以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。以下で説明する形状、数量などは、説明のための例示であって、配線用ダクトの仕様により適宜変更が可能である。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、実施形態の配線用ダクト10を設置する作業の1例を示す図である。図2は、図1のA部を拡大して示す斜視図である。図3は、図2のB−B断面図である。
配線用ダクト10は、平面形状が全体として略U字形に形成されており、内部に複数の配線12(図10、図11参照)が収容される。配線用ダクト10は、エレベータが設置される建物の上部の機械室14の床上に配置されて固定される。複数の配線12は、制御ケーブルなどのケーブルであり、機械室14内の制御盤17と複数の電気機器とを接続する。
例えば電気機器として、機械室14内の巻き上げ機18、エレベータの乗りかごの操作盤(図示せず)、各階の乗り場の押しボタン装置(図示せず)、「MELD」と呼ばれる停電時自動着床制御装置20(図11)などがある。このうち、巻き上げ機18は、電動モータ18aの動力によって綱車18bを回転させ、綱車18bに掛け渡されたロープ18cを駆動することにより、ロープ18cに接続された乗りかご(図示せず)を上下移動させる。また、停電時自動着床制御装置20は、停電を検出した場合に制御盤17を介して図示しないバッテリの電力で巻き上げ機18を駆動して、乗りかごを最寄階まで移動させた後、乗りかご扉及び乗り場扉が開放するように制御する。図1では停電時自動着床制御装置の図示を省略する。なお、図10、図11では配線12として丸ケーブルを示しているが、配線として断面が略長方形の平形ケーブルを用いることもできる。
また、機械室14内の部品についての法規制に対応するためと、安全性をより向上させるためとから、配線用ダクト10は金属材料により形成される。以下、配線用ダクト10は、ダクト10と記載する。
ダクト10は、断面四角形の筒状要素である、第1I字形要素30a、第2I字形要素30b、及び第3I字形要素30cを2つのエルボ型の結合ジョイント50(図3、図9)により連結することにより、全体が略U字形に形成される。第1I字形要素30a、第2I字形要素30b、及び第3I字形要素30cは、長さが異なるが基本的な構成は同じである。以下では、制御盤17付近に配置される第1I字形要素30aを基本として説明する。結合ジョイント50の構造は後で説明する。
図4は、図2からダクト10を構成する第1I字形要素30aを取り出して示す斜視図である。図5は、図4のC−C断面図である。図6は、第1I字形要素30aを図5のD−D断面で切断して示す斜視図である。図7は、I字形要素30aの左側部分を構成する一部の構成部品の分解斜視図である。
第1I字形要素30aは、ダクト10(図1)の長手方向の一部においてI字形に伸びる筒状の部分である。第1I字形要素30aは、I字形に伸びる後述の第2I字形要素30b(図1)と、結合ジョイント50(図3、図9)により90度向きが異なるように接続される。第1I字形要素30aは、四角筒であり、長手方向一方から見た場合における形状が矩形である。図4から図6では、第1I字形要素30aの長手方向をX、左右方向をY、X及びYに対し直交する上下方向をZで示している。
なお、第1I字形要素30aの左右方向Yは、図4から図6における左右方向と同じであり、第2I字形要素30bとの接続側である長手方向一方側(図4、図6の手前側、図5の下側)から見た場合での左右方向を意味する。
第1I字形要素30aは、天板31、底板32、左側板33、及び右側板34と、4つのガイドレール37a、37b、37c、37dとを含む。4つのガイドレール37a、37b、37c、37dは第1I字形要素30aの四隅に配置される。
天板31は、第1I字形要素30aの上端部において、水平方向に沿い長手方向Xに並んで配置された複数の天板要素31aによって形成される。複数の天板要素31aは、4つのガイドレール37a、37b、37c、37dのうち、上側の2つのガイドレール37a、37cにより、左右方向Yの両端部が支持される。これにより、複数の天板要素31aは、長手方向Xに分かれて配置される。
