を有して強靱であり、耐熱性を有する樹脂フィルムを用いることができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート等の樹脂フィルムを用いることができる。
外層は、外界からの保護の役割を果たすとともに、収容胴部120の形成時に内層と互いに接着可能である樹脂フィルムを用いることができ、内層と同様のヒートシール性を有する樹脂フィルムを用いることができる。
なお、収容胴部120を構成する積層シートは、上述の構成に限定されるものではなく、例えば、基材層の外側に印刷層を備える構成であっても良い。また、各層の積層方法も限定されるものではなく、適宜設計できる。また、収容胴部120は、共押し出し法によって形成される構成であっても良い。
そして、収容胴部120は、積層シートの両端部の外層と内層とを熱融着によって接合してなる筒状である。収容胴部120の上方の開口端部には、肩部112が溶融接合される。一方で、収容胴部120の下方の開口端部は、対向する積層シートを熱融着によって接合する底シール部121によって閉塞される。
そして、本実施形態のキャップ1は、図12に示すように、キャップ本体10の取り付け部23の螺子構造24と容器100の口部111の螺子構造113とを螺合させることによって容器100に取り付けられる。ここで、キャップ1が容器100に取り付けられる際に、キャップ本体10の基板12内表面と、容器100の口部111の上端面とが密着する。そして、容器100の収容胴部120に収容される内容物は、口部111を介して注出口としてのノズル11の内部を通過し、ノズル11の先端から注出される。このようにして容器100にキャップ1が取り付けられたキャップ付容器が製造される。
なお、容器100への内容物の充填方法は特に限定されるものではない。例えば、容器100の収容胴部120の底シール部121が開放した接合前の状態で、上述のように容器100にキャップ1を取り付ける。ここで、キャップ1は、蓋部30がキャップ本体10に嵌合されて注出口が閉塞された閉蓋状態である。そして、底シール部121が開放した開口から内容物を充填し、この開口を底シール部121によって閉塞して容器100を密封する。このようにして、キャップ1が取り付けられた容器100に内容物が充填された充填体が作製される。なお、内容物は、液状、粘体状等様々な形態のもので良く、特に限定されるものではなく、例えば、練り歯磨き等のトイレタリー、洗顔クリーム等の化粧品、食料品や医薬品等とすることができる。
容器100の内容物は、注出口としてのキャップ本体10のノズル11の先端から注出される。したがって、所望の位置に内容物を注出しやすく、使い勝手が良い。また、ノズル11には、規制板22が形成されているので、ノズル11から内容物を注出する際の液切れが良好であり、特に内容物が粘体状である場合には、所望の量の注出が容易となり、使い勝手が良い。
なお、ノズル11の長さ、形状、径、配置等は、内容物の特性、キャップ本体10の大きさ、キャップ1が取り付けられる容器の形態等に応じて適宜設計するものであり、例えば、ノズル11が基板12の略中央に配設される構成であっても良い。
また、キャップ1が取り付けられた容器100は、蓋部30がキャップ本体10に嵌合された閉蓋状態において、蓋部30の閉塞板31の外表面34を接地部とし、容器100を倒立させた状態で自立させることができ、使い勝手が良い。ここで、閉塞板31は、外表面34から内表面32へ向かって内表面32側が突出するように凸状に湾曲し、閉塞板31の外表面34の外縁付近の環状部分は、平坦な面に形成されている。そして、容器100を倒立させた状態で自立させる際に、この環状の平坦な面が自立時の接地部となる。したがって、閉塞板31の外表面34全体に高い平面度が要求されず、設計精度が高くなくても容器100を倒立させた状態で安定して自立させることができる。
ここで、キャップ1の容器100への取り付けは、上述の構成に限定されるものではなく、注出口としてのノズル11の内部が容器100の内部に連通する状態で容器100に取り付けることができれば良く、容器100の形態に応じて適宜設計できる。例えば、取り付け部23の螺子構造24と口部111の螺子構造113の螺合による取り付けに替わって、上述のキャップ本体10の係止リブ18と蓋部30係合リブ39との係合のように、2つの突起の係合によってキャップ1が容器100に取り付けられる構成、つまり、打栓方式による取り付け構成であっても良い。
