次に、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態としての部品実装機10の構成の概略を示す構成図であり、図2は部品実装機10の制御装置70と管理装置80との電気的な接続関係の詳細を示すブロック図であり、図3はヘッド50の構成の概略を示す構成図である。なお、本実施形態において、図1の左右方向がX軸方向であり、前後方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
部品実装機10は、本実施形態では、比較的大型の部品や異形の部品の実装に適した実装機である。この部品実装機10は、図1に示すように、部品Pを供給する部品供給装置16と、基板Sを搬送する基板搬送装置20と、基板搬送装置20により搬送された基板Sを裏面側からバックアップするバックアップ装置30と、種々のサイズ(ノズル径)の2つの吸着ノズル51(図3参照)を装着可能で吸着ノズル51によって部品Pをピックアップして基板S上へ実装するためのヘッド50と、ヘッド50をXY方向へ移動させるXYロボット40と、基板Sに設けられた位置決め基準マークを撮像可能なマークカメラ46と、吸着ノズル51に吸着された部品を撮像可能なパーツカメラ48と、複数の吸着ノズル51をストックしておくためのノズルステーション60と、部品実装機全体の制御を司る制御装置70(図2参照)とを備える。基板搬送装置20とバックアップ装置30とヘッド50とXYロボット40とは、基台11上に設置された本体枠12内に収容されている。
部品供給装置16は、本体枠12の前面部に形成されたフィーダ台14に、左右方向(X軸方向)に並ぶように整列配置されたフィーダ18を備える。フィーダ18は、部品Pが所定ピッチで収容されたキャリアテープを吸着ノズル51がピックアップ可能な部品供給位置まで送り出すテープフィーダである。なお、キャリアテープは、図示しないが、所定ピッチでキャビティー(凹部)が形成されたボトムテープと、各キャビティーに部品Pが収容された状態でボトムテープを覆うトップフィルムとにより構成されている。フィーダ18は、リールに巻回されたキャリアテープを引き出して部品供給位置へ送り出し、部品供給位置の手前でボトムテープからトップフィルムを剥がすことにより、部品供給位置にて部品Pを露出状態、即ちピックアップ可能な状態とする。なお、図1には部品供給装置16としてテープフィーダのみを図示したが、部品供給装置16としてトレイフィーダを設置することも可能である。なお、トレイフィーダは、基板Sに実装する板状の部品が並べられたトレイを複数段積み重ねられた段積み状態にて収容し、部品をトレイごと供給するものである。
基板搬送装置20は、図1に示すように、第1レーン22aおよび第2レーン22bの2つの基板搬送路が設けられたデュアルレーン方式の搬送装置として構成されており、本体枠12の中段部に設けられた支持台13上に配置されている。各基板搬送路には、ベルトコンベア装置24a,24bを備えており、ベルトコンベア装置24a,24bの駆動により基板Sを図1の左から右(基板搬送方向)へと搬送する。
バックアップ装置30は、図示しない昇降装置により昇降可能に設置されたバックアッププレート32と、バックアッププレート32に立設された複数のバックアップピン34とを備える。このバックアップ装置30は、基板搬送装置20によりバックアッププレート32の上方に基板Sが搬送された状態でバックアッププレート32を上昇させることで基板Sを裏面側からバックアップする。
XYロボット40は、図1に示すように、本体枠12の上段部にY軸方向に沿って設けられたY軸ガイドレール43と、Y軸ガイドレール43に沿って移動が可能なY軸スライダ44と、Y軸スライダ44の下面にX軸方向に沿って設けられたX軸ガイドレール41と、X軸ガイドレール41に沿って移動が可能なX軸スライダ42とを備える。X軸スライダ42の下面には、前述したマークカメラ46が取り付けられている。