底板32は、第1I字形要素30aの下端部において天板31と面して水平方向に沿い図5に示すように、長手方向Xに並んで配置された複数の底板要素32aによって形成される。複数の底板要素32aは、4つのガイドレール37a、37b、37c、37dのうち、下側の2つのガイドレール37b、37dにより、左右方向Yの両端部が支持される。これにより、複数の底板要素32aは、長手方向Xに分かれて配置される。
図6に示すように、左側板33は、第1I字形要素30aの左端部において上下方向Zに沿い長手方向Xにおいて分かれて配置された複数の左側板要素33a、33bによって形成される。複数の左側板要素33a、33bは、左側の2つのガイドレール37a、37bにより、上下方向Z両端部が支持される。
右側板34は、第1I字形要素30aの右端部において上下方向Zに沿い長手方向Xにおいて分かれて配置された複数の右側板要素34a,34bによって形成される。複数の右側板要素34a,34bは、右側の2つのガイドレール37c、37dにより、上下方向Z両端部が支持される。
複数の天板要素31a、底板要素32a、左側板要素33a,33b、及び右側板要素34a,34bは、鉄、アルミニウム合金等の金属材料からなる矩形の金属板により形成される。複数の底板要素32aのうち、一部(図5の下端)の底板要素32aは、別の底板要素32aに比べて長手方向Xの長さが大きい。複数の右側板要素34a、34bの一部(図2、図4の手前側端)の右側板要素34aも、別の右側板要素34a、34bに比べて長手方向Xの長さが大きい。図2、図4、図6に示すように、複数の右側板要素34a、34bの一部の右側板要素34bは、後述するように配線12(図11)を通過させるための配線通過用の円形の貫通孔35を有する。図7に示すように、複数の左側板要素33a、33bの一部の左側板要素33bも、右側板要素34bと同様に、配線通過用の円形の貫通孔36を有する。
次に、ガイドレール37a、37b、37c、37dの詳細構造と、ガイドレール37a、37b、37c、37dにおける天板要素31a、底板要素32a、左側板要素33a、33b、及び右側板要素34a、34bの支持構造とを説明する。
図6に示すように、各ガイドレール37a、37b、37c、37dは、断面L字形で長尺な部材である。4つのガイドレール37a、37b、37c、37dのうち、図2、図3に示すように右側の2つのガイドレール37c、37dは、ダクト10のU字形の外側面を構成する。4つのガイドレール37a、37b、37c、37dのうち、左側の2つのガイドレール37a、37bは、ダクト10のU字形の内側面を構成する。
そして、右側の2つのガイドレール37c、37dは、左側の2つのガイドレール37a、37bより長い。左側の上下2つのガイドレール37a、37bの長さは同じであり、右側の上下2つのガイドレール37c、37dの長さも同じである。
次に、上側のガイドレール37a、37cを説明する。図6に示すように、上側の各ガイドレール37a、37cの左右方向Yに向き合う左右方向Yの内側面には、左右方向Yに形成されて長手方向Xに伸びる第1上側溝38が形成される。各上側ガイドレール37a、37bの下側面には、上下方向Zに形成されて長手方向Xに伸びる第2上側溝39が形成される。第1上側溝38及び第2上側溝39は、長手方向溝に相当する。各上側溝38,39は、断面形状が矩形であり、上側ガイドレール37a、37cの両端面に開口するように、上側ガイドレール37a、37cの長手方向Xの全長にわたって形成される。
そして、複数の天板要素31aの左端部は、左上のガイドレール37aの第1上側溝38に嵌め入れられて、このガイドレール37aに支持される。複数の天板要素31aの右端部は、右上のガイドレール37cの第1上側溝38に嵌め入れられて、このガイドレール37cに支持される。また、複数の天板要素31aのうち、少なくとも長手方向Xの両端の2つの天板要素31aの両端部は、上側のガイドレール37a、37cの第1上側溝38に密着して固定されている。このとき、天板要素31aと第1上側溝38とが接着により固定されてもよい。これにより、ガイドレール37a、37cからすべての天板要素31aが抜け出ることが防止される。