図示による説明は省略するが、例えば、容器100の口部111の外周には、螺子構造113に替わって、外方へ突出する環状の突起を形成する。一方で、キャップ本体10の取り付け部23の内周には、螺子構造24に替わって、内方へ突出する環状の突起を形成する。そして、口部111に上方から取り付け部23を被せ、キャップ1を口部111に向かって押し込むことで、取り付け部23の環状の突起を口部111の環状の突起に係合させてキャップ1を容器100に取り付ける。
したがって、このような構成にすること、より簡易な構成によってキャップ1を容器100に取り付けることができ、キャップ付容器の生産性が向上する。なお、容器100へのキャップ1の取り付け構成は、取り付け部23が有する螺子構造24による構成や、上述の打栓方式の取り付け構成であることが好ましく、このような構成にすることで、キャップ1の汎用性が向上する。
また、図示による説明は省略するが、容器100に取り付けられた際に、円筒状の口部111の内周面と密着するとともに、内部がノズル11と連通する環状のインナーリングをキャップ本体10の基板12に形成した構成としても良い。このような構成にすること、キャップ本体10と口部111との密閉性を向上させることができる。
また、キャップ1は、容器に一体として取り付けられる構成であっても良い。図示による説明は省略するが、例えば、上述の容器100の頭部110に替わって、収容胴部120の上方の開口端部にキャップ1が溶融接合される構成であっても良い。つまり、キャップ本体10の胴部14の下端部が収容胴部120の上方の開口端部と溶融接合される構成であっても良い。このような構成にすることで、容器100における頭部110が不要となり、キャップ付容器の重量を低減することができる。なお、このような構成において、キャップ本体10には、取り付け部23等を設ける必要はなく、胴部14の筒軸方向の長さを短くすることができる。また、キャップ1と容器100との接続部分が省略されることによって、より密封性が高まり、内容物の保存性がより向上する。一方で、胴部14の剛性を向上させるために、基板12の内表面13から垂設され、両端が胴部14の内周面に接続される板部材等の補強構造を胴部14の内部に形成することが好ましい。
また、キャップ1が取り付けられる容器は、上述のチューブ容器に限定されるものではなく、キャップ1が取り付け可能な容器であればよく、例えば、上述の容器100の口部111と同様の円筒状の口部を有するペットボトルなどであっても良い。
本実施形態に係るキャップ1にはサイズによる限定はない。キャップ1は、容器100に取り付け可能なサイズであって、所望の量の内容物を取り出し可能な注出口を確保でき、ヒンジ構造50を基点として蓋部30を揺動させることができるサイズであれば良く、容器100のサイズ等に応じて適宜設計する。
以上に説明がなされたように、本実施形態に係るキャップ1のヒンジ構造50は、注出口としてのノズル11を有するキャップ本体10に対して、ノズル11の先端を上方から覆う蓋部30を、ノズル11の先端が覆われた閉蓋状態と、ノズル11の先端が開放された開蓋状態との間で揺動自在に連結させるとともに、射出成形装置70でキャップ本体10と蓋部30とが一体に成形され、キャップ本体10の胴部14の外周面と蓋部30の側部33の外周面からそれぞれ対向して連結方向に突出する一対のブロック部51a、51bと、一対のブロック部51a、51bの間、及び一対のブロック部51a、51bの左右両側のキャップ本体10と蓋部30の間に一体的に形成され、キャップ本体10と蓋部30を連結させる薄膜状のヒンジ部52と、を備え、ヒンジ部52は、一対のブロック部51a、51bの左右両側において、一対のブロック部51a、51bの側から外縁に向けて肉厚が徐々に厚くなるように形成されたテーパ部58a、58bを有している。そして、本実施形態に係る構成によれば、反復開閉に対する耐久性に優れるとともに、射出成形機でキャップ1が成形される際の射出成形性を良好にすることができる。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料、及び方法>
[実施例1]