ヘッド50は、図3に示すように、Z軸方向に延びる軸状部材であって図示しないノズルチャックによって吸着ノズル51を着脱可能に保持する第1のノズルホルダ52aと、同じくZ軸方向に延びる軸状部材であって第1のノズルホルダ52aと左右方向(X軸方向)に並ぶように整列配置され図示しないノズルチャックによって吸着ノズル51を着脱可能に保持する第2のノズルホルダ52bと、第1のノズルホルダ52aを上下方向(Z軸方向)に移動させる第1のZ軸アクチュエータ54aと、第2のノズルホルダ52bを上下方向(Z軸方向)に移動させる第2のZ軸アクチュエータ54bと、第1のノズルホルダ52aを軸線周りに回転させる第1のθ軸アクチュエータ56aと、第2のノズルホルダ52bを軸線周りに回転させる第2のθ軸アクチュエータ56bとを備える。ヘッド50は、各ノズルホルダ52a,52b毎にZ軸アクチュエータ54a,54bとθ軸アクチュエータ56a,56bとを備えているから、各ノズルホルダ52a,52bを独立してZ軸方向およびθ軸方向(回転方向)に移動させることができる。各ノズルホルダ52a,52bは、それぞれ装着された吸着ノズル51の吸引口と連通する内部通路53a,53bを有する。内部通路53a,53bは、それぞれ対応する電磁弁(第1の電磁弁59a,第2の電磁弁59b)を介して真空ポンプ57およびエア配管58のいずれかに選択的に連通するようになっている。したがって、第1のノズルホルダ52aの内部通路53aと真空ポンプ57とが連通するよう第1の電磁弁59aを駆動した場合には、第1のノズルホルダ52aに装着された吸着ノズル51の吸引口に負圧が作用し、部品Pを吸着することができる。また、第1のノズルホルダ52aの内部通路53aとエア配管58とが連通するよう電磁弁59aを駆動した場合には、第1のノズルホルダ52aに装着された吸着ノズル51の吸引口に正圧が作用し、部品Pの吸着を解除することができる。同様に、第2のノズルホルダ52bの内部通路53bと真空ポンプ57とが連通するよう2の電磁弁59bを駆動した場合には、第2のノズルホルダ52bに装着された吸着ノズル51の吸引口に負圧が作用し、部品Pを吸着することができる。また、第2のノズルホルダ52bの内部通路53bとエア配管58とが連通するよう第2の電磁弁59bを駆動した場合には、第2のノズルホルダ52bに装着された吸着ノズル51の吸引口に正圧が作用し、部品Pの吸着を解除することができる。
また、左右の2つのノズルホルダ52a,52bは、左右に隣接する2つのフィーダ18の各部品供給位置の間隔と略同じ間隔をもって配置されている。したがって、2つのノズルホルダ52a,52bのそれぞれに吸着ノズル51を装着させ、装着された2つの吸着ノズル51が隣接する2つのフィーダ18の各部品供給位置に対向する位置に来るようにヘッド50を移動させ、2つの吸着ノズル51を下降させると共に吸着ノズル51の吸入口に負圧を作用させることにより、2つの吸着ノズル51に部品Pを同時に吸着させることができる。
ノズルステーション60は、異なる種類(ノズル径)の吸着ノズル51を収容可能な複数のソケット62を備える。図4は、ノズルステーション60の各ソケット62の配列を示す説明図である。なお、図中の各ソケット62の上方に記載の数字はソケット番号を示し、各吸着ノズル51内(円内)に記載の数字はノズルの直径(mm)を示す。この点は、後述する図9および図13においても同様である。複数のソケット62は、左右に隣接するソケット間の間隔が前述した左右の2つのノズルホルダ52a,52bと略同じ間隔となっている。したがって、吸着ノズル51が装着された2つのノズルホルダ52a,52bが複数のソケット62のうち左右に隣接する2つの空きソケット62とそれぞれ対向する位置に来るようにヘッド50を移動させ、2つのノズルホルダ52a,52bを下降させてノズルホルダ52a,52bによる吸着ノズル51の保持を解除することにより、2つのノズルホルダ52a,52bに装着されている吸着ノズル51を2つのソケット62に返却することができる。また、2つのノズルホルダ52a,52bが吸着ノズル51を収容する2つのソケット62に対向する位置に来るようヘッド50を移動させ、2つのノズルホルダ52a,52bを下降させて2つのノズルホルダ52a,52bに2つのソケット62に収容されている吸着ノズル51を保持させることにより、2つのノズルホルダ52a,52bに2つの吸着ノズル51を装着することができる。なお、同時返却と同時装着とをまとめて同時交換とも呼ぶ。本実施形態では、この同時交換を実現するために、管理装置80が、後述する生産計画に従ってノズルステーション60上の各吸着ノズル51の配置位置を決定し、決定した配置位置に従って吸着ノズル51をセットするように作業者に対して指示画面をディスプレイ88上に出力する。なお、吸着ノズル51には、ソケット62に収容されている状態で視認可能な位置(吸着ノズル51のフランジ部の上面)に図示しない識別コードが付されている。制御装置70は、この識別コードをマークカメラ46で撮像することにより、ノズルステーション60に収容されている全ての吸着ノズル51の種類を生産前に特定することができる。