図2、図4、図6では、隣り合う天板要素31aが隙間なく接触しているが、隣り合う天板要素31aの間に隙間が形成されてもよい。上側の各ガイドレール37a、37cの下向きの第2上側溝39には、後述の左側板33または右側板34の上端部が嵌め入れられる。
複数の底板要素32aを支持する下側のガイドレール37b、37dの左右方向Yに向き合う左右方向Yの内側面には、第1下側溝40が形成される。各ガイドレール37b、37dの上面には、第2下側溝41が形成される。左下のガイドレール37bは、左上のガイドレール37aと同じ形状の部品の上下方向を逆にして、左右方向を逆にしたものと同様である。右下のガイドレール37dは、右上のガイドレール37cと同じ形状の部品の上下方向を逆にして、左右方向を逆にしたものと同様である。
そして、複数の底板要素32aの左端部は、左下のガイドレール37bの第1下側溝40に嵌め入れられて、このガイドレール37bに支持される。複数の底板要素32aの右端部は、右下のガイドレール37dの第1下側溝40に嵌め入れられて、このガイドレール37dに支持される。また、複数の底板要素32aのうち、少なくとも長手方向Xの両端の2つの底板要素32aの両端部は、天板要素31aと同様に、下側のガイドレール37b、37dの第1下側溝40に密着して固定されている。隣り合う底板要素32aは隙間なく接触しているが、隣り合う底板要素32aの間に隙間が形成されてもよい。
各ガイドレール37a、37b、37c、37dは、鉄、アルミニウム合金等の金属材料から形成される。
各左側板要素33a、33bの上端部は、左上のガイドレール37aの第2上側溝39に嵌め入れられる。各左側板要素33a、33bの下端部は、左下のガイドレール37bの第2下側溝41に嵌め入れられる。複数の左側板要素33a、33bのうち、少なくとも長手方向Xの両端の2つの左側板要素33aの両端部は、左側のガイドレール37a、37cの第2上側溝39及び第2下側溝41に密着して固定されている。
各右側板要素34a、34bの上端部は、右上のガイドレール37cの第2上側溝39に嵌め入れられる。各右側板要素34a、34bの下端部は、右下のガイドレール37dの第2下側溝41に嵌め入れられる。複数の右側板要素34a、34bのうち、少なくとも長手方向Xの両端の2つの右側板要素34aの両端部は、右側のガイドレール37b、37dの第2上側溝39及び第2下側溝41に密着して固定されている。
また、長手方向X一端の右側板要素34aは、別の右側板要素34a、34bに比べて長手方向Xの長さが大きい。この長手方向X一端の右側板要素34aには、後述する結合ジョイント50(図3、図9)と結合するためのボルト貫通孔61(図4)が形成されている。また、長手方向X一端の左側板要素33aにも、右側板要素34aと同様にボルト貫通孔61(図4)が形成されている。
隣り合う右側板要素34a、34bの間の一部には、図4、図6においてP1、P2、P3で示すように隙間が形成される。隣り合う右側板要素34a、34bの間の別の部分では隙間が形成されないように隣り合う右側板要素34a、34bが接触する。隣り合う右側板要素34a、34bの間のすべての位置で隙間が形成されたり、すべての位置で隙間が形成されないようにしてもよい。隣り合う右側板要素34a、34bの間についても、隣り合う左側板要素33a、33bの間と同様である。
各板要素31a、32a、33a、33b、34a、34bの厚みは、嵌め入れられるガイドレール37a、37b、37c、37dの溝38,39,40,41の幅とほぼ同じである。これによって、各板要素31a、32a、33a、33b、34a、34bがガイドレール37a、37b、37c、37dに対し溝幅方向にずれ動くことが防止されるので、第1I字形要素30aの剛性を高くできる。
図8は、第1I字形要素30aの左側板33を構成する左側板要素33a、33bの別例を示す図である。図8の別例では、一部の左側板要素33bが有する配線通過用の貫通孔36を矩形としている。配線通過用の貫通孔は、円形、矩形以外の形状としてもよい。また、図8の別例では、左側板33の一部の左側板要素33aの長手方向Xの長さを、別の左側板要素33a、33bの長手方向Xの長さと比べて小さくしている。一部の右側板要素34a、34bが有する貫通孔35(図6)及び右側板要素34a、34bの長手方向Xの長さについても左側板要素33a、33bの場合と同様である。