金型74が機械構造用炭素鋼から構成された射出成形装置70が用いられ、図1〜図9に示される本実施形態に係るキャップ1が作製された。キャビティ表面(金型表面)には表面処理が施されていない金型74が用いられた。キャップ1は、ノズル11を有するキャップ本体10と、ノズル11の先端を上方から覆う蓋部30と、キャップ本体10に対して蓋部30を、ノズル11の先端が覆われた閉蓋状態と、ノズル11の先端が開放された開蓋状態との間で揺動自在に連結させるヒンジ構造50とを備え、キャップ本体1と蓋部30とが一体に成形された。更に、ヒンジ構造50は、キャップ本体10の胴部14の外周面と蓋部30の側部33の外周面からそれぞれ対向して連結方向に突出する一対のブロック部51a、51bの間、及び一対のブロック部51a、51bの左右両側のキャップ本体10と蓋部30の間に一体的に形成され、キャップ本体10と蓋部30を連結させる薄膜状のヒンジ部52を備え、ヒンジ部52は、一対のブロック部51a、51bの左右両側において、一対のブロック部51a、51bの側から外縁に向けて肉厚が徐々に厚くなるように形成されたテーパ部58a、58bを有している。
キャップ1を構成する熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンを用いた。成形条件は、充填時間が0.97秒、サイクル時間が25.8秒、最大充填圧力が82.3MPa、樹脂温度が210℃であった。なお、充填時間とは、金型74の流入口であるスプルーから流入した溶融熱可塑性樹脂がキャビティの中を完全に充填するまでの時間である。サイクル時間とは、型閉じから成形品が取り出されるまでの時間であり、1つのキャップ1が作製されるのに掛かる時間である。
キャップ1は、キャップ本体10の胴部14、及び蓋部30の側部33の直径が43mm、ヒンジ部52の左右方向の幅W1が15mm、センターヒンジ部53の幅W2が4mm、サイドヒンジ部54a、54bの幅W3が5.5mm、テーパ部58a、58bの幅W4が2mm、センターヒンジ部53の肉厚T1が0.3mm、サイドヒンジ部54a、54bの肉厚T2が0.35mm、テーパ部58a、58bの外縁における肉厚増加量Taが0.05mmであった。なお、射出成形時に賦形不良が発生することはなかった。また、約10万ショット後の金型表面を目視によって確認したところ、変色は発生していなかった。
[比較例1]
金型74が実施例1と同様の機械構造用炭素鋼から構成された射出成形装置70が用いられ、図1〜図9に示されるキャップ1において、サイドヒンジ部54a、54bがテーパ部58a、58bを有さずに略均一な肉厚である比較例1としてのキャップが作製された。また、実施例1と同様に金型表面には表面処理が施されていなかった。なお、比較例1のキャップは、このテーパ部58a、58b以外の構成は、キャップ1と同一の構成である。
比較例1のキャップを構成する熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンを用いた。成形条件は、充填時間が0.97秒、サイクル時間が25.8秒、最大充填圧力が82.3MPa、樹脂温度が210℃であった。比較例1のキャップは、キャップ本体10の胴部14、及び蓋部30の側部33の直径が43mm、ヒンジ部52の左右方向の幅W1が15mm、センターヒンジ部53の幅W2が4mm、サイドヒンジ部54a、54bの幅W3が5.5mm、センターヒンジ部53の肉厚T1が0.3mm、サイドヒンジ部54a、54bの肉厚T2が0.35mmであった。なお、射出成形時に賦形不良が発生することはなかった。また、約10万ショット後の金型表面を目視によって確認したところ、変色は発生していなかった。
[比較例2]
金型74が実施例1と同様の機械構造用炭素鋼から構成された射出成形装置70が用いられ、図1〜図9に示されるキャップ1において、ヒンジ構造50に替わって、図13、及び図14に示されるヒンジ構造150を備える比較例2としてのキャップが作製された。また、実施例1と同様に金型表面には表面処理が施されていなかった。ここで、図13は、比較例1のキャップのヒンジ構造150が拡大されて示された平面図であり、図14は、XIV−XIV線断面が模式的に示された断面図である。ここで、図13におけるXIV−XIV線はヒンジ構造150の前後方向の中心を通って左右方向に延びる直線であり、図14は、ヒンジ部152がその厚み方向に拡大されて模式的に示された断面図である。比較例2のキャップのヒンジ構造150は、図1〜図9に示されるキャップ1のヒンジ構造50におけるテーパ部58a、58bが異なる構成である。ヒンジ構造150は、ヒンジ構造50のテーパ部58a、58bに替わって、サイドヒンジ部54a、54bの外縁部に上面側に突出してステップ状にその肉厚が増加された肉厚部158a、158bを備える。なお、ヒンジ構造150は、この肉厚部158a、158b以外の構成はヒンジ構造50と同一の構成である。