制御装置70は、CPU71を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU71の他に、ROM72と、HDD73と、RAM74と、入出力インターフェース75とを備える。これらは、バス76を介して電気的に接続されている。制御装置70には、X軸スライダ42の位置を検知するX軸位置センサ42aからの位置信号やY軸スライダ44の位置を検知するY軸位置センサ44aからの位置信号、マークカメラ46からの画像信号、パーツカメラ48からの画像信号などが入出力インターフェース75を介して入力されている。一方、制御装置70からは、部品供給装置16への制御信号や基板搬送装置20への制御信号、バックアップ装置30への制御信号、X軸スライダ42を移動させるX軸アクチュエータ42bへの駆動信号、Y軸スライダ44を移動させるY軸アクチュエータ44bへの駆動信号、ヘッド50への制御信号(第1のZ軸アクチュエータ54aや第2のZ軸アクチュエータ54b、第1のθ軸アクチュエータ56a、第2のθ軸アクチュエータ56bへの駆動信号)、電磁弁(第1の電磁弁59a,第2の電磁弁59b)への駆動信号などが入出力インターフェース75を介して出力されている。また、制御装置70は、管理装置80と通信ネットワークを介して双方向通信可能に接続されており、互いにデータや制御信号のやり取りを行っている。
管理装置80は、例えば、汎用のコンピュータであり、CPU81とROM82とHDD83とRAM84と入出力インターフェース85などを備える。これらは、バス86を介して電気的に接続されている。この管理装置80には、マウスやキーボード等の入力デバイス87から入力信号が入出力インターフェース85を介して入力され、管理装置80からは、ディスプレイ88への画像信号が入出力インターフェース85を介して出力されている。HDD83は、基板Sの生産計画を記憶している。ここで、基板Sの生産計画とは、各部品実装機11においてどの部品Pをどの順番で基板Sへ実装するか、また、そのように部品Pを実装した基板Sを何枚作製するかなどを定めた計画をいう。図5は、HDD83に記憶される生産計画の一例を示す。生産計画は、図5に示すように、生産レーンの種類や基板Sの作製数、基板Sに実装する部品Pに関する部品情報、使用するフィーダ18に関するフィーダ情報、使用するヘッド50に関するヘッド情報、使用する吸着ノズル51に関するノズル情報などを含む。これらの情報は、生産番号に対応付けられてHDD83に記憶されている。ここで、フィーダ情報は、各フィーダ18の設置位置や各フィーダ18が供給する部品Pの種類などを含む。また、ノズル情報は、ノズルステーション60上の各ソケット62に収容されている吸着ノズル51の種類(ノズル径)や、どのレーンでどのノズルホルダ52に装着されどの順序で使用されるかの情報などを含む。こうした生産計画は、作業者が入力デバイス87を操作することにより管理装置80に入力される。管理装置80は、生産計画にしたがって基板Sへの部品Pの実装が行われるよう部品実装機10へ指令信号を出力する。
次に、こうして構成された本実施形態の部品実装機10の動作について説明する。図6は、制御装置70のCPU71により実行される部品実装処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、管理装置80から指令信号を受信したときに実行される。