図5に戻って、底板要素32aの一部には、左右方向Yの両端部に上下方向Zに貫通する孔42が形成されている。各孔42は、機械室14(図1)のコンクリート製の床面に打ち込んだ図示しないアンカーボルトを下側から上側に貫通させるために形成される。このアンカーボルトは、後述のように底板要素32aを床面に固定するために用いられる。
図4に示すように複数のガイドレール37a、37b、37c、37d及び板要素31a、32a、33a、33b(図7)、34a、34bが組み合わされることにより、第1I字形要素30aが組み立てられる。
上記では、3つのI字形要素30a、30b、30cのうち、第1I字形要素30aの構成を説明したが、第2I字形要素30b及び第3I字形要素30cも長さが異なるだけで基本構成は第1I字形要素30aと同様である。図2、図3では、第2I字形要素30bにおいて、第1I字形要素30aの構成部品と対応する部品に同一の符号を付している。
第1I字形要素30aには、結合ジョイント50(図3、図9)を介して、第2I字形要素30bが接続される。
図9は、図3から結合ジョイント50を取り出して示す斜視図である。図2、図3に示すように、結合ジョイント50は、第1I字形要素30a及び第2I字形要素30bを90度異なる向きに接続するために用いられる。結合ジョイント50は、第1I字形要素30a及び第2I字形要素30bの長手方向端部の内側に嵌合される。
具体的には、図3、図9に示すように、結合ジョイント50は、底板部51と、外側壁部53と、内側壁部55とを含んで、鉄等の金属板のような金属材料から一体形成される。底板部51は、略L字形に形成される。底板部51は、中間板部51aと、2つの矩形板部51b、51cとを有する。中間板部51aは、正方形の一部の角部を斜めの直線部51dで切断した形状を有する。各矩形板部51b、51cは、中間板部51aの両端部で、L字形の両端に対応する部分に連結される。
図9に示すように、外側壁部53は、断面L字形で上下方向に伸びるように形成される。外側壁部53の下端は、L字形の段差部54を介して底板部51の外側縁に連結される。内側壁部55は、船形状で上下方向に伸びるように形成される。内側壁部55の下端は、第2段差部56を介して底板部51の内側縁に連結される。外側壁部53の直角に配置された2つの壁部要素53a、53bの角部付近と、内側壁部55の第1I字形要素30a及び第2I字形要素30b(図3)と接続する両端部とには、ボルト貫通孔57が形成されている。
結合ジョイント50は、第1I字形要素30a及び第2I字形要素30bの底板32上に配置されるように、第1I字形要素30a及び第2I字形要素30bの端部内側に嵌合される。そして、第1I字形要素30aの左側板33及び右側板34には、結合ジョイント50の内側壁部55の一端部及び外側壁部53の一端部が重ねられる。そして、ボルト貫通孔57,61(図4)に挿入されたボルト60とナット62とによって、第1I字形要素30aと結合ジョイント50とが結合される。
第2I字形要素30bの長手方向一端部(図3の右端部)では、図3の下側の左側板33が図3の上側の右側板34より長くなっている。そして、第1I字形要素30aと同様に、結合ジョイント50の他端部(図3の右端部)と、第2I字形要素30bの長手方向一端部とが、ボルト60及びナット62の結合構造で結合される。これによって、第2I字形要素30bと結合ジョイント50とが結合される。なお、ボルト及びナットの結合構造の代わりに、ドリルネジなどの別の結合部材で結合ジョイント50とI字形要素とが結合されてもよい。