比較例2のキャップを構成する熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンを用いた。成形条件は、充填時間が0.97秒、サイクル時間が25.8秒、最大充填圧力が82.3MPa、樹脂温度が210℃であった。比較例2のキャップは、キャップ本体10の胴部14、及び蓋部30の側部33の直径が43mm、ヒンジ部52の左右方向の幅W1が15mm、センターヒンジ部53の幅W2が4mm、サイドヒンジ部54a、54bの幅W3が5.5mm、肉厚部158a、158bの幅W14が2mm、センターヒンジ部53の肉厚T1が0.3mm、サイドヒンジ部54a、54bの肉厚T2が0.35mm、肉厚部158a、158bの外縁における肉厚増加量Ta1が0.05mmであった。なお、射出成形時にヒンジ部52にウェルドが生じる成形不良が発生した。
[比較例3]
金型74が実施例1と同様の機械構造用炭素鋼から構成された射出成形装置70が用いられ、比較例2のキャップにおいて、成形条件のみが異なる比較例3としてのキャップが作製された。また、実施例1と同様に金型表面には表面処理が施されていなかった。成形条件は、充填時間が0.59秒、サイクル時間が25.8秒、最大充填圧力が82.3MPa、樹脂温度が210℃であった。つまり、比較例3のキャップは、比較例2のキャップにおいて、樹脂の射出速度を速く、充填時間を短くした成形条件で成形されたものである。なお、射出成形時に成形不良は発生しなかった。また、約10万ショット後の金型表面を目視によって確認したところ、茶色に変色している箇所があり、金型表面に酸化が生じていた。
<結果>
(射出成形評価)
実施例1、比較例1、比較例2、及び比較例3のキャップの各々について射出成形性の評価がなされた。表1には、射出成形によって作製された各キャップの目視による成形評価の結果が示され、○:成形不良なし、×:成形不良発生、で表記されている。
(量産評価)
実施例1、比較例1、及び比較例3のキャップを作製する際に用いられた金型の各々について量産性の評価がなされた。量産性の評価は、約10万ショット後の各金型表面に酸化が生じたか否かによって評価がなされ、酸化の有無は金型表面の変色によって判定がなされた。表1には、量産性の評価の結果が示され、○:表面に変色はなく酸化なし、×:表面が茶色に変色して酸化発生、で表記されている。
(反復開閉耐久評価)
実施例1のキャップ1、及び比較例2のキャップについて、開蓋状態から閉蓋状態へとなるように蓋部30を揺動させ、更に閉蓋状態から開蓋状態へとなるように蓋部30を揺動させる操作(開閉操作)を300回繰り返し、開閉操作によって各キャップのヒンジ構造に亀裂等の破損が生じたか否かが確認された。表1には、反復開閉の耐久性の評価の結果が示され、○:破損なし、×:破損発生、で表記されている。
(総合評価)
上述された射出成形評価、量産評価、反復開閉耐久評価に基づいて、実施例1、比較例1、比較例2、及び比較例3の各キャップの総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。総合評価は、○:良好、×:適性なし、で表記されている。
上述された実施例から以下の点が導き出された。表1に示されたように、実施例1は、射出成形性、量産性、及びブロー成形性が良好であった。比較例1は、射出成形性、及び量産性を有していたものの、ヒンジ部の補強がなされておらず、反復開閉の耐久性を有していなかった。比較例2は、反復開閉の耐久性を向上させるためにヒンジ部の外縁部に肉厚部を設けたが、射出成形時に薄膜状のヒンジ部にウェルドが発生した。比較例3は、比較例2において射出速度を速めて充填時間を短縮して射出成型性の改善がなされたものの、キャビティからのガス抜きが十分でなく、金型表面のガスによる酸化が発生して量産性に優れなかった。
以上の実施例の結果から、本実施形態に係るキャップ1は、反復開閉に対する耐久性に優れ、射出成形性が良好であり、量産性に優れることが示された。