部品実装処理ルーチンが実行されると、制御装置70のCPU71は、まず、第1レーン22a上に基板Sが搬入された否かを判定する(ステップS100)。ここで、基板Sは、第1レーン22aに搬入されると、バックアップ装置30によって基板Sが位置決めされる。CPU71は、基板Sが搬入されていないと判定すると、ステップS170の処理に進む。一方、CPU71は、基板Sが搬入されたと判定すると、吸着ノズル51の交換(ノズル交換)が必要か否かを判定する(ステップS110)。なお、ステップS110の判定は、管理装置80から受信される生産計画に含まれるノズル情報に基づいて行うことができる。CPU71は、ノズル交換が必要と判定すると、ノズル交換処理を行い(ステップS120)、ノズル交換が必要でないと判定すると、ステップS120の処理をスキップする。図7はノズルホルダ52a,52bに装着する吸着ノズルを吸着ノズル51a,51bから吸着ノズル51c,51dに交換する様子を示す説明図である。なお、図中、各ソケット62a〜62dの「a〜d」は各ソケットを互いに区別するために便宜上付した符号であり、各吸着ノズル51a〜51dの「a〜d」は各吸着ノズルを互いに区別するために便宜上付した符号である。ノズル交換は以下のようにして行われる。即ち、CPU71は、まず、各ノズルホルダ52a,52bに現在装着されている吸着ノズル51a,51bがこれらの収容先であるソケット62a,62bに対向する位置に来るまでヘッド50が移動するようXYロボット40(X軸アクチュエータ42b,Y軸アクチュエータ44b)を制御する(図7(a)参照)。続いて、CPU71は、各ノズルホルダ52a,52bが下降するよう各Z軸アクチュエータ54a,54bを制御し、各ノズルホルダ52a,52bによる吸着ノズル51a,51bの保持を解除することにより吸着ノズル51a,51bをそれぞれソケット62a,62bに同時返却する(図7(b)参照)。そして、CPU71は、各ノズルホルダ52a,52bが上昇するようZ軸アクチュエータ54a,54bを制御し(図7(c)参照)、ノズルホルダ52a,52bがそれぞれ交換先の吸着ノズル51c,51dが収容されているソケット62c,62dに対向する位置に来るまでヘッド50が移動するようXYロボット40を制御する(図7(d)参照)。ノズルホルダ52a,52bがソケット62c,62dに対向する位置に移動すると、CPU71は、ノズルホルダ52a,52bが下降するようZ軸アクチュエータ54a,54bを制御して、ノズルホルダ52a,52bに対してソケット62c,62dにそれぞれ収容されている吸着ノズル51c、51dを装着し(図7(e)参照)、ノズルホルダ52a,52bが上昇するようZ軸アクチュエータ54a,54bを制御する(図7(f)参照)。
次に、CPU71は、ノズルホルダ52a,52bにそれぞれ装着されている吸着ノズル51でフィーダ18から供給されている部品Pを吸着する(ステップS130)。この処理は、左右の2つのノズルホルダ52a,52bにそれぞれ吸着ノズル51a,51bが装着されている場合、左右に隣接する2つのフィーダ18から供給される部品Pを、それぞれ2つの吸着ノズル51a,51bで同時吸着する処理である。具体的には、CPU71は、対象の2つのフィーダ18により供給される部品Pのそれぞれの真上に2つの吸着ノズル51a,51bが来るようにXYロボット40を制御する。そして、CPU71は、2つの吸着ノズル51a,51bの吸引口がそれぞれ真下にある2つの部品Pに当接するまでノズルホルダ52a,52bが下降するようZ軸アクチュエータ54a,54bを制御し、2つの吸着ノズル51a,51bの吸引口に負圧が作用するよう電磁弁59a,59bを制御して、2つの吸着ノズル51a,51bに部品Pを同時吸着させる。
こうして吸着ノズル51に部品Pを吸着させると、CPU71は、吸着させた部品Pを基板S上へ移動させて基板Sの実装位置に実装する(ステップS140)。ステップS140の処理は、具体的には、以下のようにして行われる。即ち、2つのノズルホルダ52a,52bにそれぞれ吸着ノズル51a,51bが装着されている場合、CPU71は、吸着ノズル51aに吸着させた部品Pを基板Sの実装位置の真上に来るようXYロボット40を制御する。そして、CPU71は、部品Pが実装位置に押し当てられるまで吸着ノズル51aが下降するよう第1のZ軸アクチュエータ54aを制御し、吸着ノズル51aの吸引口に正圧が作用するよう第1の電磁弁59aを制御することにより、吸着ノズル51aに吸着させた部品Pを基板S上に実装する。