さらに、図2に示すように、第1I字形要素30a及び第2I字形要素30bを結合した状態で、結合ジョイント50の上側には天板部58が配置される。この天板部58の外側縁部は、第1I字形要素30a及び第2I字形要素30bのL字形の連結部において、外側となる側の上側ガイドレール37c、37aの上側溝に嵌め入れられている。具体的には、第1I字形要素30aの右上のガイドレール37cの第1上側溝38(図6)と、第2I字形要素30bの左上のガイドレール37aの第1上側溝(図示せず)とに、天板部58の外側縁部(図2の手前側縁部)が嵌め入れられる。天板部58の内側縁部(図2の裏側縁部)は、結合ジョイント50(図3)の内側壁部55の中間部上に配置される。この状態で天板部58(図2)はL字形の連結部から外れることがない。
図1に示すように、第2I字形要素30bの長手方向他端部(図1の手前側端部)も長手方向一端部(図1の裏側端部)と同様に、左側板33が右側板34(図3)より長くなっている。また、第3I字形要素30cの長手方向一端部(図1の右端部)において、図1の手前側の左側板33が、図1の裏側の図示しない右側板より長くなっている。
そして、第2I字形要素30bが第3I字形要素30cに対し、第1I字形要素30a及び第2I字形要素30bの結合部と同様に、図示しない結合ジョイントにより結合される。これにより、全体がU字形のダクト10が形成される。図1では、第3I字形要素30cの天板31の天板要素31aに貫通孔70が形成されて、配線12がこの貫通孔70を通って上側に導出されて、巻き上げ機18の電動モータ18aに接続される。このようにダクトの天板要素には、配線通過用の貫通孔が形成されてもよい。
ダクト10を組み立てる場合には、図10に示すように底板32及びその両側のガイドレール37b、37dが組み付けられた後に、図3から図6に示すように、左側板33、右側板34、天板31を含む部分が組み立てられる。これにより、図10に示すように、組み立て工程の初期の組み付け状態では、第1I字形要素30aの底板32と下側の2つのガイドレール37b、37dとが組み付けられる。図10では、結合ジョイント50が、第1I字形要素30aの底板32と第2I字形要素30bの底板32(図3)との上側に掛け渡すように配置される。図10では分かりやすくするために結合ジョイント50の内側及び外側の段差部54,56を水平面で切断して、結合ジョイント50の上側部分を取り除いた状態を示している。
このような組み立て工程の初期の組み付け状態では、各I字形要素30a、30bの底板32上には複数の配線12が配置される。また、コンクリート製の床に打ち込まれた図示しないアンカーボルトが、底板32に形成された孔42を下側から上側に貫通する。そしてこのアンカーボルトの上側に図示しないナットが結合されて、底板32が床面上に固定される。
なお、一部の配線12は長さを調節するように複数回折り返して結束バンド13で結束されている。このように配線12を配置したり、底板32を床に固定する作業は、底板32の両側に左側板33及び右側板34(図4)がない広い空間で行えるので、配線12の配置作業性及びダクト10の固定作業性を高くできる。
また、図1から図3に示すようにU字形のダクト10が組み立てられた状態では、図11に示すように、制御盤17に接続された配線12が第1I字形要素30aの右側の貫通孔35を通ってダクト10内に配置される。そして、配線12の一部は停電時自動着床制御装置20に接続される。別の配線12はダクト10内を通って、図1に示す巻き上げ機18の電動モータ18aと、図示しない昇降路内を通って乗りかごの操作盤及び扉開閉装置と、各階の乗り場の押しボタン装置及び扉開閉装置とに接続される。図11では、実際には多くの配線12が制御盤17に接続されるが、簡略化して2本の配線12のみを示している。
上記のダクト10によれば、金属製のダクト10を所定形状に形成する場合において、切断作業をなくすか、または少なくすることができる。具体的には、天板31、底板32、左側板33、及び右側板34の形成作業では、作業者11(図1)が、完成品のダクト10の形状に応じた数の板要素31a、32a、33a、33b、34a、34bを並べて配置すればよい。このような形成作業では、天板31、底板32、左側板33、及び右側板34を形成するために、作業者11が機械室14またはその周辺部で長尺な部品を切断する必要がない。