次に、CPU71は、吸着ノズル51bに吸着させた部品Pがその実装位置の真上に来るようXYロボット40を制御する。そして、CPU71は、部品Pが実装位置に押し当てられるまで吸着ノズル51bが下降するよう第2のZ軸アクチュエータ54bを制御し、吸着ノズル51bの吸引口に正圧が作用するよう第2の電磁弁59bを制御することにより、吸着ノズル51bに吸着させた部品Pを基板S上に実装する。上述の例では、CPU71は、吸着ノズル51aに吸着させた部品Pを先に実装した後、吸着ノズル51bに吸着させた部品Pを実装するものとしたが、吸着ノズル51bに吸着させた部品Pを先に実装した後、吸着ノズル51aに吸着させた部品Pを実装するものとしてもよい。なお、CPU71は、吸着ノズル51a,51bに吸着された部品Pの実装に先立って、部品Pをパーツカメラ48の上方に移動させてパーツカメラ48で撮像を行い、得られた画像に基づいて吸着ノズル51a,51bが部品Pを正常に吸着しているか否かを判定し、判定結果に基づいて実装位置の修正を行う。
こうして部品Pを実装すると、CPU71は、基板Sに対して部品実装機10が実装すべき全ての部品Pの実装が完了したか否かを判定し(ステップS150)、全ての部品Pの実装が完了していないと判定すると、ステップS110に戻り、必要に応じてノズル交換処理を行って、ステップS120〜S140の実装動作を繰り返す。CPU71は、全ての部品Pの実装が完了したと判定すると、基板搬送装置20を制御することにより基板Sを払い出し(ステップS160)、次のステップS170の処理に進む。
次に、CPU71は、第2レーン22b上に基板Sが搬入された否かを判定し(ステップS170)、基板Sが搬入されていないと判定すると、ステップS100の処理に戻り、基板Sが搬入されていると判定すると、実装する部品Pの種類に応じたノズル交換作業を行ってから、2つの部品Pを同時吸着し、それぞれ対応する実装位置へ実装する実装動作を行い、実装動作が完了すると、基板Sを払い出す実装動作を行う(ステップS180〜S230)。なお、ステップS180〜S230の処理は、対象のレーンが異なる点を除いて、ステップS110〜S160と同様の処理であるため、その詳細な説明は省略する。
図8は、制御装置70のCPU71により実行される不良ノズル入替処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。不良ノズル入替処理が実行されると、CPU71は、まず、ノズルステーション60上に収容されている吸着ノズルや各ノズルホルダ52a,52bに装着されている吸着ノズルの異常を判定する(ステップS300)。ここで、吸着ノズルの異常を判定する場合としては、例えば、生産開始時にノズルステーション60上の吸着ノズル51に付されている識別コードをマークカメラ46で撮像して吸着ノズルの種類を特定する際に、識別コードを認識できないエラーが発生した場合や、生産開始時にノズルホルダ52a,52bに装着した吸着ノズル51をパーツカメラ48により撮像し得られた画像に基づいて吸着ノズル51の曲りや欠けを検出した場合、部品Pを基板Sへ実装した後の吸着ノズル51をパーツカメラ48により撮像し得られた画像に基づいて部品Pが基板Sに実装されずに持ち帰られたことを検出した場合、生産中に吸着ノズル51に吸着した部品Pの吸着不良が所定頻度以上で発生した場合、生産中にノズルホルダ52a,52b(内部通路53a,53b)のバキューム圧やバキューム流量を検出する図示しないバキュームセンサによりノズルつまりを検出した場合などを挙げることができる。CPU71は、判定対象の吸着ノズルのいずれにも異常が生じていないと判定すると、不良ノズル入替処理を終了する。
一方、CPU71は、判定対象の吸着ノズルのいずれかに異常が生じている(不良ノズルが発生している)と判定すると、生産を中断させ(ステップS320)、不良ノズルを予備ノズルと入れ替えるノズル入替処理を行った上で(ステップS330)、生産を再開して(ステップS340)、不良ノズル入替処理を終了する。ここで、ノズル入替処理は、図9に例示するように不良ノズルの収容先(4番ソケット)と不良ノズルと同じ種類(ノズル径)の予備ノズルの収容先(11番ソケット)とを互いに入れ替えるものである。図10および図11は、ソケット62aに収容されている吸着ノズル51a(不良ノズル)とソケット62dに収容されている吸着ノズル51d(予備ノズル)とを入れ替える様子を示す説明図である。ノズル入替処理は以下のようにして行われる。即ち、図示するように、CPU71は、まず、第1のノズルホルダ52aが不良ノズルの収容先であるソケット62aに対向する位置に来るまでヘッド50が移動するようXYロボット40を制御する(図10(a)参照)。続いて、CPU71は、第1のノズルホルダ52aが下降するよう第1のZ軸アクチュエータ54aを制御し、第1のノズルホルダ52aが吸着ノズル51a(不良ノズル)を保持することにより、第1のノズルホルダ52aに対して吸着ノズル51a(不良ノズル)を装着する(図10(b)参照)。そして、CPU71は、第1のノズルホルダ52aが上昇するよう第1のZ軸アクチュエータ54aを制御し(図10(c)参照)、第2のノズルホルダ52bが入替元である吸着ノズル51d(予備ノズル)が収容されているソケット62dに対向する位置に来るまでヘッド50が移動するようXYロボット40を制御する(図10(d)参照)。第2のノズルホルダ52bがソケット62dに対向する位置へ移動すると、CPU71は、第2のノズルホルダ52bが下降するよう第2のZ軸アクチュエータ54bを制御して、第2のノズルホルダ52bが吸着ノズル51d(予備ノズル)を保持することにより、第2のノズルホルダ52bに対して吸着ノズル51d(予備ノズル)を装着し(図10(e)参照)、その後、第2のノズルホルダ52bが上昇するよう第2のZ軸アクチュエータ54bを制御する(図10(f)参照)。これにより、2つのノズルホルダ52a,52bは、吸着ノズル51a(不良ノズル)と吸着ノズル51d(予備ノズル)の双方が装着された状態となる。
次に、CPU71は、吸着ノズル51a(不良ノズル)を装着している第1のノズルホルダ52aが、吸着ノズル51d(予備ノズル)を取り出して空き状態となっているソケット62dに対向する位置に来るまでヘッド50が移動するようXYロボット40を制御し(図11(g)参照)、第1のノズルホルダ52aが下降するよう第1のZ軸アクチュエータ54aを制御し、第1のノズルホルダ52aによる吸着ノズル51a(不良ノズル)の保持を解除してソケット62dに吸着ノズル51a(不良ノズル)を収容する(図11(h)参照)。そして、CPU71は、第1のノズルホルダ52aが上昇するよう第1のZ軸アクチュエータ54aを制御し(図11(i)参照)、吸着ノズル51d(予備ノズル)を装着している第2のノズルホルダ52bが、吸着ノズル51a(不良ノズル)を取り出して空き状態となっているソケット62aに対向する位置に来るまでヘッド50が移動するようXYロボット40を制御し(図11(j)参照)、第2のノズルホルダ52bが下降するよう第2のZ軸アクチュエータ54bを制御し、第2のノズルホルダ52bによる吸着ノズル51d(予備ノズル)の保持を解除してソケット62aに吸着ノズル51d(予備ノズル)を収容する(図11(k)参照)。ソケット62aに吸着ノズル51d(予備ノズル)を収容すると、CPU71は、第2のノズルホルダ52bが上昇するよう第2のZ軸アクチュエータ54bを制御して(図11(l)参照)、ノズル入替処理が完了する。なお、ノズル入替処理は、入替先のソケット62aに収容されている吸着ノズル51aを先に装着し、入替元のソケット62dに収容されている吸着ノズル51dを後に装着したが、装着順を逆にしてもよい。このように、ノズル入替処理は、2つのノズルホルダ52a,52bの双方に入替対象の2つの吸着ノズル51a,51dを同時に装着した状態を経由して行われるため、ソケット62に空きがない状態であっても、2つの吸着ノズル51a,51dを自動で入れ替えることができる。