なお、ダクト10の配置作業においてガイドレール37a、37b、37c、37dは、対応するI字形要素30a、30b、30cの長さに応じて、機械室14またはその周辺部で、長尺な部品から所望長さに切断する。一方、機械室14にガイドレール37a、37b、37c、37dを運ぶ前に予めI字形要素30a、30b、30cの長さに応じて所望長さに切断しておけば、機械室14またはその周辺部でガイドレール37a、37b、37c、37dを切断する必要がない。これにより、ダクト10の形成時における切断作業をなくすことができる。このため、ダクト10の配置作業の時間を短くでき、かつ、作業時の安全性を向上できる。さらに、必要な資格を持つ作業者だけが許可される切断作業がない場合には、多くの作業者11が作業を行えるので、作業効率の改善を図れる。
さらに、隣り合う板要素31a、32a、33a、33b、34a、34bの間に隙間が形成されてもよい。これにより、ダクト10の各I字形要素30a、30b、30cの長さに応じて、板要素31a、32a、33a、33b、34a、34bの数を正確に合わせる必要がない。このため、ダクト10の配置作業の作業性を高くできる。
また、板要素31a、32a、33a、33b、34a、34bは小型で比較的軽量であるので、各I字形要素30a、30b、30cの長さ以上の大型の構成部品を機械室に運んで切断して組み立てる場合に比べて、搬送作業性が高い。また、ダクト10を形成する場合において余った板要素は、別の場所で別のダクトを形成するために再利用することができる。これにより、ダクト10の形成作業におけるコスト低減を図れる。
また、図2、図6、図11に示すように右側板34及び左側板33の一部の板要素34b、33bが配線12の通過用の貫通孔35,36を有する。これにより、貫通孔35,36を有する板要素34b、33bを第1I字形要素30aの長手方向の所望位置に組み付けるだけで適切な位置から配線12を導出させることができる。このとき、機械室14内において、配線12の接続位置に応じてダクトの側壁部にドリル等の工具で孔加工を行う必要がない。このため、配線12の配置作業性をより高くできる。また、作業時の安全性をより向上できる。このとき、貫通孔35,36を有する板要素34b、33bの長手方向X両側において、隙間P2,P3(図4)をあけて別の板要素34a、33aを配置することができる。これにより、貫通孔35,36を有する板要素34b、33bは、ガイドレール37a、37b、37c、37dの第2上側溝39及び第2下側溝41(図6)に沿って所望の位置にスライドできるようにしてもよい。
図12は、比較例の配線用ダクトの分解斜視図である。この比較例のダクトは、ダクト本体80の上側に天板85を図示しないボルトで結合することにより形成される。ダクト本体80は、底板部81とその両側に立設される側壁部82とを有し、金属板により一体形成される。なお、比較例では側壁部82の複数位置に予め貫通孔形成用の切断予定部Q1,Q2が形成されている。切断予定部Q1,Q2は、破線状に長円形または円形を形成したものであり、切断予定部Q1,Q2の内側を治具などで打ち抜くことにより貫通孔を形成できる。このような比較例では機械室14内で配線用ダクトを所望長さに切断する必要がある。例えば、作業者が、エレベータの改修作業を行う度に、ダクトの形状に応じてダクト本体80及び天板85を切断する必要がある。これにより切断作業が多くなり、ダクトの配置作業に長時間を要する。また、長尺で重いダクト本体80及び天板85をダクトの配置位置の周辺部まで搬送する必要があるので、搬送作業性が悪い。また、ダクトにおける配線通過用の貫通孔の形成位置の自由度が小さいので、配線の導出位置に応じた位置にダクトを高精度に合わせて配置する必要がある。また、ダクト本体80及び天板85を切断した場合に残りの部分の再利用が難しい。上記の実施形態によればこのような比較例の不都合を解消できる。
図1から図11では、ガイドレール37a、37b、37c、37dを形成する長尺な部品を、機械室14またはその周辺部で切断するか、または予め所望長さに切断したガイドレール37a、37b、37c、37dを機械室14に搬送する場合を説明した。一方、図13、図14に示すように、短いガイドレール要素90,91を、機械室14またはその周辺部で、必要に応じて連結して所望長さのガイドレール37a、37b、37c、37dを形成することもできる。