図12は、制御装置70のCPU71により実行される段取替え時ノズル入替処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。段取換え時ノズル入替処理が実行されると、CPU71は、まず、第1レーン22aの生産が完了して段取替えが発生したか否かを判定する(ステップS400)。CPU71は、第1レーン22aの段取替えが発生していないと判定すると、ステップS450の処理に進み、第1レーン22aの段取替えが発生していると判定すると、第2レーン22bの状態が生産中であるか否かを判定し(ステップS410)、生産中であれば基板搬入待ち状態であるか否かを判定する(ステップS420)。CPU71は、第2レーン22bの状態が生産中でないと判定したり、第2レーン22bが生産中であっても基板搬入待ち状態であると判定すると、管理装置80から第1レーン22aに対する次の生産に係る生産計画を取得し(ステップS430)、取得した生産計画に従ってノズル入替処理を実行する(ステップS440)。
また、CPU71は、第2レーン22bの生産が完了して段取替えが発生したか否かを判定する(ステップS450)。CPU71は、第2レーン22bの段取替えが発生していないと判定すると、段取替え時ノズル入替処理を終了し、第2レーン22bの段取替えが発生していると判定すると、第1レーン22aの状態が生産中であるか否かを判定し(ステップS460)、生産中であれば基板搬入待ち状態であるか否かを判定する(ステップS470)。CPU71は、第1レーン22aの状態が生産中でないと判定したり、第1レーン22aが生産中であっても基板搬入待ち状態であると判定すると、管理装置80から第2レーン22bに対する次の生産に係る生産計画を取得し(ステップS480)、取得した生産計画に従ってノズル入替処理を実行して(ステップS490)、段取替え時ノズル入替処理を終了する。
段取替え時のノズル入替処理は、前回の生産に用いられた吸着ノズル51の組み合わせを次の生産に用いられる吸着ノズルの組み合わせに置き換える処理である。例えば、図13に示すように、前回の第2レーン22bでの生産において、5番〜8番ソケットにそれぞれノズル径が1.0mmのノズルとノズル径が1.3mmのノズルとノズル径が1.8mmのノズルとノズル径が2.5mmのノズルが収容されており、次の第2レーン22bでの生産において、5番〜8番ソケットにそれぞれノズル径が1.0mmのノズルとノズル径が1.0mmのノズルとノズル径が2.5mmのノズルとノズル径が2.5mmのノズルを収容すべき場合を考える。この場合、CPU71は、6番ソケットに収容されているノズル径が1.3mmのノズルと9番ソケットに収容されているノズル径が1.0mmの予備ノズルとを入れ替え、7番ソケットに収容されているノズル径が1.8mmのノズルと12番ソケットに収容されているノズル径が2.5mmの予備ノズルとを入れ替える処理を実行すればよい。なお、この場合のノズル入替処理は、前述した不良ノズル入替処理と同様の処理により行うことができる。
以上説明した本実施形態の部品実装機10は、吸着ノズル51を着脱可能な複数のノズルホルダ52a,52bと、吸着ノズル51を収容する複数のソケット62を有するノズルステーション60を備え、複数のノズルホルダ52a,52bに装着されている吸着ノズル51a,51bをそれぞれ収容先のソケット62a,62bに対向する位置まで移動させ、複数のノズルホルダ52a,52bに装着されている吸着ノズル51a,51bをそれぞれ対向するソケット62a,62bに返却し、複数のノズルホルダ52a,52bをそれぞれ次の装着対象の吸着ノズル51c,51dの組が収容されているソケット62c,62dに対向する位置まで移動させ、複数のノズルホルダ52a,52bに対してそれぞれ対向するソケット62c,62dに収容されている装着対象の吸着ノズル51c,51dを装着させる。これにより、吸着ノズルの交換作業を各ノズルホルダ52a,52b毎に個別に行うものに比して、交換作業の効率を向上させることができる。また、本実施形態の部品実装機10は、ノズルホルダ52a,52bの一方のノズルホルダ52bを入替元のソケット62dに対向する位置まで移動させ、一方のノズルホルダ52bに対して対向する入替元のソケット62dに収容されている吸着ノズル51dを装着させ、一方のノズルホルダ52bに装着された吸着ノズル51dを入替先のソケット62aに対向する位置まで移動させ、一方のノズルホルダ52bに装着された吸着ノズル51dを入替先のソケット62aに収容させることにより、ノズル入替処理を自動で行う。即ち、ノズル入替処理によって、複数のノズルホルダ52a,52bに装着可能な吸着ノズルの組み合わせを必要に応じて自動で変更することができる。これらの結果、吸着ノズルの交換作業を効率よく行うことができ、生産効率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の部品実装機10は、ノズル入替処理を、2つのノズルホルダ52a,52bの双方に入替対象の2つの吸着ノズル51a,51dを同時に装着した状態を経由して行うから、ソケット62に空きがない状態であっても、2つの吸着ノズル51a,51dを自動で入れ替えることができると共にノズルの入替を素早く行うことができる。