図13、図14は、それぞれガイドレールの別例を示す部分拡大図である。図13に示す別例では、2つのガイドレール要素90,91の長手方向端面の一部から長手方向に突出する突部90a、91aが形成される。そして、2つのガイドレール要素90,91の突部90a、91aを重ね合わせた状態で、突部90a、91aを貫通したボルトとナットとを含む結合部材92により、2つのガイドレール要素90,91が結合される。これによりガイドレール37a、37b、37c、37dは、長手方向に分かれた複数のガイドレール要素90,91を結合部材92により連結することにより形成される。このため、切断作業を行うことなく、所望長さのガイドレール37a、37b、37c、37dを形成でき、かつ、各ガイドレール要素90,91が短いので搬送作業性を高くできる。両端部に突部を有する3つ以上のガイドレール要素を長手方向に連結して、所望長さのガイドレールを形成することもできる。なお、ガイドレール要素90,91において結合部材92を連結する部分には、第1上側溝38(第2上側溝39、第1下側溝40、または第2下側溝41)を形成せずに、2つの溝38,39,40,41に配置された隣り合う板要素の間に隙間が形成されてもよい。
図14に示す別例では、2つのガイドレール要素93,94の長手方向端部において、長手方向に対し直交する方向(図14の上下方向)の孔95が形成される。そして各孔95に略U字形の結合部材96の両側の脚部を圧入することにより、所望長さのガイドレール37a、37b、37c、37dを形成している。このため、ガイドレール37a、37b、37c、37dは、長手方向に分かれた複数のガイドレール要素93,94を結合部材96により連結することにより形成される。両端部に孔を有する3つ以上のガイドレール要素により所望長さのガイドレールを形成してもよい。図13、図14に示す別例によれば、ダクトの配置場所またはその周辺部でガイドレールを形成する部品の切断作業をなくすことができる。このため、ダクトの配置作業における切断作業をなくすことができる。
なお、上記では全体がU字形のダクト10を形成する場合を説明したが、ダクトはI字形要素だけで形成したI字形であってもよい。例えば、図4の第1I字形要素30aにおいて、4つのガイドレール37a、37b、37c、37dの長さを同じとし、必要な数の板要素を配置してダクトを形成してもよい。さらに、複数のI字形要素をI字形の結合ジョイントで結合して所望長さのダクトを形成してもよい。また、ダクトの全体をL字形、またはクランク形など、別の形状としてもよい。U字形以外のダクトの場合でも、複数のI字形要素を結合ジョイントで結合することによりダクトを形成することができる。
上記では、I字形要素において天板、底板、左側板、及び右側板のすべてが長手方向において分かれて配置される複数の板要素により形成される構成を説明した。一方、I字形要素において天板、底板、左側板、及び右側板のいずれか1つ、2つ、または3つが長手方向において分かれて配置される複数の板要素により形成される構成としてもよい。また、上記では、機械室14の床上に配置されるダクト10を説明したが、金属材料により形成されるダクトであれば、機械室以外の床上に配置されるものでもよい。
本発明に係る配線用ダクトは、I字形に伸びる筒状のI字形要素を備え、床上に配置される金属製の配線用ダクトであって、前記I字形要素は、上端部に配置された天板と、下端部に配置された底板と、長手方向一方から見た場合での左右方向について、前記天板の左端部及び前記底板の左端部の間に配置された左側板と、前記左右方向について、前記天板の右端部及び前記底板の右端部の間に配置された右側板と、四隅に配置されて、前記天板と前記左側板、前記天板と前記右側板、前記底板と前記左側板、及び前記底板と前記右側板をそれぞれ連結する4つのガイドレールとを含み、前記各ガイドレールは、前記天板、前記底板、前記左側板、及び前記右側板のうち、連結する2つの板の端部をそれぞれ嵌め入れる2つの長手方向溝を有し、前記天板、前記底板、前記左側板及び前記右側板の少なくとも1つの板は、長手方向において分かれて配置される複数の板要素により形成され、前記複数の板要素のうち、少なくとも隣り合う2つの前記板要素の間には隙間が形成される。