また、本実施形態の部品実装機10は、ノズル入替処理を不良ノズルが発生した場合に行うから、生産中に不良ノズルが発生した場合であっても自動で復旧させることができる。さらに、本実施形態の部品実装機10は、第1レーン22aと第2レーン22bのうち一方のレーンが生産中で他方のレーンに段取替えが発生した場合、生産中の一方のレーンにおける基板搬入待ち状態(空き時間)を利用して他方のレーンにおいて次の生産に用いる吸着ノズル51の入れ替えを行うから、一方のレーンの生産を継続しながら他方のレーンの次の生産種に対する段取替えを自動で行うことができる。
本実施形態の部品実装機10は、2つのノズルホルダ52a,52bの双方に入替対象の2つの吸着ノズル51a,51dを同時に装着した状態を経由してノズル入替処理を行うものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ノズルステーション60に空きソケットが存在する場合、入替先のソケットに収容されている吸着ノズルをノズルホルダ52a,52bのいずれかに装着させて空きソケットに一旦収容し、入替元のソケットに収容されている吸着ノズルをノズルホルダ52a,52bのいずれかに装着させて入替先のソケットに収容し、空きソケットに収容されている吸着ノズルをノズルホルダ52a,52bのいずれかに装着させて入替元のソケットに収容することにより、ノズルの入れ替えを行うものとしてもよいし、入替元のソケットに収容されている吸着ノズルをノズルホルダ52a,52bのいずれかに装着させて空きソケットに一旦収容し、入替先のソケットに収容されている吸着ノズルをノズルホルダ52a,52bのいずれかに装着させて入替元のソケットに収容し、空きソケットに収容されている吸着ノズルをノズルホルダ52a,52bのいずれかに装着させて入替先のソケットに収容することにより、ノズルの入れ替えを行うものとしてもよい。
本実施形態の部品実装機10は、第1レーン22aおよび第2レーン22bのうち一方のレーンで段取替えが発生した場合、他方のレーンが生産中であるときにはその他方のレーンの状態が基板搬入待ち状態の間(空き時間)にノズル入替処理を行うものとしたが、これに限定されるものではなく、他方のレーンの生産を一時的にストップさせて、ノズル入替処理を実行するものとしてもよい。
本実施形態の部品実装機10は、2つのノズルホルダ52a,52bを備えるものとしたが、3つ以上のノズルホルダを備えるものとしてもよい。この場合、ノズルステーション60は、3つ以上のノズルホルダに吸着ノズルを同時装着可能に複数のソケットを配列するものとしてもよい。
ここで、本実施形態の主要な要素と発明の概要の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、部品実装機10が「部品実装機」に相当し、ノズルホルダ52a,52bが「複数のホルダ」に相当し、XYロボット40が「移動手段」に相当し、Z軸アクチュエータ54a,54bが「昇降手段」に相当し、ノズルステーション60が「ノズル収容器」に相当し、図6の部品実装処理ルーチンのステップS120やステップS190の処理を実行する制御装置70のCPU71が「ノズル交換制御手段」に相当し、図8の不良ノズル入替処理のステップS330や図12の段取替え時ノズル入替処理のステップS440,S490の処理を実行する制御装置70のCPU71が「ノズル入替制御手段」に相当する。また、図8の不良ノズル入替処理のステップS300の処理を実行する制御装置70のCPU71が「異常判定手段」に相当する。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。